(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】樹脂シート積層体の製造方法、樹脂シート積層体、成形品の製造方法
(51)【国際特許分類】
B05D 3/00 20060101AFI20240510BHJP
B05D 7/24 20060101ALI20240510BHJP
B32B 27/24 20060101ALI20240510BHJP
B32B 27/36 20060101ALI20240510BHJP
H01L 21/56 20060101ALI20240510BHJP
H01L 23/29 20060101ALI20240510BHJP
H01L 23/31 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B05D3/00 D
B05D7/24 301R
B32B27/24
B32B27/36
H01L21/56 R
H01L23/30 R
(21)【出願番号】P 2019098034
(22)【出願日】2019-05-24
【審査請求日】2022-01-06
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】福家 直仁
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝憲
(72)【発明者】
【氏名】千秋 考弘
【審査官】市村 脩平
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-179279(JP,A)
【文献】特開2014-024961(JP,A)
【文献】特開2019-050253(JP,A)
【文献】特開2017-088758(JP,A)
【文献】国際公開第2015/186744(WO,A1)
【文献】特開2014-029958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B05D1/00-7/26
B32B1/00-43/00
H01L21/56
23/28-23/31
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一基材上に熱硬化性樹脂及び溶剤を含む塗布液を塗布して塗膜を形成する工程と、
前記塗膜を乾燥して乾燥塗膜からなる樹脂層を形成する工程と、
前記樹脂層上に第二基材を積層して、前記第一基材、前記樹脂層及び前記第二基材が、この順に積層され、前記第一基材に前記樹脂層が直接積層し、前記樹脂層に前記第二基材が直接積層している樹脂シート積層体を作製する工程と、を含み、
前記第一基材は、ポリエステルフィルムであり、かつ前記第一基材の前記樹脂層側の面がポリオルガノシロキサンで処理されており、
前記第二基材は、ポリエステルフィルム又は金属箔であり、かつ前記第二基材の前記樹脂層側の面がアミノアルキッドで処理されていてもよく、
前記第一基材の前記樹脂層側の面のテープ剥離力が、前記第二基材の前記樹脂層側の面のテープ剥離力よりも小さく、
前記樹脂層を形成する工程において、前記樹脂層の前記第一基材側の前記溶剤の濃度を、前記樹脂層の前記第二基材側の前記溶剤の濃度よりも大きくし、
前記樹脂層の上に前記第二基材を積層する際に、前記第一基材と、前記樹脂層と、前記第二基材とを、この順に積層した状態で、前記第二基材を加熱及び加圧する、
樹脂シート積層体の製造方法。
【請求項2】
前記第二基材を加熱する温度は30℃以上120℃以下である、
請求項1に記載の樹脂シート積層体の製造方法。
【請求項3】
前記第二基材を加圧する圧力が2N/cm以上50N/cm以下である、
請求項1又は2に記載の樹脂シート積層体の製造方法。
【請求項4】
第一基材、樹脂層及び第二基材が、この順に積層され、前記第一基材に前記樹脂層が直接積層し、前記樹脂層に前記第二基材が直接積層しており、
前記樹脂層は、熱硬化性樹脂及び溶剤を含む塗布液の乾燥塗膜であり、
前記第一基材は、ポリエステルフィルムであり、かつ前記第一基材の前記樹脂層側の面がポリオルガノシロキサンで処理されており、
前記第二基材は、ポリエステルフィルム又は金属箔であり、かつ前記第二基材の前記樹脂層側の面がアミノアルキッドで処理されていてもよく、
前記第一基材の前記樹脂層側の面のテープ剥離力が、前記第二基材の前記樹脂層側の面のテープ剥離力よりも小さく、
前記樹脂層の前記第一基材側の前記溶剤の濃度は、前記樹脂層の前記第二基材側の前記溶剤の濃度よりも大きい、
樹脂シート積層体。
【請求項5】
前記塗布液が、前記熱硬化性樹脂、無機充填剤及び前記溶剤を含み、
前記塗布液の固形分濃度が50重量%以上95重量%以下であり、
前記樹脂層単体を160℃で15分間加熱した場合の重量減少率が、0.02重量%以上5重量%以下である、
請求項4に記載の樹脂シート積層体。
【請求項6】
前記第一基材の前記樹脂層側の面のテープ剥離力が、剥離速度0.3mm/分の条件において、10mN/20mm以上1850mN/20mm以下であり、
前記第二基材の前記樹脂層側の面のテープ剥離力が、剥離速度0.3mm/分の条件において、1850mN/mm以上7700mN/20mm以下であり
前記
第一基材の前記樹脂層側の面の剥離強度が、前記
第二基材の前記樹脂層側の面の剥離強度よりも小さい、
