(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】スプリット型リッド装置及びその組立方法
(51)【国際特許分類】
B60R 7/04 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B60R7/04 C
(21)【出願番号】P 2021142782
(22)【出願日】2021-09-01
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 直行
(72)【発明者】
【氏名】菱田 裕
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 昂平
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-282094(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2007-0114389(KR,A)
【文献】特開2002-079887(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0047955(US,A1)
【文献】特開2021-050511(JP,A)
【文献】米国特許第10040397(US,B1)
【文献】特開2020-032977(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第110871739(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに組み付けられて開口を有するボックス本体をなす第一ボックス部品及び第二ボックス部品と、
前記開口の第一領域を開閉し、前記第一ボックス部品に開閉動作可能に支持される第一リッドと、
前記開口の第二領域を開閉し、前記第二ボックス部品に開閉動作可能に支持される第二リッドと、
前記第一リッド及び前記第二リッドが共に閉位置にあるときに前記第一リッドと前記第二リッドとが互いに対向する対向部位同士の間に形成される隙間と、
を備え、
前記第一ボックス部品及び前記第二ボックス部品はそれぞれ、前記対向部位同士の離接方向の距離を調整可能な調整代が設けられて互いに仮結合される仮結合部を有する、スプリット型リッド装置。
【請求項2】
前記距離が前記隙間の所定寸法に調整された状態で、前記仮結合部により互いに仮結合されている前記第一ボックス部品及び前記第二ボックス部品を互いに本結合する結合部材を備える、請求項1に記載されたスプリット型リッド装置。
【請求項3】
前記第一ボックス部品及び前記第二ボックス部品はそれぞれ、枠体に沿って延在し互いにオーバーラップするオーバーラップ部を有する、請求項1又は2に記載されたスプリット型リッド装置。
【請求項4】
請求項1乃至3の何れか一項に記載されたスプリット型リッド装置を組み立てる組み立て方法であって、
前記第一ボックス部品及び前記第二ボックス部品を前記仮結合部にて互いに仮結合する第一工程と、
前記第一ボックス部品及び前記第二ボックス部品が前記仮結合部にて互いに仮結合された状態で、前記隙間に相当する厚さを有する補助治具を前記対向部位同士の間に配置して前記第一リッドと前記第二リッドとで挟み込む第二工程と、
前記補助治具が前記第一リッドと前記第二リッドとで挟み込まれた状態で、前記第一ボックス部品及び前記第二ボックス部品を互いに本結合する第三工程と、
を備える、スプリット型リッド装置の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、スプリット型リッド装置及びその組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、リッドが観音開きするスプリット型リッド装置が知られている(例えば、特許文献1)。このスプリット型リッド装置は、開口を有するボックス本体と、ボックス本体の開口を開閉する二つのリッドと、を備えている。これら二つのリッドをスムースに開閉動作させるためには、リッドを、両リッドが共に閉位置にあるときに両リッドが互いに対向する対向部位同士の間に隙間が設けられるように構成することが必要である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記した対向部位同士の隙間は、リッドの開閉動作時に両リッドが互いに干渉しない最小の大きさ以上を確保することが必要であるが、リッドとボックス本体との間には組付バラツキが存在するので、上記の隙間は、その組付バラツキが生じても上記最小の大きさ未満にならないようにその最小の大きさよりも大きめを目標にして形成されることが一般的である。
【0005】
しかしながら、上記の如く隙間が最小の大きさよりも大きめを目標にして形成されると、上記の組付バラツキに起因して、実際に形成される隙間が最小の大きさよりも大きくなることがある。実際の隙間が最小の大きさよりも大きいと、その隙間からボックス本体内が丸見えになり或いはその隙間からボックス本体内に物が落下し易くなる事態が生じる。そこで、その事態の発生防止のため、各リッドそれぞれの側面にリッド閉位置で上記の隙間を塞ぐためのゴムひれなどを設けることが考えられる。しかし、このようにリッドの側面に上記のゴムひれなどが設けられると、リッドの開位置での見栄えが悪化し、或いは、そのリッド側面をアームレストとして用いる場合にそのリッド側面のゴムひれなどがアームレスト機能を阻害することとなってしまう。
