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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】騒音軽減装置
(51)【国際特許分類】
   G10K 11/178 20060101AFI20240510BHJP
   H04R 3/00 20060101ALI20240510BHJP
   H04R 1/02 20060101ALI20240510BHJP
   B60R 11/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G10K11/178 130
H04R3/00 310
H04R1/02 102B
B60R11/02 B
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020184933
(22)【出願日】2020-11-05
(65)【公開番号】P2022074680
(43)【公開日】2022-05-18
【審査請求日】2023-04-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000241500
【氏名又は名称】トヨタ紡織株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001036
【氏名又は名称】弁理士法人暁合同特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】永野 雅裕
【審査官】中嶋 樹理
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-111773(JP,A)
【文献】特開2011-228956(JP,A)
【文献】特開2005-020462(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G10K 11/178
H04R 3/00
H04R 1/02
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
乗物室に侵入する騒音による乗員の不快感を軽減する騒音軽減装置であって、
乗物室に対して再生音信号に基づく音である再生音を再生する音再生部と、
乗物室を画成する板状をなす乗物室構成部材に設けられ、前記乗物室構成部材を振動させる振動発生部と、
前記振動発生部を制御して前記乗物室構成部材を振動させることで、前記騒音を緩和するための緩和音を前記乗物室構成部材から発生させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記音再生部が前記再生音を再生している場合に、前記乗物室構成部材を通じて乗物室内に伝播する伝播騒音の周波数成分のうち、前記再生音の周波数成分と重なる一部の周波数成分の音圧を上げるように、前記緩和音を発生させる構成を備え
前記制御部は、前記伝播騒音の周波数スペクトルにおいてピーク間の周波数成分の音圧を上げるように、前記緩和音を発生させる、騒音軽減装置。
【請求項2】
前記制御部は、前記伝播騒音における基音の周波数と、前記基音の2倍音の周波数と、の間の周波数成分の音圧を上げるように、前記緩和音を発生させる、請求項に記載の騒音軽減装置。
【請求項3】
乗物室に侵入する騒音による乗員の不快感を軽減する騒音軽減装置であって、
乗物室に対して再生音信号に基づく音である再生音を再生する音再生部と、
乗物室を画成する板状をなす乗物室構成部材に設けられ、前記乗物室構成部材を振動させる振動発生部と、
前記振動発生部を制御して前記乗物室構成部材を振動させることで、前記騒音を緩和するための緩和音を前記乗物室構成部材から発生させる制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記音再生部が前記再生音を再生している場合に、前記乗物室構成部材を通じて乗物室内に伝播する伝播騒音の周波数成分のうち、前記再生音の周波数成分と重なる一部の周波数成分の音圧を上げるように、前記緩和音を発生させる構成を備え、
前記制御部は、前記再生音の周波数成分のうち、前記伝播騒音における基音の周波数の整数倍である倍音周波数の音圧を上げるように、前記緩和音を発生させる、騒音軽減装置。
【請求項4】
前記乗物室構成部材は、ドアトリム、カウルサイドトリム、インストゥルメントパネル、デッキサイドトリム、ピラーガーニッシュ、フロアカーペット、およびウィンドウガラスからなる群から選択される少なくとも1つである、請求項1~のいずれか1項に記載の騒音軽減装置。
【請求項5】
前記乗物室を備える乗物は、陸上走行車両であって、路面接地部材を含み、
前記制御部は、前記伝播騒音の周波数特性を、路面条件、天候、走行速度、および、前記路面接地部材の劣化度からなる群から選択される少なくとも一つの要素ごとに予め記憶している、請求項1~のいずれか1項に記載の騒音軽減装置。
