(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】撮像装置
(51)【国際特許分類】
H04N 25/65 20230101AFI20240510BHJP
H04N 25/78 20230101ALI20240510BHJP
H04N 25/76 20230101ALI20240510BHJP
【FI】
H04N25/65
H04N25/78
H04N25/76
(21)【出願番号】P 2021536839
(86)(22)【出願日】2020-06-24
(86)【国際出願番号】 JP2020024749
(87)【国際公開番号】W WO2021019973
(87)【国際公開日】2021-02-04
【審査請求日】2023-04-04
(31)【優先権主張番号】P 2019142102
(32)【優先日】2019-08-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100101683
【氏名又は名称】奥田 誠司
(74)【代理人】
【識別番号】100155000
【氏名又は名称】喜多 修市
(74)【代理人】
【識別番号】100180529
【氏名又は名称】梶谷 美道
(74)【代理人】
【識別番号】100125922
【氏名又は名称】三宅 章子
(74)【代理人】
【識別番号】100188813
【氏名又は名称】川喜田 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100184985
【氏名又は名称】田中 悠
(74)【代理人】
【識別番号】100202197
【氏名又は名称】村瀬 成康
(74)【代理人】
【識別番号】100218981
【氏名又は名称】武田 寛之
(72)【発明者】
【氏名】三宅 康夫
(72)【発明者】
【氏名】宍戸 三四郎
【審査官】橘 高志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-013422(JP,A)
【文献】特開2007-281556(JP,A)
【文献】特開2012-060591(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 25/65
H04N 25/78
H04N 25/76
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
それぞれが電荷蓄積領域および読出し回路を有し、露光量に応じた電荷を蓄積する複数の画素と、
第1フレームメモリと、
第2フレームメモリと、
画像処理回路と、
第1波長にピークを有する赤外線を出射する第1光源と
を備え、
前記第1フレームメモリは、前記読出し回路を介して読み出された第1アナログ信号に対応した第1デジタル信号を一時的に保持し、
前記第2フレームメモリは、前記第1アナログ信号に関する読出し期間に続く第1露光期間に前記画素に蓄積された電荷量に応じた第2アナログ信号に対応する第2デジタル信号を一時的に保持し、
前記画像処理回路は、前記第1露光期間および前記第1露光期間の1つ後の第2露光期間に前記画素に累積して蓄積された電荷量に応じた第3アナログ信号に対応する第3デジタル信号と前記第2デジタル信号との第1差分と、前記第2デジタル信号と前記第1デジタル信号との第2差分との差分を出力し、
前記第1露光期間および前記第2露光期間の少なくとも一方は、前記第1光源がオンとされる期間を含む、撮像装置。
【請求項2】
前記第1アナログ信号は、前記画素に関するリセットレベルを表現するリセット信号である、請求項1に記載の撮像装置。
【請求項3】
前記第1光源は、前記第1露光期間および前記第2露光期間のうち前記第2露光期間にオンとされる、請求項1または2に記載の撮像装置。
【請求項4】
前記第1波長とは異なる第2波長にピークを有する光を出射する第2光源をさらに備え、
前記第1露光期間は、前記第2光源がオンとされる期間を含む、請求項3に記載の撮像装置。
【請求項5】
各画素は、
前記読出し回路が設けられた半導体基板と、
前記半導体基板の上方に位置する光電変換部であって、前記読出し回路に電気的に接続された光電変換部と
を有する、請求項1から4のいずれかに記載の撮像装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、撮像装置に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1は、絶縁層を介して半導体基板に支持された有機光電変換層を有する撮像素子を開示している。特許文献1に記載の技術のように、埋め込みフォトダイオードに代えて、複数の画素電極を有する光電変換部を半導体基板の上方に配置した構成は、「積層型」と呼ばれることがある。このような構成において、光電変換部を支持する半導体基板は、それぞれが画素電極を有する複数の画素に対応して複数の読出し回路を有する。特許文献1の
図1に記載されているように、各画素の画素電極は、絶縁層中に配置されたビアを介して、複数の読出し回路のうち対応する1つに接続される。
【0003】
撮像素子は、人物、風景等の静止画または動画の取得だけでなく、前方に位置する物体までの距離を算出するための、反射光の強度等の情報の取得にも用いられ得る。例えば下記の特許文献2は、二次元の光パターンを被写体に照射して被写体を撮影することにより、被写体までの距離を示す距離画像を取得する技術を開示している。
【0004】
撮像装置の分野においては、ノイズ低減の要求がある。特に、光電変換によって生成された電荷のリセット時に発生するkTCノイズを低減したいという要求がある。このkTCノイズは、「リセットノイズ」とも呼ばれる。下記の特許文献3は、リセットレベルのデータをフレームメモリに格納し、信号レベルおよびリセットレベルの差分を取得することを開示している。特許文献3に記載の技術では、信号レベルからリセットレベルをデジタル処理によって減算することにより、各画素中のメモリ手段で発生する暗電流に起因するショットノイズの影響をキャンセルしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-228648号公報
【文献】国際公開第2016/157593号
【文献】特開2008-028517号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いわゆる積層型の構成では、画素電極と半導体基板の読出し回路とが、典型的には金属から形成されるビアを介して電気的に接続される。そのため、例えば不純物領域などの、信号電荷を一時的に蓄積する構造を半導体基板中に設けて、蓄積された信号電荷を特許文献3に記載の技術のようにトランジスタを介して読出し回路に転送しようとしても、信号電荷を完全に転送することが基本的に困難である。すなわち、特許文献3に記載のような、埋め込みフォトダイオードを有する撮像素子に従来用いられているノイズキャンセルの手法を単純に適用することができない。特に測距においては、リセットノイズに代表されるランダムノイズは、算出される距離の正確性を損ねる原因となり得る。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の限定的ではないある例示的な実施形態によれば、例えば、以下が提供される。
【0008】
それぞれが電荷蓄積領域および読出し回路を有し、露光量に応じた電荷を蓄積する複数の画素と、第1フレームメモリと、第2フレームメモリと、画像処理回路と、第1波長にピークを有する赤外線を出射する第1光源とを備え、前記第1フレームメモリは、前記読出し回路を介して読み出された第1アナログ信号に対応した第1デジタル信号を一時的に保持し、前記第2フレームメモリは、前記第1アナログ信号に関する読出し期間に続く第1露光期間に前記画素に蓄積された電荷量に応じた第2アナログ信号に対応する第2デジタル信号を一時的に保持し、前記画像処理回路は、前記第1露光期間および前記第1露光期間の1つ後の第2露光期間に前記画素に累積して蓄積された電荷量に応じた第3アナログ信号に対応する第3デジタル信号と前記第2デジタル信号との第1差分と、前記第2デジタル信号と前記第1デジタル信号との第2差分との差分を出力し、前記第1露光期間および前記第2露光期間の少なくとも一方は、前記第1光源がオンとされる期間を含む、撮像装置。
【0009】
包括的または具体的な態様は、素子、デバイス、システム、集積回路、方法またはコンピュータプログラムで実現されてもよい。また、包括的または具体的な態様は、素子、デバイス、装置、システム、集積回路、方法およびコンピュータプログラムの任意の組み合わせによって実現されてもよい。
【0010】
開示された実施形態の追加的な効果および利点は、明細書および図面から明らかになる。効果および/または利点は、明細書および図面に開示の様々な実施形態または特徴によって個々に提供され、これらの1つ以上を得るために全てを必要とはしない。
【発明の効果】
【0011】
本開示のある実施形態によれば、リセットノイズの影響が抑制された、特定の波長に関する画像を取得可能な撮像装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】本開示のある実施形態による撮像装置の例示的な構成を概略的に示す図である。
【
図2】本開示のある実施形態による撮像装置の例示的な回路構成を模式的に示す図である。
【
図3】第1画素Px1の例示的なデバイス構造を示す模式的な断面図である。
【
図4】本開示のある実施形態による撮像装置の駆動方法の一例を説明するための図である。
【
図5】本開示のある実施形態による撮像装置の他の動作例を説明するための図である。
【
図6】光源200がオンとされている期間に、光源200からの光で照射されている領域が被写体上でどのように遷移していくかを説明するための模式図である。
【
図7】
図5に示す例と比較して、光源200からの光の走査をより高速化した例を示す模式図である。
【
図8】
図7に示す例に関し、光源200からの光で照射されている領域が被写体上でどのように遷移していくかを説明するための模式図である。
【
図9】本開示のある実施形態による撮像装置のさらに他の動作例を説明するための図である。
【
図10】本開示のある実施形態による撮像装置のさらに他の動作例を説明するための図である。
【
図11】本開示のある実施形態による撮像装置のさらに他の動作例を説明するための図である。
【
図12】本開示の他のある実施形態による撮像装置の例示的な構成を概略的に示す図である。
【
図13】
図12に示す撮像装置の駆動方法の一例を説明するための図である。
【
図14】本開示のさらに他のある実施形態による撮像装置の例示的な回路構成を模式的に示す図である。