請求項4又は5に記載の樹脂シート積層体。
【請求項7】
前記
第一基材の前記樹脂層側の面の水接触角が94度以上であり、
前記
第二基材の前記樹脂層側の面の水接触角が55度以上94度以下であり、
前記
第一基材の前記樹脂層側の面の水接触角が、前記
第二基材の前記樹脂層側の面の水接触角よりも大きい、
請求項4~6のいずれか一項に記載の樹脂シート積層体。
【請求項8】
前記金属箔の前記樹脂層側の面が粗面である、
請求項4~7のいずれか一項に記載の樹脂シート積層体。
【請求項9】
前記第一基材の色と、前記第二基材の色とが、前記第一基材と前記第二基材とを識別できるように異なっている、
請求項4~8のいずれか一項に記載の樹脂シート積層体。
【請求項10】
前記第一基材の厚みと、前記第二基材の厚みとが、前記第一基材と前記第二基材とを識別できるように異なっている、
請求項4~9のいずれか一項に記載の樹脂シート積層体。
【請求項11】
請求項4~10のいずれか一項に記載の樹脂シート積層体から前記第一基材を剥がして前記樹脂層の前記第一基材側の面を露出させる工程と、
対象物と前記樹脂層の前記第一基材側の面とが対面するように、前記対象物を前記樹脂層で封止する工程と、を含む、
成形品の製造方法。
【請求項12】
電子回路基板、半導体パッケージ又は半導体モジュールである、
請求項11に記載の成形品の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般には、樹脂シート積層体、樹脂シート積層体の製造方法、及び成形品の製造方法に関する。本開示は、詳細には、樹脂シート積層体と、その製造方法と、この樹脂シート積層体を用いた成形品の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、電子回路基板、半導体パッケージ、半導体モジュール等を製造する過程において、半導体素子が封止材で封止されることがある。この封止材として、ガラスクロスに樹脂を含浸したプリプレグが知られている。近年、半導体素子の小型化・微細化が進んでいるが、ガラスクロスを含むプリプレグは、微細な凹凸に埋め込みにくい。そのため、ガラスクロスを含まないシート状の封止材を使用することが行われている。
【0003】
例えば特許文献1には、基材シート上に樹脂組成物を塗工・乾燥して封止層を作製し、この封止層上に離型フィルムを設けることで作製され、基材シート、封止層、及び離型フィルムの順に積層された樹脂シートが開示されている(特許文献1の段落0067~0073、
図1参照)。
【0004】
特許文献1では、封止層を形成する際、樹脂組成物の塗膜が基材シート上に配置された状態で乾燥されるため、塗膜の基材シート側よりも、塗膜の露出した面の方が乾燥されやすく、そしてこの面に離型フィルムが設けられるため、離型フィルムが剥がしやすくなりやすい。すなわち、特許文献1の樹脂シートは、基材フィルムよりも離型フィルムが剥がれやすいように設計されており、また離型フィルム自体も、基材シートよりも離型性に優れたものが選定されている。そのため、特許文献1の樹脂シートから離型フィルムを剥離後、半導体素子に貼り付けてから、基材シートを剥離することにより、半導体素子を封止層で封止することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
特許文献1の樹脂シートを用いて半導体素子を封止する場合、半導体素子を封止する樹脂層にボイド(気孔)が発生することがあった。
【0007】
本開示の目的は、対象物を封止する樹脂層にボイド(気孔)が発生しにくい樹脂シート積層体と、この樹脂シート積層体の製造方法と、この樹脂シート積層体を用いた成形品の製造方法とを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示の一態様に係る樹脂シート積層体の製造方法では、第一基材上に熱硬化性樹脂及び溶剤を含む塗布液を塗布して塗膜を形成する工程と、前記塗膜を乾燥して乾燥塗膜からなる樹脂層を形成する工程と、前記樹脂層上に第二基材を積層して、前記第一基材、前記樹脂層及び前記第二基材が、この順に積層された樹脂シート積層体を作製する工程と、を含む。前記第一基材の前記樹脂層側の面のテープ剥離力が、前記第二基材の前記樹脂層側の面のテープ剥離力よりも小さい。前記樹脂層を形成する工程において、前記樹脂層の前記第一基材側の前記溶剤の濃度を、前記樹脂層の前記第二基材側の前記溶剤の濃度よりも大きくする。
【0009】
本開示の一態様に係る樹脂シート積層体では、第一基材、樹脂層及び第二基材が、この順に積層される。前記樹脂層は、熱硬化性樹脂及び溶剤を含む塗布液の乾燥塗膜である。前記第一基材の前記樹脂層側の面のテープ剥離力が、前記第二基材の前記樹脂層側の面のテープ剥離力よりも小さい。前記樹脂層の前記第一基材側の前記溶剤の濃度は、前記樹脂層の前記第二基材側の前記溶剤の濃度よりも大きい。
【0010】
本開示の一態様に係る成形品の製造方法では、上記樹脂シート積層体から前記第一基材を剥がして前記樹脂層の前記第一基材側の面を露出させる工程と、対象物と前記樹脂層の前記第一基材側の面とが対面するように、前記対象物を前記樹脂層で封止する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0011】
