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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】水素供給システム
(51)【国際特許分類】
   F17C 5/06 20060101AFI20240510BHJP
   B65G 61/00 20060101ALI20240510BHJP
   B64C 27/08 20230101ALI20240510BHJP
   B64C 39/02 20060101ALI20240510BHJP
   B64D 37/30 20060101ALI20240510BHJP
   B64F 1/12 20060101ALI20240510BHJP
   B64F 1/36 20240101ALI20240510BHJP
   G08G 5/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F17C5/06
B65G61/00 540
B64C27/08
B64C39/02
B64D37/30
B64F1/12
B64F1/36
G08G5/00 A
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021162596
(22)【出願日】2021-10-01
(65)【公開番号】P2023053516
(43)【公開日】2023-04-13
【審査請求日】2022-07-05
(73)【特許権者】
【識別番号】000151346
【氏名又は名称】株式会社タツノ
(74)【代理人】
【識別番号】110000431
【氏名又は名称】弁理士法人高橋特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大滝 勉
【審査官】小原 一郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-016030(JP,A)
【文献】国際公開第2020/067026(WO,A1)
【文献】特開2021-088734(JP,A)
【文献】特開2020-186461(JP,A)
【文献】特開2020-135229(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B64C 13/18 - 39/02
B65G 61/00
B64F 1/12 - 1/36
G05D 1/00
G08G 5/00
F17C 1/00 - 5/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料電池により駆動するドローンによる配送を行う拠点となる箇所に、
ドローン用の駐機場と、
水素充填装置を設け、
前記水素充填装置は水素供給源から供給される水素を加圧する電気化学式水素圧縮機を備え、当該電気化学式水素圧縮機は、
アノードとカソードにより電解質膜を挟み込んで構成されたセルを複数備え、複数のセルを収容する圧力容器状のセル用ケーシングと、水分離装置と、水分離装置を収容する水分離装置用ケーシングと、バブラーと、バブラーを収容するバブラー用ケーシングを有し、
電解質膜には圧力容器としての4倍圧の基準が適用されない様にするため、セルを収容する圧力容器状のセル用ケーシングと、水分離装置を収容する水分離装置用ケーシングと、バブラーを収容するバブラー用ケーシングは一体的に結合されており、
セル或いはセルスタック外にオフガス循環系統を構成しなくてもバブラー用ケーシング及びセル用ケーシング内でオフガスを循環させるため、バブラーで生じた水素と水蒸気の混合気は、セル用ケーシング内に収容された複数のセル内のポート及び溝を連通して構成した部分を有する水素ガス流路を介してセルに供給され、セルのアノードで発生したオフガスは当該水素ガス流路を介してバブラーに戻される様に構成されており、
セル用ケーシングの上方に水分離装置を設け、カソードの圧縮水素は水或いは水蒸気と共に水分離装置の内部空間に供給され、水分離装置の内部空間には水が貯留しており、カップフロートが配置されており、カップフロートは棒状部を有し、棒状部の先端にはバルブ本体が設けられ、水分離装置の内部空間の中心部とバブラーを連通する水降下用パイプが設けられて、水降下用パイプは水分離装置用ケーシングを貫通してバブラーに連通しており、水降下用パイプの上端部は水分離装置の内部空間の下方で開放され、カップフロートに設けられたバルブ本体が座着可能な弁座を構成していることを特徴とする水素供給システム。
【請求項2】
配送計画に基づいてドローンの水素タンクの水素量が次回の配送のための飛行に足りるか否かを判断する機能を有するユニットを含む請求項1に記載の水素供給システム。
【請求項3】
燃料電池により駆動するドローンの飛行ルートを決定するユニットを有し、
当該ユニットは、
ドローンの飛行ルートを設定するブロックと、
設定された飛行ルート上をドローンが飛行できない場合、ドローンが飛行できない領域を迂回する様に前記設定するブロックで設定された飛行ルートを修正する機能を有するブロックを有する請求項1、請求項2の何れかに記載の水素供給システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、燃料電池により駆動するドローンにより荷物を配送する際の配送の拠点において、ドローンに水素を充填する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、配送サービスの拡充とともに配送物の物流量が増加しており、道路の交通渋滞により迅速な配送が困難となっている。また、交通網が不便な遠隔地域に居住する独居高齢者の買い物が困難であることも問題になっている。
無人飛行機であるドローンであれば、空中を飛行することにより道路の交通渋滞に影響を受けることがなく、交通網が不便な遠隔地であっても配送が可能であり、前記問題を解決することが出来る。そして、ドローンを用いた配送について、色々と提案されている(例えば、特許文献1参照)。
上述のドローンについては蓄電池を動力源にするものが一般的であるが、近年の環境意識の高まりにより、蓄電池ではなく燃料電池(FC)を用いるドローンの使用が提案されている。
【0003】
ここで、ドローンによる配送を行うためには、ドローンの積載荷重を例えば150Kg程度の比較的大重量に設定し、ドローンの飛行距離も配送拠点から配送先までの往復10Km程度を想定する必要があり、飛行時間も2時間程度を想定する必要がある。
配送に際して、重量物を積載して10Km、2時間の飛行をするためには、FC駆動するドローンであれば、頻繁に水素を充填する必要がある。
しかし、ドローンに水素を充填する機器については十分に検討されておらず、FC駆動するドローンにより荷物を配送するのに適した水素供給システムは提案されていない。そのことは、燃料電池を動力源とするドローンによる配送サービスの普及を妨げる一因となっている。
上述した従来技術(特許文献1)においても、燃料電池を動力源とするドローンに対する水素供給については開示されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第6924297号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述した従来技術の問題点に鑑みて提案されたものであり、燃料電池により駆動するドローンに水素を充填することが出来るシステムの提供を目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の水素供給システム(100)は、
燃料電池(FC)により駆動するドローン(60:FC駆動ドローン)による配送を行う拠点となる箇所(K)に、
ドローン用の駐機場(70)と、
水素充填装置(50)を設け
記水素充填装置(50)は水素供給源から供給される水素を加圧する電気化学式水素圧縮機(40)を備え、当該電気化学式水素圧縮機(40)は、
アノード(1A)とカソード(1C)により電解質膜(1B:固体高分子電解質膜:PEM)を挟み込んで構成されたセル(1)を複数備え、複数のセル(1)を収容する圧力容器状のセル用ケーシング(11:セル収容部外殻)と、水分離装置(2)と、水分離装置(2)を収容する水分離装置用ケーシング(12)と、バブラー(3)と、バブラー(3)を収容するバブラー用ケーシング(13)を有し、
電解質膜には圧力容器としての4倍圧の基準が適用されない様にするため、セル(1)を収容する圧力容器状のセル用ケーシング(11)と、水分離装置(2)を収容する水分離装置用ケーシング(12)と、バブラー(3)を収容するバブラー用ケーシング(13)は一体的に結合されており、
セル(1)或いはセルスタック外にオフガス循環系統を構成しなくてもバブラー用ケーシング(13)及びセル用ケーシング(11)内でオフガスを循環させるため、バブラー(3)で生じた水素と水蒸気の混合気は、セル用ケーシング(11)内に収容された複数のセル(1)内のポート及び溝を連通して構成した部分を有する水素ガス流路(4)を介してセル(1)に供給され、セル(1)のアノード(1A)で発生したオフガスは当該水素ガス流路(4)を介してバブラー(3)に戻される様に構成されており、