【
図15】
図14に示す撮像装置の駆動方法の一例を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の一態様の概要は、以下のとおりである。
【0014】
[項目1]
それぞれが電荷蓄積領域および読出し回路を有し、露光量に応じた電荷を蓄積する複数の画素と、
第1フレームメモリと、
第2フレームメモリと、
画像処理回路と、
第1波長にピークを有する赤外線を出射する第1光源と
を備え、
第1フレームメモリは、読出し回路を介して読み出された第1アナログ信号に対応した第1デジタル信号を一時的に保持し、
第2フレームメモリは、第1アナログ信号に関する読出し期間に続く第1露光期間に画素に蓄積された電荷量に応じた第2アナログ信号に対応する第2デジタル信号を一時的に保持し、
画像処理回路は、第1露光期間および第1露光期間の1つ後の第2露光期間に画素に累積して蓄積された電荷量に応じた第3アナログ信号に対応する第3デジタル信号と第2デジタル信号との第1差分と、第2デジタル信号と第1デジタル信号との第2差分との差分を出力し、
第1露光期間および第2露光期間の少なくとも一方は、第1光源がオンとされる期間を含む、撮像装置。
【0015】
項目1の構成によれば、ランダムノイズをキャンセルしながら、例えば、環境光による光電変換によって生成された電荷の影響をも実質的にキャンセルして、一方の露光期間に意図的に被写体に照射した特定の光に基づく画像を取得することが可能である。
【0016】
[項目2]
第1アナログ信号は、画素に関するリセットレベルを表現するリセット信号である、項目1に記載の撮像装置。
【0017】
[項目3]
第1光源は、第1露光期間および第2露光期間のうち第2露光期間にオンとされる、項目1または2に記載の撮像装置。
【0018】
項目3の構成によれば、第1光源から照射された光のみの下での撮影によって得られる画像を実質的に表現するデジタル信号あるいは画素値が、リセットノイズの影響がキャンセルされた形で得られる。
【0019】
[項目4]
第1波長とは異なる第2波長にピークを有する光を出射する第2光源をさらに備え、
第1露光期間は、第2光源がオンとされる期間を含む、項目3に記載の撮像装置。
【0020】
[項目5]
各画素は、
読出し回路が設けられた半導体基板と、
半導体基板の上方に位置する光電変換部であって、読出し回路に電気的に接続された光電変換部と
を有する、項目1から4のいずれかに記載の撮像装置。
【0021】
以下、図面を参照しながら、本開示の実施形態を詳細に説明する。なお、以下で説明する実施形態は、いずれも包括的または具体的な例を示す。以下の実施形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置および接続形態、ステップ、ステップの順序などは、一例であり、本開示を限定する主旨ではない。本明細書において説明される種々の態様は、矛盾が生じない限り互いに組み合わせることが可能である。また、以下の実施形態における構成要素のうち、最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。以下の説明において、実質的に同じ機能を有する構成要素は共通の参照符号で示し、説明を省略することがある。また、図面が過度に複雑になることを避けるために、一部の要素の図示を省略することがある。
【0022】
(撮像装置の実施形態)
図1は、本開示のある実施形態による撮像装置の例示的な構成を概略的に示す。
図1に示す撮像装置100は、それぞれが、半導体基板110に支持された光電変換部をその一部に有する複数の画素Pxを含む。すなわち、本開示の実施形態では、撮像装置100として、いわゆる積層型の構成を有する撮像装置を例示する。
【0023】
複数の画素Pxは、半導体基板110に例えば二次元に配列されることにより、撮像領域を形成する。画素Pxの数および配置は、
図1に示す例に限定されず、任意である。例えば、複数の画素Pxを一次元に配列することにより、撮像装置100をラインセンサとして用い得る。後に図を参照しながら詳しく説明するように、半導体基板110は、各画素Pxに対応して形成された複数の読出し回路を有する。
【0024】
撮像装置100は、複数の行信号線R
iと、複数の出力信号線S
jとを有する。
図1では、複数の画素Pxがm行n列に配列されており、複数の行信号線R
iは、画素Pxの複数の行に対応して配置されたm本の行信号線R
i(i=0,1,2,…,m-2,m-1)を含む。同様に、複数の出力信号線S
jは、画素Pxの複数の列に対応して配置されたn本の出力信号線S
j(j=0,1,2,…,n-2,n-1)を含む。ここで、mおよびnは、独立して、1以上の整数を表す。
【0025】
複数の行信号線Riのそれぞれは、同一行に属する1以上の画素Pxに電気的に接続される。これら行信号線Riは、行走査回路130に接続されている。なお、複数の画素Pxの行ごとに2本以上の信号線が設けられることもあり得る。同様に、複数の出力信号線Sjのそれぞれは、同一列に属する1以上の画素Pxの読出し回路に電気的に接続される。複数の出力信号線Sjには、アナログ-デジタル変換回路140およびデジタル出力インターフェース160が接続されている。デジタル出力インターフェース160からは、各列の画素Pxの読出し回路から読み出された信号が出力される。簡単のために、以下では、アナログ-デジタル変換回路140を単に「A/D変換回路140」と呼び、デジタル出力インターフェース160を単に「インターフェース160」と呼ぶ。
【0026】
図1に例示する構成において、撮像装置100は、A/D変換回路140とインターフェース160との間に接続されたデジタルメモリ150をさらに有する。デジタルメモリ150は、複数の画素Pxから読み出された一行分の信号を一時的に保持する。A/D変換回路140とインターフェース160との間にデジタルメモリ150を介在させることにより、行単位でのデジタル信号の出力をより高速に実行することが可能になる。
【0027】
インターフェース160には、画像処理回路170が接続される。画像処理回路170は、インターフェース160から出力されるデジタル信号に対し、必要に応じてガンマ補正、色補間処理、空間補間処理、オートホワイトバランスなどの処理を実行する。画像処理回路170は、例えばDSP(Digital Signal Processor)、ISP(Image Signal Processor)、FPGA(field-programmable gate array)などによって実現され得る。
図1に例示する構成において、撮像装置100は、画像処理回路170に接続された液晶ディスプレイまたは有機ELディスプレイなどの表示装置180をさらに含む。表示装置180は、撮影によって得られたデジタル信号に基づく画像を撮像装置100のユーザに提示する。
【0028】
図1に例示する構成において、画像処理回路170は、第1フレームメモリ172および第2フレームメモリ174を有する。第1フレームメモリ172および第2フレームメモリ174のそれぞれは、インターフェース160から出力された、1フレームに相当するデジタルデータを一時的に保持する。第1フレームメモリ172および第2フレームメモリ174には、相異なる1フレーム分のデジタルデータが格納される。後述するように、画像処理回路170は、第1フレームメモリ172に保持されたデジタル信号と、第2フレームメモリ174に保持されたデジタル信号との間の差分処理を実行する。
【0029】
さらにこの例では、撮像装置100は、光源200を有する。本開示の典型的な実施形態において、光源200は、赤外線を出射する赤外光源である。光源200として、赤外レーザを用いることも可能である。特に、アイセーフと呼ばれる、1.4マイクロメートル付近の波長域の光を出射する光源を光源200に有利に用い得る。なお、本明細書では、赤外線および紫外線を含めた電磁波全般を、便宜上「光」と表現することがある。
【0030】
光源200のオンおよびオフは、光源制御装置210によって制御される。上述の画像処理回路170は、撮像装置100の例えば外部から与えられる指令データ、クロックなどを受け取り、画素Pxからの信号の読出しに同期した発光タイミング信号を光源制御装置210に供給する。すなわち、本開示の実施形態では、光源200は、複数の画素Pxからの信号の読出しと同期して動作するように構成されている。光源制御装置210は、画像処理回路170からの発光タイミング信号に基づいてオンおよびオフが制御されるスイッチング素子を含む。
【0031】
また、この例では、画像処理回路170に制御回路250が電気的に接続されている。画像処理回路170は、制御回路250に垂直同期信号、水平同期信号などの制御信号も提供する。制御回路250には、行走査回路130およびA/D変換回路140が接続されており、制御回路250は、撮像装置100全体を制御する。制御回路250は、例えば1以上のプロセッサを含むマイクロコントローラによって実現され、典型的には、タイミングジェネレータを有する。制御回路250は、行走査回路130およびA/D変換回路140に駆動信号を供給する。
図1中、制御回路250に向かって延びる矢印および制御回路250から延びる矢印は、それぞれ、制御回路250への入力信号および制御回路250からの出力信号を模式的に表現している。制御回路250が1以上のメモリを含んでいてもよい。
【0032】
後に図面を参照しながら詳しく説明するように、本開示の典型的な実施形態では、インターフェース160から出力される第1のデジタル信号と、第1露光期間をその一部に含むあるフレーム期間に関する画像を表現する第2のデジタル信号との間の差分をデジタル処理によって算出する。ここで、第1のデジタル信号は、例えば、第1露光期間の開始前に実行されるリセット動作後に各画素から読み出されるリセット信号に対応するデジタル信号である。第1のデジタル信号は、リセットノイズを含んでおり、また、リセット信号の読出しに続けて画素の露光が実行されるので、結果として第2のデジタル信号も第1のデジタル信号と同様のリセットノイズを含んでいる。したがって、第1および第2のデジタル信号間の差分は、リセットノイズを実質的に含まない。
【0033】
本開示の典型的な実施形態では、さらに、前述のフレーム期間の1つ後のフレーム期間であって、第2露光期間をその一部に含むフレーム期間に関する画像を表現する第3のデジタル信号と、第2のデジタル信号との間の差分をデジタル処理によって算出する。ここで、これら2つの互いに隣接するフレーム期間の間においては画素Pxのリセット動作を実行しない。したがって、これらのフレーム期間のうち、後のフレーム期間中の読出し期間に各画素から読み出される信号は、第1露光期間および第2露光期間に累積して蓄積されたトータルの電荷量に応じた信号である。第3のデジタル信号も、第2のデジタル信号と同様にリセットノイズを含んでいる。第3のデジタル信号と、第2のデジタル信号との間で差分をとることにより、このリセットノイズの影響は、実質的にキャンセルされる。
