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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】リッド装置
(51)【国際特許分類】
   B60R 7/04 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B60R7/04 C
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021149789
(22)【出願日】2021-09-14
(65)【公開番号】P2023042475
(43)【公開日】2023-03-27
【審査請求日】2023-09-25
(73)【特許権者】
【識別番号】000241463
【氏名又は名称】豊田合成株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000604
【氏名又は名称】弁理士法人 共立特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福井 直行
(72)【発明者】
【氏名】菱田 裕
(72)【発明者】
【氏名】▲吉▼田 昂平
【審査官】浅野 麻木
(56)【参考文献】
【文献】特開2021-050511(JP,A)
【文献】特開2020-041641(JP,A)
【文献】特開2020-032977(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2020/0071984(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第110871739(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第105270272(CN,A)
【文献】米国特許出願公開第2015/0137546(US,A1)
【文献】中国実用新案第204586688(CN,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 7/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
開口が設けられたボックス本体と、
前記ボックス本体に開閉動作可能に支持され、前記開口を閉じる閉位置と前記開口を開放する開位置との間で開閉動作するリッドと、
前記リッドが前記閉位置にロックされている状態で前記リッドに前記ボックス本体に接近する方向への荷重が加わった際に、前記リッドと前記ボックス本体における前記開口の周縁部との間に形成されている隙間に、前記リッドが前記周縁部に干渉するのを規制する規制部材を進入させる作動機構と、
を備える、リッド装置。
【請求項2】
前記作動機構は、
前記隙間に進入する前進位置と前記隙間から退いた後退位置との間で移動する前記規制部材と、
前記荷重により前記リッドが前記ボックス本体に接近した際に、前記規制部材を前記後退位置から前記前進位置へ移動させる駆動力を前記規制部材に付与する作動部材と、
を有する、請求項1に記載されたリッド装置。
【請求項3】
前記作動機構は、前記規制部材を前記前進位置側から前記後退位置側へ付勢する付勢力を発生する付勢部材を有し、
前記作動部材は、前記付勢部材の前記付勢力に抗して前記駆動力を前記規制部材に付与して前記規制部材を前記後退位置から前記前進位置へ移動させる、請求項2に記載されたリッド装置。
【請求項4】
前記規制部材は、前記ボックス本体に揺動可能に支持され、先端部が前記前進位置と前記後退位置との間で移動するレバー部材である、請求項2又は3に記載されたリッド装置。
【請求項5】
前記作動部材は、
前記ボックス本体に揺動可能に支持され、前記レバー部材に当接し、所定方向への揺動により前記駆動力を前記レバー部材に付与するボックス側作動部材と、
前記リッドに設けられ、前記荷重により前記リッドが前記ボックス本体に接近した際に、前記荷重を前記ボックス側作動部材に伝達して前記ボックス側作動部材を前記所定方向に揺動させるリッド側作動部材と、
を有する、請求項4に記載されたリッド装置。
【請求項6】
前記リッド側作動部材は、第一ギヤを有し、
前記ボックス側作動部材は、前記荷重により前記リッドが前記ボックス本体に接近する際に前記第一ギヤに噛み合って前記荷重を前記所定方向への揺動に変換する第二ギヤを有する、請求項5に記載されたリッド装置。
【請求項7】
前記リッドは、リッド裏面側に凹状に設けられた空隙部を有し、