セル用ケーシング(11)の上方に水分離装置(2)を設け、カソード(1C)の圧縮水素は水或いは水蒸気と共に水分離装置(2)の内部空間に供給され、水分離装置(2)の内部空間には水が貯留しており、カップフロート(25)が配置されており、カップフロート(25)は棒状部(25B)を有し、棒状部(25B)の先端(下端)にはバルブ本体(25C)が設けられ、水分離装置(2)の内部空間の中心部とバブラー(3)を連通する水降下用パイプ(26)が設けられて、水降下用パイプ(26)は水分離装置用ケーシング(12)を貫通してバブラー(3)に連通しており、水降下用パイプ(26)の上端部(26A)は水分離装置(2)の内部空間の下方で開放され、カップフロート(25)に設けられたバルブ本体(25C)が座着可能な弁座を構成していることを特徴としている。
【0007】
本発明の水素供給システム(100)は、
配送計画に基づいてドローン(60)の水素タンク(61)の水素量が次回の配送のための飛行に足りるか否かを判断する機能を有するユニット(80:充填判定ユニット)を含むことが好ましい。
また、本発明の水素供給システム(100)は、
FC駆動ドローン(60)の飛行ルートを決定するユニット(90:飛行ルート決定ユニット)を有し、
当該ユニット(90:飛行ルート決定ユニット)は、
ドローンの飛行ルートを設定(仮決定)するブロック(91:仮決定ブロック)と、
(渉外ユニット96による渉外の結果)設定(仮決定)された飛行ルート上をドローンが飛行できない場合(上空飛行が許可されないNG領域が存在する場合)、ドローンが飛行できない領域を迂回する様に前記設定(仮決定)するブロック(91:仮決定ブロック)で設定(仮決定)された飛行ルートを修正する機能を有するブロック(92:修正ブロック)を有することが好ましい。
【発明の効果】
【0008】
上述の構成を具備する本発明の水素供給システム(100)によれば、FC駆動ドローン(60)による配送の拠点となる箇所(K)に駐機場(70)及び水素充填装置(50)を設けているので、駐機場(70)に停止しているドローン(60)に配送するべき荷物を積載する作業を容易に行うことが出来る。それと共に、駐機場(70)に停止しているFC駆動ドローン(60)に対して、水素充填装置(50)から容易且つ安全に水素を充填することが出来る。
そして、配送の拠点(K)で水素充填を行う様に構成すれば、FC駆動ドローン(60)の水素タンク(61)に配送拠点(K)で水素を必要且つ十分な圧力(例えば許容最大圧力(いわゆる「満タン」)まで充填しておくことにより、燃料欠乏によりドローン(60)が飛行不能となる事態が確実に防止される。それと共に、配送途中で水素を供給しなければならなくなる危険性が減少するので、配送ルートの途中に水素充填設備を設置する必要が無く、水素充填設備の新規設置に伴う労力、コストを削減することが出来る。
さらに、配送の拠点(K)でドローン(60)に水素充填をすることにより、水素充填中にドローンの不具合を例えば作業員の目視により判別することも可能であり、万が一の故障や事故を未然に防止することが出来る。
【0009】
本発明において、配送計画に基づいてドローン(60)の水素タンク(61)の水素量が次回の配送のための飛行に足りるか否かを判断する機能を有するユニット(80:充填判定ユニット)を含んでいれば、配送計画から水素充填後のドローン(60)の飛行距離、飛行時間、積載荷重等を把握することが出来るので、駐機場(70)に停止しているドローン(60)の水素タンク(61)内の圧力(水素残量)から、次回の飛行(配送)に必要な量の水素が水素タンク(61)内に残存しているかどうかを正確に判断することが出来る。
そのため、次回の配送に必要な水素量を配送拠点(K)でドローン(60)に対して確実かつ正確に充填することが出来るので、燃料欠乏によりドローン(60)が飛行不能となる事態や、水素を過剰に充填するような事態が防止される。それと共に、次回の配送に必要且つ十分な水素が水素タンク(61)内に残存しているドローン(60)については、水素を充填することなく次の配送(飛行)に使用することが出来るので、ドローン(60)による配送を効率的に行うことが出来る。
【0010】
ここで、ドローン(60)の飛行ルート(運行ルート)は、道路、河川、鉄道、高圧電線の上方、海上、湖沼上空に設定するのが基本であり、人家の上空以外に設定するのが一般的である。
しかし、ドローン(60)による配送の拠点(K)は都市部あるいは都市部近郊に設けられることが想定され、配送拠点(K)が都市部や都市部近郊であると、ドローン(60)の運行ルートとして、人家の上空に設定せざるを得ない場合が存在する。
人家の上空には当該人家の所有権が及ぶので、ドローン(60)が勝手に飛行することは許されない。そのため、ドローン(60)の航路となる人家の全ての所有者に対して許可を求める必要があり、このことがドローン(60)による配送の普及を妨げる一因となっている。
一方、所定高度以上の上空であれば人家の所有権は及ばないものの、航空法の対象となり、航路設定の労力、コストが多大であるため、ドローン(60)の運行路として設定することは現実的ではない。
【0011】
本発明において、飛行ルートを決定するユニット(90:飛行ルート決定ユニット)を有し、
当該ユニット(90:飛行ルート決定ユニット)が、
ドローン(60)の飛行ルートを設定(仮決定)するブロック(91:仮決定ブロック)と、
(渉外ユニット96による渉外の結果)設定(仮決定)された飛行ルート上をドローン(60)が飛行できない場合(上空飛行が許可されないNG領域が存在した場合)、ドローン(60)が飛行できない領域を迂回する様に前記設定(仮決定)するブロック(91:仮決定ブロック)で設定(仮決定)された飛行ルートを修正する機能を有するブロック(92:修正ブロック)を有していれば、
飛行ルートを設定(仮決定)するブロック(91:仮決定ブロック)によるドローン(60)の飛行ルートの設定(仮決定)と、設定された飛行ルートを修正する機能を有する前記修正する機能を有するブロック(92:修正ブロック)による設定(仮決定)された飛行ルートの修正を繰り返すことにより、ドローン(60)の飛行ルート或いはその一部が人家の上空に設定された場合であっても、設定された飛行ルートにおける全ての人家の所有者からドローン飛行の承認を得た飛行ルートを設定することが出来る。そのため、航空法の対象となる高度を飛行することなく、FC駆動ドローン(60)による配送を実現することが出来る。
【0012】
本発明において、電気化学式水素圧縮機(40:EHC:Electric Hydrogen CompreSSor)を圧縮機(或いはポンプ)として用いれば、大容量化することにより、単一の水素充填装置(50)により多数のドローン(60)に水素を供給することが出来る。そのため、ドローン(60)の配送拠点(K)において、効率的に多数のFCで駆動するドローン(60)に水素を供給して、ドローン(60)の運転コストを削減できる可能性がある。
また、電気化学式水素圧縮機(40)であれば、同一構造で水素を低圧に圧縮する場合と高圧に圧縮する場合の双方に対応可能であり、振動、騒音が無い。しかも、コンパクトに設計することが可能である。
そのため、電気化学式水素圧縮機(40)を備えた本発明の水素充填装置(50)は、ドローン(60)の配送拠点(K)で多量のドローン(60)に水素を好適に充填することが出来る。
【0013】
特に、本発明で用いられる電気化学式水素圧縮機(40)は、アノード(1A)とカソード(1C)により電解質膜(1B:固体高分子電解質膜:PEM)を挟み込んで構成されたセル(1)を複数備え、複数のセル(1)を収容するセル収容部外殻(11:セル用ケーシング)と、水分離装置(2)と、水分離装置(2)を収容する水分離装置用ケーシング(12)と、バブラー(3)と、バブラー(3)を収容するバブラー用ケーシング(13)を有し、セル(1)を収容するセル用ケーシング(11)と、水分離装置(2)を収容する水分離装置用ケーシング(12)と、バブラー(3)を収容するバブラー用ケーシング(13)は一体的に結合されているので、電気化学式水素圧縮機(40)全体の寸法を小さくして、極めてコンパクトに設計することが可能である。
また、本発明で用いられる電気化学式水素圧縮機(40)は、セル(1)がバブラー(3)、水分離装置(2)と一体的に構成されており、複数のセル(1)が圧力容器状のセル収容部外殻(11:セル用ケーシング)に収容されているので、電解質膜(1B:固体高分子電解質膜:PEM)には圧力容器としての基準(4倍圧の基準)は適用されない。そのため、仮に将来において水素充填で80MPaの高圧水素が要求される場合に、バブラー用ケーシング(13)及び水分離装置用ケーシング(12)と一体に構成されたセル収容部外殻(11)が4倍圧の基準を充足すれば(320MPaでも無事稼働することが出来れば)、セル収容部外殻(11)に収容されたセル(1)或いはその電解質膜(1B:固体高分子電解質膜:PEM)は圧力容器としての基準(4倍圧の基準:例えば320MPa)を充足する必要がない。
そして、チェック弁等の低圧回路保護機構を設けることにより圧力容器を守ることが出来るので、電解質膜(1B)が圧力容器としての基準を満たす必要がない。仮に電解質膜(1B)が少々破損したとしても、セル(1)全体を交換する必要は無く、セル交換のため電気化学式水素圧縮機(40)の稼働を中止する必要も無くなる。
【0014】
