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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ジブクレーン遠隔操作システム
(51)【国際特許分類】
   B66C 13/40 20060101AFI20240510BHJP
   B66C 23/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B66C13/40 D
B66C23/00 Z
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2023191928
(22)【出願日】2023-11-10
【審査請求日】2024-02-15
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】522044593
【氏名又は名称】イワキテック株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】519112117
【氏名又は名称】日昇無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100132964
【弁理士】
【氏名又は名称】信末 孝之
(72)【発明者】
【氏名】井手 久人
(72)【発明者】
【氏名】吉田 雅之
【審査官】八板 直人
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/164199(WO,A1)
【文献】特開2017-61382(JP,A)
【文献】特開平8-143274(JP,A)
【文献】特開平8-143270(JP,A)
【文献】特開平7-117982(JP,A)
【文献】特開2008-1475(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0191025(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B66C 1/00-25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
地上に立設された地上側設備と、該地上側設備に旋回部を介して接続された運転側設備とを有するジブクレーンを遠隔操作するジブクレーン遠隔操作システムであって、
前記地上側設備に設けられた、地上の作業者が操作する送信器からの指示信号を受信する受信器と、前記受信した指示信号を変換する第1の変換器と、
前記運転側設備に設けられた、前記地上側設備から送信された指示信号を変換する第2の変換器と、前記変換された指示信号に基づいてジブクレーンを運転制御する運転制御装置と、
前記地上側設備及び前記運転側設備に設けられた、前記第1の変換器と前記第2の変換器とを接続するLAN回線とを有し、
前記第1の変換器は前記受信器が受信した指示信号を前記LAN回線で送信可能な信号に変換し、前記第2の変換器は前記LAN回線を経由して送信された指示信号を前記運転制御装置が処理可能な信号に変換することを特徴とするジブクレーン遠隔操作システム。
【請求項2】
前記LAN回線が前記旋回部で無線接続されていることを特徴とする請求項1に記載のジブクレーン遠隔操作システム。
【請求項3】
前記地上側設備及び前記運転側設備の一方に設けられた複数のアンテナの周りを、他方に設けられたアンテナが相対的に周回するように構成されていることを特徴とする請求項2に記載のジブクレーン遠隔操作システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジブクレーン遠隔操作システムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、造船所や港湾埠頭等ではジブクレーンが使用されている。図3に示すように、ジブクレーン100は、ジブ4(肘=アーム)を持ったクレーンであり、ジブ先端の滑車に巻上用のワイヤロープ5を通して荷物200を吊り下げるようになっている。また、ジブクレーン100は、地上に設置された基台1aやタワー1b等からなる地上側設備1と、地上側設備1の上方に旋回部3を介して接続された運転室2a等からなる運転側設備2とを有している。
【0003】
そして、地上側設備1に対して運転側設備2を旋回させる動き、ジブ4を起伏させる動き、ワイヤロープ5を巻上・巻下する動き等を組み合わせて、吊り下げた荷物200を移動するようになっている。また、地上設備部1が予め敷設されたレール上を走行する場合もある。運転室2aにはこれらの動きを操作するための運転制御装置が備え付けられており、運転室2aのオペレーターが地上の作業者との間で通話による確認をしながら、運転制御装置を操作するようになっている。
【0004】
