(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】センサユニットおよびセンサユニット付電池配線モジュール
(51)【国際特許分類】
G01D 11/24 20060101AFI20240510BHJP
H01M 50/204 20210101ALI20240510BHJP
H01M 50/507 20210101ALI20240510BHJP
F16F 1/12 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G01D11/24 K
H01M50/204 401D
H01M50/507
F16F1/12 K
(21)【出願番号】P 2023523984
(86)(22)【出願日】2022-02-11
(86)【国際出願番号】 JP2022005524
(87)【国際公開番号】W WO2022249574
(87)【国際公開日】2022-12-01
【審査請求日】2023-07-24
(31)【優先権主張番号】P 2021088579
(32)【優先日】2021-05-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】395011665
【氏名又は名称】株式会社オートネットワーク技術研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000183406
【氏名又は名称】住友電装株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000002130
【氏名又は名称】住友電気工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001966
【氏名又は名称】弁理士法人笠井中根国際特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100147717
【氏名又は名称】中根 美枝
(74)【代理人】
【識別番号】100103252
【氏名又は名称】笠井 美孝
(72)【発明者】
【氏名】吉戸 大二
【審査官】榮永 雅夫
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-74327(JP,A)
【文献】国際公開第2012/137289(WO,A1)
【文献】特開2014-93163(JP,A)
【文献】国際公開第2015/122496(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01D 11/24
G01K 1/14
G01K 1/18
F16F 1/12
H01M 10/48
H01M 50/204
H01M 50/507
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状の導体と、前記導体を被覆する絶縁性フィルムと、を含んで構成された可撓性を有する帯状の導電路構成体と、
前記導電路構成体の表面に配置されて、前記導体に接続されたセンサ素子と、
前記導電路構成体の裏面に配置されて、前記導電路構成体の厚さ方向で前記センサ素子と対向する部位に、一方の面が固着された板材と、を備え、
前記板材の他方の面は、被検出体への接触面であり、
前記板材が、一枚の金属平板を板厚方向に折り曲げて二重にした形状を有しており、前記金属平板のバリ形成部位が、折り曲げ方向の内方に配置されている、
センサユニット。
【請求項2】
前記板材は、前記折り曲げ方向で相互に重ね合された第1平板部と第2平板部を有し、前記第1平板部と前記第2平板部の重ね合せ面間が熱伝導性樹脂で充填されている、請求項1に記載のセンサユニット。
【請求項3】
前記板材を前記被検出体に向かって付勢する付勢部材を備える、請求項1または請求項2に記載のセンサユニット。
【請求項4】
前記導電路構成体の前記表面上に配置されて、前記表面に向かって開口する有底筒状のアッパハウジングと、
前記アッパハウジングの軸方向に変位可能な状態で前記アッパハウジング内に装着される筒状のロアハウジングと、を備え、
前記ロアハウジングの軸方向下端側は、前記センサ素子の周囲を囲って前記導電路構成体の前記表面に固着されてセンサ素子収容部を構成し、前記ロアハウジングの軸方向上端側は、前記アッパハウジングの天壁部との対向面間で軸方向に伸縮自在な前記付勢部材を保持する付勢部材保持部を構成し、
前記ロアハウジングは、前記付勢部材の弾性変形に伴い前記天壁部側に変位可能で、前記付勢部材の弾性復帰力により前記板材側に付勢される、請求項3に記載のセンサユニット。
【請求項5】
前記ロアハウジングの前記軸方向上端側の前記付勢部材保持部は、前記軸方向下端側の前記センサ素子収容部よりも大径に構成されており、前記付勢部材保持部と前記センサ素子収容部との間に段差面が設けられており、
前記アッパハウジングは、前記ロアハウジングの外周面に対向して前記天壁部から軸方向下方に突出して径方向外方に撓み変形可能な一対の弾性係止片を有し、各前記一対の弾性係止片の下端部には、内側に向かって突出する係止突起が設けられており、
前記アッパハウジングの前記一対の弾性係止片の間に収容された前記ロアハウジングは、前記付勢部材の弾性変形により前記アッパハウジングの前記天壁部に向かって変位可能であり、前記付勢部材の弾性復帰力により前記板材側に付勢され、前記板材側の変位端が、前記ロアハウジングの前記段差面が、前記一対の弾性係止片の前記係止突起に係止することにより規定されている、請求項4に記載のセンサユニット。
【請求項6】
複数の単電池が並べて配置された単電池群に装着されるセンサユニット付電池配線モジュールであって、
前記単電池群に電気的に接続された複数のバスバーと、
前記複数のバスバーを収容する絶縁性のケースと、
前記ケースに装着されて前記複数のバスバーを覆うカバー部と、を有し、
センサユニットとして、請求項1~5のいずれか1項に記載のセンサユニットを用い、
前記ケースは、被検出体である少なくとも1つの前記単電池上に配置されるセンサユニット配置領域を含み、
前記センサユニット配置領域において、前記センサユニットが、前記板材が前記単電池に接触可能な状態で配置されている、
センサユニット付電池配線モジュール。
