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特許7486067検知システム、中継器、処理方法、及びプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】検知システム、中継器、処理方法、及びプログラム
(51)【国際特許分類】
   G08B 25/00 20060101AFI20240510BHJP
   G08B 17/107 20060101ALI20240510BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240510BHJP
   H04B 7/155 20060101ALI20240510BHJP
   G08B 25/08 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G08B25/00 520C
G08B17/107 A
G08B17/00 C
H04B7/155
G08B25/08 Z
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2019061920
(22)【出願日】2019-03-27
(65)【公開番号】P2020161004
(43)【公開日】2020-10-01
【審査請求日】2021-11-08
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高橋 秀晃
(72)【発明者】
【氏名】珍坂 舞
【審査官】大橋 達也
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-218084(JP,A)
【文献】特開2019-023799(JP,A)
【文献】特開2014-127080(JP,A)
【文献】特開2011-059997(JP,A)
【文献】国際公開第2011/055705(WO,A1)
【文献】特開2013-235554(JP,A)
【文献】特開2011-204024(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G08B 17/00-31/00
H04B 7/155
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の検知グループを備えた検知システムであって、
各検知グループは、
防災の対象となる事象が発生したことを検知して、前記事象の検知に基づく検知信号を送信する複数の検知器と、
継器と、
を有し、
前記各検知グループにおいて、前記複数の検知器のいずれか1つは、自機以外の他の前記検知器及び前記中継器と通信する親機として機能し、前記中継器は、前記親機から受信した前記検知信号の中継を行い、
前記複数の検知グループは、それらの複数の前記中継器を介して、前記複数の検知グループ間を跨いで前記検知信号を送受信し、
複数の前記中継器のうちの第1中継器は、自機が属する検知グループの前記親機から前記検知信号を受信した場合に、複数の前記中継器のうちの、前記第1中継器以外の第2中継器への、前記検知信号の中継を前記第1中継器及び前記第2中継器以外の他の装置を介さずに行い、
各検知グループ内の前記親機と前記中継器との間における通信で使用される周波数は、前記複数の検知グループの間で互いに異なり、
複数の前記中継器の間における通信で使用される周波数は、各検知グループ内の通信で使用されるどの周波数とも異なる、
検知システム。
【請求項2】
前記第1中継器は、前記検知信号を前記第2中継器に送信した後、前記第2中継器における前記検知信号の受信の成否を判定する、
請求項1に記載の検知システム。
【請求項3】
前記第1中継器は、前記第2中継器における前記検知信号の受信が失敗であると判定した場合に、前記検知信号を前記第2中継器に再送する、
請求項2に記載の検知システム。
【請求項4】
前記第1中継器が前記検知信号を前記第2中継器に再送する回数は、2回以上である、
請求項3に記載の検知システム。
【請求項5】
複数の検知グループを備えた検知システムであって、
各検知グループは、
防災の対象となる事象が発生したことを検知して、前記事象の検知に基づく検知信号を送信する複数の検知器と、
中継器と、
を有し、
前記各検知グループにおいて、前記複数の検知器のいずれか1つは、自機以外の他の前記検知器及び前記中継器と通信する親機として機能し、前記中継器は、前記親機から受信した前記検知信号の中継を行い、
前記複数の検知グループは、それらの複数の前記中継器を介して、前記複数の検知グループ間を跨いで前記検知信号を送受信し、
複数の前記中継器のうちの第1中継器は、複数の前記中継器のうちの、前記第1中継器以外の第2中継器から、前記検知信号を前記第1中継器及び前記第2中継器以外の他の装置を介さずに受信した場合に、自機が属する検知グループの前記親機に前記検知信号を送信し、
各検知グループ内の前記親機と前記中継器との間における通信で使用される周波数は、前記複数の検知グループの間で互いに異なり、
複数の前記中継器の間における通信で使用される周波数は、各検知グループ内の通信で使用されるどの周波数とも異なる、
検知システム。
【請求項6】
前記複数の検知グループは、少なくとも3つの検知グループから構成され、
複数の前記中継器は、前記第1中継器を少なくとも1つと、前記第2中継器を少なくとも2つと、から構成される、
請求項1~5のいずれか1項に記載の検知システム。
【請求項7】
前記検知信号は、複数の前記中継器間において、ブロードキャスト送信される、
請求項1~6のいずれか1項に記載の検知システム。
【請求項8】
請求項1~7のいずれか1項に記載の検知システムに用いられる中継器であって、
通信先が、自機が属する検知グループ内の前記親機か、複数の前記中継器か、に応じて、使用する周波数を、当該検知グループで使用される第1周波数と、複数の前記中継器間で使用される第2周波数とで切り替える、
中継器。
【請求項9】
請求項1~7のいずれか1項に記載の検知システムに用いられる中継器であって、
前記複数の検知グループのうち自機が属する検知グループ内の通信で使用される第1周波数と、複数の前記中継器間で使用される第2周波数と、を設定する設定部を備える、
中継器。
【請求項10】
複数の検知グループを備えた検知システムの処理方法であって、各検知グループは、複数の検知器と、中継器と、を有し、前記各検知グループにおいて、前記複数の検知器のいずれか1つは、自機以外の他の前記検知器及び前記中継器と通信する親機として機能し、前記複数の検知グループは、それらの複数の前記中継器を介して、前記複数の検知グループ間を跨いで検知信号を送受信し、
当該処理方法は、
前記検知器にて防災の対象となる事象が発生したことを検知する第1ステップと、
前記検知器にて前記事象の検知に基づく前記検知信号を送信する第2ステップと、
前記中継器にて前記親機から受信した前記検知信号の中継を行う第3ステップと、を含み、
前記第3ステップでは、複数の前記中継器のうちの第1中継器において、自機が属する検知グループの前記親機から前記検知信号を受信した場合に、複数の前記中継器のうちの、前記第1中継器以外の第2中継器への、前記検知信号の中継を前記第1中継器及び前記第2中継器以外の他の装置を介さずに行い、
各検知グループ内の前記親機と前記中継器との間における通信で使用される周波数は、前記複数の検知グループの間で互いに異なり、
複数の前記中継器の間における通信で使用される周波数は、各検知グループ内の通信で使用されるどの周波数とも異なる、
処理方法。
【請求項11】
複数の検知グループを備えた検知システムの処理方法であって、各検知グループは、複数の検知器と、中継器と、を有し、前記各検知グループにおいて、前記複数の検知器のいずれか1つは、自機以外の他の前記検知器及び前記中継器と通信する親機として機能し、前記複数の検知グループは、それらの複数の前記中継器を介して、前記複数の検知グループ間を跨いで検知信号を送受信し、
当該処理方法は、
前記検知器にて防災の対象となる事象が発生したことを検知する第1ステップと、
前記検知器にて前記事象の検知に基づく前記検知信号を送信する第2ステップと、
前記中継器にて前記親機から受信した前記検知信号の中継を行う第3ステップと、
複数の前記中継器のうちの第1中継器にて、複数の前記中継器のうちの、前記第1中継器以外の第2中継器から、前記検知信号を前記第1中継器及び前記第2中継器以外の他の装置を介さずに受信した場合に、自機が属する検知グループの前記親機に前記検知信号を送信する第4ステップと、
を含み、
各検知グループ内の前記親機と前記中継器との間における通信で使用される周波数は、前記複数の検知グループの間で互いに異なり、
複数の前記中継器の間における通信で使用される周波数は、各検知グループ内の通信で使用されるどの周波数とも異なる、
処理方法。
【請求項12】