本発明で用いられる電気化学式水素圧縮機(40)において、バブラー(3)で生じた水素と水蒸気の混合気は、セル用ケーシング(11)内に収容された複数のセル(1)内のポート及び溝を連通して構成した部分を有する水素ガス流路(4)を介してセル(1)に供給され、セル(1)のアノード(1A)で発生したオフガスは当該水素ガス流路(4)を介してバブラー(3)に戻される様に構成すれば、セル(1)或いはセルスタック外にオフガス循環系統を構成しなくても、バブラー用ケーシング(13)及びセル収容部外殻(11)内でオフガスを循環させることが出来る。
そのため、複数のセル(1)を積層或いは密集して配置してもオフガス循環系統と干渉する恐れはなく、複数のセル(1)を積層或いは密集してセル収容部外殻(11)内に配置(収容)することが出来る。従って、複数のセル(1)を配置するのに大きなスペースは必要とせず、各セル(1)とオフガス循環系統との干渉を防止するレイアウトを考慮する必要がない。
【0015】
本発明で用いられる電気化学式水素圧縮機(40)において、セル収容部外殻(11)の上方に水分離装置(2)を設け、カソード(1C)の圧縮水素は水(水蒸気)と共に水分離装置2の内部空間に供給され、水分離装置(2)の内部空間には水が貯留しており、カップフロート(25)が配置されており、カップフロート(25)は棒状部(25B)を有し、棒状部(25B)の先端(下端)にはバルブ本体(25C)が設けられ、水分離装置(2)の内部空間の中心部とバブラー(3)を連通する水降下用パイプ(26)が設けられて、水降下用パイプ(26)は水分離装置用ケーシング(12)を貫通してバブラー(3)に連通しており、水降下用パイプ(26)の上端部(26A)は水分離装置(2)の内部空間の下方で開放され、カップフロート(25)に設けられたバルブ本体(25C)が座着可能な弁座を構成すれば、セル(1)のカソード(1C)から水分離装置(2)に移動した水素はカップフロート(25)を介して水分離装置(2)内の水中を浮上する。そして、高圧の水素ガスは水分除去装置(18)へ移動する。
水分離装置(2)内の水によりカップフロート(25)に浮力が作用して浮き上がると、カップフロート(25)に設けられたバルブ本体(25C)は弁座である水降下用パイプ(26)の上端開口部(26A)から離隔する。そして、水分離装置2内の水は水降下用パイプ26内を降下し、バブラー(3)側に戻される。
一方、水分離装置(2)内の水量が減少すると、カップフロート(25)が下降し、バルブ本体(25C)が弁座である水降下用パイプ(26)の上端開口部(26A)に座着して閉鎖する。その状態では、水分離装置(2)内の水はバブラー(3)側に下降することはなく、水分離装置(2)内に留まる。
すなわち、水分離装置(2)内の水は、水分離装置(2)の内部空間の中心部とバブラー(3)を連通する水降下用パイプ(26)によりバブラー(3)に戻されるので、従来技術の様にセルスタック外部に別途水循環系統を形成する必要がない。そして、セルスタック外部に水循環系統を形成する必要がないため、セルを集積し易く、レイアウトが容易になる。
さらに、カップフロート(25)は下方に開口部(25D)を有し、内部空間が開空間であるため、高圧下においてもカップフロート(25)内外の圧力差が無い。そのため、外殻が薄いカップフロート(25)を高圧環境下の水分離装置(2)内に設けても潰れることはない。
【0016】
さらに、本発明で用いられる電気化学式水素圧縮機(40)において、バブラー(3)とセル(1)の間をヒートチューブ(5)で接続し、ヒートチューブ(5)の一端はヒートチューブ受熱部(5A)が複数分散設置(固体伝熱)されて複数のセル(1)の各々に接続(固体接続)されており、ヒートチューブ(5)の他端をヒートチューブ放熱部(5B)としてバブラー(3)の液相領域(3B)に浸漬すれば、セル(1)における熱量が複数分散設置(固体伝熱)したヒートチューブ受熱部(5A)に伝熱され、ヒートチューブ(5)の受熱部(5A)を介して当該熱量はヒートチューブ(5)内の純水に伝達されて純水を水蒸気に気化し、当該水蒸気がヒートチューブ(5)内を移動してバブラー(3)の液相領域(3B)に投与されることにより、セル(1)を運転状態に応じてセルフ冷却をすることが出来る。そのため、セル(1)には高品質のチラーを設ける必要がない。
或いは、バブラー用ケーシング(13)にフィン(6)を設け、ブロワ(7)により熱風或いは冷風をフィン(6)に向かって噴射すれば、バブラー(3)の温度調整が可能である。或いは、バブラー(3)を加熱するヒーター機構(8)及び/又はバブラーを冷却するクーラー機構を設ければ、バブラー(3)の温度調整が可能である。さらに、バブラーに供給される水素の温度を温調装置(9)により調節することで、バブラー(3)の温度調整が出来る。そのため、電気化学式水素圧縮機(40)のバブラー(3)の温度調整に高品質な機器であるチラーを設ける必要がなく、その分だけ、電気化学式水素圧縮機(40)及び水素充填装置(50)の製造コストを低く抑えることが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】水素充填装置でドローンに水素を充填する態様を示す説明図である。
図2】実施形態で用いられる水素を燃料とするドローンの機能ブロック図である。
図3】実施形態で用いられる水素充填装置の機能ブロック図である。
図4図1とは異なるタイプの水素充填装置でドローンに水素を充填する態様を示す説明図である。
図5】実施形態の概要を示す説明図である。
図6】実施形態における水素充填基地の機能ブロック図である。
図7】図示の実施形態において、水素充填の要否を判断する制御のフローチャートである。
図8】ドローンの飛行ルートを設定する態様の説明図である。
図9】飛行ルート設定のための制御を示すフローチャートである。
図10】実施形態で用いられる電気化学式水素圧縮機の一例を示す説明図である。
図11図10の電気化学式水素圧縮機における水分離装置を示す説明図である。
図12図10の電気化学式水素圧縮機におけるバブラーを示す説明図である。
図13図10の電気化学式水素圧縮機におけるヒートチューブによるセルの冷却を模式的に示す説明図である。
図14図10の電気化学式水素圧縮機において起動時にバブラーを加熱する機構を示す説明図である。
図15図10と同様な説明図であって、図10の電気化学式水素圧縮機におけるセルが積層されている態様を具体的に示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態について説明する。
最初に、図1図4を参照して、図示の実施形態において、ドローン60に水素を充填する態様について説明する。
図1において、燃料電池FCにより駆動するドローン60(FC駆動ドローン)による配送を行う拠点箇所Kには、水素供給システム100を構成する駐機場70及び水素充填装置50が配置されている。水素充填装置50は既存の水素充填装置を利用することが出来る。
図1において、作業員Wは水素充填装置50により、駐機場70に停止しているFC駆動ドローン60に水素を充填している。すなわち、四角錐台(或いは円錐台その他の立体形状であっても良い)の駐機場70の駐機面71にドローン60が停止しており、作業員Wは駐機場70の近傍に配置された水素充填装置50の充填ホース51の先端に設けられた充填ノズル52をドローン60の本体部(符号なし)に配置された水素タンク61のレセプタクル62(充填継手)と接続し、ドローン60の水素タンク61に水素を充填している。水素充填に際して、水素充填装置50はドローン60の水素タンク61側の圧力、温度、その他の情報を取得しつつ、いわゆる「通信充填」を実行しているが、通信充填を行わない場合も存在する。
ドローン60は、4枚のロータ63、各ロータ63を駆動するモータ64、フライトコントローラ66を備えており、ドローンの構成、機能については図2を参照して後述する。図1において、停止しているドローン60に配送するべき荷物を積載する作業が駐機場70で容易に行われるが、同時に、上述した様に停止しているドローン60に対して、水素充填装置50から容易且つ安全に水素を充填することが出来る。
【0019】
図2において、FC駆動ドローン60は、揚力と推進力を得るための図示しないロータ63(羽:図1参照:例えば4枚)、各ロータ63に直結してそれぞれのロータ63を回転駆動させるモータ64、モータの回転数を制御するESC65(Electric Speed Controller)を備えている。
またドローン60は、フライトコントローラ66(Flight Controller)と各種センサを有している。フライトコントローラ66は、ドローン60の本体中央に配置され、ドローン上(機上)で様々な処理を行い、ドローンの機体の安定化や自立航行などを自働的に制御する機能を有している。そして各種センサは、フライトコントローラ66が実行する機体制御に必要な情報を取得し、フライトコントローラ66に送信する機能を有しており、加速度を検出するジャイロ、加速度センサ、距離センサ、高度センサ等で構成されている。
さらにドローン60は、燃料電池67(FC)と、図1で説明した水素タンク61、レセプタクル62を備えている。
【0020】
図2において、通常のドローンであれば操縦者からの操縦信号を送信するプロボ送信機68Aと操縦信号を受信する受信機68Bを備えるが、図示の実施形態のドローンは自動制御を行っているので、プロボ送信機68A、受信機68Bは省略することが可能である。また、ドローン60は「受信機+サーボ用電力供給装置」としての機能を有するUBEC69を備えている。
