(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】噴流はんだ装置
(51)【国際特許分類】
B23K 1/08 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B23K1/08 320Z
(21)【出願番号】P 2023217955
(22)【出願日】2023-12-25
【審査請求日】2023-12-27
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000199197
【氏名又は名称】千住金属工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(74)【代理人】
【識別番号】230117802
【氏名又は名称】大野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】篠原 克宏
(72)【発明者】
【氏名】加賀谷 智丈
(72)【発明者】
【氏名】倉本 恭子
【審査官】山内 隆平
(56)【参考文献】
【文献】特開平05-305432(JP,A)
【文献】特開2019-188416(JP,A)
【文献】特開2000-114707(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B23K 1/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融はんだを供給するための供給部と、
溶融はんだを貯留する貯留槽と、
前記供給部から供給される溶融はんだを前記貯留槽内の溶融はんだに案内するためのガイド部材と、
を備え、
前記ガイド部材は、
複数の孔部を有し、かつ前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対して40度以下の角度で浸漬する、噴流はんだ装置。
【請求項2】
前記ガイド部材は、先端側に位置する第一ガイド部材と、基端側に位置する第二ガイド部材と、前記第一ガイド部材と前記第二ガイド部材との間に設けられるガイド屈曲部と、を有し、
前記第一ガイド部材が、前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対して40度以下の角度で浸漬し、
前記第二ガイド部材の前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対する角度は、前記第一ガイド部材の前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対する角度より大きくなる、請求項1に記載の噴流はんだ装置。
【請求項3】
少なくとも前記ガイド部材が前記貯留槽内の溶融はんだの液面に浸漬する箇所の上方に位置するカバー部材を備える、請求項1又は2に記載の噴流はんだ装置。
【請求項4】
前記カバー部材は、供給部側に向かって延在し、
前記カバー部材の先端は、前記ガイド部材が前記貯留槽内の溶融はんだの液面に浸漬する箇所よりも供給部側に位置している、請求項3に記載の噴流はんだ装置。
【請求項5】
前記カバー部材は、先端側に位置する第一カバー部材と、基端側に位置する第二カバー部材と、前記第一カバー部材と前記第二カバー部材との間に設けられるカバー屈曲部と、を有し、
前記第一カバー部材は、前記第二カバー部材に対して前記カバー屈曲部を介して下方側に屈曲する、請求項3に記載の噴流はんだ装置。
【請求項6】
前記ガイド部材は、先端側に位置する第一ガイド部材と、基端側に位置する第二ガイド部材と、前記第一ガイド部材と前記第二ガイド部材との間に設けられるガイド屈曲部と、を有し、
前記第一カバー部材の先端は、前記ガイド屈曲部よりも前記供給部側に位置する、請求項5に記載の噴流はんだ装置。
【請求項7】
前記ガイド部材は、前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対して0度超過の角度で浸漬する、請求項1又は2に記載の噴流はんだ装置。
【請求項8】
溶融はんだを供給するための供給部と、
溶融はんだを貯留する貯留槽と、
前記貯留槽内の溶融はんだの上方に設けられ、前記貯留槽の側面から前記供給部の溶融はんだの供給箇所に向かって延在するカバー部材と、
前記供給部から供給される溶融はんだを前記貯留槽内の溶融はんだに案内するためのガイド部材と、
を備え、
前記ガイド部材は、先端側に位置する第一ガイド部材と、基端側に位置する第二ガイド部材と、前記第一ガイド部材と前記第二ガイド部材との間に設けられるガイド屈曲部と、を有し、
前記第一ガイド部材は、前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対して浸漬
し、
前記カバー部材は、先端側に位置する第一カバー部材と、基端側に位置する第二カバー部材と、前記第一カバー部材と前記第二カバー部材との間に設けられるカバー屈曲部と、を有し、
前記第一ガイド部材の溶融はんだに対する着面位置と前記第一カバー部材の先端とを結んだ仮想直線は、前記供給部の側面に位置付けられる、噴流はんだ装置。
【請求項9】
溶融はんだを供給するための供給部と、
溶融はんだを貯留する貯留槽と、
前記貯留槽内の溶融はんだの上方に設けられ、前記貯留槽の側面から前記供給部の溶融はんだの供給箇所に向かって延在するカバー部材と、
前記供給部から供給される溶融はんだを前記貯留槽内の溶融はんだに案内するためのガイド部材であって、先端が前記貯留槽内の溶融はんだの液面に浸漬するガイド部材と、
を備え、
前記カバー部材の先端と前記供給箇所とは平面視において離間し、