本開示によると、対象物を封止する樹脂層にボイド(気孔)が発生しにくい樹脂シート積層体と、この樹脂シート積層体の製造方法と、この樹脂シート積層体を用いた成形品の製造方法とを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】
図1A~
図1Cは、本開示の一実施形態に係る樹脂シート積層体の製造方法の一例を説明するための概略の断面図である。
【
図2】
図2は、本開示の一実施形態に係る樹脂シート積層体の一例を示す概略の断面図である。
【
図3】
図3A~
図3Cは、本開示の一実施形態に係る成形品の製造方法の一例を説明するための概略の断面図である。
【
図4】
図4は、本開示の一実施形態に係る樹脂シート積層体の製造方法の一例を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
1.概要
本開示の一実施形態に係る樹脂シート積層体100の製造方法では、
図1A~
図1Cに示すように、第一基材10上に熱硬化性樹脂及び溶剤を含む塗布液を塗布して塗膜2を形成する工程と、塗膜2を乾燥して乾燥塗膜からなる樹脂層20を形成する工程と、樹脂層20上に第二基材30を積層して、第一基材10、樹脂層20及び第二基材30が、この順に積層された樹脂シート積層体100を作製する工程と、を含む。第一基材10の樹脂層20側の面11のテープ剥離力は、第二基材30の樹脂層20側の面31のテープ剥離力よりも小さい(
図2参照)。また樹脂層20を形成する工程において、樹脂層20の第一基材10側の溶剤の濃度を、樹脂層20の第二基材30側の溶剤の濃度よりも大きくする。
【0014】
このようにして製造された樹脂シート積層体100では、
図2に示すように、第一基材10、樹脂層20及び第二基材30が、この順に積層される。また樹脂層20は、熱硬化性樹脂及び溶剤を含む塗布液の乾燥塗膜である。また第一基材10の樹脂層20側の面11のテープ剥離力は、第二基材30の樹脂層20側の面31のテープ剥離力よりも小さい。また樹脂層20の第一基材10側の溶剤の濃度は、樹脂層20の第二基材30側の溶剤の濃度よりも大きい。なお、テープ剥離力とは、日東電工(株)製のアクリル粘着テープ品番31Bを2kgローラーで貼付後、30分経過後に180度の剥離角、0.3m/分の速度でテープ剥離した際のピール強度を意味する。
【0015】
本実施形態の樹脂シート積層体100を用いて成形品を製造する場合には、まず
図3Aに示すように、樹脂シート積層体100から第一基材10を剥がして樹脂層20の第一基材10側の面21を露出させる。本実施形態では、第一基材10の樹脂層20側の面11のテープ剥離力が、第二基材30の樹脂層20側の面31のテープ剥離力よりも小さいことから、樹脂層20から第一基材10を容易に剥離することができる。そのため、樹脂層20から第一基材10を剥離する際に、樹脂層20が破損することを抑制することができる。次に、
図3Bに示すように、対象物200と樹脂層20の第一基材10側の面21とが対面するように、対象物200を樹脂層20で封止する。
【0016】
樹脂層20で対象物200を封止する際に、樹脂層20の表面側(対象物200側の反対側)の溶剤濃度が大きいと、樹脂層20を加熱硬化させる際に、樹脂層20から溶剤が揮発しにくく、樹脂層20の表面にボイド(気孔)が発生しやすい。これに対して本実施形態では、樹脂層20の第一基材10側の溶剤の濃度が、樹脂層20の第二基材30側の溶剤の濃度よりも大きいことから、対象物200を樹脂層20で封止する際には、樹脂層20の表面側の溶剤濃度が小さく、樹脂層20を加熱硬化させる際に、樹脂層20から溶剤が揮発しやすく、樹脂層20の表面にボイド(気孔)が発生しにくい。
【0017】
また樹脂層20で対象物200を封止する際に、樹脂層20の対象物200側の溶剤濃度が小さいと、対象物200付近で溶融した樹脂層20の粘度が大きくなり、対象物200が備える微細な凹凸を樹脂層20で埋めにくくなる。これに対して本実施形態では、樹脂層20の第一基材10側の濃度が大きいことから、対象物200付近で溶融した樹脂層20の粘度を低減することができ、溶融した樹脂層20によって、対象物200が備える微細な凹凸を容易に埋めることができる。
【0018】
すなわち、本実施形態の樹脂シート積層体100の製造方法によって得られる樹脂シート積層体100は、この樹脂シート積層体100が備える樹脂層20で対象物200を封止する際に、樹脂層20の表面にボイドが発生することを抑制できる。更に、対象物200が備える微細な凹凸を、樹脂層20で埋めやすい。よって本実施形態の樹脂シート積層体100は、ボイドの抑制と、埋め込み性の向上とを、両立させることができる。
【0019】
2.詳細
以下、本実施形態に係る樹脂シート積層体100と、この樹脂シート積層体100の製造方法と、成形品300の製造方法とについて、詳細に説明する。
【0020】
2-1.積層体について
上述の通り、本実施形態の樹脂シート積層体100は、第一基材10と、樹脂層20と、第二基材30とを含む(
図2参照)。以下、第一基材10、樹脂層20、第二基材30について説明する。
【0021】
(1)第一基材