【請求項7】
前記センサユニットとして、請求項4または請求項5に記載のセンサユニットを用い、
前記アッパハウジングが前記単電池に向かって開口するように配向された状態で、前記センサユニット配置領域に配置され、前記アッパハウジングが前記ケースに一体化されている、請求項6に記載のセンサユニット付電池配線モジュール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、センサユニットおよびセンサユニット付電池配線モジュールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、被検出体に取り付けられるセンサユニットが開示されている。このセンサユニットでは、可撓性を有する帯状の導電路構成体の表面にセンサ素子が接続され、導電路構成体のセンサ素子が取り付けられた部分の裏面に金属製の板材の一方の面が固着されている。センサユニットは、板材を被検出体に向けて付勢する付勢部材を有しており、付勢部材の弾性復帰力により、板材の他方の面が、被検出体に押し付けられて接触状態に保持される。この構造では、金属製の板材の他方の面が、被検出体に接触する接触面を構成していることから、被検出体へ接触面を安定して接触させることができ、センサ素子の検出精度の安定化が図られる。特に、センサ素子が温度センサの場合には、熱伝導性の良好な金属製の板材に被検出体の温度が速やかに伝熱されて、被検出体の温度をより精度よく検出することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、金属製の板材は、プレス打ち抜き加工により、金属平板から所定の大きさに切り出される。それゆえ、金属製の板材の切り口(側面)には、せん断方向の終端にバリが形成される場合がある。板材のバリ形成部位(切り口のせん断方向終端)側の面を導電路構成体の裏面に接触させると、導電路構成体が破断される可能性が考えられる。また、板材のバリ形成部位側の面を被検出体に接触させると、バリにより被検出体と板材との間に隙間やガタツキが生じ、センサ素子の検出精度が低下する可能性が考えられる。それゆえ、金属製の板材に対して、別途バリ潰し加工を施す必要があり、製造の煩雑化や高コスト化が避けられなかった。
【0005】
そこで、製造工程の簡素化と製造コストの抑制を図りつつ、導電路構成体の破断や検出精度の低下を抑制できる、センサユニットおよびセンサユニット付電池配線モジュールを開示する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示のセンサユニットは、薄板状の導体と、前記導体を被覆する絶縁性フィルムと、を含んで構成された可撓性を有する帯状の導電路構成体と、前記導電路構成体の表面に配置されて、前記導体に接続されたセンサ素子と、前記導電路構成体の裏面に配置されて、前記導電路構成体の厚さ方向で前記センサ素子と対向する部位に、一方の面が固着された板材と、を備え、前記板材の他方の面は、被検出体への接触面であり、前記板材が、一枚の金属平板を板厚方向に折り曲げて二重にした形状を有しており、前記金属平板のバリ形成部位が、折り曲げ方向の内方に配置されている、センサユニットである。
【0007】
本開示のセンサユニット付電池配線モジュールは、複数の単電池が並べて配置された単電池群に装着されるセンサユニット付電池配線モジュールであって、前記単電池群に電気的に接続された複数のバスバーと、前記複数のバスバーを収容する絶縁性のケースと、前記ケースに装着されて前記複数のバスバーを覆うカバー部と、を有し、前記センサユニットとして、本開示のセンサユニットを用い、前記ケースは、被検出体である少なくとも1つの前記単電池上に配置されるセンサユニット配置領域を含み、前記センサユニット配置領域において、前記センサユニットが、前記板材が前記単電池に接触可能な状態で配置されている、センサユニット付電池配線モジュールである。
【発明の効果】
【0008】
本開示のセンサユニットおよびセンサユニット付電池配線モジュールによれば、製造工程の簡素化と製造コストの抑制を図りつつ、導電路構成体の破断や検出精度の低下を抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施形態1に係るセンサユニット付電池配線モジュールを、単電池群に装着した状態で示す全体斜視図である。
【
図2】
図2は、
図1の平面図の要部拡大である(但し、カバー部を除く)。
【
図3】
図3は、
図2におけるIII-III断面要部拡大図である。
【
図4】
図4は、
図2に示すセンサユニット付電池配線モジュールの底面図である。
【
図5】
図5は、
図1に示すセンサユニット付電池配線モジュールのセンサユニット配置領域の拡大斜視図である。
【
図6】
図6は、
図5に示すセンサユニットの分解斜視図である。
【
図7】
図7は、
図6に示すセンサユニットの分解斜視図を底面側から見た図である。
【
図8】
図8は、
図3に示すアッパハウジングの位置決め突部を底面側から見た斜視拡大図である。
【
図9】
図9は、
図8に示すアッパハウジングの底面図であって、位置決め突部と付勢部材の拡大図である。
【
図10】
図10は、実施形態2に係るセンサユニットの位置決め突部の斜視拡大図であって、
図8に相当する図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<本開示の実施形態の説明>
最初に、本開示の実施態様を列記して説明する。
本開示のセンサユニットは、
(1)薄板状の導体と、前記導体を被覆する絶縁性フィルムと、を含んで構成された可撓性を有する帯状の導電路構成体と、前記導電路構成体の表面に配置されて、前記導体に接続されたセンサ素子と、前記導電路構成体の裏面に配置されて、前記導電路構成体の厚さ方向で前記センサ素子と対向する部位に、一方の面が固着された板材と、を備え、前記板材の他方の面は、被検出体への接触面であり、前記板材が、一枚の金属平板を板厚方向に折り曲げて二重にした形状を有しており、前記金属平板のバリ形成部位が、折り曲げ方向の内方に配置されている、センサユニットである。
【0011】