一方、地上の作業者が直接クレーンを遠隔操作するものとして、特許文献1には遠隔無線制御装置を組み込んだクレーン装置に関する発明が記載されており、天井走行クレーン3に撮像カメラ4,6,7を配置し、携帯用遠隔無線制御器8で映像を確認しながら操作するようになっている。
【0005】
また、特許文献2にはホイスト式天井クレーン遠隔操作用無線装置に関する発明が記載されており、複数台のホイスト式天井クレーンを操作する場合に、互いに同一操作チャンネルや隣接操作チャンネルを選択しないようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平5-229782号公報
【文献】特開平11-11865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ジブクレーンの操作は、運転室2aのオペレーターが地上の作業者との間で通話による確認をしながら行うため、オペレーターと地上作業者との間の意思疎通が重要になるが、荷物の上下左右への移動方向や移動量について、地上作業者の意思を伝達するのに手間取る場合がある。
【0008】
これに対して、特許文献1や特許文献2に記載された発明のように、地上の作業者が直接クレーンを無線により遠隔操作することが考えらえるが、ジブクレーンのような大型のクレーンでは、運転制御装置のある運転室まで無線が届かないという問題がある。また、地上側装置の走行、運転側装置の旋回といったジブクレーンの特徴からも、無線による遠隔操作に問題が生じる。
【0009】
本発明は、上記従来の課題を解決するものであり、地上の作業者による遠隔操作を可能にしたジブクレーン遠隔操作システムを提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するため、本発明のジブクレーン遠隔操作システムは、地上に立設された地上側設備と、該地上側設備に旋回部を介して接続された運転側設備とを有するジブクレーンを遠隔操作するジブクレーン遠隔操作システムであって、前記地上側設備に設けられた、地上の作業者が操作する送信器からの指示信号を受信する受信器と、前記受信した指示信号を変換する第1の変換器と、前記運転側設備に設けられた、前記地上側設備から送信された指示信号を変換する第2の変換器と、前記変換された指示信号に基づいてジブクレーンを運転制御する運転制御装置と、前記地上側設備及び前記運転側設備に設けられた、前記第1の変換器と前記第2の変換器とを接続するLAN回線とを有し、前記第1の変換器は前記受信器が受信した指示信号を前記LAN回線で送信可能な信号に変換し、前記第2の変換器は前記LAN回線を経由して送信された指示信号を前記運転制御装置が処理可能な信号に変換することを特徴とする。
【0011】
また好ましくは、前記LAN回線が前記旋回部で無線LAN接続されていることを特徴とする。
【0012】
また好ましくは、前記地上側設備及び前記運転側設備の一方に設けられた複数のアンテナの周りを、他方に設けられたアンテナが相対的に周回するように構成されていることを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明のジブクレーン遠隔操作システムは、地上に立設された地上側設備と、地上側設備に旋回部を介して接続された運転側設備とを有するジブクレーンを遠隔操作するものである。地上側設備には、地上の作業者が操作する送信器からの指示信号を受信する受信器と、受信した指示信号を変換する第1の変換器とが設けられており、運転側設備には、地上側設備から送信された指示信号を変換する第2の変換器と、変換された指示信号に基づいてジブクレーンを運転制御する運転制御装置とが設けられている。そして、地上側設備及び運転側設備には、第1の変換器と第2の変換器とを接続するLAN回線が設けられおり、第1の変換器は受信器が受信した指示信号をLAN回線で送信可能な信号に変換し、第2の変換器はLAN回線を経由して送信された指示信号を運転制御装置が処理可能な信号に変換するようになっている。
【0014】
従って、作業者が操作する送信器と地上側設備の受信器との間は低出力の無線で接続しておいて、受信した指示信号をLAN回線経由で運転側設備に高速で送信して、ジブクレーンを遠隔操作することができる。また、LAN回線を構築することにより、運転側設備に取り付けたネットワークカメラを接続したり地上に配置した端末を接続したりするための、システム基盤としての役割を担うことができる。
【0015】
また、LAN回線が旋回部で無線接続されていることにより、地上側設備に対して運転側設備が旋回しても、有線接続におけるケーブルがねじれるといった問題がない。
【0016】
また、地上側設備及び運転側設備の一方に設けられた複数のアンテナの周りを、他方に設けられたアンテナが相対的に周回するように構成されていることにより、地上側設備に対して運転側設備が旋回しても、無線接続での送信を途切れにくくすることができる。
【0017】