ドローン60を航行する際には、機体の姿勢や状態、位置等を図示しない各種センサで検出し、当該検出結果に基づきフライトコントローラ66が期待の安定化、最適な航行のために制御を実行し、制御信号をモータ64のESC65に送信する。当該制御信号に基づき、各ESC65はそれぞれのモータ64及びモータ64が直結するロータ63の回転数を制御し、因ってドローン60の揚力や推力を変化させ、適切な飛行を実行する。
【0021】
図3を参照して、図2で示すドローン60に水素を充填する水素充填装置50を説明する。
図3において、水素充填装置50はスタックエリア53、バルブユニット54、蓄圧器55、計量ユニット56、制御エリア57を有している。スタックエリア53は電気化学式水素圧縮機40(EHC:Electric Hydrogen CompreSSor)を内蔵している。また、計量ユニット56からは水素供給充填用ホース51が延設され、水素供給充填ホース51の先端には水素充填ノズル52が設けられている。
明示しない水素供給源は、配管58により電気化学式水素圧縮機40に連通しており、電気化学式水素圧縮機40に水素を供給する。水素を加圧する機能を有する電気化学式水素圧縮機40における構成、作用については、図10図15を参照して後述する。
【0022】
図示はされていないが、図3において、計量器ユニット56は流量計、計数部、流量調整弁、漏洩検知装置その他の検知装置等を包含している。FC駆動ドローン60(図1図2)に水素を供給するに際しては、計量ユニット56の水素充填ノズル52をFC駆動ドローン60の水素タンク61(図1図2)のレセプタクル62(図1図2)と接続し、蓄圧器55内の高圧水素を、バルブユニット54、計量ユニット56の水素供給充填用ホース51、水素充填ノズル52を介して、ドローン60の水素タンク61に充填する。バルブユニット54では、高圧水素がFC駆動ドローン60の水素タンク61に充填される際に、関連バルブの開閉制御を実行する機能を有している。
スタックエリア53の電気化学式水素圧縮機40で加圧された水素は図示しない水素流路を介して蓄圧器55(ボンベなど)に供給され、貯蔵される。
FC駆動ドローン60の水素タンク61に水素を供給するに際しては、蓄圧器55内の高圧水素は、計量ユニット56、水素供給充填用ホース51、水素充填ノズル52を介して、FC駆動ドローン60に充填される。
水素充填装置50の制御エリア57は、水素充填装置50における水素充填を制御する機能を有している。制御エリア57は水素ステーション100の管理機構である保安制御盤59と通信ラインCL1を介して電気通信で接続されており、制御エリア57で実行、対応する制御の中で、火災検出、ガス検出、その他の重大な事象に対応する際には、制御エリア57と保安制御盤59は相互に連携を図る事が出来る。
【0023】
ここで、図1においては作業者WによりFC駆動ドローン60に対して水素を充填しているが、図4に示す様に、水素供給システム100-1においては、ドローン60の駐機場70-1の駐機面71-1におけるドローン停止位置(駐機位置)に自動充填継手72を設け、自動充填継手72により水素充填装置50-1側の図示しない充填ノズルとドローン60側の水素タンク61のレセプタクル62との接続を行い、作業員による手作業を必要とすることなく、自動的に水素を充填することが可能である。ここで、自動充填継手72は、水素充填装置50-1のノズルとドローン60のレセプタクル62を自動的に結合する機能を有する継手であり、従来公知の構造が適用可能である。
図4では明確には示されないが、水素充填装置50-1は駐機場70-1の内部に収容されており、駐機面71-1のドローン停止位置に自動充填継手72が設けられている。FC駆動ドローン60が駐機面71-1の停止位置の自動充填継手72に駐機すると、自動充填継手72の作用により、水素充填装置50-1の図示しない充填ノズルとドローン60側水素タンク61のレセプタクル62とが接続される。そして、作業員によらずに、水素充填装置50-1からFC駆動ドローン60の水素タンク61への水素充填が行われる。
【0024】
ここで、ドローンによる配送サービスの概要を示す図5において、配送サービスの拠点Kはドローンに水素を充填する水素充填基地である。配送サービスの拠点Kを水素充填基地とすることにより、水素充填装置を一箇所に集中して、効率的な水素充填を行うことが出来る。
また、配送サービスの拠点Kで水素を充填して、例えば許容最大圧力まで充填すれば、配送の途中で水素を充填する必要が無く、配送経路の途中に独立した水素充填設備を構築し、ドローンに水素充填することに伴う複雑な作業をする必要が無くなる。さらに、配送拠点Kで水素充填中にドローンの不具合を例えば作業員の目視により判別することも可能であり、万が一の故障や事故を防止することが出来る。
図5では、都市部U(市街地)、山間地Mにおいて、ドローン60による配送サービスの対象区域として、例えば、区域A、B、C1、C2を設定している。
区域Aは、都市部Cの中で当該区域に通じる道路が狭小等の理由で交通困難区域であり、ドローン60による配送サービスであれば狭小道路とは関係なく、必要な配送を行うことが出来る。
区域Bは、高齢、身体障碍等の理由で日常の買い物が困難な住民が居住する区域である。換言すれば、配送サービスが必要な区域である。
区域C1、C2は、山間地Mの中に存在し、当該区域に通じる道路が未整備な交通困難区域である。区域C1、C2に居住する住民に対して、空中を飛行するドローン60であれば、容易に配送サービスを行うことが出来て、区画C1、C2に居住する住民は、交通網が未整備であっても、必要な物資を購入することが出来る。
ここで、ドローンの運行ルートは、航空法が適用されるような高度よりも低空に設定される。そして、上述したように道路、河川、鉄道、高圧電線の上方、海上、湖沼上空に設定するのが基本であり、人家の上空以外に設定されるのが基本である。
【0025】
図6を参照して、配送拠点における水素充填基地Kについて説明する。図6では明示されていないが、配送拠点K(水素充填基地)は複数のドローンを管轄している。
配送拠点Kを構成する水素充填基地では、配送計画に基づいて、個々のドローン60に水素充填が必要であるか否かを判定し、水素充填が必要なドローン60については駐機場70に設置して水素充填装置50により充填する。なお、図4で示す水素充填装置を使用した場合には、当該水素充填装置はドローン60用の駐機場と一体に構成される。
水素充填基地Kの水素供給システム100は、充填判定ユニット80、飛行ルート決定ユニット90、配送計画ユニット95、渉外ユニット96を有している。
【0026】
図6において、充填判定ユニット80はドローン残量決定ブロック81、充填要否決定ブロック82を備えている。
ドローン残量決定ブロック81は、信号ラインSL1を介して、駐機場70に駐機しているFC駆動ドローン60に内蔵された図示しない水素タンクにおける水素量(残量:水素タンクの圧力)の情報を取得し、ドローン60における水素残量を決定する機能を有している。水素残量の決定は、例えば水素タンク内の圧力に基づいて決定することが出来る。
或いは、水素残量の決定に際し、前回、水素を充填した時点からの飛行距離及び飛行回数、積載荷重を、配送計画ユニット95から取得し、水素タンク内の水素量を演算して求めることも出来る。
ドローン残量決定ブロック81により決定された水素残量の情報は、信号ラインSL2を介して充填要否決定ブロック82に送信される。
【0027】
充填要否決定ブロック82は、ドローン残量決定ブロック81からドローン60の水素残量の情報を取得すると共に、配送計画ユニット95から配送計画に基づいて当該ドローンの次回配送の飛行ルート、飛行距離、飛行時間、積載荷重等の情報を、信号ラインSL3を介して取得する。
ここで配送計画ユニット95は、ドローン60の各々における配送に関する情報を記憶する機能を有しており、具体的には配送計画に基づいてドローン毎の配送日時、飛行ルート、飛行距離、飛行時間、積載荷重、配送の際の注意事項、その他の配送計画に関するデータを記録している。
そして配送計画ユニット95は、充填判定ユニット80の充填要否決定ブロック82から次回配送の情報(飛行ルート、飛行距離等)について問い合わせる旨の信号が伝達されると、信号ラインSL3を介して該当するドローン60の次回配送に関する情報を充填要否決定ブロック82に送信する機能を有している。
充填要否決定ブロック82は、当該ドローンにおける水素残量の情報と次回の配送飛行の情報に基づき、次回の配送(飛行)に必要な水素量が当該ドローンに残存しているか否か、換言すれば、当該ドローンの水素残量は次回の配送(飛行)に十分であるか否か(足りるか否か)を判断して、水素充填が必要であるか否かを決定する機能を有している。さらに充填要否決定ブロック82は、「充填が必要」と判断した場合には、水素充填装置50に充填を指令する制御信号を、信号ラインSL4を介して送信する機能を有している。一方、充填要否決定ブロック82は、「充填は不要」と判断した場合には、水素充填装置50に充填が不要である旨の信号を送信する機能を有している。
【0028】
図6において、充填要否決定ブロック82から充填を指令する制御信号を受信した水素充填装置50は、駐機しているドローン60に適正な量(例えば満タン)の水素ガスの充填を行う。適正な量は当該ドローン60の次回或いは今後の配送飛行計画等に基づき決定される。