【請求項6】
前記制御部は、前記伝播騒音の周波数特性をリアルタイムで測定し、その測定結果に基づいて、前記振動発生部によって前記乗物室構成部材から前記緩和音を発生させる、請求項1~のいずれか1項に記載の騒音軽減装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、騒音軽減装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、乗物室内を快適に保つために、乗物室内に侵入する様々な騒音を低減する技術が提案されている。このような技術の一例として、乗物に吸音材や防音材を備えることで乗物室内への騒音の進入を抑制するパッシブ法(例えば、特許文献1参照)や、目的とする騒音に応じた消音波(逆位相の音波)を放射して当該騒音をキャンセルするアクティブ法(例えば、特許文献2参照)等が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-106689号公報
【文献】特開平07-199954号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のパッシブ法において、吸音材はその体積と吸音効果とが凡そ比例し、また、防音材はその質量と防音量および防音周波数とが凡そ比例することから、吸音材や防音材を設置するスペースに制限があったり、軽量化が求められる乗物において、十分な遮音効果を発揮するには至っていないのが現状である。そして上記アクティブ法においては、センサ等で取得した騒音の位相を反転させて乗物室に精確に届けるために、演算の速度や、消音波の発生位置および放射方向の制御が困難であり、多数の消音放射器(例えばスピーカ)が必要となったり、乗物室の場所によっては騒音の音圧が増幅されて乗員に不快感を与えてしまうという課題がある。
【0005】
ここに開示される技術は、上記の従来技術の実情に鑑みてなされたものであり、乗物室内に侵入する騒音の不快感を軽減する新しい騒音軽減装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
乗物における騒音軽減の目的の一つは、騒音による乗員の不快感を軽減することにあり、この騒音としては、代表的には、ロードノイズ、風切り音、エンジン音等が挙げられる。これらの騒音を消音することを目的とした様々な技術が従来より低難されているものの、本発明者が鋭意検討したところ、例えば乗員は、乗物の運転状況等を知覚するために、ある程度の騒音が耳に届くことが好ましい場合がある。すなわち、ここに開示される技術は、騒音軽減装置を提供する。この騒音軽減装置は、乗物室に侵入する騒音による乗員の不快感を軽減する騒音軽減装置であって、乗物室に対して再生音信号に基づく音である再生音を再生する音再生部と、乗物室を画成する板状をなす乗物室構成部材に設けられ、前記乗物室構成部材を振動させる振動発生部と、前記振動発生部を制御して前記乗物室構成部材を振動させることで、前記騒音を緩和するための緩和音を前記乗物室構成部材から発生させる制御部と、を備える。そして前記制御部は、前記音再生部が前記再生音を再生している場合に、前記乗物室構成部材を通じて乗物室内に伝播する伝播騒音の周波数成分のうち、前記再生音の周波数成分と重なる一部の周波数成分の音圧を上げるように、前記緩和音を発生させる構成を備えている。
【0007】
上記の構成によると、音再生部が何らかの再生音を再生している場合には、振動発生部によって乗物室構成部材から緩和音が発生される。これにより、乗物室構成部材を通じて室内に伝播する伝播騒音は、緩和音が重畳されることで、再生音に馴染む音に作り変えられる。また、緩和音は、伝播騒音を発するのと同じ乗物室構成部材から乗物室内に出射されるため、乗員の耳に届くまでに、騒音と同じ経路を通ることとなる。換言すれば、出射されてから乗物室内を伝播している間、緩和音と伝播騒音とは、減衰、反射、増幅等の影響を全く同様に受けることとなる。これにより、緩和音は、乗物室の形状や広さ、備品の位置や素材等によって伝播騒音と異なる影響を受けることがなくなり、乗物室のいずれの地点においても伝播騒音の不快感を同様に軽減することができる。
【0008】
上記騒音軽減装置の好適な一態様において、前記制御部は、前記伝播騒音の周波数スペクトルにおいてピーク間の周波数成分の音圧を上げるように、前記緩和音を発生させる構成を備えている。伝播騒音は、通常は様々な周波数成分の音を含み、その周波数と音圧との関係を示す周波数スペクトルにおいても広い周波数領域に亘って大小さまざまなピークが現れ得る。そして、音(音波)は、音圧(典型的には、音の大きさ)のみならず、周波数スペクトルの波形によってもヒトの聴覚に与える心理的作用が異なってくる。上記構成によると、伝播騒音は、緩和音が重畳されることで、周波数スペクトルにおける任意の二つのピーク間の音圧が上げられて(例えば、ピークと同程度に均されて)、ピークが相対的にブロードなものへと変化される。これにより、伝播騒音の音色の特徴が低減され、伝播騒音の不快感を低減することができる。