【0006】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、二つのリッドとボックス本体との間に組付バラツキが存在しても、両リッドの閉位置での対向部位同士の隙間をできるだけ最小の大きさに抑えることが可能なスプリット型リッド装置及びその組立方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一態様は、互いに組み付けられて開口を有するボックス本体をなす第一ボックス部品及び第二ボックス部品と、前記開口の第一領域を開閉し、前記第一ボックス部品に開閉動作可能に支持される第一リッドと、前記開口の第二領域を開閉し、前記第二ボックス部品に開閉動作可能に支持される第二リッドと、前記第一リッド及び前記第二リッドが共に閉位置にあるときに前記第一リッドと前記第二リッドとが互いに対向する対向部位同士の間に形成される隙間と、を備え、前記第一ボックス部品及び前記第二ボックス部品はそれぞれ、前記対向部位同士の離接方向の距離を調整可能な調整代が設けられて互いに仮結合される仮結合部を有する、スプリット型リッド装置である。
【0008】
この構成によれば、第一ボックス部品と第二ボックス部品とが仮結合部にて互いに仮結合された状態では、各ボックス部品の仮結合部の調整代により閉位置における第一リッドの対向部位と第二リッドの対向部位との距離の調整が可能である。この点、二つのボックス部品が互いに仮結合された状態で、二つのリッドの閉位置での対向部位同士の距離を調整することで、対向部位同士の隙間をできるだけ最小の大きさとすることができる。従って、二つのリッドとボックス本体との間に組付バラツキが存在しても、両リッドの閉位置での対向部位同士の隙間をできるだけ最小の大きさに抑えることができる。
【0009】
また、本発明の一態様は、上記のスプリット型リッド装置を組み立てる組み立て方法であって、前記第一ボックス部品及び前記第二ボックス部品を前記仮結合部にて互いに仮結合する第一工程と、前記第一ボックス部品及び前記第二ボックス部品が前記仮結合部にて互いに仮結合された状態で、前記隙間に相当する厚さを有する補助治具を前記対向部位同士の間に配置して前記第一リッドと前記第二リッドとで挟み込む第二工程と、前記補助治具が前記第一リッドと前記第二リッドとで挟み込まれた状態で、前記第一ボックス部品及び前記第二ボックス部品を互いに本結合する第三工程と、を備える、スプリット型リッド装置の組立方法である。
【0010】
この構成によれば、第一ボックス部品と第二ボックス部品とが仮結合部にて互いに仮結合された状態では、各ボックス部品の仮結合部の調整代により閉位置における第一リッドの対向部位と第二リッドの対向部位との距離の調整が可能である。この点、二つのボックス部品が互いに仮結合された状態で、二つのリッドの閉位置での対向部位同士の距離を調整することで、対向部位同士の隙間をできるだけ最小の大きさとすることができる。従って、二つのリッドとボックス本体との間に組付バラツキが存在しても、両リッドの閉位置での対向部位同士の隙間をできるだけ最小の大きさに抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【
図1】本発明の一実施形態に係るスプリット型リッド装置の図である。
【
図2】スプリット型リッド装置の閉位置での前面図である。
【
図3】スプリット型リッド装置の分解斜視図である。
【
図4】スプリット型リッド装置が備える二つのボックス部品の仮結合部同士が互いに仮結合される状況を表した断面図である。
【
図6】
図5に示す仮結合部同士が互いに仮結合される状況を表した断面図である。
【
図7】スプリット型リッド装置の組立手順を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、
図1~
図7を用いて、本発明に係るスプリット型リッド装置の具体的な実施の形態について説明する。
【0013】
本実施形態のスプリット型リッド装置1(以下、単にリッド装置1と称す。)は、例えば車室内のセンターコンソールに設置されるコンソールボックスなどである。尚、リッド装置1は、車両乗員の腕を置くためのアームレストとして用いられるものであってよい。
【0014】
以下、リッド装置1において方向を示す内容は、特段の事情が無い限り、リッド装置1が設置される車両を基準にしたものとする。例えば、「右側」とは車両進行方向に対する車両右側を指し、「左側」とは車両進行方向に対する車両左側を指すものとする。
【0015】
リッド装置1は、
図1、
図2、及び
図3に示す如く、ボックス本体10と、リッド20と、を備えている。
【0016】
ボックス本体10は、物を収容することが可能なボックス体である。ボックス本体10は、略直方体形状に形成されている。ボックス本体10は、車両の車体フロアにボルト締結などで固定されている。ボックス本体10は、収容部11と、開口12と、を有している。収容部11は、物を収容する空間を形成する部位である。収容部11は、底壁と側壁とにより形成されている。開口12は、収容部11内への出入口である。開口12は、収容部11の上部に形成されている。
【0017】
ボックス本体10は、
図3に示す如く、二つの分割された部品により構成されている。ボックス本体10は、第一ボックス部品10aと、第二ボックス部品10bと、により形成されている。すなわち、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bは、互いに組み付けられてボックス本体10をなしている。
【0018】
第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとは、ボックス本体10の左右略中央で分割されている。第一ボックス部品10aは左側に配置されており、第二ボックス部品10bは右側に配置されている。第一ボックス部品10aは、収容部11の左半分の領域及び開口12の左半分の領域を含む。第二ボックス部品10bは、収容部11の右半分の領域及び開口12の右半分の領域を含む。