前記隙間は、前記リッドが前記閉位置にある状態でリッド裏面側における前記空隙部と前記ボックス本体の外側空間との境界に位置する境界部位と前記周縁部との間に形成されている、請求項1乃至6の何れか一項に記載されたリッド装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リッド装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、車両などに搭載されるリッド装置が知られている(例えば、特許文献1)。リッド装置は、ボックス本体に設けられた開口をリッドを用いて開閉する装置である。リッドは、ボックス本体の開口を閉じる閉位置とその開口を開放する開位置との間で開閉動作することが可能である。リッドは、一般的に付勢部材により開位置に向けて付勢されており、その付勢部材の付勢力に抗してロック装置により閉位置にロックされることが可能である。リッドが閉位置にロックされている状態では、リッドの上面が略水平になるので、リッドがアームレストや物置,乗員の乗降時や車内移動時の支え箇所などとして用いられることがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2020-032977号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、リッドがアームレストや物置,乗員の乗降時や車内移動時の支え箇所などとして用いられた場合には、リッドにボックス本体に接近する方向への荷重が加わる。かかる荷重がリッドに加わると、リッドがボックス本体に接近して、ボックス本体に干渉することがある。特に、リッドの開閉動作時におけるリッドとボックス本体との干渉を避けるため、リッド裏面側にリッドを切り欠いて空隙となる空隙部を設けることがあるが、この構成では、上記荷重が加わった際に、リッドが、空隙部が設けられて厚みが薄くなった箇所を起点にして撓み易くなり、ボックス本体に干渉し易くなる。このようにリッドがボックス本体に干渉すると、ボックス本体が変形し或いは破損するおそれがある。
【0005】
本発明は、このような点に鑑みてなされたものであり、閉位置にロックされているリッドに荷重が加わった際にリッドとボックス本体との干渉を防ぐことが可能なリッド装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一態様は、開口が設けられたボックス本体と、前記ボックス本体に開閉動作可能に支持され、前記開口を閉じる閉位置と前記開口を開放する開位置との間で開閉動作するリッドと、前記リッドが前記閉位置にロックされている状態で前記リッドに前記ボックス本体に接近する方向への荷重が加わった際に、前記リッドと前記ボックス本体における前記開口の周縁部との間に形成されている隙間に、前記リッドが前記周縁部に干渉するのを規制する規制部材を進入させる作動機構と、を備える、リッド装置である。
【0007】
この構成によれば、リッドが閉位置にロックされている状態でリッドにボックス本体に接近する方向への荷重が加わった際に、リッドとボックス本体の開口周縁部との間に形成されている隙間に規制部材が進入するので、その規制部材によりリッドがボックス本体に接近する方向に移動することが規制され、リッドとボックス本体との干渉を防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態に係るリッド装置の斜視図である。
図2】リッド装置のリッド開位置での前面図である。
図3】リッド装置のリッド開位置での後面図である。
図4】リッド装置の分解斜視図である。
図5】リッド閉位置においてリッドに下方への荷重が加わっていない状態での各構成部品の位置関係を表した図である。
図6】リッド閉位置においてリッドに下方への荷重が加わった状態での各構成部品の位置関係を表した図である。
図7】リッド閉位置においてリッドに下方への大荷重が加わった状態での各構成部品の位置関係を表した図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図1図7を用いて、本発明に係るリッド装置の具体的な実施の形態について説明する。
【0010】
本実施形態のリッド装置1は、例えば車室内のセンターコンソールに設置されるコンソールボックスなどである。リッド装置1は、内部に物を収容することが可能であると共に、リッド上面を車両乗員の腕を置くためのアームレストとして用いることが可能である。
【0011】
以下、リッド装置1において方向を示す内容は、特段の事情が無い限り、リッド装置1が設置される車両を基準にしたものとする。例えば、「右側」とは車両進行方向に対する車両右側を指し、「左側」とは車両進行方向に対する車両左側を指すものとする。
