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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】車両用内装品
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B60R7/04 C
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021060177
(22)【出願日】2021-03-31
(65)【公開番号】P2022156464
(43)【公開日】2022-10-14
【審査請求日】2023-03-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】榊原 将訓
(72)【発明者】
【氏名】寺井 伸弘
【審査官】森本 康正
(56)【参考文献】
【文献】実開平04-083834(JP,U)
【文献】特開2015-030439(JP,A)
【文献】登録実用新案第3208042(JP,U)
【文献】米国特許出願公開第2020/0406797(US,A1)
【文献】特開2012-011138(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 1/00-99/00
B60N 2/00- 2/99
F24D 13/00-15/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
板状のベース基材と、
前記ベース基材の表面側に配置された補助部材と、
前記補助部材の表面を覆う表皮部材と、
電力供給により発熱する発熱体と、前記発熱体に電気接続されて前記発熱体発熱を制御する制御部と、を有する作動機器と、
を備え、車両乗員により接触され得る車両用内装品であって、
前記補助部材は、孔溝部を有し、
前記孔溝部は、前記補助部材の表面に設けられた表面開口と、前記補助部材の裏面に設けられた裏面開口と、を有し、
前記補助部材の裏面と前記ベース基材の表面との間には、前記孔溝部に前記裏面開口を介して連通する隙間空間が形成されており、
前記発熱体は、前記補助部材と前記表皮部材との間に配置され、
前記制御部は、前記孔溝部の前記表面開口よりも奥側に配置され前記隙間空間に収容配置されている、車両用内装品。
【請求項2】
前記制御部は、前記孔溝部の前記裏面開口よりも奥側に配置されている、請求項1に記載された車両用内装品。
【請求項3】
前記作動機器は、前記発熱体及び前記制御部がそれぞれ取り付けられてシート状に形成されたシート部を有し、
前記シート部は、前記発熱体が取り付けられた作動領域部と、前記制御部が取り付けられた制御領域部と、前記作動領域部と前記制御領域部との間に設けられて前記孔溝部に嵌る嵌合領域部と、を有する、請求項1又は2に記載された車両用内装品。
【請求項4】
前記補助部材は、前記作動領域部が載置される表面に設けられて前記シート部を位置決めする位置決め部を有する、請求項に記載された車両用内装品。
【請求項5】
前記作動機器は、車両用内装品の表面を温めるヒータエレメントである、請求項1乃至の何れか一項に記載された車両用内装品。
【請求項6】
前記制御部は、サーミスタ及びサーモスタットのうち少なくとも何れか一方を含む、請求項に記載された車両用内装品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両用内装品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車室内に配置される車両用内装品が知られている(例えば、特許文献1)。特許文献1記載の車両用内装品は、ボックス本体と、ボックス本体の上面に開いた開口を開閉可能に覆いアームレストとして使用可能な蓋部材と、その蓋部材に内蔵される発熱体(ヒータ線)と、を備えるコンソールボックスである。発熱体は、蓋部材の上面略全域に亘って配置されており、ボックス本体側の電源装置からの電力供給により発熱する。このため、蓋部材の上面に置いた車両乗員の前腕を発熱体を用いて温めることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-241040号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した蓋部材に配置される発熱体などを含む作動機器が車両用内装品に搭載される場合は、温度調整などの各種制御を行うための制御部をその発熱体の近くに配置することが必要である。温度調整を行うための制御部は、ケースで覆われたサーミスタやサーモスタットなどを含むので、一般的に発熱体に比べて硬質である。このため、かかる制御部が蓋部材の表面近傍に配置されていると、蓋部材の上面に車両乗員の前腕が置かれた際に車両乗員が蓋部材に対して感じる触感性が損なわれるおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、制御部を含む作動機器を内蔵することによりその作動機器の機能を確保しつつ車両乗員が感じる触感性を良好に維持することが可能な車両用内装品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、板状のベース基材と、前記ベース基材の表面側に配置された補助部材と、電力供給により作動する作動部と、前記作動部に電気接続されて前記作動部の作動を制御する制御部と、を有する作動機器と、を備え、車両乗員により接触され得る車両用内装品であって、前記補助部材は、表裏それぞれに開口が設けられ又は表面に開口が設けられる一方で裏面に開口が設けられない孔溝部を有し、前記作動部は、前記補助部材の表面側に配置され、前記制御部は、前記孔溝部の表面側の開口よりも奥側に配置されている、車両用内装品である。