水素充填装置50による充填の際は、水素充填装置50はドローン60側から水素タンク圧力、温度、その他の情報を、信号ラインSL5を介して取得しつつ、所定の充填量(すなわわち、タンク圧力)まで充填する(いわゆる「通信充填」)ことが出来る。水素充填装置50から充填判定ユニット80(充填要否決定ブロック82)には、充填完了時に信号ラインSL4を介して完了信号が送信される。図6において、符号52は充填ノズル52である。
充填判定ユニット80(充填要否決定ブロック82)には、後述する飛行ルート決定ユニット90から、信号ラインSL6を介して、決定ユニット90で決定されたドローンの配送飛行に関する情報(飛行ルート、距離、搬送する荷物重量等)が、予め送信されている。
図示の実施形態では、配送計画から水素充填後のドローン60の次回配送の飛行距離、飛行時間、積載荷重を把握することが出来る。そして、駐機場70に停止しているドローン60の図示しない水素タンク内の圧力(水素残量)から、次回の飛行(配送)に必要な量の水素が残存しているかどうかを正確に判断することが出来る。
そのため、次回の配送に必要な水素量を配送拠点でドローン60に対して確実かつ正確に充填することが可能である。そのため、燃料欠乏によりドローン60が飛行不能となる事態が確実に防止されると共に、次回の配送に必要且つ十分な水素が残存しているドローン60については、水素を充填することなく次の配送(飛行)に使用することが出来るので、ドローン60を効率的に運用することが出来る。
【0029】
上述した通り、ドローンの飛行ルートは人家の上空以外に設定されるのが基本であるが、配送拠点Kが都市部や都市部近郊であると、ドローンの運行ルート(飛行ルート)として、人家の上空に設定せざるを得ない場合が存在する。その様な場合に、ドローンの航路となる人家の全ての所有者に対して許可を求め、航路を確保するために、飛行ルート決定ユニット90が設けられている。
図6において、飛行ルート決定ユニット90は、地図情報に基づいて運行ルート(飛行ルート)を仮決定する機能を有する仮決定ブロック91と、飛行ルート上の人家(の地権者)から了承が得られたか否かにより仮決定された飛行ルートを修正する機能を有する修正ブロック92を有している。
上述した様に、仮決定ブロック91で仮決定された飛行ルートを正式なルートとして決定するためには、仮決定された飛行ルートにおける全ての人家の所有者からドローン飛行の許可を得る必要がある。そのため仮決定ブロック91から渉外ユニット96に対して、信号ラインSL7を介して、上述したドローン飛行の許可を得るための渉外活動に必要な情報(仮決定された飛行ルートの情報、その地図情報等)が送信される。
【0030】
図6において、渉外ユニット96は、ドローンの飛行ルート或いは飛行ルートとして仮決定されたルートにおける全ての人家の所有者からドローン飛行の許可を得るための渉外活動を行う機能を有する。渉外ユニット96はコンピュータシステムのみならず、交渉を行う自然人を包含する場合がある。
渉外ユニット96による渉外活動の結果は、信号ラインSL8を介して飛行ルート決定ユニット90の修正ブロック92に送信される。渉外ユニット96による渉外活動の結果は、ドローンの運行ルートにおいて、ドローン飛行の許可が得られた人家と、ドローン飛行の許可が得られなかった人家の判別である。
修正ブロック92は、渉外ユニット96の渉外活動の結果を受け、仮決定ブロック91で仮決定された飛行ルート上をドローンが飛行できない場合、すなわち飛行許可が得られない人家が存在する場合(上空飛行NGの領域が存在した場合)に、当該上空飛行NGの領域(ドローンが飛行できない領域)を迂回する様に前記仮決定された飛行ルートを修正する機能を有する。当該飛行ルートの修正は、必要に応じて複数回繰り返して実行される。そして、最終的に飛行ルート上の全ての人家から承諾が得られれば、飛行ルートが正式に決定される。
この様に、仮決定ブロック91による飛行ルートの仮決定と、仮決定された飛行ルートを修正ブロック92で修正する作業を繰り返すことにより、全ての人家の所有者からドローン飛行の承認を得た飛行ルートを設定することが出来る。そのため、航空法の対象となる高度を飛行することなく、FC駆動ドローン60による配送を実現することが可能である。
【0031】
次に、主として図7を参照して、図6に示す充填判定ユニット80における水素充填の制御を説明する。
図7において、ステップS1では、配送拠点Kで管理するドローンの中から水素充填制御の対象となるドローン60を特定する。
ステップS2では、次回の配送飛行を行うに際して水素充填の要否を決定する。
当該水素充填の要否の決定は充填要否決定ブロック82で実行され、次回の配送飛行を行うための水素残量は十分であるか否かの判断を行い、その結果に基づき水素充填の要否を決定する。
次回の配送飛行を行うための水素残量は十分であるか否かの判断は、充填要否決定ブロック82が、ドローン残量決定ブロック81が決定したドローン60の水素残量と、配送計画ユニット95に記憶される当該ドローンの次回の配送飛行計画内容(飛行ルート、飛行距離、搬送する荷物重量等)に基づき実行する。ドローン残量決定ブロック81による水素残量の決定に代えて、前回、水素を充填した時点からの飛行距離及び飛行回数から水素残量を演算して求めることも出来る。
ステップS2の決定の結果、水素充填が必要な場合(ステップS2が「要」)はステップS3に進み、水素充填が必要でない場合(ステップS2が「不要」)はステップS4に進む。
【0032】
ステップS3(ステップS2が「要」)では、充填要否決定ブロック82は、水素充填装置50に対して、ステップS1で特定されたドローン60に対して水素を充填する旨の制御信号を送信する。そして、当該制御信号を受信した水素充填装置50は当該ドローンへの水素充填を行う。
一方、ステップS4(ステップS2が「不要」)では、充填要否決定ブロック82は、水素充填装置50に対して、ステップS1で特定されたドローン60に対して水素充填は行わない旨の制御信号を送信する。そして、当該制御信号を受信した水素充填装置50は当該ドローンへは水素充填は行わない。
【0033】
図8で示す様に、飛行ルート決定ユニット90(図6)で飛行ルートを設定(決定)するに際して、仮決定ブロック91で設定(仮決定)されたドローン飛行ルートR1(実線で示すルート)において、飛行ルート上の人家の所有者が「上空のドローンの飛行」に同意しない領域T(上空飛行NGの領域)が存在する場合がある。
その様な場合、飛行ルート決定ユニット90の修正ブロック92は、図8で示す様に、仮決定ブロック91で決定された飛行ルートR1を修正して、上空飛行NGの領域Tを迂回する修正飛行ルートR2に修正する(図8の点線で示すルート)。図8では修正しない場合の仮設定ルートを一点鎖線で示している。
この様に、仮決定ブロック81による飛行ルートの仮決定、渉外ユニット96による渉外活動(飛行ルート上の人家の所有者との交渉等)、修正ブロック92による上空飛行NGの領域Tを迂回する修正飛行ルートの設定を繰り返して、ドローン60の飛行ルートが設定(決定)される。
【0034】
図9は、その様なドローンの飛行ルート決定における制御を示している。
図9において、ステップS11では、対象のドローン60を特定した上、ドローン飛行ルートR1(図8)を設定(仮決定)する。
当該ドローン飛行ルートを最初に設定(仮決定)する際には、飛行ルート決定ユニット90の仮決定ブロック91が、当該配送拠点から配送先までの飛行ルートを、例えば地図情報に基づいて設定する。
ステップS12では、ステップS11で設定(仮決定)されたドローン飛行ルートにおいて、ルート上の人家の所有者(地権者)は、ドローンの上空飛行を承諾しているか否かを判断する。
当該判断は、渉外ユニット96による渉外活動((飛行ルート上の人家の所有者にドローンの上空飛行の承諾(か否か)を確認、或いは承諾して貰うための交渉を行うこと等)の結果に基づいて実行される。
ステップS12の判断の結果、「仮決定されたドローン飛行ルート上の人家の所有者がドローンの上空飛行を承諾している」場合(ステップS12が「Yes」)はステップS13に進み、「仮決定されたドローン飛行ルート上の人家の所有者がドローンの上空飛行を承諾していない」場合(ステップS12が「No」)はステップS14に進む。
ここで、ステップS12が「Yes」の場合は、「仮決定されたドローン飛行ルート上の人家の所有者の全てがドローンの上空飛行を承諾している」場合であって、一部の人家の所有者であっても承諾が得られない所有者があれば、ステップS12は「No」と判断される。
【0035】
ステップS13(ステップS12が「Yes」)では、ステップS12で「仮決定されたドローン飛行ルート上の(全ての)人家の所有者がドローンの上空飛行を承諾している」と判断したことを受け、ステップS11で仮決定したドローン飛行ルートを正式ルートとして決定する。
一方、ステップS14(ステップS12が「No」)では、ステップS12で「仮決定されたドローン飛行ルート上の(例えば一部の)人家の所有者がドローンの上空飛行を承諾していない」と判断したことを受け、ステップS11で仮決定したドローン飛行ルートを再設定(修正)する。
当該飛行ルートの再設定は、修正ブロック92が、ドローンが飛行できない領域を迂回する様に、ステップS11で仮決定された飛行ルートを修正する(例えば、図8の飛行ルートR1からR2に修正する)ことにより実行する。
必要に応じて、ステップS12~ステップS14のループを複数回繰り返して、ドローン飛行ルートが正式に決定される。
