(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】衝撃吸収積層体、表示装置
(51)【国際特許分類】
B32B 7/022 20190101AFI20240510BHJP
B32B 27/00 20060101ALI20240510BHJP
B32B 27/40 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B32B7/022
B32B27/00 101
B32B27/40
(21)【出願番号】P 2020569601
(86)(22)【出願日】2020-01-27
(86)【国際出願番号】 JP2020002683
(87)【国際公開番号】W WO2020158639
(87)【国際公開日】2020-08-06
【審査請求日】2022-09-07
(31)【優先権主張番号】P 2019013677
(32)【優先日】2019-01-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002527
【氏名又は名称】弁理士法人北斗特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】中西 多公歳
(72)【発明者】
【氏名】英 翔
(72)【発明者】
【氏名】川村 基
(72)【発明者】
【氏名】山田 宗勇
【審査官】川井 美佳
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/047272(WO,A1)
【文献】国際公開第2015/072487(WO,A1)
【文献】特開2018-087334(JP,A)
【文献】特開2009-079347(JP,A)
【文献】特開2007-272151(JP,A)
【文献】特開2016-043691(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C09J 7/00-7/50
G02F 1/1335-1/13363
G09F 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘着性および応力緩和性を有する衝撃吸収層と、
熱拡散性を有する熱拡散層と、
電磁波遮蔽性を有するシールド層と、を備え、
前記衝撃吸収層と前記熱拡散層と前記シールド層とが積層して
おり、
前記衝撃吸収層は、粘着性および応力緩和性を有する粘着剤組成物を含み、
前記粘着剤組成物は、シリコーン系樹脂又はウレタン系樹脂を含有し、25℃から100℃の間のいずれの温度においても、貯蔵弾性率が10
3
Pa以上10
5
Pa以下の範囲のいずれかの値を示し、かつ、tanδが10
-2
以上1以下の範囲のいずれかの値を示し、
前記粘着剤組成物の粘着力は1N/20mm以上である、
衝撃吸収積層体。
【請求項2】
前記衝撃吸収層は、更に、顔料を含んで遮光性を有する、
請求項1に記載の衝撃吸収積層体。
【請求項3】
前記熱拡散層は前記衝撃吸収層の表面に接触して接着されている、
請求項1又は2に記載の衝撃吸収積層体。
【請求項4】
前記シールド層は接着層により前記熱拡散層に接着され、
前記接着層は熱伝導性および柔軟性を有する、
請求項1~3のいずれか1項に記載の衝撃吸収積層体。
【請求項5】
前記接着層は、柔軟性を有するエポキシ樹脂を含む、
請求項4に記載の衝撃吸収積層体。
【請求項6】
前記シールド層は、導電織布を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の衝撃吸収積層体。
【請求項7】
前記熱拡散層は、炭素繊維シートを含む、
請求項1~6のいずれか1項に記載の衝撃吸収積層体。
【請求項8】
前記衝撃吸収層は、表示パネルの非表示側の表面に配置され、
前記衝撃吸収層は、顔料を含み、
前記顔料がCIE 1976L
*
a
*
b
*
色空間(測定用光源C:色温度6774K)を用いた座標において0≦L
*
≦14、6≦a
*
≦8、-10≦b
*
≦-5の範囲である、
請求項1~7のいずれか1項に記載の衝撃吸収積層体。
【請求項9】
前記衝撃吸収層の厚さは、40μm以上500μm以下である、
請求項1~8のいずれか1項に記載の衝撃吸収積層体。
【請求項10】
前記衝撃吸収層は、放熱微粒子及び液体封入カプセルを更に含有する、
請求項1~9のいずれか1項に記載の衝撃吸収積層体。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか1項に記載の衝撃吸収積層体と、
表示パネルと、を備え、
前記表示パネルの非表示側の表面に前記衝撃吸収層が接触している、
表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、一般に衝撃吸収積層体及び表示装置に関し、より詳細には、粘着性および応力緩和性を有する衝撃吸収層を備える衝撃吸収積層体および表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、衝撃吸収シートが記載されている。該衝撃吸収シートは、23℃における貯蔵弾性率が1.0×105Pa以上2.5×107Pa以下、23℃におけるtanδが0.3以上、密度が600kg/m3以上である。
【0003】
このような衝撃吸収シートは、表示装置の背面側に配置され、表示装置に作用する衝撃を吸収するものである。
【0004】
しかし、上記の衝撃吸収シートは、表示装置の背面側に配置する際に、衝撃吸収シートの表面に粘着剤層又は両面粘着テープを設けて接着しなければならなかった。したがって、衝撃吸収シートを接着した表示装置は厚くなったり剛直となったりして、表示装置に求められている薄型化や屈曲性などの機能が発現しにくいことがあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本開示は、上記事由に鑑みてなされており、粘着剤を使用しなくても他部材との貼り付けが可能で、放熱性および電磁波の遮蔽性を有する衝撃吸収積層体及び表示装置を提供することを目的とする。
【0007】
本開示の一態様に係る衝撃吸収積層体は、粘着性および応力緩和性を有する衝撃吸収層と、熱拡散性を有する熱拡散層と、電磁波遮蔽性を有するシールド層と、を備える。前記衝撃吸収層と前記熱拡散層と前記シールド層とが積層している。
【0008】
本開示の一態様に係る表示装置は、前記衝撃吸収積層体と、表示パネルと、を備える。前記表示パネルの非表示側の表面に前記衝撃吸収層が接触している。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1Aは、本開示に係る一実施形態の衝撃吸収積層体を示す模式図である。
図1Bは、比較例の衝撃吸収積層体を示す説明図である。
図1Cは、本開示に係る一実施形態の衝撃吸収積層体の他例を示す模式図である。
図1Dは、比較例の衝撃吸収積層体の他例を示す説明図である。
【
図2】
図2Aは、本開示に係る一実施形態の衝撃吸収積層体の衝撃吸収層の一例を示す模式図である。
図2Bは、同上の衝撃吸収層の他の一例を示す模式図である。
図2Cは、同上の衝撃吸収層のさらに他の一例を示す模式図である。
図2Dは、同上の衝撃吸収層のさらに他の一例を示す模式図である。
【
図3】
図3は、本開示に係る一実施形態の衝撃吸収積層体の接着層を示す模式図である。
【
図4】
図4は、本開示に係る一実施形態の表示装置を示す概略図である。
【
図5】
図5は、本開示に係る一実施形態の衝撃吸収層の粘着力を測定する試験を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[衝撃吸収積層体の概要]
図1Aは、本実施形態に係る衝撃吸収積層体100を示している。衝撃吸収積層体100は、粘着性と応力緩和性を有する衝撃吸収層10と、熱拡散性を有する熱拡散層20と、電磁波遮蔽性を有するシールド層40と、を備えている。また衝撃吸収積層体100は、接着層30を備えている。なお、接着層30は、衝撃吸収積層体100の必須の構成要素ではなく、必要に応じて、使用される。そして、衝撃吸収層10と熱拡散層20と接着層30とシールド層40とが積層している。
【0011】
図1Bは、衝撃吸収積層体100と同等程度の衝撃吸収性、及び貼付性を得ようとした場合の衝撃吸収積層体200を示している。衝撃吸収積層体200では、衝撃吸収性を得るために多孔構造層51を有している。多孔構造層51は、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリアクリル、ポリウレタンなどの発泡体を素材として形成され、厚みが50~1000μmに形成されている。さらに衝撃吸収積層体200は、貼付性を得るために、厚み3~50μmの二つの粘着層53、54を有している。貼付性は、衝撃吸収積層体200を他の部材に貼り付けたり、他の部材を多孔構造層51に貼り付けたりすることができる性能である。一方の粘着層54は多孔構造層51の一方の面(熱拡散層20側の面)に設けられている。もう一方の粘着層53は多孔構造層51の他方の面(熱拡散層20側の面の反対側の面)に設けられている。粘着層54には熱拡散層20が接着されている。また熱拡散層20の片面には接着層30が設けられ、接着層30の片面にはシールド層40が接着されている。
【0012】
尚、熱拡散層20およびシールド層40は遮光性を有するため、衝撃吸収積層体100及び衝撃吸収積層体200は、遮光性を有する。
【0013】
このように衝撃吸収積層体200は、衝撃吸収性を得るための多孔構造層51と、貼付性を得るための二つの粘着層53及び54とで構成されているため、厚みが非常に大きくなる。一方、本実施形態に係る衝撃吸収積層体100は、粘着性および応力緩和性を有する衝撃吸収層10を備えているため、衝撃吸収層10により衝撃吸収性と貼付性が得られる。したがって、遮光基材52及び二つの粘着層53、54がなくても衝撃吸収積層体200と同程度の衝撃吸収性、遮光性及び貼付性を有するものである。よって、本実施形態に係る衝撃吸収積層体100は、衝撃吸収性、遮光性及び貼付性を有しながら、衝撃吸収積層体200よりも厚みを薄くする(薄型化を図る)ことができる。
【0014】
図1Cは、本実施形態に係る衝撃吸収積層体101を示している。衝撃吸収積層体101は、粘着性と応力緩和性と遮光性を有する衝撃吸収層11と、熱拡散層20と、シールド層40と、を備えている。また衝撃吸収積層体101は、接着層30を必要に応じて、備えている。
【0015】
図1Dは、衝撃吸収積層体101と同等程度の衝撃吸収性、遮光性及び貼付性を得ようとした場合の衝撃吸収積層体201を示している。衝撃吸収積層体201では、衝撃吸収積層体200に、さらに遮光性を得るために、光の透過率が小さい遮光基材52を備えている。遮光基材52は厚み5~50μmに形成され、厚み3~50μmの粘着層53により、多孔構造層51の片面に貼り付けられている。さらに衝撃吸収積層体201は、貼付性を得るために、厚み3~50μmの二つの粘着層54、55を有している。一方の粘着層54は多孔構造層51の他の片面(遮光基材52がない面)に設けられている。もう一方の粘着層55は遮光基材52の片面(粘着層53がない面)に設けられている。粘着層54には熱拡散層20が接着されている。また熱拡散層20の片面には接着層30が設けられ、接着層30の片面にはシールド層40が接着されている。
【0016】
このように衝撃吸収積層体201は、衝撃吸収性を得るための多孔構造層51と、遮光性を得るための遮光基材52と、貼付性を得るための二つの粘着層54,55、及び遮光基材52と多孔構造層51とを接着するための粘着層53とで構成されているため、厚みが非常に大きくなる。一方、本実施形態に係る衝撃吸収積層体101は、粘着性、応力緩和性および遮光性を有する衝撃吸収層11を備えているため、衝撃吸収層11により衝撃吸収性と貼付性と遮光性が得られる。したがって、遮光基材52及び三つの粘着層53、54,55がなくても衝撃吸収積層体201と同程度の衝撃吸収性、遮光性及び貼付性を有するものである。よって、本実施形態に係る衝撃吸収積層体101は、衝撃吸収性、遮光性及び貼付性を有しながら、衝撃吸収積層体201よりも厚みを薄くする(薄型化を図る)ことができる。
【0017】
本実施形態に係る衝撃吸収積層体100、101は、表示装置の背面側に配置して用いる。そのため、衝撃吸収積層体の表示装置側とは反対側に敷設されている部品等が衝撃吸収積層体を通じて表示装置側に視認されないように衝撃吸収積層体には遮光性が必要とされる。当該遮光性は、衝撃吸収積層体を構成する熱拡散層及びシールド層によって付与されるため、通常の表示装置であれば、衝撃吸収層にまで遮光性を必要しないが、衝撃吸収層に黒色の顔料を含むことで、表示装置において、高いコントラスト等の高い意匠性を実現でき、黒色の顔料の漆黒性が高い程、より高い意匠性を実現できる。
【0018】
[衝撃吸収層]
衝撃吸収層10は、粘着性、及び応力緩和性を有する。衝撃吸収層10は、粘着剤組成物2から成る。また衝撃吸収層10の厚みは40μm以上500μm以下である。
【0019】
図2Aのように衝撃吸収層10は粘着剤組成物2を含んでいるが、その他に
図2Bに示すように、粘着剤組成物2と顔料3とを含有して形成される衝撃吸収層11であってもよいし、
図2Cに示すように、粘着剤組成物2と顔料3と、さらに放熱微粒子5とを含有して形成される衝撃吸収層12であってもよい。また
図2Dに示すように、粘着剤組成物2と顔料3と放熱微粒子5と、さらに液体封入カプセル4とを含有して形成される衝撃吸収層13であってもよい。
【0020】
(粘着剤組成物)
粘着剤組成物2は、衝撃吸収層10~13の主体を構成する。すなわち、粘着剤組成物2は、顔料3、液体封入カプセル4及び放熱微粒子5を内在して保持するマトリックスのような機能を有する。また衝撃吸収層10~13は、主に、粘着剤組成物2により、多孔構造を用いずに物理的に衝撃エネルギーを緩和することができる。ここで、粘着剤組成物2が、衝撃吸収層10~13の主体を構成するとは、衝撃吸収層10~13が粘着剤組成物2を、衝撃吸収層10~13の全質量に対して50質量%以上含有することを意味し、好ましくは60質量%以上、より好ましくは70%以上含有することを意味する。