【0007】
この構成によれば、作動部が補助部材の表面側に配置された状態で制御部が補助部材の表面側に露出することが無くなり、補助部材の表面側に制御部の存在による段差が生じることが無くなる。このため、車両乗員が車両用内装品の表面に接触しても、制御部によって車両乗員が感じる触感性が損なわれるのは回避される。従って、制御部を含む作動機器を内蔵することによりその作動機器の機能を確保しつつ車両乗員が感じる触感性を良好に維持することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係る車両用内装品としての両開き収納装置が備える蓋部材の左側開状態での斜視図である。
図2】本実施形態の両開き収納装置が備える蓋部材の右側開状態での斜視図である。
図3】本実施形態の両開き収納装置の分解斜視図である。
図4】本実施形態の両開き収納装置が備える開閉機構の閉状態での構成図である。
図5】本実施形態の両開き収納装置を蓋部材の閉状態で切断した際の後方から見た断面図である。
図6】本実施形態の両開き収納装置を蓋部材の右側開状態で切断した際の後方から見た断面図である。
図7】本実施形態の両開き収納装置を蓋部材の左側開状態で切断した際の後方から見た断面図である。
図8】本実施形態の両開き収納装置が備える蓋部材に設けられた作動機器の平面図である。
図9図8に示す作動機器を直線IX-IXで切断した際の断面図である。
図10】本実施形態の両開き収納装置が備える蓋部材の断面図である。
図11】本実施形態の両開き収納装置が備える蓋部材に設けられた作動機器の制御部が搭載される車両前後方向位置を説明するための図である。
図12】本実施形態の両開き収納装置が備える蓋部材に設けられた作動機器の要部を車両左右方向に延びる鉛直面で切断した際の車両後方から見た断面図である。
図13】本実施形態の両開き収納装置が備える蓋部材の補助部材に設けられる孔溝部の形状の例を表した図である。
図14】本実施形態の両開き収納装置が備える蓋部材の製造手順を説明するための図である。
図15】一変形形態に係る車両用内装品としての両開き収納装置が備える蓋部材に設けられた作動機器の要部を車両左右方向に延びる鉛直面で切断した際の車両後方から見た断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図15を用いて、本発明に係る車両用内装品の具体的な実施形態について説明する。
【0010】
本実施形態の車両用内装品1は、車両乗員が接触する可能性のある部位に適用されるものであり、例えば、センターコンソールに装着されるコンソールボックス、車両用シート、ドア内壁などである。尚、以下、車両用内装品1は、いわゆる両開き収納装置であるものとし、両開き収納装置1と称す。また、本実施形態において、方向を示す内容は、両開き収納装置1が設置される車両を基準にしたものとする。例えば、「右側」とは車両進行方向に対する車両右側を指し、「左側」とは車両進行方向に対する車両左側を指すものとする。
【0011】
両開き収納装置1は、図1図2、及び図3に示す如く、ボックス本体10と、蓋部材20と、開閉機構30と、作動機器90と、を備えている。両開き収納装置1は、開閉機構30により蓋部材20がボックス本体10に対して開閉動作されるように構成されている。また、両開き収納装置1は、蓋部材20が閉位置にあるときに乗員の腕を置くためのアームレストとして用いられるものであって、その蓋部材20上において作動機器90が作動するように構成されている。
【0012】
ボックス本体10は、物を収容可能な箱体である。ボックス本体10は、上面に開口11が設けられた直方体形状の収容部12を有している。尚、ボックス本体10は、収容部12を取り囲む側壁及び底壁からなるものであればよく、例えばカップホルダーなどを収めるための枠などを含んでいてもよい。
【0013】
開口11は、四角形状に形成されている。開口11の周縁は、それぞれ前後方向に延びる二つの前後辺11aと、それぞれ前後辺11aに直交する方向すなわち左右方向に延びる二つの左右辺11bと、を有している。すなわち、両開き収納装置1は、開口11の前後辺11aが前後方向に延びかつ開口11の左右辺11bが左右方向に延びるように形成配置されている。
【0014】
蓋部材20は、ボックス本体10の開口11を開閉可能に覆うリッドである。蓋部材20は、ボックス本体10の開口11に対応した大きさに形成されている。蓋部材20は、薄肉矩形状に形成されている。蓋部材20は、開口11を覆った閉位置から、開口11の周縁の右側の前後辺11aに沿って前後方向に延びる回転軸(以下、第一回転軸と称す。)を中心にして回転可能であると共に、開口11の周縁の左側の前後辺11aに沿って前後方向に延びる回転軸(以下、第二回転軸と称す。)を中心にして回転可能である。蓋部材20は、ボックス本体10に対して左右それぞれにおいて閉位置から所定角度(例えば100°)をなす全開位置まで開動作することが可能である。