【0012】
リッド装置1は、図1図2図3、及び図4に示す如く、ボックス本体10と、リッド20と、結合部材30と、開閉機構40と、ロック機構50と、作動機構60と、を備えている。
【0013】
ボックス本体10は、物を収容することが可能なボックス体である。ボックス本体10は、略直方体形状に形成されている。ボックス本体10は、車両の車体フロアにボルト締結などで固定されている。尚、ボックス本体10は、ボックス本体10の左右両側に配置されてそれぞれボックス本体10側と乗員席とを仕切る仕切り板である二つのサイドパネル90により挟まれていてもよい。また、二つのサイドパネル90の間には、更に、シフトノブやサイドブレーキなどの車両操作系やカップホルダなどが配置されていてよい。
【0014】
ボックス本体10は、収容部11と、開口12と、を有している。収容部11は、物を収容する空間を形成する部位である。収容部11は、底壁と側壁とにより形成されている。開口12は、収容部11内への出入口である。開口12は、収容部11の上部に設けられている。
【0015】
ボックス本体10は、図4に示す如く、二つの分割された部品により構成されている。ボックス本体10は、第一ボックス部品10aと、第二ボックス部品10bと、により形成されている。すなわち、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bは、互いに組み付けられてボックス本体10をなしている。
【0016】
第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとは、ボックス本体10の左右略中央で分割されている。第一ボックス部品10aは左側に配置されており、第二ボックス部品10bは右側に配置されている。第一ボックス部品10aは、収容部11の左半分の領域及び及び開口12の左半分の領域を含む。第二ボックス部品10bは、収容部11の右半分の領域及び開口12の右半分の領域を含む。第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bはそれぞれ、枠体(すなわち、底壁及び側壁)に沿って延在するボックス対向部15同士で左右方向に互いに対向して互いに組付けられる。
【0017】
第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bはそれぞれ、後述の如く本結合により互いに固定される前に互いに仮結合される仮結合部17を有している。この仮結合は、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが互いに左右方向に調整代分だけ相対移動することが許容される一方、両ボックス部品10a,10bが互いに上下方向及び前後方向に相対移動することがほとんど許容されないものである。
【0018】
第一ボックス部品10aは、ボックス対向部15近傍から右方へ突出する仮結合部17aを有している。第二ボックス部品10bは、ボックス対向部15近傍においてボックス外方へ突出する仮結合部17bを有している。仮結合部17aと仮結合部17bとは、対に構成されており、複数対(図4においては7対)設けられている。仮結合部17a,17b同士は、第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとが互いに左右方向にスライド移動することを許容する形状に形成されている。
【0019】
リッド20は、ボックス本体10の開口12を開閉する蓋体である。リッド20は、略長方形状に形成されている。リッド20は、二つに分割されて構成されている。すなわち、リッド20は、第一リッド21と、第二リッド22と、を有している。尚、以下では、第一リッド21及び第二リッド22を総称してリッド20と称する場合がある。
【0020】
第一リッド21は、開口12の左半分の領域を開閉する蓋部品である。第二リッド22は、開口12の右半分の領域を開閉する蓋部品である。第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、基材と基材に対して表面側に取り付けられたクッション材とにより構成されている。第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、表裏方向に撓んで弾性変形することが可能である。
【0021】
