(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】蛍光体ホイール
(51)【国際特許分類】
F21V 29/502 20150101AFI20240510BHJP
F21V 29/77 20150101ALI20240510BHJP
F21V 29/83 20150101ALI20240510BHJP
F21V 7/30 20180101ALI20240510BHJP
F21S 2/00 20160101ALI20240510BHJP
F21V 29/60 20150101ALI20240510BHJP
F21Y 115/30 20160101ALN20240510BHJP
【FI】
F21V29/502 100
F21V29/77
F21V29/83
F21V7/30
F21S2/00 375
F21V29/60
F21Y115:30
(21)【出願番号】P 2023545435
(86)(22)【出願日】2022-08-17
(86)【国際出願番号】 JP2022031138
(87)【国際公開番号】W WO2023032684
(87)【国際公開日】2023-03-09
【審査請求日】2023-10-27
(31)【優先権主張番号】P 2021141836
(32)【優先日】2021-08-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100109210
【氏名又は名称】新居 広守
(74)【代理人】
【識別番号】100137235
【氏名又は名称】寺谷 英作
(74)【代理人】
【識別番号】100131417
【氏名又は名称】道坂 伸一
(72)【発明者】
【氏名】飯澤 昇
(72)【発明者】
【氏名】本多 洋介
【審査官】塩治 雅也
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2021/020056(WO,A1)
【文献】国際公開第2017/154048(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F21V 23/00-99/00
F21V 1/00- 8/00
F21V 9/00-15/04
F21K 9/00- 9/90
F21S 2/00-45/70
F21Y 115/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに背向する第1主面及び第2主面を有する基板と、
前記第1主面に設けられた蛍光体層と、
前記第2主面に対向して配置され、かつ、前記基板とともに回転される、板材からなる放熱部材と、を備え、
前記放熱部材は、
前記第2主面に向かって突出するように前記放熱部材の中央部に設けられ、前記第2主面と接する接触面を有する突出部と、
前記中央部を除く周辺領域における複数の領域を切り起こして形成される複数のフィンとを有し、
前記突出部は、前記接触面を介して前記基板に接することにより、前記基板と前記放熱部材との間に一定の間隔を確保し、かつ、前記基板の熱を前記放熱部材の前記周辺領域まで伝導し、
前記複数の領域のそれぞれには、前記複数のフィンのうちの2つのフィンが形成され、
前記2つのフィンは、前記放熱部材の回転方向に沿って対向する前記領域の辺に形成される、
蛍光体ホイール。
【請求項2】
前記2つのフィンの一方の大きさは、他方と略同一である、
請求項1に記載の蛍光体ホイール。
【請求項3】
前記2つのフィンの一方の大きさは、他方よりも大きい、
請求項1に記載の蛍光体ホイール。
【請求項4】
前記複数のフィンのそれぞれは、前記第2主面に向かって切り起こされている、
請求項1に記載の蛍光体ホイール。
【請求項5】
前記蛍光体層は、前記第1主面において帯状かつ円環状に設けられており、
前記放熱部材の直径は、前記蛍光体層の外径より小さく、前記蛍光体層の内径よりも大きい、
請求項1に記載の蛍光体ホイール。
【請求項6】
さらに、前記放熱部材から視て前記複数のフィンが切り起こされる向きと同じ向きに前記放熱部材の外周縁端部を曲げて形成され、かつ、鈍角の曲げ角度を有する曲げ端部を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項7】
前記放熱部材を径方向に沿う直線で切断したときの前記曲げ端部の形状は、R曲げ形状である、
請求項6に記載の蛍光体ホイール。
【請求項8】
前記放熱部材を径方向に沿う直線で切断したときの前記曲げ端部の形状は、Z曲げ形状である、
請求項6に記載の蛍光体ホイール。
【請求項9】
前記放熱部材を径方向に沿う直線で切断したときの前記曲げ端部の形状は、度曲げ形状である、