【0015】
蓋部材20は、図3に示す如く、インナ蓋材21と、アウタ蓋材22と、成形ウレタン材23と、表皮材24と、を有している。インナ蓋材21及びアウタ蓋材22は、蓋部材20のベース基材をなす部材である。インナ蓋材21及びアウタ蓋材22はそれぞれ、矩形板状に形成されている。アウタ蓋材22は、インナ蓋材21の上面を覆っており、外観において丸みを帯びた形状に形成されている。インナ蓋材21とアウタ蓋材22とは、その間に開閉機構30の構成部品などを収容した状態で凹凸嵌合などにより蓋部材20のベース基材として一体化されている。
【0016】
成形ウレタン材23は、アウタ蓋材22の表面上に配置された補助部材であって、蓋部材20の外形をなす部材である。成形ウレタン材23は、アウタ蓋材22の大きさに合わせた大きさに形成されている。成形ウレタン材23は、アウタ蓋材22の上面略全域に亘って設けられている。成形ウレタン材23は、アウタ蓋材22に比べて軟質に形成されている。成形ウレタン材23は、クッション性や柔軟性を有しており、軟質ウレタンフォームなどにより構成されている。成形ウレタン材23は、アウタ蓋材22の上面に接着剤などにより固定されている。
【0017】
表皮材24は、成形ウレタン材23の上面を覆って蓋部材20の外表面をなす袋状の部材である。表皮材24は、成形ウレタン材23ひいてはアウタ蓋材22の大きさに合わせた大きさに形成されている。表皮材24は、成形ウレタン材23ひいてはアウタ蓋材22の上面全域に亘って設けられている。また、表皮材24は、蓋部材20の裏面まで巻き込むように設けられている。表皮材24は、ポリウレタンやポリ塩化ビニル等の合成皮革やファブリック,皮革等により構成されている。尚、表皮材24は、例えば、成形ウレタン材23よりも密度の高いスラブウレタン24aをラミネートした表皮24bからなるものであってよい(図8参照)。表皮材24は、成形ウレタン材23の上面やインナ蓋材21の下面などに接着剤などにより固定されている。
【0018】
開閉機構30は、右側の第一回転軸及び左側の第二回転軸のうちの何れか一の回転軸を選択的に中心にして蓋部材20を開閉動作させるためのユニットである。開閉機構30は、図4に示す如く、ヒンジ部材32と、右側枢支部33Rと、左側枢支部33Lと、を有している。
【0019】
ヒンジ部材32は、長尺形状に形成されたアーム状の部材である。ヒンジ部材32は、ボックス本体10の後基部13と蓋部材20との間に介在するように配置されている。ヒンジ部材32は、蓋部材20の閉位置において長手方向が左右方向に延びるように配置され、蓋部材20の車両後側に形成された側壁部に沿うように配置される。ヒンジ部材32は、長手方向において蓋部材20の左右方向の幅と略同じ長さを有するように形成されている。
【0020】
ヒンジ部材32は、長手方向一端部が蓋部材20に上記第一回転軸を中心にして揺動可能に支持されかつ長手方向他端部がボックス本体10の後基部13に上記第二回転軸を中心にして揺動可能に支持されるように構成されている。すなわち、ヒンジ部材32は、第一回転軸を中心にして蓋部材20に対して揺動可能であると共に、第二回転軸を中心にしてボックス本体10の後基部13に対して揺動可能である。
【0021】
ヒンジ部材32には、二つの貫通孔32R,32Lが設けられている。貫通孔32Rは、ヒンジ部材32の長手方向一端部に設けられており、前後方向に貫通している。貫通孔32Lは、ヒンジ部材32の長手方向他端部に設けられており、前後方向に貫通している。
【0022】
右側枢支部33Rは、上記の第一回転軸を構成するための部位であって、蓋部材20をその第一回転軸を中心にして開閉(すなわち、左側開閉)動作させる部位である。右側枢支部33Rは、車両右側すなわちヒンジ部材32の長手方向一端側に配置されている。右側枢支部33Rは、軸体34Rと、アームスプリング35Rと、筒体36Rと、ダンパ37Rと、を有している。ヒンジ部材32は、長手方向一端側の軸体34Rを第一回転軸にして蓋部材20に対して揺動可能である。
【0023】
左側枢支部33Lは、上記の第二回転軸を構成するための部位であって、蓋部材20をその第二回転軸を中心にして開閉(すなわち、右側開閉)動作させる部位である。左側枢支部33Lは、車両左側すなわちヒンジ部材32の長手方向他端側に配置されている。左側枢支部33Lは、軸体34Lと、アームスプリング35Lと、筒体36Lと、ダンパ37Lと、を有している。ヒンジ部材32は、長手方向他端側の軸体34Lを第二回転軸にしてボックス本体10の後基部13に対して揺動可能である。
【0024】
開閉機構30は、また、ロックユニット39を有している。ロックユニット39は、蓋部材20の右側及び左側の少なくとも一方側をボックス本体10に対して閉位置に保持すると共に、一方側をボックス本体10に対して閉位置に保持した状態で他方側の閉位置保持を解除するユニットである。
【0025】
ロックユニット39は、左側ロック装置40と、右側ロック装置50と、伝達ロッド60と、フラップ装置70と、を有している。左側ロック装置40は、蓋部材20の左側を閉位置に保持すると共に、その左側の閉位置保持を解除する装置である。右側ロック装置50は、蓋部材20の右側を閉位置に保持すると共に、その右側の閉位置保持を解除する装置である。