【0019】
第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bはそれぞれ、左右方向に互いに対向するボックス対向部15を有している。各ボックス対向部15は、右方向に向いた面又は左方に向いた面に形成されている。各ボックス対向部15は、ボックス部品10a,10bの枠体(すなわち、底壁及び側壁)に沿って延在しており、略コの字状に形成されている。第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bは、ボックス対向部15同士が対向した状態に互いに組付けられてボックス本体10を形成する。
【0020】
第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bはそれぞれ、互いにオーバーラップするオーバーラップ部16を有している。両ボックス部品10a,10bのオーバーラップ部16同士は、ボックス対向部15近傍において収容部11の内外方向に重なるように配置されている。各オーバーラップ部16は、ボックス部品10a,10bの枠体(すなわち、底壁及び側壁)に沿って帯状に延在しており、略コの字状に形成されている。各オーバーラップ部16の左右方向(すなわち、オーバーラップ幅方向)における長さ(すなわち、帯幅)は、ボックス本体10やリッド20の製造バラツキやその組付バラツキなどが積み重なってもオーバーラップ部16同士が必ずオーバーラップするように設定されている。
【0021】
第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bはそれぞれ、互いに仮結合される仮結合部17を有している。具体的には、第一ボックス部品10aは、仮結合部17aを有している。第二ボックス部品10bは、仮結合部17bを有している。仮結合部17aと仮結合部17bとは、対に構成されており、複数対(
図3においては7対)設けられている。
【0022】
仮結合部17a,17bは、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが互いに本結合されて固定される前に両ボックス部品10a,10bが分離しないように仮結合を行うための部位である。この仮結合は、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが互いに左右方向に調整代分だけ相対移動することが許容される一方、それらの両ボックス部品10a,10bが互いに上下方向及び前後方向に相対移動することがほとんど許容されないものである。
【0023】
仮結合部17a,17b同士は、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが互いに左右方向にスライド移動することを許容する形状に形成されている。仮結合部17a,17bは、互いに仮結合された状態で両ボックス部品10a,10bの左右方向への移動が許容される調整代を有している。この調整代は、
図4に示す如く、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが中央位置から左右方向にXmm(例えば1mm)ずつ離接できる合計(2・X)mm程度に設定されている。
【0024】
例えば
図4に示す如く、仮結合部17aは、第一ボックス部品10aのボックス対向部15近傍かつオーバーラップ部16近傍に配置されている。仮結合部17aは、オーバーラップ部16の外面側の支持部18から第二ボックス部品10b側である右方へ突出するように形成されている。仮結合部17aは、第二ボックス部品10bの仮結合部17bが係合し得る爪部17a1を有している。爪部17a1は、仮結合部17aの突出先端側に設けられている。爪部17a1は、仮結合部17aの突出先端部の外面からボックス本体10から離れる外方へ突出するように形成されている。爪部17a1は、ボックス本体10に接近する内方へ弾性変形可能である。仮結合部17aは、爪部17a1の弾性変形により幅が後述の孔部17b1の大きさよりも小さくなるように構成されている。
【0025】
仮結合部17bは、第二ボックス部品10bのボックス対向部15近傍かつオーバーラップ部16近傍に配置されている。仮結合部17bは、オーバーラップ部16の外面からボックス本体10から離れるボックス外方へ突出するように形成されている。仮結合部17bは、第一ボックス部品10aの仮結合部17aが挿入される孔部17b1を有している。孔部17b1は、仮結合部17aの爪部17a1が弾性変形した状態で仮結合部17aが仮結合部17bを左右方向に貫通できるように形成されている。
【0026】
第一ボックス部品10aの仮結合部17aは、第二ボックス部品10bの仮結合部17bに係合し得る。具体的には、仮結合部17aは、爪部17a1が弾性変形した状態で仮結合部17bの孔部17b1に挿入され、その後は、爪部17a1の弾性変形解除により孔部17b1の縁部に引っ掛かり得る状態になる。この場合、
図3に示す如く、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとは、上記の調整代分だけ左右方向に移動することができ、具体的には、左右方向のうち互いに接近する方向に仮結合部17a,17b同士が当接するまで移動することができると共に、左右方向のうち互いに離れる方向に爪部17a1が孔部17b1の縁部に引っ掛かるまで移動することができる。
【0027】
尚、
図4に示す仮結合部17a,17bの構成に代えて、例えば
図5及び