前記ガイド部材の溶融はんだに対する着面位置と前記カバー部材の先端とを結んだ仮想直線は、前記供給部の側面に位置付けられる
、噴流はんだ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融はんだを基板に供給する噴流はんだ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、溶融はんだを基板に対して供給するための噴流はんだ装置が知られている。例えば特許文献1では、溶融はんだを収容するはんだ槽本体部に設けられる噴流ノズルから溶融はんだを噴流して対象物にはんだ付けをする噴流はんだ槽が開示されている。特許文献1の噴流はんだ槽は、一端に流出口を有し、噴流ノズルの周辺に設けられて、噴流ノズルによって噴流された溶融はんだを流出口から流出してはんだ槽本体部へ案内するはんだ案内部と、上部が開口されて底部及び側部に複数の孔が穿設された第1のカゴと、第1のカゴの下方に設けられて、上部が開口されて底部及び側部に複数の孔が穿設された第2のカゴとを有するはんだ流緩和部とを備えている。そして、はんだ流緩和部は、流出口から流出された溶融はんだを第1のカゴの上部から取り入れて第1のカゴの孔及び第2のカゴの孔から排出する態様となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1の態様では、噴流ノズルによって噴流された溶融はんだを流出口から流出してはんだ槽本体部に案内する態様となっているが、本発明は、特許文献1とは異なる態様を採用しつつ、溶融はんだの基板への飛散を防止することができる噴流はんだ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
[概念1]
本発明の第一態様による噴流はんだ装置は、
溶融はんだを供給するための供給部と、
溶融はんだを貯留する貯留槽と、
前記供給部から供給される溶融はんだを前記貯留槽内の溶融はんだに案内するためのガイド部材と、
を備え、
前記ガイド部材が、前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対して40度以下の角度で浸漬してもよい。
【0006】
[概念2]
概念1による噴流はんだ装置において、
前記ガイド部材は、先端側に位置する第一ガイド部材と、基端側に位置する第二ガイド部材と、前記第一ガイド部材と前記第二ガイド部材との間に設けられるガイド屈曲部と、を有し、
前記第一ガイド部材が、前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対して40度以下の角度で浸漬し、
前記第二ガイド部材の前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対する角度は、前記第一ガイド部材の前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対する角度より大きくなってもよい。
【0007】
[概念3]
概念1又は2による噴流はんだ装置において、
少なくとも前記ガイド部材が前記貯留槽内の溶融はんだの液面に浸漬する箇所の上方に位置するカバー部材を備えてもよい。
【0008】
[概念4]
概念3による噴流はんだ装置において、
前記カバー部材は、供給部側に向かって延在し、
前記カバー部材の先端は、前記ガイド部材が前記貯留槽内の溶融はんだの液面に浸漬する箇所よりも供給部側に位置してもよい。
【0009】
[概念5]
概念3又は4による噴流はんだ装置において、
前記カバー部材は、先端側に位置する第一カバー部材と、基端側に位置する第二カバー部材と、前記第一カバー部材と前記第二カバー部材との間に設けられるカバー屈曲部と、を有し、
前記第一カバー部材は、前記第二カバー部材に対して前記カバー屈曲部を介して下方側に屈曲してもよい。
【0010】
[概念6]
概念5による噴流はんだ装置において、
前記ガイド部材は、先端側に位置する第一ガイド部材と、基端側に位置する第二ガイド部材と、前記第一ガイド部材と前記第二ガイド部材との間に設けられるガイド屈曲部と、を有し、
前記第一カバー部材の先端は、前記ガイド屈曲部よりも前記供給部側に位置してもよい。
【0011】
[概念7]
概念1乃至6のいずれか1つによる噴流はんだ装置において、
前記ガイド部材は、前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対して0度超過の角度で浸漬してもよい。
【0012】
[概念8]
概念1乃至7のいずれか1つによる噴流はんだ装置において、
前記ガイド部材は、複数の孔部を有してもよい。
【0013】
[概念9]
本発明の第二態様による噴流はんだ装置は、
溶融はんだを供給するための供給部と、
溶融はんだを貯留する貯留槽と、
前記供給部から供給される溶融はんだを前記貯留槽内の溶融はんだに案内するためのガイド部材と、
を備え、
前記ガイド部材が、先端側に位置する第一ガイド部材と、基端側に位置する第二ガイド部材と、前記第一ガイド部材と前記第二ガイド部材との間に設けられるガイド屈曲部と、を有し、
前記第一ガイド部材が、前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対して浸漬してもよい。
【0014】
[概念10]
本発明の第二態様による噴流はんだ装置は、
前記貯留槽内の溶融はんだの上方に設けられ、前記貯留槽の側面から前記供給部の溶融はんだの供給箇所に向かって延在するカバー部材を備え、
前記カバー部材が、先端側に位置する第一カバー部材と、基端側に位置する第二カバー部材と、前記第一カバー部材と前記第二カバー部材との間に設けられるカバー屈曲部と、を有し、