【0021】
本実施形態に係る衝撃吸収層10~13において、粘着剤組成物2はシート状、板状及びフィルム状の形態を有する。これらの形態の粘着剤組成物2は厚みが40μm以上500μm以下である。すなわち、粘着剤組成物2の厚みが衝撃吸収層10~13の厚みとなる。
【0022】
粘着剤組成物2は粘着性を有する。ここで、粘着性とは、粘着剤組成物2及び衝撃吸収層10~13が他の部材に接着できる機能をいう。具体的には、粘着性は、JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠した粘着力試験において、被着体をガラス板とした場合における180度引きはがし粘着力によって規定される。粘着剤組成物2の粘着力は1N/20mm以上であることが好ましく、2N/20mm以上であることがより好ましく、10N/20mm以上であることがさらに好ましい。粘着剤組成物2の粘着力は、強ければ強いほど良いが、25N/20mmもあれば十分である。
【0023】
粘着剤組成物2は応力緩和性を有する。ここで、応力緩和性とは、粘着剤組成物2に応力が加わったときに、その応力による衝撃エネルギーを変形や熱エネルギーに変換して吸収し、応力が伝達されにくくする機能をいう。具体的には、応力緩和性を有する粘着剤組成物2は、25℃から100℃の間のいずれの温度においても、貯蔵弾性率が103Pa以上105Pa以下の範囲のいずれかの値を示し、かつ、tanδが10-2以上1以下の範囲のいずれかの値を示す。
【0024】
動的弾性率には貯蔵弾性率G’(Pa)と損失弾性率G”(Pa)がある。貯蔵弾性率G’(Pa)は物体に外力とひずみにより生じたエネルギーのうち物体の内部に保存する成分であり、損失弾性率G”(Pa)は外部へ拡散する成分である。また、tanδは損失係数といい、G”とG’の比である(tanδ=G”/G’=損失弾性率/貯蔵弾性率)。
【0025】
貯蔵弾性率G’(Pa)が、25℃から100℃の間のいずれの温度においても、103Pa以上105Pa以下の範囲のいずれかの値であり、かつtanδが10―2以上1以下の範囲のいずれかの値であることによって、粘着剤組成物2は、外力やひずみなどが与えられた場合に、粘着剤組成物2の内部にエネルギーを保存したうえで、徐々に外部に熱エネルギーとして拡散させる特性を発現することができ、衝撃吸収特性を発現する。上記以外の範囲においては、粘着剤組成物2は外力やひずみなどによるエネルギーを内部に蓄えることなく弾性的な反発力を外部に向けて発生させるか、塑性変形をしてしまい、衝撃吸収層10~13は当初の形状を維持しにくくなる。
【0026】
粘着剤組成物2は、貯蔵弾性率G’(Pa)が、25℃から100℃の間のいずれの温度においても、104Pa以上105Pa以下の範囲のいずれかの値であり、かつtanδが10-1以上1以下の範囲のいずれかの値であることが、より好ましい。
【0027】
なお、貯蔵弾性率G’(Pa)と損失弾性率G”(Pa)の測定装置としては、例えば、TAインスツルメンツ株式会社製の「ARES G2」が使用される。
【0028】
本実施形態の衝撃吸収層10~13に適用される粘着剤組成物は、日本ゴム協会標準規格(SRIS0101)に準拠した測定方法によって規定されるアスカーC硬度が10以上50以下であることが好ましい。粘着剤組成物のアスカーC硬度が10未満であると、得られる衝撃吸収層10~13の硬度が柔らか過ぎて衝撃が加わったときに、前記衝撃吸収層が厚み方向(衝撃印加方向)に著しく変形し、いわゆる底付き状態となり、衝撃緩衝効果が著しく低下する。一方、粘着剤組成物のアスカーC硬度が55を超えると、得られる衝撃吸収層10~13が硬くなるため底付きは解消されるが、衝撃が加わったときに、前記衝撃吸収層10~13からの反発力が大きくなり、衝撃緩衝効果が低下する。上記粘着性及び応力緩和性を有する粘着剤組成物2が、衝撃吸収層10~13の主体を構成することによって、粘着性及び応力緩和性を有する衝撃吸収層10~13が得られる。
【0029】
(粘着剤組成物の製造方法及び構成成分)
本実施形態における衝撃吸収層10~13は粘着剤組成物2を含んでいる。粘着剤組成物2はベースポリマーなどの樹脂の硬化物である。粘着剤組成物2は、例えば、ベースポリマーを含む溶液を塗布した後に乾燥させ、溶剤や不要な低分子量成分が除かれた状態で硬化している。
【0030】
<ベースポリマー>
粘着剤組成物を構成するベースポリマーは、好ましくは、ウレタン系樹脂、アクリル系樹脂、ゴム系樹脂、シリコーン系樹脂から選ばれる少なくとも1種である。ベースポリマーは、本実施形態の効果をより発現し得る点で、より好ましくは、ウレタン系樹脂、シリコーン系樹脂である。
【0031】
〔ウレタン系樹脂〕
ウレタン系樹脂としては、本実施形態の効果を損なわない範囲で、任意の適切なウレタン系樹脂を採用し得る。
【0032】
ウレタン系樹脂としては、好ましくは、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるウレタン系樹脂、または、ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるウレタン系樹脂である。ウレタン系樹脂として上記のようなものを採用することにより、衝撃吸収層10~13の粘着剤としての被着体に対する濡れ性が向上し得るため、気泡を巻き込むことなく被着体に貼着が可能となる。
【0033】
ウレタン系樹脂は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、任意の適切な成分を含有し得る。このような成分としては、例えば、ウレタン系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。ウレタン系樹脂は、好ましくは、酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定剤といった劣化防止剤を含む。
【0034】
劣化防止剤は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。劣化防止剤として、特に好ましくは、酸化防止剤である。酸化防止剤としては、例えば、ラジカル連鎖禁止剤、過酸化物分解剤などが挙げられる。ラジカル連鎖禁止剤としては、例えば、フェノール系酸化防止剤、アミン系酸化防止剤などが挙げられる。過酸化物分解剤としては、例えば、硫黄系酸化防止剤、リン系酸化防止剤などが挙げられる。フェノール系酸化防止剤としては、例えば、モノフェノール系酸化防止剤、ビスフェノール系酸化防止剤、高分子型フェノール系酸化防止剤などが挙げられる。
【0035】
モノフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール、ブチル化ヒドロキシアニソール、2,6-ジ-t-ブチル-4-エチルフェノール、ステアリン-β-(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどが挙げられる。ビスフェノール系酸化防止剤としては、例えば、2,2’-メチレンビス(4-メチル-6-t-ブチルフェノール)、2,2’-メチレンビス(4-エチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-チオビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、4,4’-ブチリデンビス(3-メチル-6-t-ブチルフェノール)、3,9-ビス[1,1-ジメチル-2-[β-(3-t-ブチル-4-ヒドロキシ-5-メチルフェニル)プロピオニルオキシ]エチル]2,4,8,10-テトラオキサスピロ[5,5]ウンデカンなどが挙げられる。
【0036】
高分子型フェノール系酸化防止剤としては、例えば、1,1,3-トリス(2-メチル-4-ヒドロキシ-5-t-ブチルフェニル)ブタン、1,3,5-トリメチル-2,4,6-トリス(3,5-ジ-t-ブチル-4-ヒドロキシベンジル)ベンゼン、テトラキス-[メチレン-3-(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシフェニル)プロピオネート]メタン、ビス[3,3’-ビス-(4’-ヒドロキシ-3’-t-ブチルフェニル)ブチリックアシッド]グリコールエステル、1,3,5-トリス(3’,5’-ジ-t-ブチル-4’-ヒドロキシベンジル)-S-トリアジン-2,4,6-(1H、3H、5H)トリオン、トコフェノールなどが挙げられる。
【0037】
硫黄系酸化防止剤としては、例えば、ジラウリル3,3’-チオジプロピオネート、ジミリスチル3,3’-チオジプロピオネート、ジステアリル3,3’-チオジプロピオネートなどが挙げられる。リン系酸化防止剤としては、例えば、トリフェニルホスファイト、ジフェニルイソデシルホスファイト、フェニルジイソデシルホスファイトなどが挙げられる。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、サリチル酸系紫外線吸収剤、シュウ酸アニリド系紫外線吸収剤、シアノアクリレート系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤などが挙げられる。
【0038】
ベンゾフェノン系紫外線吸収剤としては、例えば、2,4-ジヒドロキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-オクトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-ドデシルオキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4-ジメトキシベンゾフェノン、2,2’-ジヒドロキシ-4,4’-ジメトキシベンゾフェノン、2-ヒドロキシ-4-メトキシ-5-スルホベンゾフェノン、ビス(2-メトキシ-4-ヒドロキシ-5-ベンゾイルフェニル)メタンなどが挙げられる。
【0039】
ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤としては、例えば、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-5’-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’-tert-ブチル-5’-メチルフェニル)-5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-ブチルフェニル)5-クロロベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-3’,5’-ジ-tert-アミルフェニル)ベンゾトリアゾール、2-(2’-ヒドロキシ-4’-オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2-[2’-ヒドロキシ-3’-(3’’,4’’,5’’,6’’,-テトラヒドロフタルイミドメチル)-5’-メチルフェニル]ベンゾトリアゾール、2,2’メチレンビス[4-(1,1,3,3-テトラメチルブチル)-6-(2H-ベンゾトリアゾール-2-イル)フェノール]、2-(2’-ヒドロキシ-5’-メタアクリロキシフェニル)-2H-ベンゾトリアゾールなどが挙げられる。
【0040】
サリチル酸系紫外線吸収剤としては、例えば、フェニルサリシレート、p-tert-ブチルフェニルサリシレート、p-オクチルフェニルサリシレートなどが挙げられる。シアノアクリレート系紫外線吸収剤としては、例えば、2-エチルヘキシル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレート、エチル-2-シアノ-3,3’-ジフェニルアクリレートなどが挙げられる。
【0041】
光安定剤としては、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤、紫外線安定剤などが挙げられる。ヒンダードアミン系光安定剤としては、例えば、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-4-ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジル)セバケート、メチル-1,2,2,6,6-ペンタメチル-4-ピペリジルセバケートなどを挙げることができる。紫外線安定剤としては、例えば、ニッケルビス(オクチルフェニル)サルファイド、[2,2’-チオビス(4-tert-オクチルフェノラート)]-n-ブチルアミンニッケル、ニッケルコンプレックス-3,5-ジ-tert-ブチル-4-ヒドロキシベンジル-リン酸モノエチレート、ニッケル-ジブチルジチオカーバメート、ベンゾエートタイプのクエンチャー、ニッケル-ジブチルジチオカーバメートなどが挙げられる。
【0042】
(ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるウレタン系樹脂)
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるウレタン系樹脂は、具体的には、好ましくは、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて得られるウレタン系樹脂である。ポリオール(A)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。多官能イソシアネート化合物(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0043】