第一基材10は、樹脂シート積層体100を用いて対象物200を封止する際に、第二基材30よりも先に剥がす基材である。そのため、第一基材10の樹脂層20側の面11のテープ剥離力は、第二基材30の樹脂層20側の面31のテープ剥離力よりも小さい。
【0022】
特に本実施形態では、第一基材10の面11のテープ剥離力は、剥離速度0.3mm/分の条件において、10mN/20mm以上であることが好ましい。また第一基材10のテープ剥離力は、剥離速度0.3mm/分の条件において、1850mN/20mm以下であることが好ましい。この場合、樹脂層20から第一基材10を特に剥がしやすく、樹脂層20から第一基材10を剥がす際に、樹脂層20が破損することを抑制することができる。
【0023】
また本実施形態では、第一基材10の面11の水接触角は、第二基材30の面31の水接触角よりも大きいことが好ましい。この場合、第一基材10を第二基材30よりも樹脂層20から剥がしやすくなる。具体的には、第一基材10の面11の水接触角は、94度以上であることが好ましい。この場合、第一基材10を樹脂層20から特に剥がしやすくなる。なお、本明細書において水接触角とは、2μLの純水を滴下した際の水接触角を意味する。
【0024】
第一基材10は、例えば、樹脂製であり、ポリエステル製のフィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又はポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムであることが特に好ましい。入手し易さを考慮すると、第一基材10は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることが好ましい。
【0025】
第一基材10の平面視の形状は、樹脂層20を保持可能な形状であれば、特に限定されない。例えば第一基材10は、樹脂層20及び第二基材30と平面視で同形状であることが好ましい。
【0026】
第一基材10の厚みは、例えば、12μm以上であることが好ましく、25μm以上であることがより好ましい。この場合、塗膜2を乾燥して乾燥塗膜からなる樹脂層20を形成する際に、第一基材10にシワが発生することを抑制することができる。また第一基材10の厚みは、例えば、125μm以下であることが好ましく、50μm以下であることがより好ましい。この場合、樹脂層20から第一基材10を剥がしやすくなる。
【0027】
本実施形態では、第一基材10の樹脂層20側の面11が、ポリオルガノシロキサン(シリコーン)で処理されていることが好ましい。この場合、第一基材10の面11のテープ剥離力を特に小さくできると共に、第一基材10の面11の水接触角を大きくすることができる。
【0028】
(2)樹脂層
樹脂層20は、対象物200を封止するための樹脂製の層である。樹脂層20の平面視の形状は、特に限定されず、対象物200の形状、大きさ等に応じて適宜設定される。樹脂層20の厚みは、封止する対象である対象物に応じて適宜設定されるが、例えば20μm以上であることが好ましく、500μm以下であることが好ましい。
【0029】
樹脂層20は、上述の通り、塗布液の乾燥塗膜である。この塗布液には、熱硬化性樹脂及び溶剤が含まれる。塗布液は、更に無機充填剤を含んでいてもよい。
【0030】
熱硬化性樹脂の例には、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、ポリイミド樹脂、アクリル樹脂、シアネート樹脂、及びマレイミド樹脂が含まれる。熱硬化性樹脂は、これらの樹脂のうち、少なくとも一種を含むことができる。熱硬化性樹脂は、特にエポキシ樹脂を含むことが好ましい。この場合、対象物200を樹脂層20で封止した場合の信頼性を確保しやすく、また樹脂層20の物性を制御しやすい。
【0031】
熱硬化性樹脂は、液状の成分と固形の成分との両方を含むことが好ましい。この場合、樹脂層20を加熱硬化しやすくなると共に、樹脂層20の可撓性を向上させることができる。そのため、例えば樹脂シート積層体100を巻き取った際に、樹脂層20が破損することを抑制することができる。特に本実施形態では、熱硬化性樹脂が、液状のエポキシ樹脂と、固形のエポキシ樹脂とを含むことが好ましい。液状のエポキシ樹脂は、常温で液状であれば、特に限定されない。固形のエポキシ樹脂は、常温で固形であり、かつ、軟化温度が80℃以下であることが好ましく、軟化温度が60℃以下であることが好ましい。
【0032】
エポキシ樹脂の例には、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、アルキルフェノールノボラック型エポキシ樹脂、アラルキル型エポキシ樹脂、ビフェノール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、フェノール類とフェノール性水酸基を有する芳香族アルデヒドとの縮合物のエポキシ化物、トリグリシジルイソシアヌレート、及び脂環式エポキシ樹脂が含まれる。熱硬化性樹脂は、これらのエポキシ樹脂のうち少なくとも一種を含むことができる。
【0033】
溶剤は、特に限定されず、熱硬化性樹脂と共に使用される公知の溶剤を使用することができる。そのため本実施形態の塗布液では、熱硬化性樹脂が溶剤に溶解された状態で使用することも好ましい。
【0034】