第一リッド21は、ボックス本体10の第一ボックス部品10aに開閉動作(回動)可能に支持されている。第一リッド21は、前後方向に延びる軸を中心にして開閉動作することにより、開口12の左半分の領域を開閉する。第一リッド21の軸は、ボックス本体10の開口12の左側周縁部近傍に設けられている。第一リッド21は、ボックス本体10に対して開口12を閉じる閉位置とその閉位置から所定角度(例えば100°)をなす全開位置との間で開閉動作することが可能である。
【0022】
第二リッド22は、ボックス本体10の第二ボックス部品10bに開閉動作可能に支持されている。第二リッド22は、前後方向に延びる軸を中心にして開閉動作することにより、開口12の右半分の領域を開閉する。第二リッド22の軸は、ボックス本体10の開口12の右側周縁部近傍に設けられている。第二リッド22は、ボックス本体10に対して開口12を閉じる閉位置とその閉位置から所定角度(例えば100°)をなす全開位置との間で開閉動作することが可能である。第一リッド21と第二リッド22とは、閉位置でボックス本体10の左右中央で左右方向に互いに対向する。
【0023】
第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、空隙部25を有している。空隙部25は、リッド20を切り欠いて空隙となる部位である。空隙部25は、リッド20の裏面側に凹状に設けられている。空隙部25は、リッド20の開閉動作時におけるリッド20とボックス本体10との干渉を避けてリッド20の回動軌跡に沿うように形成されている。空隙部25は、リッド20の回動軸近傍でその回動軸を囲むように形成されており、閉位置で第一リッド21と第二リッド22とが互いに対向する対向面とは左右方向で反対側の面近傍に設けられている。空隙部25は、リッド20の回動軸の延びる前後方向に延在している。
【0024】
結合部材30は、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bを互いに本結合して固定する部材である。結合部材としては、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bの前面に取り付けられる結合部材30Fと、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bの後面に取り付けられる結合部材30Bと、がある。結合部材30は、仮結合部17a,17bにより第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bが互いに仮結合されかつ第一リッド21と第二リッド22とが共に閉位置で所定の位置関係に調整された状態で、第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bを互いに本結合する。
【0025】
結合部材30は、板状に形成されたカバー部材である。結合部材30は、第一ボックス部品10aの左右幅と第二ボックス部品10bの左右幅とを加算した幅以内の左右幅を有している。結合部材30は、例えば複数のスクリュが第一ボックス部品10aの側壁及び第二ボックス部品10bの側壁に締め付けられることにより第一ボックス部品10a及び第二ボックス部品10bを互いに本結合する。
【0026】
開閉機構40は、リッド20をボックス本体10に対して開閉動作させる装置である。第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、個別に開閉機構40により開閉動作する。開閉機構40は、第一リッド21の前後に一対設けられていると共に、第二リッド22の前後に一対設けられている。前後一対の開閉機構40は、互いに連動して作動する。また、第一リッド21側の開閉機構40と第二リッド22側の開閉機構40とは、別個独立して作動する。
【0027】
開閉機構40は、例えば、リッド20が閉位置と開位置との間で開閉動作する際の回動軌跡の簡素化のために、リッド20が二軸で回動する二軸かみ合い型の開閉機構である。開閉機構40は、図4に示す如く、アーム部材41と、付勢部材42と、を有している。
【0028】
アーム部材41は、ボックス本体10とリッド20とを繋ぐ部材である。アーム部材41の一端部は、ボックス本体10に回動可能に支持されており、ボックス本体10の左右中央近傍に設けられている。アーム部材41の他端部は、リッド20に回動可能に支持されており、ボックス本体10の左右端近傍に設けられている。アーム部材41は、一端部を中心(中心軸C1)にしてボックス本体10に対して回動することが可能であると共に、他端部を中心(中心軸C2)にしてリッド20に対して回動することが可能である。
【0029】