この構造によれば、導電路構成体の裏面に固着される金属製の板材が、一枚の金属平板を板厚方向に折り曲げて二重にした形状を有しており、金属平板のバリ形成部位が、折り曲げ方向の内方に配置されている。すなわち、一枚の金属板材は、その切り口(側面)のせん断方向の終端にバリが形成される場合がある。本発明者は、バリの形成部位が、板材の切り口(側面)の一方の端縁部に限定されている点に着目し、バリ形成部位が折り曲げ方向の内方となるように、一枚の金属平板を板厚方向に折り曲げて二重にした形状を有する板材を採用することを想起して、本開示の構造を完成するに至った。このような板材を採用することにより、仮に板材がバリを有していても、バリは折り曲げ方向の内方に配置されており、導電路構成体の裏面へ固着される一方の面側や、被検出体への接触面である他方の面側に、バリが配置されることが回避されている。その結果、金属製の板材を採用しても、バリが導電路構成体に接触して導電路構成体が破断される可能性や、バリにより被検出体と板材との間に隙間やガタツキが生じてセンサ素子の検出精度が低下する可能性が、抑制されている。しかも、従来の板材には必要であった、バリ潰し加工を必要としないことから、製造工程の簡素化と製造コストの抑制を図ることができる。
【0012】
(2)前記板材は、前記折り曲げ方向で相互に重ね合された第1平板部と第2平板部を有し、前記第1平板部と前記第2平板部の重ね合せ面間が熱伝導性樹脂で充填されている、ことが好ましい。板材において、折り曲げ方向で相互に重ね合された第1平板部と第2平板部の重ね合せ面間が熱伝導性樹脂で充填されている。これにより、仮に第1平板部と第2平板部の間に隙間が生じても、空気層よりも熱伝導性の高い熱伝導性樹脂を介して第1平板部と第2平板部間の伝熱性の低下を抑制することができる。
【0013】
(3)前記板材を前記被検出体に向かって付勢する付勢部材を備える、ことが好ましい。付勢部材により、板材が被検出体に向かって付勢されていることから、板材の接触面を被検出体に安定して接触した状態に保持することができ、センサ素子による検出精度を安定して維持することができる。
【0014】
(4)前記導電路構成体の前記表面上に配置されて、前記表面に向かって開口する有底筒状のアッパハウジングと、前記アッパハウジングの軸方向に変位可能な状態で前記アッパハウジング内に装着される筒状のロアハウジングと、を備え、前記ロアハウジングの軸方向下端側は、前記センサ素子の周囲を囲って前記導電路構成体の前記表面に固着されてセンサ素子収容部を構成し、前記ロアハウジングの軸方向上端側は、前記アッパハウジングの天壁部との対向面間で軸方向に伸縮自在な前記付勢部材を保持する付勢部材保持部を構成し、前記ロアハウジングは、前記付勢部材の弾性変形に伴い前記天壁部側に変位可能で、前記付勢部材の弾性復帰力により前記板材側に付勢される、ことが好ましい。
【0015】
センサユニットは、導電路構成体の表面に向かって開口するアッパハウジングと、アッパハウジングの開口側からアッパハウジングの内部に挿入されて、アッパハウジングの軸方向に変位可能なロアハウジングを、さらに備えている。ロアハウジングは、軸方向下端側に、センサ素子の周囲を囲って導電路構成体の表面に固着されるセンサ素子収容部を有していることから、センサ素子の他部材との干渉等から保護することができる。また、アッパハウジングとロアハウジングの間に付勢部材を配置して、付勢部材の弾性復帰力によりロアハウジングを導電路構成体の裏面に設けられた板材側に付勢することができる。それゆえ、例えば、センサユニットを被検出体の上方に配置することにより、板材の接触面を付勢部材の弾性復帰力により被検出体に安定して押し付けることができる。その結果、押し付けた状態に保持することができる。その結果、同心状に配置されたアッパハウジングロアハウジングを利用したコンパクトな構造で、センサ素子の安定した検出を実現できるセンサユニットを提供することができる。
【0016】
(5)前記ロアハウジングの前記軸方向上端側の前記付勢部材保持部は、前記軸方向下端側の前記センサ素子収容部よりも大径に構成されており、前記付勢部材保持部と前記センサ素子収容部との間に段差面が設けられており、前記アッパハウジングは、前記ロアハウジングの外周面に対向して前記天壁部から軸方向下方に突出して径方向外方に撓み変形可能な一対の弾性係止片を有し、各前記一対の弾性係止片の下端部には、内側に向かって突出する係止突起が設けられており、前記アッパハウジングの前記一対の弾性係止片の間に収容された前記ロアハウジングは、前記付勢部材の弾性変形により前記アッパハウジングの前記天壁部に向かって変位可能であり、前記付勢部材の弾性復帰力により前記板材側に付勢され、前記板材側の変位端が、前記ロアハウジングの前記段差面が、前記一対の弾性係止片の前記係止突起に係止することにより規定されている、ことが好ましい。
【0017】
ロアハウジングの軸方向上方側(付勢部材保持部)を軸方向下方側(センサ素子収容部)よりも大径にすることで、ロアハウジングの全周に延びる段差面を構成することができる。そして、アッパハウジングに、ロアハウジングを保持する一対の弾性係止片を天壁部から突出させるだけで、アッパハウジングにロアハウジングを軸方向自在に組み付ける構成が容易に構築できる。一対の弾性係止片の係止突起間の径方向寸法をロアハウジングの付勢部材保持部の径寸法よりも小径にすることで、一対の弾性係止片の係止突起を段差面に係止する構成を簡単に設けることができる。一対の弾性係止片は径方向外方に撓み変形可能であるため、一対の弾性係止片の下端側(係止突起側)からロアハウジングの付勢部材保持部を挿入すると、一対の弾性係止片の径方向外方への撓み変形によりロアハウジングの付勢部材保持部のアッパハウジングの天壁部側への挿入が許容される。その後、ロアハウジングの外周面に摺接する係合突起がロアハウジングの段差面を越えると一対の弾性係止片が径方向内方へ弾性復帰して、ロアハウジングの段差面に係止突起が係止する。これにより、ロアハウジングの板材側への変位端が規定され、ロアハウジングがアッパハウジングに対して軸方向で変位可能な状態で装着されて保持される。このような構造を採用することにより、被検出体に対して板材の接触面を安定して押圧して保持できるセンサユニットを提供できる。
【0018】