【0009】
上記騒音軽減装置の好適な一態様において、前記制御部は、前記伝播騒音における基音の周波数と、前記基音の2倍音の周波数と、の間の周波数成分の音圧を上げるように、前記緩和音を発生させる構成を備えている。自然音は、複数の倍音の組み合わせによって構成されており、基音のピークと2倍音のピークとの間の音圧を高めることで、伝播騒音の音色の特徴を効果的に低減することができる。
【0010】
上記騒音軽減装置の好適な一態様において、前記制御部は、前記再生音の周波数成分のうち、前記伝播騒音における基音の周波数の整数倍である倍音周波数の音圧を上げるように、前記緩和音を発生させる。自然音は、複数の倍音の組み合わせによって構成されており、また、ヒトは、周波数のズレを伴わないことにより、1オクターブずつ異なる同じ音階の音の和音を「心地よい」と感じる傾向にある。上記構成によると、乗物室構成部材は、伝播騒音に加え、再生音に含まれる音のうち伝播騒音と同じ音階の音を併せて再生するようになっている。これにより、伝播騒音と再生音とが協和音となって乗物室内に再生され、騒音の不快感を低減することができる。
【0011】
上記騒音軽減装置の好適な一態様において、前記乗物室構成部材は、ドアトリム、カウルサイドトリム、インストゥルメントパネル、デッキサイドトリム、ピラーガーニッシュ、フロアカーペット、およびウィンドウガラスからなる群から選択される少なくとも1つである。上記の乗物室構成部材は、概して板状をなしており、また、代表的な騒音であるロードノイズ、風切り音、雨音等の原因と密接に関わり合う部位に配されている。したがって、これらの乗物室構成部材をサブスピーカとして機能させることで、乗物の騒音を効果的に低減することができるために好適である。
【0012】
上記騒音軽減装置の好適な一態様において、前記乗物室を備える乗物は、陸上走行車両であって、路面接地部材を含み、前記騒音緩和部は、前記伝播騒音の周波数特性を、路面条件、天候、走行速度、および、前記路面接地部材の劣化度からなる群から選択される少なくとも一つの要素ごとに予め記憶している。乗物室構成部材は、その材質や、形状、騒音源との関わり合いによって、当該部材に固有の振動数を有するとともに、その部材に特有の騒音を乗物室内に発射する。したがって、対象とする乗物室構成部材について、予め、様々な状況下での伝播騒音の周波数特性を調べて記憶させることで、騒音緩和部は、各状況下でより適切な緩和音を発生させることができる。これにより、乗物の騒音をより効果的に低減することができる騒音軽減装置が提供される。
【0013】
上記騒音軽減装置の好適な一態様において、前記制御部は、前記伝播騒音の周波数特性をリアルタイムで測定し、その測定結果に基づいて、前記振動発生部によって前記乗物室構成部材から前記緩和音を発生させる構成を備えている。乗物室構成部材は、その材質や、形状、騒音源との関わり合いによって、当該部材に固有の振動数を有するとともに、その部材に特有の騒音を乗物室内に発射する。したがって、対象とする乗物室構成部材について、リアルタイムで伝播騒音の周波数特性を調べることで、騒音緩和部は、より適切な緩和音をリアルタイムで発生させることができる。これにより、乗物の騒音をより効果的に低減することができる騒音軽減装置が提供される。
【発明の効果】
【0014】
ここに開示される技術によれば、乗物室内に侵入する騒音の不快感を軽減する新しい騒音軽減装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1】一実施形態に係る騒音軽減装置を搭載した車両の構成を示す図
図2】一実施形態に係る騒音軽減装置のブロック図
図3】ロードノイズ発生時のドアトリムの振動についての周波数スペクトル
図4】一実施形態に係る再生音についての周波数スペクトルを図3に重ねた図
図5】ロードノイズ発生時のドアトリムから緩和音を発生させたときのドアトリムの振動についての周波数スペクトル
図6】他の実施形態に係る再生音についての周波数スペクトルを図3に重ねた図
図7】ロードノイズ発生時のドアトリムから緩和音を発生させたときのドアトリムの振動についての周波数スペクトル
図8】他の実施形態に係る再生音についての周波数スペクトルを図3に重ねた図
図9】他の実施形態に係る緩和音についての周波数スペクトルを図3に重ねた図
【発明を実施するための形態】
【0016】
≪実施形態≫
ここに開示される技術の一実施形態について、図1から図9を参照しつつ、乗物の一例としての車両1に搭載された騒音軽減装置10を例にして説明する。なお、各図に示した符号F,Rr,U,Dはそれぞれ、車両進行方向の前方,後方、鉛直方向(上下方向)の上方,下方を示す。ただし、上記方向は便宜的に定めたものに過ぎず、限定的に解釈すべきものではない。
【0017】