ポリオール(A)としては、例えば、好ましくは、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリカーボネートポリオール、ひまし油系ポリオールが挙げられる。ポリオール(A)としては、より好ましくは、ポリエーテルポリオールである。ポリエステルポリオールとしては、例えば、ポリオール成分と酸成分とのエステル化反応によって得ることができる。ポリオール成分としては、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、2-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオール、2,4-ジエチル-1,5-ペンタンジオール、1,2-ヘキサンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,8-デカンジオール、オクタデカンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール、ヘキサントリオール、ポリプロピレングリコールなどが挙げられる。
【0044】
酸成分としては、例えば、コハク酸、メチルコハク酸、アジピン酸、ピメリック酸、アゼライン酸、セバシン酸、1,12-ドデカン二酸、1,14-テトラデカン二酸、ダイマー酸、2-メチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、2-エチル-1,4-シクロヘキサンジカルボン酸、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、1,4-ナフタレンジカルボン酸、4,4’-ビフェエルジカルボン酸、これらの酸無水物などが挙げられる。
【0045】
ポリエーテルポリオールとしては、例えば、水、低分子ポリオール(プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなど)、ビスフェノール類(ビスフェノールAなど)、ジヒドロキシベンゼン(カテコール、レゾルシン、ハイドロキノンなど)などを開始剤として、エチレンオキサイド、プロピレンオキサイド、ブチレンオキサイドなどのアルキレンオキサイドを付加重合させることによって得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールなどが挙げられる。
【0046】
ポリカプロラクトンポリオールとしては、例えば、ε-カプロラクトン、σ-バレロラクトンなどの環状エステルモノマーの開環重合により得られるカプロラクトン系ポリエステルジオールなどが挙げられる。
【0047】
ポリカーボネートポリオールとしては、例えば、上記ポリオール成分とホスゲンとを重縮合反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分と、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸ジプロビル、炭酸ジイソプロピル、炭酸ジブチル、エチルブチル炭酸、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート、炭酸ジフェニル、炭酸ジベンジル等の炭酸ジエステル類とをエステル交換縮合させて得られるポリカーボネートポリオール;上記ポリオール成分を2種以上併用して得られる共重合ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとカルボキシル基含有化合物とをエステル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエーテル化反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとエステル化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとヒドロキシル基含有化合物とをエステル交換反応させて得られるポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとジカルボン酸化合物とを重縮合反応させて得られるポリエステル系ポリカーボネートポリオール;上記各種ポリカーボネートポリオールとアルキレンオキサイドとを共重合させて得られる共重合ポリエーテル系ポリカーボネートポリオール;などが挙げられる。
【0048】
ひまし油系ポリオールとしては、例えば、ひまし油脂肪酸と上記ポリオール成分とを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。具体的には、例えば、ひまし油脂肪酸とポリプロピレングリコールとを反応させて得られるひまし油系ポリオールが挙げられる。
【0049】
ポリオール(A)の数平均分子量Mnは、好ましくは300以上100000以下であり、より好ましくは400以上75000以下であり、さらに好ましくは450以上50000以下であり、特に好ましくは500以上30000以下である。ポリオール(A)の数平均分子量Mnを上記範囲内に調整することにより、衝撃吸収層の粘着剤としての被着体に対する濡れ性が向上し得るため、気泡を巻き込むことなく被着体への貼着が可能となる。
【0050】
ポリオール(A)としては、好ましくは、OH基を3個有する数平均分子量Mnが300以上100000以下のポリオール(A1)を含有する。ポリオール(A1)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。ポリオール(A)中のポリオール(A1)の含有割合は、好ましくは5重量%以上であり、より好ましくは25重量%以上100重量%以下であり、さらに好ましくは50重量%以上100重量%以下である。ポリオール(A)中のポリオール(A1)の含有割合を上記範囲内に調整することにより、衝撃吸収層の粘着剤としての被着体に対する濡れ性が向上し得るため、気泡を巻き込むことなく被着体への貼着が可能となる。ポリオール(A1)の数平均分子量Mnは、好ましくは1000以上100000以下であり、より好ましくは1200以上80000以下であり、さらに好ましくは1500以上70000以下であり、さらに好ましくは1750以上50000以下であり、特に好ましくは1500以上40000以下であり、最も好ましくは2000以上30000以下である。ポリオール(A1)の数平均分子量Mnを上記範囲内に調整することにより、衝撃吸収層の粘着剤としての被着体に対する濡れ性が向上し得るため、気泡を巻き込むことなく被着体への貼着が可能となる。
【0051】
ポリオール(A)は、OH基を3個以上有する数平均分子量Mnが20000以下のポリオール(A2)を含有していてもよい。ポリオール(A2)は、1種のみであっても良いし、2種以上であっても良い。ポリオール(A2)の数平均分子量Mnは、好ましくは100以上20000以下であり、より好ましくは150~10000であり、さらに好ましくは200以上7500以下であり、特に好ましくは300以上6000以下であり、最も好ましくは300以上5000以下である。ポリオール(A2)として、OH基を4個有するポリオール(テトラオール)、OH基を5個有するポリオール(ペンタオール)、OH基を6個有するポリオール(ヘキサオール)の少なくとも1種の合計量は、ポリオール(A)中の含有割合として、好ましくは70重量%以下であり、より好ましくは60重量%以下であり、さらに好ましくは40重量%以下であり、特に好ましくは30重量%以下である。
【0052】
ポリオール(A)中に、ポリオール(A2)として、OH基を4個有するポリオール(テトラオール)、OH基を5個有するポリオール(ペンタオール)、OH基を6個有するポリオール(ヘキサオール)の少なくとも1種を上記範囲に調整することにより、透明性に優れたウレタン系樹脂を提供することができ、また、衝撃吸収層の粘着剤としての被着体に対する濡れ性が向上し得るため、気泡を巻き込むことなく被着体への貼着が可能となる。
【0053】
多官能イソシアネート化合物(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。多官能イソシアネート化合物(B)としては、ウレタン化反応に用い得る任意の適切な多官能イソシアネート化合物を採用し得る。このような多官能イソシアネート化合物(B)としては、例えば、多官能脂肪族系イソシアネート化合物、多官能脂環族系イソシアネート、多官能芳香族系イソシアネート化合物などが挙げられる。
【0054】
多官能脂肪族系イソシアネート化合物としては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0055】
多官能脂環族系イソシアネート化合物としては、例えば、1,3-シクロペンテンジイソシアネート、1,3-シクロへキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、水素添加ジフェニルメタンジイソシアネート、水素添加キシリレンジイソシアネート、水素添加トリレンジイソシアネート、水素添加テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0056】
多官能芳香族系ジイソシアネート化合物としては、例えば、フェニレンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソソアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、2,2’一ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,5-ナフタレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0057】
多官能イソシアネート化合物(B)としては、上記のような各種多官能イソシアネート化合物のトリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体なども挙げられる。また、これらを併用してもよい。
【0058】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比は、NCO基/OH基として、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは0.1以上3.0以下であり、さらに好ましくは0.2以上2.5以下であり、特に好ましくは0.3以上2.25以下であり、最も好ましくは0.5以上2.0以下である。NCO基/OH基の当量比を上記範囲内に調整することにより、衝撃吸収層の粘着剤としての被着体に対する濡れ性が向上し得るため、気泡を巻き込むことなく被着体への貼着が可能となる。
【0059】
多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合は、ポリオール(A)に対して、多官能イソシアネート化合物(B)が、好ましくは1.0重量%以上30重量%以下であり、より好ましくは1.5重量%以上27重量%以下であり、さらに好ましくは2.0重量%以上25重量%以下であり、特に好ましくは2.3重量%~23重量%であり、最も好ましくは2.5重量%以上20重量%以下である。多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合を上記範囲内に調整することにより、衝撃吸収層の粘着剤としての被着体に対する濡れ性が向上し得るため、気泡を巻き込むことなく被着体への貼着が可能となる。ポリウレタン系樹脂は、具体的には、好ましくは、ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させて形成される。ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させてウレタン系樹脂を形成する方法としては、塊状重合や溶液重合などを用いたウレタン化反応方法など、本実施形態の効果を損なわない範囲で任意の適切な方法を採用し得る。
【0060】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物を硬化させるために、好ましくは触媒を用いる。このような触媒としては、例えば、有機金属系化合物、3級アミン化合物などが挙げられる。有機金属系化合物としては、例えば、鉄系化合物、錫系化合物、チタン系化合物、ジルコニウム系化合物、鉛系化合物、コバルト系化合物、亜鉛系化合物などを挙げることができる。これらの中でも、反応速度と粘着剤層のポットライフの点で、鉄系化合物、錫系化合物が好ましい。
【0061】
鉄系化合物としては、例えば、鉄アセチルアセトネート、2-エチルヘキサン酸鉄などが挙げられる。錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキシド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫マレエート、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルフィド、トリブチル錫メトキシド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキシド、トリブチル錫エトキシド、ジオクチル錫オキシド、ジオクチル錫ジラウレート、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルヘキサン酸錫などが挙げられる。
【0062】
チタン系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどが挙げられる。ジルコニウム系化合物としては、例えば、ナフテン酸ジルコニウム、ジルコニウムアセチルアセトネートなどが挙げられる。鉛系化合物としては、例えば、オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などが挙げられる。コバルト系化合物としては、例えば、2-エチルヘキサン酸コバルト、安息香酸コバルトなどが挙げられる。亜鉛系化合物としては、例えば、ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛などが挙げられる。3級アミン化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ-(5,4,0)-ウンデセン-7などが挙げられる。