無機充填剤の例には、溶融シリカ、結晶シリカ、酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、窒化ホウ素、窒化アルミニウム、炭酸マグネシウム、タルク、硫酸バリウム、炭酸カルシウム等が含まれ。また無機充填剤は、チタン酸バリウム、酸化チタン等の高誘電率フィラーを含んでもよい。また無機充填剤は、フェライト、鉄粉、珪素鋼、パーマロイ、センダスト、パーメンジュール等の磁性フィラーを含んでもよい。また無機充填剤は、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、三酸化アンチモン、五酸化アンチモン、グアニジン塩、ホウ酸亜鉛、モリブデン化合物、及びスズ酸亜鉛等の無機系難燃剤を含んでもよい。無機充填剤は、これらの成分のうち、少なくとも一種を含むことができる。無機充填剤は、樹脂層20の熱伝導性、比誘電率、難燃性、粒度分布、及び色調等に応じて選択される。本実施形態では、無機充填剤の最大粒径が20μm以下であることが好ましく、10μm以下であることがより好ましい。この場合、樹脂層20のレーザー加工性を向上できると共に、微細な凹凸に対する埋め込み性を向上させることができる。
【0035】
塗布液は、熱硬化性樹脂、溶剤、及び無機充填剤以外の成分を含んでいてもよい。塗布液は、例えば、カップリング剤、分散剤、界面活性剤、及びエラストマー等を含んでいてもよい。カップリング剤の例には、エポキシシラン、アミノシラン、及びメルカプトシラン等が含まれる。カップリング剤は、これらの成分のうち少なくとも一種を含むことができる。分散剤としては、上述の無機充填剤の分散性を向上できれば特に制限なく使用することができる。エラストマーの例には、アクリルエラストマー、シリコーンエラストマー等が含まれる。塗布液にこれらのエラストマーが含まれることで、樹脂層20の弾性率を低減することができる。
【0036】
塗布液は、下記式(i)で表される固形分率が、50重量%以上であることが好ましく、95重量%以下であることが好ましい。
固形分率(%)=(((塗布液全量の重量)-(溶剤の重量))/(塗布液全量の重量))×100…(i)。
【0037】
本実施形態では、樹脂層20の第一基材10側の溶剤の濃度は、樹脂層20の第二基材30側の濃度よりも大きい。そのため、対象物200を樹脂層20で封止する際に、対象物200と樹脂層20の第一基材10側の面21とが接するようにすることで、硬化後の樹脂層20の表面にボイド(気孔)が発生することを抑制することができる。また樹脂層20の溶融時に、対象物200付近の樹脂層20の粘度を低減することができるため、対象物200の微細な凹凸を樹脂層20で埋めやすくなる。なお、樹脂層20の第一基材10側の濃度及び樹脂層20の第二基材30側の濃度は、以下の方法で比較することができる。
【0038】
(樹脂層の第一基材側と、樹脂層の第二基材側との溶剤の濃度の比較)
(i)まず、
図1に示す樹脂シート積層体100から、第一基材10のみを剥離して、樹脂層20の第一基材10側の面21を露出させた状態で、所定温度で所定時間加熱した前後の重量変化率を測定する。
(ii)次に、
図1に示す樹脂シート積層体100から、第二基材30のみを剥離して、樹脂層20の第二基材30側の面22を露出させた状態で、所定温度で所定時間加熱した前後の重量変化率を測定する。
(iii)(i)で測定した重量変化率と、(ii)で測定した重量変化率とを比較することで、樹脂層20の第一基材10側と、樹脂層20の第二基材30側との溶剤の濃度を比較することができる。例えば、(i)で求めた重量変化率が、(ii)で求めた重量変化率よりも大きい場合には、樹脂層20の第一基材10側の溶剤の濃度が、樹脂層20の第二基材30側の溶剤の濃度よりも、大きいと判断することができる。
【0039】
なお、樹脂層20の第一基材10側の溶剤の濃度と、樹脂層20の第二基材30側の溶剤の濃度とを比較するにあたり、重量変化率を測定する際の際の加熱条件は、樹脂シート積層体100の寸法、材質等に応じて適宜設定される。加熱条件は、例えば、100℃で15分間の条件、120℃で15分間の条件、140℃で15分間の条件、160℃で15分間の条件等が挙げられる。樹脂層20の第一基材10側の溶剤の濃度と、樹脂層20の第二基材30側の溶剤の濃度と、を比較する場合、これらの加熱条件のうち少なくとも一つの加熱条件で重量変化率を測定することが好ましい。
【0040】
また本実施形態の樹脂層20では、厚み方向において、溶剤の濃度勾配があることが好ましい。すなわち、樹脂層20の第一基材10側から第二基材30側に向かって溶剤の濃度が徐々に変化していることが好ましく、詳細には、第一基材10側から第二基材30側に向かって徐々に溶剤の濃度が小さくなることが好ましい。
【0041】
また樹脂層20全体に含まれる溶剤の割合(残留溶剤分)は、0.02%以上であることが好ましい。この場合、対象物200を樹脂層20で封止する際に、対象物200付近で溶融した樹脂層20の粘度が好適となるため、樹脂層20で対象物200を封止しやすくなる。樹脂層20に含まれる溶剤の割合は、5%未満であることが好ましい。この場合、対象物200を樹脂層20で封止する際に、樹脂層20を加熱硬化しても、樹脂層20の表面にボイド(気孔)が発生することを抑制することができる。樹脂層20に含まれる溶剤の割合は、塗布液の塗膜を乾燥させて乾燥塗膜とする際の乾燥時間、乾燥温度等によって調整することができる。また樹脂層20に含まれる溶剤の割合は、樹脂層20単体を用意して、160℃のオーブンで15分間加熱する前後の樹脂層20の重量変化率によって、測定することができる。