前記第一ガイド部材の溶融はんだに対する着面位置と前記第一カバー部材の先端とを結んだ仮想直線が、前記供給部の側面に位置付けられてもよい。
【0015】
[概念11]
本発明の第三態様による噴流はんだ装置は、
溶融はんだを供給するための供給部と、
溶融はんだを貯留する貯留槽と、
前記貯留槽内の溶融はんだの上方に設けられ、前記貯留槽の側面から前記供給部の溶融はんだの供給箇所に向かって延在するカバー部材と、
を備え、
前記カバー部材の先端と前記供給箇所とが平面視において離間してもよい。
【0016】
[概念12]
本発明の第三態様による噴流はんだ装置は、
前記供給部から供給される溶融はんだを前記貯留槽内の溶融はんだに案内するためのガイド部材を備え、
前記ガイド部材が、前記貯留槽内の溶融はんだの液面に対して40度以下の角度で浸漬し、
前記ガイド部材の溶融はんだに対する着面位置と前記カバー部材の先端とを結んだ仮想直線が、前記供給部の側面に位置付けられてもよい。
【発明の効果】
【0017】
本発明の態様を採用すれば、溶融はんだの基板への飛散を防止することができる噴流はんだ装置を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】
図1は、本実施の形態によるはんだ付け装置を示した概略図である。
【
図2】
図2は、本実施の形態による噴流はんだ装置において、上流ガイド部材が溶融はんだの液面に対して浸漬する態様を示した側方断面図である。
【
図3】
図3は、本実施の形態による噴流はんだ装置において、上流ガイド部材が溶融はんだの液面に対して浸漬し、上流カバー部材が設けられる態様を示した側方断面図である。
【
図4】
図4は、本実施の形態による噴流はんだ装置において、上流ガイド部材が上流第一ガイド部材、上流第二ガイド部材及び上流ガイド屈曲部を有し、上流カバー部材が設けられる態様を示した側方断面図である。
【
図5】
図5は、本実施の形態による噴流はんだ装置において、上流ガイド部材が上流第一ガイド部材、上流第二ガイド部材及び上流ガイド屈曲部を有し、上流カバー部材が上流第一カバー材、上流第二カバー部材及び上流カバー屈曲部を有する態様を示した側方断面図である。
【
図6A】
図6Aは、本実施の形態で用いられ得るガイド部材の斜視図である。
【
図6B】
図6Bは、本実施の形態で用いられ得るガイド部材の側方図である。
【
図7A】
図7Aは、本実施の形態で用いられ得る、第一ガイド部材、第二ガイド部材及びガイド屈曲部を有するガイド部材の斜視図である。
【
図7B】
図7Bは、本実施の形態で用いられ得る、本実施の形態で用いられ得る、第一ガイド部材、第二ガイド部材及びガイド屈曲部を有するガイド部材の側方図である。
【
図8】
図8は、本実施の形態によるはんだ付け装置を示した平面図であるが、カバー部材を図示しているもののガイド部材は図示していない。
【
図9】
図9は、本実施の形態による噴流はんだ装置において、上流ガイド部材が上流第一ガイド部材、上流第二ガイド部材及び上流ガイド屈曲部を有し、上流カバー部材が上流第一カバー材、上流第二カバー部材及び上流カバー屈曲部を有し、下流ガイド部材及び下流カバー部材が設けられる態様を示した側方断面図である。
【
図10】
図10は、本実施の形態による噴流はんだ装置において、上流ガイド部材及び下流ガイド部材の各々が、第一ガイド部材、第二ガイド部材及びガイド屈曲部を有し、上流カバー部材及び下流カバー部材の各々が、第一カバー材、第二カバー部材及びカバー屈曲部を有する態様を示した側方断面図である。
【
図11】
図11は、本実施の形態による噴流はんだ装置において、第一ガイド部材の溶融はんだへの着面位置と第一カバー材の先端との関係の一例を示した側方断面図である。
【
図12】
図12は、実施例1におけるガイド部材及びカバー部材の概略を示した側方断面図である。
【
図13】
図13は、実施例2におけるガイド部材及びカバー部材の概略を示した側方断面図である。
【
図14A】
図14Aは、ガイド部材及びカバー部材が設けられない比較例における溶融はんだの飛散状況を示した写真である。
【
図14B】
図14Bは、実施例1において溶融はんだが飛散していないことを示した写真である。
【
図14C】
図14Cは、実施例2において溶融はんだが飛散していないことを示した写真である。
【
図15】
図15は、本実施の形態による噴流はんだ装置において、ガイド部材が設けられておらず、上流カバー部材及び下流カバー部材の各々が設けられている態様を示した側方断面図である。
【
図16】
図16は、本実施の形態による噴流はんだ装置において、ガイド部材が設けられておらず、上流カバー部材及び下流カバー部材の各々が、第一カバー材、第二カバー部材及びカバー屈曲部を有する態様を示した側方断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
実施の形態
《構成》
図1に示すはんだ付け装置は、例えば、半導体素子、抵抗、コンデンサ等の電子部品を回路上に搭載した基板200に対して、はんだ付け処理する装置である。典型的には電子部品等は基板200の下方側に位置付けられることになる。はんだ付け装置は、本体部1と、基板200を搬送する搬送部5とを有している。本体部1は、基板200を搬入する搬入口2と、基板200を搬出する搬出口3とを有している。基板200の搬送は、側方から見て所定の角度、例えば3~6度程度の傾斜をもって行われてもよい(
図2乃至
図5、
図9及び
図10参照)。この場合、基板搬送方向Aの上流と比較して下流の方が高い位置に位置付けられることになる。但し、これに限られることはなく、基板200の搬送が例えば水平に行われるようにしてもよい。搬送部5は、基板200を搬送するための駆動力を付与する搬送駆動部(図示せず)と、基板200を案内する搬送レール6とを有してもよい。