図1に示されるように、車両1は、回転駆動されることで当該車両1を走行させるホイール2,2と、車両1の骨格の一部をなすとともに、車室の床面を構成するフロアパネル3、天井面を構成するルーフパネル4、および、床面に対して天井面を支持するピラー5等を備えている。そしてこれらの車両骨格に車両ドア6やウィンドウガラス7等が取り付けられることで、車両1の内部に車室空間が画成されている。車室には、居住性や意匠性を高めるために、カウルサイドトリム2A、フロアカーペット3A、ルーフトリム4A、ピラーガーニッシュ5A、ドアトリム6A、図示しないインストゥルメントパネル、およびデッキサイドトリム等の乗物用内装材が備えられている。これらの乗物用内装材は、車室を取り囲むことで車室の意匠面を構成するほか、車室の保温性を高めたり、パッシブな吸・遮音材としての機能をも有している。
【0018】
ここで、上記の車室を画成する部材(例えば乗物用内装材等)は、様々な形状に成形された板状をなしており、車両1が陸上を走行した際などの衝撃や振動が伝播することによって振動し、その振動がノイズとして車室内に放射される。例えば、車両1においては、ホイール2,2に装着されたタイヤ2B(路面接地部材の一例)が路面と接触することにより発生する振動や接触音(ロードノイズ)が、カウルサイドトリム2Aやフロアカーペット3A、ドアトリム6A、デッキサイドトリム(図示せず)等を伝って車室内に放射されやすい。また、車両1の前方のガソリンエンジンルームと車室との間に配されるインストゥルメントパネル(図示せず)を通じてエンジン音が車室内に放射されやすい。そして、走行中の車両1にあたる空気や雨などによる風切り音や雨音等が、ドアトリム6Aやピラーガーニッシュ5A、ウィンドウガラス7等を通じ、ノイズとして車室内に放射されやすい。車室構成部材の振動態様は、車両の構造、各車室構成部材の形状、材質等によって異なり得るものの、典型的な一例として、以下に示す車室構成部材の外部からの衝撃・振動による周波数はおおよそ次のとおりとなっている。
【0019】
【表1】
【0020】
そこで、車両1は、このようなノイズによる不快感を低減するための騒音軽減装置10を備えている。この騒音軽減装置10は、概して、オーディオ装置12(音再生部の一例)と、振動制御部14と、振動発生部16と、を備えて構成されており、上記の車室構成部材をサブスピーカとして機能させるとともに、オーディオ装置12から音楽等の音を再生するときには、車室構成部材を通じて車室内に伝播する騒音(以下、伝播騒音という。)を緩和させる緩和音を車室構成部材からも発生させるようにしている。以下、騒音軽減装置10の各部とその動作について説明する。
【0021】
オーディオ装置12は、デジタルまたはアナログの再生音信号に基づいて車室内に対し再生音を再生することができる装置であって、本例のオーディオ装置12は、例えば図2に示すように、一般的な音響装置(ステレオ装置等ともいう。)によって構成することができる。これに限定されるものではないが、オーディオ装置12は、典型的には、伝達したい音をデジタル処理が可能な電気信号へと変換する変換部12Aと、変換された電気信号を必要に応じて加工する加工部12Bと、加工された又は未加工の電気信号を増幅するアンプ12Cと、アンプで増幅された電気信号を音響振動に変換して車室内に放射するスピーカ部12Dと、これらの各部を制御して音を再生する制御部12Eと、を備えている。
【0022】
変換部12Aは、オーディオ装置12において外部に伝達(放射)したい音に対応する電気信号を生成する要素であり、各種の音等を電気信号に変換するマイクや、再生音信号を含む音情報を記録したメディアを再生することで電気信号に変換するプレイヤー、外部機器等から有線または無線で送られる再生音信号を受信し、必要に応じて電気信号に変換する受信機器等であってよい。
【0023】
加工部12Bは、例えば、入力された複数の電気信号(電気信号の状態の再生音信号)を、音質(例えば周波数)ごとに区分けした音成分について、増幅するゲイン機能や、混合(ミックス)するミキサー機能、音色補正等をするイコライザー機能、複数のスピーカに対して電気信号を出力したりその割合を変更したりするパンニング機能等を有している。加工部12Bは、変換部12Aから電気信号の状態で送られる複数の再生音信号を、例えば、ユーザの好みの音質に変換することができる。
【0024】
アンプ12Cは、加工部12Bによって加工された電気信号、または、未加工の電気信号を増幅する要素であり、スピーカ部12Dから出力させたい音圧レベルを達成できるように電気信号を増幅する。アンプ12Cは、スピーカ部12Dと一体化されていてもよいし、スピーカ部12Dとは別体とされていてもよい。スピーカ部12Dは、アンプ12Cによって増幅された電気信号を生の音に戻して車室内に放射する要素であり、1つのオーディオ装置12に1つ、または、2以上の複数のものが備えられる。
【0025】