(6)本開示のセンサユニット付電池配線モジュールは、複数の単電池が並べて配置された単電池群に装着されるセンサユニット付電池配線モジュールであって、前記単電池群に電気的に接続された複数のバスバーと、前記複数のバスバーを収容する絶縁性のケースと、前記ケースに装着されて前記複数のバスバーを覆うカバー部と、を有し、センサユニットとして、上記(1)から上記(5)のいずれか1つのセンサユニットを用い、前記ケースは、被検出体である少なくとも1つの前記単電池上に配置されるセンサユニット配置領域を含み、前記センサユニット配置領域において、前記センサユニットが、前記板材が前記単電池に接触可能な状態で配置されている、センサユニット付電池配線モジュールである。
【0019】
この構造によれば、被検出体である単電池群に装着される電池配線モジュールが、センサユニットを備えたセンサユニット付電池配線モジュールとして構成されている。そして、電池配線モジュールのケースは、被検出体である単電池上に配置されるセンサユニット配置領域を含み、そこにおいて、センサユニットの板材が単電池に接触可能な状態で、センサユニットが配置されている。これにより、センサユニット付電池配線モジュールを単電池群の上方から組み付けるだけで、センサユニットの板材の接触面を被検出体である単電池に接触させることができる。しかも、センサユニットの板材は、金属平板が二重に折り曲げられてバリ形成部位が折り曲げ方向の内方に配置されたものを用いていることから、製造工程の簡素化と製造コストの抑制を図りつつ、導電路構成体の破断や検出精度の低下を抑制できる。
【0020】
(7)前記センサユニットとして、上記(4)または上記(5)に記載のセンサユニットを用い、前記アッパハウジングが前記単電池に向かって開口するように配向された状態で、前記センサユニット配置領域に配置され、前記アッパハウジングが前記ケースに一体化されている、ことが好ましい。アッパハウジングが単電池に向かって開口するように配向された状態で、センサユニット配置領域に配置することで、アッパハウジング,ロアハウジングおよび付勢部材を用いた付勢構造を利用した安定した板材の単電池への付勢を実現できる。しかも、アッパハウジングはケースに一体化されているので、センサユニット付配線モジュールの取扱性の向上や部品点数の削減が図られる。その結果、センサユニット付配線モジュールの電池パックへの組み付け作業性が向上し得る。
【0021】
<本開示の実施形態の詳細>
本開示のセンサユニットおよびセンサユニット付電池配線モジュールの具体例を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示は、これらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味および範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。
【0022】
<実施形態1>
以下、本開示の実施形態1のセンサユニット10を備えたセンサユニット付電池配線モジュール12について、
図1から
図9を用いて説明する。センサユニット付電池配線モジュール12は、複数の単電池14が並べて配置された単電池群16に装着される。なお、センサユニット付電池配線モジュール12は、任意の向きで配置することができるが、以下では、上下方向,左右方向,前後方向を、図中に示す上下方向,左右方向および前後方向を基準として説明する。また、複数の同一部材については、一部の部材にのみ符号を付し、他の部材については符号を省略する場合がある。
【0023】
<単電池群16>
単電池群16は、一列に配列された複数の単電池14を備える。なお、
図1においては、12個の単電池14を備える単電池群16が例示されているが、単電池群16が備える単電池14の個数はこれに限らない。また、単電池群16は、一列に配列された複数の単電池14を複数列分備える場合もある。
【0024】
複数の単電池14は、電池ケース18内において、一定方向に沿って配列される。より詳細には、単電池14は、電極端子20を構成する一対の正電極端子20aおよび負電極端子20bが突設された電極形成面を有する。以下では、当該電極形成面を単電池14の上面と呼ぶことがある。複数の単電池14は、電池ケース18内において、その電極形成面を上に向けて配列される。さらに、複数の単電池14は、1個毎に、隣接する単電池14の正電極端子20aと負電極端子20bとが交互に位置するように配列される。
【0025】
隣接する単電池14の間には樹脂等により形成された図示しないセパレータが配置され、複数の単電池14は、電池ケース18内に配列された状態において、互いの側面が密着しないように微小な隙間をおいて配列される。隣接する単電池14の間に微小な隙間が形成されることによって、各単電池14の放熱性を最低限確保することができる。
【0026】
当該単電池14を並列に接続するために単電池群16には、センサユニット付電池配線モジュール12が装着されている。センサユニット付電池配線モジュール12は、各端子列20cに取付けられる。
【0027】
<センサユニット付電池配線モジュール12>
図1に示すように、本開示の実施形態1のセンサユニット付電池配線モジュール12は、一列に並べられた複数の単電池14における1個毎に隣接する単電池14を電気的に接続する複数のバスバー22を有している。また、センサユニット付電池配線モジュール12は、複数のバスバー22を収容するバスバー用収容枠部24を有する絶縁性のケース26と、ケース26に装着されて複数のバスバー22を覆うカバー部28と、センサユニット10と、を有している。
【0028】
<バスバー22>
バスバー22は、最も後方側の単電池14の負電極端子20bと最も前方側の単電池14の正電極端子20aを電気的に接続する。また、バスバー22は、隣接する正電極端子20aと負電極端子20bを電気的に接続する。これにより、複数の単電池14が直列に接続されている。
【0029】
各バスバー22は、導電体、例えば、銅製の板部材であり、中央部に貫通孔30を備えている。各貫通孔30に図示しないボルトを挿通してボルト締結することにより、各バスバー22と正電極端子20aおよび/または負電極端子20bを固定して電気的に接続可能としている。
【0030】
<ケース26>