【0063】
触媒は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。また、触媒と架橋遅延剤などを併用してもよい。触媒の量は、ポリオール(A)に対して、好ましくは0.005重量%以上1.00重量%以下であり、より好ましくは0.01重量%以上0.75重量%以下であり、さらに好ましくは0.01重量%以上0.50重量%以下であり、特に好ましくは0.01重量%以上0.20重量%以下である。触媒の量を上記範囲内に調整することにより、衝撃吸収層の粘着剤としての被着体に対する濡れ性が向上し得るため、気泡を巻き込むことなく被着体への貼着が可能となる。
【0064】
ポリオール(A)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物中には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含み得る。このようなその他の成分としては、例えば、ポリウレタン系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0065】
(ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるウレタン系樹脂)
ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるウレタン系樹脂は、いわゆる「ウレタンプレポリマー」を原料として用いて得られるウレタン系樹脂であれば、任意の適切なウレタン系樹脂を採用し得る。ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるウレタン系樹脂は、例えば、ウレタンプレポリマー(C)としてのポリウレタンポリオールと多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるウレタン系樹脂が挙げられる。ウレタンプレポリマー(C)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。多官能イソシアネート化合物(B)は、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0066】
ウレタンプレポリマー(C)としてのポリウレタンポリオールは、好ましくは、ポリエステルポリオール(a1)またはポリエーテルポリオール(a2)を、それぞれ単独で、もしくは、(a1)と(a2)の混合物で、触媒存在下または無触媒下で、有機ポリイソシアネ-ト化合物(a3)と反応させてなるものである。
【0067】
ポリエステルポリオール(a1)としては、任意の適切なポリエステルポリオールを用い得る。このようなポリエステルポリオール(a1)として、例えば、酸成分とグリコール成分とを反応させて得られるポリエステルポリオールが挙げられる。
【0068】
酸成分としては、例えば、テレフタル酸、アジピン酸、アゼライン酸、セバチン酸、無水フタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸などが挙げられる。グリコール成分としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ブチレングリコール、1,6-ヘキサングリコール、3-メチル-1,5-ペンタンジオール、3,3’-ジメチロールヘプタン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、ポリオール成分としてグリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。ポリエステルポリオール(a1)としては、その他に、ポリカプロラクトン、ポリ(β-メチル-γ-バレロラクトン)、ポリバレロラクトン等のラクトン類を開環重合して得られるポリエステルポリオールなども挙げられる。
【0069】
ポリエステルポリオール(a1)の分子量としては、低分子量から高分子量まで使用可能である。ポリエステルポリオール(a1)の分子量としては、数平均分子量が、好ましくは100以上100000以下である。数平均分子量が100未満では、反応性が高くなり、ゲル化しやすくなるおそれがある。数平均分子量が100000を超えると、反応性が低くなり、さらにはポリウレタンポリオール自体の凝集力が小さくなるおそれがある。ポリエステルポリオール(a1)の使用量は、ポリウレタンポリオールを構成するポリオール中、好ましくは0モル%以上90モル%以下である。
【0070】
ポリエーテルポリオール(a2)としては、任意の適切なポリエーテルポリオールを用い得る。このようなポリエーテルポリオール(a2)としては、例えば、水、プロピレングリコール、エチレングリコール、グリセリン、トリメチロールプロパン等の低分子量ポリオールを開始剤として用いて、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、テトラヒドロフラン等のオキシラン化合物を重合させることにより得られるポリエーテルポリオールが挙げられる。このようなポリエーテルポリオール(a2)としては、具体的には、例えば、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等の官能基数が2以上のポリエーテルポリオールが挙げられる。ポリエーテルポリオール(a2)の分子量としては、低分子量から高分子量まで使用可能である。ポリエーテルポリオール(a2)の分子量としては、数平均分子量が、好ましくは100以上100000以下である。数平均分子量が100未満では、反応性が高くなり、ゲル化しやすくなるおそれがある。数平均分子量が100000を超えると、反応性が低くなり、さらにはポリウレタンポリオール自体の凝集力が小さくなるおそれがある。
【0071】
ポリエーテルポリオール(a2)の使用量は、ポリウレタンポリオールを構成するポリオール中、好ましくは0モル%以上90モル%以下である。ポリエーテルポリオール(a2)は、必要に応じてその一部を、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、ブチルエチルペンタンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のグリコール類や、エチレンジアミン、N-アミノエチルエタノールアミン、イソホロンジアミン、キシリレンジアミン等の多価アミン類などに置き換えて併用することができる。
【0072】
ポリエーテルポリオール(a2)としては、2官能性のポリエーテルポリオールのみを用いてもよいし、数平均分子量が100以上100000以下であり、且つ、1分子中に少なくとも3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールを一部もしくは全部用いてもよい。ポリエーテルポリオール(a2)として、数平均分子量が100以上100000以下であり、且つ、1分子中に少なくとも3個以上の水酸基を有するポリエーテルポリオールを一部もしくは全部用いると、粘着力と再剥離性のバランスが良好となり得る。このようなポリエーテルポリオールにおいては、数平均分子量が100未満では、反応性が高くなり、ゲル化しやすくなるおそれがある。また、このようなポリエーテルポリオールにおいては、数平均分子量が100000を超えると、反応性が低くなり、さらにはポリウレタンポリオール自体の凝集力が小さくなるおそれがある。このようなポリエーテルポリオールの数平均分子量は、より好ましくは100以上10000以下である。
【0073】
有機ポリイソシアネート化合物(a3)としては、任意の適切な有機ポリイソシアネート化合物を用い得る。このような有機ポリイソシアネート化合物(a3)としては、例えば、芳香族ポリイソシアネート、脂肪族ポリイソシアネート、芳香脂肪族ポリイソシアネート、脂環族ポリイソシアネートなどが挙げられる。
【0074】
芳香族ポリイソシアネートとしては、例えば、1,3-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、1,4-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、4,4’-トルイジンジイソシアネート、2,4,6-トリイソシアネートトルエン、1,3,5-トリイソシアネートベンゼン、ジアニシジンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルエーテルジイソシアネート、4,4’,4”-トリフェニルメタントリイソシアネートなどが挙げられる。
【0075】
脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、トリメチレンジイソシアネート、テトラメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、1,2-プロピレンジイソシアネート、2,3-ブチレンジイソシアネート、1,3-ブチレンジイソシアネート、ドデカメチレンジイソシアネート、2,4,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0076】
芳香脂肪族ポリイソシアネートとしては、例えば、ω,ω’-ジイソシアネート-1,3-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジメチルベンゼン、ω,ω’-ジイソシアネート-1,4-ジエチルベンゼン、1,4-テトラメチルキシリレンジイソシアネート、1,3-テトラメチルキシリレンジイソシアネートなどが挙げられる。
【0077】
脂環族ポリイソシアネートとしては、例えば、3-イソシアネートメチル-3,5,5-トリメチルシクロヘキシルイソシアネート、1,3-シクロペンタンジイソシアネート、1,3-シクロヘキサンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,4-シクロヘキサンジイソシアネート、メチル-2,6-シクロヘキサンジイソシアネート、4,4’-メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサンなどが挙げられる。
【0078】
有機ポリイソシアネート化合物(a3)としては、トリメチロールプロパンアダクト体、水と反応したビュウレット体、イソシアヌレート環を有する3量体なども併用することができる。
【0079】
ポリウレタンポリオールを得る際に用い得る触媒としては、任意の適切な触媒を用い得る。このような触媒としては、例えば、3級アミン系化合物、有機金属系化合物などが挙げられる。3級アミン系化合物としては、例えば、トリエチルアミン、トリエチレンジアミン、1,8-ジアザビシクロ(5,4,0)-ウンデセン-7(DBU)などが挙げられる。有機金属系化合物としては、例えば、錫系化合物、非錫系化合物などが挙げられる。
【0080】
錫系化合物としては、例えば、ジブチル錫ジクロライド、ジブチル錫オキサイド、ジブチル錫ジブロマイド、ジブチル錫ジマレエート、ジブチル錫ジラウレート(DBTDL)、ジブチル錫ジアセテート、ジブチル錫スルファイド、トリブチル錫スルファイド、トリブチル錫オキサイド、トリブチル錫アセテート、トリエチル錫エトキサイド、トリブチル錫エトキサイド、ジオクチル錫オキサイド、トリブチル錫クロライド、トリブチル錫トリクロロアセテート、2-エチルヘキサン酸錫などが挙げられる。
【0081】
非錫系化合物としては、例えば、ジブチルチタニウムジクロライド、テトラブチルチタネート、ブトキシチタニウムトリクロライドなどのチタン系化合物;オレイン酸鉛、2-エチルヘキサン酸鉛、安息香酸鉛、ナフテン酸鉛などの鉛系化合物;2-エチルヘキサン酸鉄、鉄アセチルアセトネートなどの鉄系化合物;安息香酸コバルト、2-エチルヘキサン酸コバルトなどのコバルト系化合物;ナフテン酸亜鉛、2-エチルヘキサン酸亜鉛などの亜鉛系化合物;ナフテン酸ジルコニウムなどのジルコニウム系化合物;などが挙げられる。
【0082】
ポリウレタンポリオールを得る際に触媒を使用する場合、ポリエステルポリオールとポリエーテルポリオールの2種類のポリオールが存在する系では、その反応性の相違のため、単独の触媒の系では、ゲル化したり反応溶液が濁ったりするという問題が生じやすい。そこで、ポリウレタンポリオールを得る際に2種類の触媒を用いることにより、反応速度、触媒の選択性等が制御しやすくなり、これらの問題を解決し得る。このような2種類の触媒の組み合わせとしては、例えば、3級アミン/有機金属系、錫系/非錫系、錫系/錫系が挙げられ、好ましくは錫系/錫系であり、より好ましくはジブチル錫ジラウレートと2-エチルヘキサン酸錫の組み合わせである。その配合比は、重量比で、2-エチルヘキサン酸錫/ジブチル錫ジラウレートが、好ましくは1未満であり、より好ましくは0.2以上0.6以下である。配合比が1以上では、触媒活性のバランスによりゲル化しやすくなるおそれがある。
【0083】
ポリウレタンポリオールを得る際に触媒を使用する場合、触媒の使用量は、ポリエステルポリオール(a1)とポリエーテルポリオール(a2)と有機ポリイソシアネ-ト化合物(a3)の総量に対して、好ましくは0.01重量%以上1.0重量%以下である。ポリウレタンポリオールを得る際に触媒を使用する場合、反応温度は、好ましくは100℃未満であり、より好ましくは85℃以上95℃以下である。100℃以上になると反応速度、架橋構造の制御が困難となるおそれがあり、所定の分子量を有するポリウレタンポリオールが得難くなるおそれがある。ポリウレタンポリオールを得る際には、触媒を用いなくても良い。その場合は、反応温度が、好ましくは100℃以上であり、より好ましくは110℃以上である。また、無触媒下でポリウレタンポリオールを得る際は、3時間以上反応させることが好ましい。