【0020】
図1に示すように、本体部1には、基板200にフラックスを塗布するフラクサ10と、フラックスを塗布された基板200を予備加熱するプリヒータ部15と、溶融したはんだを噴流して基板200に接触させる噴流はんだ装置100と、はんだ付けされた基板200を冷却する冷却機20と、が設けられてもよい。搬送部5の搬送レール6に沿って搬送される基板200は、フラクサ10、プリヒータ部15、噴流はんだ装置100及び冷却機20を順に通過することになる。噴流はんだ装置100は、各構成要素に指令を与えて制御する制御部50と、様々な情報を記憶する記憶部60と、操作者が様々な情報を入力することではんだ付け装置を操作する操作部70と、を有してもよい。なお、
図1では、制御部50、記憶部60及び操作部70以外について、はんだ付け装置が上方平面図で示されている。
【0021】
フラクサ10は、搬送された基板200にフラックスを塗布するために用いられる。フラックスは溶剤及び活性剤等を含んでもよい。フラクサ10は、複数の塗布装置を設けてもよい。はんだの種類や基板200の品種に応じて、フラックスの種類を使い分けるようにしてもよい。
【0022】
プリヒータ部15は、基板200を加熱することで、基板200を均一に所定の温度まで上昇させる。このように基板200を加熱すると、基板200の所定の箇所にはんだが付着されやすくなる。プリヒータ部15は、例えば、遠赤外線パネルヒータが用いられる。遠赤外線パネルヒータは、基板200を設定した温度まで急速に加熱させることができる。また。ヒータによって加熱された気体(熱風)をファンによって基板200に吹き付けて、基板200を加熱するようにしてもよい。また、プリヒータ部15としては、ハロゲンヒータ等を用いてもよい。
【0023】
冷却機20は、図示しない冷却ファンを有し、噴流はんだ装置100ではんだ付け処理された基板200を冷却する。冷却ファンの制御はON及びOFFだけでもよいが、風速を調整する等するようにしてもよい。また、冷却機20としては、基板200が所定の温度となるまで冷却するようにチラー等を用いてもよい。
【0024】
図1に示す制御部50は、搬送レール6を含む搬送部5、フラクサ10、プリヒータ部15、噴流はんだ装置100、冷却機20、操作部70及び記憶部60に通信可能に接続されている。通信可能な接続には有線によるものと無線によるものの両方が含まれている。操作部70は、液晶表示パネルやテンキー等を有してもよく、典型的にはパソコン、スマートフォン、タブレット等である。作業者が操作部70を操作することで、制御部50は、搬送部5による搬送速度や基板200を搬送するタイミング、フラクサ10でのフラックスの温度、フラックスの塗布量、プリヒータ部15の温度、噴流はんだ装置100の溶融はんだSの温度や、噴流量、噴流速度、冷却機20が有する冷却ファンのONやOFF等を制御するようにしてもよい。記憶部60は、操作部70で入力された情報や、制御部50の指示、噴流はんだ装置100の稼働時間等を記憶するようにしてもよい。
【0025】
図2乃至
図5、
図9及び
図10に示すように、噴流はんだ装置100は、溶融はんだSを貯留する貯留槽110と、溶融はんだSを基板200に対して供給する供給部120,130と、を有している。本実施の形態では、供給部120,130は第一供給部120及び第二供給部130を有している。第一供給部120は、第一駆動部である第一ポンプ141を有してもよい。同様に、第二供給部130は、第二駆動部である第二ポンプ146を有してもよい。第一供給部120及び第二供給部130から噴出される溶融はんだSは下方から上方に向けて噴出される。第一ポンプ141からの駆動力を受けた溶融はんだSはダクト内を圧送されて、基板200に向かって噴出され、基板200の所定の箇所にはんだが付着することになる。同様に、第二ポンプ146からの駆動力を受けた溶融はんだSはダクト内を圧送されて、基板200に向かって噴出され、基板200の所定の箇所にはんだが付着することになる。溶融はんだSは図示しないヒータで例えば180℃~250℃程度の温度に溶融はんだSを加熱する。第一供給部120及び第二供給部130から供給された溶融はんだSは、循環されて利用されてもよい。この場合には、図示しないフィルターを通過して循環されるようにしてもよい。第一ポンプ141及び第二ポンプ146は典型的には各々1つのポンプで構成されるが、第一ポンプ141及び第二ポンプ146は各々が複数のポンプで構成されるようにしてもよい。
【0026】
図2乃至
図5、
図9及び
図10に示す噴流はんだ装置100の第一供給部120は複数の第一開口部126を有している(
図8等参照)。複数の第一開口部126は大量の溶融はんだSを勢いよく基板200に供給するために用いられる。第二供給部130の第二開口部136は第一供給部120と比較して弱い勢いで溶融はんだSを基板200に供給するために用いられる。第一供給部120から供給される噴流はんだは勢いよく溶融はんだSを基板200に衝突させる動的な供給であって、溶融はんだSを基板200の隅々まで行きわたらせるための供給である。他方、第二供給部130から供給される噴流はんだは静的な供給であり、静かな流れからなる溶融はんだS内を通過させることで、基板200の電極等にはんだを綺麗に付けるための供給である。
【0027】
図2乃至
図5、
図9及び
図10に示すように、第一供給部120は、第一筐体121と、第一筐体121の上面に設けられ、溶融はんだSを供給する1つ又は複数の第一開口部126を有している。本実施の形態では、第一開口部126は第一筐体121の上面から上方に突出したノズル形状となっている。第二供給部130は、第二筐体131と、第二筐体131の上面に設けられ、溶融はんだSを供給する1又は複数の第二開口部136を有している。第一筐体121と第二筐体131とは離間して設けられてもよいが、これらは一体となって設けられてもよい。本実施の形態では、一例として、複数のノズル127からなる第一開口部126と、1つのスリット状の第二開口部136とを用いて説明する(