リッド20は、閉位置でボックス本体10の開口12を塞ぐ水平状態になり、かつ、図2及び図3に示す如く開位置でボックス本体10の左側壁に左外方で隣接し又は右側壁に右外方で隣接して略平行状態になるように開閉動作する。第一リッド21は、主にボックス本体10の開口12の左側周縁近傍の中心軸C2を中心にして回動する。第二リッド22は、主にボックス本体10の開口12の右側周縁近傍の中心軸C2を中心にして回動する。
【0030】
付勢部材42は、アーム部材41ひいてはリッド20を開位置に向けて付勢する付勢力を発生するバネ部材である。付勢部材42は、例えばねじりコイルバネである。付勢部材42は、アーム部材41の一端部の中心軸C1の回りに配置されている。付勢部材42の一端部は、ボックス本体に支持されている。付勢部材42の他端部は、アーム部材41に固定されている。付勢部材42の付勢力は、リッド20の閉位置で最大である。
【0031】
ロック機構50は、リッド20を閉位置にロックする装置である。第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、個別にロック機構50により閉位置にロックされる。ロック機構50は、第一リッド21側と第二リッド22側とにそれぞれ設けられている。ロック機構50は、ボックス本体10の左右中央近傍(すなわち、閉位置で第一リッド21と第二リッド22とが互いに対向する対向面近傍)に配置されている。ロック機構50は、図2図3、及び図4に示す如く、操作スイッチ51と、係合部材52と、被係合部材53と、を有している。
【0032】
操作スイッチ51は、リッド20の閉位置ロックを解除するために車両乗員により押圧操作されるスイッチである。操作スイッチ51は、押圧操作(すなわち、ロック解除操作)が解除された場合にスプリングなどの付勢部材(図示せず)により基準位置に戻る。操作スイッチ51は、リッド20の前面に配置されている。係合部材52及び被係合部材53は、互いに係合することによりリッド20を閉位置にロックする部材である。
【0033】
係合部材52は、操作スイッチ51のロック解除操作及びその操作解除によりリッド20に対して前後方向に進退することが可能なロッド状の閂部材である。係合部材52は、リッド20に配置されている。係合部材52は、操作スイッチ51の操作解除状態でリッド20の後端から後方へ突出しており、操作スイッチ51のロック解除操作でリッド20の後端よりも前方へ引っ込む。
【0034】
被係合部材53は、係合部材52が挿入されて係合する孔が形成された部材である。被係合部材53は、ボックス本体10に配置されている。被係合部材53は、係合部材52がリッド20の後端から後方へ突出している状態で係合部材52の先端部に係合され、係合部材52がリッド20の後端よりも前方へ引っ込んだ状態で係合部材52との係合を解除する。リッド20は、係合部材52と被係合部材53との係合により閉位置にロックされ、係合部材52と被係合部材53との係合解除によりロック解除される。
【0035】
第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、操作スイッチ51のロック解除操作により閉位置ロックが解除された場合に、付勢部材42の付勢力によりアーム部材41が回動することにより全開位置に向けて開動作する。そして、第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、全開位置でそのリッド21,22又はアーム部材41の動作が規制部材(図示せず)に規制されることにより動作停止する。
【0036】
第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、車両乗員によりそのリッド21,22が付勢部材42の付勢力に抗して押圧操作されてアーム部材41を逆方向に回動させることにより閉位置に向けて閉動作する。そして、第一リッド21及び第二リッド22はそれぞれ、閉位置で係合部材52が被係合部材53に係合することによりその閉位置にロックされる。尚、開閉機構40は、リッド20の開閉速度を一定に維持させるダンパ装置を備えることとしてもよい。
【0037】
リッド20がロック機構50により閉位置にロックされている状態では、リッド20とボックス本体10の開口12の周縁部との間に、隙間70が形成される。この隙間70は、リッド20が閉位置にある状態でリッド20の裏面側における空隙部25とボックス本体10の外側空間との境界に位置する境界部位26とボックス本体10の開口12の周縁部との間に形成される。この隙間70は、リッド20の開閉動作中におけるリッド20とボックス本体10(具体的には、開口12の周縁部)との干渉を避けるために設定される。