【0084】
ポリウレタンポリオールを得る方法としては、例えば、1)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒、有機ポリイソシアネートを全量フラスコに仕込む方法、2)ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、触媒をフラスコに仕込んで有機ポリイソシアネ-トを滴下する添加する方法が挙げられる。ポリウレタンポリオールを得る方法として、反応を制御する上では、2)の方法が好ましい。
【0085】
ポリウレタンポリオールを得る際には、任意の適切な溶剤を用い得る。このような溶剤としては、例えば、メチルエチルケトン、酢酸エチル、トルエン、キシレン、アセトンなどが挙げられる。これらの溶剤の中でも、好ましくはトルエンである。多官能イソシアネート化合物(B)としては、前述したものを援用し得る。
【0086】
ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物中には、本実施形態の効果を損なわない範囲で、任意の適切なその他の成分を含み得る。このようなその他の成分としては、例えば、ポリウレタン系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0087】
ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)を含有する組成物から形成されるポリウレタン系樹脂を製造する方法としては、いわゆる「ウレタンプレポリマー」を原料として用いてポリウレタン系樹脂を製造する方法であれば、任意の適切な製造方法を採用し得る。ウレタンプレポリマー(C)の数平均分子量Mnは、好ましくは3000以上1000000以下である。ウレタンプレポリマー(C)と多官能イソシアネート化合物(B)における、NCO基とOH基の当量比は、NCO基/OH基として、好ましくは5.0以下であり、より好ましくは0.01以上3.0以下であり、さらに好ましくは0.02以上2.5以下であり、特に好ましくは0.03以上2.25以下であり、最も好ましくは0.05以上2.0以下である。NCO基/OH基の当量比を上記範囲内に調整することにより、衝撃吸収層の粘着剤としての被着体に対する濡れ性が向上し得るため、気泡を巻き込むことなく被着体への貼着が可能となる。
【0088】
多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合は、ウレタンプレポリマー(C)に対して、多官能イソシアネート化合物(B)が、好ましくは0.01重量%以上30重量%以下であり、より好ましくは0.03重量%以上20重量%以下であり、さらに好ましくは0.05重量%以上15重量%以下であり、特に好ましくは0.075重量%以上10重量%以下であり、最も好ましくは0.1重量%以上8重量%以下である。多官能イソシアネート化合物(B)の含有割合を上記範囲内に調整することにより、衝撃吸収層の粘着剤としての被着体に対する濡れ性が向上し得るため、気泡を巻き込むことなく被着体への貼着が可能となる。
【0089】
〔アクリル系樹脂〕
アクリル系樹脂としては、本実施形態の効果を損なわない範囲で、例えば、特開2013-241606号公報などに記載の公知のアクリル系粘着剤など、任意の適切なアクリル系粘着剤を採用し得る。アクリル系樹脂は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、任意の適切な成分を含有し得る。このような成分としては、例えば、アクリル系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0090】
〔ゴム系樹脂〕
ゴム系樹脂としては、本実施形態の効果を損なわない範囲で、例えば、特開2015-074771号公報などに記載の公知のゴム系粘着剤など、任意の適切なゴム系粘着剤を採用し得る。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。ゴム系樹脂は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、任意の適切な成分を含有し得る。このような成分としては、例えば、ゴム系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。
【0091】
〔シリコーン系樹脂〕
シリコーン系樹脂としては、本実施形態の効果を損なわない範囲で、例えば、特開2014-047280号公報などに記載の公知のシリコーン系粘着剤など、任意の適切なシリコーン系樹脂を採用し得る。これらは、1種のみであってもよいし、2種以上であってもよい。
【0092】
シリコーン系樹脂は、本実施形態の効果を損なわない範囲で、任意の適切な成分を含有し得る。このような成分としては、例えば、シリコーン系樹脂以外の樹脂成分、粘着付与剤、無機充填剤、有機充填剤、金属粉、顔料、箔状物、軟化剤、老化防止剤、導電剤、紫外線吸収剤、酸化防止剤、光安定剤、表面潤滑剤、レベリング剤、腐食防止剤、耐熱安定剤、重合禁止剤、滑剤、溶剤、触媒などが挙げられる。シリコーン系樹脂は、粘着性を有する付加反応型シリコーンゲルを用いてもよい。上記シリコーンゲルの硬度は、SRIS 0101規格のアスカーC硬度が15以上45以下であるか、またはJIS K2207「石油アスファルト」に準拠した針入度(25℃)が20以上200以下であることが望ましい。上記付加反応型シリコーンゲルとしては、従来から知られ、市販されている種々のシリコーン材料として一般的に使用されているケイ素化合物を適宜選択して用いることができる。よって、加熱硬化型あるいは常温硬化型のもの、硬化機構が縮合型あるいは付加型のものなど、いずれも用いることができ、特に付加型シリコーン組成物から得られるシリコーンゲルが好ましい。また、ケイ素原子に結合する基も、特に限定されるものではなく、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、ビニル基、アリル基等のアルケニル基、フェニル基、トリル基等のアリール基のほか、これらの基の水素原子が部分的に他の原子又は結合基で置換されたものを挙げることができる。
【0093】
具体的な付加反応型シリコーンゲル材としては、東レ・ダウコーニング(株)製の商品名:CF-5106(針入度が150)などが良好であり、このシリコーンゲル材は、原料であるシリコーン樹脂がA液とB液とに分れていて、この両液を所定比率で混合して加熱することにより、所望の針入度を有するシリコーンゲル材を得ることができるものである。本実施形態で用いられる付加反応型(又は架橋)シリコーンゲルの製法は、特に限定されないが、通常は、後述するオルガノハイドロジエンポリシロキサンとアルケニルポリシロキサンとを原料とし、両者を触媒の存在下でハイドロシリル化反応(付加反応)させることにより得られるものが好ましい。すなわち、本実施形態においてシリコーンゲルの原料物質とは、多くの場合、オルガノハイドロジエンポリシロキサンとアルケニルポリシロキサンを指す。原料の1つとして用いられるオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、下記の一般式(1)で表されるものが好ましい。
【0094】
【0095】
式中、R1は、同一又は異種の置換若しくは非置換の1価の炭化水素基を表し、R2、R3及びR4は、R1又は-Hを表し、R2、R3及びR4の少なくとも2つは、-Hを表し、x及びyは、各単位の数を示す整数であり、各単位は、ブロックあるいはランダムに配置されており、ランダムが好ましく、xは、0以上の整数であるが15~40が好ましく、yは、0以上の整数であるが3以上12以下が好ましい。x+yは、18以上300以下の整数であるが30以上200以下が好ましい。また、y/(x+y)≦0.1の範囲が好ましく、この範囲を超えると架橋点が多くなり、本実施形態の衝撃吸収層は得られない。
【0096】
R1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、或いは、これらの水素原子が部分的に塩素原子、フッ素原子などで置換されたハロゲン化炭化水素などが挙げられる。ケイ素原子に直接結合した水素(Si-H)は、ケイ素原子に直接または間接的に結合したアルケニル基と付加反応(ハイドロシリル反応)を行うために必要であり、オルガノハイドロジェンポリシロキサン分子中にすくなくとも2個必要であり、ケイ素原子に直接結合した水素の数が少ないと架橋点の数が少なすぎ、シリコーンゲルを形成することができず、シリコーンオイルの性質と変わらなくなり望ましくなく、ケイ素原子に直接結合した水素の数が多すぎると架橋点の数が多過ぎ、シリコーンゴムの性質と変わらなくなり好ましくない。
【0097】
また、本実施形態に係る架橋シリコーンゲルを製造する際に用いられるもう1つの原料であるアルケニルポリシロキサンは、下記の一般式(2)で表されるものが好ましい。
【0098】
【0099】
式中、R1は、同一又は異種の置換もしくは非置換の1価の炭化水素基を表し、R5、R6及びR7は、R1又はアルケニル基を表し、R5、R6及びR7の少なくとも2つはアルケニル基を表し、s及びtは、各単位の数を示す整数であり、各単位はブロックあるいはランダムに配置されており、ランダムが好ましく、sは、0以上の整数を表し、tは、0以上の整数を表し、s+tは、10~600の整数であり、かつt/(s+t)≦0.1ある。また、t/(s+t)≦0.1の範囲が好ましく、この範囲を超えると架橋点が多くなり、本実施形態の光学用透明粘着体は得られない。
【0100】
R1の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基等のアラルキル基、或いはこれらの水素原子が部分的に塩素原子、フッ素原子などで置換されたハロゲン化炭化水素などが挙げられる。
【0101】
ケイ素原子に直接または間接的に結合したアルケニル基(ビニル基、アリル基等)は、ケイ素原子に直接結合した水素(Si-H)と付加反応(ハイドロシリル反応)を行うために必要であり、アルケニルポリシロキサン分子中にすくなくとも2個必要であり、アルケニル基の数が少ないと架橋点の数が少なすぎ、シリコーンゲルを形成することができず、シリコーンオイルの性質と変わらなくなり、望ましくなく、アルケニル基の数が多すぎると、架橋点の数が多過ぎシリコーンゴムの性質と変わらなくなり好ましくない。一般式(1)で表されるハイドロジエンポリシロキサンは、珪素原子に直結した-H(水素基)を有しており、一般式(2)で表されているアルケニルポリシロキサンは、炭素-炭素二重結合を有しているので、炭素-炭素二重結合と-H(水素基)が付加反応をおこすが、これをハイドロシリル化反応という。そして、一般式(1)で表されるハイドロジェンポリシロキサンは、珪素原子に直結した-H(水素基)と一般式(2)で表されているアルケニルポリシロキサンのアルケニル基との当量比を調整することによって、シリコーン組成物の硬度や緩衝性能を調整することができる。
【0102】
上記ハイドロシリル化反応は、公知の技術を用いて行うことができる。すなわち、この反応は、エタノール、イソプロピルアルコール等のアルコール系、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系、ジオキサン、THF等のエーテル系、脂肪族炭化水素系、塩素化炭化水素系の有機溶剤中又は無溶媒で行われる。また、反応温度は、通常50℃以上150℃以下であり、塩化白金酸、塩化白金酸とアルコールより得られる錯体、白金-オレフィン錯体、白金-ビニルシロキサン錯体、白金-リン錯体等の触媒を用い反応させることができる。触媒の使用量は、アルケニルポリシロキサンに対して、白金原子として通常1ppm以上500ppm以下であり、硬化性及び硬化後の製品の物理的特性を考慮して、3ppm以上250ppm以下が好ましい。
【0103】
前記シリコーンゲルは、表面の非架橋官能基に由来する粘着性を有するが、例えば、MQレジン型の粘着付与成分を配合したものや、非反応性の粘着成分の添加や、非架橋官能基の側鎖の長さや末端官能基の種類などを調整して、粘着性を発現させるなど、公知の粘着性付与方法を適用されたものも、用いることができる。
【0104】
(顔料)
顔料3は、主に、衝撃吸収層10~13に遮光性を付与するために粘着剤組成物に含有される。すなわち、衝撃吸収層10~13は、顔料3により所望の遮光性が得られる。
【0105】
顔料3は、電気的な絶縁性を有する。本開示において、電気的な絶縁性とは、電気抵抗値が大きく電気を通しにくい機能をいう。顔料3の抵抗率(体積低効率)は1×105Ω・cm以上1×1019Ω・cm以下の範囲とすることが好ましく、これにより、衝撃吸収層10~13の電気的な絶縁性が得やすくなる。顔料3の抵抗率は1×1011Ω・cm以上1×1019Ω・cm以下の範囲とすることが、より好ましく、1×1015Ω・cm以上1×1019Ω・cm以下の範囲とすることが、さらに好ましい。
【0106】
顔料3の抵抗率は、一例として、三菱化学社製の低抵抗率計ロレスタ-GP(型式:UV-3101PC)を用いて、四端子四探針法により測定される。この四端子四探針法とは、試料(圧粉体)の表面に4本の針状電極を所定の間隔をあけて一直線上に置き、外側の2本の針状電極間に一定の電流を流し、内側の2本の針状電極間に生じる電位差を測定することにより体積抵抗率を求める方法である。
【0107】
顔料3は、無機材料を含んでいる。本開示において、無機材料は、絶縁性を有する酸化物、窒化物及びセラミックなどが例示される。具体的には、顔料3は、チタン、鉄、亜鉛、酸化チタン、窒化チタン、アルミナから選ばれる少なくとも一種の元素を含む酸化物または窒化物が使用可能である。無機材料を含む顔料3は脱色しにくく性状が安定しており、これにより、衝撃吸収層10~13の遮光性が低下しにくくなる。
【0108】
