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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】低背型アンテナ装置
(51)【国際特許分類】
   H01Q 9/36 20060101AFI20240510BHJP
   H01Q 1/22 20060101ALI20240510BHJP
   H01Q 1/32 20060101ALI20240510BHJP
   B60R 11/02 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
H01Q9/36
H01Q1/22 B
H01Q1/32 Z
B60R11/02 A
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021184278
(22)【出願日】2021-11-11
(65)【公開番号】P2023071464
(43)【公開日】2023-05-23
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000165848
【氏名又は名称】原田工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100124257
【弁理士】
【氏名又は名称】生井 和平
(72)【発明者】
【氏名】覚張 慧一
(72)【発明者】
【氏名】野口 健太
(72)【発明者】
【氏名】平 健司
(72)【発明者】
【氏名】山本 努
【審査官】岸田 伸太郎
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2012/001892(WO,A1)
【文献】特開2012-204996(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03629418(EP,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01Q 9/36
H01Q 1/22
H01Q 1/32
B60R 11/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両用の低背型アンテナ装置であって、該低背型アンテナ装置は、
車両に固定されるベースプレートと、
前記ベースプレートに対して高さ方向に間隔を設けて配置され、第1周波数帯用のアンテナとして機能するトップロードエレメントと、
前記ベースプレートに嵌合しトップロードエレメントを内側に収容するアンテナカバーと、
を具備し、
前記トップロードエレメントは、
トップロードエレメントの長手方向に延在し、ベースプレートに対して傾斜する稜線部と、
前記稜線部の両側からそれぞれ延在する第1側面と第2側面とを有する側面部と、
前記第1側面から稜線部を通り第2側面の途中まで延在し稜線部を前後に分けるスリットであって、側面部に設けられるスリットが稜線部に対して垂直方向を向いている、スリットと、
を有し、前記アンテナカバーの内側の最高位置に稜線部を近付けるために、スリットの前後で稜線部の高さが変わるように折曲形成されてなる、
ことを特徴とする低背型アンテナ装置。
【請求項2】
請求項1に記載の低背型アンテナ装置において、前記トップロードエレメントは、折曲形成前は平面板状体からなり、
前記稜線部は、平面板状体において、スリットの前側の稜線部に対してスリットの後側の稜線部が、スリットの深さ方向にオフセット配置される、
ことを特徴とする低背型アンテナ装置。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の低背型アンテナ装置において、前記トップロードエレメントの側面部は、トップロードエレメントの長手方向に稜線部よりも伸長されることを特徴とする低背型アンテナ装置。
【請求項4】
請求項1乃至請求項3の何れかに記載の低背型アンテナ装置において、前記トップロードエレメントの側面部は、ベースプレートに対する高さ方向の間隔が一定であることを特徴とする低背型アンテナ装置。
【請求項5】
請求項1乃至請求項4の何れかに記載の低背型アンテナ装置において、前記トップロードエレメントは、前記スリットが複数スリットからなり、アンテナカバーの内側の最高位置に稜線部を近付けるために、複数スリットのそれぞれの前後で稜線部の高さがそれぞれ変わるように折曲形成されてなることを特徴とする低背型アンテナ装置。
【請求項6】
請求項1乃至請求項5の何れかに記載の低背型アンテナ装置において、前記トップロードエレメントは、さらに、
前記側面部に設けられ稜線部に対して垂直方向を向いている一対の配線用スリットと、
前記配線用スリットによりトップロードエレメントから切り出される板状配線と、
を有することを特徴とする低背型アンテナ装置。
【請求項7】
請求項1乃至請求項6の何れかに記載の低背型アンテナ装置であって、さらに、
前記ベースプレート上に配置され、給電端子を有する回路基板と、