【0038】
作動機構60は、リッド20が閉位置にロックされている状態でリッド20にボックス本体10に接近する方向(具体的には下方)への荷重Fが加わった際に、隙間70に後述の規制部材61を進入させる機構である。第一リッド21と第一ボックス部品10aとの隙間70、及び、第二リッド22と第二ボックス部品10bとの隙間70にはそれぞれ、個別に作動機構60により規制部材61が進入する。作動機構60は、第一リッド21の前後に一対設けられていると共に、第二リッド22の前後に一対設けられている。前後一対の作動機構60は、互いに連動して作動する。また、第一リッド21側の作動機構60と第二リッド22側の作動機構60とは、別個独立して作動する。
【0039】
作動機構60は、ボックス本体10の前壁又は後壁の外側に設けられている。リッド20の閉位置ロック状態でリッド20に荷重Fが加わった際にボックス本体10の前側及び後側の二箇所で作動機構60の規制部材61が隙間70に進入することにより、リッド20がボックス本体10の開口12の周縁部に干渉することが規制される。作動機構60は、規制部材61と、作動部材62と、付勢部材63と、を有している。
【0040】
リッド20の閉位置でリッド20に上記の荷重Fが加わると、リッド20における左右方向の位置のうち、ロック機構50が設けられたボックス本体10の左右中央側よりもそのロック機構50から遠くに離れたボックス本体10の左壁側又は右壁側が下方に撓み易い。特に、リッド20の裏面側には空隙部25が設けられているので、そのリッド20における上記したボックス本体10の左壁側又は右壁側が、その空隙部25が設けられて厚みが薄くなった箇所を起点にして下方に撓み易い。このようにリッド20が下方に撓むと、リッド20がボックス本体10に接近する。
【0041】
規制部材61は、隙間70に進入可能な部材である。規制部材61は、隙間70に進入する前進位置と隙間70から退いた後退位置との間で移動することが可能である。規制部材61は、ボックス本体10に揺動可能に支持されるレバー部材である。規制部材61は、ボックス本体10の前壁又は後壁に支持された状態でその支持中心から径方向に延在している。
【0042】
規制部材61の先端部(具体的には、上端部)61aは、規制部材61が揺動する方向に突出している。規制部材61の先端部61aは、隙間70に進入することができる。規制部材61の先端部61aは、隙間70の大きさ(具体的には、上下方向の大きさ)に対応する突出幅を有している。尚、規制部材61は、先端部61aの突出幅が隙間70の大きさ以下であって、できるだけその隙間70の大きさに近い幅となるように形成されている。或いは、規制部材61は、先端部61aの突出幅が隙間70の大きさ以下であって、リッド20の閉位置で先端部61aが隙間70のうちリッド20に近い領域に進入するように形成されている。
【0043】
尚、規制部材61は、隙間70に進入した後にストッパに当接してそれ以上の揺動が規制されるものであってよい。また、このストッパは、ボックス本体10の開口12の周縁近傍に形成されていてよい。
【0044】
作動部材62は、荷重Fの付与によりリッド20が撓んでボックス本体10に接近した際に、規制部材61に駆動力を付与する部材である。作動部材62が規制部材61に付与する駆動力は、規制部材61を後退位置から前進位置へ移動させる力である。作動部材62は、ボックス側作動部材62aと、リッド側作動部材62bと、を有している。ボックス側作動部材62a及びリッド側作動部材62bは、リッド20が下方に受けた荷重Fを、規制部材61に付与する駆動力に変換して規制部材61に付与する。
【0045】
ボックス側作動部材62aは、規制部材61に当接して上記の駆動力を規制部材61に付与する部材である。ボックス側作動部材62aは、プレート状に形成されている。ボックス側作動部材62aは、ボックス本体10の前壁又は後壁に揺動可能に支持されている。ボックス側作動部材62aの揺動中心は、アーム部材41の中心軸C1に一致している。
【0046】
ボックス側作動部材62aは、湾曲して形成された先端部を有している。ボックス側作動部材62aは、先端部で規制部材61の側面に当接している。ボックス側作動部材62aの先端部と規制部材61の側面とはそれぞれ、カム面をなしている。ボックス側作動部材62aは、荷重Fにより揺動中心で所定方向(図5図6、及び図7においては右回転方向)に揺動することにより駆動力を規制部材61に付与する。
【0047】