コンピュータシステムに請求項10又は請求項11に記載の処理方法を実行させるためのプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に、検知システム、中継器、処理方法、及びプログラムに関する。本開示は、より詳細には、防災の対象となる事象の発生を検知する検知システム、当該検知システムに用いられる中継器、当該検知システムの処理方法、及びプログラムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来例として、特許文献1に記載の警報システムを例示する。この警報システムでは、1のグループの警報器で火災を検知して警報すると、火災連動信号を送信して当該1のグループ内の他の警報器から警報を出力させる。さらに、火災連動信号は、中継器で受信される。中継器は、他のグループBを指定して警報準備連動信号を送信し、当該他のグループの警報器で警報準備動作による報知を行う。この警報システムでは、中継器を経由して連動する2つのグループの各警報器は、グループ毎に異なる通信周波数を使用して通信する。そして、中継器は、いずれかのグループから受信した通信周波数の信号を、他のグループで使用する通信周波数の信号に変換して送信する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2017-188173号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、特許文献1に記載の警報システム(検知システム)では、中継器が、送信先となるグループ(検知グループ)の通信周波数を予め知っておく必要がある。言い換えると、中継器に対して、複数のグループの通信周波数に関する情報の設定が必要となる。この設定は、中継器やグループの数が多いほど煩雑な作業になり得る。また警報システムの設置後に中継器や警報器(検知器)の増設、及びグループの拡張を行う際にも、煩雑な作業になり得る。
【0005】
本開示は上記事由に鑑みてなされ、複数の検知グループ間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることができる、検知システム、中継器、処理方法、及びプログラムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の一態様に係る検知システムは、複数の検知グループを備える。各検知グループは、複数の検知器と、中継器と、を有する。前記検知器は、防災の対象となる事象が発生したことを検知して、前記事象の検知に基づく検知信号を送信する。前記各検知グループにおいて、前記複数の検知器のいずれか1つは、自機以外の他の前記検知器及び前記中継器と通信する親機として機能し、前記中継器は、前記親機から受信した前記検知信号の中継を行う。前記複数の検知グループは、それらの複数の前記中継器を介して、前記複数の検知グループ間を跨いで前記検知信号を送受信する。複数の前記中継器のうちの第1中継器は、自機が属する検知グループの前記親機から前記検知信号を受信した場合に、複数の前記中継器のうちの、前記第1中継器以外の第2中継器への、前記検知信号の中継を前記第1中継器及び前記第2中継器以外の他の装置を介さずに行う。各検知グループ内の前記親機と前記中継器との間における通信で使用される周波数は、前記複数の検知グループの間で互いに異なる。複数の前記中継器の間における通信で使用される周波数は、各検知グループ内の通信で使用されるどの周波数とも異なる。
【0007】
本開示の一態様に係る検知システムは、複数の検知グループを備える。各検知グループは、複数の検知器と、中継器と、を有する。前記検知器は、防災の対象となる事象が発生したことを検知して、前記事象の検知に基づく検知信号を送信する。前記各検知グループにおいて、前記複数の検知器のいずれか1つは、自機以外の他の前記検知器及び前記中継器と通信する親機として機能し、前記中継器は、前記親機から受信した前記検知信号の中継を行う。前記複数の検知グループは、それらの複数の前記中継器を介して、前記複数の検知グループ間を跨いで前記検知信号を送受信する。複数の前記中継器のうちの第1中継器は、複数の前記中継器のうちの、前記第1中継器以外の第2中継器から、前記検知信号を前記第1中継器及び前記第2中継器以外の他の装置を介さずに受信した場合に、自機が属する検知グループの前記親機に前記検知信号を送信する。各検知グループ内の前記親機と前記中継器との間における通信で使用される周波数は、前記複数の検知グループの間で互いに異なる。複数の前記中継器の間における通信で使用される周波数は、各検知グループ内の通信で使用されるどの周波数とも異なる。
【0008】
本開示の一態様に係る中継器は、上記のいずれかの検知システムに用いられる。前記中継器は、通信先が、自機が属する検知グループ内の前記親機か、複数の前記中継器か、に応じて、使用する周波数を、当該検知グループで使用される第1周波数と、複数の前記中継器間で使用される第2周波数とで切り替える。
【0009】
本開示の一態様に係る中継器は、上記のいずれかの検知システムに用いられる。前記中継器は、設定部を備える。前記設定部は、前記複数の検知グループのうち自機が属する検知グループ内の通信で使用される第1周波数と、複数の前記中継器間で使用される第2周波数と、を設定する。
【0010】
本開示の一態様に係る処理方法は、複数の検知グループを備えた検知システムの処理方法である。各検知グループは、複数の検知器と、中継器と、を有する。前記各検知グループにおいて、前記複数の検知器のいずれか1つは、自機以外の他の前記検知器及び前記中継器と通信する親機として機能する。前記複数の検知グループは、それらの複数の前記中継器を介して、前記複数の検知グループ間を跨いで検知信号を送受信する。前記処理方法は、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、を含む。前記第1ステップでは、前記検知器にて防災の対象となる事象が発生したことを検知する。前記第2ステップでは、前記検知器にて前記事象の検知に基づく検知信号を送信する。前記第3ステップでは、前記中継器にて前記親機から受信した前記検知信号の中継を行う。前記第3ステップでは、複数の前記中継器のうちの第1中継器において、自機が属する検知グループの前記親機から前記検知信号を受信した場合に、複数の前記中継器のうちの、前記第1中継器以外の第2中継器への、前記検知信号の中継を前記第1中継器及び前記第2中継器以外の他の装置を介さずに行う。各検知グループ内の前記親機と前記中継器との間における通信で使用される周波数は、前記複数の検知グループの間で互いに異なる。複数の前記中継器の間における通信で使用される周波数は、各検知グループ内の通信で使用されるどの周波数とも異なる。
【0011】
本開示の一態様に係る処理方法は、複数の検知グループを備えた検知システムの処理方
法である。各検知グループは、複数の検知器と、中継器と、を有する。前記各検知グループにおいて、前記複数の検知器のいずれか1つは、自機以外の他の前記検知器及び前記中継器と通信する親機として機能する。前記複数の検知グループは、それらの複数の前記中継器を介して、前記複数の検知グループ間を跨いで検知信号を送受信する。前記処理方法は、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、第4ステップと、を含む。前記第1ステップでは、前記検知器にて防災の対象となる事象が発生したことを検知する。前記第2ステップでは、前記検知器にて前記事象の検知に基づく検知信号を送信する。前記第3ステップでは、前記中継器にて前記親機から受信した前記検知信号の中継を行う。前記第4ステップでは、複数の前記中継器のうちの第1中継器にて、複数の前記中継器のうちの、前記第1中継器以外の第2中継器から、前記検知信号を前記第1中継器及び前記第2中継器以外の他の装置を介さずに受信した場合に、自機が属する検知グループの前記親機に前記検知信号を送信する。各検知グループ内の前記親機と前記中継器との間における通信で使用される周波数は、前記複数の検知グループの間で互いに異なる。複数の前記中継器の間における通信で使用される周波数は、各検知グループ内の通信で使用されるどの周波数とも異なる。
【0012】
本開示の一態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに上記のいずれかの処理方法を実行させるためのプログラムである。
【発明の効果】
【0013】
本開示によれば、複数の検知グループ間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることができる、という利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1図1は、一実施形態に係る検知システムを説明するための概念図である。
図2図2は、同上の検知システムの概略ブロック構成図である。
図3図3は、同上の検知システムにおける外部サーバ及び情報端末を説明する図である。
図4図4A及び図4Bは、同上の検知システムにおける動作例1を説明する図である。
図5図5は、同上の検知システムにおける動作例2を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(1)概要
以下の実施形態において説明する各図は、模式的な図であり、各図中の各構成要素の大きさ及び厚さそれぞれの比が、必ずしも実際の寸法比を反映しているとは限らない。
【0016】
本実施形態に係る検知システム100(図1参照)は、複数の検知グループG0を備えている。各検知グループG0は、1つ以上の検知器1(ここでは一例として3つ)と、中継器R1と、を有している。検知器1は、防災の対象となる事象が発生したことを検知して、事象の検知に基づく検知信号を送信する。中継器R1は、検知器1から受信した検知信号の中継を行う。
【0017】