【0036】
次に、図示の実施形態で用いられる電気化学式水素圧縮機40(EHC:Electric Hydrogen CompreSSor)について、図10図15を参照して説明する。
電気化学式水素圧縮機40は、大容量化することによって水素ステーションの運転コストを削減することが出来て、特に小規模水素ステーションから中規模水素ステーションで用いられるのに適している。
また、電気化学式水素圧縮機40であれば、同一構造で水素を低圧に圧縮する場合と高圧に圧縮する場合の双方に対応可能であり、振動、騒音が無い。しかも、コンパクトに設計することが可能である。
【0037】
図10において、図示の実施形態に係る電気化学式水素圧縮機40は、複数のセル1(セルスタック:図11参照)と、複数のセル1を収容するセル用ケーシング11と、水分離装置2と、水分離装置2を収容する水分離装置用ケーシング12と、バブラー3と、バブラー3を収容するバブラー用ケーシング13を有している。
セル1を収容するセル用ケーシング11と、水分離装置2を収容する水分離装置用ケーシング12と、バブラー3を収容するバブラー用ケーシング13は、例えばボルト14(図10では中心軸を一点鎖線で示す)により一体的に結合されている。
【0038】
セル用ケーシング11内には、セル1が例えば40個程度収容されている。図10では明示されていないが、セル1は電極であるアノード1Aと、カソード1Cと、電解質膜である固体高分子電解質膜1B(PEM)を有しており、アノード1Aとカソード1Cにより電解質膜1Bを挟み込んでセル1を構成している。
セル1の各々は、1枚で80MPa程度まで水素ガスを加圧する機能を有する様に構成されている。図示の実施形態では、例えば80MPaという高圧は、複数のセルを直列につないで、セルごとに数MPaずつ加圧して得ている訳ではなく、水素を80MPaまで加圧できる能力を有する個々のセルを、複数(例えば40個)、積層している。
【0039】
従来の電気化学式圧縮機では、低圧側と高圧側に曝されるセル或いは電解質膜に対して、圧力容器としてのハードな基準を充足することが要求される。例えば、電解質膜が4倍圧の基準(近い将来において80MPaの高圧ガスを充填する充填機に用いられる電気化学室水素圧縮機では、320MPaでも無事稼働するという基準)をクリアしなければならなかった。
図示の実施形態では、セル1がバブラー3、水分離装置2と一体的に構成されており、複数のセル1が圧力容器状のセル用ケーシング11(セル収容部外殻)に収容されているので、電解質膜1B(固体高分子電解質膜:PEM)そのものには圧力容器としての基準(4倍圧の基準)は適用されない。そのため、近い将来において80MPaの高圧水素の充填が要求される場合に、セル用ケーシング11が4倍圧の基準を充足すれば(320MPaでも無事稼働することが出来れば)、セル用ケーシング11に収容されたセル1或いは固体高分子電解質膜1B(PEM)には、圧力容器としての基準(4倍圧の基準)を充足することは要求されない。また、チェック弁等の低圧回路保護機構(図示せず)を設けることにより守ることが出来るので、固体高分子電解質膜1B(PEM)には圧力容器としての基準は要求されない。
そのため、固体高分子電解質膜1B(PEM)には気密性のみが要求され、4倍圧の基準に耐える様な耐圧性は必要なく、一般高圧容器程度の耐圧性を有していれば足りる。
【0040】
図示の実施形態ではセル1或いは固体高分子電解質膜1B(PEM)は4倍圧の様な厳しい基準を充足する必要がないので、バブラー3(を収容するバブラー用ケーシング13)、水分離装置2(を収容する水分離装置用ケーシング12)と一体的に構成されたセル用ケーシング11が圧力容器としての基準を充足するのであれば、仮に固体高分子電解質膜1B(PEM)が僅かに破損したとしても、セル1全体としては水素を圧縮する機能を発揮する限り、破損したセル1を交換することなく、アノード1A側にチャッキ弁(図示せず)を配置して、水素や水が排出される様に構成して、稼働し続けることが出来る。
【0041】
図10において、水素供給源から、配管15及び温調装置9を経由して供給された水素は、バブラー3内の気泡発生器16(図12参照:図10では図示せず)に供給される。配管15には、水循環ポンプ33を介装した水供給源からの配管28が合流している。
水素供給源から流路15を介して供給された水素は、バブラー3の液相領域3B内に貯留された水(純水)内を大量の気泡となって浮上し、その際に水蒸気を連行する。そして、水素と水蒸気の混合気体は、バブラー3の気相領域3Aから水素ガス流路4(図10の左側の水素ガス流路4)を流れ、セル1のアノード1A(図11)に供給される。符号29は気体用ポンプを示している。
明確には図示されていないが、セル用ケーシング11内に収容された複数のセル1内のポート及び溝を連通して、水素ガス流路4が構成されている。
セル1のアノード1Aに供給された水素は、イオン化されて電解質膜1B(固体高分子電解質膜:PEM)(図11)を透過してカソード1C(図11)側に移動して水素に戻り、圧縮された状態で水分離装置2に送られて、水分離される。
一方、カソード1C側に移動しなかった水素はオフガスとして水素ガス流路4(図10の右側の水素ガス流路4)を流れてバブラー3に戻される。
図10では水素ガス流路4がアノード1A側に向かう流路と、アノード1A側から戻る流路を、象徴的に、単一の太い配管状に表示しているが、実機では、アノード1A側に向かう水素ガス流路4と、アノード1A側から戻る水素ガス流路4は、セル1の数に応じて必要な数だけ分岐、合流して構成されている。
【0042】
図10において、カソード1C(図11)側に移動した水素は、図11を参照して後述する水分離装置2を流過した後、配管17により水分除去装置18に供給され、水分除去装置18で水分を除去される。符号19は、水分離装置2内の高圧水素を水分除去装置18に送るための気体ポンプを示している。
水分を除去された水素は、例えば、図示しない水素充填装置(ディスペンサー)を介して高圧水素容器(例えば、FC駆動ドローンの図示しない水素容器)に充填される。
水分除去装置18は、例えばカートリッジ内に吸着剤(ゼオライト等)を充填して構成されている。吸着剤は定期的に交換されるか、或いは、図10で示す様に真空ポンプ20に直結して再生される。
図10において、水分除去装置18は配管21を介して吸着剤再生用ポンプ20(真空ポンプ)に連通している。水分除去装置18の吸着剤が水分を十分に吸着したならば、真空ポンプ20を稼働して、配管21を介して水分除去装置18の吸着剤を真空乾燥して、吸着剤から水分を除去して再生させる。吸着剤の再生後、開閉弁22を開放し、配管23を介して配管21を外気に連通して、真空状態を開放する。
【0043】
上述した様に、セル用ケーシング11と水分離装置用ケーシング12とバブラー用ケーシング13は、図示の実施形態ではボルト14により一体的に結合されている。
また、水分離装置2とバブラー3は水降下用パイプ26により連通しており、セル1とバブラー3は水素ガス流路4、ヒートチューブ5等により接続されている。
水分離装置2については図11を参照して後述する。また、バブラー3については図12を参照して後述する。
【0044】
次に、図11を参照して水分離装置2について説明する。なお、図11では、セル用ケーシング11の図示は省略している。
図11において、水分離装置2の内部空間には水(ハッチングで示している)が貯留しており、カップフロート25が浮いている。カップフロート25は、図11において下方に突出した外方縁部25Aを有し、中心部には図11の下方に延在する棒状部25Bを有している。棒状部25Bの先端(下端)にはバルブ本体25Cが形成されている。そしてカップフロート25は、その下方に開口部25Dを有する開放された形状となっており、カップフロート25の内部空間は開空間となっている。
水分離装置2の内部空間の中心部と、バブラー3(図10図12参照:図11では図示せず)は、水降下用パイプ26により連通されている。水降下用パイプ26は水分離装置2及び水分離装置用ケーシング12の底部を貫通して下方(図11では図示しないバブラー3側)に延在して、バブラー3に連通する。水降下用パイプ26の上端部26Aは水分離装置2の内部空間の下方で開放され、カップフロート25に形成されたバルブ本体25Cが座着可能な弁座を構成している。そして、カップフロート25のバルブ本体25Cと、水降下用パイプ26の上端開口部26Aにより、上端開口部26Aを開閉する機能を有する弁機構(ニードルバルブ)を構成している。
【0045】
図10を参照して述べた様に、図11における水分離装置2の下方の領域には、セル1が配置されている。セル1のアノード1Aに供給され、電解質膜1Bを経てカソード1C側に移動した水素は、高圧の圧縮水素として、水(水蒸気)と共に、経路27によりセル1側から水分離装置2の内部空間に供給される。水は固体高分子電解質膜(PEM)の様な電解質膜1Bに必要であり、電解質膜1Bを水が透過して、カソード1C側に溜まるので、水分離装置2側には水が貯留する。
カップフロート25は、セル1のカソード1Cから水分離装置2に移動した水素の全量が、水中を浮上してカップフロート25の内部空間内に移動する様に構成されており、セル1が作動してカソード1Cに水素が移動する限り、当該水素はカップフロート25の内部空間に移動する様に構成されている。
【0046】