リッド側作動部材62bは、荷重Fによりリッド20がボックス本体10に接近する際に、その荷重Fをボックス側作動部材62aに伝達してボックス側作動部材62aを上記の所定方向に揺動させる部材である。リッド側作動部材62bは、リッド20の裏面側に設けられている。リッド側作動部材62bは、扇状に形成されている。
【0048】
リッド側作動部材62bは、第一ギヤ64を有している。第一ギヤ64は、リッド側作動部材62bの扇の先端に形成されている。また、ボックス側作動部材62aは、第二ギヤ65を有している。第二ギヤ65は、ボックス側作動部材62aの中間箇所に形成されている。第一ギヤ64及び第二ギヤ65は、互いに噛み合っている。第一ギヤ64及び第二ギヤ65は、リッド20の開閉動作中は互いに噛み合いながら位置ズレして、リッド20の開閉動作をサポートする。
【0049】
ボックス本体10は、ピン部材18を有している。ピン部材18は、ボックス側作動部材62aが、リッド20の閉位置ロック状態で上記荷重Fにより揺動する所定方向とは反対方向へ揺動することを規制する部材である。リッド20の閉位置ロック状態で荷重Fによりリッド20がボックス本体10に接近すると、第一ギヤ64と第二ギヤ65とが互いに噛み合った状態で一体に下方に押されることで、ボックス側作動部材62aが所定方向(図5図6、及び図7において右回転方向)に揺動してピン部材18とは非係合になる。
【0050】
リッド側作動部材62bの第一ギヤ64及びボックス側作動部材62aの第二ギヤ65は、リッド20の閉位置ロック状態で荷重Fによりリッド20がボックス本体10に接近する際に互いに噛み合い、その荷重Fをボックス側作動部材62aの所定方向への揺動に変換する。ボックス側作動部材62aが所定方向に揺動すると、駆動力が規制部材61に付与されて、規制部材61が揺動してその先端部61aが後退位置から前進位置へ移動する。
【0051】
付勢部材63は、規制部材61を前進位置側から後退位置側へ付勢する付勢力を発生するバネ部材である。付勢部材63は、例えば板バネである。付勢部材63は、ボックス本体10の前壁又は後壁に設けられた支持部19に支持されている。付勢部材63の一端部は、規制部材61に係合している。規制部材61は、ボックス側作動部材62aの揺動による荷重Fに基づく駆動力が付与されていないときは、付勢部材63の付勢力により後退位置に位置し或いは後退位置に向けて移動する。一方、規制部材61は、上記の駆動力が付与されると、付勢部材63の付勢力に抗して前進位置に向けて移動する。
【0052】
次に、リッド装置1の動作について説明する。
リッド20がロック機構50により閉位置にロックされている状態で、操作スイッチ51が押圧されてロック解除操作されると、係合部材52と被係合部材53との係合が解除され、リッド20の閉位置ロックが解除される。リッド20の閉位置ロックが解除されると、まず、開閉機構40の付勢部材42による付勢力によりアーム部材41が中心軸C1を中心にしてボックス本体10に対して一方(図5図6、及び図7において右回転方向)に回動する。
【0053】
アーム部材41が中心軸C1を中心にして回動すると、アーム部材41の他端部にある中心軸C2が下方に移動しつつ、リッド20のリッド側作動部材62bの第一ギヤ64とボックス本体10のボックス側作動部材62aの第二ギヤ65とが互いに噛み合いながら位置ズレすることで、リッド20が閉位置から開動作する。このリッド20の開動作は、ボックス本体10との干渉を避けつつ行われ、リッド20の回動軌跡が簡素化されて行われる。
【0054】
また、リッド20が全開位置又は開位置にある状態で車両乗員によりリッド20が全開位置から閉位置に向けて押圧されると、第一ギヤ64と第二ギヤ65とが互いに噛み合いながら位置ズレしつつ、付勢部材42による付勢力に抗してアーム部材41の他端部にある中心軸C2が上方に移動して、アーム部材41が中心軸C1を中心にしてボックス本体10に対して他方(図5図6、及び図7において左回転方向)に回動する。そして、ロック機構50の係合部材52が被係合部材53に係合して、リッド20が閉位置にロックされる。
【0055】
上記のリッド装置1において、リッド20がロック機構50により閉位置にロックされている状態で、リッド20に下方への荷重Fが加わっていないときは、図5に示す如く、リッド20とボックス本体10の開口12の周縁部との間に、隙間70が形成されている。一方、リッド20の閉位置ロック状態でリッド20に下方への荷重Fが加わると、リッド20が下方に撓んでボックス本体10の開口12の周縁部に接近する。
【0056】