本実施形態では、防災の対象となる事象は、一例として、火災であり、検知器1は、火災警報器であることを想定する。したがって、検知器1は、火災を検知する機能と、火災の検知に応じて警報音を発報する機能とを兼ね備えている。そして、検知器1は、各検知グループG0内において、警報音を連動して発報させるための連動信号(検知信号)の送受信を行う、連動型の火災警報器である。さらに、中継器R1により、複数の検知グループG0間を跨ぐ連動信号(検知信号)の送受信も行われる。しかし、検知器1は、例えば、火災の検知機能のみを有した火災感知器であってもよい。また、防災の対象となる事象は、火災に限定されず、水害、地震、ガス漏れ、又は不完全燃焼によるCO(一酸化炭素)の発生等でもよい。
【0018】
また以下では、中継器R1も、検知器1であることを想定する。つまり、各検知グループG0にある複数の検知器1のうちの1つ(例えば親機)が、中継器R1としての機能を有しているものとする。しかし、中継器R1は、検知器1から受信した検知信号の中継を行う機能を有していれば、検知器1でなくてもよい。つまり、中継器R1にとって、防災の対象となる事象(火災)が発生したことを検知する機能は必須ではない。したがって、中継器R1は、中継専用の通信機器でもよい。
【0019】
検知システム100は、例えば、施設に適用される。具体的には、複数の検知器1は、施設内の設置対象の空間にある天井、又は壁等に設置される。施設は、比較的広いエリアを有しているものが想定される。つまり、火災の検知対象となるエリアが、2~3台程度の検知器1では、カバーできないような施設を想定する。施設は、集合住宅(マンション)、オフィスビル、劇場、映画館、公会堂、遊技場、複合施設、飲食店、百貨店、学校、ホテル、旅館、病院、老人ホーム、幼稚園、図書館、博物館、美術館、地下街、駅、空港等である。特に、検知システム100は、複数の階層に分かれた施設に適用され得る。例えば、各階層に、1つの検知グループG0が割り当てられて設置され得る。ただし、施設は、比較的広いエリアであれば、複数の階層に分かれてなくてもよい。また施設は、戸建住宅でもよい。
【0020】
ここで本開示における一の態様では、複数の検知グループG0は、それらの複数の中継器R1を介して、複数の検知グループG0間を跨いで検知信号を送受信する。複数の中継器R1のうちの第1中継器R11は、自機が属する検知グループG0の検知器1から検知信号を受信した場合に、複数の中継器R1のうちの、第1中継器R11以外の第2中継器R12への、検知信号の中継を行う。
【0021】
つまり、第1中継器R11は、検知信号を、自機が属する検知グループG0とは別の検知グループG0の検知器1へ直接送信するのではなく、当該別の検知グループG0の第2中継器R12に送信する。そのため、例えば特許文献1のように中継器に対して、複数のグループの通信周波数に関する情報の設定を行う必要がない。つまり、当該一の態様では、第1中継器R11は、自機が属する検知グループG0以外の他の検知グループG0における通信の設定情報に関与しない。したがって、複数の検知グループG0間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることができる。
【0022】
ところで、上記一の態様では、検知システム100内で行われる通信が全て、無線通信であることに限定されない。例えば、中継グループH0内における中継器1間の通信の少なくとも一部が、有線で通信されてもよい。
【0023】
また本開示における別の態様では、複数の検知グループG0は、それらの複数の中継器R1を介して、複数の検知グループG0間を跨いで検知信号を送受信する。複数の中継器R1のうちの第1中継器R11は、複数の中継器R1のうちの、第1中継器R11以外の第2中継器R12から、検知信号を受信した場合に、自機が属する検知グループG0の検知器1に検知信号を送信する。
【0024】
つまり、第1中継器R11は、検知信号を、自機が属する検知グループG0とは別の検知グループG0の検知器1から直接受信するのではなく、当該別の検知グループG0の第2中継器R12から受信する。そのため、例えば特許文献1のように中継器に対して、複数のグループの通信周波数に関する情報の設定を行う必要がない。つまり、当該別の態様では、第1中継器R11は、自機が属する検知グループG0以外の他の検知グループG0における通信の設定情報に関与しない。したがって、複数の検知グループG0間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることができる。
【0025】
(2)詳細
(2.1)全体構成
以下、本実施形態に係る検知システム100の全体構成について詳しく説明する。検知システム100は、上述の通り、複数(図1では4つ)の検知グループG0を備えている。以下、4つの検知グループG0を互いに区別する場合には、これらを、第1グループG1、第2グループG2、第3グループG3、及び第4グループG4と呼ぶこともある。各検知グループG0は、図1に示すように、一例として、合計で4つの検知器1を有している。ただし、上述の通り、4つの検知器1のうちの1つが、中継器R1に相当し、さらに他の3つの検知器1(子機)の親機として機能する。図示例では、各検知グループG0間で検知器1の数は、全て同じであるが、異なってもよい。
【0026】
ここでは、各検知グループG0における4つの検知器1のうち検知器1Aが親機として機能し、他の検知器1B~1Dが子機として機能し、親機と子機との間で通信可能である(図1参照)。以下では、子機として機能する3つの検知器1B~1Dを子機101と呼び、親機として機能する検知器1Aを親機102と呼ぶこともある。
【0027】
検知システム100内における4つの中継器R1は、上述の通り、4つの中継器R1間のみで互いに通信する中継グループH0を構成する。特にここでは、4つの中継器R1である4つの親機102のうち、第1グループG1に属する親機102が、中継グループH0内で、他の3つの親機102を管理する主親機X1であるとする。
【0028】
検知器1は、一例として電池式の火災警報器である。ただし、検知器1は、外部電源(例えば商用の電力系統)に電気的に接続され、外部電源から供給される交流電力(例えば実効値100V)を直流電力に変換して駆動してもよい。
【0029】
各検知グループG0内における複数の検知器1は、いわゆる連動型の火災警報器であり、各検知グループG0内のいずれの検知器1で火災を検出しても、他の検知器1と連動して(他の検知器1と共に)、警報音の発報を行うように構成される。本実施形態では、各検知グループG0内における複数の検知器1の間で、通信可能なネットワークが形成されている。
【0030】
4つの検知グループG0は、施設内において大きく4つに区切られた検知エリアをそれぞれ一対一で対応するように、配置される。更に各検知グループG0の4つの検知器1は、対応する検知エリアの4つの小エリアに、それぞれ一対一で対応するように、配置される。4つの検知グループG0は、それらの4つの中継器R1を介して、4つの検知グループG0間を跨いで信号(例えば後述する検知信号)を送受信する。
【0031】
検知システム100は、図2に示すように、制御機器103、1又は複数の電気負荷104、情報端末105及び外部サーバ106を更に備えている。制御機器103は、例えば、施設内に設置されるBEMS(Building energy management system)のコントローラである。施設が住宅なら、制御機器103は、HEMS(home energy management system)のコントローラでもよい。制御機器103は、検知システム100内の複数の検知器1を管理するように構成されている。また制御機器103は、検知器1以外の、1又は複数の電気負荷104(具体的には使用状況や消費電力量等の情報)を管理するように構成されている。
【0032】
以下では、検知システム100内で行われる通信は全て、無線通信によるものとする。4つの検知グループG0及び中継グループH0内における通信で使用される無線周波数帯は、例えば、消防法の法令に基づく無線周波数帯に相当する。具体的には、無線周波数帯は、小電力セキュリティシステムの無線局、すなわち426MHz帯に相当する。
【0033】
例えば、426MHz帯において複数の周波数のチャンネルのうちの5つが、4つの検知グループG0及び中継グループH0に割り振りされている。ここでは、一例として、4つの検知グループG0及び中継グループH0の通信周波数が全て、互いに異なるように設定されている。図1に示すように、第1グループG1~G4の通信周波数(第1周波数)は、それぞれF1a、F1b、F1c、F1dに設定され、中継グループH0の通信周波数(第2周波数)は、F2に設定されている。
【0034】
一方、4つの親機102(代表して主親機X1だけでもよい)は、例えば、例えばWi-SUN(登録商標)の規格(国際標準規格IEEE 802.15.4g)に準じた920MHzの無線周波数帯の電波を用いて、制御機器103と通信可能とする。各親機102は、920MHz帯の電波を用いて、施設内で火災が発生した旨を外部に通知するための通知信号等を、制御機器103に送信する。
【0035】
検知システム100で使用される周波数帯は、上記の426MHz帯や920MHz帯に限定されず、各国の電波法又は消防法等に準じて、適宜に変更し得るものである。
【0036】
(2.2)検知器
(2.2.1)親機(中継器)
まず、検知システム100内における複数の検知器1のうち、4つの親機102(検知器1A)、すなわち4つの中継器R1の構成について説明する。
【0037】