ケース26は、例えば、絶縁性を有する合成樹脂製の板部材であり、幅方向(左右方向)の両側に単電池群16の正電極端子20aと負電極端子20bがそれぞれ挿入される複数の穴を備えている。ケース26は、単電池群16の正電極端子20aあるいは負電極端子20bが突設された面に対応する大きさに形成されている。ケース26のバスバー用収容枠部24は、断面がU字状の溝であり、バスバー22が溝に収容され底面に載置されている。
【0031】
また、ケース26のバスバー用収容枠部24の幅方向(左右方向)内方には、導電路構成体32を配索する導電路構成体配索用通路34が設けられている(
図4参照)。導電路構成体配索用通路34は、例えば、長手方向に向かって延びる筒形状を有しており、内部に導電路構成体32が配索されるようになっている。加えて、ケース26は、被検出体である1つの単電池14(本実施形態では、最前列の単電池14)上に配置されるセンサユニット配置領域Aを含んでいる(
図2,4参照)。
【0032】
<カバー部28>
カバー部28は、絶縁性を有する合成樹脂製の平板状の部材である。カバー部28の外周縁部には、下方に向かって延びる複数の係合部36が形成されており、対応するケース26側に設けられた被係合部38と係合することによりカバー部28がケース26に対して固定的に取り付けられている(
図1参照)。
【0033】
<センサユニット10>
センサユニット10は、被検出体である1つの単電池14に対して上方から設置するものである。センサユニット10は、帯状の可撓性を有する導電路構成体32と、導電路構成体32の端部に接続されるセンサ素子40と、導電路構成体32に取り付けられる板材42と、を備えている。
【0034】
<導電路構成体32>
導電路構成体32は、
図3および
図6に示すように、例えば銅箔からなる一対の薄板状の導体44,44を、一対の導体44,44よりも幅広な帯状の絶縁性フィルム46で被覆して形成されている。したがって、導電路構成体32は、被覆電線に比べて柔軟性が高く非常に省スペースな構成となっている。導電路構成体32の端部における上面である表面48には、一対の導体44,44が露出した一対の接続部50,50が形成されている。一対の接続部50,50は、絶縁性フィルム46を除去することにより形成されている。導電路構成体32は、他方の端部において単電池群16を制御する図示しない制御ユニットに接続されている。
【0035】
<センサ素子40>
センサ素子40は、
図3および
図6に示すように、略方形状をなすセンサ本体40aを有している。センサ本体40aの両端部には、一対の半田付け部40b,40bが設けられている。一対の半田付け部40b,40bは、導電路構成体32の端部に設けられた一対の接続部50,50に半田などで接続されることにより、一対の導体44,44に電気的に接続されている。したがって、導電路構成体32の表面48上に配置されたセンサ素子40からの検出信号が導電路構成体32の一対の導体44,44を通じて制御ユニットに入力されるようになっている。なお、センサ素子40としては、温度センサや圧力センサ等の任意のセンサが採用可能である。本実施形態では、センサ素子40は温度センサによって構成されているが、これに限定されない。
【0036】
<板材42>
板材42は、
図3に示すように、平坦度の高い平板状に形成されている。板材42は、導電路構成体32の裏面52に配置されており、導電路構成体32の厚さ方向でセンサ素子40と対向する部位に一方の面である上面が接着や圧着により固着されている。板材42は、アルミニウム、アルミニウム合金あるいは銅、銅合金などの伝熱性に優れた金属板材により構成されている。板材42の他方の面である下面は、被検出体である1つの単電池14への接触面である。板材42は、一枚の金属平板54を板厚方向に折り曲げて二重にした形状を有しており、折り曲げ方向で相互に重ね合された第1平板部54aと第2平板部54bを有している。折り曲げ部分は平坦度がやや劣ることから、折り曲げ部分を除く部分で導電路構成体32と固着されている。一枚の金属平板54は、その切り口(側面)のせん断方向の終端にバリが形成される場合がある。すなわち、バリの形成部位は、板材の切り口(側面)の一方の端部に限定されている。そこで、バリ形成部位が折り曲げ方向の内方となるように配置したのである。さらに、第1平板部54aと第2平板部54bの重ね合せ面間を熱伝導性樹脂55で充填している。
【0037】
これにより、仮に第1平板部54aと第2平板部54bの間に隙間が生じても、空気層よりも熱伝導性の高い熱伝導性樹脂55を介して第1平板部54aと第2平板部54b間の伝熱性の低下を抑制することができる。なお、第1平板部54aと第2平板部54bの重ね合わせ面を相互に密着するようにしてもよく、熱伝導性樹脂55は必ずしも設ける必要はない。ここで、熱伝導性樹脂55として具体的には、シリコーン系の樹脂や非シリコーン系のアクリル系樹脂やセラミック系樹脂等が利用できる。より詳細には、例えば、シリコーン系の樹脂からなる、放熱ギャップフィラーや熱伝導グリースや熱伝導性シリコーンゴム等が挙げられる。また、熱伝導性樹脂55がシート状に形成されて柔軟性および弾性を有し、上下方向に加えられる力に応じて厚さ寸法が変化するように弾性変形可能であってもよい。
【0038】
図2から
図3および
図5から
図7に示すように、センサユニット10は、下方に向かって開口する有底筒状のアッパハウジング56と、上下両方向に開口する筒状のロアハウジング58と、を備えている。センサユニット10は、センサユニット付電池配線モジュール12のセンサユニット配置領域Aに配置されている。センサユニット10は、センサユニット配置領域Aにおいて、アッパハウジング56が単電池14に向かって開口するように配向された状態とされており、アッパハウジング56はセンサユニット付電池配線モジュール12のケース26に一体化されて形成されている。
【0039】
<アッパハウジング56>
アッパハウジング56は、
図3に示すように、導電路構成体32の表面48上に配置されており、表面48に向かって開口している。また、アッパハウジング56は、ロアハウジング58の外周面に対向して天壁部60から軸方向下方に突出して径方向(
図3中、左右方向)外方に撓み変形可能な一対の弾性係止片62,62を有している。各一対の弾性係止片62の下端部には、内側に向かって突出する角筒状の略三角断面形状の係止突起64が設けられている。さらに、