前記トップロードエレメントと給電端子との間に接続されるコイルであって、トップロードエレメントとコイルの直列回路により第2周波数帯用の共振アンテナとして機能するように調整される、コイルと、
を具備することを特徴とする低背型アンテナ装置。
【請求項8】
請求項7に記載の低背型アンテナ装置において、前記コイルは、その軸方向がベースプレートに平行且つトップロードエレメントの長手方向に平行となるように配置されることを特徴とする低背型アンテナ装置。
【請求項9】
請求項7又は請求項8に記載の低背型アンテナ装置において、前記コイルは、スリットの前側の稜線部の下方に配置されることを特徴とする低背型アンテナ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は低背型アンテナ装置に関し、特に、車両用の低背型アンテナ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
現在、車両には種々のアンテナ装置が搭載されるが、そのようなアンテナ装置として、例えばAM放送及びFM放送が受信可能なAM/FMラジオ用アンテナがある。AM/FMラジオ用アンテナとしては、一般的にロッドアンテナが使用される。ロッドアンテナは、螺線形状の導体からなるエレメント(ヘリカルエレメント)をカバーで被覆したエレメント部とエレメント部を取り付けるためのベースプレートからなる。
【0003】
このロッドアンテナは、車体に取り付けた際に、エレメント部が車体から大きく突出するため、車両の美観やデザインを損ね、車庫入れや洗車時に破損するおそれがあり、また車外に露出して取り付けられるためエレメント部が盗難に遭うおそれもある。
【0004】
このような問題から、アンテナ装置全体の高さをロッドアンテナより低くすると共に、エレメントをアンテナケースに収容して車外への露出から守り、アンテナ装着後の車両全体のデザインを考慮してアンテナケースをフカヒレ形状(シャークフィン形状)で構成した低背型アンテナ装置が提案されている。このような低背型のアンテナ装置は、法規制等との兼ね合いから、高さが70mm以下で、長手方向の長さが200mm前後であるものが多い。
【0005】
しかしながら、このようなアンテナ装置には、70mm以下の低姿勢とすることによるアンテナの導体損失(エレメント長の短縮)の影響で放射効率が低下しやすくなり、感度劣化の原因となるという問題がある。例えば特許文献1には、感度劣化を解決することを目的に、トップロードエレメントとアンプ回路との間にコイルが挿入された低背型アンテナ装置が開示されている。
【0006】
さらに、特許文献2のように、アンテナとカメラを収容する車載用アンテナ装置において、アンテナの利得向上を図るために、上面視及び/又は側面視において容量装荷素子が、カメラに重なる部位がカメラに重ならない部位よりも高さ方向の長さが短くなるようにしたものも知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2012-204996号公報
【文献】再表2019/156138号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
低背型アンテナ装置においては、アンテナ受信特性が悪化しないように、アンテナエレメントはなるべくアンテナカバーの内側の最高位置に配置されることが好ましかった。ところで、アンテナカバーは外形を画定するものであり、頂部が弧を描く流線形状を有している。このため、弧を描くアンテナカバーの頂部の内側形状に沿わせるために、トップロードエレメントの頂部も弧を描くような形状を有するように形成されていた。例えば、特許文献1では、トップロードエレメントの頂部の角度がベースプレートに対して途中で変わるように折曲形成されている。また、特許文献2では、トップロードエレメントをミアンダ状に形成してアンテナカバーの内側の最高位置に沿わせるように構成されている。
【0009】
さらに、例えば金属板を絞り加工等によりアンテナカバーの内側形状に完全に合うように形成されたトップロードエレメントも存在する。
【0010】
しかしながら、これらのトップロードエレメントは、何れも複雑な形状を有しており、製造コストが高いものであった。さらに、複雑な形状ゆえ、トップロードエレメントの製造誤差があると、アンテナ受信特性に直接影響を及ぼすので、個々の低背型アンテナ装置についてトップロードエレメントの誤差を修正するための修正回路等を設けたり調整したりする必要もあった。
【0011】
したがって、アンテナ受信特性は問題なく、製造も容易でコストも抑えられ、製造誤差が少ない低背型アンテナ装置の開発が望まれていた。
【0012】