図8等参照)。但し、このような態様に限られることはなく、例えばスリット状の第二開口部136は複数設けられてもよく、この場合には、平行して延在する態様で複数のスリット状の第二開口部136が設けられてもよい。また第二開口部136が複数のノズルからなってもよい。本実施の形態では、第一開口部126及び第二開口部136が、供給部120,130における溶融はんだSの供給箇所になる。
【0028】
溶融はんだSを供給している間、第一供給部120から供給される溶融はんだSと、第二供給部130から供給される溶融はんだSは混合されてもよい。このようにして混合された溶融はんだSは、第一供給部120と第二供給部130との間において、搬送部5によって搬送される基板200から離間しない構成になってもよい。基板200は搬送レール6に支えられて搬送されることになるが、混合された溶融はんだSの上面は、第一供給部120と第二供給部130との間の基板搬送方向Aに沿った全長さ領域において、側方から見た場合に基板200を搬送する搬送レール6の下端よりも下方に位置付けられないようになってもよい。この場合には、溶融はんだSが、第一供給部120と第二供給部130との間において、搬送部5によって搬送される基板200から離間しない構成となる。
【0029】
第一供給部120から供給される溶融はんだSと第二供給部130から供給される溶融はんだSは一体となり、基板200の搬送位置よりも高い位置まで噴出される態様となってもよいが、このような態様に限られることはなく、第一供給部120から供給される溶融はんだSと第二供給部130から供給される溶融はんだSとの間に、基板200に対して溶融はんだSが接触しない箇所が設けられ、溶融はんだSが明確に2段階に分けて噴出される態様となってもよい。
【0030】
溶融はんだSの温度は一般的にははんだの溶融温度+50℃程度となっている。近年、部品ダメージの低減及び機械電力消費量削減から、作業温度を下げたいというニーズが高まってきている。また、SnやAgの相場が高騰しており、これらを使わないはんだを用いることも検討されてきており、典型的にはSn-3Ag-0.5Cu(融点217℃)の代わりに、Sn-58Bi(融点139℃)が用いられることが検討されている。Sn-58Biは低温の共晶はんだである。なお、Sn-58Biを使うと、はんだ付けを200℃以下の温度で行うことができる。他方、Sn-58Biは、表面張力が小さいことから、供給部から供給された溶融はんだSが貯留槽に溜まっている溶融はんだSに落下するときに飛散する傾向が高い。この傾向は、Biを含有するはんだで見られ、特にBiを35質量%以上で含有するはんだで顕著になる。このためBiを35質量%以上で含有するはんだにおいて、本実施の形態の態様を採用することは非常に有益である。また、溶融はんだSが飛散しやすくなる傾向は、窒素雰囲気等の不活性ガス下で噴流はんだ装置100によってはんだ付けする際にも高くなることから、窒素雰囲気等の不活性ガス下においても本実施の形態の態様を採用することは非常に有益である。なお、窒素雰囲気等の不活性ガス下では、酸化物が生成されないことが要因となって、溶融はんだSが飛散しやすくなると考えられる。
【0031】
本実施の形態では、供給部120,130から供給される溶融はんだSを、貯留槽110内の溶融はんだSに案内するためのガイド部材150が設けられている。本実施の形態では、ガイド部材150は、供給部120,130の基板搬送方向Aの上流側に位置する上流ガイド部材151と、供給部120,130の基板搬送方向Aの下流側に位置する下流ガイド部材152を有しているが、これらのうちの少なくともいずれか一方が、貯留槽110内の溶融はんだSの液面に対して0度超過40度以下の角度で浸漬する態様となってもよい。ガイド部材150の貯留槽110内の溶融はんだSの液面に対する角度θ1が40度超過となる場合(例えば45度となる場合)には、供給部120,130から供給された溶融はんだSが貯留槽110に溜まっている溶融はんだSに落下するときに溶融はんだSが飛散する傾向が高くなるため、ガイド部材150の貯留槽110内の溶融はんだSの液面に対する角度θ1が40度以下となることが有益である。本実施の形態における溶融はんだSの液面の高さ位置は、典型的には、装置の設計上で想定されている液面の高さ位置である。
【0032】
図6A乃至
図7Bで示すように、ガイド部材150は複数の孔部159を有してもよい。このような孔部159を設けることで、孔部159から溶融はんだSが落下することになるが、基板200に溶融はんだを供給している間は基本的には孔部159からは溶融はんだSが落下し続けることから、孔部159を介して落下した溶融はんだSによる飛散で、基板200に溶融はんだSが付着する可能性は低い。他方、このような孔部159を設けることで、溶融はんだSをよりスムーズに貯留槽110内の溶融はんだSへの導くことができる点で有益である。
【0033】
図3乃至
図5、
図9及び
図10で示すように、少なくともガイド部材150が溶融はんだSの液面に浸漬する箇所の上方に位置するカバー部材160が設けられてもよい。ガイド部材150の貯留槽110内の溶融はんだSの液面に対する角度θ1を40度以下とした場合であっても、供給部120,130から供給された溶融はんだSが貯留槽110に溜まっている溶融はんだSに落下するときに溶融はんだSが飛散することがある。このため、本態様のようなカバー部材160を設けることで、飛散した溶融はんだSが基板200に付着することを防止できる。特に、少なくともガイド部材150が溶融はんだSの液面に浸漬する箇所の上方にカバー部材160が設けられることで、飛散した溶融はんだSが基板200に付着することを防止する効果を高めることができる。