図6に示す仮結合部107a,107bの構成とされてもよい。
【0028】
例えば、仮結合部107aは、第一ボックス部品10aのボックス対向部15近傍かつオーバーラップ部16近傍に配置されている。仮結合部107aは、オーバーラップ部16から第二ボックス部品10b側である右方へ突出するように形成されている。仮結合部107aは、第二ボックス部品10bの後述の孔部107b3に挿入される。仮結合部107aは、第二ボックス部品10bの後述の爪部107b2が係合し得る孔部107a1を有している。孔部107a1は、仮結合部107aの先端側に、爪部107b2がボックス本体10の内外方向に進入できるように設けられている。
【0029】
仮結合部107bは、第二ボックス部品10bのボックス対向部15近傍かつオーバーラップ部16近傍に配置されている。仮結合部107bは、枠体部107b1と、爪部107b2と、を有している。枠体部107b1は、オーバーラップ部16の外面からボックス本体10から離れるボックス外方へ突出するように形成されている。枠体部107b1は、第一ボックス部品10aの仮結合部107aが挿入される孔部107b3を有している。孔部107b3は、仮結合部107aが枠体部107b1を左右方向に貫通できるように形成されている。爪部107b2は、第二ボックス部品10bの外面における枠体部107b1よりも右方の箇所にボックス外方へ突出するように形成されている。爪部107b2は、第一ボックス部品10aの仮結合部107aの孔部107a1に進入する。
【0030】
リッド20は、ボックス本体10の開口12を開閉する蓋体である。リッド20は、略長方形状に形成されている。リッド20は、二つに分割されて構成されている。すなわち、リッド20は、第一リッド21と、第二リッド22と、を有している。
【0031】
第一リッド21は、開口12の左半分の領域を開閉する蓋部品である。第一リッド21は、基材とクッション材とにより構成されている。第一リッド21は、ボックス本体10の第一ボックス部品10aに開閉動作可能に支持されている。第一リッド21は、前後方向に延びる軸部を中心にして開閉動作することにより、開口12の左半分の領域を開閉する。第一リッド21は、ボックス本体10に対して開口12を閉塞する閉位置から所定角度(例えば100°)をなす全開位置まで開動作することが可能である。
【0032】
第二リッド22は、開口12の右半分の領域を開閉する蓋部品である。第一リッド21は、基材とクッション材とにより構成されている。第二リッド22は、ボックス本体10の第二ボックス部品10bに開閉動作可能に支持されている。第二リッド22は、前後方向に延びる軸部を中心にして開閉動作することにより、開口12の右半分の領域を開閉する。第二リッド22は、ボックス本体10に対して開口12を閉塞する閉位置から所定角度(例えば100°)をなす全開位置まで開動作することが可能である。
【0033】
リッド装置1は、
図3に示す如く、リッド20をボックス本体10に対して開閉動作させる開閉機構60を備えている。開閉機構60は、第一リッド21及び第二リッド22をそれぞれ個別に開閉動作させることが可能である。開閉機構60は、第一リッド21の前後それぞれに設けられていると共に、第二リッド22の前後それぞれに設けられている。前後一対の開閉機構60は、互いに連動して作動する。また、左右の開閉機構60は、別個独立して作動する。
【0034】
開閉機構60は、アーム部材61と、付勢部材62と、を有している。アーム部材61は、ボックス本体10とリッド20とを繋ぐ部材である。アーム部材61の一端部は、ボックス本体10に回動可能に支持されている。アーム部材61の他端部は、リッド20に固定されている。アーム部材61は、一端部を中心にしてボックス本体10に対して回動することが可能である。
【0035】
付勢部材62は、アーム部材61ひいてはリッド20を開位置に向けて付勢する付勢力を発生するバネ部材である。付勢部材62は、例えば、ねじリコイルバネである。付勢部材62の一端部は、ボックス本体に支持されている。付勢部材62の他端部は、アーム部材61に固定されている。付勢部材62の付勢力は、リッド20の閉位置で最大である。
【0036】
リッド20の第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、閉位置でロック部材により閉ロックされることが可能である。そして、第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、ロック解除操作によりロック部材による閉ロックが解除された場合に、付勢部材62の付勢力によりアーム部材61が回動することにより開位置に向けて開動作する。また、第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、閉位置でそのリッド21,22又はアーム部材61の動作が規制部材(図示せず)に規制されることにより動作停止する。
【0037】
尚、第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、車両乗員によりそのリッド21,22が付勢部材62の付勢力に抗して押圧操作されてアーム部材61を逆方向に回動させることにより閉位置に向けて閉動作する。また、開閉機構60は、リッド20の開閉速度を一定に維持するようにダンパ装置を備えることとしてもよい。
【0038】