制御部12Eは、このオーディオ装置12の各部の動作を制御する要素であり、例えばCPU、RAM、ROM等を有するマイクロコンピュータ等を主体として構成され、有線または無線を介して上記各部12A~12Dと通信可能に接続されている。制御部12Eは、基本的には、再生音信号を変換部12Aによって電気信号へと変換したのち、この電気信号をアンプ12Cによって所定の音圧(音量)を実現し得るように増幅し、スピーカ部12Dにおいて増幅された電気信号を音響振動として車室内に放射して再生するように構成されている。なお、制御部12Eは、例えば、音再生部13が複数のスピーカ部12Dを備える場合、例えば、加工部12Bにおいて再生音信号を音質ごとに複数の音成分に分割したのち、複数のスピーカ部12Dのそれぞれについて、出力する音成分の種類やその割合等を変化させることができる。また、制御部12Eは、複数のスピーカ部12Dのそれぞれについて、出力する音の音圧、換言すれば、アンプ12Cの増幅率を変化させることができる。さらに制御部12Eは、例えば、車室の広さや形状、構成等に応じて良質な音を放射できるように、加工部12Bの加工内容や、各スピーカ部12Dから放射される再生音の音質および音圧を、予め複数の制御モードとして記憶しておき、ユーザが選択した制御モードに基づいて各スピーカ部12Dから音を再生するように構成されていてもよい。
【0026】
振動発生部16は、車室を画成する板状をなす乗物室構成部材に備えられて、この乗物室構成部材を振動させる要素であり、ここに開示される技術における制御部の一例である。乗物室構成部材としては、これに限定されるものではないが、例えば、上述した車室を取り囲む乗物用内装材(典型的には、カウルサイドトリム2A、フロアカーペット3A、ルーフトリム4A、ピラーガーニッシュ5A、ドアトリム6A、インストゥルメントパネル、デッキサイドトリム、およびウィンドウガラス7等)が一例として挙げられる。また、振動発生部16としては、例えば電気信号に基づいて機械的振動を発生させることができる振動発生装置を採用することができる。このような振動発生部16としては、例えば、電気エネルギを運動エネルギに変換することができる、ピエゾフィルムスピーカーや、エキサイター、振動モータ、電磁加振装置等を採用することができる。振動発生部16は、自身が取り付けられた乗物室構成部材を振動させることで、この乗物室構成部材をスピーカとして機能させることができる。振動発生部16は、いずれか一つの乗物用内装材に取り付けられていてもよいし、2以上の複数の乗物用内装材のそれぞれに取付けられていてもよい。なお、乗物室構成部材が乗物用内装材である場合には、振動発生部16は、乗物用内装材に対して裏面側(車室外側の面)に取付けるとよい。また、物室構成部材がウィンドウガラス7である場合には、振動発生部16は、ウィンドウガラス7の取付枠や骨格パネルの内側(インナパネルとアウタパネルとに挟まれた部分等の、外観に晒されない位置)に取付けるとよい。
【0027】
振動制御部14は、振動発生部16の動作を制御して乗物室構成部材を振動させる要素であり、上述の伝播騒音を緩和するための緩和音に対応する電気信号を振動発生部16に付与する。振動制御部14は、オーディオ装置12の内部に備えられていてもよいし、オーディオ装置12とは別の位置(例えば、振動発生部16の近傍)に備えられていてもよい。振動制御部14がオーディオ装置12の内部に備えられている場合、振動制御部14は、制御部12Eの一要素であってもよい。振動制御部14がオーディオ装置12とは別に備えられている場合、振動制御部14は、例えば、CPU、RAM、ROM等を有するマイクロコンピュータ等を主体として構成され、有線または無線を介して振動発生部16およびオーディオ装置12と通信可能に接続されている。振動制御部14が、例えば、緩和音に対応する電気信号を振動発生部16に送ることにより、振動発生部16が乗物室構成部材を振動させて、乗物室構成部材から伝播騒音と共に上記の電気信号に対応する音(すなわち、緩和音)が再生されることとなる。振動発生部16は、緩和音に対応する電気信号の作成に際し、オーディオ装置12の変換部12Aや、加工部12B、アンプ12C等を適宜利用してもよい。
【0028】
以下では、図2に示すように、乗物室構成部材がドアトリム6Aである場合を例にして、振動制御部14が生成する緩和音について説明する。
図3は、走行中の車両1の衝撃および振動に伴うドアトリム6Aの振動についての周波数スペクトルを模式的に示したものであり、横軸は周波数をオクターブバンド表示したものであり、縦軸は音圧レベルを示したものである。ドアトリム6Aは、車両走行中のタイヤと路面との衝撃に基づいてドアトリム6A自体が振動することにより、例えば、表1に示されるように、凡そ100~1000Hz程度の周波数領域に亘る伝播騒音を発生する。ここで、ドアトリム6Aは固有振動数を有しており、車両1が一般的な舗装路面を走行する際のドアトリム6Aの振動(換言すれば、ドアトリム6Aを介して車室内に伝播するロードノイズ)の中心周波数は約160Hzである。なお、伝播騒音を含む自然音は、基音とその倍音の組み合わせによって構成されており、本例のドアトリム6Aについても、約160Hzの基音(音階;レ#(D#3))の他に約315Hzの2倍音(音階;レ#(D#4))が含まれていることが確認できる。本技術では、単に「ドアトリム6Aの振動の周波数」などというときは、基音の周波数を意味するものとする。また、人間が感じる音の大きさは、基準音圧の倍数には比例せず、その対数に比例することから、図3~9において、縦軸の音圧の単位はデシベル[dB](対数表示)となっている。