【0034】
供給部120,130に対して、基板搬送方向Aの上流側に溶融はんだSに浸漬するガイド部材150と、カバー部材160が設けられてもよいし、基板搬送方向Aの下流側に溶融はんだSに浸漬するガイド部材150と、カバー部材160が設けられてもよいし、供給部120,130に対して、基板搬送方向Aの上流側及び下流側の両方に溶融はんだSに浸漬するガイド部材150と、カバー部材160が設けられてもよい。
図2乃至
図5では、供給部120,130に対して、溶融はんだSに浸漬する基板搬送方向Aの上流側に上流ガイド部材151が設けられる態様が示されており、
図9及び
図10では、供給部120,130に対して、溶融はんだSに浸漬する基板搬送方向Aの上流側に上流ガイド部材151が設けられ、下流側に下流ガイド部材152が設けられる態様が示されている。また、
図3乃至
図5では、カバー部材160が、基板搬送方向Aの上流側に設けられた上流カバー部材161を有し、
図9及び
図10では、カバー部材160が、基板搬送方向Aの上流側に設けられた上流カバー部材161と、基板搬送方向Aの下流側に設けられた下流カバー部材162とを有する態様を示している。
【0035】
基板200の搬送位置が、基板搬送方向Aの上流と比較して下流の方が高い位置に位置付けられる場合には、供給部120,130に対して基板搬送方向Aの上流側における溶融はんだSの飛散の方が、供給部120,130に対して基板搬送方向Aの下流側における溶融はんだSの飛散よりも問題になりやすいことから、供給部120,130に対して、基板搬送方向Aの上流側に上流ガイド部材151又は上流カバー部材161が設けられることが有益である。
【0036】
図7A及び
図7Bで示すように、ガイド部材150は、先端側に位置する第一ガイド部材150aと、基端側に位置する第二ガイド部材150bと、第一ガイド部材150aと第二ガイド部材150bとの間に設けられるガイド屈曲部150cと、を有してもよい。このような態様を採用する場合には、第二ガイド部材150bによって供給部120,130から供給された溶融はんだSが途中で止まってしまうことを防止しつつ、第一ガイド部材150aによって貯留槽110に溜まっている溶融はんだSに落下するときに溶融はんだSが飛散することを抑制することができる。なお、カバー部材160を設けずにガイド部材150を設ける場合には、ガイド部材150の角度の抑制(調整)によってはんだ飛散を抑制できる。これに対して、ガイド部材150とともにカバー部材160を設ける場合には、カバー部材160の下方領域(奥側)に溶融はんだSの落下ポイントを設定できるため、よりはんだ飛散を防止することができる。
【0037】
第一ガイド部材150aは、溶融はんだSの液面に対して0度超過40度以下の角度で浸漬してもよい。第二ガイド部材150bの溶融はんだSの液面(基本的には水平面)に対する角度θ2は、第一ガイド部材150aの溶融はんだSの液面(基本的には水平面)に対する角度θ1より大きくなるようにしてもよい。このような角度制限を設けることで、第二ガイド部材150bによって供給部120,130から供給された溶融はんだSが途中で止まってしまうことを防止しつつ、第一ガイド部材150aによって貯留槽110に溜まっている溶融はんだSに落下するときに溶融はんだSが飛散することを抑制する効果をさらに高めることができる。
【0038】
なお、第二ガイド部材150bは貯留槽110内の溶融はんだSに浸漬しないことから、第二ガイド部材150bの溶融はんだSの液面に対する角度θ2は、第二ガイド部材150bを仮想的に延在させた際における貯留槽110内の溶融はんだSの液面に対する角度になる。この角度は、基本的には、水平面に対する角度と等しくなる。
【0039】
図4、
図5及び
図9に示す態様では、上流ガイド部材151が、先端側に位置する上流第一ガイド部材151aと、基端側に位置する上流第二ガイド部材151bと、上流第一ガイド部材151aと上流第二ガイド部材151bとの間に設けられる上流ガイド屈曲部151cと、を有している。
図10に示す態様では、上流ガイド部材151が、先端側に位置する上流第一ガイド部材151aと、基端側に位置する上流第二ガイド部材151bと、上流第一ガイド部材151aと上流第二ガイド部材151bとの間に設けられる上流ガイド屈曲部151cと、を有し、かつ下流ガイド部材152が、先端側に位置する下流第一ガイド部材152aと、基端側に位置する下流第二ガイド部材152bと、下流第一ガイド部材152aと下流第二ガイド部材152bとの間に設けられる下流ガイド屈曲部152cと、を有している。
【0040】