【0042】
本実施形態の樹脂層20は、半硬化状態であることが好ましい。そのため、樹脂層20を加熱することによって、硬化状態の樹脂層20が得られる。なお、硬化状態とは、加熱によって軟化または再溶融しない状態を意味し、半硬化状態とは、加熱によって軟化または再溶融する状態を意味する。
【0043】
(3)第二基材
第二基材40は、樹脂シート積層体100を用いて対象物200を封止する際に、第一基材10の後に剥がす基材である。そのため、第二基材30の樹脂層20側の面31のテープ剥離力は、第一基材10の樹脂層20側の面11のテープ剥離力よりも大きい。
【0044】
特に本実施形態では、第二基材30の面31のテープ剥離力は、剥離速度0.3mm/分の条件において、1850mN/20mm以上であることが好ましい。この場合、樹脂層20から第一基材10を剥がす際に、樹脂層20から第二基材30も剥がれること抑制することができる。また第二基材30の面31側のテープ剥離力は、剥離速度0.3mm/分の条件において、7700mN/20mm以下であることが好ましい。この場合、樹脂層20から第二基材30を容易に剥がすことができ、特に樹脂層20で対象物200を封止した後(樹脂層20の硬化後)に、樹脂層20から第二基材30を剥がしやすくすることができる。
【0045】
また本実施形態では、第二基材30の面31の水接触角は、第一基材10の面11の水接触角よりも小さいことが好ましい。この場合、第一基材10を第二基材30よりも樹脂層20から剥がしやすくなる。具体的には、第二基材30の面31の水接触角は、94°以下であることが好ましい。この場合、樹脂層20から第一基材10を剥がす際に、樹脂層20から第二基材30も剥がれることを抑制することができる。また第二基材30の面31の水接触角は、55°以上であることが好ましい。この場合、樹脂層20から第二基材30を容易に剥がすことができ、特に樹脂層20で対象物200を封止した後(樹脂層20の硬化後)に、樹脂層20から第二基材30を剥がしやすくすることができる。
【0046】
第二基材30の平面視の形状は、特に限定されない。例えば第二基材30は、第一基材10及び第二基材30と平面視で同形状であることが好ましい。
【0047】
第二基材30は、例えば、樹脂製又は金属製であることが好ましい。
【0048】
第二基材30が樹脂製である場合、第二基材30は、例えばポリエステルフィルムであることが好ましく、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム又はポリエチレンナフタレート(PEN)フィルムであることが特に好ましい。入手し易さを考慮すると、第二基材30は、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムであることが好ましい。
【0049】
また第二基材30がポリエステルフィルムである場合、第二基材30の樹脂層20側の面31は、ポリオルガノシロキサン(シリコーン)による処理よりもテープ剥離力が大きくなるように処理されているか、未処理であることが好ましい。この場合、第一基材10の樹脂層20側の面11がポリオルガノシロキサンで処理されている場合に、第二基材30の面31のテープ剥離力を、第一基材10の面11のテープ剥離力よりも、大きくすることができる。第二基材30は、例えば、アミノアルキッドで処理されていることが好ましい。この場合、ポリオルガノシロキサンで処理された第一基材10の面11のテープ剥離力よりも、第二基材30の面31のテープ剥離力を大きくすることができる。
【0050】
第二基材30が金属製である場合、すなわち第二基材30が金属箔である場合、第二基材30は、例えば、銅箔、アルミ箔、又はステンレス箔であることが好ましい。この場合、樹脂層20と第二基材30とを一体成形した後に、この第二基材30を配線等に活用することができる。また第二基材30が樹脂製である場合と比べて、樹脂層20の加熱温度を高くすることができる。また第二基材30が樹脂製である場合と比べて、第二基材30の寸法安定性を向上させることができる。また第一基材10を金属製、第二基材30を樹脂製とする場合、樹脂シート積層体100を製造する際に、樹脂層20及び第二基材30を安定させる必要がある。これに対して、第一基材10を樹脂製、第二基材30を金属製とする場合、第一基材10及び樹脂層20の厚みが安定してから第二基材30を積層できるため、歩留まりを向上させることができる。
【0051】
また第二基材30は金属箔である場合、第二基材30の樹脂層20側の面31は、第二基材30が樹脂製である場合と同様に、ポリオルガノシロキサン(シリコーン)による処理よりもテープ剥離力が大きくなるように処理されているか、未処理であることが好ましい。また第二基材30の面31が粗化処理されていてもよい。この場合も、第二基材30の面31のテープ剥離力を、第一基材10の面11のテープ剥離力よりも、大きくすることができる。特に樹脂層20の加熱硬化後に第二基材30を樹脂層20から剥離する場合には、第二基材30の面31を、アミノアルキッド樹脂等で処理しておくことが好ましい。また樹脂層20の加熱硬化後に第二基材30を樹脂層20から剥離しない場合には、第二基材30の面31を未処理とするか、粗化処理することが好ましい。