親機102は、火災が発生したことを検知するように構成されている。親機102は、施設内の所定の検知エリアにおける対応する小エリアで火災の発生を検知する検知機能と、火災の発生を検知した場合に報知する警報機能を有している。親機102は、図2に示すように、検知部8、音響部9、制御部10、記憶部11、通信部12、バッテリー13、表示部14、設定部15、及び、これらを収容又は保持する筐体を備えている。なお、図2は、4つの検知グループG0のうち第1グループG1内の4つの検知器1のみを代表的に図示している。
【0038】
この他にも、親機102は、音響回路及び点灯回路等の回路モジュールを更に備えている。また親機102は、通信部12、上記の音響回路及び点灯回路等を構成する電子部品が実装された回路基板を更に備えている。バッテリー13は、例えば、リチウム電池であり、親機102は、バッテリー13から供給される電力によって動作する。
【0039】
制御部10は、例えば、プロセッサ及びメモリを有するコンピュータシステムを有している。そして、プロセッサがメモリに格納されているプログラムを実行することにより、コンピュータシステムが制御部10として機能する。プロセッサが実行するプログラムは、ここではコンピュータシステムのメモリに予め記録されているが、メモリカード等の非一時的な記録媒体に記録されて提供されてもよいし、インターネット等の電気通信回線を通じて提供されてもよい。
【0040】
検知部8は、警報音の発報対象となる火災に関する情報を検知する機能(検知機能)を有している。ここでは検知部8は、一例として、煙を検知する光電式のセンサである。したがって、火災に関する上記情報とは、例えば、煙に関する情報を含む。ただし、検知部8は、光電式のセンサに限定されず、例えば熱を検知する定温式のセンサでもよい。検知部8は、例えば、LED(Light Emitting Diode)等の発光部と、フォトダイオード等の受光部とを有している。発光部及び受光部は、自機の筐体のラビリンス内において、受光部の受光面が、発光部の照射光の光軸上から外れるように配置されている。火災の発生時には、煙が筐体に設けられた孔を通じて、ラビリンス内に導入され得る。
【0041】
筐体のラビリンス内に煙が存在しない場合、発光部の照射光は、受光部の受光面にほとんど到達しない。一方、筐体のラビリンス内に煙が存在する場合、発光部の照射光が煙によって散乱し、散乱した光の一部が受光部の受光面に到達する。つまり、検知部8は、煙によって散乱された発光部の照射光を受光部で受光する。検知部8は、受光部で受光された光量に応じた電圧レベルを示す電気信号(出力信号)を制御部10に出力する。
【0042】
制御部10は、検知部8が出力した出力信号に基づいて、火災の発生の有無を判断する。例えば、制御部10は、出力信号が示す電圧レベルが予め定められた閾値以上である場合には、火災が発生したと判断する。そして、火災が発生したことを検知すると、制御部10は、通信部12から、火災の検知に基づく検知信号を送信する。また制御部10は、他の検知器1から、検知信号を受信した場合にも、火災が発生したと判断する。
【0043】
音響部9及び表示部14は、施設における火災の発生を検知した場合に、火災の発生を報知する機能(報知機能)を有した報知部を構成する。
【0044】
音響部9は、音(音波)を出力する。音響部9は、施設で火災が発生したと制御部10が判定したときに、火災の発生を報知するように警報音を出力する。音響部9は、電気信号を音に変換するスピーカにより構成される。スピーカは、振動板を有し、電気信号に従って振動板を機械的に振動させることにより警報音を発する。音響部9は、制御部10による制御下で、警報音(例えば「ピー」音)を出力する。警報音は、例えば、低音から高音にスイープさせたスイープ音と、スイープ音に連続する音声メッセージとから構成される。
【0045】
仮に火災の発生が、ある検知グループG0の親機102によって検知された場合、親機102の音響部9は、「火事です。火事です。」といった音声メッセージを出力する。この場合、当該検知グループG0内における発報の連動動作に関して、発報の連動元(火元)は、親機102である。当該検知グループG0内における連動先の他の検知器1も、「ほかの部屋で火事です。ほかの部屋で火事です。」といった音声メッセージを出力する。音声メッセージは、連動元の検知器1が設置されている小エリア(設置場所)を示す名称情報を含んでもよい。また後述するように、当該検知グループG0の親機102は、中継器R1であるため、他の検知グループG0の3つの中継器R1に対しても、例えばブロードキャストで一斉に検知信号を送信する。本実施形態では、一例として検知器1が火災警報器であるため、警報の発報連動をさせることを目的として検知信号が、次々と他の検知器1に送信される。そのため、以下では、子機101から親機102へ、親機102から子機101へ、中継器R1から別の中継器R1へ、送信される検知信号を、「連動信号」と呼ぶこともある。
【0046】
警報中(警報音を発報中)に検知器1が、外部から、押し釦式の操作部等にて操作入力(押し操作)を受け付けると、音響部9は、警報音の出力を停止する。
【0047】
表示部14は、例えば赤色LEDを有している作動灯である。表示部14は、通常時(火災の監視時)には消灯しており、制御部10にて火災が発生したと判定したときに点滅(又は点灯)を開始する。この点滅は、警報音の発報が停止すると、停止する。
【0048】
記憶部11は、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)、又はEEPROM(Electrically Erasable Programmable Read Only Memory)等から選択されるデバイスで構成される。記憶部11は、自身(自機)に割り当てられた固有の識別子(識別情報)を記憶している。検知器1が他の検知器1を管理する場合、記憶部11は、他の検知器1に割り当てられた識別情報も記憶している。識別情報とは、その検知器1のIPアドレス、Macアドレス、又は名称等である。また記憶部11は、音声メッセージに係る警報メッセージデータを記憶している。記憶部11は、制御部10のメモリであってもよい。
【0049】
ここで本実施形態の親機102の記憶部11は、426MHz帯に対応する複数の周波数のチャンネルを記憶する。特に、親機102の記憶部11は、426MHz帯に対応する複数の周波数のチャンネルの中で、自機が属する検知グループG0内の通信で使用するチャンネル(第1周波数)と、中継グループH0内の通信で使用するチャンネル(第2周波数F2)と、を記憶する。
【0050】
通信部12は、426MHz帯と920MHz帯の2つの周波数帯で無線通信するように構成される。言い換えると、通信部12は、426MHz帯の電波で通信可能な第1通信インタフェースと、920MHz帯の電波で通信可能な第2通信インタフェースと、を有している。
【0051】
通信部12は、自機が属する検知グループG0の3つの子機101と通信する場合には、第1通信インタフェースにて、4つの第1周波数F1a、F1b、F1c及びF1dのうちの、対応する第1周波数のチャンネルを用いて通信する。つまり、各検知グループG0内の子機101と親機102(中継器R1)との間における通信で使用される第1周波数は、複数の検知グループG0の間で互いに異なる。
【0052】
例えば、第1グループG1の親機102は、第1周波数F1aを用いて、第1グループG1内の3つの子機101と通信し、第2グループG2の親機102は、第1周波数F1bを用いて、第2グループG2内の3つの子機101と通信する。また第3グループG3の親機102は、第1周波数F1cを用いて、第3グループG3内の3つの子機101と通信し、第4グループG4の親機102は、第1周波数F1dを用いて、第4グループG4内の3つの子機101と通信する。
【0053】
各親機102は、中継器R1でもあるため、自機が属する検知グループG0内の子機101で火災が検知された場合には、当該子機101から受信した連動信号(検知信号)の中継を行う。ここで言う「中継」とは、他の検知グループG0への連動信号の中継を意味する。通信部12は、中継グループH0における自機以外の3つの中継器R1(親機102)と通信する場合には、第1通信インタフェースにて、第2周波数F2のチャンネルを用いて通信する。つまり、各中継器R1は、4つの検知グループG0で連動信号の通信に使用される第1周波数F1a~F1dとは異なる第2周波数F2で、他の中継器R1と、連動信号の送受信を行う。
【0054】
具体的には、中継器R1である各親機102は、自機が属する検知グループG0内の火元となった子機101から連動信号を受信した場合、対応する第1周波数を用いて同検知グループG0内の他の子機101に連動信号を送信する。さらに各親機102は、複数の中継器R1間の通信で使用される第2周波数F2で、他の3つの中継器R1への連動信号の中継も行う。つまり、中継器R1である各親機102において、自機が属する検知グループG0内の子機101(検知器1)から受信した連動信号(検知信号)の中継先は、自機以外の複数(ここでは3つ)の中継器R1である。
【0055】
各親機102は、自機が火災を検知した場合にも、対応する第1周波数を用いて自機が属する検知グループG0内の子機101に連動信号を送信し、第2周波数F2を用いて連動信号の中継を行う。
【0056】