カバー部材160は、貯留槽110の側面から供給部120,130側に向かって延在してもよい。より具体的には、上流カバー部材161が、貯留槽110の基板搬送方向Aの上流側の側面から、供給部120,130が位置する基板搬送方向Aの下流側に向かって延在して設けられてもよい。そして、上流カバー部材161の先端が、上流ガイド部材151が溶融はんだSの液面に浸漬する箇所よりも供給部120,130側(下流側)に位置してもよい。基板搬送方向Aの上流側に向かって上流ガイド部材151によって案内された溶融はんだSが液面に落下した際には、基板搬送方向Aの上流側に向かって溶融はんだSが飛散する傾向が高くなるが、貯留槽110の側面から供給部120,130側に向かって上流カバー部材161が設けられることによって、飛散した溶融はんだSが基板200に付着することを防止する効果をさらに高めることができる。同様に、下流カバー部材162が、貯留槽110の基板搬送方向Aの下流側の側面から、供給部120,130が位置する基板搬送方向Aの上流側に向かって延在して設けられてもよい。そして、下流カバー部材162の先端が、下流ガイド部材152が溶融はんだSの液面に浸漬する箇所よりも供給部120,130側(上流側)に位置してもよい。基板搬送方向Aの下流側に向かって下流ガイド部材152によって案内された溶融はんだSが液面に落下した際には、基板搬送方向Aの下流側に向かって溶融はんだSが飛散する傾向が高くなるが、貯留槽110の側面から供給部120,130側に向かって下流カバー部材162が設けられることによって、飛散した溶融はんだSが基板200に付着することを防止する効果をさらに高めることができる。
【0041】
なお、カバー部材160を設け、かつガイド屈曲部150cが設けられる態様を採用することで、第一ガイド部材150aの水平面に対する角度を緩やかなものとすることができ、第一ガイド部材150aと溶融はんだSの液面とが接触する位置をカバー部材160のより基端側(奥側)に位置付けることができる。このため、基板200に溶融はんだSが飛散することを防止する効果をさらに高めることができる。
【0042】
図5、
図9及び
図10で示すように、カバー部材160は、先端側に位置する第一カバー部材160aと、基端側に位置する第二カバー部材160bと、第一カバー部材160aと第二カバー部材160bとの間に設けられるカバー屈曲部160cと、を有してもよい。第一カバー部材160aは、第二カバー部材160bに対してカバー屈曲部160cを介して下方側に屈曲してもよい。このような態様を採用することで、ガイド部材150によって案内された溶融はんだSが溶融はんだSの液面に落下する際に飛散した溶融はんだSが基板200に付着することを防止する効果をさらに高めることができる。上流側に位置する上流カバー部材161では、上流第一カバー部材161aが基板搬送方向Aの下流側(
図5、
図9及び
図10の右側)に位置し、上流第二カバー部材161bが基板搬送方向Aの上流側(
図5、
図9及び
図10の左側)に位置することになる。他方、下流側に位置する下流カバー部材162では、下流第一カバー部材162aが基板搬送方向Aの上流側に位置し、下流第二カバー部材162bが基板搬送方向Aの下流側に位置することになる。
【0043】
図5及び
図9に示す態様では、上流カバー部材161が、先端側に位置する上流第一カバー部材161aと、基端側に位置する上流第二カバー部材161bと、上流第一カバー部材161aと上流第二カバー部材161bとの間に設けられる上流カバー屈曲部161cと、を有している。
図10に示す態様では、上流カバー部材161が、先端側に位置する上流第一カバー部材161aと、基端側に位置する上流第二カバー部材161bと、上流第一カバー部材161aと上流第二カバー部材161bとの間に設けられる上流カバー屈曲部161cと、を有し、かつ下流カバー部材162が、先端側に位置する下流第一カバー部材162aと、基端側に位置する下流第二カバー部材162bと、下流第一カバー部材162aと下流第二カバー部材162bとの間に設けられる下流カバー屈曲部162cと、を有している。
【0044】
ガイド部材150が、先端側に位置する第一ガイド部材150aと、基端側に位置する第二ガイド部材150bと、第一ガイド部材150aと第二ガイド部材150bとの間に設けられるガイド屈曲部150cと、を有する場合には、第一カバー部材160aの先端はガイド屈曲部150cよりも供給部120,130側に位置してもよい。このような態様を採用することで、第一カバー部材160aの先端と第二ガイド部材150bとの間に形成される間隙を小さくすることができ、ガイド部材150によって案内された溶融はんだSが溶融はんだSの液面に落下する際に飛散した溶融はんだSが基板200に付着することを防止する効果をさらに高めることができる。
【0045】
また、
図11で示すように、先端側に位置する第一ガイド部材150aの溶融はんだSに対する着面位置と第一カバー部材160aの先端とを結んだ仮想直線Lは、供給部120,130の側面に位置付けられるようにしてもよい。
図11では、先端側に位置する上流第一ガイド部材151aの溶融はんだSに対する着面位置と上流第一カバー部材161aの先端とを結んだ仮想直線Lが、第一供給部120の側面に当接するように位置付けられる態様が示されている。
【0046】
本実施の形態では、主として、ガイド部材150、又はガイド部材150及びカバー部材160の両方が設けられる態様を用いて説明したが、ガイド部材150及びカバー部材160のいずれか一方だけが設けられる態様を採用することもでき、
図15及び
図16で示すように、カバー部材160が設けられ、ガイド部材150が設けられない態様を採用することもできる。ガイド部材150が設けられない場合には、供給部120,130から供給される溶融はんだSが貯留槽110内の溶融はんだSに落下する際に溶融はんだSが飛散するが、カバー部材160を設けることで、当該溶融はんだSが基板200に付着することをある程度防止することができる。
【0047】
本実施の形態では、カバー部材160の先端と、溶融はんだSの供給箇所である第一開口部126及び第二開口部136とは、平面視において離間している。より具体的には、平面視において、上流カバー部材161の先端(
図3乃至
図5、
図9、
図10、
図15及び
図16の右端)は、第一開口部126と離間している(
図8のG1参照)。また平面視において、下流カバー部材162の先端(
図9、
図10、
図15及び
図16の左端)は、第二開口部136と離間している(