顔料3は、黒色であることが好ましい。本開示において、黒色とはCIE 1976 L*a*b*色空間(測定用光源C:色温度6774K)を用いた座標において0≦L*≦14、6≦a*≦8、-10≦b*≦-5の範囲であることが好ましい。最も好ましい実施形態はL*が1.26、 a*が6.9、b*が-8.12である。顔料3は、例えば、カラーコードが#0d0015の漆黒である。顔料3が黒色であれば、衝撃吸収層10~13の所望の遮光性が得られる。
【0109】
顔料3は、粒子である。顔料3はほぼ球形であるが、様々な形状を有している。顔料3は、平均一次粒子径が10nm以上300nm以下の範囲であることが好ましい。これにより、顔料3は、粘着剤組成物2中に均一に分散させやすくなる。ここで、均一とは、単位体積あたりの衝撃吸収層10~13を構成する組成がほぼ同じであることをいう。顔料3は、平均一次粒子径が10nm以上150nm以下の範囲であることがより好ましく、10nm以上100nm以下の範囲であることがさらに好ましい。
【0110】
なお、本開示において、平均一次粒子径は、次の方法で特定される。粘着剤組成物に含まれる、顔料の粒子を透過型電子顕微鏡(TEM)、走査透過型電子顕微鏡(STEM)または走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて倍率5000倍以上にて観察する。TEMまたはSTEMで得られた像又はSEMで観察された粒子における、凝集体を形成していない顔料の粒子を、一次粒子とみなす。この一次粒子の長径を、一次粒子径とみなす。百個の一次粒子について、一次粒子径を測定する。一次粒子径の個数基準の算術平均値を算出した結果を、平均一次粒子径とする。
【0111】
衝撃吸収層10~13における顔料3の含有量は、粘着剤組成物2の100質量部に対して、2.5質量部以上80質量部以下の範囲である。顔料3の含有量がこの範囲であれば、粘着剤組成物2の粘着性及び応力緩和性を損なわずに、衝撃吸収層10~13の遮光性が得やすくなる。顔料3の含有量は、粘着剤組成物2の100質量部に対して、5質量部以上40質量部以下であることがより好ましく、10質量部以上35質量部以下の範囲であることが、さらに好ましい。
【0112】
また顔料3は、粘着剤組成物2中への分散性を向上させるためにシリコーン系処理剤で表面処理をされたものが好ましい。
【0113】
顔料3は、チタン酸窒化物(酸窒化チタン)が好ましい。チタン酸窒化物は、窒素の含有量が多く、一般式TiOxNyにおいて、x=0.05以上0.50以下、y=0.6以上1.0以下の組成を有する。酸素量xが0.05より少ないと絶縁性が不十分となりやすく、0.50より多いと遮光性が低下しやすいので好ましくない。窒素量yが0.60より少ないと遮光性が低下しやすく、1.0より多いと絶縁性が不足しやすいので、好ましくない。顔料3により衝撃吸収層(11、12、13)に遮光性を付与することができ、衝撃吸収層(11、12、13)の他に遮光のための他の層を備える必要がなくなって、本発明に係る衝撃吸収積層体100、101の薄型化を図ることができる、という利点がある。
【0114】
(液体封入カプセル)
液体封入カプセル4は、主に、衝撃吸収層10~13の応力緩和及び熱的緩和の機能を付与するものである。液体封入カプセル4は、シェル(外殻)の内部に液体を封入して形成されている。シェルは、ゴム弾性樹脂を含んでいる。すなわち、シェルは弾性を有し、熱や応力がかかることで、粒径や形状が変化すること可能である。液体は、融点が-60℃以下で、沸点が180℃以上である。すなわち、液体は大気圧下の常温では固体や気体には相転移しにくい。
【0115】
液体封入カプセル4は、圧力や熱によって内部の液体がシェル内で気化膨張し、加わった圧力もしくは熱が除かれたときに元に戻る物性を有する。したがって、衝撃吸収層10~13に圧力又は熱が加わると、その圧力又は熱が粘着剤組成物2を介して液体封入カプセル4に伝わり、内部の液体がシェル内で気化膨張する。これにより、圧力又は熱が衝撃吸収層10~13に吸収されて外部へと伝達されるのが低減される。すなわち、衝撃吸収層10~13は圧力及び熱的衝撃を吸収する。
【0116】
液体封入カプセル4は、具体例には、シェルが合成樹脂製で中空の球形に形成され、液体が炭化水素系発泡剤で形成される。液体封入カプセル4としては、炭化水素系(イソブタン)発泡剤を内包し、メチルメタクリレート-アクリロニトリル共重合体でシェルを構成した真円の熱膨張性微小球であって、重量平均粒径が約15μm、真比重が約1.1、膨張開始温度が90℃以上115℃以下、最大膨張温度が約140℃であるものが例示される。また、液体封入カプセル4としては、炭化水素系(イソペンタン)発泡剤(膨張剤)を内包し、メチルメタクリレート-アクリロニトリル-メタクリロニトリル共重合体でシェルを構成した真円の熱膨張性微小球であって、重量平均粒径が約10μm以上40μm以下、真比重が約1.2、膨張開始温度が約120℃、最大膨張温度が約190℃であるものが例示される。一例として、塩化ビニリデンとアクリロニトリルの共重合体からなる微小中空体である日本フィライト社製の「エクスパンセル(登録商標)551DE40d42」(平均粒子径:30~50μm、密度が42kg/m3)等が挙げられる。
【0117】
(放熱微粒子)
放熱微粒子5は、主に、衝撃吸収層10~13に放熱性を付与するために含有され、例えば、水酸化アルミニウム、酸化マグネシウム、無水炭酸マグネシウム、アルミナ、シリカ、窒化アルミニウム、窒化ホウ素のような無機材料が使用できる。なお、放熱性は、衝撃吸収層10~13の熱伝導率の測定によって評価することができる。
【0118】
放熱微粒子の添加によって、衝撃吸収層10~13の硬度や粘弾性特性が変化するので、放熱微粒子5の粒子径や含有量は、所望の衝撃吸収層10~13の遮光性と衝撃緩衝性が得られる範囲で適宜設定すればよい。衝撃吸収層10~13の放熱性は、衝撃吸収層10~13の熱伝導率を測定することによって、評価することができる。
【0119】
(衝撃吸収層の製造方法)
本実施形態の衝撃吸収層10~13は、任意の適切な製造方法によって製造し得る。衝撃吸収層10~13は、目的に適した粘着剤組成物2を調製し、押出成形法などの成形方法で成形し、この後、粘着剤組成物2を乾燥及び硬化することにより製造される。衝撃吸収層11は、粘着剤組成物2と顔料3とを混合及び混練し、押出成形法などの成形方法で成形し、この後、粘着剤組成物2を乾燥及び硬化することにより製造される。衝撃吸収層12は、粘着剤組成物2と顔料3と放熱微粒子5とを混合及び混練し、押出成形法などの成形方法で成形し、この後、粘着剤組成物2を乾燥及び硬化することにより製造される。衝撃吸収層13は、粘着剤組成物2と顔料3と液体封入カプセル4と放熱微粒子5とを混合及び混練し、押出成形法などの成形方法で成形し、この後、粘着剤組成物2を乾燥及び硬化することにより製造される。
【0120】
また、例えば、衝撃吸収層10~13を構成しうる材料である粘着剤組成物を、剥離処理を施した剥離ライナー上に塗布したのちに、熱拡散層と貼合する方法が挙げられる。この場合の塗布の方法としては、例えば、ロールコート、グラビアコート、リバースコート、ロールブラッシュ、スプレーコート、エアーナイフコート法、ダイコーターなどによる押出しコートなどが挙げられる。また粘着剤組成物を適宜の溶剤で希釈しても良い。
【0121】
(衝撃吸収層の物性)
衝撃吸収層10~13は、ガラス板に対する粘着力が1N/20mm以上である。この粘着力は以下のようにして測定される。JIS Z0237「粘着テープ・粘着シート試験方法」に準拠した粘着力試験における90度引きはがしの剥離強度を粘着力とし、90度ピール試験機で引張り速度300mm/minの速さにて衝撃吸収層とガラス板との粘着力を測定した。粘着力評価用の試験試料は、
図5に模式的に示すように、衝撃吸収層10~13の一方の表面にガラス板300を貼合し、次いで、他方の面(裏面)に樹脂フィルム(ユニチカ社製PET、エンブレット)301を、プライマー(信越化学工業製 プライマーA)302を介して貼合することによって作製した。前記貼合条件は、2kgのローラーで1往復とし、その後23℃で24時間放置した。また、ガラス板300は、厚さ1mmのソーダガラス製のガラス板(平岡ガラス社製)とした。
【0122】
衝撃吸収層10~13は、ガラス板に対する粘着力が1N/20mm以上であるため、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示パネルを構成するガラス板に貼り付けやすく、容易に脱落しないように接着される。また衝撃吸収層10~13は、表示パネルへの貼り直し(リワーク)など、作業性の観点から、衝撃吸収層10~13のガラス板に対する粘着力は1N/20mm以上10N/20mm以下であることが好ましく、2N/20mm以上25N/20mm以下であることがより好ましい。
【0123】
衝撃吸収層10~13は、波長が300nm以上850nm以下の光の透過率が0.1%以下である。この透過率は、JIS K 7136に準拠し、分光光度計等を用いて測定される。分光光度計としては、分光光度計U-4100(株式会社日立ハイテクノロジーズ製)等が挙げられる。
【0124】
衝撃吸収層10~13の光の透過率は低いほうが好ましいので、その下限は0%である。
【0125】
衝撃吸収層10~13は、JIS K 2207に準拠した25℃における針入度が30以上120以下である。衝撃吸収層10~13の針入度が30未満であると、衝撃吸収層10~13が硬質すぎて、曲げたり伸ばしたりしにくくなり、柔軟な変形に対応しにくくなる。衝撃吸収層10~13の針入度が120より大きいと、衝撃吸収層10~13が軟質すぎて、他部材への貼り付けしにくくなるなどの取扱性が低下する。衝撃吸収層10~13の上記条件の針入度が35以上120以下の範囲であることが、より好ましく、50以上110以下の範囲であることが、さらに好ましい。
【0126】
衝撃吸収層10~13は、衝撃吸収率が20%以上である。この衝撃吸収率は以下のようにして測定される。神栄テストマシナリー製の振子式衝撃試験装置PST-300を用いてJIS C 60068-2-27に準拠する形で衝撃加速度を測定したうえで、次の式により衝撃吸収率を算出した。
【0127】
衝撃吸収率(%)=((1-衝撃吸収層がある場合の衝撃加速度)÷(衝撃吸収層がない場合の衝撃加速度))×100
衝撃加速度を測定するための試験片は、厚みtが1.0mmのポリカーボネートの板(PC板)に衝撃吸収層10~13を貼り合わせ、さらにその上にΦ20mm(=直径20mm)、厚みtが4mmの金属円柱を貼り合わせて作製した。
【0128】
衝撃吸収層10~13の衝撃吸収率は高いほうが好ましいので、その上限は100%であるが、現状で得られる衝撃吸収層10~13の衝撃吸収率の上限は85%であり、少なくとも80%である。
【0129】
衝撃吸収層10~13の厚みは40μm以上450μm以下であることが、好ましい。衝撃吸収層10~13の厚みは100μm以上400μm以下であることが、より好ましい。
【0130】
衝撃吸収層10~13は、例えば、表示パネルの遮光及び衝撃吸収のために使用されることが好ましい。これにより、表示パネルは衝撃吸収層10~13により衝撃から保護されやすい。また表示パネルは衝撃吸収層10~13により遮光されて表示が鮮明になりやすい。表示パネルは、液晶パネルや有機ELパネルなどである。
【0131】
衝撃吸収層10~13は、単層からなることが好ましい。すなわち、衝撃吸収層10~13は、他の層と積層されずに、一層で、粘着性、遮光性及び衝撃吸収性を有することが好ましい。これにより、衝撃吸収層10~13は薄く形成しやすい。粘着性とは、他の部材と粘着することが可能な機能をいう。衝撃吸収層10~13の粘着性は、ガラス板に対する粘着力で規定される。また遮光性とは、光を遮ることが可能な機能をいう。衝撃吸収層10~13は、波長が300nm以上850nm以下の光の透過率で規定される。衝撃吸収性とは、衝撃を吸収できる機能をいう。衝撃吸収層10~13の衝撃吸収性は、衝撃吸収率で規定される。
【0132】
衝撃吸収層10~13は、表示パネルの表面に配置された状態で使用される。すなわち、衝撃吸収層10~13は、フラットパネルディスプレイなどに使用されている液晶パネルなどの表示パネルの表面に積層されて用いられる。衝撃吸収層10~13は、表示パネルの表面に配置された状態で、熱及び紫外線によるポストキュアを必要としない。ここで、ポストキュアとは、製造工程の最終段階での硬化工程を意味する。したがって、衝撃吸収層10~13は、表示パネルの表面に配置した状態で、熱及び紫外線により最終的に硬化させる工程を必要としない。すなわち、衝撃吸収層10~13は、熱及び紫外線によるポストキュアを行わなくても、表示パネルの表面に粘着可能である。したがって、衝撃吸収層10~13は、表示パネルが熱及び紫外線による悪影響を受けることを少なくして、粘着が可能である。
【0133】
衝撃吸収層10~13は、常温保管が可能である。すなわち、衝撃吸収層10~13は、低温にすることなく、長期間にわたって性状をほとんど変化させることなく、保管が可能である。ここで、常温とは25℃のことをいう。また衝撃吸収層10~13は、常温で、粘着性、遮光性、針入度及び衝撃吸収性をほとんど変化させないで6か月間保管が可能である。
【0134】
[熱拡散層]
熱拡散層20は、主に、衝撃吸収積層体100、101の熱拡散性を向上させるために設けられる。すなわち、衝撃吸収積層体100、101は、熱拡散層20により熱拡散性が向上して放熱しやすくなる。
【0135】
熱拡散層20は、熱伝導性のよい材料で形成され、例えば、グラファイトを含んで形成される。グラファイトは、炭素原子の結合の形状が六角形の板状結晶のグラフェン(α黒鉛構造)が層状に重なって形成されている。したがって、熱拡散層20は厚み方向よりも面方向(XY方向)に熱が伝わりやすく、面方向に沿って熱が拡散されやすい。熱拡散層20はグラファイトを含むシート材を衝撃吸収層10の表面に接触させて貼り付けることによって形成することができる。すなわち、熱拡散層20を衝撃吸収層10~13の表面に配置するにあたっては、別途、粘着層を必要としない。したがって、衝撃吸収層10~13から直接熱が伝導しやすくなって、衝撃吸収積層体100、101の放熱性が向上し、また衝撃吸収積層体100、101が厚くなりにくく薄型化が図れる。