要するに、中継器R1である各親機102の通信部12は、通信先が、自機が属する検知グループG0内の子機101(検知器1)か、複数の中継器R1か、に応じて、使用する(通信)周波数を切り替えるように構成される。使用する通信周波数は、自機が属する検知グループG0で使用される第1周波数と、複数の中継器R1間で使用される第2周波数F2とで切り替えられる。なお、各検知グループG0の親機102は、例えば通常時(火災の監視時)では、つまり他の検知器1からの信号の受信待ち状態では、通信周波数を、第1周波数F1aと第2周波数F2とで交互に定期的に切り替える。
【0057】
また各親機102は、他の3つの中継器R1のいずれかから連動信号を受信した場合、自機が属する検知グループG0内の子機101(検知器1)に、当該検知グループG0内の通信で使用される第1周波数(F1a~F1dのいずれか)で連動信号を送信する。
【0058】
各検知グループG0及び中継グループH0内で送受信される信号は、連動信号だけでなく、種々の情報を要求する要求信号や、ACK(Acknowledgement)信号、同期信号、動作テストを連動的に実行させるテスト信号等も含み得る。要するに、火災の検知時に送受信される連動信号だけでなく、検知器1間で送受信される全ての信号が、対応する上記周波数を用いて行われる。
【0059】
また各親機102は、施設内で火災が検知されると、第2通信インタフェースを介して、通知信号を制御機器103に送信する。
【0060】
設定部15は、複数の検知グループG0のうち自機が属する検知グループG0内の通信で使用される第1周波数(F1a~F1dのいずれか)と、複数の中継器R1間で使用される第2周波数F2と、を設定する。設定部15は、例えば、筐体に露出するように保持されて、外部からの操作入力を受け付ける操作部(複数のディップスイッチ等)から構成されてもよい。あるいは設定部15は、筐体に露出するように保持されて、外部のリモートコントローラから送信される赤外光を受光する受光部から構成されてもよい。制御部10は、設定部15が例えば複数のディップスイッチから構成されていれば、それらのオン又はオフ状態に基づいて、第1周波数(F1a~F1dのいずれか)と第2周波数F2とを、記憶部11に記憶させる。設定部15が設けられていることで、各親機102に対して、対応する第1周波数(F1a~F1dのいずれか)及び第2周波数F2の設定に関する作業が容易となる。
【0061】
(2.2.2)子機
次に各検知グループG0における3つの子機101(検知器1B~1D)の構成について簡単に説明する。以下では、親機102(中継器R1)と同一の構成要素については、親機102と同一の符号を付し、その説明を適宜省略する。
【0062】
各子機101は、親機102と同様に、施設内の所定の検知エリアにおける対応する小エリアで火災の発生を検知する検知機能と、火災の発生を検知した場合に報知する警報機能を有している。
【0063】
各子機101は、親機102と同様に、検知部8、音響部9、制御部10、記憶部11、通信部12、バッテリー13、表示部14、設定部15、及び、これらを収容又は保持する筐体を備えている。この他にも、各子機101は、音響回路及び点灯回路等の回路モジュール、及び回路基板を更に備えている。
【0064】
ところで、各子機101は、制御機器103とは通信せず、自機が属する検知グループG0の親機102のみと通信するため、各子機101の通信部12にとって、920MHz帯の電波で通信可能な第2通信インタフェースは必須ではない。また各子機101は、中継器R1ではないため、各子機101の記憶部11は、中継グループH0内の通信で使用する第2周波数F2を記憶していなくてもよい。さらに各子機101の通信部12にとって、通信先に応じて使用する通信周波数を切り替える切替機能は必須ではない。
【0065】
あるいは、例えば同一の構成を有した検知器1が、筐体に設けられたディップスイッチ等への切り替え操作に応じて、子機101又は親機102のいずれかに設定可能であってもよい。この場合には、各子機101の通信部12も、第2通信インタフェースを備えてもよいし、通信周波数の切替機能を有してもよい。ただし、子機101に設定された検知器1は、たとえ第2通信インタフェース及び通信周波数の切替機能を有していても不使用であってもよい。
【0066】
各子機101は、自機が火災の発生を検知した場合、連動元となって発報を連動させるために、通信部12を介して、連動信号を、自機が属する検知グループG0の親機102に送信する。また各子機101は、自機が火災の発生を検知した場合、自機の音響部9から警報音の出力を開始し、自機の表示部14を点滅させる。
【0067】
一方、各子機101は、通信部12を介して、自機が属する検知グループG0の親機102から連動信号を取得すると、自機の音響部9から警報音の出力を開始し、自機の表示部14を点滅させる。
【0068】
(2.3)制御機器
制御機器103は、上述の通り、例えばBEMSのコントローラである。制御機器103は、施設に設けられた複数の電気負荷104(図2では1つのみ図示)と通信可能である。複数の電気負荷104は、例えば、通信機能を有した空調機器、照明機器、及び給湯器等を含み得る。本実施形態では、制御機器103は、さらに、施設に設けられた4つの親機102(検知器1A)と通信可能である。また制御機器103は、各親機102を介して、当該親機102が属する検知グループG0内の3つの子機101(検知器1B~1D)とも通信可能である。
【0069】
制御機器103は、920MHz帯の電波で、各親機102等と通信を行うための通信インタフェースを含んでいる。また制御機器103は、インターネット等のネットワークNT1(図3参照)を介して、情報端末105及び外部サーバ106と通信を行うための通信インタフェースを更に有している。制御機器103は、外部サーバ106等の他の装置を介して、情報端末105と通信を行ってもよい。
【0070】
情報端末105は、施設のユーザが所有するスマートフォン、又はタブレット端末等である。施設のユーザとは、例えば、施設が非住宅なら施設の管理者又は所有者で、施設が住宅なら住人である。本実施形態では、情報端末105は、スマートフォンを想定している。情報端末105には、制御機器103と無線通信可能とする専用のアプリケーションソフトがインストールされている。
【0071】
制御機器103は、メモリ内に複数の検知器1の識別情報等を記憶する。また制御機器103は、メモリ内に検知器1の識別情報と、検知器1の設置場所に関する情報とを対応付けて記憶してもよい。この他にも制御機器103のメモリは、情報端末105に関する情報(例えば、電話番号)を記憶する。
【0072】
制御機器103は、例えば、液晶ディスプレイ又は有機EL(electroluminescence)ディスプレイのような薄型のディスプレイ装置(表示部)を有してもよい。制御機器103の表示部が、タッチパネル式のディスプレイ装置であれば、ユーザからの操作を受け付ける操作部の機能を兼ね備えてもよい。
【0073】
制御機器103は、親機102から通知信号を受信すると、通知信号に基づいて、火災が発生した旨を表示部に表示させる。制御機器103は、火元となる検知器1の設置場所を、表示部に表示させてもよい。
【0074】
また外部サーバ106が、セキュリティ会社等が管理するサーバ装置であれば、制御機器103は、受信した通知信号に基づいて、火災が発生した旨を、外部サーバ106に通知してもよい。また制御機器103は、取得した通知信号に基づいて、火災が発生した旨を、情報端末105に通知してもよい。
【0075】
(2.4)動作
以下、火災を検知した場合の検知システム100の動作について説明する。ここでは一例として、4つの検知グループG0のうち第1グループG1内の検知器1で火災が検知された場合を想定する。
【0076】
[動作例1]
まず、第1グループG1の親機102(検知器1A)が火災を検知した場合の動作について、図4Aを参照しながら説明する。なお、以下、第1グループG1の中継器R1(親機102)を「第1中継器R11」と呼び、他の3つの中継器R1をまとめて「第2中継器R12」と呼ぶこともある。
【0077】
第1グループG1の親機102は、施設内の所定の検知エリアにおける対応する小エリアで、火災を検知する(ステップS1)。第1グループG1の親機102は、音声メッセージ「火事です。火事です。」をスイープ音に連続して出力する(警報音の発報開始:ステップS2)。また第1グループG1の親機102は、第1周波数F1a(426MHz帯)の電波を用いて、連動信号(検知信号)を、第1グループG1の3つの子機101に、例えばマルチキャストで順次(ブロードキャストでもよい)、送信する(ステップS3)。その結果、第1グループG1の各子機101は、第1グループG1の親機102の発報に連動して、警報音の発報を開始する(ステップS4)。
【0078】
また第1グループG1の親機102は、中継グループH0に属する第1中継器R11である。そこで、第1グループG1の親機102は、使用する通信周波数を第1周波数F1a(426MHz帯)から、中継グループH0用の通信周波数である第2周波数F2(426MHz帯)に切り替える(ステップS5)。そして、第1グループG1の親機102は、第2周波数F2の電波を用いて、連動信号を3つの第2中継器R12に、例えばブロードキャストで一斉に、送信する(ステップS6)。連動信号を受信した3つの第2中継器R12は、「グループ内処理」を実行する(ステップS7)。「グループ内処理」については後述する。
【0079】
さらに第1グループG1の親機102は、920MHz帯の電波を用いて、通知信号を制御機器103に送信する(ステップS8)。制御機器103は、受信した通知信号に基づき、施設で火災が発生した旨を表示部にて表示し、また情報端末105及び外部サーバ106等に通知する(ステップS9)。