このように、本発明によれば、地上の作業者による遠隔操作を可能にしたジブクレーン遠隔操作システムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の実施形態に係るジブクレーン遠隔操作システムの構成図である。
図2】旋回部における無線接続の説明図である。
図3】ジブクレーンを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
次に、図1乃至図3を参照して、本発明の実施形態に係るジブクレーン遠隔操作システムについて説明する。本実施形態に係るジブクレーン遠隔操作システムは、図3に示すジブクレーン100を地上から遠隔操作するためのものであり、既設のジブクレーンに対して追加設置することができる。
【0020】
ジブクレーン100は、ジブ4(肘=アーム)を持ったクレーンであり、ジブ先端の滑車に巻上用のワイヤロープ5を通して荷物200を吊り下げるようになっている。また、ジブクレーン100は、地上に設置された基台1aやタワー1b等からなる地上側設備1と、地上側設備1の上方に旋回部3を介して接続された運転室2a等からなる運転側設備2とを有している。
【0021】
そして、地上側設備1に対して運転側設備2を旋回させる動き、ジブ4を起伏させる動き、ワイヤロープ5を巻上・巻下する動き等を組み合わせて、吊り下げた荷物200を移動するようになっている。また、地上設備部1が予め敷設されたレール上を走行するようになっている。
【0022】
図1は、ジブクレーン遠隔操作システムの構成図である。ジブクレーン遠隔操作システムを構成する各機器は、地上側設備1から運転側設備2に亘って配置されている。
【0023】
地上側設備1には、受信器10及び変換器20が設けられている。受信器10は、地上の作業者が操作する送信器6からの指示信号を受信するものである。送信器6からの指示信号は、地上側設備1の走行、運転側設備2の旋回、ジブ4の起伏、ワイヤロープ5の巻上・巻下等について、作動及び停止、作動スピード等を指示する信号である。
【0024】
作業者が操作する送信器6と地上側設備1の受信器10との間は、低出力の無線接続とすることにより、免許不要で他の機器への干渉も防止するような構成とすることが可能である。また、周波数帯として429MHz帯や1.2GHz帯を使用することにより、近距離であれば障害物の回り込みがしやすい構成とすることが可能である。これにより、地上側設備1の走行や運転側設備2の旋回により送信器6からの死角が生じても、安定的に通信することができる。
【0025】
第1の変換器20は、受信器10で受信した指示信号を、LAN回線で送信可能な信号に変換するものである。変換された指示信号は、運転側設備2に送信される。なお、第1の変換器20では、送信器6の制約上(例えば、操作レバーのノッチ数)そのままでは送信できない指示信号への変換や、安全面から信号を送信するか、あるいは遅延させるかといった制御を行うように構成することもできる。
【0026】
運転側設備2には、第2の変換器60及び運転制御装置70が設けられている。運転制御装置70は、既設のジブクレーン100に設置されたものである。第2の変換器60は、地上側設備1からLAN回線を経由して送信された指示信号を、運転制御装置70が処理可能な信号に変換するものである。運転制御装置70は、変換された指示信号に基づいてジブクレーン100を運転制御する。
【0027】
地上側設備1及び運転側設備2には、地上側設備1の第1の変換器20と運転側設備2の第2の変換器60とを接続するLAN回線30が設けられている。LAN回線30はLANケーブルにより構成することができるが、旋回部3においては、例えばWi-Fi(登録商標)を用いた無線通信機器40,50により無線接続することが好ましい。これにより、地上側設備1に対して運転側設備2が旋回しても、LANケーブルがねじれるといった問題がない。
【0028】
LAN回線30の通信規格はイーサネット(Ethernet)、技術仕様IEEE802.3とすることができる。また、無線通信機器40,50間の無線通信規格として、802.11k/v/r/ai規格を採用することにより、途切れにくい無線通信を実現することができる。LAN回線30は、無線通信機器40,50間の無線通信規格として、802.11k/v/r/ai規格を採用するための前提でもある。
【0029】
図2は、旋回部3における無線接続の説明図である。旋回部3の地上側設備1には、複数(本実施形態では4つ)のアンテナ41,42,43,44が設けられている。そして、旋回部3の運転側設備2に設けられたアンテナ51が、運転側設備2の旋回に応じてアンテナ41,42,43,44の周りを周回するようになっている。これにより、次々に通信相手を切り替えるローミングが実現でき、無線接続での送信を途切れにくくすることができる。
【0030】