【0034】
第1露光期間および第2露光期間の一方は、光源200がオンとされる期間を含み、第1露光期間および第2露光期間の他方では、光源200はオフの状態とされる。すなわち、第2および第3のデジタル信号のうちの一方は、太陽光または照明器具からの光などの環境光の下で被写体から反射された光に基づく信号であり、他方は、環境光に意図的に例えば赤外光を重畳させた光の下で被写体から反射された光に基づく信号である。したがって、後に詳しく説明するように、第1および第2のデジタル信号間の第1の差分と、第2および第3のデジタル信号間の第2の差分との間の差分をさらに算出することにより、実質的に、一方の露光期間において光源から被写体に意図的に照射した光の被写体からの反射光に基づく画像を表現する画像データを得ることが可能である。しかも、第1の差分および第2の差分からは、リセットノイズの影響が実質的に除去されている。すなわち、本開示の実施形態によれば、ランダムノイズをキャンセルしながら、例えば、環境光による光電変換によって生成された電荷の影響をも実質的にキャンセルして、一方の露光期間に意図的に被写体に照射した特定の光に基づく画像を取得することが可能である。
【0035】
(画素Pxの例示的な回路構成)
図2は、撮像装置100の例示的な回路構成を示す。簡単のために、
図2では、
図1に示す撮像領域に含まれる複数の画素Pxから4つを取り出して模式的に示している。これら4つの画素Pxは、2行2列に配列された第1画素Px1、第2画素Px2、第3画素Px3および第4画素Px4を含む。これらのうち、第1画素Px1および第2画素Px2は、同一の行に位置し、他方、第3画素Px3および第4画素Px4は、第1画素Px1および第2画素Px2とは異なる同一の行に位置する。画素の基本的な回路構成は、これらの画素Px1~Px4の間で共通であり、したがって以下では、第1画素Px1に注目して各画素の例示的な構成を説明する。
【0036】
第1画素Pxは、光電変換部10と、光電変換部10に電気的に接続された読出し回路20とを含む。後述するように、光電変換部10は、画素電極と、対向電極と、これらの電極に挟まれた光電変換層とを有する。各画素の光電変換部10は、電圧供給回路190に接続された電圧線192との電気的接続を有し、撮像装置100の動作時に、画素電極と対向電極との間に所定の電圧を印加可能に構成されている。電圧供給回路190は、撮像装置100の動作時に各画素の光電変換部10に所定の電圧を印加可能に構成されていればよく、特定の電源回路に限定されない。電圧供給回路190は、所定の電圧を生成する回路であってもよいし、他の電源から供給された電圧を所定の電圧に変換する回路であってもよい。電圧供給回路190は、行走査回路130の一部であってもよい。
【0037】
図2に例示する構成において、読出し回路20は、信号検出トランジスタ22、アドレストランジスタ24およびリセットトランジスタ26を含む。信号検出トランジスタ22、アドレストランジスタ24およびリセットトランジスタ26は、典型的には、半導体基板110に形成された電界効果トランジスタであり、以下では、NチャンネルMOSFETをこれらトランジスタに用いた例を説明する。
【0038】
信号検出トランジスタ22のゲートは、光電変換部10の画素電極に接続される。信号検出トランジスタ22のソースは、アドレストランジスタ24を介して、対応する出力信号線S
jに接続される。ここでは、第1画素Px1および第4画素Px4が同一列に属しており、これらの画素の読出し回路20に含まれる信号検出トランジスタ22のソースは、ともに同一の出力信号線S
jに電気的に接続される。
図2に模式的に示すように、A/D変換回路140は、カラム信号処理回路143などの、出力信号線S
jごとに設けられた複数の要素を有し得る。これら複数の要素のそれぞれは、複数の出力信号線のうち対応する1つに接続されている。他方、信号検出トランジスタ22のドレインは、電源線194に接続される。電源線194は、撮像装置100の動作時に3.3V程度の電源電圧VDDが印加されることによりソースフォロワ電源として機能する。
【0039】
アドレストランジスタ24のゲートには、行信号線Riが接続される。行走査回路130は、行信号線Riに印加する電圧レベルの制御により、アドレストランジスタ24のオンおよびオフを切り替える。これにより、行走査回路130は、選択した行に属する画素Pxから、対応する出力信号線に信号を読み出すことができる。
【0040】
この例では、読出し回路20は、リセットトランジスタ26を含んでいる。リセットトランジスタ26のドレインおよびソースの一方は、光電変換部10を信号検出トランジスタ22のゲートに電気的に接続するノードFDに接続されている。リセットトランジスタ26のドレインおよびソースの他方は、リセット電圧線196に接続される。リセット電圧線196は、リセット電圧供給回路198に接続されている。撮像装置100の動作時、所定のリセット電圧VRSTがリセット電圧供給回路198からリセット電圧線196に印加される。リセット電圧VRSTとしては、例えば0Vまたは0V付近の電圧が用いられる。リセット電圧供給回路198は、撮像装置100の動作時に各画素に所定のリセット電圧を印加可能に構成されていればよく、電圧供給回路190と同様に特定の電源回路に限定されない。リセット電圧供給回路198は、電圧供給回路190から独立した回路であってもよく、リセット電圧供給回路198および電圧供給回路190の一方が他方の一部であってもよい。
【0041】
複数の画素Pxに対応して複数のリセット信号線Qiが設けられる。図示するように、典型的には、同一行に属する複数の画素Pxのリセットトランジスタ26のゲートに、共通して1つのリセット信号線Qiが接続される。この例では、リセット信号線Qiは、行走査回路130との接続を有する。したがって、行走査回路130は、リセット信号線Qiに印加する電圧レベルの制御により、複数の画素Pxの行単位でリセットトランジスタ26をオンして、リセットトランジスタ26がオンとされた画素PxのノードFDの電位をVRSTにリセットすることができる。
【0042】
(画素Pxのデバイス構造)
図3は、第1画素Px1のデバイス構造を模式的に示す。第1画素Px1は、概略的には、読出し回路20が形成された半導体基板110と、半導体基板110に支持された光電変換部10とを含む。
図3に示すように、典型的には、読出し回路20を覆う絶縁層50が半導体基板110と光電変換部10との間に配置される。
【0043】
光電変換部10は、絶縁層50に支持された画素電極11、透光性の対向電極13、および、画素電極11と対向電極13との間に位置する光電変換層12を含む。画素電極11は、光電変換層12よりも半導体基板110の近くに位置し、アルミニウム、銅などの金属、金属窒化物、または、不純物がドープされることにより導電性が付与されたポリシリコンなどから形成され得る。
図3に示すように、画素電極11は、隣接する他の画素の画素電極11から空間的に分離されることにより、これらから電気的に分離されている。
【0044】
対向電極13は、被写体からの光が到来する側に位置する。対向電極13は、ITOなどの導電性材料から形成される透光性の電極である。なお、本明細書における「透光性」の用語は、光電変換層12が吸収可能な波長の光の少なくとも一部を透過することを意味し、可視光の波長範囲全体にわたって光を透過することは必須ではない。対向電極13の、光電変換層12とは反対側の主面上には、カラーフィルタなどの光学フィルタ、マイクロレンズなどが配置され得る。
【0045】
対向電極13は、典型的には、複数の画素に跨って連続した単一の電極層の形で設けられる。前述の電圧線192は、光電変換部10の対向電極13に接続される。
図2では、複数の画素の光電変換部10ごとに電圧線192が接続されているように図示されているが、典型的には、各画素の対向電極13は、複数の画素の間で連続した単一の透光性の電極の一部である。したがって、各画素の対向電極13は、基本的に等電位であり、電圧線192が複数本に分岐した配線であることは必須ではない。
【0046】
光電変換層12は、有機材料またはアモルファスシリコンなどの無機材料から形成され、対向電極13を透過した光の入射を受けて電荷対を発生させる。対向電極13と同様に、光電変換層12は、典型的には、複数の画素に跨って連続した単一の光電変換構造の形で設けられる。すなわち、各画素中の光電変換層12は、複数の画素にわたって連続的に形成された光電変換層の一部であり得る。
【0047】
光電変換材料として、1種以上の適当な材料を選択して光電変換層12を形成することにより、例えば、可視域および赤外域の両方に感度を示す光電変換層12を得ることが可能である。このような材料例は、例えば国際公開第2018/025544号において詳細に説明されている。参考のために、国際公開第2018/025544号の開示内容の全てを本明細書に援用する。光電変換層12は、量子ドットおよび/またはナノチューブから構成されていてもよい。あるいは、光電変換層12が、光電変換材料として量子ドットおよび/またはナノチューブを含んでいてもよい。光電変換層12は、有機材料から構成される層と無機材料から構成される層とを含んでいてもよい。
【0048】
半導体基板110と光電変換部10との間に位置する絶縁層50は、例えば、各々が二酸化シリコンから形成された複数の絶縁層を含む。
図3に模式的に示すように、絶縁層50の内部には、一端が光電変換部10の画素電極11に接続された導電構造52を少なくとも含む多層配線が設けられる。導電構造52は、銅などの金属から形成されたビアおよび配線、ポリシリコンから形成されたプラグなどを含み得る。図示する例において、導電構造52の他端は、半導体基板110に形成された不純物領域111に電気的に接続されている。
【0049】
半導体基板110は、不純物領域111に加えて、不純物領域112、113、114および115を有する。半導体基板110は、さらに、画素Pxごとに設けられた読出し回路20を画素Px間で電気的に分離する素子分離領域116も有する。以下では、半導体基板110としてP型シリコン基板を例示する。半導体基板110は、表面に半導体層が設けられた絶縁基板などであってもよい。
【0050】