【0026】
左側ロック装置40は、第一左側ロッド41と、第二左側ロッド42と、左側同期装置43と、左側ロッド付勢部材44と、左側操作部45と、を有している。第一左側ロッド41は、その後端部をヒンジ部材32の前面の係合孔32Hに挿抜してヒンジ部材32との係合と非係合とを切り替えるロッドである。第二左側ロッド42は、その前端部をボックス本体10の前基部14の後面の係合孔14aに挿抜してその前基部14との係合と非係合とを切り替えるロッドである。左側同期装置43は、第一左側ロッド41と第二左側ロッド42とを互いに近づける方向又は遠ざける方向に同期して移動させる装置である。左側ロッド付勢部材44は、第二左側ロッド42を蓋部材20に対して前方へ付勢する付勢力を発生するつるまきバネである。左側操作部45は、蓋部材20の左側の閉位置保持を解除するために操作者が押圧操作する際に触れるボタン部45aと、ボタン部45aと第二左側ロッド42とを係合させる機構部45bと、を有している。
【0027】
蓋部材20が閉状態にありかつ左側操作部45のボタン部45aが右方へ押圧操作されていないとき、又は、蓋部材20が右側開状態にあるときは、第二左側ロッド42の前端部は、蓋部材20の本体の前端よりも前方に突出しており、ボックス本体10の前基部14に係合している。また、このとき、第一左側ロッド41の後端部は、蓋部材20の本体の後端よりも後方に突出しており、ヒンジ部材32に係合している。以下、この状態を左ロック状態と称す。
【0028】
また、蓋部材20の閉状態において左側操作部45のボタン部45aが右方へ押圧操作されると、第二左側ロッド42の前端部が蓋部材20の本体の前端よりも後方に位置して蓋部材20内に入り込むことで、第二左側ロッド42と前基部14との係合が解除される。また、このとき、左側同期装置43の左回転により第一左側ロッド41の後端部が蓋部材20の本体の後端よりも前方に位置して蓋部材20内に入り込むことで、第一左側ロッド41とヒンジ部材32との係合が解除される。以下、この状態を左ロック解除状態と称す。尚、左側ロック装置40は、第二左側ロッド42とボックス本体10の前基部14との係合解除と第一左側ロッド41とヒンジ部材32との係合解除とが互いに略同じタイミングで行われるように構成されていることが望ましい。
【0029】
右側ロック装置50は、第一右側ロッド51と、第二右側ロッド52と、右側同期装置53と、右側ロッド付勢部材54と、右側操作部55と、を有している。第一右側ロッド51は、その後端部をヒンジ部材32の軸体34Rの中心に空いた貫通孔34Raを通してボックス本体10の後基部13の前面の係合孔13aに挿抜してその後基部13との係合と非係合とを切り替えるロッドである。第二右側ロッド52は、その前端部をボックス本体10の前基部14の後面の係合孔14bに挿抜してその前基部14との係合と非係合とを切り替えるロッドである。右側同期装置53は、第一右側ロッド51と第二右側ロッド52とを互いに近づける方向又は遠ざける方向に同期して移動させる装置である。右側ロッド付勢部材54は、第二右側ロッド52を蓋部材20に対して前方へ付勢する付勢力を発生するつるまきバネである。右側操作部55は、蓋部材20の右側の閉位置保持を解除するために操作者が押圧操作する際に触れるボタン部55aと、ボタン部55aと第二右側ロッド52とを係合させる機構部55bと、を有している。
【0030】
蓋部材20が閉状態にありかつ右側操作部55のボタン部55aが左方へ押圧操作されていないとき、又は、蓋部材20が左側開状態にあるときは、第二右側ロッド52の前端部は、蓋部材20の本体の前端よりも前方に突出しており、ボックス本体10の前基部14に係合している。また、このとき、第一右側ロッド51の後端部は、ヒンジ部材32の後端よりも後方に突出しており、ヒンジ部材32を通過してボックス本体10の後基部13に係合している。以下、この状態を右ロック状態と称す。
【0031】
また、蓋部材20の閉状態において右側操作部55のボタン部55aが左方へ押圧操作されると、第二右側ロッド52の前端部が蓋部材20の本体の前端よりも後方に位置して蓋部材20内に入り込むことで、第二右側ロッド52と前基部14との係合が解除される。また、このとき、右側同期装置53の右回転により第一右側ロッド51の後端部がヒンジ部材32の後端よりも前方に位置してヒンジ部材32内に入り込むことで、第一右側ロッド51と後基部13との係合が解除される。以下、この状態を右ロック解除状態と称す。尚、右側ロック装置50は、第二右側ロッド52とボックス本体10の前基部14との係合解除と第一右側ロッド51とボックス本体10の後基部13との係合解除とが互いに略同じタイミングで行われるように構成されていることが望ましい。
【0032】
伝達ロッド60は、左側ロック装置40及び右側ロック装置50のうちの何れか一方がロック解除状態にある場合に、そのうちの他方がロック状態からロック解除状態へ状態変化するのを阻止する部材である。左ロック解除状態では、伝達ロッド60が左右方向に移動することが規制されて、第一及び第二右側ロッド51,52が前後方向に移動することは規制されるので、右側ロック装置50が右ロック解除状態となるのは阻止される。また、右ロック解除状態では、伝達ロッド60は左右方向に移動するが、第一及び第二左側ロッド41,42が前後方向に移動することは規制されるので、左側ロック装置40が左ロック解除状態となるのは阻止される。