図3,
図5,
図7に示すように、アッパハウジング56の天壁部60の周囲から導電路構成体32の表面48に向かって突出する周壁部66が、付勢部材80を軸方向の全長に亘って囲っている(
図3,
図7参照)。加えて、周壁部66において、短手方向(
図7中、左右方向)に対向する周壁対向面66a,66bには、相手側に向かって突出し軸方向(上下方向)に延びる一対のガイド突条68,68が前後方向に離隔して設けられている。
【0040】
図3に示すように、アッパハウジング56には、天壁部60の中央部から軸方向下方すなわちロアハウジング58に向かってテーパ筒状で突出して後述する付勢部材80の軸方向の他端部(下端部)に内挿される位置決め突部70を有している。
【0041】
<位置決め突部70>
位置決め突部70は、
図3および
図8,
図9に示すように、基端部において外周面に開口して内周側に凹んでいる一対の収容凹所72,72を有している。収容凹所72は位置決め突部70の外周面に開口しており、周方向に離隔した2か所に設けられている。位置決め突部70の外周面には、後述する係合突起88を位置決め突部70の周方向に位置決めして収容凹所72に向かって位置決め突部70の軸方向に延びる案内凹部74が設けられている。各案内凹部74は、位置決め突部70の外周面に開口して基端部に向かって延びており、位置決め突部70の外周面において周方向で相互に離隔した2か所に均等配置されている。収容凹所72は、それぞれの案内凹部74に連接して位置決め突部70の外周面に開口している。位置決め突部70は、周方向の2か所に相互に離隔して設けられた外周面に凸となる2つの円弧状外周面76を有しており、位置決め突部70の周方向で隣接する案内凹部74間が、それらの間に配置された各円弧状外周面76を介して周方向で連接されている。各案内凹部74は、後述する係合突起88の近位部88aと遠位部88cがそれぞれ当接する相互に直交して広がる第1の案内面74aと第2の案内面74bを有している。第1の案内面74aは、位置決め突部70の軸方向である上下方向とそれに直交する方向に延びる平坦面とされている。第2の案内面74bは、第1の案内面74aに直交して基端部に向かって、軸直方向外方に向かって凸となる突状湾曲面形状を有して延びている。すなわち、後述する付勢部材80の半径方向で広がり且つ基端部に向かって延びている。
【0042】
<ロアハウジング58>
ロアハウジング58は、
図3に示すように、アッパハウジング56の軸方向に変位可能な状態でアッパハウジング56内に装着されている。より詳細には、ロアハウジング58の軸方向下端側は、中空筒状でセンサ素子40の周囲を囲って、その下端面が導電路構成体32の表面48に接着剤等を用いて固着されてセンサ素子収容部77を構成している。センサ素子収容部77の内壁には、内側に向かって突出する一対の抜止突起78,78が設けられている(
図7参照)。センサ素子収容部77内には、センサ素子40を水や塵埃などから保護するための封止材79が注入され、封止材79が硬化することで、封止材79は、センサ素子40を覆いつつ、一対の抜止突起78によって抜け止めされるようになっている。ロアハウジング58の軸方向上端側は、アッパハウジング56の天壁部60との対向面間で軸方向に伸縮自在な付勢部材80を保持する付勢部材保持部としての支持部82を構成している。すなわち、支持部82は、付勢部材80の軸方向の一端部を支持している。付勢部材80は、SUSなどの金属線材を螺旋状に巻回した金属製のコイルばねとされている。この結果、ロアハウジング58は、付勢部材80の軸方向に収縮する弾性変形に伴い天壁部60の位置決め突部70に向かって変位可能となっており、付勢部材80の弾性復帰力により板材42側すなわち単電池14に向かって付勢されるようになっている。すなわち、付勢部材80は、被検出体である単電池14に向けてロアハウジング58を付勢している。また、ロアハウジング58は、付勢部材80の軸方向で、付勢部材80を間に挟んでアッパハウジング56に組み付けられている。
【0043】
ロアハウジング58の軸方向上端側の支持部82は、軸方向下端側のセンサ素子収容部77よりも大径に構成されており、支持部82とセンサ素子収容部77との間に段差面84が設けられている。支持部82は、周壁86において左右方向に対向する部分が上下方向の全長に亘って切欠かれている。
【0044】
<付勢部材80>
付勢部材80の他端部である上端部は、
図3,
図6および
図9に示すように、付勢部材80の素線の端末を付勢部材80の内周側に突出して付勢部材80の軸方向内方に撓み変形可能に構成した係合突起88を有している。係合突起88は、付勢部材80の内周側に向かって延びる近位部88aと、近位部88aに連接する湾曲部88bと、湾曲部88bに連接して湾曲部88bよりも付勢部材80の外周側に向かって延びる遠位部88cとを有している。係合突起88の近位部88aと遠位部88cが、相互に直交する付勢部材80の半径方向にそれぞれ延びており、付勢部材80の内周面において、中心角:αが90°以下の円弧状部90から平面視でL字形状に突出している。
【0045】
<センサユニット付電池配線モジュール12の組立方法>
本開示の実施形態1のセンサユニット付電池配線モジュール12の組立方法の概略について説明する。はじめに、導電路構成体32の端部の表面48に設けられた一対の接続部50,50にセンサ素子40を半田付けする。その後、導電路構成体32の一方の端部の裏面52におけるセンサ素子40と対向する部位に板材42を固着する。その後、導電路構成体32の端部の表面48のセンサ素子40の周囲にロアハウジング58を固着し、センサ素子収容部77内に封止材79を注入し硬化する。続いて、ケース26の表面側に設けられた導電路構成体配索用通路34に導電路構成体32を配置する。導電路構成体32の他方の端部をコネクタ94に接続し、コネクタ94を導電路構成体配索用通路34の後端部に取り付ける。次に、センサユニット配置領域Aに設けられたアッパハウジング56の位置決め突部70の軸に対して付勢部材80の軸を合わせるように位置決めした状態で、付勢部材80を位置決め突部70側に押し込む。この際、付勢部材80の係合突起88の近位部88aと遠位部88cがそれぞれ位置決め突部70の案内凹部74の第1の案内面74aと第2の案内面74bに係合することで、位置決め突部70の周方向で係合突起88や付勢部材80が位置合わせされる。これにより、付勢部材80の係合突起88が付勢部材80の軸方向内方へ撓み変形されて、位置決め突部70に対する付勢部材80の内挿が許容される。そして、付勢部材80の係合突起88が案内凹部74に案内されて収容凹所72に到達する。この結果、係合突起88が弾性復帰して収容凹所72に収容されて係止され、付勢部材80が位置決め突部70に保持される。