不純物領域111、112、113、114および115のそれぞれは、典型的には、N型の拡散領域である。これらの不純物領域のうち、導電構造52が接続された不純物領域111は、リセットトランジスタ26のソース領域およびドレイン領域の一方として機能する。リセットトランジスタ26は、さらに、ソース領域およびドレイン領域の他方として機能する不純物領域112と、半導体基板110上のゲート絶縁層26gと、ゲート絶縁層26g上のゲート電極26eとを含む。
図3では図示が省略されているが、不純物領域112には、上述のリセット電圧線196が接続される。
【0051】
信号検出トランジスタ22は、不純物領域113および不純物領域114と、半導体基板110上のゲート絶縁層22gと、ゲート絶縁層22g上のゲート電極22eとを含む。不純物領域113は、信号検出トランジスタ22のドレイン領域として機能し、不純物領域114は、信号検出トランジスタ22のソース領域として機能する。不純物領域113には、上述の電源線194が接続される。
図3に模式的に示すように、素子分離領域116は、信号検出トランジスタ22とリセットトランジスタ26との間にも設けられる。
【0052】
アドレストランジスタ24は、不純物領域114および不純物領域115と、半導体基板110上のゲート絶縁層24gと、ゲート絶縁層24g上のゲート電極24eとを含む。不純物領域114および不純物領域115は、それぞれ、アドレストランジスタ24のドレイン領域およびソース領域として機能する。
図3に例示する構成において、アドレストランジスタ24は、不純物領域114を信号検出トランジスタ22と共有している。不純物領域115には、上述の複数の出力信号線S
jのうちの対応する1つが接続される。
【0053】
絶縁層50は、これら信号検出トランジスタ22、アドレストランジスタ24およびリセットトランジスタ26を覆う。
図3に模式的に示すように、絶縁層50中の導電構造52は、信号検出トランジスタ22のゲート電極22eとの間にも電気的接続を有する。すなわち、各画素中の導電構造52は、光電変換部10の画素電極11と、半導体基板110に形成された信号検出トランジスタ22などを含む読出し回路20とを互いに電気的に接続する機能を有する。
【0054】
さらに、導電構造52は、画素電極11によって収集される電荷、すなわち信号電荷を一時的に蓄積する電荷蓄積領域の一部としての機能も有する。
図2を参照しながら説明したように、電圧供給回路190は、電圧線192を介して各画素の光電変換部10に所定の電圧を印加する。例えば光電変換部10の対向電極13への電圧の印加によって、露光期間に、対向電極13と画素電極11との間に所定の電位差ΔVを印加することができる。例えば画素電極11を基準として、画素電極11よりも対向電極13の方が電位が高くなるように対向電極13に電圧を印加することにより、光の入射によって光電変換層12中に生成される正および負の電荷のうち、正の極性を有する電荷、例えば、正孔を信号電荷として画素電極11によって収集することができる。信号電荷は、導電構造52をその一部に含む電荷蓄積領域に一時的に蓄積される。導電構造52と同様に、半導体基板110に形成された不純物領域111、光電変換部10の画素電極11、および、信号検出トランジスタ22のゲート電極22eも、信号電荷を一時的に蓄積する電荷蓄積領域の一部として機能する。
【0055】
(撮像装置100の例示的な駆動方法)
図4は、本開示のある実施形態による撮像装置の駆動方法の一例を説明するための図である。
図4中、一番上のチャートは、垂直同期信号VDのパルスを示す。垂直同期信号VDのパルスの立ち上がりは、信号電荷の蓄積のための露光期間をその一部に含むフレーム期間の開始を表す。
図4中、上から2番目のチャートは、水平同期信号HDのパルスを示す。あるパルスの立ち上がりから次のパルスの立ち上がりまでの期間が、1つの水平走査期間である1Hに対応する。
図4中、上から3番目のチャートは、光源制御装置210による光源200のオンおよびオフのタイミングを示している。
【0056】
図4には、撮像領域に含まれる複数の画素Pxの動作を示す複数のブロックもあわせて1つの図に示されている。簡単のために、ここでは、複数の画素Pxの行数が第0行R
0~第5行R
5の6行であるとしており、画素Pxの動作を複数の矩形のブロックにより模式的に示している。
図4中、例えば白い矩形のブロックは、フレーム期間のうちの露光期間を模式的に表し、垂直線によるハッチングが付された矩形のブロックは、暗時の信号レベルに相当するリセットレベルの読出しの期間を表す。また、斜め線によるハッチングが付された矩形のブロックは、被写体の画像を表現する画素信号の読出しの期間を表している。
【0057】
図4は、複数の画素の行ごとに露光および信号の読出しを実行する、いわゆるローリングシャッタに基づく動作の一例を示している。ここでは、まず、第0行R
0~第5行R
5のうち第0行R
0に注目する。画像の取得においては、まず、各画素Pxの電荷蓄積領域のリセットが実行される。
図4に示す例では、垂直同期信号VDに基づき、第0行R
0に属する複数の画素のリセットを時刻t0に開始している。
【0058】
具体的には、リセットトランジスタ26をオンすることにより、ノードFDの電位をリセット電圧線196の電位に揃える。すなわち、光電変換部10の画素電極11の電圧をリセット電圧V
RSTとする。
図2および
図3から理解されるように、読出し回路20の信号検出トランジスタ22は、導電構造52を介して画素電極11にそのゲート電極22eが電気的に接続されることにより、画素電極11の電位に応じた信号を出力する。すなわち、読出し回路20は、信号検出トランジスタ22を含むソースフォロワにより、画素電極11の電位に応じたアナログ信号を、対応する出力信号線S
jに出力する。
【0059】
リセットトランジスタ26をオフとした後、アドレストランジスタ24をオンとすることにより、信号検出トランジスタ22のゲート電極22eに印加されるリセット電圧VRSTに応じた信号が、出力信号線Sjに出力される。このときに出力信号線Sjに出力される信号は、リセットレベルを表現するアナログ信号であり、通常、リセットトランジスタ26のオフに伴って生じるリセットノイズを含んでいる。以下では、リセットレベルを表現するアナログ信号を便宜的にリセット信号と呼ぶ。
【0060】
出力信号線S
jに読み出されたリセット信号は、A/D変換回路140によってデジタル信号に変換される。リセット信号の読出し後、アドレストランジスタ24をオフとする。
図4に模式的に示すように、水平同期信号HDに同期して、上述の読出し動作が行単位で順次に実行される。水平同期信号HDのパルスの間隔すなわち1H期間は、ある行が選択されてから次の行が選択されるまでの期間を表す。この例では、時刻t0から時刻t1までの期間に、第0行R
0に属する画素のリセットおよび画素からの信号の読み出しを実行しており、時刻t1から時刻t2までの期間に、第1行R
1に属する画素のリセットおよび画素からの信号の読み出しを実行している。第2行R
2以降についても同様の動作が順次に実行される。以上から理解されるように、リセットレベルの読出し期間には、画素の電荷蓄積領域の電位をリセットするためのリセット期間が含まれ得る。
図4において時刻t0から時刻t6までの間に読み出されたリセット信号に対応するデジタル信号は、第1フレームメモリ172に保持される。すなわち、リセットレベルの読出し期間の完了後の第1フレームメモリ172は、1フレーム分のデジタル信号に相当する画像データを保持した状態にある。
【0061】
再び第0行R0に属する画素に注目する。リセット信号の読出し後、露光期間が開始される。この例では、第0行R0に着目すると、時刻t1から時刻t8の期間がk番目のフレーム期間における、第0行R0に関する露光期間とされている。ここで、kは、0以上の整数である。露光期間は、画素に対する露光量に応じた信号電荷を電荷蓄積領域に蓄積するための期間である。複数の画素Pxの各行の露光期間の長さは、例えば1/60秒~1/16000秒の範囲である。
【0062】
このとき、各画素Pxの光電変換部10の対向電極13は、電圧線192を介して電圧供給回路190から所定の電圧V1の供給を受けることにより、画素電極11に対して例えば高電位の状態とされる。リセット直後の画素電極11の電位は、上述のリセット電圧VRSTによって決まり、リセットの直後、画素電極11と対向電極13との間には(V1-VRST)のバイアス電圧が印加された状態にある。
【0063】
画素電極11に対して対向電極13の電位が相対的に高くされることにより、光電変換によって生じた電荷対のうち正の電荷が画素電極11によって収集される。不純物領域111の形成によって半導体基板110中に形成されるPN接合は、画素電極11によって収集された正電荷を一時的に蓄積する接合容量として機能する。信号電荷として正孔を利用する場合、不純物領域111への信号電荷の蓄積に伴い、電荷蓄積部としての不純物領域111の電位は、上昇する。なお、本開示の典型的な実施形態では、(V1-VRST)>0であるが、例えば、画素電極11よりも対向電極13の電位が低くなるような電圧を対向電極13に印加することにより、例えば電子を信号電荷として利用することももちろん可能である。
【0064】
所定の時間の経過後、画素信号の読出しを実行する。この例では、垂直同期信号VDに基づき、時刻t8に、第0行R0に属する画素からの信号の読出しを開始している。具体的には、第0行R0の画素の読出し回路20中のアドレストランジスタ24をオンとする。上述したように、読出し回路20は、画素電極11の電位に応じたアナログ信号を、対応する出力信号線Sjに出力する。このときに第0行R0の画素から読み出される信号は、第0行R0に関する露光期間に電荷蓄積領域に蓄積された電荷量に応じたアナログ信号であり、太陽光等の環境光に基づく被写体の像を表現する。説明の便宜のために、以下では、k番目のフレーム期間中の露光期間に蓄積された電荷量に応じたアナログ信号を第1の画素信号と呼ぶ。この第1の画素信号には、露光期間の前に実行されたリセット動作によって生じたリセットノイズが含まれている。第1の画素信号の読出し後、アドレストランジスタ24は、再びオフとされる。
【0065】
読出し回路20を介して出力信号線Sjに読出された第1の画素信号は、A/D変換回路140によってデジタル信号に変換される。本開示の実施形態では、A/D変換回路140によって生成された、第1の画素信号に対応するデジタル信号が、第2フレームメモリ174に一時的に保持される。
【0066】
第1行R1~第5行R5についても、上述した露光および信号読出しの動作が時刻t9から時刻t14までの期間に行単位で順次に実行される。第0行R0~第5行R5までの第1の画素信号の読出しが完了することにより、k番目のフレーム期間が終了する。このとき、第2フレームメモリ174は、1フレーム分のデジタル信号に相当する画像データを保持した状態にある。