【0033】
フラップ装置70は、蓋部材20が右ロック状態かつ左ロック解除状態すなわち左側開状態にあるときに左側ロック装置40を左ロック解除状態に維持させる左側フラップ装置71と、蓋部材20が左ロック状態かつ右ロック解除状態すなわち右側開状態にあるときに右側ロック装置50を右ロック解除状態に維持させる右側フラップ装置72と、を有している。
【0034】
次に、両開き収納装置1の動作について説明する。
両開き収納装置1において、蓋部材20の閉状態では、第一左側ロッド41がヒンジ部材32に係合し、第一右側ロッド51がヒンジ部材32を通してボックス本体10の後基部13に係合し、かつ第二左側ロッド42及び第二右側ロッド52がボックス本体10の前基部14に係合するので、蓋部材20は、ボックス本体10の開口11を閉塞する閉状態に維持される。
【0035】
上記した蓋部材20の閉状態で左側操作部45のボタン部45aが右方へ押し込み操作されると、第二左側ロッド42が後方へ移動すると共に、左側同期装置43が左回りに回転して第一左側ロッド41が前方へ移動する。これらの移動が第二左側ロッド42とボックス本体10の前基部14との係合解除まで行われかつ第一左側ロッド41とヒンジ部材32との係合解除まで行われると、第一及び第二右側ロッド51,52がボックス本体10と係合した状態(すなわち、右側ロック装置50の右ロック状態)が維持されたまま左側ロック装置40が左ロック解除状態になる。これにより、蓋部材20の右側について閉状態が保持されたまま、蓋部材20の左側について閉状態の保持が解除される。
【0036】
蓋部材20が左ロック解除状態になると、ヒンジ部材32がボックス本体10の後基部13に対して揺動しない一方、蓋部材20が右側枢支部33Rのアームスプリング35Rの付勢力によりヒンジ部材32に対して揺動する。このため、左側操作部45のボタン部45aの右方への押圧操作が行われた場合は、図6に示す如く、ヒンジ部材32がボックス本体10に一体化された状態で、蓋部材20がそのヒンジ部材32ひいてはボックス本体10に対して右側の第一回転軸を中心にして回動する。これにより、蓋部材20の左側が開位置に向けて開かれる。
【0037】
また、上記した蓋部材20の閉状態で右側操作部55のボタン部55aが左方へ押し込み操作されると、第二右側ロッド52が後方へ移動すると共に、右側同期装置53が右回りに回転して第一右側ロッド51が前方へ移動する。これらの移動が第二右側ロッド52とボックス本体10の前基部14との係合解除まで行われかつ第一右側ロッド51とボックス本体10の後基部13との係合解除まで行われると、第一及び第二左側ロッド41,42がボックス本体10の前基部14又はヒンジ部材32と係合した状態(すなわち、左側ロック装置40の左ロック状態)が維持されたまま右側ロック装置50が右ロック解除状態になる。これにより、蓋部材20の左側について閉状態が保持されつつ、蓋部材20の右側について閉状態の保持が解除される。
【0038】
蓋部材20が右ロック解除状態になると、蓋部材20がヒンジ部材32に対して揺動しない一方、ヒンジ部材32が左側枢支部33Lのアームスプリング35Lの付勢力によりボックス本体10の後基部13に対して揺動する。このため、右側操作部55のボタン部55aの左方への押圧操作が行われた場合は、図7に示す如く、蓋部材20がヒンジ部材32に一体化された状態でボックス本体10に対して左側の第二回転軸を中心にして回動する。これにより、蓋部材20の右側が開位置に向けて開かれる。
【0039】
このように、両開き収納装置1において、蓋部材20は、ボックス本体10の開口11を覆った閉状態から、右側の第一回転軸を中心にして左側の開位置へ向けて開動作することが可能であると共に、左側の第二回転軸を中心にして右側の開位置へ向けて開動作することが可能である。蓋部材20は、第一回転軸及び第二回転軸のうちの何れか一方の回転軸を選択的に中心にして開閉動作することが可能である。また、開閉機構30のヒンジ部材32は、蓋部材20が右側の第一回転軸を中心にして開閉動作する際には蓋部材20に追従せずボックス本体10側に留まり、蓋部材20が左側の第二回転軸を中心にして開閉動作する際には蓋部材20に追従してボックス本体10に対して揺動する。
【0040】
作動機器90は、ボックス本体10側の電源装置から電力が供給されることにより作動する機器である。作動機器90は、例えば、車両乗員がアームレストとしての蓋部材20の上面に置いた前腕を温める目的などのために用いられるヒータやクーラ、或いは、点灯や点滅を行う照明やイルミネーションなどの照明装置である。以下、作動機器90は、電力供給により発熱するヒータに適用されるものとする。
【0041】
作動機器90は、蓋部材20に配設されている。作動機器90は、蓋部材20の表面を温めるヒータエレメントである。作動機器90は、図8及び図9に示す如く、発熱体91と、制御部92と、を有している。
【0042】