【0136】
また熱拡散層20は炭素繊維シートを含んでいてもよい。炭素繊維シートは炭素繊維を含むシートである。すなわち、炭素繊維のみで形成されるシートであってもよいし、炭素繊維と他の材料(例えば、炭素繊維以外の繊維又は樹脂など)との複合シートであってもよい。
【0137】
炭素繊維シートは、形成方法により厚み、形状及び性状などが異なる。炭素繊維シートは樹脂を含浸させない形成方法で作製することができ、この場合、例えば、炭素繊維シートは炭素繊維を平織、綾織及びすだれなどの形成方法で作製することができる。また、炭素繊維シートは樹脂を含浸させる形成方法で作製することができ、この場合、例えば、炭素繊維シートはUDテープ又はプリプレグなどとして作製することができる。
【0138】
具体的には、例えば、次の品番の炭素繊維シートが使用可能である。平織炭素繊維シート:CAST製 品番CF/03MP/1M。炭素繊維UDシート:CAST製 品番CF/UD/W320/10M。スダレ炭素繊維シート:CAST製 品番 CF/15KUD200G/1M。
【0139】
熱拡散層20として炭素繊維シートを使用すると、本実施形態に係る衝撃吸収積層体100、101は折り畳み可能に形成しやすい。すなわち、熱拡散層20として炭素繊維シートを使用すると、本実施形態に係る衝撃吸収積層体100、101はフォルダブルに形成しやすい。したがって、本実施形態に係る衝撃吸収積層体100、101は、例えば、折り畳み可能な表示パネルに適用可能である。
【0140】
熱拡散層20として炭素繊維シートを使用すると、衝撃吸収積層体100、101は折り畳み可能に形成しやすくなる理由は以下の通りである。
【0141】
衝撃吸収積層体を折り畳む場合には、各層に対して、曲げ応力が発生する。たとえば、熱拡散層20にグラファイトシートを使用した場合には、グラファイトシート中のグラファイト結晶間の結合力が曲げ応力に対して低いため、衝撃吸収積層体における層間破壊による破壊や、折れ及びしわなどの外観不良が発生する。一方で、熱拡散層20に炭素繊維シートを使用した場合は、炭素繊維シートは柔軟かつ機械的強度が高い炭素繊維を平布上に配列し、編み込みや織り込みにより、曲げ応力に耐えられる共に、折れやしわの発生が抑えられるので、衝撃吸収積層体を折り畳み可能に形成しやすくなる。
【0142】
なお、本開示において「折り畳み可能」とは、衝撃吸収積層体100、101を180°で折り曲げても破損が生じず、性能の低下が生じないことをいう。
【0143】
熱拡散層20の熱伝導率は、200W/(m・K)以上3000W/(m・K)以下の範囲であることが好ましい。熱拡散層20の熱伝導率がこの範囲であれば、衝撃吸収積層体100、101の所望の放熱性が得やすい。熱拡散層20の熱伝導率は、500W/(m・K)以上3000W/(m・K)以下の範囲であることが、より好ましい。
【0144】
熱拡散層20の厚みは、1μm以上100μm以下の範囲であることが好ましく、2μm以上50μm以下の範囲であることがより好ましく、5μm以上40μm以下の範囲であることがさらに好ましい。熱拡散層20の厚みがこの範囲であれば、衝撃吸収積層体100、101の所望の放熱性が得やすく、また耐屈曲性や薄型化が損なわれにくい。
【0145】
[シールド層]
シールド層40は、主に、衝撃吸収積層体100、101の電磁波遮蔽性を向上させるために設けられる。すなわち、衝撃吸収積層体100、101は、シールド層40により電磁波遮蔽性が向上してシールドしやすくなる。
【0146】
シールド層40は、衝撃吸収積層体100、101の外部から照射される電磁波を、反射損失や吸収損失などを利用して通過しにくくし、他の部材(例えば、表示パネル)に電磁波が到達しにくくするものである。このため、シールド層40は導電性のよい金属を含んで形成することが好ましく、例えば、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、金、銀およびこれらの合金で形成される。
【0147】
シールド層40は、例えば、金属箔や金属メッシュを接着層30で熱拡散層20の表面に接着して設けることができる。またシールド層40は、例えば、金属メッキ、蒸着、スパッタリング、導電性塗料などで形成することができるが、この場合、接着層30を設けずに、熱拡散層20の表面に直接シールド層40を形成してもよい。接着層30を設けない場合は衝撃吸収積層体100、101の厚みをさらに薄くすることができる。
【0148】
シールド層40は、電解法又は圧延法により得られる金属箔を含んでいることが好ましい。金属箔が銅箔の場合、電解銅箔である「福田金属箔紛製 CFシリーズ」又は圧延銅箔である「JX金属製 TPCシリーズ、HA-V2シリーズ」などが使用可能である。
【0149】
またシールド層40は、導電布を含んでいてもよい。導電布は、ポリエステル織布もしくはポリエステル不織布へ金属めっきを施して形成される。導電布は、例えば、金属メッシュと併用することができる。導電布の一種である導電不織布としては「セーレン製 品番Si-80-301」が使用可能である。また導電布の一種である導電織布としては「セーレン製 品番Si-80-301」が使用可能である。
【0150】
シールド層40のシールド性能は、1MHz以上1GHz以下の範囲内で40dB以上110dBの範囲であることが好ましい。シールド層40のシールド性能がこの範囲であれば、衝撃吸収積層体100、101の所望の電磁波遮蔽性が得やすい。シールド層40のシールド性能は、1MHz以上1GHz以下の範囲内で40dB以上110dB以下の範囲であることが好ましく、1GHz以上10GHz以下の範囲内で80dB以上110dB以下の範囲であることがより好ましい。
【0151】
シールド層40の厚みは、0.5μm以上50μm以下の範囲であることが好ましい。シールド層40の厚みがこの範囲であれば、衝撃吸収積層体100、101の所望の電磁波遮蔽性が得やすく、また耐屈曲性や薄型化が損なわれにくい。シールド層40の厚みは、0.5μm以上35μm以下の範囲であることが、より好ましく、0.5μm以上5μm以下の範囲であることが、さらに好ましい。
【0152】
[接着層]
接着層30は、シールド層40を熱拡散層20に接着するための機能を有する。すなわち、シールド層40は接着層30により熱拡散層20の表面に接着されて設けられる。
【0153】
接着層30は高い熱伝導性及び低い弾性を有することが好ましい。接着層30が高い熱伝導性を有すると、熱拡散層20からシールド層40に熱が伝わりやすくなって、衝撃吸収積層体100、101の放熱性が向上する。また接着層30が低い弾性を有すると、衝撃吸収積層体100、101の耐屈曲性が向上する。
【0154】
接着層30の熱伝導率は、200W/(m・K)以上3000W/(m・K)以下の範囲であることが好ましい。接着層30の熱伝導率がこの範囲であれば、衝撃吸収積層体100、101の所望の放熱性が得やすい。接着層30の熱伝導率は、500W/(m・K)以上3000W/(m・K)以下の範囲であることが、より好ましい。
【0155】
接着層30の弾性は、25℃から100℃の間の貯蔵弾性率が、103Pa以上105Pa以下の範囲で、かつ、tanδが10―2以上1以下の範囲であることが好ましい。接着層30の貯蔵弾性率がこの範囲であれば、衝撃吸収積層体100、101の所望の耐屈曲性が得やすい。接着層30の25℃から100℃の間の貯蔵弾性率は、104以上105以下の範囲であることが、より好ましい。接着層30は、例えば、EPO-TEKシリーズの品番T7109-19(Epoxy Technology製)のようなエポキシ系接着剤、又はThreeBond3955(スリーボンド製)のようなアクリル系接着剤で形成することができる。
【0156】
図3に示すように、接着層30は、エポキシ樹脂31と、硬化剤32、グラフェン接着構造33と、放熱微粒子34とを含むことが好ましい。
【0157】
エポキシ樹脂31としては、接着層30の耐クラック性の向上のために、強靭性を有するものが好ましく、例えば、以下の表1に示すものが好ましい。
【0158】
【0159】
さらに、エポキシ樹脂31としては、柔軟性(低い弾性)を有するものが好ましい。したがって、上記表1に中でも、No.3~8のエポキシ樹脂を使用するのが好ましい。これら柔軟性を有するエポキシ樹脂を使用することで、接着層30の耐屈曲性が向上する。柔軟性を有するエポキシ樹脂とは、引っ張り伸び率が好ましくは10%以上150%以下、より好ましくは15%以上150%以下、さらに好ましくは20%以上180%以下であるエポキシ樹脂であり、引っ張り弾性率が好ましくは、3000MPa未満、より好ましくは、2800MPa未満、さらに好ましくは、2500MPa未満であるエポキシ樹脂であり、曲げ弾性率が好ましくは、2000MPa未満、より好ましくは、1800MPa未満、さらに好ましくは、1500MPa未満であるエポキシ樹脂である。
【0160】
エポキシ樹脂の柔軟性は、柔軟性構造部(表1の両矢印の部分)の主鎖原子数の数と、エポキシ樹脂の剛直構造(ベンゼン環が炭素原子を介して接続されている部分)の数とによって、変化する。したがって、柔軟性構造部と剛直構造との数を検討することによって、引裂強度などの所望の性能をえるようにする。
【0161】
なお、柔軟性構造部は、以下の一般式(3)又は(4)の構造を有している。
【0162】
【0163】
式(3)中、R1及びR2は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、mは、2以上15以下の整数を示す。
【0164】
【0165】
式(4)中、R3及びR4は、それぞれ独立して、水素原子又はアルキル基を示し、nは、2以上15以下の整数を示す。
【0166】
硬化剤32はエポキシ樹脂31を反応させて硬化させるものである。具体的には、硬化剤32は種々のカチオン硬化剤及びアニオン硬化剤が使用可能である。硬化剤32は、エポキシ樹脂31と同様に、柔軟性があることが好ましい。これにより、接着層30の耐屈曲性が向上する。柔軟性のある硬化剤としては、例えば、サンアプロ株式会社製の、CPI-100P、CPI-101A、CPI-200K、株式会社アデカ製のSP-170、和光純薬工業株式会社製の、B2380、C1390、D2238、D2960、I0591、M1209、N0137、T1608等が使用可能である。
【0167】
グラフェン接着構造33は、熱拡散層20に含まれているグラフェンとの接着性を向上させるために含まれている。グラフェン接着構造33とは、構造にグラフェンと類似の構造を有する分子のことであり、例えば、大阪ガスケミカル株式会社製の、OGSOL PG-100や、OGSOL EG-200等が使用可能である。
【0168】
放熱微粒子34は、上記放熱微粒子5と同様である。
【0169】
[衝撃吸収積層体の使用]
本実施形態に係る衝撃吸収積層体100、101は、他の部材に貼り付けて使用される。この場合、衝撃吸収層10~13は粘着性を有しているので、他の部材の表面に衝撃吸収層10~13の表面を接触させて貼り付けることが可能である。ただし、他の部材へ衝撃吸収積層体100、101を強固に貼り付けたい場合は、接着剤や粘着剤を併用してもよい。
【0170】
他の部材としては、衝撃が加わると破損しやすい部材であり、
図4に示すように、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示パネル300が例示される。本開示における表示装置400は、衝撃吸収積層体100、101は表示パネル300の裏面(文字や画像が表示される側と反対側の面、すなわち、表示パネル300の非表示側の表面)に接触して貼り付けられる。表示パネルとしては、フレキシブル有機液晶ディスプレイ(OLCD)、電子ペーパー(E Paper)、有機ELディスプレイ(OLED)、量子ドットディスプレイ(QLED)、マイクロLEDディスプレイ(μLED)が例示される。
【0171】
本実施形態に係る衝撃吸収積層体100、101は、従来技術よりも、薄く柔軟な可撓性をもち、軽量で折り畳むなどの機能を有し、遮光性、放熱性、電磁波遮蔽性も有する。よって、液晶パネルや有機ELパネルなどの表示パネル300に貼り付けた場合に、使用時は大画面でありながら、持ち運ぶときなどは折りたたんで小型になるというような光学表示セルを得ることも可能となる。
【実施例】
【0172】
(実施例1)
ポリジオルガノシロキサン(両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、分子鎖にSi原子に結合したアルケニル基を含有した分子量(MW)約660,000のジメチルポリシロキサン)を40重量部、ポリオルガノシロキサン((CH3)3SiO1/2単位(M単位)、SiO4/2単位(Q単位)からなり、分子量(MW)約8,000でM単位/Q単位のモル比が0.75の、室温でゴム状であるポリシロキサン)を60重量部、ポリオルガノ水素シロキサン(両末端がトリメチルシロキシ基で封鎖され、分子鎖にSi原子に結合した水素基を含有した分子量(MW)約1,600のジメチル水素ポリシロキサン)を0.4重量部、反応抑制剤(1-エチニルシクロヘキサノール)を0.3重量部、付加反応に必要な硬化触媒(白金―ビニルダイマー錯体(Pt:2%wt))を0.15重量部、イソシアヌル酸誘導体(イソシアヌル酸トリス[3-(トリメトキシシリル)プロピル])を1.0重量部混合し、この混合物をトルエン51重量部で希釈して、塗布用の混合物を得た。この混合物には、粘着剤組成物の原料と、顔料及び放熱微粒子が含まれている。
【0173】