図11において、下方に開口部25Dを有して内部空間が開空間を形成するカップフロート25を用いたのは、開口部を有しておらず内部空間が閉空間であるフロートでは、高圧(例えば80MPa)に耐えきれないからである。内部空間が閉空間である通常のフロートでは、内部空間は常圧であるため、高圧環境下では内部空間との圧力差でフロートが潰れてしまう。これに対して、当該圧力差の下でも潰れない様にフロートの外殻を厚くすると、フロートが水分離装置2内の水(カソード水)に浮かばない。
それに対して、図示の実施形態におけるカップフロー25であれば、下方に開口部25Dを有し、内部空間は開空間であるため、高圧下においてもカップフロート25の内部空間の圧力は水分離装置2内の圧力と等しく、上述した圧力差は存在しない。そのため、カップフロート25の外殻が薄くても、カップフロート25が潰れることはない。
【0047】
水分離装置2内の水によりカップフロート25に浮力が作用し、カップフロート25が浮き上がると、カップフロート25に設けられたバルブ本体25Cは、弁座である水降下用パイプ26の上端開口部26Aから離隔して開弁する。そして、水分離装置2内の水は上端開口部26Aから水降下用パイプ26内を流下して、バブラー3側に戻される。
水分離装置2内の水量が減少すると、カップフロート25が下降し、バルブ本体25Cが弁座である水降下用パイプ26の上端開口部26Aに座着して、上端開口部26Aが閉鎖される。水降下用パイプ26の上端開口部26Aが閉鎖されるので、水分離装置2内の水はバブラー側に下降せず、水分離装置2内に留まる。
【0048】
図11において、セル1側から水分離装置2の水の中を浮上してカップフロート25の内部空間に到達して溜まった高圧の水素ガスは、図11において矢印H2で示す様にカップフロート25の外側に移動する。セル1側から水分離装置2の水中を浮上してカップフロート25の内部空間に至る経路と、矢印H2で示す経路を高圧水素が移動する際に、水分が分離される。カップフロート25の外側に移動した高圧の水素ガスは、気体ポンプ19を介して、配管17を流れて水分除去装置18へ移動する。
ここで、カップフロート25内の水を経由してカップフロート25の外側に移動した高圧の水素ガスが水分を連行したとしても、水素ガスは高圧になるほどドライになる傾向があり、また、水分を連行しても水分吸着除去装置18で除去されるので、問題はない。
【0049】
セル1のカソード1Cから水分離装置2に移動した水素は、その全量がカップフロート25の内部空間に移動する様に、カップフロート25の位置を含めて構成されている。水分離装置2に移動した水素の全量がカップフロート25の内部空間内に進入する様に構成しないと、カップフロート25が下降した後(バルブ本体25Cが閉鎖された後)、水素がカップフロート25内に入らなくなる恐れがあり、水素がカップフロート25内に入らないとカップフロート25が浮き上がらなくなり、水降下用パイプ26の上端開口部26Aが開放されなくなってしまうからである。
また、カップフロート25を長期間放置すると、その内部に水が置換してカップフロート25が沈んでしまう。しかし図示の実施形態では、カップフロート25の内部空間内にカソード1Cからの水素が進入し続けるので、当該内部空間には常に水素が供給されて、カップフロート25が沈んでしまうことを防止出来る。
上述した様に、水分離装置2側に移動した水素の全量がカップフロート25の内部空間に入る様に構成されているので、水分離装置2内の水が増加すれば、カップフロート25は確実に当該水に浮いた状態を保持するので、水降下用パイプ26の上端開口部26Aが開放しないという事態を防止出来る。
【0050】
ここで、図12で示すバブラー3内に貯留した純水は、水素と共にセル1のアノード1Aに供給され、カソード1Cから水分離装置2(カソード側)に移動し、水分離装置2内に貯留されるが、上述した様に、カップフロート25が水に浮いた状態を保持できれば、水分離装置2内の水は確実に水降下用パイプ26内を流過して、バブラー3内に流れ込む。これにより、バブラー3、セル1、水分離装置2の間で水が循環し続ける。
そのため、従来技術の様にセル1或いはセルスタック外部に別途水循環系統を形成する必要がなく、セルを集積し易く、レイアウトが容易になる。
図示の実施形態では、水分離装置2において水が水素ガスから分離してバブラー3に戻り、バブラー3、セル1、水分離装置2の間で、常時、循環し続ける。しかし、水分離装置2から水分除去装置18(図10参照)に移動した高圧水素は、図10を参照して上述した様に、水分除去装置18で水分が吸着除去され、吸着除去された水分はバブラー3には戻されない。水分除去装置18で除去された分の水を補給する必要がある場合には、図12において水循環ポンプ33を駆動し、水供給源からの配管28、バブラー3に水素を供給する配管15を介して給水すれば良い。係る給水を定期的に行うことも可能である。
【0051】
図11において、カソード側に水が無くなると電解質膜1B(固体高分子電解質膜:PEM、図11)が乾燥し、PEMにおける抵抗が増大する。そしてPEMの抵抗が増大するとPEMにおける水素移動の効率が低下する。そのため、カソード側には常に水がある状態にしておくことが好ましい。
図示の実施形態では、水分離装置2に移動した水素は常にカップフロート25の内部空間に向かって浮上する様に配置されており、且つ、カップフロート25に設けたバルブ本体25Cが水降下用パイプ26の上端開口部26Aにより構成された弁座に座着しても水分離装置2に水が残留している。明確には図示されていないが、水分離装置2に水が残留している限り、カソード側には常時水が保持される。
【0052】
次に図12を参照して、バブラー3について説明する。
図12において、バブラー3はウォーターパン或いはドレンパンとして構成されており、上方の領域は気相領域3A(水素と水蒸気の混合気が貯留する領域)であり、下方の領域は液相領域3B(水が貯留する領域)となっている。
バブラー3の液相領域3Bには気泡発生器16(気化器)が配置されており、気泡発生器16には、温調装置器9を介装した配管15を介して水素が供給される。
気泡発生器16はストーンで構成されるタイプ、メッシュで構成されるタイプ、自然蒸発するタイプの何れのタイプで構成しても良く、その他のタイプの気泡発生器を用いることも出来る。
【0053】
図11を参照して上述した様に、水分離装置2(図10図11)内の水をバブラー3内に戻すために、水分離装置2から水降下用パイプ26がバブラー3まで延設されている。
図12において、温調装置9で温度調節された水素が気泡発生器16に供給されると、バブラー3内に貯留された水(純水)中に、大量の水素気泡が噴出し、噴出した水素と共に水蒸気がバブラー3の気相領域3Aへ移動する(矢印AB)。そして、水素及び水蒸気の混合気は、気体用ポンプ29を介して、水素ガス流路4(図12の左側の水素ガス流路4)によりセル1のアノード1A(図11)へ供給される(矢印A1)。上述した様に、水素ガス流路4は、複数のセル1内のポート及び溝を連通して構成されている。
アノード1Aにおけるオフガスはカソード1C側に移動しなかった水素ガス及び水蒸気を含んでおり、係るオフガスは水素ガス流路4(図12の右側の水素ガス流路4)により、バブラー3の気相領域3Aに流入する(戻される:矢印A2)。
そのため、セル1或いはセルスタックの外部にオフガス循環系統を構成しなくても、バブラー用ケーシング13及びセル用ケーシング11(図10参照)内でオフガスを循環させることが出来る。そして、複数のセル1を積層或いは密集して配置しても、オフガス循環系統と干渉することが防止される。その際、複数のセル1を配置するのに大きなスペースは必要とせず、各セル1とオフガス循環系統との干渉を防止するレイアウトを考慮する必要がない。
【0054】
従来技術では、チラーによりセルを冷却しているが、図示の実施形態では、バブラー3からセル1(複数のセル群)に亘って配置したヒートチューブ5によりセル1を冷却している。ヒートチューブ5によるセルの冷却について、図13を参照して説明する。
図13において模式的に示す様に、ヒートチューブ5はバブラー3とセル1(実機では、ケーシング11内の複数のセル1の各々)とを接続している。ヒートチューブ5の一端はヒートチューブ受熱部5Aとして複数分散設置(固体伝熱)されて、複数のセル1の各々に接続(固体接続)されており、ヒートチューブ5の他端はヒートチューブ放熱部5Bとしてバブラー3の液相領域3Bに浸漬している。図示の簡略化のため、図13では単一のセル1のみが示されている。
ヒートチューブ5は銅製であり、内管5C及び外管5Dの二重管構造を有しており、内管5Cと外管5Dはヒートチューブ受熱部5A及びヒートチューブ放熱部5Bにおいて連通している。ヒートチューブ5の二重管には純水が充填されており、高速で熱を伝達する機能を有している。そして、ヒートチューブ5の高伝熱特性を利用して、電解質膜1B(PEM、図11)に電流を流す際にセル1に発生した熱をバブラー3内に排出することが出来る。
【0055】
ヒートチューブ5でセル1を冷却するに際しては、セル1に発生した熱量が複数分散設置(固体伝熱)されたヒートチューブ5の受熱部5Aに伝熱され、伝熱された熱量は受熱部5Aを介してヒートチューブ5内の純水に伝達され、純水は気化熱を奪って直ちに気化する。気化した水蒸気はヒートチューブ5の内管5C内を高速で流過して(矢印F1)、ヒートチューブ5におけるバブラー3の液相領域3Bに浸漬された放熱部5Bに到達し、放熱部5Bで気化熱がバブラー3内に貯留された純水に投与される。