地上側設備1のアンテナの数(本実施形態では4つ)は限定されないが、アンテナ51がどの位置にあっても、必ずいずれかのアンテナが見えるようなアンテナの数と配置にすることが好ましい。なお、地上側設備1と運転側設備2とのアンテナの数を反対にして、地上側設備1に設けられたアンテナが、運転側設備2に設けられた複数のアンテナの周りを相対的に周回するようにしてもよい。
【0031】
このように、地上側設備1から運転側設備2に亘ってLAN回線30を構築することにより、低出力の無線接続により地上側設備1で受信した指示信号を、LAN回線30経由で運転側設備2に高速で送信することができる。
【0032】
また、LAN回線30は、ジブクレーン遠隔操作システムのシステム基盤としての役割を担うことができる。例えば、図1に示すように、運転側設備2のジブなどに取り付けたネットワークカメラ7をLAN回線30に接続することができる。また、また、アクセスポイント8を経由して、地上に配置された端末9(作業者のタブレット、管理事務所のパソコンなど)をLAN回線30に接続することができる。そして、ネットワークカメラ7が撮影した上方からの映像を、端末9で確認しながらジブクレーンの操作をしたり、作業の管理をしたりすることができる。また、LAN回線は汎用性が高く、新たなシステムインフラの登場にも対応しやすい。
【0033】
本実施形態に係るジブクレーン遠隔操作システムは、地上に立設された地上側設備1と、地上側設備1に旋回部3を介して接続された運転側設備2とを有するジブクレーンを遠隔操作するものである。地上側設備1には、地上の作業者が操作する送信器6からの指示信号を受信する受信器10と、受信した指示信号を変換する第1の変換器20とが設けられており、運転側設備2には、地上側設備1から送信された指示信号を変換する第2の変換器60と、変換された指示信号に基づいてジブクレーンを運転制御する運転制御装置70とが設けられている。そして、地上側設備1及び運転側設備2には、第1の変換器20と第2の変換器60とを接続するLAN回線30が設けられおり、第1の変換器20は受信器10が受信した指示信号をLAN回線30で送信可能な信号に変換し、第2の変換器60はLAN回線30を経由して送信された指示信号を運転制御装置70が処理可能な信号に変換するようになっている。
【0034】
従って、作業者が操作する送信器6と地上側設備1の受信器10との間は、低出力の無線で接続しておいて、受信した指示信号をLAN回線30経由で運転側設備2に高速で送信して、ジブクレーンを遠隔操作することができる。また、LAN回線30を構築することにより、運転側設備2に取り付けたネットワークカメラ7を接続したり地上に配置した端末9を接続したりするための、システム基盤としての役割を担うことができる。
【0035】
また、LAN回線30が旋回部3で無線接続されていることにより、地上側設備1に対して運転側設備2が旋回しても、有線接続におけるケーブルがねじれるといった問題がない。
【0036】
また、地上側設備1に設けられた複数のアンテナ41,42,43,44の周りを、運転側設備2に設けられたアンテナ51が周回するように構成されていることにより、地上側設備1に対して運転側設備2が旋回しても、無線接続での送信を途切れにくくすることができる。
【0037】
このように、本実施形態に係るジブクレーン遠隔操作システムは、地上の作業者による遠隔操作を可能にしたものである。
【0038】
以上、本発明の実施形態に係るジブクレーン遠隔操作システムについて説明したが、本発明は上述した実施の形態に限定されるわけではなく、その他種々の変更が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 地上側設備
2 運転側設備
3 旋回部
4 ジブ(アーム)
5 ワイヤロープ
6 送信器
7 ネットワークカメラ
8 アクセスポイント
9 端末
10 受信器
20 第1の変換器
30 LAN回線
40 無線通信器
41 アンテナ
42 アンテナ
43 アンテナ
44 アンテナ
50 無線通信器
51 アンテナ
60 第2の変換器
70 運転制御装置
100 ジブクレーン遠隔操作システム
200 荷物
【要約】
【課題】地上の作業者による遠隔操作を可能にしたジブクレーン遠隔操作システムを提供する。
【解決手段】ジブクレーンを遠隔操作するジブクレーン遠隔操作システムであって、地上側設備1に設けられた、地上の作業者が操作する送信器6からの指示信号を受信する受信器10と、受信した指示信号を変換する第1の変換器20と、運転側設備2に設けられた、地上側設備1から送信された指示信号を変換する第2の変換器60と、変換された指示信号に基づいてジブクレーンを運転制御する運転制御装置70と、地上側設備1及び運転側設備2に設けられた、第1の変換器20と第2の変換器60とを接続するLAN回線30とを有し、第1の変換器20は受信器10が受信した指示信号をLAN回線30で送信可能な信号に変換し、第2の変換器60はLAN回線30を経由して送信された指示信号を運転制御装置70が処理可能な信号に変換する。
【選択図】図1
図1
図2
図3