【0080】
次に、第1グループG1の親機102から連動信号を受信した3つの第2中継器R12にて実行される「グループ内処理」について、図4Bを参照しながら説明する。以下では、第2グループG2のみに着目して説明するが、実質的に同様の処理が、他の第3グループG3及び第4グループG4でも実行され得る。
【0081】
第2グループG2の親機102は、中継グループH0に属する第2中継器R12の1つである。第2グループG2の親機102は、第2周波数F2の電波による連動信号を、第1グループG1の親機102から受信する(ステップS11)。その結果、第2グループG2の親機102は、第1グループG1内の発報に連動して、警報音の発報を開始する(ステップS12)。
【0082】
第2グループG2の親機102は、使用する通信周波数を第2周波数F2から、第2グループG2用の通信周波数である第1周波数F1b(第3グループG3ならF2からF1c、第4グループG4ならF2からF1dになる)に切り替える(ステップS13)。そして、第2グループG2の親機102は、第1周波数F1bの電波を用いて、連動信号を、第2グループG2の3つの子機101に送信する(ステップS14)。その結果、第2グループG2の各子機101は、第2グループG2の親機102の発報に連動して、警報音の発報を開始する(ステップS15)。
【0083】
[動作例2]
次に、第1グループG1の3つの子機101のいずれかが火災を検知した場合の動作について説明する。ここでは一例として、第1グループG1の検知器1Bが火災を検知した場合を想定する。
【0084】
第1グループG1の検知器1Bは、施設内の所定の検知エリアにおける対応する小エリアで、火災を検知する(ステップS21)。第1グループG1の検知器1Bは、音声メッセージ「火事です。火事です。」をスイープ音に連続して出力する(警報音の発報開始:ステップS22)。また第1グループG1の検知器1Bは、第1グループG1用の通信周波数である第1周波数F1aの電波を用いて、連動信号を第1グループG1の親機102に送信する(ステップS23)。その結果、第1グループG1の親機102は、第1グループG1の検知器1Bの発報に連動して、警報音の発報を開始する(ステップS24)。
【0085】
そして、第1グループG1の親機102は、第1周波数F1aの電波を用いて、連動信号を、第1グループG1の他の子機101(検知器1C、1D)に、例えばマルチキャストで順次送信する(ステップS25)。その結果、第1グループG1の他の子機101も、連動して警報音の発報を開始する(ステップS26)。連動信号は、検知器1C、1Dだけでなく、ブロードキャストで一斉に検知器1Bにも送信されてもよい。
【0086】
また第1グループG1の親機102は、中継グループH0に属する第1中継器R11であるため、使用する通信周波数を第1周波数F1aから、中継グループH0用の通信周波数である第2周波数F2に切り替える(ステップS27)。そして、第1グループG1の親機102は、第2周波数F2の電波を用いて、連動信号を3つの第2中継器R12に、例えばブロードキャストで一斉に、送信する(ステップS28)。連動信号を受信した3つの第2中継器R12は、「グループ内処理」を実行する(ステップS29)。「グループ内処理」は、上記動作例1と共通のため、ここでは省略する。
【0087】
さらに第1グループG1の親機102は、上記動作例1と同様に、920MHz帯の電波を用いて、通知信号を制御機器103に送信する(ステップS30)。その結果、制御機器103は、施設で火災が発生した旨を表示部にて表示し、また情報端末105及び外部サーバ106等に通知する(ステップS31)。
【0088】
なお、上記動作例1及び上記動作例2における通信周波数の切り替えタイミングは、単なる一例であり、特に限定されない。
【0089】
このように本実施形態では、複数の検知グループG0における複数の中継器R1は、複数の中継器R1間のみで互いに通信する中継グループH0を構成する。そのため、例えば特許文献1のように中継器に対して、複数のグループの通信周波数に関する情報の設定を行う必要がない。つまり、各中継器R1は、自機が属する検知グループG0における通信の設定情報の他に、中継グループH0における通信の設定情報を保有していればよく、自機が属する検知グループG0以外の他の検知グループG0における通信の設定情報に関与しない。したがって、通信の設定作業の際に、各中継器R1に対して、4つの検知グループG0に関する設定情報を全て1つ1つ登録する必要がない。その結果、複数の検知グループG0間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることができる。特に、中継器R1は、連動信号に含まれる連動先(他の検知グループG0)に関する情報等も確認する必要もなく、中継グループH0に属する他の中継器R1に送信するだけでよい。そのため、迅速に他の検知グループG0に連動信号を送信して発報の連動を行わせることができる。
【0090】
また本実施形態では、複数の中継器R1の各々は、各検知グループG0で検知信号の通信に使用される通信周波数とは異なる通信周波数で、複数の中継器R1における他の中継器R1と、検知信号の送受信を行う。そのため、各中継器R1は、自機が属する検知グループG0の通信周波数の情報の他に、中継グループH0の通信周波数の情報を保有していればよく、自機が属する検知グループG0以外の他の検知グループG0の通信周波数の情報を保有する必要がない。したがって、通信の設定作業の際に、各中継器R1に対して、4つの検知グループG0の通信周波数を全て1つ1つ登録する必要がない。その結果、複数の検知グループG0間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることができる。
【0091】
また本実施形態では、各検知グループG0内の検知器1と中継器R1との間における通信で使用される第1周波数は、複数の検知グループG0の間で互いに異なる。そのため、各検知グループG0内における通信の安定性を確保しつつ、複数の検知グループG0間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることができる。また中継器R1は、通信先に応じて使用する通信周波数を、第1周波数(F1a~F1dのいずれか)と第2周波数F2とで切り替えるため、連動信号(検知信号)の中継をよりスムーズに行える。
【0092】
特に本実施形態では、中継器R1の数は、3つ以上(ここでは4つ)である。そのため、中継器R1の数が2つである場合に比べて、検知システム100の全体の検知範囲を拡げつつ、複数の検知グループG0間における通信の設定作業に関する作業性が、更に向上される。
【0093】
(2.5)受信成否の判定
ところで、各中継器R1の制御部10は、連動信号(検知信号)を、他の中継器R1に送信した後に、送信先である中継器R1における連動信号の受信の成否を判定するように構成される。
【0094】
具体的には、例えば、第1グループG1の親機102(第1中継器R11)は、図4AのステップS6及び図5のステップS28において、連動信号を3つの第2中継器R12に送信する際に、連動信号にACK信号の要求を含めて送信する。
【0095】
3つの第2中継器R12の各々は、第1中継器R11から連動信号を正常に受信した場合、上記要求に応じて、自機の識別信号を含めたACK信号を、第1中継器R11に返信する。
【0096】
第1中継器R11の制御部10は、3つの第2中継器R12からのACK信号の有無に基づいて、連動信号の受信の成否を判定する。第1中継器R11の制御部10は、所定の期間が経過してもACK信号を返さない第2中継器R12が存在した場合に、当該第2中継器R12における連動信号の受信が失敗したと判定する。そして、第1中継器R11の制御部10は、第2中継器R12における検知信号の受信が失敗であると判定した場合に、連動信号を第2中継器R12に再送する。
【0097】
第1中継器R11は、自機の記憶部11に、3つの第2中継器R12の識別情報を記憶しているため、どの第2中継器R12からACK信号を未受信かを判定可能である。したがって、連動信号の再送は、識別情報を指定したユニキャストで送信されてもよいが、識別情報を指定せずに再びブロードキャストで送信されてもよい。なお、第2中継器R12に再送する回数は、2回以上であることが望ましい。再送する回数が2回とは、連動信号の1回目の再送後、再び所定の期間が経過してもACK信号を返さない第2中継器R12が存在した場合に、連動信号の2回目の再送を行うことを意味する(つまり、連動信号の送信回数は、合計3回)。
【0098】
このように、各中継器R1において送信先である中継器R1における連動信号の受信の成否を判定するように構成されていることで、中継器R1間における通信の信頼性が向上される。
【0099】
第1中継器R11の制御部10は、連動信号の再送を行なっても依然としてACK信号を返さない第2中継器R12が存在した場合に、当該第2中継器R12に故障が発生したと判断する。第1中継器R11の制御部10は、故障中にある第2中継器R12を見つけると、自機の音響部9及び表示部14を介して、その旨を、周囲に報知してもよいし、制御機器103に報知してもよい。
【0100】