【0067】
次に、k番目のフレーム期間に続く(k+1)番目のフレーム期間の画像データの取得を実行する。このときの各画素Pxの信号電荷蓄積の動作および信号読出しの動作は、k番目のフレーム期間と基本的には同様である。ただし、k番目のフレーム期間と(k+1)番目のフレーム期間との間では、各画素Pxのリセットを行わない。
【0068】
図4に示す例において例えば第0行R
0に注目すると、(k+1)番目のフレーム期間の露光期間は、時刻t8に開始されている。本開示の実施形態では、k番目のフレーム期間の露光期間と、その1つ後の露光期間である(k+1)番目のフレーム期間の露光期間との間に、画素Pxのリセットを実行していない。したがって、読出し回路20を介した第1の画素信号の読出しにおいて、電荷蓄積領域からの信号電荷の流出および電荷蓄積領域へのさらなる電荷の流入は、基本的に生じない。すなわち、読出し回路20を介した第1の画素信号の読出しは、非破壊での読出しである。したがって、(k+1)番目のフレーム期間の露光期間の開始により、各画素Pxの電荷蓄積領域には、(k+1)番目のフレーム期間の露光期間に光電変換によって生成された信号電荷が、1つ前の露光期間に蓄積された信号電荷に累積して蓄積される。
【0069】
第0行R
0に注目したとき、この例では、時刻t9から、読出し回路20を介したアナログ信号の読出しの開始である時刻t16までの期間が、(k+1)番目のフレーム期間の露光期間に相当する。ここで、本開示の実施形態では、k番目のフレーム期間の露光期間および(k+1)番目のフレーム期間の露光期間の一方は、光源200がオンとされる期間を含む。
図4に示す例では、時刻t14から時刻t16の期間、光源200がオンとされている。
【0070】
光源200がオンとされている期間、被写体には、光源200から出射された例えば赤外光が環境光に重畳された光が照射される。したがって、各画素Pxの電荷蓄積領域には、赤外光を含む、被写体からの反射光の強度に応じた信号電荷が蓄積されることになる。すなわち、k番目のフレーム期間の露光期間から信号電荷が累積して蓄積されることによる電荷蓄積領域の電位の上昇は、赤外光の照射に応じた増分を含む。この電位の上昇は、純粋に赤外光のみを被写体に照射したときに得られる信号電荷量を反映している。特に、この例では、
図4に模式的に示すように、露光期間に含まれる、光源200のオンの期間の長さを複数の画素Pxの各行の間で共通としている。したがって、光源200がオンとされたことに起因する信号電荷の増分に対応する画素信号は、光源200からの赤外光に基づく被写体の画像を表現するものになる。
【0071】
光源200から出射される光としては、赤外域の第1波長にピークを有する赤外光を選択することができる。第1波長が例えば1300nm以上1500nm以下の範囲にあると、太陽光のスペクトルから欠落した波長を効果的に利用することが可能になるので有利である。第1波長として、太陽光から欠落している波長を選択することにより、外乱光による影響が抑制された撮像を実行することができる。なお、光源200からの光を利用して測距を行うような応用においては、ストライプ、ランダムなドットなどの、反射光のパターンが被写体表面の凹凸を反映するようなパターンの光が光源200から出射され得る。
【0072】
露光期間の終了後、k番目のフレーム期間と同様にして、複数の画素Pxの行単位で画素信号の読出しを順次に実行する。この例では、垂直同期信号VDに基づき、時刻t16から、第0行R0に属する複数の画素の読出しを開始している。読出し回路20を介してこのときに各画素から読み出されるアナログ信号は、k番目のフレーム期間中の露光期間、および、(k+1)番目のフレーム期間中の露光期間に画素に累積して蓄積された電荷量に応じた信号であり、以下では、このアナログ信号を第2の画素信号と呼ぶ。(k+1)番目のフレーム期間は、第5行R5に属する複数の画素からの第2の画素信号の読出しの完了により終了する。この例では、時刻t22に、(k+1)番目のフレーム期間が終了している。
【0073】
読出し回路20を介して出力信号線Sjに読出された第2の画素信号は、第1の画素信号と同様に、A/D変換回路140によってデジタル信号に変換され、画像処理回路170に出力される。画像処理回路170は、例えば、(k+1)番目のフレーム期間に関する第2の画素信号に対応するデジタル信号と、第2フレームメモリ174に一時的に保持されていた、k番目のフレーム期間に関する第1の画素信号に対応するデジタル信号との間の差分を算出する。以下、この差分を便宜的に「第1差分」と呼ぶ。
【0074】
(k+1)番目のフレーム期間の露光期間には、各画素の電荷蓄積領域に、光源200からの赤外光を含む、被写体からの反射光の強度に応じた信号電荷が累積的に蓄積される。すなわち、(k+1)番目のフレーム期間の露光期間に蓄積される信号電荷には、環境光のうち被写体によって反射された成分の光電変換によって生成された電荷と、光源200から照射された光のうち被写体によって反射された成分の光電変換によって生成された電荷とが含まれる。これらのうちの前者の電荷量は、(k+1)番目のフレーム期間とk番目のフレーム期間との間で露光期間の長さがほぼ同じである場合、k番目のフレーム期間の露光期間において画素の電荷蓄積領域に蓄積される電荷量とほとんど差が無いといえる。したがって、第2の画素信号に対応するデジタル信号と第1の画素信号に対応するデジタル信号とから算出される第1差分は、太陽光または照明器具からの光などの環境光の下で被写体から反射された光の強度を反映した信号電荷量と、純粋に赤外光のみを被写体に照射したときに得られる信号電荷量との和に対応する。
【0075】
ここで、第1の画素信号にリセットノイズが含まれる結果、第2フレームメモリ174に保持されているデジタル信号は、リセットノイズに対応した成分を含んでいる。しかしながら、本開示の実施形態では、互いに隣接する2つのフレーム期間の間で画素のリセットを行っていないので、このリセットノイズに対応した成分は、(k+1)番目のフレーム期間に関する第2の画素信号に対応するデジタル信号にも同様に含まれている。したがって、第2フレームメモリ174に保持されているデジタル信号と、第2の画素信号に対応するデジタル信号との間のデジタル差分処理により得られる第1差分からは、リセットノイズに対応した成分が除去されている。
【0076】
また、画像処理回路170は、第2フレームメモリ174に一時的に保持されていたデジタル信号と、第1フレームメモリ172に一時的に保持されていた、リセット信号に対応するデジタル信号との差分を算出する。以下、この差分を便宜的に「第2差分」と呼ぶ。上述したように、第1フレームメモリ172に一時的に保持されたデジタル信号には、リセットノイズに対応した成分が含まれる。しかしながら、このリセットノイズに対応した成分は、第2差分の算出の過程でやはり除去される。すなわち、第2差分は、太陽光または照明器具からの光などの環境光の下で被写体から反射された光の強度を反映した信号電荷量に対応している。
【0077】
画像処理回路170は、これら第1差分と第2差分との間の差分を出力する。ここでは、画像処理回路170は、第1差分から第2差分を差し引いたデジタル信号を最終的な信号として出力する。第1差分は、太陽光または照明器具からの光などの環境光の下で被写体から反射された光の強度を反映した信号電荷量と、純粋に赤外光のみを被写体に照射したときに得られる信号電荷量との和に対応し、他方、第2差分は、これらのうちの前者に相当する。したがって、第1差分と第2差分との間の差分は、純粋に光源200から照射された光のみの下での撮影によって得られる画像を表現する。すなわち、光源200から照射された光のうち被写体によって反射された成分の光電変換によって生成された電荷に基づく画像データを得ることが可能である。しかも、ここで得られる出力には、リセットノイズに対応する成分が含まれない。したがって、リセットノイズの影響がキャンセルされた形で、第1波長に関する画像を構築することが可能になり、例えば、測距への応用において測定の精度を向上させ得る。
【0078】
このように、本開示の実施形態によれば、リセットノイズの影響がキャンセルされた形で、特定の波長に関する画像データを得ることができる。なお、ここでは、画像処理回路170が第1差分および第2差分を算出してさらにこれらの差分を算出すると説明している。しかしながら、光源200から照射された光のみの下での撮影によって得られる画像を実質的に表現するデジタル信号あるいは画素値が得られれば、第1差分に対応する中間的な値および第2差分に対応する中間的な値がメモリなどに格納されることは、必須ではない。
【0079】
なお、第2差分と第1差分との間の差分は、以下のようにして実行されてもよい。まず、第2フレームメモリ174に一時的に保持しておいた、第1の画素信号に対応するデジタル信号と、第1フレームメモリ172に一時的に保持しておいた、リセット信号に対応するデジタル信号との差分である第2差分を算出し、その結果を第1フレームメモリ172に上書きする。その後、第2の画素信号に対応するデジタル信号と、第2フレームメモリ174に一時的に保持されているデジタル信号との差分である第1差分を算出し、その結果を第2フレームメモリ174に上書きする。そして、第1フレームメモリ172に保存されている、第2差分の計算結果と、第2フレームメモリ174に保存されている、第1差分の計算結果との差分を算出する。
【0080】
なお、ここでは、互いに隣接するk番目および(k+1)番目のフレーム期間のうち、後の(k+1)番目のフレーム期間の露光期間中に光源200をオンとしている。しかしながら、先のk番目のフレーム期間の露光期間中に選択的に光源200をオンとしてもよい。この場合、先ほどの例とは逆に、第1差分が、太陽光または照明器具からの光などの環境光の下で被写体から反射された光の強度を表現し、第2差分が、この強度にさらに光源200からの赤外光に関する強度を加えた強度を表現する。したがって、第2差分から第1差分を減算することにより、光源200から照射された光のうち被写体によって反射された成分の光電変換によって生成された電荷に基づく画像データを得ることができる。ここでもやはり、リセットノイズの影響は、第1差分および第2差分を求める過程でキャンセルされる。
【0081】
以上に説明したように、本開示の実施形態では、互いに隣接する2つのフレーム期間において、先の露光期間に蓄積された信号電荷量に応じた画素信号を非破壊で読出し、かつ、1つ後のフレーム期間の露光期間で露光によって生じた信号電荷を累積的に蓄積して画素信号を読み出す。さらに、これら画素信号の差分をデジタル信号の形で取得する。これにより、先のフレーム期間の露光期間に蓄積された信号電荷量と、その信号電荷量に追加して蓄積された信号電荷量との和に相当する画像データを得ることができる。さらに、リセットノイズに相当する成分が差分の過程で除かれる。