【0052】
第二基材30の厚みは、12μm以上であることが好ましい。この場合、第二基材30ごと樹脂層20を加熱硬化させる際に、第二基材30が破損することを抑制することができる。また樹脂シート積層体100のハンドリング性を向上させることができる。第二基材30の厚みは、75μm以下が好ましく、50μm以下であることがより好ましい。この場合、第二基材40ごと樹脂層20を加熱硬化させて対象物200を樹脂層20で封止する際に、対象物200の表面形状に、第二基材40を追従させやすくなる。
【0053】
本実施形態では、第一基材10と第二基材30とは容易に識別可能であることが好ましい。例えば、第一基材10の色と、第二基材30の色とが、第一基材10と第二基材30とを識別できるように異なっていることが好ましい。また例えば、第一基材10の厚みと、第二基材30の厚みとが、第一基材10と第二基材30とを識別できるように異なっていることが好ましい。この場合、樹脂シート積層体100で対象物200を封止する際に、樹脂層20から先に剥離する第一基材10と、後で剥離する第二基材30とを、容易に識別することができる。例えば、第一基材10を樹脂製、第二基材30を金属製とすることで、第一基材10の色と第二基材30の色とを異ならせることができ、第一基材10と第二基材30とを容易に識別することができる。例えば、第一基材10と第二基材30とを共に樹脂製とすると共に、第一基材10又は第二基材30に着色することにより、第一基材10と第二基材30とを容易に識別することができる。例えば、第一基材10を第二基材30よりも厚くすることにより、第一基材10と第二基材30とを容易に識別できる。
【0054】
2-2.樹脂シート積層体の製造方法について
本実施形態の樹脂シート積層体100は、以下の工程によって、製造することができる。
【0055】
(1)第一基材の準備
まず、上述の第一基材10を用意する。
【0056】
本実施形態では、第一基材10の面11(樹脂層20を形成する面)を、あらかじめ、ポリオルガノシロキサンで処理しておくことが好ましい。この場合、第一基材10の面11のテープ剥離力を低減することができる。
【0057】
(2)樹脂層の積層
次に、第一基材10の面11上に、樹脂層20を積層する。具体的には、第一基材10の面11に、上述の塗布液を塗布して塗膜2を形成する(
図1A参照)。この塗膜2を乾燥させて乾燥塗膜とすることにより、樹脂層20を形成することができる(
図1B参照)。第一基材10上に塗膜2を形成した状態で、この塗膜2を乾燥させると、塗膜2の表面からは溶剤が揮発し易いが、塗膜2の第一基材10側からは溶剤が揮発しにくい。そのため、塗膜2の乾燥塗膜である樹脂層20においては、第一基材10側の溶剤の濃度が、反対側(表面側)の濃度よりも大きくなる。また樹脂層20においては、第一基材10側からその反対側(表面側)に向かって溶剤の濃度が徐々に小さくなり、厚み方向で濃度勾配が生じる。
【0058】
塗布液は、塗膜2の厚みが10μm以上400μm以下となるように塗布することが好ましい。また塗膜2の乾燥条件は、例えば、50℃~250℃の範囲内、1分以上30分間以内であることが好ましい。この場合、対象物200を樹脂層20で封止する際に、樹脂層20の表面にボイド(気孔)が形成されることを特に抑制することができ、また対象物200が備える微細な凹凸を溶融した樹脂層20によって特に埋めやすい。
【0059】
(3)第二基材の積層
次に、樹脂層20上に第二基材30を積層する(
図1C参照)。第二基材30が樹脂製である場合、及び第二基材30が金属製である場合のいずれにおいても、第一基材10、樹脂層20、第二基材30の順に積層した状態で、これを加熱及び加圧する。それにより、第一基材10、樹脂層20、第二基材30の順に積層された樹脂シート積層体100が得られる。第二基材30を積層する際、加熱温度は30℃以上120℃以下、圧力(ニップ圧)が2N/cm以上50N/cm以下が好ましい。
【0060】
本実施形態では、第二基材30の面31(樹脂層20と重なる面)は、予め第一基材10の面11よりもテープ剥離力が大きくなるように処理しておくことが好ましい。この場合、第二基材30を、第一基材10よりも樹脂層20から剥がれにくくすることができる。
【0061】
上述の方法によって、樹脂シート積層体100を製造することができる。樹脂シート積層体100のより具体的な製造方法の一例を以下に示す。
【0062】
図4は、樹脂シート積層体100を製造するための装置を示している。
図4に示す装置101においては、まず、第一基材10を巻き取ったロール102から、第一基材10を送り出すと共に、第一基材10の面11上に塗布液を塗布して塗膜2を形成する(コンマコーター)。次に、第一基材10及び塗膜2を乾燥器103内で乾燥させて、第一基材10の面11上に樹脂層20を形成する。次に、第二基材30を巻き取ったロール104から第二基材30を送り出すと共に、樹脂層20と第二基材30とを重ねて、加熱及び加圧する(ニップルロール)。以上の工程により、長尺な樹脂シート積層体100を連続して製造することができる。この長尺な樹脂シート積層体100を任意の長さで切断することにより、任意の大きさの樹脂シート積層体100が得られる。