ただし、火災の発生を知らせる警報音の発報中に、故障の関する報知も平行して実行すると現場で混乱を招く恐れがある。したがって、故障の報知は、中継グループH0内で他の3つの中継器R1を管理している主親機X1(ここでは第1グループG1の親機102)のみが行うことが望ましい。また故障の報知は、例えば発報が誤報と分かり、周囲の人がいずれかの検知器1の操作ボタンを操作して、警報音が停止した後に、暫くしてから実行されてもよい。
【0101】
また上記の信号受信の成否に関する判定の実行タイミングは、図4AのステップS6及び図5のステップS28のような連動信号の送信後に限定されない。上記判定は、検知システム100の定期点検時等において、第1中継器R11がテスト用の操作を受け付けて第1中継器R11から第2中継器R12にテスト信号が送信された後にも実行されてもよい。また上記判定は、通常時(火災の監視時)において、定期的に送信される同期信号が送信された後にも実行われてもよい。
【0102】
(3)変形例
上記実施形態は、本開示の様々な実施形態の一つに過ぎない。上記実施形態は、本開示の目的を達成できれば、設計等に応じて種々の変更が可能である。また上記実施形態の、複数の検知グループG0を備えた検知システム100と同様の機能は、検知システム100の処理方法、コンピュータプログラム又はコンピュータプログラムを記録した非一時的記録媒体等で具現化されてもよい。
【0103】
具体的には、一の態様に係る処理方法は、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、を含む。第1ステップでは、検知器1にて火災(防災の対象となる事象)が発生したことを検知する。第2ステップでは、検知器1にて火災の検知に基づく連動信号(検知信号)を送信する。第3ステップでは、中継器R1にて検知器1から受信した連動信号の中継を行う。第3ステップでは、第1中継器R11において、自機が属する検知グループG0の検知器1から連動信号を受信した場合に、第2中継器R12への連動信号の中継を行う。
【0104】
また別の態様に係る処理方法は、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、第4ステップと、を含む。第1ステップでは、検知器1にて火災が発生したことを検知する。第2ステップでは、検知器1にて火災の検知に基づく連動信号(検知信号)を送信する。第3ステップでは、中継器R1にて検知器1から受信した連動信号の中継を行う。第4ステップでは、第1中継器R11にて、第2中継器R12から、連動信号を受信した場合に、自機が属する検知グループG0の検知器1に連動信号を送信する。
【0105】
以下、上記実施形態の変形例を列挙する。以下に説明する変形例は、適宜組み合わせて適用可能である。以下では、上記実施形態を「基本例」と呼ぶこともある。
【0106】
本開示における検知システム100は、コンピュータシステムを含んでいる。コンピュータシステムは、ハードウェアとしてのプロセッサ及びメモリを主構成とする。コンピュータシステムのメモリに記録されたプログラムをプロセッサが実行することによって、本開示における検知システム100(例えば制御部10)としての機能が実現される。プログラムは、コンピュータシステムのメモリに予め記録されてもよく、電気通信回線を通じて提供されてもよく、コンピュータシステムで読み取り可能なメモリカード、光学ディスク、ハードディスクドライブ等の非一時的記録媒体に記録されて提供されてもよい。コンピュータシステムのプロセッサは、半導体集積回路(IC)又は大規模集積回路(LSI)を含む1ないし複数の電子回路で構成される。ここでいうIC又はLSI等の集積回路は、集積の度合いによって呼び方が異なっており、システムLSI、VLSI(Very Large Scale Integration)、又はULSI(Ultra Large Scale Integration)と呼ばれる集積回路を含む。さらに、LSIの製造後にプログラムされる、FPGA(Field-Programmable Gate Array)、又はLSI内部の接合関係の再構成若しくはLSI内部の回路区画の再構成が可能な論理デバイスについても、プロセッサとして採用することができる。複数の電子回路は、1つのチップに集約されていてもよいし、複数のチップに分散して設けられていてもよい。複数のチップは、1つの装置に集約されていてもよいし、複数の装置に分散して設けられていてもよい。ここでいうコンピュータシステムは、1以上のプロセッサ及び1以上のメモリを有するマイクロコントローラを含む。したがって、マイクロコントローラについても、半導体集積回路又は大規模集積回路を含む1ないし複数の電子回路で構成される。
【0107】
また、検知システム100の各検知器1における複数の機能が、1つの筐体内に集約されていることは各検知器1に必須の構成ではない。各検知器1の構成要素は、複数の筐体に分散して設けられていてもよい。さらに、検知システム100の少なくとも一部の機能、例えば、検知システム100の一部の機能がクラウド(クラウドコンピューティング)等によって実現されてもよい。反対に、基本例のように、各検知器1の複数の機能が1つの筐体内に集約されてもよい。
【0108】
(3.1)変形例1
ところで、上の「(1)概要」の欄で説明した通り、中継器R1は、検知器1から受信した検知信号の中継を行う機能を有していれば、検知器1でなくてもよい。中継器R1は、検知器1とは別に設けられた、中継専用の通信機器でもよい。以下、検知器1(親機102)とは別の、複数の中継器R1を備えた検知システム100(変形例1)について説明する。
【0109】
変形例1の検知システム100は、基本例と同様に、例えば、4つの検知グループGを備える。各検知グループG0は、例えば、4つの検知器1(1A~1D)と、1つの中継器R1を、含む。また基本例と同様に、検知器1Aは親機102であり、検知器1B~1Dは子機101である。そして、複数の中継器R1は、複数の中継器R1間のみで互いに通信する中継グループH0を構成する。
【0110】
変形例1の各中継器R1は、426MHz帯に対応する複数の周波数のチャンネルを記憶する記憶部を有している。さらに各中継器R1の記憶部は、426MHz帯に対応する複数の周波数のチャンネルの中で、自機が属する検知グループG0内の通信で使用するチャンネル(第1周波数)と、中継グループH0内の通信で使用するチャンネル(第2周波数F2)と、を記憶する。各中継器R1の記憶部は、自機が属する検知グループG内における検知器1(特に親機102)の識別情報を記憶する。
【0111】
一方、変形例1の各親機102は、中継器ではない。そのため、各親機102の記憶部11は、自機が属する検知グループG0内の通信で使用するチャンネル(第1周波数)を記憶するが、中継グループH0内の通信で使用するチャンネル(第2周波数F2)を記憶していない。なお、各親機102の記憶部11は、自機が属する検知グループG内における子機101及び中継器R1の識別情報を記憶する。
【0112】
以下、例えば、第1グループG1の検知器1Bで火災を検知した場合における、変形例1の動作例を簡単に説明する。
【0113】
第1グループG1の検知器1Bは、火災を検知すると、警報音の発報を開始する。また第1グループG1の検知器1Bは、第1グループG1用の通信周波数である第1周波数F1aの電波を用いて、連動信号を第1グループG1の親機102に送信する。その結果、第1グループG1の親機102は、第1グループG1の検知器1Bの発報に連動して、警報音の発報を開始する。また第1グループG1の親機102は、第1周波数F1aの電波を用いて、連動信号を、第1グループG1の他の子機101(検知器1C、1D)に、例えばマルチキャストで順次送信する。その結果、第1グループG1の他の子機101も、連動して警報音の発報を開始する。
【0114】
さらに第1グループG1の親機102は、第1周波数F1aの電波を用いて、第1グループG1の中継器R1(通信機器)に、連動信号を送信する。第1グループG1の中継器R1は、使用する通信周波数を第1周波数F1aから、中継グループH0用の通信周波数である第2周波数F2に切り替える。そして、第1グループG1の中継器R1は、第2周波数F2の電波を用いて、連動信号を3つの中継器R1に、例えばブロードキャストで一斉に、送信する。
【0115】
連動信号を受信した3つの中継器R1は、使用する通信周波数を、第2周波数F2から自機が属する検知グループG0に対応した第1周波数に切り替える。そして、3つの中継器R1の各々は、対応する第1周波数の電波を用いて、自機が属する検知グループG0の親機102に連動信号を送信する。これらの親機102の各々は、対応する第1周波数の電波を用いて、自機が属する検知グループG0の子機101に連動信号を送信する。
【0116】
なお、920MHz帯の電波を用いた通知信号の制御機器103への送信は、第1グループG1の親機102が行なってもよいし、第1グループG1の中継器R1が行なってもよい。
【0117】
変形例1の構成においても、複数の検知グループG0間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることができる。
【0118】
(3.2)その他の変形例
基本例では、検知グループG0及び中継器R1の各々の数が4つずつであるが、特に限定されず、2つでも、3つでも、5つ以上でもよい。ただし、検知グループG0及び中継器R1の各々の数は、3つ以上の方が、2つである場合に比べて、検知システム100の全体の検知範囲を拡げつつ、複数の検知グループG0間における通信の設定作業に関する作業性が、更に向上される。つまり、例えば、複数の検知グループG0は、少なくとも3つの検知グループG0から構成され、複数の中継器R1は、第1中継器R11を少なくとも1つと、第2中継器R12を少なくとも2つと、から構成されることが望ましい。