【0082】
また、本開示の実施形態では、先の露光期間に蓄積された信号電荷量に応じた画素信号と、その露光期間の開始前に画素から読み出されるアナログ信号との間の差分もデジタル信号の形で取得する。これにより、リセットノイズに相当する成分を除くことができ、純粋に先のフレーム期間の露光期間に蓄積された信号電荷量に対応する画像データが得られる。これらの画像データ間の差分を算出することにより、後のフレーム期間の露光期間に累積して蓄積された信号電荷量に基づく画像データを、リセットノイズに相当する成分が除去された形で得ることができる。
【0083】
さらに、本開示の実施形態では、いずれか一方のフレーム期間の露光期間の一部において光源200をオンとしているので、これら第1差分と第2差分との間の差分を得ることにより、実質的に光源200から出射された光のみ基づく画像を構築することが可能である。なお、フレーム期間ごとに画素のリセットを実行しないので、フレームレート向上の効果も得られる。
【0084】
図4を参照しながら説明した例では、第1フレームメモリ172に保持するデジタル信号として、リセット信号からアナログ-デジタル変換によって得られるデジタル信号を例示している。しかしながら、第1フレームメモリ172に保持するデジタル信号は、リセット信号に対応するデジタル信号に限定されない。リセット信号に対応するデジタル信号に変えて、例えば、互いに隣接する2つのフレーム期間のさらに1つ前のフレーム期間に含まれる露光期間に画素に蓄積された信号電荷量に対応する画素信号を読出し、その画素信号に対応するデジタル信号を第1フレームメモリ172に保持してもよい。この場合においても、第1差分と第2差分との間の差分を算出することにより、
図4を参照して説明した例と同様に、実質的に光源200からの赤外光のみに基づく画像データを、リセットノイズに相当する成分が除去された形で得ることができる。この場合においても、互いに隣接する2つのフレーム期間の間では画素のリセット動作を行わない。
【0085】
(撮像装置100の動作の他の例)
図5は、撮像装置100の他の動作例を説明するための図である。
図5に示す例では、(k+1)番目のフレーム期間中の露光期間のうち、時刻t11から時刻t20までの期間に、光源200をオンとしている。ここで、本開示の実施形態において、光源200によって被写体の全体を一括して照射することは、必須ではない。以下に説明するように、例えば、MEMSミラーなどの適当な光学系を用いて、光源200から出射される光を被写体上で走査するようにしてもよい。
【0086】
図6は、光源200がオンとされている期間に、光源200からの光で照射されている領域が被写体上でどのように遷移していくかを模式的に示す。
図6は、光源200からの光で被写体を垂直方向に走査した例を模式的に示している。
図6中、1H期間ごとに示された6段の矩形のブロックのうち、白抜きのブロックは、被写体の表面のうち光源200からの光で照射されている領域を表している。
図6に模式的に示すように、この例では、光源200からの光で照射されている領域は、紙面において上から下に向かって遷移している。
【0087】
なお、
図6に示す白抜きのブロック中の「R
0」などの符号は、複数の画素Pxのどの行の画素が、そのブロックに対応する領域からの反射光を受けるかを示している。
図6から理解されるように、光源200から照射される光に関し、信号電荷蓄積の時間は、6段のブロックの全ての段において1H期間の4倍の長さであって共通している。
【0088】
図7および
図8は、光源200からの光の走査をより高速化した例を示す。
図7および
図8は、それぞれ、
図5および
図6に対応する図である。
図5に示す例と比較して、
図7に示す例では、垂直同期信号VDのパルスの間隔である1V期間が1H期間の8倍の長さから6倍の長さに短縮されている。
【0089】
この例では、光源200をオンとする期間が、時刻t8から時刻t14までの期間に短縮されており、1H期間の6倍の期間に、光源200から出射された光による被写体の上端から下端までの走査が実行される。
図8に模式的に示すように、ここでは、複数の画素Pxのうち、光源200から出射されて被写体で反射された光を受ける画素の行が、1H期間の長さで遷移している。すなわち、この例では、光源200から照射される光に関する信号電荷蓄積の時間は、6段のブロックの全ての段に共通して1H期間の長さである。このように、1V期間を短縮し、光源200からの光の走査をより高速化することにより、フレームレートをさらに向上させ得る。
【0090】
なお、
図7に示す例では、第2の画素信号読出しの終了後、垂直同期信号VDのパルスに同期して、時刻t18に、次のフレーム期間に関するリセット動作を開始している。複数の画素Pxの第0行R
0~第5行R
5のそれぞれに着目すると、
図7に濃い網掛けの矩形で模式的に示すように、(k+1)番目のフレーム期間に関する第2の画素信号読出しと、その次の(k+2)番目のフレーム期間に関するリセット信号読出しの開始との間には、基本的に信号電荷の蓄積が不要な期間が生じている。
【0091】
ここで、電圧線192を介して電圧供給回路190から対向電極13に供給される電圧V1を調整し、画素電極11と対向電極13との間に印加されるバイアス電圧が(V1-VRST)=0となるようにすると、光電変換により電荷が生成されても、画素電極11による信号電荷の収集がほとんど生じなくなる。換言すれば、メカニカルシャッタを閉じたときと同様の状態を実現し得る。信号電荷の蓄積が不要な期間において画素電極11と対向電極13との間に印加されるバイアス電圧をほぼ0Vとすることにより、光電変換層12における暗電流の発生を抑制し得る。
【0092】
また、複数の画素Pxの全行に共通して、画素電極11と対向電極13との間に印加されるバイアス電圧をほぼ0Vとすることにより、信号電荷の蓄積のための期間を全ての画素の間で揃える、いわゆるグローバルシャッタの機能を電気的な制御で実現することが可能である。画素電極11と対向電極13との間に印加されるバイアス電圧の制御によるグローバルシャッタは、例えば国際公開第2017/094229号において詳細に説明されている。参考のために、国際公開第2017/094229号の開示内容の全てを本明細書に援用する。
【0093】
図9は、撮像装置100のさらに他の動作例を模式的に示す。
図9に示す例では、k番目のフレーム期間に含まれる露光期間のうち、時刻t6から時刻t8の期間において、電圧供給回路190から対向電極13に供給される電圧V1が選択的にハイレベルとされている。複数の画素Pxの各行に関し、露光期間のうち時刻t6から時刻t8の期間以外の期間では、電圧V1は、ローレベルに低下されている。
図9中に示す「LOW」は、画素電極11と対向電極13との間に印加されるバイアス電圧が(V1-V
RST)=0となるように、電圧供給回路190から出力される電圧が調整されていることを示す。
【0094】
この期間には、光電変換部10に光が入射しても、信号電荷の蓄積はほとんど生じない。換言すれば、k番目のフレーム期間における、信号電荷の蓄積のための実効的な期間は、時刻t6から時刻t8の期間に制限されている。さらに、信号電荷の蓄積が実質的に生じる期間は、第0行R0~第5行R5の間で揃っている。すなわち、グローバルシャッタによる画素信号の取得が実行される。
【0095】
(k+1)番目のフレーム期間に注目すると、ここでも、時刻t14から時刻t16の、露光期間の一部の期間において、電圧供給回路190から対向電極13に供給される電圧V1が選択的にハイレベルとされている。さらに、この例では、光源200をオンとする期間も時刻t14から時刻t16の期間に一致させられている。したがって、第2の画素信号に関しても、グローバルシャッタが適用された取得が実行される。第2の画素信号に対応するデジタル信号と、第1の画素信号に対応するデジタル信号との間の差分処理により、被写体が高速に動いている場合であっても、歪みのない、赤外光に基づく画像を得ることが可能である。
【0096】
上述の各例では、連続する2つのフレーム期間のうち、先のフレーム期間に含まれる露光期間における信号電荷の蓄積の前に画素Pxのリセットを実行している。換言すれば、上述の各例は、画素Pxのリセットを、2フレーム期間を単位として実行するような動作例である。しかしながら、画素Pxのリセットの周期は、フレーム期間の2倍に限定されない。電荷蓄積領域が許容可能な電荷量を上回らない限りにおいて、複数のフレーム期間にわたって信号電荷の累積的な蓄積を実行してもよい。
【0097】
図10は、本開示のある実施形態による撮像装置のさらに他の動作例を模式的に示す。
図10では、撮像領域に含まれる複数の画素Pxのうち、第0行R
0に属するある1つの画素についての、電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷量の時間的変化を模式的に示すグラフもあわせて1つの図に示されている。
図10の最下段に示すグラフの横軸は、時間Tを表す。グラフの縦軸は、注目した画素の電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷量Cを表しており、グラフの縦軸の読みは、ノードFDの電位の値に相当する。
図10の最下段に示すグラフ中の破線は、画素の電荷蓄積領域が蓄積可能な電荷量の最大値である飽和電荷量Ctを表している。
【0098】
図10に示す例では、k番目のフレーム期間に含まれる露光期間の開始の前に、各行の画素のリセットと、リセット信号の読出しとを実行している。その後、
図4を参照しながら説明した例と同様に、k番目のフレーム期間に関する第1の画素信号の読出し(時刻t8~時刻t14)と、続く(k+1)番目のフレーム期間に関する第2の画素信号の読出し(時刻t16~時刻t22)とを実行している。
【0099】
ここで、
図10の最下段に示すグラフが、撮像領域に含まれる複数の画素Pxのうち、電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷量が第2の画素信号の読出しの完了の時点で最も大きな画素に関する信号電荷量Cの変化を表しているとする。この例では、(k+1)番目のフレーム期間の終了の時点(時刻t22)において、その画素の電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の総量は、上述の飽和電荷量Ctを下回っている。したがって、撮像領域に含まれる複数の画素Pxのそれぞれは、(k+1)番目のフレーム期間の終了の時点で、さらに累積して電荷蓄積領域に信号電荷を蓄積可能な状態にあるといえる。