本発明は、斯かる実情に鑑み、アンテナ受信特性は問題なく、製造も容易でコストも抑えられ、製造誤差が少ない低背型アンテナ装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上述した本発明の目的を達成するために、本発明による低背型アンテナ装置は、車両に固定されるベースプレートと、ベースプレートに対して高さ方向に間隔を設けて配置され、第1周波数帯用のアンテナとして機能するトップロードエレメントと、ベースプレートに嵌合しトップロードエレメントを内側に収容するアンテナカバーと、を具備し、トップロードエレメントは、トップロードエレメントの長手方向に延在し、ベースプレートに対して傾斜する稜線部と、稜線部の両側から延在する側面部と、一方の側面部から稜線部を通り他方の側面部の途中まで延在し稜線部を前後に分けるスリットであって、側面部に設けられるスリットが稜線部に対して垂直方向を向いている、スリットと、を有し、アンテナカバーの内側の最高位置に稜線部を近付けるために、スリットの前後で稜線部の高さが変わるように折曲形成されてなるものであれば良い。
【0014】
ここで、トップロードエレメントは、折曲形成前は平面板状体からなり、稜線部は、平面板状体において、スリットの前側の稜線部に対してスリットの後側の稜線部が、スリットの深さ方向にオフセット配置されるものであれば良い。
【0015】
また、トップロードエレメントの側面部は、トップロードエレメントの長手方向に稜線部よりも伸長されるものであっても良い。
【0016】
また、トップロードエレメントの側面部は、ベースプレートに対する高さ方向の間隔が一定であるものであれば良い。
【0017】
また、トップロードエレメントは、スリットが複数スリットからなり、アンテナカバーの内側の最高位置に稜線部を近付けるために、複数スリットのそれぞれの前後で稜線部の高さがそれぞれ変わるように折曲形成されてなるものであっても良い。
【0018】
また、トップロードエレメントは、さらに、側面部に設けられ稜線部に対して垂直方向を向いている一対の配線用スリットと、配線用スリットによりトップロードエレメントから切り出される板状配線と、を有するものであっても良い。
【0019】
さらに、ベースプレート上に配置され、給電端子を有する回路基板と、トップロードエレメントと給電端子との間に接続されるコイルであって、トップロードエレメントとコイルの直列回路により第2周波数帯用の共振アンテナとして機能するように調整される、コイルと、を具備するものであっても良い。
【0020】
また、コイルは、その軸方向がベースプレートに平行且つトップロードエレメントの長手方向に平行となるように配置されるものであれば良い。
【0021】
またコイルは、スリットの前側の稜線部の下方に配置されるものであれば良い。
【発明の効果】
【0022】
本発明の低背型アンテナ装置には、アンテナ受信特性は問題なく、製造も容易でコストも抑えられ、製造誤差が少ないという利点がある。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1図1は、本発明の低背型アンテナ装置を説明するための概略側面図である。
図2図2は、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメントの折曲形成前の展開図である。
図3図3は、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードの反対側面を説明するための概略側面図である。
図4図4は、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメントと従来のトップロードエレメントを比較するための概略側面図である。
図5図5は、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメントの変形例を説明するための概略斜視図である。
図6図6は、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメントのさらに他の変形例を説明するための概略側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下、本発明を実施するための形態を図示例と共に説明する。図1は、本発明の低背型アンテナ装置を説明するための概略側面図である。なお、低背型アンテナ装置の内部を説明するために、一部断面図とした。図示の通り、本発明の低背型アンテナ装置は、ベースプレート10と、トップロードエレメント20と、アンテナカバー30とを具備するものである。
【0025】
ベースプレート10は、車両に固定されるものである。ベースプレート10は、具体的には、例えば樹脂等の絶縁体で形成される所謂樹脂ベースであっても良いし、金属等の導電体で形成される所謂金属ベースであっても良い。また、ベースプレート10は、樹脂と金属のコンポジットベースであっても良い。ベースプレート10には、例えばねじボス11が設けられている。車両のルーフ等に設けられた孔にねじボス11が挿入され、例えば車両室内からナットを用いてルーフ等を挟み込むようにしてベースプレート10がルーフに固定される。ねじボス11には、例えば車両内部とアンテナ装置とを接続する電源ケーブルや信号ケーブル等が挿通される。また、ベースプレート10は、後述のアンテナカバー30により覆われるように構成されている。
【0026】