発熱体91は、電力供給により作動する作動部であって、具体的には、電力供給により発熱するヒータである。発熱体91は、例えば、線状に延びた熱線部材が面状に配置されて電極間が一本の熱線部材で又は二本の並列な熱線部材で接続された面状ヒータである。発熱体91は、蓋部材20の表面近傍に配置されており、具体的には、成形ウレタン材23の表面側すなわち成形ウレタン材23と表皮材24(具体的には、スラブウレタン24a)との間に配置されている。発熱体91は、蓋部材20の上面全域に亘って張り巡らされるように配置形成されている。尚、発熱体91は、蓋部材20の上面に車両乗員の前腕が置かれたときに車両乗員の指先が触れる可能性がある蓋部材20の前方や斜め上方前方へ向いた表面又は蓋部材20の下方に向いた裏面(例えば、蓋部材20の周縁裏面)を含めて配置されるものとするのが望ましい。
【0043】
制御部92は、発熱体91の発熱を制御する部位である。制御部92は、発熱体91の温度調整のためのサーミスタ及びサーモスタットなどを含む。制御部92は、サーミスタなどが樹脂ケースなどのケースで覆われたものである。制御部92は、発熱体91に比べて硬質であると共に、成形ウレタン材23に比べて硬質である。
【0044】
制御部92は、発熱体91に電気接続されている。制御部92は、蓋部材20とヒンジ部材32との揺動時に回転軸とならない第一回転軸よりも蓋部材20とヒンジ部材32との揺動時に回転軸となる第一回転軸に近い箇所に配置されている。また、制御部92は、後に詳述する如く、車両乗員が蓋部材20の上面に前腕を置いた際にその前腕に感じる触感性が損なわれない箇所に配置されている。
【0045】
作動機器90は、発熱体91及び制御部92がそれぞれ取り付けられたシート部93を有している。シート部93は、絶縁性を有するシート状に形成された部位である。シート部93は、後に詳述する如く、主に、蓋部材20の成形ウレタン材23と表皮材24との間に配置される。シート部93は、発熱体91により発熱させる領域の大きさに合わせて形成されている。尚、発熱体91は、一枚のシート部93上に取り付けられるものであってもよいが、二枚のシート部93に挟み込まれるものであってもよい。
【0046】
蓋部材20の成形ウレタン材23は、図12及び図13に示す如く、位置決め溝部23aと、位置決めボス部23bと、孔溝部23cを有している。位置決め溝部23aは、成形ウレタン材23の表面に設けられた、シート部93を嵌めて配置するための凹部である。位置決め溝部23aは、シート部93の形状や大きさに合わせて形成されている。位置決めボス部23bは、位置決め溝部23aに配置されたシート部93の移動規制を補助する部位である。位置決めボス部23bは、成形ウレタン材23の表面すなわち位置決め溝部23aの底面からピン状に突出している。位置決めボス部23bは、シート部93に設けられたボス孔に挿通される。尚、位置決めボス部23bは、位置的に離れた複数箇所(例えば図14に示す如く両端部同士)に設けられることがシート部93の位置ズレを抑制するうえで好ましい。
【0047】
孔溝部23cは、シート部93の一部が嵌るスリット状の孔又は溝である。孔溝部23cは、図13(A)に示す如く成形ウレタン材23の表裏で貫通した孔や、図13(B)に示す如く成形ウレタン材23の周縁に凹状に設けられた溝である。孔溝部23cは、成形ウレタン材23の表面に設けられた表面開口23dと、成形ウレタン材23の裏面に設けられた裏面開口23eと、を有している。孔溝部23cの形状は、長方形や円形,楕円形などである。
【0048】
尚、孔溝部23cは、シート部93上に取り付けられた制御部92を成形ウレタン材23の表面側から裏面側へ挿通することが可能な大きさや幅を有すればよく、孔溝部23cの大きさや幅は、成形ウレタン材23の存在に伴う蓋部材20への車両乗員の良好な触感性が損なわれない範囲でできるだけ小さいことが好ましい。例えば、孔溝部23cの幅は、15mm以内である。
【0049】
成形ウレタン材23の裏面とアウタ蓋材22の表面との間には、隙間空間25が形成されている。隙間空間25は、孔溝部23cに裏面開口23eを介して連通した位置に設けられている。隙間空間25は、シート部93上に取り付けられた制御部92を収容可能な大きさに形成されている。隙間空間25は、蓋部材20における蓋部材20が常に支持されるヒンジ部材32の長手方向一端側(すなわち、第一回転軸側)に設けられている。隙間空間25には、シート部93上に取り付けられた制御部92が収容配置されている。
【0050】
隙間空間25ひいては制御部92は、その内部に制御部92が収容されている状況でもその隙間空間25の上方に存在する成形ウレタン材23により車両乗員が感じる触感性が損なわれない高さ位置に設けられている。すなわち、隙間空間25の上方に存在する成形ウレタン材23の厚さは、車両乗員が感じる触感性が損なわれない程度に設定されている。尚、隙間空間25ひいては制御部92は、図11に示す如く、シートに正規に着座した車両乗員の肩部(図11に示すラインL)よりも後方、或いは、その車両乗員が前腕を蓋部材20の上面に置いたときに肘部の位置よりも後方に設けられることが好ましい。
【0051】