【0063】
2-3.成形品の製造方法について
本実施形態の成形品300は、以下の工程によって、製造することができる。
【0064】
まず、
図3Aに示すように、樹脂シート積層体100から第一基材10を剥がして、樹脂層20の第一基材10側の面21を露出させる。
【0065】
次に、
図3Bに示すように、対象物200と樹脂層20の面21とが対面するように張り合わせる。この状態で、第二基材30ごと樹脂層20は真空成形することにより、樹脂層20で対象物200を封止することができる。
【0066】
本実施形態の樹脂シート積層体100においては、樹脂層20の第二基材30側の方が第一基材10側よりも残留溶剤が少ないため、樹脂層20の表面にはボイドが発生しにくい。また本実施形態の樹脂シート積層体100においては、樹脂層20の第一基材10側の方が第二基材30側よりも残留溶剤が多いため、真空成形の際、対象物200付近で溶融した樹脂層20は低粘度にすることができ、対象物200が備える微細な凹凸を、溶融した樹脂層20で埋めやすい。
【0067】
次に、必要に応じて、硬化した樹脂層20から第二基材30を剥がすことにより、
図4Cに示す成形品300が得られる。そのため成形品300では、対象物200が樹脂層20で封止されている。この対象物200は、特に限定されないが、例えば、半導体素子である。また成形品300も、特に限定されないが、電子回路基板、半導体パッケージ、半導体モジュールであることが好ましい。成形品300の例には、大電流回路基板、コアレス基板、I部品内蔵モジュール、システムインパッケージ(SIP)、チップサイズパッケージ(CSP)、Iファンアウトウエハーレベルパッケージ(FOWLP)等が含まれる。また成形品300においては、樹脂層20は、絶縁性の樹脂シート、ソルダーレジストフィルム等として、使用することができる。
【実施例】
【0068】
(実施例1~7、比較例1~2)
表1に示す成分を表1に示す割合でプラネタリーミキサーで混錬することにより、粘度3000mPaの塗布液を調製した。
【0069】
【0070】
表2に示す厚み、水接触角、テープ剥離強度を有する第一基材(A)及び第二基材(B)を用意した。なお、テープ剥離強度を測定する際の剥離速度は0.3mm/分とした。
【0071】
そして、第一基材(A)上に表1に示す塗布液を塗布することにより、塗布液の塗膜を形成した。この塗膜を120℃で10分間乾燥させることにより、第一基材(A)上に半硬化状態の樹脂層を形成した。この半硬化状態の樹脂層上に第二基材(B)を重ねて、ニップルロールで加熱及び加圧を行うことにより、実施例1~7、比較例1~2の積層体を作製した。この積層体が備える樹脂層は、表2に示す厚み及び残留溶剤量を有していた。
【0072】
(残留溶剤濃度及びテープ剥離強度の比較)
実施例1~7、比較例1~2の積層体から第一基材(A)のみを剥離することで、樹脂層の第一基材(A)側の面を露出させた。この状態で、所定温度で所定時間加熱して、加熱前後の重量変化率(樹脂層の第一基材(A)側の残留溶剤濃度)を測定した。
【0073】
また実施例1~7、比較例1~2の積層体から第二基材(B)のみを剥離することで、樹脂層の第二基材(B)側の面を露出させた。この状態で、所定温度で所定時間加熱して、加熱前後の重量変化率(樹脂層の第二基材(B)側の残留溶剤濃度)を測定した。
【0074】
樹脂層の第一基材(A)側の残留溶剤濃度(%)と、樹脂層の第二基材(B)側の残留溶剤濃度(%)とを比較した結果を下記の表2に示す。なお、残留溶剤濃度を比較した結果は、100℃で15分間、120℃で15分間、140℃で15分間、及び160℃で15分間のいずれの加熱条件でも同じであった。
【0075】
また表2には、第一基材(A)のテープ剥離強度と、第二基材(B)のテープ剥離強度と、を比較した結果も合せて示す。
【0076】
(評価)
実施例1~7、比較例1~2の積層体について、以下の基準で、剥離性及びボイド数を評価した。その結果を表2に示す。
【0077】
(1)剥離性
実施例1~7、比較例1の積層体から第一基材(A)を剥離させて、以下の基準で評価した。
○:積層体から第一基材(A)を剥がす際に第二基材(B)が全く剥がれなかった。
×:積層体から第一基材(A)を剥がす際に第二基材(B)に剥がれが生じた、又は第一基材(A)を剥がせなかった。
【0078】
(2)ボイド数
実施例1~7、比較例1の積層体から第一基材(A)を剥離して樹脂層を露出させて、この樹脂層で回路基板の封止を行った。その後、樹脂層から第二基材(B)を剥離して、樹脂層の表面に生じたボイド(気孔)の数を数えた。なお、比較例2の積層体については、第二基材(B)の剥離なしに第一基材(A)を剥離できなかったため、第二基材(B)を剥離して樹脂層を露出させ、この樹脂層で回路基板の封止を行い、その後、積層体から第一基材(A)を剥離させた。
【0079】
【符号の説明】
【0080】
10 第一基材
11 面
2 塗膜
20 樹脂層
21 面
30 第二基材
31 面
100 樹脂シート積層体
200 対象物
300 成形品