この塗布用の混合物を、剥離フィルム(商品名「MRF#38」、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理された面上に、硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、次いで、熱拡散層であるグラファイトシート(ガードネック社製、品番:GD-25、厚み25μm)を貼り合わせたうえで、130℃、3分の条件で加熱硬化させて中間積層物を得た。この中間積層物における上記混合物の硬化・乾燥物が衝撃吸収層として形成され、この衝撃吸収層には粘着剤組成物(硬化物)が含まれている。この中間積層物のグラファイトシート側に、液状接着剤(エポキシテクノロジー社製EPO-TEKシリーズ(登録商標)の品番T7109-19(Epoxy Technology製)を厚みが25μmとなるように全面塗布して、シールド層として銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製電磁波シールド用電解銅箔CF)を貼り合わせて、室温下で24時間以上静置することで衝撃吸収積層体を得た(銅箔を除く、衝撃吸収積層体の厚みの総計:150μm)。
【0174】
実施例1の組成を表2に示す。
【0175】
【0176】
(実施例2)
信越化学工業株式会社製の2液付加反応型シリコーンゲル(型式:X32-3443)を用いて、剥離フィルム(商品名「MRF#38」、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理された面上に、硬化後の厚さが100μmとなるように塗布し、次いで、熱拡散層であるグラファイトシート(ガードネック社製、品番:GD-25、厚み25μm)を貼り合わせたうえで、130℃、3分の条件で加熱硬化させて中間積層物を得た。この中間積層物における上記2液付加反応型シリコーンゲルの硬化・乾燥物が衝撃吸収層として形成され、この衝撃吸収層には粘着剤組成物(2液付加反応型シリコーンゲルの硬化物)が含まれている。この中間積層物のグラファイトシート側に、液状接着剤(エポキシテクノロジー社製品番EPO-TEK(登録商標)T7109-19)を厚みが25μmとなるように全面塗布して、電磁波遮蔽層として銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製 電磁波シールド用電解銅箔CF)を貼り合わせて、室温化で24時間以上静置することで衝撃吸収積層体を得た(銅箔を除く、衝撃吸収積層体の厚みの総計:150μm)。
【0177】
(実施例3)
ジシクロペンタニルアクリレート(DCPMA、メタクリル酸ジシクロペンタニル)を60重量部、メチルメタクリレート(MMA、メタクリル酸メチル)を40重量部、連鎖移動剤(α-チオグリセロール)を3.5重量部、及び重合溶媒(トルエン)を100重量部で、4つ口フラスコに投入し、これらを窒素雰囲気下において70℃で1時間撹拌した。次に、重合開始剤(2,2´-アゾビスイソブチロニトリル)を0.2重量部投入し、70℃で2時間反応させ、続いて、80℃で2時間反応させた。その後、反応液を130℃温度雰囲気下に投入し、トルエン、連鎖移動剤及び未反応モノマーを乾燥除去させ、固形状のアクリル系ポリマーを作成した。このポリマーの重量平均分子量(Mw)の目標値は5.1×103とした。
【0178】
次に、アクリル酸2-エチルヘキシル(2EHA)を68重量部、N-ビニル-2-ピロリドン(NVP)を14.5重量部、及びアクリル酸2-ヒドロキシエチル(HEA)を17.5重量部混合したモノマー混合物に、光重合開始剤A(商品名「イルガキュア184」、BASF社製)を0.035重量部、及び光重合開始剤B(商品名「イルガキュア651」、BASF社製)を0.035重量部で配合した後、粘度(計測条件:BH粘度計No.5ローター、10rpm、測定温度30℃)が20±3Pa・sになるまで紫外線を照射して、上記モノマー成分の一部が重合したプレポリマー組成物を作成した。
【0179】
この、プレポリマー組成物100重量部に、上記アクリル系ポリマーを5重量部、ヘキサンジオールジアクリレート(HDDA)を0.15重量部、シランカップリング剤(商品名「KBM-403」、信越化学工業株式会社製)を0.3重量部添加して混合し、混合物を得た。
【0180】
この混合物を、剥離フィルム(商品名「MRF#38」、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理された面上に、粘着剤層形成後の厚さが100μmとなるように塗布し、次いで、熱拡散層であるグラファイトシート(ガードネック社製、品番:GD-25、厚み25μm)を貼り合わせた。その後、照度:5mW/cm2、光量:1500mJ/cm2の条件で紫外線照射を行い、樹脂を光硬化させて、中間積層物を得た。この中間積層物における上記樹脂の硬化・乾燥物が衝撃吸収層として形成され、この衝撃吸収層には粘着剤組成物(樹脂の硬化物)が含まれている。この中間積層物のグラファイトシート側に、液状接着剤(エポキシテクノロジー社製品番EPO-TEK(登録商標)T7109-19)を厚みが25μmとなるように全面塗布して、電磁波遮蔽層として銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製電磁波シールド用電解銅箔CF)を貼り合わせて、室温化で24時間以上静置することで衝撃吸収積層体を得た(銅箔を除く、衝撃吸収積層体の厚みの総計:150μm)。
【0181】
実施例3の組成を表3に示す。
【0182】
【0183】
(実施例4)
衝撃吸収層のベースポリマーとして、ポリオールA(プレミノールS4011(ポリプロピレングリコール、数平均分子量10,000;旭硝子(株)))を86.5重量部、ポリオールB(エクセノール410NE(ペンタエリスリトールのアルコキシド付加物、数平均分子量550;旭硝子(株)))を0.5重量部、モノオール(プレミノールS1004F(ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、数平均分子量3,500;旭硝子(株)))を8重量部、ロジンジオール(パインクリスタルD6011(ロジン含有ジオール;荒川化学工業(株)))を5重量部、粘着付与剤(ベンゼルA75(ロジンエステル系樹脂;荒川化学工業(株)))を20重量部で混合し、80℃で0.5時間加熱溶解した。次いで、該混合物に対してポリイソシアネート(イソホロンジイソシアネート(IPDI))を5.5重量部添加し、90℃で3時間反応させてプレポリマーを得た。室温下で24時間以上冷却後、得られたプレポリマー100重量部に硬化剤として微粉体コーティングアミンの3.5重量部を混合攪拌し、最終混合物を得た。
【0184】
ただし、微粉体コーティングアミンは、特開2000-117090号公報にしたがって、以下のように製造した。中心粒径約8μmの1,12-ドデカンジアミン(融点71℃)を76.9重量部と、中心粒径約0.02μmの超微粒子酸化チタンを23.1重量部とを混合し、高速衝撃式混合撹拌機(日清エンジニアリング(株)製、Hi-Xミキサー)にて複合化処理することにより、中心粒径約8μmの1,12-ドデカンジアミンの表面に、中心粒径約0.02μmの超微粒子酸化チタンが固着してなる微粉体コーティングアミンの100重量部を得た。
【0185】
前記最終混合物を剥離フィルム(商品名「MRF#38」、三菱樹脂株式会社製)の剥離処理された面上に、粘着剤層形成後の厚さが100μmとなるように塗布し、次いで、熱拡散層であるグラファイトシート(ガードネック社製、品番:GD-25、厚み25μm)を貼り合わせた。その後、80℃雰囲気下、1分間加熱硬化させて中間積層物を得た。この中間積層物における上記最終混合物の硬化・乾燥物が衝撃吸収層として形成され、この衝撃吸収層には粘着剤組成物(プレポリマーの硬化物)が含まれている。この中間積層物のグラファイトシート側に、液状接着剤(エポキシテクノロジー社製品番EPO-TEK(登録商標)T7109-19)を厚みが25μmとなるように全面塗布して、電磁波遮蔽層として銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製電磁波シールド用電解銅箔CF)を貼り合わせて、室温化で24時間以上静置することで衝撃吸収積層体を得た(銅箔を除く、衝撃吸収積層体の厚みの総計:150μm)。
【0186】
実施例4の組成を表4に示す。
【0187】
【0188】
(実施例5)
実施例1の混合物の塗布前に混合物100重量部に対して絶縁黒色顔料(三菱マテリアル株式会社製の品番13M-C)の2.5重量部を混合分散した以外は、実施例1と同様にして衝撃吸収積層体を得た(銅箔を除く、衝撃吸収積層体の厚みの総計:150μm)。波長300nm以上850nm以下の光の透過率(%)を0.1%以下とできた。衝撃吸収層に、顔料を含有することで、光透過率を低減することを可能とした。
【0189】
実施例5の組成を表5に示す。
【0190】
【0191】
(実施例6)
実施例1の塗布前の混合物に、混合物100重量部に対して、絶縁黒色顔料2.5重量部(三菱マテリアル株式会社製の品番13M-C)と微細放熱粒子(シリカフィラー、アドマテックス社製の品番S0-C1)30重量部を混合分散した以外は、実施例1と同様にして衝撃吸収積層体を得た(銅箔を除く、衝撃吸収積層体の厚みの総計:150μm)。波長300nm以上850nm以下の光の透過率(%)を0.1%以下とできた。衝撃吸収層に、顔料を含有することで、光透過率を低減することを可能とした。
【0192】
実施例6の組成を表5に示す。
【0193】
【0194】
(実施例7)
実施例2で用いた信越化学工業株式会社製の2液付加反応型シリコーンゲル(型式:X32-3443)100重量部に対して、絶縁黒色顔料2.5重量部(三菱マテリアル株式会社製の品番13M-C)と微細放熱粒子(シリカフィラー、アドマテックス社製の品番S0-C1)30重量部を混合分散した以外は、実施例2と同様にして衝撃吸収積層体を得た(銅箔を除く、衝撃吸収積層体の厚みの総計:150μm)。
【0195】
(実施例8)
シールド層として電解銅箔の代わりに、圧延銅箔(JX金属製HA-V2 12μm)を使用した以外は、実施例1と同様にして、衝撃吸収積層体を得た。
【0196】
(実施例9)
シールド層として電解銅箔の代わりに、導電織布(セーレン製 品番Sui-10-30T)を使用した以外は、実施例1と同様にして、衝撃吸収積層体を得た。
【0197】
(実施例10)
エポキシ系の液状接着剤の代わりに、アクリル系接着剤(スリーボンド製ThreeBond3955)を使用した以外は、実施例1と同様にして、衝撃吸収積層体を得た。
【0198】
(比較例1)
25μm厚み透明両面粘着テープ(日東電工社製品番CS9861)と高衝撃吸収発泡体80μm(岩谷産業社製品番ISR-TUF-RP)を貼り合わせ、次いで、他方に25μm厚み透明両面粘着テープを貼り合わせた後に、熱拡散層であるグラファイトシート(ガードネック社製、品番:GD-25、厚み25μm)を貼り合わせた。グラファイトシートの他方に、液状接着剤(エポキシテクノロジー社製品番EPO-TEK(登録商標)T7109-19)を厚みが25μmとなるように全面塗布して、電磁波遮蔽層として銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製電磁波シールド用電解銅箔CF)を貼り合わせて、室温化で24時間以上静置することで衝撃吸収積層体を得た(銅箔を除く、衝撃吸収積層体の厚みの総計:180μm)。
【0199】
(比較例2)
25μm厚み透明両面粘着テープ(日東電工社製 品番CS9861)を、総厚55μmの遮光用ポリエステルフィルム粘着テープ(寺岡製作所製 品番6732#25:遮光基材と粘着層が予め張り付けられたもの)の基材背面に貼り合わせて、次に遮光用ポリエステルフィルム粘着テープの粘着剤を高衝撃吸収発泡体80μm(岩谷産業社製 品番ISR-TUF-RP)に貼り合わせた。そして、他方に25μm厚み透明両面粘着テープを貼り合わせた後に、熱拡散層であるグラファイトシート(ガードネック社製 品番GD-25(25μm))を貼り合わせた。グラファイトシートの他方に、液状接着剤(エポキシテクノロジー社製品番EPO-TEK(登録商標)T7109-19)を厚みが25μmとなるように全面塗布して、電磁波遮蔽層として銅箔(福田金属箔粉工業株式会社製 電磁波シールド用電解銅箔CF)を貼り合わせて、室温下で24時間以上静置することで衝撃吸収積層体を得た(銅箔を除く、衝撃吸収積層体の厚みの総計:235μm)。
【0200】
(評価)
落下衝撃試験:MIL-STD-810GMethod516.6-Shockに準拠した。各衝撃吸収積層体を三星電子社製のGalaxyS2に搭載の有機ELディスプレイの背面側に貼り合わせられている積層材料を剥離したうえで、各衝撃吸収積層体を貼り合わせ、製品の形状に戻したうえで試験を実施した。
【0201】
曲げ弾性:JIS K 7171:2016に準拠して測定した。
【0202】
無張力屈曲試験:ユアサシステム機器社製の自立型耐久試験機TCD-BTFBを使用した。各衝撃吸収積層体を20cm角に切断し、直径20mmの芯金と切断した積層体の中心線が合うように固定して、1分間に30回の速度で衝撃吸収体を巻き付ける動作と元に戻す動作を繰り返し、破断や層間剥離が発生していないかを評価した。
【0203】
【0204】
【0205】
【0206】
実施例1と実施例3及び4との比較より、衝撃吸収率は、アクリル系・ウレタン系よりもシリコーン系の方が良い。また実施例1と実施例5及び6との比較より、波長が300nm以上850nm以下の光の透過率(%)が0.1%以下とできた。衝撃吸収層に、顔料を含有することで、光透過率を低減することを可能とした。また、シールド層に導電織布を用いた実施例9は、実施例1に比べて、無張力屈曲試験において、破断や層間剥離に対する耐久性が向上することを確認した。
【符号の説明】
【0207】
2 粘着剤組成物
3 顔料
10、11、12、13 衝撃吸収層
20 熱拡散層
30 接着層
31 エポキシ樹脂
40 シールド層
100 衝撃吸収積層体
101 衝撃吸収積層体
300 表示パネル
400 表示装置