作動機器90のシート部93は、作動領域部93aと、制御領域部93bと、嵌合領域部93cと、を有している。作動領域部93aは、発熱体91が取り付けられた領域が占める部位である。作動領域部93aは、蓋部材20の上面略全域に対応しており、略長方形状に形成されている。制御領域部93bは、制御部92が取り付けられた領域が占める部位である。嵌合領域部93cは、成形ウレタン材23の孔溝部23cに嵌る部位である。制御領域部93b及び嵌合領域部93cは、作動領域部93aから図8に示す如く右方へ突出するように互いに一体に形成されており、略長方形状に形成されている。制御領域部93bと嵌合領域部93cとが一体化された大きさは、隙間空間25に制御部92が収容されるように成形ウレタン材23の表面から孔溝部23cを経由して隙間空間25へ至ることができる程度に設定されている。
【0052】
制御領域部93bは、嵌合領域部93cを介して作動領域部93aに一体化されている。すなわち、嵌合領域部93cは、作動領域部93aと制御領域部93bとの間に設けられている。尚、嵌合領域部93cには、制御領域部93bの制御部92に電気接続する発熱体91が存在するが、この嵌合領域部93cの発熱体91は、蓋部材20の表面の温めにあまり寄与せず、作動領域部93aの発熱体91への電流流通を実現するためのものである。
【0053】
制御部92は、蓋部材20の表面よりも奥側、具体的には、成形ウレタン材23の孔溝部23cの表面開口23dよりも奥側に配置され、更には、孔溝部23cの裏面開口23eよりも奥側である成形ウレタン材23の裏面とアウタ蓋材22の表面との間の隙間空間25に配置されている。制御部92が隙間空間25に配置された状態では、シート部93の嵌合領域部93cは、成形ウレタン材23の孔溝部23cに嵌る。
【0054】
蓋部材20内の作動機器90の制御部92は、ボックス本体10に設けられた電源装置に一端が接続された配策部材95の他端に接続されている。作動機器90は、ボックス本体10側の電源装置から配策部材95を介して供給される電力により発熱する。
【0055】
配策部材95は、ボックス本体10側の電源装置と作動機器90とを繋ぐ電気配線ハーネスである。配策部材95は、外周部が保護被膜により被覆された状態で使用される可撓性を有する部材である。配策部材95の一部は、ヒンジ部材32に配策されている。配策部材95は、ヒンジ配策部96と、第一可変配策部97と、第二可変配策部98と、を有している。
【0056】
ヒンジ配策部96は、配策部材95のうちヒンジ部材32に配策される部位である。第一可変配策部97は、配策部材95のうち、主に蓋部材20が第一回転軸を中心にして開閉動作する際にその開閉動作に伴って変形して蓋部材20の開閉動作を許容する余長(すなわち、弛み)を有する部位のことである。第二可変配策部98は、配策部材95のうち、主に蓋部材20が第二回転軸を中心にして開閉動作する際にその開閉動作に伴って変形して蓋部材20の開閉動作を許容する余長(すなわち、弛み)を有する部位のことである。
【0057】
このように、両開き収納装置1においては、蓋部材20に作動機器90を内蔵して発熱体91を蓋部材20の表面近傍に配置し、その発熱体91をボックス本体10側の電源装置からの配策部材95を介した電力供給により発熱させることにより、蓋部材20の表面を温めることができる。
【0058】
また、制御部92は、発熱体91に比べて硬質でありかつ成形ウレタン材23に比べて硬質である。このため、仮に制御部92が蓋部材20の表面近傍(例えば、成形ウレタン材23の表面側)に配置されるものとすると、前腕を蓋部材20の上面に置いた車両乗員が感じる触感性が損なわれるおそれがある。
【0059】
これに対して、両開き収納装置1においては、作動機器90の発熱体91が蓋部材20の表面近傍に配置されつつ、その発熱体91の発熱を制御する制御部92が成形ウレタン材23の孔溝部23cの表面開口23dよりも奥側に、具体的には、その孔溝部23cの裏面開口23eよりも奥側であって成形ウレタン材23の裏面とアウタ蓋材22の表面との間の隙間空間25に配置される。
【0060】
この構造においては、制御部92が成形ウレタン材23の表面側に露出することが無くなり、成形ウレタン材23の表面側に制御部92の存在による段差が生じることが無くなって、表皮材24の裏面直下に制御部92が配置されることが無くなる。このため、車両乗員が蓋部材20の上面に前腕を置いて仮にその前腕が制御部92の上方に位置したときにも、その制御部92によって車両乗員が感じる触感性が損なわれるのは回避されると共に、成形ウレタン材23の表面側での段差に起因して蓋部材20の見栄えが悪化するのは防止される。
【0061】
特に、上記の構造においては、制御部92の上方に成形ウレタン材23が存在することとなる。このため、車両乗員が蓋部材20の上面に前腕を置いて仮にその前腕が制御部92の上方に位置したときにも、成形ウレタン材23のクッション性によって車両乗員が感じる触感性が向上する。
【0062】
従って、両開き収納装置1によれば、制御部92を含む作動機器90を蓋部材20に内蔵することによりその作動機器90の作動(具体的には、ヒータ機能)を確保しつつ、蓋部材20がアームレストとして用いられる場合の車両乗員が感じる触感性を良好に確保することができる。
【0063】
次に、両開き収納装置1の製造手順について説明する。
まず、蓋部材20の各構成部品(具体的には、インナ蓋材21とアウタ蓋材22と成形ウレタン材23と表皮材24と)を用意すると共に、作動機器90の発熱体91及び制御部92が取り付けられたシート部93とボックス本体10とを用意する。次に、図14(A)に示す如くアウタ蓋材22を治具にセットしたうえで、図14(B)に示す如くそのアウタ蓋材22の表面に成形ウレタン材23を載置する。