【0029】
ここで、公知のアクティブノイズキャンセラー(ANC)では、このようなロードノイズを打ち消すようなキャンセル振動(キャンセル音)を、例えばドアトリムに対して付与するようにしている。これに対し、本発明者は、ロードノイズは、路面やタイヤの表面状態や設置状態、走行スピード等の車両1の運転に係る情報を含むものであるため、必ずしも消し去る必要がない場合があることに注目している。しかしながら、例えば車両1のオーディオ装置12によって音楽等を聴く場合、ロードノイズが音楽を阻害してロードノイズが不快に感じる場合もあり得る。そこで、本発明者は、オーディオ装置12によって音楽等を聴く場合には、ドアトリム6Aを通じて伝播するノイズの有する不快感を低減する緩和音を、振動発生部16を取り付けた乗物室構成部材ごと(ここでは、例えば、ドアトリム6A)に用意し、ノイズとともに緩和音をドアトリム6Aから再生することで、ノイズが不快感の低減されたものとして乗員の耳に届くようにしている。例えば、オーディオ装置12のスピーカ部12Dから音楽を再生するとともに、ドアトリム6Aをサブスピーカとして利用し、ドアトリム6A(サブスピーカ)から伝播騒音に加えて緩和音が再生されるようにしている。ドアトリム6A(サブスピーカ)から伝播騒音に加えて再生される緩和音は、騒音を緩和する周波数成分に対応する音(緩和音そのもの)のみを含むものであってもよいし、緩和音と再生対象である音楽とを含むものであってもよい。ここに開示される技術は、ノイズを消去するのではなく、ノイズから不快感を低減するという観点において、これまでにない新しい技術思想を提案するものとなっている。
【0030】
より詳細には、振動制御部14は、オーディオ装置12が何らかの再生音を再生している場合に、ドアトリム6Aを通じて乗物室内に伝播する伝播騒音の周波数成分のうち、再生音の周波数成分と重なる一部の周波数成分の音圧を上げるように、緩和音を発生させるようにしている。図4の実線は、オーディオ装置12によって再生される音楽(再生音)の周波数スペクトル(周波数と音圧との関係)を模式的に示したものである。この再生音は、ドアトリム6Aからの伝播騒音の周波数領域(おおよそ100~1000Hz程度)を含む周波数の音を発生している。そして図4に示すように、例えば、オーディオ装置12によって再生する音楽の音圧が、ロードノイズの音圧よりも大きい場合は、緩和音は、図5に示すように、伝播騒音の周波数スペクトルにおいてピーク間の周波数成分の音圧を上げるようなものとすることができる。緩和音は、例えば、ロードノイズの周波数スペクトルにおいて、伝播騒音における基音の周波数(ここでは約160Hz)と、その2倍音の周波数(ここでは約315Hz)と、の間の周波数成分(すなわち、約160~315Hz)の音圧を上げる(ハッチング部分)ような効果を発揮する音とすることができる。このような緩和音は、あたかも、伝播騒音の基音と2倍音との間を、音圧が概ね一定のホワイトノイズないしは各種のカラードノイズで滑らかに埋めるような効果を有する。これにより、ノイズの不快感を低減することができる。
【0031】
また、例えば、図6に示すように、オーディオ装置12によって再生する音楽の音圧が、伝播騒音の音圧よりも小さい場合は、緩和音は、図7に示すように、ロードノイズの周波数スペクトルにおいて、伝播騒音の基音の周波数(ここでは約160Hz)と、その2倍音の周波数(ここでは約315Hz)と、の間の周波数成分(すなわち、約160~315Hz)を含むようにし、これら基音と2倍音の間に谷状に形成される低音圧領域を埋めるように音圧を増大(ハッチング部分)させた音とすることができる。加えて、緩和音は、伝播騒音のスペクトルの高周波側部分において、音圧が急激に低下することを抑制し、音圧が周波数に反比例して滑らかに低下するように補うものであってもよい。このような緩和音は、あたかも、伝播騒音のスペクトルの高周波側の端部の音をブラウニアンノイズ等のカラードノイズで滑らかに埋めるような効果を有する。このような伝播騒音および緩和音は、ドアトリム6Aから、図7に示す外形に沿った周波数成分を有する音として車室内に再生される。これにより、ノイズと再生音との不協和が解消され、ノイズの不快感を低減することができる。
【0032】