リッド装置1は、隙間30を備えている。隙間30は、第一リッド21及び第二リッド22が共に閉位置にあるときに第一リッド21と第二リッド22とが互いに対向するリッド対向部位21a,22a同士の間に形成される隙間のことである。リッド対向部位21a,22aはそれぞれ、リッド21,22の閉位置でリッド21,22の側面となる部位である。リッド対向部位21a,22aはそれぞれ、第一リッド21及び第二リッド22の閉位置で上下方向及び前後方向の双方に延びるように平面状に形成されている。リッド対向部位21a,22aは、リッド21,22の閉位置で隙間30を空けた状態で互いに平行に沿う。
【0039】
隙間30は、第一リッド21及び第二リッド22が閉位置と全開位置との間で開閉動作する際に互いに干渉しない最小の大きさ(例えば、3mm)Sに形成されている。この隙間30の形成は、後に詳述する如く、第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとの左右方向(すなわち、離接方向)の距離が所定寸法に調整されることにより実現される。
【0040】
リッド装置1は、結合部材40を備えている。結合部材40は、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bを互いに本結合して固定する部材である。結合部材40としては、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bの前面に取り付けられる結合部材40Fと、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bの後面に取り付けられる結合部材40Bと、がある。結合部材40は、仮結合部17a,17bにより第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bが互いに仮結合されかつリッド対向部位21a,22a同士の左右方向の距離が所定寸法に調整された状態で、それらの第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bを互いに本結合する。
【0041】
結合部材40は、板状に形成されたカバー部材である。結合部材40は、第一ボックス部品10aの左右幅と第二ボックス部品10bの左右幅とを加算した幅以内の左右幅を有している。結合部材40は、例えば複数のスクリュ41が第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bに締め付けられることにより第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bを互いに本結合する。
【0042】
リッド装置1は、サイドパネル50を備えている。サイドパネル50は、ボックス本体10側と乗員席とを仕切る仕切り板である。サイドパネル50は、前後方向に延在して形成されている。サイドパネル50は、ボックス本体10を挟んで左右両側に配置されている。ボックス本体10は、サイドパネル50の後部側に配置されている。尚、サイドパネル50の前部側には、シフトノブやサイドブレーキなどの車両操作系やカップホルダなどが配置されてよい。
【0043】
次に、
図7を用いてリッド装置1の組立方法について説明する。
リッド装置1の組立前、リッド装置1の構成部品である第一ボックス部品10a、第二ボックス部品10b、第一リッド21、第二リッド22、アーム部材61、付勢部材62、結合部材40、サイドパネル50を用意する。
【0044】
まず、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bのボックス対向部15同士が対向されて、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bが仮結合部17a,17bにて互いに仮結合される(
図7(A)参照)。この仮結合の状態では、ボックス対向部15同士が対向し、オーバーラップ部16同士がオーバーラップしつつ、両ボックス部品10a,10bが仮結合部17a,17bの調整代分だけ左右方向に相対移動することが許容される。そして、その第一ボックス部品10aに第一リッド21が取り付けられて回動可能に支持されると共に、その第二ボックス部品10bに第二リッド22が取り付けられて回動可能に支持される(
図7(B)参照)。
【0045】
次に、上記の如く第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bが仮結合部17a,17bにて互いに仮結合された状態で、補助治具70が第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとの間に配置され、第一リッド21及び第二リッド22それぞれの閉位置への閉動作によりその補助治具70が第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとの間に介在する(
図7(C)及び(D)参照)。
【0046】
上記の如く補助治具70が第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとの間に介在しても、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bが結合部材40により互いに本結合される前は、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bは、仮結合部17a,17bの調整代分だけ左右方向に相対移動することが許容される。
【0047】