熱量をバブラー3内の純水に投与すると、ヒートチューブ5の内管5Cを流過した水蒸気は凝縮して純水となり、当該純水はヒートチューブ5の外管5D内を再びヒートチューブ5の受熱部5Aに向かって流れ(矢印F2)、受熱部5Aにおいて再びセル1の熱量で気化する。そして、ヒートチューブ5の内管5C、外管5D内に純水或いは水蒸気を循環させることにより、継続的にセル1を冷却する。
【0056】
ここで、セル1とバブラー3内の純水間のヒートチューブ5による熱移動は、セル1における(受熱)温度とバブラー3内の純水(放熱)温度との温度差に依存する。
電解質膜1B(固体高分子電解質膜:PEM)或いはセル1には最適運転温度があり、適正に電気化学式水素圧縮機40を運転するためには電解質膜1B(固体高分子電解質膜:PEM)或いはセル1を温度調整する必要がある。また、セル1内での結露を防止するために、セル1の温度をバブラー3内の純水よりも所定温度だけ(例えば5℃程度)高めに設定する必要がある。この設定すべき温度差があるので、ヒートチューブ5を介してセル1からバブラー3まで熱を移動することが可能となる。
ここで、バブラー3とセル1をヒートチューブ5でつないだ系は、例えばバブラー3に供給する水素の温度制御をすること、或いは、バブラー3を加熱、冷却することにより、(バブラー3とセル1をヒートチューブ5でつないだ系の)外部から同時に温度調整することが出来て、バブラー3の温度もセル1の温度も、適切にコントロールすることが出来る。
すなわち、セル1とバブラー3は、ヒートチューブ5により熱交換され、セル1、バブラー3、ヒートチューブ5は連鎖的に作用するので、温度制御が容易且つ正確に行うことが出来る。そのため、特別な制御機器を必要とせず、安定的にセル1を冷却することが出来る。そして、セル1に高品質のチラーを設ける必要もない。
【0057】
図15を参照して、図10図13を参照して説明した電気化学式圧縮機40の構造であるが、図10図13では明示されていない機器について説明する。
図15において、ケーシング11の内部には5個のセルが示されており、それぞれのセルの電解質膜が符号1B-1~1B-5で示されている。実機において、セルの数は5個よりもはるかに多い。
図15において、電解質膜1B-1~1B-5の各々の下方がアノード(1A-1~1A-5:図示の煩雑化を避けるため、図15では符号は示していない)であり、電解質膜1B-1~1B-5の各々の上方がカソード(1C-1~1C-5:図示の煩雑化を避けるため、図15では符号は示していない)である。5つのセルは、絶縁体ISにより仕切られており、図15において絶縁体ISは太い点線で表示されている。
5つのセルに対しては、電源PSから、符号ECで包括的に示す導線を介して電力が供給されている。
【0058】
図15において、バブラー3の気泡発生器16の水素の泡BHで加湿された水素ガスは、矢印ABHで示す様に、循環用ポンプPBにより吸い込まれて図15の左側の水素ガス流路4Iに吐出される。水素ガス流路4Iを流れる水素は水蒸気と共に各セルのアノード1A-1~1A-5(図示せず)に供給される。そして水素イオンとなって電解質膜1B-1~1B-5を透過して、カソード1C-1~1C-5(図示せず)で水素に戻る。カソード1C-1~1C-5の高圧水素は、水素経路42、42(図15では2本のみ示すが、実機ではそれ以上の本数を設けている)を介して水分離装置2に移動する。図15では、水分離装置2に移動する高圧の水素は、水素経路42における上方に向かう矢印として表示されている。
各セルのアノード1A-1~1A-5に水素と水蒸気を供給した水素ガス流路4Iは、水平方向(図15では左右方向)に延在する水素ガス流路4Hを経由して図15の右側の水素ガス流路4Oに到達し、アノード1A-1~1A-5のオフガスは水素ガス流路4H、4Oを介して、バブラー3に戻る。
【0059】
カソード1C-1~1C-5から水素経路42を介して水分離装置2に移動した高圧の水素ガスは、泡Hと矢印AHとして水分離装置2内を移動して、配管17を流れ、水分除去装置18(図10)に送られる。そして水分離装置2において高圧の水素ガスから分離された水は、水降下用パイプ26を流れてバブラー3に戻される。
バブラー3にはヒートチューブ5が設けられており、ヒートチューブ5については、図10図13で前述した通りである。
【0060】
図15において、水分離用ケーシング12にはコンディショニングポートCPが形成されており、電気化学式コンプレッサーのメンテナンスの際に、コンディショニングポートCPを介して電解質膜1B-1~1B-5に酸素を供給する様に構成されている。図15において、コンディショニングポートCPは水素経路42に連通している様にも見えるが、コンディショニングポートCPは水素経路42に連通してはおらず、図示しない流路を介して各セルのカソード1C-1~1C-5に連通している。
電気化学式コンプレッサーの運転前に、コンディショニングポートCPから酸素を供給し且つバブラー3から水素を供給することにより、電解質膜1B-1~1B-5において燃料電池と同様に 2H+O→2HO+電気 という反応が行われ、これにより電解質膜1B-1~1B-5の状態が向上する。
【0061】
図示の実施形態で、起動時等においてセル1を加熱するためには、例えば図14(A)で示す様に、バブラー3を収容するバブラー用ケーシング13には加熱用のフィン6を設け、起動時には、ブロワ7により熱風をフィン6に噴射する(矢印H)。これにより、バブラー3が加熱され、バブラー3内の水も加熱され、昇温した水がヒートチューブ5を介してセル1を好適な温度まで加熱する。
一方、ブロワ7により冷風をバブラー用ケーシング13のフィン6に噴射すればバブラー3の温度が低下し、バブラー3内の水の温度も低下し、温度が低下した水がヒートチューブ5を介してセル1を好適な温度まで低下させる。
【0062】
また、バブラー3を加熱する機構としては、図14(B)で示す様に、バブラー3を収容するバブラー用ケーシング13にセル起動用のヒーター8を設け、ヒーター8によりバブラー用のケーシング13を加熱しても良い。
一方、バブラー3を冷却する機構としては、バブラー冷却用のクーラー(図示せず)を用いることが出来る。
バブラー3を加熱或いは冷却するには、図示した以外の機構も選択することが可能である。
さらに、配管15(図10図12)を介してバブラー3に供給される水素の温度を温調装置9(図10図12)により調節することにより、バブラー3内の水の温度を調節して、セル1を好適な温度に調節することも出来る。
係る構成を採用可能であるため、図示の実施形態では、バブラー3の温度調整に高品質機器であるチラーを設ける必要がない。
【0063】
従来技術ではバブラーとセルの間をチューブで接続している。そのため、当該チューブに特別な被覆をして断熱しないと結露を生じ、セルに悪影響を及ぼしてしまう。そして、特別な被覆で断熱されていないチューブでバブラーとセルを接続する場合には、バブラー、セル、その間の空間、チューブの温度をコントロールして、チューブにおける結露を防止しなければならない。
それに対して図示の実施形態では、ヒートチューブ5は、複数分散設置(固体伝熱)したヒートチューブ受熱部5A内が各セル1に接続(固体接続)した部分を有しており、バブラー3から供給される水素と水蒸気の混合気が流れる水素流路4はヒートチューブ5とは異なるレイアウト(経路)となっており、水素流路4を流れる気体(水素と水蒸気の混合気)はヒートチューブ5とは接触せず、水素流路4、ヒートチューブ5は結露しない。すなわち、ヒートチューブ5内を流れる冷媒である純水と、水素流路4を流れる気体は接触せず、熱交換することは無いため、水素流路4、ヒートチューブ5は結露しない。そのため、従来技術における結露防止の温度制御或いは特別な被覆による断熱が不要である。
そして、パブラやチラーの温度制御のため、高品質の機器を使用する必要も無い。
【0064】
上述した構成を有する図示の実施形態で用いられる電気化学式水素圧縮機40は、レイアウトの自由度が高く、水素及び水を装置内で循環させるための特別な装置をセルスタック外部に設ける必要が無く、高価な設備を必要とせず、セルの温度管理も容易である。
図示の実施形態はあくまでも例示であり、本発明の技術的範囲を限定する趣旨の記述ではないことを付記する。
【符号の説明】
【0065】
1・・・セル
1A・・・アノード
1B・・・電解質膜(固体高分子電解質膜:PEM)
1C・・・カソード
2・・・水分離装置
3・・・バブラー
3A・・・気相領域
3B・・・液相領域
4・・・水素ガス流路
5・・・ヒートチューブ
5A・・・ヒートチューブ受熱部
5B・・・ヒートチューブ放熱部
11・・・セル用ケーシング(セル収容部外殻)
12・・・水分離装置用ケーシング
13・・・バブラー用ケーシング
40・・・電気化学式水素圧縮機
50・・・水素充填装置
60・・・ドローン(FC駆動ドローン)
61・・・ドローンの水素タンク
70・・・ドローン用の駐機場
80・・・充填判定ユニット
81・・・ドローン残量決定ブロック
82・・・充填要否決定ブロック
90・・・飛行ルート決定ユニット
91・・・仮決定ブロック
92・・・修正ブロック
95・・・配送計画ユニット
96・・・渉外ユニット
100・・・水素供給システム
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15