なお、ドアトリム6Aから伝播する伝播騒音の周波数は低い、いわゆる低音である一方で、オーディオ装置12によって再生する音楽(音)が、図8に示すように、ロードノイズに対して十分に高音であって、周波数が高い音となる場合も考えられる。また、具体的には図示しないが、オーディオ装置12によって再生する音楽(音)が、図4および図6に示すように、広い周波数範囲に対応する音を含まないことも考えられる。さらに、2つの異なる音の和音関係においては、基音とその倍音は最も良く調和して協和音となることが知られている。したがって、オーディオ装置12によって再生する音楽を構成する音のうち、ロードノイズの周波数(ここでは約160Hz)を基音として、この基音およびその倍音の少なくとも一方に対応する音を、緩和音としてもよい。例えば、具体的には、図9に示すように、再生音のうちロードノイズの倍音となる周波数(ここでは約630Hz)成分の音を、緩和音とすることができる。このとき、振動制御部14は、再生する音楽の再生音信号に対応する音のうち、ドアトリム6Aを通じて車室内に伝播する騒音の周波数(ここでは約160Hz)の音を基音として、この基音か、あるいはその倍音である音の周波数成分(ここでは約630Hzの成分)を抽出することで、緩和音に対応する電気信号を生成することができ、この電気信号を振動発生部16に出力して再生することができる。緩和音が倍音のみ(例えば周波数630Hzの音のみ)であると、このような音は人工的であって人の耳に違和感を与えることから、緩和音は、例えば、当該倍音周波数±10Hz程度の幅を持った周波数領域に亘る音としてもよい(図9参照)。なお、この場合の緩和音の音圧は特に制限されないが、ノイズの基音の音圧に対して、0.5倍以上(例えば0.7倍以上)であって、1.5倍以下(例えば1.2倍以下)程度とするとよい。このようなノイズおよび緩和音は、ドアトリム6Aから、図9の外形によって示される周波数成分を有する音として車室内に再生される。これにより、ノイズと再生音とが協和音をなし、ノイズの不快感が低減される。
【0033】
なお、このような緩和音は、振動制御部14がオーディオ装置12を利用することにより簡便に作成することができる。すなわわち、オーディオ装置12は、再生音信号に対応する音のうち、特定の周波数成分を抽出して加工する機能を有している。そこで、振動制御部14は、乗物室構成部材を通じて車室内に伝播する伝播騒音の周波数F1と、同一周波数F1の信号成分や、その伝播騒音の周波数F1の整数倍である倍音周波数F2の信号成分、の少なくとも一方の周波数成分を含む緩和音を、電気信号として後述する振動発生部16に送り、その緩和音を乗物室構成部材から発生させることができるように構成されていてもよい。これに限定されるものではないが、本例の振動制御部14は、上記の制御部12Eが、加工部12Bの動作を制御することによって、機能的に実現されるようになっていてもよい。その場合、制御部12Eは、緩和音に対応する電気信号を振動制御部14において生成し、生成した緩和音に対応する電気信号を振動発生部16に送るように構成されている。
【0034】
このような緩和音は、オーディオ装置12によって再生する音楽等とロードノイズとを調和させるものであり、再生音楽の音(つまり、再生音信号に対応する音)のうち、ドアトリム6Aを通じて車室内に伝播するロードノイズの基音の周波数F1(ここでは約160Hz)の倍音周波数F2(ここでは約630Hz)を含む音である。このような緩和音がドアトリム6Aから再生されることで、ドアトリム6Aを通じて伝播する伝播騒音と音楽とが緩和音の作用で協和し、乗員が感知するノイズの不快感が和らげられる。またこのとき、ドアトリム6Aから出射するノイズおよび緩和音は、同じ経路をたどって、換言すれば、反射や減衰などの変質作用を等しく受けて、乗員の耳に届けられる。その結果、車室内のいずれの位置においてもノイズおよび緩和音のバランスが等しく保たれる点においても好適である。
【0035】
以上の本実施形態の効果について説明する。本実施形態における騒音軽減装置10は、車室(乗物室)に侵入する騒音による乗員の不快感を軽減するものであって、車室に対して再生音信号に基づく音である音楽(再生音)を再生するオーディオ装置12(音再生部)と、車室を画成する板状をなすドアトリム6A(乗物室構成部材の一例)に設けられ、ドアトリム6Aを振動させる振動発生部16と、振動発生部16を制御してドアトリム6Aを振動させることで、騒音を緩和するための緩和音をドアトリム6Aから発生させる振動制御部14(制御部)と、を備える。振動制御部14は、オーディオ装置12が音楽を再生している場合に、ドアトリム6Aを通じて車室内に伝播する伝播騒音の周波数成分のうち、音楽の周波数成分と重なる一部の周波数成分の音圧を上げるように、緩和音を発生させる構成を備えている。このような構成によると、ドアトリム6Aを通じて室内に伝播する騒音に対し、振動発生部16によってドアトリム6Aから発生させる緩和音を重畳させて、ロードノイズを再生音に馴染む音に作り変えることができる。また、緩和音は、ロードノイズと同じドアトリム6Aから車室内に出射されるため、乗員の耳に届くまでに、ロードノイズと同じ経路を通ることとなる。換言すれば、出射されてから車室内を伝播している間、緩和音とロードノイズとは、減衰、反射、増幅等の影響を全く同様に受けることとなる。これにより、緩和音は、車室の形状や広さ、備品の位置や素材等によって騒音と異なる影響を受けることがなくなり、車室のいずれの地点においてもロードノイズの不快感を同様に軽減することができる。