図8のG2参照)。
【0048】
はんだが酸化することで生成されるドロスの分離を促進するために、酸化分離剤として、米糠、ふすま、麦糠、豆類、ゴマ、ヒマワリ、ヤシ、菜種、植物油、木粉等の糖類等や、松脂、塩化アンモニューム、アミンのハロゲン化物等を溶融はんだSに提供するようにしてもよい。
【0049】
次に、基板200の処理方法の一例について、説明する。
【0050】
作業者が基板200を搬送レール6上に載せると、搬送部5が基板200を搬送し、基板200が、搬入口2から本体部1内に搬入される。基板200がフラクサ10上に到達すると、フラクサ10が、基板200の所定の箇所にフラックスを塗布する。
【0051】
搬送部5は、フラクサ10でフラックスが塗布された基板200をプリヒータ部15に搬送する。プリヒータ部15は、基板200を所定の温度まで加熱する。
【0052】
次に、搬送部5は、プリヒータ部15で所定の温度まで加熱された基板200を噴流はんだ装置100に搬送する。噴流はんだ装置100が、基板200の所定の箇所にはんだ付けを行う。噴流はんだ装置100が溶融はんだSを供給している間、第一供給部120から供給される溶融はんだSと、第二供給部130から供給される溶融はんだSは混じり合った状態となるとともに、搬送レール6よりも上方まで溶融はんだSが供給される態様となる。この際、ガイド部材150によって供給部120,130から供給された溶融はんだSが貯留槽110内の溶融はんだSへと案内されることから、供給部120,130から供給された溶融はんだSが貯留槽110内の溶融はんだSに着液する際における溶融はんだSの飛散を防止することができる。またカバー部材160が設けられることで、仮に供給部120,130から供給された溶融はんだSが貯留槽110内の溶融はんだSに着液する際に溶融はんだSが飛散しても、基板に溶融はんだSが付着することを防止することができる。
【0053】
次に、搬送部5は、はんだ付けされた基板200を冷却機20に搬送する。例えば冷却機20の冷却ファンが、はんだ付け処理された基板200を所定の時間冷却する。基板200が冷却された後、搬送部5が、基板200を搬出口3から排出すると、基板200へのはんだ付け処理が完了となる。
【実施例】
【0054】
次に、本実施の形態による効果を確認するために、本願の発明者らが行った実験結果について説明する。
【0055】
下記のはんだ付け条件で、はんだ付けを行った。
(はんだ付け条件)
はんだ付け装置:千住金属製「BITHUS-Wave MTF-300」
フラックス塗布装置:スプレーフラクサー(千住金属製「SSF-400」)
フラックス塗布量:70 mL/m2
コンベア速度(搬送部5の搬送速度):1.2 m/min
基板温度(平均温度):120℃
はんだ槽の温度:199℃
はんだの合金組成:Sn-58Bi
【0056】
実施例1として、
図12で示すような態様を採用した。基端側(供給部側)に位置する第二ガイド部材150bの溶融はんだSの液面に対する角度(水平面に対する角度)θ2を40度とし、先端側(供給部と反対側)に位置する第一ガイド部材150aの溶融はんだSの液面に対する角度(水平面に対する角度)θ1を20度とした。実施例2として、
図13で示すような態様を採用した。ガイド部材150の溶融はんだSの液面に対する角度(水平面に対する角度)θ1を40度とした。また比較例として、ガイド部材150及びカバー部材160が設けられない態様も採用した。
【0057】
前記条件ではんだ付け装置を2時間作動させた。その後、搬送レール6の上方位置に設置された部材の下面に付着した溶融はんだSの飛散の様子を確認したところ、ガイド部材150及びカバー部材160が設けられない比較例では飛散が無数に発生した(
図14A参照)。他方、実施例1及び2の態様では搬送レール6の上方位置に設置された部材の下面に付着した溶融はんだSの飛散はわずかであった(
図14B及び
図14C参照)。より具体的には、実施例1の態様では搬送レール6の上方位置に設置された部材の下面に付着した溶融はんだSの飛散をほとんど確認することはできず(
図14B参照)、実施例2の態様では搬送レール6の上方位置に設置された部材の下面にわずかな溶融はんだSの飛散を確認することができた(
図14C参照)。このため、本実施の形態の態様を採用することで、有益な効果を得られることを確認でき、特に実施例1のようにθ1<θ2とし、θ1の角度を小さくする態様を採用することで非常に有益な効果を得られることを確認できた。
【0058】
上述した各実施の形態の記載及び図面の開示は、特許請求の範囲に記載された発明を説明するための一例に過ぎず、上述した各実施の形態の記載又は図面の開示によって特許請求の範囲に記載された発明が限定されることはない。また、出願当初の請求項の記載はあくまでも一例であり、明細書、図面等の記載に基づき、請求項の記載を適宜変更することもできる。
【符号の説明】
【0059】
110 貯留槽
S 溶融はんだ
120 第一供給部
130 第二供給部
150 ガイド部材
150a 第一ガイド部材
150b 第二ガイド部材
150c ガイド屈曲部
160 カバー部材
160a 第一カバー部材
160b 第二カバー部材
160c カバー屈曲部
【要約】
【課題】溶融はんだの飛散を防止することができる噴流はんだ装置を提供する。
【解決手段】噴流はんだ装置は、溶融はんだSを貯留する貯留槽110と、溶融はんだSを供給するための供給部120,130と、前記供給部120,130から供給される前記溶融はんだSを、前記貯留槽110内の前記溶融はんだSに案内するためのガイド部材150と、を有する。前記ガイド部材150は、前記溶融はんだSの液面に対して40度以下の角度で浸漬する。
【選択図】
図2