補助治具70は、一定厚さに形成された板状の部材である。補助治具70の厚さは、隙間30に相当する厚さに設定されている。具体的には、補助治具70の厚さは、隙間30の大きさとしての目標値と同じに設定されている。尚、補助治具70の厚さは、上記の隙間30の目標値よりも僅かに大きく設定されていてもよい。これは、押圧治具による押圧により第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとに挟み込まれた補助治具70が両リッド対向部位21a,22aの間から外された後に、補助治具70が無くなることに起因して第一リッド21及び第二リッド22が互いに接近する方向に相対移動することを考慮したものである。
【0048】
上記の如く補助治具70が第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとの間に介在した後、押圧治具(図示せず)の押圧によりそれらの第一リッド21及び第二リッド22が互いに接近する方向に前進されて相対移動する。この押圧治具による押圧は、第一リッド21及び第二リッド22の前端から後端にかけて偏りなく力が左右方向に加わるように行われる。第一リッド21及び第二リッド22が押圧治具により相対移動すると、その相対移動に連動して、両リッド21,22に支持される第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bが相対移動する。
【0049】
上記の第一リッド21と第二リッド22との接近方向への相対移動は、補助治具70が第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとにより挟み込まれるまで行われる(
図7(D)参照)。そして、補助治具70が第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとに当接して両リッド対向部位21a,22aにより挟み込まれると、上記の相対移動が停止される。
【0050】
上記の相対移動が停止されると、次に、結合部材40が、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bの前面及び後面それぞれにスクリュ41が締め付けられることにより第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bを互いに本結合する(
図7(E)参照)。結合部材40による本結合が行われると、リッド装置1の組み立てが完了する。
【0051】
リッド装置1の組み立てが完了すると、押圧治具の押圧が解除されると共に、補助治具70が第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとの間から外される。尚、補助治具70をリッド対向部位21a,22aの間から外すうえでは、第一リッド21及び第二リッド22を開動作させることとしてもよい。
【0052】
上記のリッド装置1において、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが仮結合部17a,17bにより互いに仮結合された状態では、仮結合部17a,17bの調整代により、閉位置における第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとの距離が調整可能である。このため、リッド装置1の組み立て中の上記仮結合後は、閉位置において第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとの間に形成される隙間30の大きさが補助治具70の厚さとなるまで、第一リッド21と第二リッド22とが左右方向に互いに相対移動することができ、ひいては、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが左右方向に互いに相対移動することができる。
【0053】
そして、組み立てが完了したリッド装置1では、閉位置において第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとの間に形成される隙間30の大きさが補助治具70の厚さに相当する状態で、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが結合部材40により互いに本結合されている。上記の如く、補助治具70の厚さは、隙間30の大きさとしての目標値と同じに設定されている。このため、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが互いに本結合された状態では、上記の隙間30をその大きさが目標値(すなわち、第一リッド21と第二リッド22とが開閉動作中に互いに干渉しない最小の大きさ)になるように形成することができる。
【0054】
このリッド装置1の構成及びその組立方法によれば、ボックス本体10とリッド20との間に組付バラツキが存在し或いはボックス本体10やリッド20の製造バラツキが存在しても、閉位置において第一リッド21のリッド対向部位21aと第二リッド22のリッド対向部位22aとの間に形成される隙間30の大きさを目標値(正寸)に保ちつつ、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとを互いに本結合することができる。
【0055】
従って、上記の組付バラツキや製造バラツキが存在しても、第一リッド21及び第二リッド22の閉位置でのリッド対向部位21a,22a同士の隙間30をできるだけ最小の大きさに抑えることができる。このため、上記の隙間30の大きさが最小の大きさよりも大きくなることを想定して、リッド対向部位21a,22aにその隙間30を塞ぐためのゴムひれなどを設けることは不要であるので、リッド開位置での見栄えが悪化するのを防止することができると共に、リッド対向部位21a,22aでのアームレスト機能が阻害されるのを防止することができる。
【0056】