【0100】
このように、連続する2つのフレーム期間の終了の時点で各画素の電荷蓄積領域がさらなる信号電荷を受け入れ可能である場合には、画素のリセット動作を行わずに続けて次のフレーム期間の露光を開始してもよい。この例では、第2の画素信号の読出しに続けて、(k+2)番目のフレーム期間を開始して信号電荷の蓄積を行っている。ここでは、(k+2)番目のフレーム期間の終了の時点においても各画素の電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の総量は、飽和電荷量Ctを下回っている。したがって、(k+2)番目のフレーム期間の露光期間の完了後に各画素から読み出される第3の画素信号をも有効に利用することができる。なお、
図10中の「第3の画素信号」は、k番目、(k+1)番目および(k+2)番目のフレーム期間に含まれる露光期間に画素に累積して蓄積された電荷量に応じたアナログ信号を意味する。
【0101】
図10に例示するような動作は、光源からの赤外線の照射を同一の対象に向けて複数回実行する場合に特に有効である。例えば
図10に示すように、(k+2)番目のフレーム期間中の露光期間の一部において光源200をオンとしてもよい。このような動作によれば、被写体から反射された赤外光を複数回受光して信号電荷を蓄積できるので、より高い信号レベルを得ることができ、SN比を向上させ得る。
【0102】
連続する2つのフレーム期間に続けて、画素のリセット動作を行わずに次のフレーム期間の露光を開始するか否かを、電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の総量が飽和電荷量Ctを超えたか否かに応じて決定してもよい。
図11は、電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷の総量が飽和電荷量Ctを超えたと判定されたときに画素のリセット動作を実行する例を模式的に示す。
図11の最下段のグラフには、飽和電荷量Ctを示す破線に加えて、画素のリセット動作を実行するか否かの判定の基準となる閾値Thを表す破線もあわせて示されている。閾値Thは、飽和電荷量Ct未満の値として予め適切に設定される。
【0103】
また、
図11の最下段のグラフ中の実線および点線は、撮像領域に含まれる複数の画素Pxのある行(例えば第0行R
0)に属する画素のうちの1つにおける信号電荷量の例示的な変化と、他のある行(例えば第2行R
2)に属する画素のうちの1つにおける信号電荷量の例示的な変化とをそれぞれ模式的に表している。
図11に示す例では、第2行R
2のある画素の電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷量は、(k+1)番目のフレーム期間の終了の時点(時刻t22)においても上述の閾値Th以下である。他方、第0行R
0のある画素の電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷量は、第2の画素信号の読出しに続く露光によって、(k+1)番目のフレーム期間が終了する前に閾値Thを超えている。
【0104】
そのため、この例では、(k+1)番目のフレーム期間の終了後、次のフレーム期間の開始前に再び画素のリセット動作を実行している(時刻t22~時刻t28)。これにより、各画素の電荷蓄積領域の電位がリセットされ、信号電荷のオーバーフローに起因して劣化した画像の取得を回避することが可能である。このように、画素の電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷量をモニタリングし、信号電荷の総量が所定の閾値Thを超えたか否かの判定を実行して、その判定結果に応じて画素のリセットを実行してもよい。電荷蓄積領域に蓄積された信号電荷量は、例えば、読出し回路20を介して出力信号線Sjに読み出されるアナログ電圧またはA/D変換回路140からのデジタル出力をモニタリングすることにより、知ることができる。
【0105】
図12は、本開示の他のある実施形態による撮像装置の例示的な構成を概略的に示す。
図1を参照して説明した撮像装置100と比較して、
図12に示す撮像装置100Aは、第2の光源220と、光源220に接続された光源制御装置230とをさらに有している。光源制御装置230は、画像処理回路170に接続されており、画像処理回路170からの制御信号に基づき、光源220の動作を制御する。光源220は、例えば、k番目および(k+1)番目のフレーム期間のうち、光源200がオンとされる露光期間とは異なる露光期間においてオンとされる。
【0106】
光源220は、上述の第1波長とは異なる第2波長にピークを有する光を出射する。光源220は、光源200と同様に、赤外線を出射する赤外光源であってもよい。ただし、光源220から出射される光のピーク波長として、上述の第1波長とは異なる第2波長を選択する。
【0107】
(撮像装置100Aの例示的な駆動方法)
図13は、
図12に示す撮像装置100Aの駆動方法の一例を説明するための図である。ここでは、第1の光源200として、1450nm付近および1940nm付近のいずれの波長にもピークが位置しない赤外光を出射する光源を適用し、第2の光源220として、1450nm付近の波長にピークを有する赤外光を出射する光源を適用した場合の動作例を説明する。
図12に示す動作例は、夜間の屋外など、可視域の環境光の照度が低い場合、あるいは、光電変換部10の光電変換層12が可視光の波長範囲に感度を有しない場合に有用な駆動方法である。
【0108】
図13に示す例では、時刻t0から時刻t6までの期間にリセット信号の読出しを実行し、その後、k番目のフレームに関する露光と、(k+1)番目のフレームに関する露光とを実行している。さらに、k番目のフレーム期間の時刻t6から時刻t8までの期間に光源220を選択的にオンとし、(k+1)番目のフレーム期間の時刻t14から時刻t16までの期間に光源200を選択的にオンとしている。
【0109】
露光期間の一部において例えば光源220を選択的にオンとした場合、太陽光および可視域の人工照明がほとんど存在していない環境下では、光源220から出射されて被写体によって反射された光が、各画素の光電変換部10に到達する光の大部分を占める。すなわち、各画素の電荷蓄積領域に蓄積される信号電荷の量は、光源220から出射されて被写体によって反射された光の強度を反映する。露光期間の一部において例えば光源200を選択的にオンとした場合も同様である。
【0110】
例えば夜間などにおいて、
図13に示すように露光期間の少なくとも一部において光源200、220をオンとすることにより、実質的に赤外光のみに基づく画像を取得することが可能である。例えば、
図13に示す例において時刻t8から時刻t14までの期間に取得される第1の画素信号は、実質的に、光源220から出射された赤外光のみに基づく画像を表現する。第1の画素信号は、A/D変換回路140によってデジタル信号に変換され、第1の画素信号に対応するデジタル信号の形で第2フレームメモリ174に一時的に保持される。
【0111】
画像処理回路170は、(k+1)番目のフレーム期間に関する第2の画素信号に対応するデジタル信号と、第2フレームメモリ174に一時的に保持されていた、k番目のフレーム期間に関する第1の画素信号に対応するデジタル信号との間の差分である第1差分を算出する。この差分処理により、これまでの例と同様に、リセットノイズの影響が実質的にキャンセルされた1フレーム分の画像データが第1差分の形で得られる。
図13に示す例における第1差分は、時刻t16から時刻t22までの期間に取得される第2の画素信号のうち、第1の画素信号の信号レベルからの増分に対応する部分に相当し、実質的に、光源200から出射された赤外光のみに基づく画像を表現する。
【0112】
ここでも、第1フレームメモリ172には、
図13において時刻t0から時刻t6までの間に読み出されたリセット信号に対応するデジタル信号が保持されている。画像処理回路170は、さらに、第2フレームメモリ174に一時的に保持されていたデジタル信号と、第1フレームメモリ172に一時的に保持されていた、リセット信号に対応するデジタル信号との差分である第2差分を算出する。
図14に示す例における第2差分は、実質的に、光源220から出射された赤外光のみに基づく画像を表現する。
【0113】
画像処理回路170は、第1差分と第2差分との間の差分を算出する。ここで、光源200および光源220の出力に大きな違いが無いとする。このとき、第2差分と第1差分との間の差分として比較的大きな値が得られているにもかかわらず、例えば第2差分が0に近い値になることがあり得る。このような状況が生じる原因としては、光源220からの赤外光が照射される対象が光源220から大きく離れた位置にあるか、あるいは、光源220からの赤外光のほとんどが大気中の水分に吸収されてしまっているかの2つが考えられる。
【0114】
ここで、第2波長として、水分に吸収されやすい波長を選択し、他方、第1波長として、水分に吸収されにくい波長を選択していたとする。もし、第2差分が0に近い値であり、かつ、第2差分と第1差分との間の差分として比較的大きな値が得られたとすると、これは、赤外光が照射される対象が光源200、220からそれほど離れておらず、第1波長の光が大気中の水分にほとんど吸収されていることを意味する。すなわち、被写体までの距離が大きすぎるから第1波長の光に基づく信号レベルが低下しているのか、あるいは、水分による吸収が大きいから第1波長の光に基づく信号レベルが低下しているのかを判別することができる。第1波長の光を利用して測距を行うような場合には、複数の画素のうち、第1の画素信号に対応したデジタル信号と、リセット信号に対応したデジタル信号との間の第2差分が0に近い値となる画素についてはエラーとして扱い、その画素の周辺の画素に関する第2差分の値で補完するといった処理を実行してもよい。なお、光源220と光源220との間で波長を異ならせることに代えて、波長を共通として発光強度または照射領域などのパラメータを異ならせることによっても同様の効果を得ることが可能である。
【0115】
日中での撮影など、環境光の排除が難しい場合には、
図10を参照して説明した例のように、k番目のフレーム期間の露光期間中には光源200および220をオフとして第1の画素信号を取得し、(k+1)番目のフレーム期間の露光期間中に光源200および220の一方をオンとして第2の画素信号を取得すればよい。この場合、第2差分と第1差分との間の差分により、実質的に、(k+1)番目のフレーム期間の露光期間中に点灯させた光源からの光のみの下で撮影を実行したときに得られる画像と同様の画像が得られる。