【0046】
続いて、導電路構成体32の一方の端部をケース26に設けられた開口穴92(
図4参照)およびスリット96を通してケース26の裏面側に移動させる。その後、ロアハウジング58の支持部82をケース26の表面に開口するアッパハウジング56の一対の弾性係止片62,62の間に挿入する。これにより、一対の弾性係止片62,62が径方向外方に弾性変形し、支持部82の挿入を許容する。支持部82の挿入後は、一対の弾性係止片62,62が弾性復帰して、ロアハウジング58の段差面84が一対の弾性係止片62,62の係止突起64に係止する。すなわち、板材42側の変位端が、ロアハウジング58の段差面84が一対の弾性係止片62,62の係止突起64に係止することにより規定されている。
【0047】
次に、このように構成されたケース26を単電池群16に対して組み付ける。この結果、
図3に示すように、板材42が単電池14の表面に当接してロアハウジング58が上方側に押されることにより、付勢部材80によってロアハウジング58が下方側に向かって付勢される。すなわち、センサユニット配置領域Aにおいて、センサユニット10が、板材42が単電池14に接触可能な状態で配置され、付勢部材80により単電池14に押圧されている。すなわち、センサユニット10が、板材42を被検出体である単電池14に向かって付勢する付勢部材80を備えている。最後に、ケース26に対してバスバー22やカバー部28が取り付けられて、センサユニット付電池配線モジュール12が完成する。
【0048】
このような構造とされた本開示のセンサユニット10によれば、導電路構成体32の裏面52に固着される金属製の板材42が、一枚の金属平板54を板厚方向に折り曲げて二重にした形状を有している。これにより、バリ形成部位が折り曲げ方向の内方となるように配置されている。すなわち、本発明者等は、バリの形成部位が一枚の金属平板54の切り口(側面)の一方の端部に限定されている点に着目し、バリ形成部位が折り曲げ方向の内方となるように、一枚の金属平板54を板厚方向に折り曲げて二重にした形状を有する板材42を採用した。これにより、仮に板材42を構成する金属平板54がバリを有していても、バリは折り曲げ方向の内方に配置されている。それゆえ、導電路構成体32の裏面52へ固着される板材42の一方の面側や、被検出体である単電池14への接触面である板材42の他方の面側に、バリが配置されることが回避されている。したがって、金属製の板材42を採用した場合であっても、バリが導電路構成体32に接触して導電路構成体32が破断されることや、バリによって被検出体である単電池14と板材42との間に隙間やガタツキが生じてセンサ素子40の検出精度が低下することが、抑制されている。しかも、従来の板材には必要であった、バリ潰し加工を必要としないことから、製造工程の簡素化と製造コストの抑制を図ることができる。特に本実施形態では、センサ素子40が温度センサであることから、板材42の集熱効果を利用して、センサ素子40の検出安定化等を図ることもできる。
【0049】
センサユニット10は、導電路構成体32の表面48に向かって開口するアッパハウジング56と、アッパハウジング56の開口側からアッパハウジング56の内部に挿入されて、アッパハウジング56の軸方向に変位可能なロアハウジング58を、さらに備えている。ロアハウジング58の軸方向下端側は、センサ素子40の周囲を囲って導電路構成体32の表面48に固着されるセンサ素子収容部77とされていることから、センサ素子40の他部材との干渉等から保護することができる。また、アッパハウジング56とロアハウジング58の間に付勢部材80を配置することにより、ロアハウジング58を導電路構成体32の裏面52に設けられた板材42側に付勢することができる。それゆえ、例えば、センサユニット10を被検出体である単電池14の上方に配置することにより、板材42を単電池14との接触面に付勢部材80の弾性復帰力により単電池14に安定して押し付けた状態に保持することができる。その結果、同軸上に配置されたアッパハウジング56とロアハウジング58を利用したコンパクトな構造で、センサ素子40の安定した検出を実現できるセンサユニット10を提供することができる。
【0050】
ロアハウジング58の軸方向上端側の支持部82を軸方向下端側のセンサ素子収容部77よりも大径にすることにより、ロアハウジング58の段差面84を全周にわたって構成することができる。そして、ロアハウジング58を保持する一対の弾性係止片62,62をアッパハウジング56の天壁部60から突出させるだけで、アッパハウジング56にロアハウジング58を軸方向自在に組み付ける構成が容易に構築できる。より詳細には、一対の弾性係止片62,62の係止突起64間の径方向寸法が、ロアハウジング58の支持部82の径寸法よりも小径とされている。これにより、一対の弾性係止片62,62の下端側(係止突起64側)からロアハウジング58の支持部82を挿入する際、一対の弾性係止片62,62の径方向外方への撓み変形により支持部82のアッパハウジング56の天壁部60側への挿入が許容される。その後、ロアハウジング58の外周面に摺接する係止突起64がロアハウジング58の段差面84を越えると、一対の弾性係止片62,62が径方向内方へ弾性復帰してロアハウジング58の段差面84に係止突起64が係止する。これにより、ロアハウジング58の板材42側への変位端が規定されており、ロアハウジング58がアッパハウジング56の天壁部60側への軸方向で変位可能な状態で装着されて保持される。このような構造を採用することにより、被検出体である単電池14に対して板材42の接触面を安定して押圧して保持できるセンサユニット10を提供できる。