トップロードエレメント20は、第1周波数帯用のアンテナとして機能するものである。例えば、トップロードエレメント20は、所謂容量装荷アンテナエレメントであれば良い。具体的には、第1周波数帯とはAM周波数帯であれば良い。AM周波数帯では、トップロードエレメント20は容量アンテナとして機能する。また、トップロードエレメント20のエレメント長が第1周波数帯に対応する長さを有するものであっても良い。この場合、第1周波数帯は例えばDTV周波数帯であれば良い。DTV周波数帯では、トップロードエレメント20は共振アンテナとして機能する。トップロードエレメント20は、ベースプレート10に対して高さ方向に間隔を設けて配置されるものである。図1に示される例では、図面上、左側が車両進行方向であり、トップロードエレメント20は、その長手方向が車両進行方向を向いている。
【0027】
アンテナカバー30は、ベースプレート10に嵌合し、トップロードエレメント20を内側に収容するものである。図示例では、アンテナカバー30は、低背型アンテナ装置の外形を画定するものである。なお、本発明の低背型アンテナ装置はこれに限定されず、例えば、アンテナカバー30がインナーカバーとアウターカバーとからなるものであっても良い。即ち、2重カバーであっても良い。この場合、インナーカバーがトップロードエレメント20を内側に収容するものであり、アウターカバーが外形を画定するものとなる。
【0028】
従来技術の課題でも説明した通り、低背型アンテナ装置の外形を画定するアンテナカバー30は、頂部が弧を描く流線形状を有している。具体的には、図示の通り、車両進行方向である先端側が最も高さが低く、後方に向かって高さが高くなり、最も高くなったところから後方端に向かってまた高さが低くなるようにデザインされている。そして、アンテナカバー30の内部に配置されるトップロードエレメント20は、アンテナ特性がなるべく悪化しないように、アンテナカバー30の内側の最高位置に配置されることが好ましい。一方、アンテナ受信特性のばらつきを抑えるために、トップロードエレメント20の製造誤差を少なくする必要もある。このため、本発明の低背型アンテナ装置では、以下に説明するように、トップロードエレメント20が形成されている。
【0029】
図2は、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメントの折曲形成前の展開図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。図示の通り、トップロードエレメント20は、稜線部21と、側面部22と、スリット23とを有している。図示の通り、トップロードエレメント20は、折曲形成前は平面板状体からなっている。平面板状体から図示のような所定の形状に切り出され、所定の位置で折り曲げることでトップロードエレメント20が形成される。
【0030】
稜線部21は、トップロードエレメント20の長手方向に延在している。そして、折曲形成後は図1に示される通り、稜線部21はベースプレート10に対して傾斜することになる。傾斜については、図1に示される通り、車両進行方向から後方に向かって上がるように傾斜している。なお、図2に示される稜線部21は、線状ではなくある程度幅のあるものを示した。具体的には、車両進行方向に向かって末広がりに幅が広くなるものを示した。しかしながら、本発明はこれに限定されず、稜線部21の幅はアンテナカバー30の内側形状に合わせて適宜決定されれば良い。
【0031】
側面部22は、稜線部21の両側から延在するものである。図示例では、車両進行方向に向かって右側を側面部22aとし、左側を側面部22bとする。稜線部21と、稜線部21の両側から斜面とされた側面部22a,22bが形成されることで、トップロードエレメント20の断面形状は山形に形成される。
【0032】
そして、本発明の低背型アンテナ装置の最も特徴的な部分であるスリット23は、以下のように設けられている。即ち、スリット23は、図2に示される通り、一方の側面部22aから稜線部21を通り他方の側面部22bの途中まで延在している。そして、スリット23は、稜線部21に対して垂直方向を向いている。即ち、稜線部21の折曲線を垂直に通るように設けられている。スリット23が稜線部21を通って配置されることにより、稜線部21が前後に分けられることになる。図示例では、前側を稜線部21aとし、後側を稜線部21bとする。
【0033】
ここで、図2に示されるように、稜線部21は、平面板状体において、スリット23の前側の稜線部21aに対してスリット23の後側の稜線部21bが、スリット23の深さ方向にオフセット配置されている。即ち、スリット23により分けられた稜線部21a,21bは、折曲形成前の平面板状体では、車両進行方向に対して直線状に並んでおらず、車両進行方向に向かって左側(図面上で下側)にずらして配置されている。
【0034】
このような平面板状体を折曲形成すると、図1に示されるようなトップロードエレメント20となる。なお、トップロードエレメント20の反対側面は、図3に示されるようになっている。図3は、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードの反対側面を説明するための概略側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例では、トップロードエレメント20のみを示し、他のものは図示を省略した。