【0119】
基本例では、各検知グループG0内の中継器R1の数が1つであるが、特に限定されず、2つ以上でもよい。つまり、検知グループG0の数と、中継器R1の数とが一致していなくてもよい。
【0120】
(4)まとめ
以上説明したように、第1の態様に係る検知システム(100)は、複数の検知グループ(G0)を備える。各検知グループ(G0)は、1つ以上の検知器(1)と、中継器(R1)と、を有する。検知器(1)は、防災の対象となる事象が発生したことを検知して、事象の検知に基づく検知信号を送信する。中継器(R1)は、検知器(1)から受信した検知信号の中継を行う。複数の検知グループ(G0)は、それらの複数の中継器(R1)を介して、複数の検知グループ(G0)間を跨いで検知信号を送受信する。複数の中継器(R1)のうちの第1中継器(R11)は、自機が属する検知グループ(G0)の検知器(1)から検知信号を受信した場合に、複数の中継器(R1)のうちの、第1中継器(R11)以外の第2中継器(R12)への、検知信号の中継を行う。第1の態様によれば、複数の検知グループ間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることができる。
【0121】
第2の態様に係る検知システム(100)は、複数の検知グループ(G0)を備える。各検知グループ(G0)は、1つ以上の検知器(1)と、中継器(R1)と、を有する。検知器(1)は、防災の対象となる事象が発生したことを検知して、事象の検知に基づく検知信号を送信する。中継器(R1)は、検知器(1)から受信した検知信号の中継を行う。複数の検知グループ(G0)は、それらの複数の中継器(R1)を介して、複数の検知グループ(G0)間を跨いで検知信号を送受信する。複数の中継器(R1)のうちの第1中継器(R11)は、複数の中継器(R1)のうちの、第1中継器(R11)以外の第2中継器(R12)から、検知信号を受信した場合に、自機が属する検知グループ(G0)の検知器(1)に検知信号を送信する。第2の態様によれば、複数の検知グループ間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることができる。
【0122】
第3の態様に係る検知システム(100)に関して、第1の態様又は第2の態様において、各検知グループ(G0)内の検知器(1)と中継器(R1)との間における通信で使用される周波数は、複数の検知グループ(G0)の間で互いに異なる。複数の中継器(R1)の間における通信で使用される周波数は、各検知グループ(G0)内の通信で使用されるどの周波数とも異なる。第3の態様によれば、検知システム(100)全体における通信の安定性を確保しつつ、複数の検知グループ(G0)間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることができる。
【0123】
第4の態様に係る検知システム(100)に関して、第1~第3の態様のいずれか1つにおいて、複数の検知グループ(G0)は、少なくとも3つの検知グループ(G0)から構成される。複数の中継器(R1)は、第1中継器(R11)を少なくとも1つと、第2中継器(R12)を少なくとも2つと、から構成される。第4の態様によれば、第2中継器(R12)が1つである場合に比べて、検知システム(100)の全体の検知範囲を拡げつつ、複数の検知グループ(G0)間における通信の設定作業に関する作業性が、更に向上される。
【0124】
第5の態様に係る検知システム(100)に関して、第1~第4の態様のいずれか1つにおいて、第1中継器(R11)は、検知信号を第2中継器(R12)に送信した後、第2中継器(R12)における検知信号の受信の成否を判定する。第5の態様によれば、中継器(R1)間における通信の信頼性が向上される。
【0125】
第6の態様に係る検知システム(100)に関して、第5の態様において、第1中継器(R11)は、第2中継器(R12)における検知信号の受信が失敗であると判定した場合に、検知信号を第2中継器(R12)に再送する。第6の態様によれば、中継器(R1)間における通信の信頼性がより向上される。
【0126】
第7の態様に係る検知システム(100)に関して、第6の態様において、第1中継器(R11)が検知信号を第2中継器(R12)に再送する回数は、2回以上である。第7の態様によれば、中継器(R1)間における通信の信頼性がさらに向上される。
【0127】
第8の態様に係る検知システム(100)に関して、第1~第7の態様のいずれか1つにおいて、検知信号は、複数の中継器(R1)間において、ブロードキャスト送信される。第8の態様によれば、より迅速に検知グループ(G0)間の中継が行える。
【0128】
第9の態様に係る中継器(R1)は、第1~第8の態様のいずれか1つにおける検知システム(100)に用いられる。中継器(R1)は、通信先が、自機が属する検知グループ(G0)内の検知器(1)か、複数の中継器(R1)かに応じて、使用する周波数を、当該検知グループ(G0)で使用される第1周波数と、複数の中継器(R1)間で使用される第2周波数とで切り替える。第9の態様によれば、検知信号の中継をよりスムーズに行えて、かつ、複数の検知グループ(G0)間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることが可能な、中継器(R1)を提供できる。
【0129】
第10の態様に係る中継器(R1)は、第1~第8の態様のいずれか1つにおける検知システム(100)に用いられる。中継器(R1)は、設定部(15)を備える。設定部(15)は、複数の検知グループ(G0)のうち自機が属する検知グループ(G0)内の通信で使用される第1周波数と、複数の中継器(R1)間で使用される第2周波数と、を設定する。第10の態様によれば、第1周波数と第2周波数の設定が可能で、かつ、複数の検知グループ(G0)間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることが可能な、中継器(R1)を提供できる。
【0130】
第11の態様に係る処理方法は、複数の検知グループ(G0)を備えた検知システム(100)の処理方法である。各検知グループ(G0)は、1つ以上の検知器(1)と、中継器(R1)と、を有する。複数の検知グループ(G0)は、それらの複数の中継器(R1)を介して、複数の検知グループ(G0)間を跨いで検知信号を送受信する。処理方法は、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、を含む。第1ステップでは、検知器(1)にて防災の対象となる事象が発生したことを検知する。第2ステップでは、検知器(1)にて事象の検知に基づく検知信号を送信する。第3ステップでは、中継器(R1)にて検知器(1)から受信した検知信号の中継を行う。第3ステップでは、複数の中継器(R1)のうちの第1中継器(R11)において、自機が属する検知グループ(G0)の検知器(1)から検知信号を受信した場合に、第2中継器(R12)への検知信号の中継を行う。第2中継器(R12)は、複数の中継器(R1)のうちの、第1中継器(R11)以外の中継器である。第11の態様によれば、複数の検知グループ(G0)間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることが可能な処理方法を提供できる。
【0131】
第12の態様に係る処理方法は、複数の検知グループ(G0)を備えた検知システム(100)の処理方法である。各検知グループ(G0)は、1つ以上の検知器(1)と、中継器(R1)と、を有する。複数の検知グループ(G0)は、それらの複数の中継器(R1)を介して、複数の検知グループ(G0)間を跨いで検知信号を送受信する。処理方法は、第1ステップと、第2ステップと、第3ステップと、第4ステップと、を含む。第1ステップでは、検知器(1)にて防災の対象となる事象が発生したことを検知する。第2ステップでは、検知器(1)にて事象の検知に基づく検知信号を送信する。第3ステップでは、中継器(R1)にて検知器(1)から受信した検知信号の中継を行う。第4ステップでは、複数の中継器(R1)のうちの第1中継器(R11)にて、第2中継器(R12)から検知信号を受信した場合に、自機が属する検知グループ(G0)の検知器(1)に検知信号を送信する。第2中継器(R12)は、複数の中継器(R1)のうちの、第1中継器(R11)以外の中継器である。第12の態様によれば、複数の検知グループ(G0)間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることが可能な処理方法を提供できる。
【0132】
第13の態様に係るプログラムは、コンピュータシステムに第11の態様又は第12の態様における処理方法を実行させるためのプログラムである。第13の態様によれば、複数の検知グループ(G0)間における通信の設定作業に関する作業性の向上を図ることが可能な機能を提供できる。
【0133】
第2~8の態様に係る構成については、検知システム(100)に必須の構成ではなく、適宜省略可能である。
【符号の説明】
【0134】
100 検知システム
1 検知器
15 設定部
R1 中継器
R11 第1中継器
R12 第2中継器
G0 検知グループ
図1
図2
図3
図4
図5