【0051】
被検出体である単電池群16に装着される電池配線モジュールが、センサユニット10を備えたセンサユニット付電池配線モジュール12として構成されている。センサユニット付電池配線モジュール12のケース26は、被検出体である単電池14上に配置されるセンサユニット配置領域Aを含んでいる。センサユニット配置領域Aにおいて、センサユニット10の板材42が単電池14に接触可能な状態で、センサユニット10が配置されている。これにより、センサユニット付電池配線モジュール12を単電池群16の上方から組み付けるだけで、センサユニット10の板材42の接触面を被検出体である単電池14に接触させることができる。しかも、センサユニット10の板材42は、金属平板54が二重に折り曲げられてバリ形成部位が折り曲げ方向の内方に配置されたものを用いている。それゆえ、製造工程の簡素化と製造コストの抑制を図りつつ、導電路構成体32の破断やセンサ素子40の検出精度の低下を抑制できる。
【0052】
アッパハウジング56が単電池14に向かって開口するように配向された状態で、センサユニット配置領域Aに配置されている。これにより、アッパハウジング56,ロアハウジング58および付勢部材80を用いた付勢構造を利用して安定した板材42の単電池14への付勢を実現できる。しかも、アッパハウジング56はケース26に一体化されていることから、センサユニット付電池配線モジュール12の取扱性の向上や部品点数の削減が図られている。それゆえ、センサユニット付電池配線モジュール12の単電池群16への組み付け作業性が向上し得る。
【0053】
<他の実施形態>
本明細書に記載された技術は上記記述および図面によって説明した実施形態に限定されるものではなく、例えば次のような実施形態も本明細書に記載された技術の技術的範囲に含まれる。
【0054】
(1)上記実施形態1では、付勢部材80の係合突起88が、中心角:αが90°以下の円弧状部90から平面視でL字形状に突出しており、位置決め突部70の案内凹部74が、周方向で相互に離隔した2か所に均等配置されていたが、これに限定されない。
図10および
図11に示す本開示の実施形態2の位置決め突部98のように、係合突起101の近位部101aと遠位部101cが、付勢部材80の半径方向に対して傾斜して延びており、付勢部材80の内周面において、中心角が90°以下の円弧状部90から平面視でV字形状に突出していてもよい。実施形態1と同様、係合突起101も、付勢部材80の内周側に向かって延びる近位部101aと、近位部101aに連接する湾曲部101bと、湾曲部101bに連接して湾曲部101bよりも付勢部材80の外周側に向かって延びる遠位部101cとを有している。具体的には、位置決め突部98の外周面には、基端部に向かって次第に拡幅して延びる平坦面状の案内面100が、位置決め突部98の外周面において、周方向で相互に離隔した4か所に均等配置されている。位置決め突部98の基端部には、案内面100に対応した周方向の4か所に、それぞれ案内面100に連接して開口する4つの係止凹所102がそれぞれ設けられている。さらに、位置決め突部98が、周方向の4か所に相互に離隔して設けられた外周面に凸となる4つの円弧状外周面104を有しており、位置決め突部98の周方向で隣接する案内面100間が、それらの間に配置された各円弧状外周面104を介して連接されている。
【0055】
位置決め突部98の周方向で離隔した4か所に案内面100を設けることが可能となるため、位置決め突部98への付勢部材80の組み付け可能な方向が多く、組付作業性の向上を図ることができる。また、位置決め突部98に設けられた4つの平坦面状の案内面100の周方向間に、それぞれ円弧状外周面104が配置されている。それゆえ、係合突起101の周方向位置が案内面からずれている場合でも、円弧状外周面104に当接した係合突起88が案内面100側に案内され、係合突起88の係合突起101を正規の周方向位置に有利に案内して、係止凹所102に確実に係止することができる。
【0056】
(2)上記実施形態1,2では、付勢部材80として金属線材を螺旋状に巻回した金属製のコイルばねを例示して説明を行ったが、これに限定されない。付勢部材80は、板材42を被検出体に向かって付勢し得るものであればいずれも採用可能であり、合成樹脂製であってもよいし、板ばねのようなものであってもよい。あるいは、付勢部材80は、特許文献1の付勢部材のようなものであってもよい。
【0057】
(3)上記実施形態1,2では、付勢部材80を備えた場合を例示して説明を行ったが、これに限定されない。付勢部材80は、無くてもよい。例えば、センサユニット付配線モジュールを単電池群16に組み付けることにより、センサユニットの板材42が被検出体に圧接されるものも含まれる。
【符号の説明】
【0058】
10 センサユニット(実施形態1)
12 センサユニット付電池配線モジュール
14 単電池(被検出体)
16 単電池群
18 電池ケース
20 電極端子
20a 正電極端子
20b 負電極端子
20c 端子列
22 バスバー
24 バスバー用収容枠部
26 ケース
28 カバー部
30 貫通孔
32 導電路構成体
34 導電路構成体配索用通路
36 係合部
38 被係合部
40 センサ素子
40a センサ本体
40b 半田付け部
42 板材
44 導体
46 絶縁性フィルム
48 表面
50 接続部
52 裏面
54 金属平板
54a 第1平板部
54b 第2平板部
55 熱伝導性樹脂
56 アッパハウジング
58 ロアハウジング
60 天壁部
62 弾性係止片
64 係止突起
66 周壁部
66a 周壁対向面
66b 周壁対向面
68 ガイド突条
70 位置決め突部
72 収容凹所
74 案内凹部
74a 第1の案内面
74b 第2の案内面
76 円弧状外周面
77 センサ素子収容部
78 抜止突起
79 封止材
80 付勢部材
82 支持部(付勢部材保持部)
84 段差面
86 周壁
88 係合突起
88a 近位部
88b 湾曲部
88c 遠位部
90 円弧状部
92 開口穴
94 コネクタ
96 スリット
98 位置決め突部
100 案内面
101 係合突起
101a 近位部
101b 湾曲部
101c 遠位部
102 係止凹所
104 円弧状外周面
A センサユニット配置領域