【0035】
このような平面板状体を折曲形成すると、図1図3に示される通り、スリット23の前後で稜線部21の高さが変わることになる。即ち、稜線部21aの後側端部を、アンテナカバー30の内側の最高位置に近付けることが可能となる。図示の通り、稜線部21は、アンテナカバー30の内側の最高位置に3か所で近付けられることになる。具体的には、トップロードエレメント20の前側端部と、スリット部23の設けられる位置と、トップロードエレメント20の後側端部で、アンテナカバー30の内側の最高位置に稜線部21を近付けることが可能となる。これにより、アンテナカバー30の内側の最高位置に稜線部21をより近付けられるようになる。なお、折曲形成は、単に平面板状体を直線的に折り曲げて形成することを意味する。即ち、曲面状とする絞り加工や曲線状に折り曲げるといった複雑な形成は不要で、真っ直ぐに折り曲げるだけで良い。
【0036】
また、図2に示されるように、トップロードエレメント20は、平面板状体の状態では、車両進行方向に向かって先細り形状に形成されている。即ち、側面部22が車両進行方向に向かって幅が狭くなるように形成されている。これは、折曲形成後には、側面部22が、ベースプレート10に対する高さ方向の間隔が一定となるようにするためである。即ち、稜線部21がベースプレート10に対して傾斜しているため、稜線部21が車両進行方向から後方に向かって高くなるのに合わせて、側面部22とベースプレート10との間隔が一定となるように、側面部22は車両進行方向から後方に向かって末広がりに幅が広くなるように形成されている。このように形成されることで、トップロードエレメント20のアンテナ容量をなるべく大きくしつつ、ベースプレート10への容量結合を少なくし、アンテナ受信特性の劣化を少なくしている。
【0037】
次に、図4を用いて、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメント20の稜線部21を、アンテナカバー30の内側の最高位置にどのくらい近付けられたかをより具体的に説明する。図4は、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメントと従来のトップロードエレメントを比較するための概略側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメント20を実線で表し、従来のトップロードエレメントを破線で表した。ここで、従来のトップロードエレメントとしては、平面板状体をそのまま折曲形成したものを示した。なお、トップロードエレメント20とアンテナカバー30のみを示し、他のものは図示を省略した。
【0038】
図示の通り、従来のトップロードエレメントでは、稜線部を直線的に折曲形成するため、車両進行方向の前側から後側にかけて一直線の稜線部となっている。このため、アンテナカバー30の内側の最高位置に近付けられる部分は、トップロードエレメントの前側端部と後側端部のみとなっており、中央付近は最高位置から大きく離れてしまっていた。
【0039】
一方、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメント20では、スリット23の前後で稜線部21の高さが変わることになる。具体的には、稜線部21aの後側端部を、アンテナカバー30の内側の最高位置に近付けられている。
【0040】
このように、本発明の低背型アンテナ装置では、トップロードエレメント20を単に直線的に折曲形成するだけで稜線部をアンテナカバーの内側の最高位置に近付けることが可能となる。したがって、アンテナ受信特性は問題なく、複雑な形状とする必要もなく絞り加工等も不要であり、製造も容易である。このため、製造コストも抑えることが可能となる。また、直線的に折曲形成するため、製造誤差も少なくなる。したがって、結果的にアンテナ受信特性にばらつきも少ないものとなる。
【0041】
ここで、図1を再度参照すると、図示例の本発明の低背型アンテナ装置では、回路基板40と、コイル50とを有する例を示した。このように複合アンテナとすることも可能である。回路基板40は、ベースプレート10上に配置され、給電端子41を有するものである。回路基板40には、適宜アンプ回路やフィルタ回路等が設けられ、信号を受信可能に構成されている。そして、コイル50は、トップロードエレメント20と給電端子41との間に接続されるものである。トップロードエレメント20とコイル50の直列回路により第2周波数帯用の共振アンテナとして機能するように調整されている。具体的には、第2周波数帯とはFM周波数帯であれば良い。例えば、FM周波数帯でトップロードエレメント20とコイル50の直列回路が共振アンテナとして機能するように、コイル50のインダクタが適宜選択される。
【0042】