【0064】
そして、図14(C)に示す如く、作動機器90のシート部93(具体的には、作動領域部93a)を、その成形ウレタン材23の表面に位置決め溝部23a及び位置決めボス部23bを用いて位置決めしながら載置する。その後、図14(D)に示す如く、シート部93の制御領域部93b及び嵌合領域部93cを成形ウレタン材23の表面開口23dから孔溝部23cに挿入し、その制御領域部93bを成形ウレタン材23の裏面開口23eから突出させて隙間空間25を形成する箇所に配置して、蓋中間体を製造する。
【0065】
次に、上記の蓋中間体を治具から外し、その蓋中間体のアウタ蓋材22の裏面に形成されたリブや爪部に配策部材95を固定したうえで、その中間体に表皮材24を巻いてタッカや溶着で固定する。そして、配策部材95の固定を外したうえで、インナ蓋材21を中間体のアウタ蓋材22に組み付けて、蓋部材20を製造する。その蓋部材20の製造後、配策部材95をヒンジ部材32に配策する。そして、蓋部材20をボックス本体10に組み付けて、配策部材95をボックス本体10側で配策する。
【0066】
上記の手順によれば、発熱体91が成形ウレタン材23の表面側に配置されると共に制御部92が成形ウレタン材23の裏面側に配置された蓋部材20のアッシーを製造して、その蓋部材20をボックス本体10に組み付けた両開き収納装置1を製造することができる。
【0067】
尚、上記の実施形態においては、インナ蓋材21とアウタ蓋材22とを一体化したもの又はアウタ蓋材22が特許請求の範囲に記載した「ベース基材」に、成形ウレタン材23が特許請求の範囲に記載した「補助部材」に、位置決め溝部23a及び位置決めボス部23bがそれぞれ特許請求の範囲に記載した「位置決め部」に、それぞれ相当している。
【0068】
ところで、上記の実施形態においては、作動機器90の制御部92が、成形ウレタン材23の孔溝部23cの裏面開口23eよりも奥側に、具体的には、成形ウレタン材23の裏面とアウタ蓋材22の表面との間の隙間空間25に配置されている。しかしながら、本発明は、これに限定されるものではなく、図15に示す如く、作動機器90の制御部92が、成形ウレタン材23の孔溝部23cに嵌るようにその孔溝部23c内に配置されることとしてもよい。この場合には、作動機器90のシート部93は、発熱体91が取り付けられた作動領域部93aと、制御部92が取り付けられて孔溝部23cに嵌る制御領域部93dと、を有することとすればよい。
【0069】
かかる変形形態においても、制御部92が成形ウレタン材23の表面側に露出することが無くなり、成形ウレタン材23の表面側に制御部92の存在による段差が生じることが無くなって、表皮材24の裏面直下に制御部92が配置されることが無くなる。従って、制御部92を含む作動機器90を蓋部材20に内蔵することによりその作動機器90の作動(具体的には、ヒータ機能)を確保しつつ、蓋部材20がアームレストとして用いられる場合の車両乗員が感じる触感性を良好に確保することができる。
【0070】
尚、この変形形態においては、孔溝部23cが、実施形態と同様に、成形ウレタン材23の表裏で貫通するもの、又は、成形ウレタン材23の周縁に凹状に設けられたものであって、表裏それぞれに開口(すなわち、表面開口23d及び裏面開口23e)が設けられる孔又は溝であってもよいが、図15に示す如く、孔溝部23cが、成形ウレタン材23の表面に開口(すなわち、表面開口23d)が設けられる一方で成形ウレタン材23の裏面に開口が設けられない溝であってもよい。
【0071】
また、上記の実施形態においては、作動機器90が電力供給により作動するヒータであるものとした。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、作動機器90が、電力供給により作動するクーラや照明装置などの、作動制御を行う制御部を有するものであってよい。
【0072】
更に、上記の実施形態においては、車両用内装品1が、蓋部材20が第一回転軸及び第二回転軸のうち何れかを選択的に中心にして開動作する両開き収納装置であるものとした。しかし、本発明は、これに限定されるものではなく、車両用内装品1が、蓋部材20が単一の回転軸を中心にして開動作する片開き収納装置であるものとしてもよく、また、収納装置以外の車両用シートやドア内壁などに適用することとしてもよい。
【0073】
尚、本発明は、上述した実施形態や変形形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0074】
1:車両用内装品(両開き収納装置)、10:ボックス本体、11:開口、20:蓋部材、21:インナ蓋材、22:アウタ蓋材、23:成形ウレタン材、23a:位置決め溝部、23b:位置決めボス部、23c:孔溝部、24:表皮材、25:隙間空間、30:開閉機構、32:ヒンジ部材、90:作動機器、91:発熱体、92:制御部、93:シート部、93a:作動領域部、93b,93d:制御領域部、93c:嵌合領域部。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
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