【0036】
また、上記実施形態において、振動制御部14は、伝播騒音の周波数スペクトルにおいてピーク間の周波数成分の音圧を上げるように、緩和音を発生させる構成を備えている。振動制御部14は、好ましくは、伝播騒音における基音の周波数と、基音の2倍音の周波数と、の間の周波数成分の音圧を上げるように、緩和音を発生させる。このような構成においては、伝播騒音の最も音圧の高い周波数成分の音と、2番目に高い音圧の周波数成分の音との間が、当該周波数範囲に対応する再生音の音圧を部分的に高めた形の緩和音によって埋められる。伝播騒音は、周波数のピークが相対的にブロードなものへと変化される。これにより、伝播騒音の音色の特徴が低減され、伝播騒音の不快感を低減することができる。
【0037】
また、上記実施形態において、振動制御部14は、再生音の周波数成分のうち、伝播騒音における基音の周波数の整数倍である倍音周波数の音圧を上げるように、緩和音を発生させる構成を備えている。自然音は、複数の倍音の組み合わせによって構成されており、また、ヒトは、周波数のズレを伴わないことにより、1オクターブずつ異なる同じ音階の音の和音を「心地よい」と感じる傾向にある。上記構成によると、ドアトリム6A等の乗物室構成部材は、伝播騒音に加え、再生音に含まれる音のうち伝播騒音と同じ音階の音を併せて再生する。これにより、伝播騒音と再生音とが協和音となって乗物室内に再生され、騒音の不快感を低減することができる。
【0038】
<他の構成について>
ここに開示される技術は、上記の実施形態に開示されたものに限定されるものではなく、例えば、以下の態様もここに開示される技術範囲に含まれる。また、ここに開示される技術は、その本質から逸脱しない範囲において種々変更された態様で実施することができる。
【0039】
(1)上記実施形態の騒音軽減装置10において、振動制御部14は、オーディオ装置12(音再生部)の制御部12Eが、加工部12Bの動作を制御することによって、機能的に実現されていたり、マイクロプロセッサにより機械的に構成されていた。しかしながら、振動制御部14の構成はこれに限定されず、例えば、デジタルシグナルプロセッサ(DSP)等の他の構造によって機械的に実現されていてもよい。
(2)上記実施形態では、乗物室構成部材としてのドアトリム6Aが、陸上を走行する車両1のタイヤ2Bと路面との設置によって生じる振動および騒音に基づく周波数約160Hzのノイズを低減する構成について開示したが、ここに開示される技術はこのような態様に限定されない。騒音軽減装置10は、例えば、ドアトリム6A以外の乗物室構成部材をサブスピーカとして緩和音を発生できる構成を備えていてもよいし、2つ以上の乗物室構成部材をサブスピーカとし、各々の乗物室構成部材からその乗物室構成部材に適した緩和音を発生できる構成を備えていてもよい。
【0040】
(3)騒音軽減装置10において、振動制御部14は、乗物室構成部材ごとに定められるノイズの周波数を、路面条件、天候、走行速度、および、路面接地部材の劣化度等の環境条件ごとにあらかじめ調べておき、周波数テーブル等としてこれらの環境条件ごとに記憶しておいてもよい。また、これらの環境条件は、上記の要素を様々に組み合わせた複合環境条件であってもよい。このとき、車両1の環境条件に応じて、乗物室構成部材のより適切なノイズの周波数を取得することができ、ノイズの不快感をより効果的に低減することができる。
(4)また、騒音軽減装置10は、付加的に乗物室構成部材の振動周波数を測定する振動センサを備えていてもよい。そして振動制御部14は、乗物室構成部材の振動に基づく騒音の周波数特性をリアルタイムで測定し、その測定結果に基づいて騒音の不快感を緩和する緩和音に対応する電気信号を生成し、その緩和音を振動発生部16によって乗物室構成部材から発生させる構成であってよい。これにより、乗物室構成部材について、車両1の環境条件に応じたより適切なノイズの周波数を随時取得することができ、ノイズの不快感をより効果的に低減することができる。
(5)上記実施形態で例示した乗物は車両であったが、この騒音軽減装置10は車両用に提供されるもの限られず、種々の乗物において提供されるものであってもよい。例えば、地上の乗物としての列車や遊戯用車両、飛行用乗物としての飛行機やヘリコプター、海上や海中用乗物としての船舶や潜水艇などの乗物についても上記騒音軽減装置10を適用することができる。
【符号の説明】
【0041】
1…車両、2…ホイール(路面接地部材)、6…車両ドア、6A…ドアトリム(乗物室構成部材)、10…騒音軽減装置、12…オーディオ装置、14…騒音緩和部、16…振動発生部
図1
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