また、上記の如く、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bはそれぞれ、互いにオーバーラップするオーバーラップ部16を有している。これらのオーバーラップ部16の左右方向における帯幅は、上記の組付バラツキや製造バラツキが積み重なってもそれらのオーバーラップ部16同士が必ずオーバーラップするように設定されている。このため、リッド装置1の組み立て後、上記の組付バラツキや製造バラツキが積み重なっていても、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとの間に、ボックス内とボックス外とを連通する孔(すなわち間隙)が形成されるのを防止することができ、ボックス本体10を密閉することができる。
【0057】
また、上記の如く、結合部材40としては、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bの前面に取り付けられる結合部材40Fと、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bの後面に取り付けられる結合部材40Bと、がある。この場合には、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが前面側及び後面側の双方で互いに固定される。このため、第一リッド21及び第二リッド22の前面側と後面側とで隙間30の大きさにズレが生じるのを抑えることができ、隙間30の大きさを第一リッド21及び第二リッド22の前端から後端にかけて一定の目標値に保つことができる。
【0058】
ところで、上記の実施形態においては、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとがボックス本体10の左右略中央で分割され、第一ボックス部品10aが収容部11の左半分の領域及び開口12の左半分の領域を含み、第二ボックス部品10bが収容部11の右半分の領域及び開口12の右半分の領域を含む。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとがボックス本体10の左右何れかに偏った位置で分割されることとし、第一ボックス部品10aが収容部11の左側の一部の領域及び開口12の左側の一部の領域を含み、第二ボックス部品10bが収容部11の残りの領域及び開口12の残りの領域を含むものとしてもよい。
【0059】
また、上記の実施形態においては、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとがボックス本体10の左右略中央で分割され、第一リッド21が第一ボックス部品10aに含まれる開口12の左半分の領域を開閉し、第二リッド22が第二ボックス部品10bに含まれる開口12の右半分の領域を開閉する。すなわち、第一ボックス部品10aに含まれる開口12の領域と第一リッド21が開閉する開口12の領域とが互いに一致し、かつ、第二ボックス部品10bに含まれる開口12の領域と第二リッド22が開閉する開口12の領域とが互いに一致する。
【0060】
しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、第一ボックス部品10aに含まれる開口12の領域と第一リッド21が開閉する開口12の領域とが互いに異なり、かつ、第二ボックス部品10bに含まれる開口12の領域と第二リッド22が開閉する開口12の領域とが互いに異なっていてもよい。すなわち、第一リッド21が開閉する開口12の領域が第二ボックス部品10bに含まれる開口12の領域に及んでいてもよく、或いは、第二リッド22が開閉する開口12の領域が第一ボックス部品10aに含まれる開口12の領域に及んでいてもよい。
【0061】
また、上記の実施形態においては、仮結合部17aが第一ボックス部品10aに一体形成され、仮結合部17bが第二ボックス部品10bに一体形成され、リッド装置1の組み立て完了後も両仮結合部17a,17bが第一ボックス部品10a又は第二ボックス部品10bに残存する。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、仮結合部17a,17bが、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bに着脱可能に取り付けられ、リッド装置1の組み立て完了後に第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bから取り外される構成に適用することとしてもよい。
【0062】
また、上記の実施形態においては、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが板状の結合部材40により互いに本結合される。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、溶着などの他の手法で第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが互いに本結合されるものとしてもよい。
【0063】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1:スプリット型リッド装置(リッド装置)、10:ボックス本体、10a:第一ボックス部品、10b:第二ボックス部品、11:収容部、12:開口、15:ボックス対向部、16:オーバーラップ部、17,17a,17b:仮結合部、17a1:爪部、17b1:孔部、20:リッド、21:第一リッド、21a:リッド対向部位、22:第二リッド、22a:リッド対向部位、30:隙間、40,40F,40B:結合部材、70:補助治具。