そして、図示の通り、コイル50は、その軸方向がベースプレート10に平行且つトップロードエレメント20の長手方向に平行となるように配置されている。このように配置されることで、例えば車種によりコイル50の長さ(巻き数)が変わった場合であっても、コイル50が横向きに配置されているため、横方向へ長さが変わるのみであり、回路基板40からの距離が変わることはない。したがって、コイル50の長さを調整してもアンテナ受信特性の変化も少ないものとなる。
【0043】
ここで、コイル50は、スリット23の後側の稜線部21bの下方ではなく、スリット23の前側の稜線部21aの下方に配置されることが好ましい。なお、コイル50は、稜線部21の直下に配置される必要は必ずしもなく、車両進行方向の左右のどちらかにずらして配置されても良い。また、コイル50は、トップロードエレメント20の長手方向に対して直交する方向に配置されても良い。
【0044】
さらに、コイル50を設ける場合、トップロードエレメント20からコイル50へ接続するための配線を、トップロードエレメント20を切り出すことで設けても良い。具体的には、トップロードエレメント20が、さらに一対の配線用スリット24と、板状配線25とを有するように構成されている。図2にも示されるように、一対の配線用スリット24は、側面部22に設けられている。そして、一対の配線用スリット24は、稜線部21に対して垂直方向を向いている。また、板状配線25は、配線用スリット24によりトップロードエレメント20から切り出されて提供されている。板状配線25は、コイル50に接続されている。このように、トップロードエレメント20から切り出すことでコイル50への配線を設けることが可能となり、別途ワイヤー等により配線を用意する必要がないため、製造誤差も少ない低背型アンテナ装置が実現可能となる。なお、図示例ではコイルを用いた例に対して板状配線25を設けているが、本発明はこれに限定されず、コイル50を用いずトップロードエレメント20を直接給電端子41に接続する場合であっても、板状配線25により接続しても良い。
【0045】
次に、図5を用いて本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメントの変形例を説明する。図5は、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメントの変形例を説明するための概略斜視図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例では、トップロードエレメント20のみを示し、他のものは図示を省略した。図示の通り、この例では、トップロードエレメント20の側面部22が、トップロードエレメント20の長手方向に稜線部21よりも伸長されている。具体的には、側面部22の先端部22cが、稜線部21の車両進行方向の前側端部よりも前側に伸長されている。これにより、アンテナカバー30の先端側の高さの低くなる部分で稜線部21が収まらなくなる部分であっても、側面部22の先端部22cを設けることが可能となる。したがって、アンテナカバー30の先端側の高さの低くなる部分を有効に活用し、トップロードエレメント20のアンテナ容量をより増加させることが可能となる。なお、図示例では車両進行方向の前側に側面部22が稜線部21よりも伸長される例を示したが、本発明はこれに限定されず、側面部22は、車両進行方向の後側に稜線部21よりも伸長されても良い。
【0046】
上述の図示例では、スリット23が1つで稜線部21の高さが変わる部分は1か所のものを示した。しかしながら、本発明はこれに限定されない。以下、図6を用いて高さが複数変わる例について説明する。図6は、本発明の低背型アンテナ装置のトップロードエレメントのさらに他の変形例を説明するための概略側面図である。図中、図1と同一の符号を付した部分は同一物を表している。なお、図示例では、トップロードエレメント20のみを示し、他のものは図示を省略した。図示の通り、トップロードエレメント20は、複数のスリット23a,23bを有している。なお、図示例ではスリットを2つ設けた例を示したが、本発明はこれに限定されず、さらに多くのスリットを設けても良い。
【0047】
図示の通り、トップロードエレメント20は、アンテナカバー30の内側の最高位置に稜線部21を近付けるために、複数スリット23a,23bのそれぞれの前後で稜線部21a,21b,21cの高さがそれぞれ変わるように折曲形成されている。即ち、この例のトップロードエレメント20は、側面から見てのこぎり屋根形状を有している。このように、稜線部21の高さを細かく変えることで、アンテナカバー30の内側の形状に合わせてより細かく最高位置に近付けることが可能となる。
【0048】
なお、本発明の低背型アンテナ装置は、上述の図示例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
10 ベースプレート
11 ボス
20 トップロードエレメント
21 稜線部
22 側面部
23 スリット
24 配線用スリット
25 板状配線
30 アンテナカバー
40 回路基板
41 給電端子
50 コイル
図1
図2
図3
図4
図5
図6