【0116】
なお、(k+1)番目のフレーム期間と、それに続く(k+2)番目のフレーム期間との間で画素のリセット動作を実行せず、(k+2)番目のフレーム期間の露光期間中に光源200および220の他方を選択的にオンとして画素信号を得てもよい。これを第3の画素信号と呼ぶことにすると、第3の画素信号に対応したデジタル信号と、第2の画素信号に対応したデジタル信号との間の差分を求めることにより、実質的に、(k+2)番目のフレーム期間の露光期間中に点灯させた光源からの光のみの下で撮影を実行したときに得られる画像と同様の画像が得られる。
【0117】
第2の光源220として、可視光の波長域にピークを有する一般的なストロボ光源を適用してもよい。このとき、まず、先のフレーム期間中の露光期間の一部において第2の光源220をオンとし、次のフレーム期間中の露光期間の一部において、赤外光を出射する光源200をオンとしてもよいし、先のフレーム期間において光源200をオンとし、後のフレーム期間において光源220をオンとしてもよい。ただし、赤外光を出射する光源200を先のフレーム期間中の露光期間の一部においてオンとすると、画素の電荷蓄積領域により多くの信号電荷が蓄積され、その結果、累積して蓄積できる電荷量が小さくなって飽和に達しやすくなってしまうことがあり得る。また、画素の電荷蓄積領域に蓄積されている電荷量が大きいほど、不純物領域111(
図3参照)の電位が上昇して不純物領域111における暗電流が生じやすくなる。そのため、
図13に例示するように、赤外光を出射する光源200を後のフレーム期間中の露光期間の一部においてオンとする方が、一般には有利である。
【0118】
図14は、本開示のさらに他のある実施形態による撮像装置の例示的な構成を概略的に示す。
図14に示す撮像装置100Bは、複数の画素Pxの列ごとに2本の出力信号線の組を有する。
図14に示す例において、複数の画素Pxの例えば第j列に注目すると、第j列には、出力信号線S
jおよび出力信号線T
jが設けられている。なお、
図14では図面が過度に複雑になることを避けるために図示が省略されているが、これまでに説明した各例と同様に、撮像装置100Bは、光源200も有する。
【0119】
本実施形態では、複数の画素Pxの列ごとに設けられた2本の出力信号線のうちの一方は、例えば複数の画素Pxのうち偶数行の画素に接続され、2本の出力信号線のうちの他方は、複数の画素Pxのうち奇数行の画素に接続される。
図14に例示する構成において、出力信号線S
jは、第i行に位置する第1画素Px1の読出し回路20に接続されている。他方、出力信号線T
jは、第(i+1)行に位置する第4画素Px4の読出し回路20に接続されている。
【0120】
さらに、この例では、撮像装置100Bは、複数の画素Pxの列ごとに設けられた2本の出力信号線のうちの一方を介して偶数行の画素に電気的に接続された第1のA/D変換回路141と、他方の出力信号線を介して奇数行の画素に電気的に接続された第2のA/D変換回路142とを有している。
図14に示すように、A/D変換回路141は、第1のインターフェース161に接続されており、A/D変換回路142は、第2のインターフェース162に接続されている。第1のインターフェース161の出力および第2のインターフェース162の出力は、例えば、第1フレームメモリ172および第2フレームメモリ174を有する画像処理回路170(
図2参照)に供給される。
【0121】
(撮像装置100Bの例示的な駆動方法)
複数の画素Pxの偶数行と奇数行とに独立して出力信号線を配置することにより、複数の画素Pxの偶数行に位置する画素と、奇数行に位置する画素とから並行して独立に信号を読み出すことが可能になる。
図15は、
図14に示す撮像装置100Bの駆動方法の一例を説明するための図である。
【0122】
この例では、k番目のフレーム期間の露光期間に先立ち、リセット信号の読出しを実行している。このリセット信号の読出しは、複数の画素Pxの列ごとに配置された2本の出力信号線のうちのいずれか一方を介して実行される。ここで、時刻t4から時刻t5の期間に注目すると、出力信号線Tjを介した第3行R3の画素に関するリセット信号の読出しと並行して、第0行R0の画素からの第1の画素信号の読出しをも実行している。この第1の画素信号の読出しは、出力信号線Sjを介して実行される。
【0123】
このように、複数の画素Pxの列ごとに2本の出力信号線を配置する構成によれば、複数の画素Pxの相異なる行に属する画素からの2種の信号の読出しを一括して実行することが可能になる。換言すれば、2種の信号に関する読出し期間にオーバーラップを許容することができ、この例では、k番目のフレームに関するリセット信号の読出し期間と、第1の画素信号の読出しの期間とをオーバーラップさせている。さらに、ここでは、k番目のフレームに関する第1の画素信号の読出しの期間と、(k+1)番目のフレームに関する第2の画素信号の読出しの期間とをもオーバーラップさせている。このように、複数の画素Pxの列ごとに2本の出力信号線を配置する構成によれば、複数のフレーム期間の間で信号の読出し期間をオーバーラップさせることもでき、フレームレート向上の効果が得られる。
【0124】
また、フレームレートの向上の際に露光時間を短縮することにより、光電変換層12における暗電流および/または不純物領域111における暗電流の影響を低減することができる。このような暗電流は、露光時間に比例した増大を示すからである。特に、複数の画素Pxの各行について、光源200および/または光源220の点灯している期間を露光期間になるべく近づけることにより、暗電流を抑制しながらも高いSN比を得ることが可能になる。
【0125】
なお、この例では、
図7を参照しながら説明した例と同様にして、時刻t6から時刻t12の間に、光源200から出射される光を被写体上で走査している。複数の画素Pxのうち、光源200から出射されて被写体で反射された光を受ける画素の行の遷移の様子は、
図8に示す例と同様であり得る。
【0126】
以上に説明したように、本開示の実施形態によれば、各画素の読出し回路20を介して読み出された第1アナログ信号に対応するデジタル信号を第1フレームメモリ172に保持する。また、第1アナログ信号に関する読出し期間に続く第1露光期間に画素に蓄積された電荷量に応じた第2アナログ信号に対応するデジタル信号を第2フレームメモリ174に保持する。第1フレームメモリ172および第2フレームメモリ174に保持された信号同士の差分を算出することにより、リセットノイズが実質的に除去された信号を第1差分の形で得ることができる。さらに、例えば第1露光期間の1つ後の第2露光期間において光源200をオンとして第1露光期間に蓄積された信号電荷に累積して信号電荷の蓄積を実行する。画素に累積して蓄積された電荷量に応じた第3アナログ信号に対応するデジタル信号と第2フレームメモリ174に保持されたデジタル信号との差分を取得し、この差分と上述の第1差分との差分をさらに算出することにより、実質的に光源200からの光のみに基づく画像データをリセットノイズが除去された形で得ることができる。
【0127】
なお、
図1および
図12では、行走査回路130、制御回路250、A/D変換回路140、デジタルメモリ150およびインターフェース160が、複数の画素Pxの形成された半導体基板110上に配置された構成を例示している。すなわち、複数の画素Pxの形成された半導体基板110、行走査回路130、制御回路250、A/D変換回路140、デジタルメモリ150およびインターフェース160は、これらが一体とされたパッケージの形で提供され得る。これらの回路の一部または全部は、各画素Pxの読出し回路20に加えて半導体基板110に一体的に形成されてもよい。すなわち、これらの回路は、各画素Pxの読出し回路20の形成のプロセスと同様のプロセスを適用して半導体基板110に形成され得る。例えば、制御回路250は、半導体基板110に形成された集積回路であってもよい。ただし、これらの回路の全部が、各画素Pxとともに半導体基板110に一体的に形成されることは、必須ではない。これらの回路の一部または全部が、各画素Pxの形成された半導体基板110とは異なる基板上に配置されることもあり得る。
【0128】
上述の制御回路250の機能および画像処理回路170の機能は、汎用の処理回路とソフトウェアとの組み合わせによって実現されてもよいし、このような処理に特化したハードウェアによって実現されてもよい。制御回路250が、画像処理回路170の処理結果に応じた、露光時間に関する設定を画像処理回路170から受け取り、露光時間に関する設定に応じた駆動信号を行走査回路130、A/D変換回路140などに供給するように構成されていてもよい。
【0129】
また、画像処理回路170は、半導体基板110に配置された回路群とは別個のチップまたはパッケージの形で撮像装置に設けられてもよい。第1フレームメモリ172および/または第2フレームメモリ174が、画像処理回路170とは別個のチップまたはパッケージの形で撮像装置内に配置されていてもよい。あるいは、画像処理回路170および/または光源制御装置210、230が半導体基板110上に配置されてもかまわない。画像処理回路170が制御回路250の一部であってもよい。画像処理回路170または制御回路250が、距離計測演算、波長情報分離などの処理を実行するように構成されてもよい。
【0130】
本開示の実施形態による撮像装置は、複数の画素Pxが形成された半導体基板110および画像処理回路170が一体とされたパッケージの形で提供されてもよい。本開示の実施形態による撮像装置は、イメージセンサのチップの形態であってもよいし、カメラの形態であってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0131】
本開示の実施形態は、例えば、医療用カメラ、セキュリティカメラ、車両に搭載されて使用されるカメラ、測距カメラ、顕微鏡カメラ、ドローンと呼ばれる無人航空機用カメラ、ロボット用カメラなどの種々のカメラおよびカメラシステムに用いることができる。車両搭載用カメラは、例えば、車両が安全に走行するための、制御装置に対する入力として利用され得る。あるいは、車両が安全に走行するための、オペレータの支援に利用され得る。
【符号の説明】
【0132】
10 光電変換部
11 画素電極
12 光電変換層
13 対向電極
20 読出し回路
100、100A、100B 撮像装置
110 半導体基板
130 行走査回路
140~142 A/D変換回路
170 画像処理回路
172 第1フレームメモリ
174 第2フレームメモリ
200、220 光源
Px 画素
Sj、Tj 出力信号線