リッド20が荷重Fにより下方に撓んでボックス本体10の開口12の周縁部に接近すると、リッド側作動部材62bの第一ギヤ64とボックス側作動部材62aの第二ギヤ65とが互いに噛み合った状態で一体に下方に押されて、ボックス側作動部材62aが所定方向に揺動する。ボックス側作動部材62aが所定方向に揺動すると、駆動力が規制部材61に付与されて、規制部材61が揺動してその先端部61aが後退位置から前進位置へ移動する。規制部材61の先端部61aが前進位置に達すると、その先端部61aが隙間70に進入する。尚、この隙間70への先端部61aの進入は、隙間70が形成されていたリッド20とボックス本体10との間が荷重Fにより閉じられる前に行われる。
【0057】
リッド20の剛性強度は、リッド20に加わる荷重FがF1(例えば20kg)以下の弱負荷状態であるときは、図6に示す如く、リッド20がボックス本体10に接近しても隙間70の大きさ以上移動することはないように設定されている。一方、リッド20の剛性強度は、リッド20に加わる荷重FがF1を超えかつF2(例えば60kg)以下の強負荷状態であるときは、図7に示す如く、リッド20が隙間70の大きさ以上移動する可能性があるように設定されている。
【0058】
上記の如く規制部材61の先端部61aが隙間70に進入した状態では、その先端部61aにより、リッド20が更にボックス本体10に接近する下方に移動することが規制される。従って、閉位置にロックされているリッド20に下方への荷重Fが加わった際に、リッド20とボックス本体10の開口12の周縁部とが干渉するのを防ぐことができる。このため、リッド20との干渉に起因してボックス本体10が変形し或いは破損するのを抑制することができ、これにより、リッド20との干渉を想定してボックス本体10の剛性を過剰に高くすることは不要であり、ボックス本体10の剛性を低く抑えることができるので、リッド装置1を構成するうえでのコストを低減することができる。
【0059】
また、閉位置にロックされているリッド20に下方への荷重Fが大きくなっても、リッド20は、規制部材61の先端部61aと干渉して移動規制されるまで撓むことができるが、ボックス本体10の開口12の周縁部と干渉するまで撓むことは無い。すなわち、閉位置にロックされているリッド20が下方への荷重Fによって撓むことができる撓み量は、規制部材61の先端部61aと干渉する位置までに制限される。このため、規制部材61との干渉を想定してリッド20の剛性を過剰に高くすることは不要であり、この点でも、リッド装置1を構成するうえでのコストを低減することができる。
【0060】
また、リッド20の閉位置ロック状態でリッド20に荷重Fが加わった際に規制部材61を隙間70に進入させるうえでは、荷重Fによりリッド20が下方に撓んでボックス本体10に接近し始める初期の動きが利用される。具体的には、リッド20に加わる荷重Fが作動部材62により駆動力に変換されて規制部材61に付与されることで、その規制部材61が隙間70に進入する。このため、荷重Fによるリッド20の撓みを検知するセンサなどを設けた構成とすることは不要である。従って、閉位置ロック状態にあるリッド20への荷重Fにより規制部材61を隙間70に進入させる構成を簡素化することができる。
【0061】
ところで、上記の実施形態においては、ボックス本体10が、二つに分割された第一ボックス部品10aと第二ボックス部品10bとにより構成されている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、ボックス本体10が一つのボックス体により構成されることとしてもよい。
【0062】
また、上記の実施形態においては、リッド20が、第一リッド21と第二リッド22とに二つに分割されてボックス本体10の開口12を開閉することとしている。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、リッド20が一つの蓋体からなりボックス本体10の開口12を開閉することとしてもよい。
【0063】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更を施すことが可能である。
【符号の説明】
【0064】
1:リッド装置、10:ボックス本体、11:収容部、12:開口、20:リッド、21:第一リッド、22:第二リッド、25:空隙部、40:開閉機構、50:ロック機構、60:作動機構、61:規制部材、62:作動部材、62a:ボックス側作動部材、62b:リッド側作動部材、63:付勢部材、64:第一ギヤ、65:第二ギヤ、70:隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7