請求項6に記載の蛍光体ホイール。
【請求項10】
前記突出部は、前記接触面を底面とする周壁を有し、前記周壁に、通風のために形成された複数の貫通孔を有する、
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項11】
前記複数の貫通孔のそれぞれは、前記周壁と前記接触面とに跨って形成されている、
請求項10に記載の蛍光体ホイール。
【請求項12】
前記複数の貫通孔のそれぞれは、前記周壁にのみに形成され、かつ、前記放熱部材から前記接触面に向かう方向に視て、前記周壁の中央に形成されている、
請求項10に記載の蛍光体ホイール。
【請求項13】
前記複数の貫通孔のそれぞれは、前記放熱部材の回転軸と前記複数のフィンのそれぞれとを結ぶ領域と異なる位置に形成されている、
請求項10に記載の蛍光体ホイール。
【請求項14】
前記複数のフィンのそれぞれには、複数の穴が形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項15】
前記基板は、円盤状であり、
前記蛍光体層は、前記基板の周方向に沿う帯状に形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項16】
前記複数のフィンのそれぞれの端部には、凹んだ部分を少なくとも1つ有するように形成されている、
請求項1~5のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【請求項17】
前記凹んだ部分は、前記端部の中央から視て両端のいずれか一方の方向に偏った位置に形成されている、
請求項16に記載の蛍光体ホイール。
【請求項18】
前記凹んだ部分は、傾きを有するように形成されており、
前記凹んだ部分におけるフィンの長さは、前記傾きに従って短くなる、
請求項16に記載の蛍光体ホイール。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、蛍光体ホイールに関する。
【背景技術】
【0002】
レーザプロジェクタなどに採用される光源装置として、レーザ光源から照射されるレーザ光(励起光)によって発光する蛍光体ホイールがある。蛍光体ホイールは、レーザ光の照射による蛍光体層の発熱がもたらす劣化を抑制するために、蛍光体層にレーザ光が照射されている間、回転軸回りに回転される。
【0003】
蛍光体ホイールの放熱性能を向上させる技術として、両側側面に蛍光体が配置された2つの支持部材を対向させた隙間空間に、羽構造のフィンを形成する技術が開示されている(例えば特許文献1参照)。特許文献1によれば、冷媒としての空気が隙間空間を通流することで、蛍光体にもたらされる熱の排出を促進できるので、蛍光体ホイールの放熱性能を向上させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
近年においては、蛍光体ホイールの放熱性能をさらに高めることが望まれている。
【0006】
本開示は、放熱性能がより向上する蛍光体ホイールを提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本開示の一態様に係る蛍光体ホイールは、互いに背向する第1主面及び第2主面を有する基板と、前記第1主面に設けられた蛍光体層と、前記第2主面に対向して配置され、かつ、前記基板とともに回転される、板材からなる放熱部材と、を備え、前記放熱部材は、前記第2主面に向かって突出するように前記放熱部材の中央部に設けられ、前記第2主面と接する接触面を有する突出部と、前記中央部を除く周辺領域における複数の領域を切り起こして形成される複数のフィンとを有し、前記突出部は、前記接触面を介して前記基板に接することにより、前記基板と前記放熱部材との間に一定の間隔を確保し、かつ、前記基板の熱を前記放熱部材の前記周辺領域まで伝導し、前記複数の領域のそれぞれには、前記複数のフィンのうちの2つのフィンが形成され、前記2つのフィンは、前記放熱部材の回転方向に沿って対向する前記領域の辺に形成される。
【発明の効果】
【0008】
本開示の蛍光体ホイールは、放熱性能がより向上する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施の形態1に係る蛍光体ホイールの分解斜視図である。
【
図2】
図2は、実施の形態1に係る蛍光体ホイールの側面図である。
【
図3】
図3は、実施の形態1に係る基板を第1主面側から見たときの正面図である。
【
図5】
図5は、実施の形態1に係る放熱部材を第1主面側から見たときの正面図である。
【
図6】
図6は、実施の形態1に係る放熱部材を第1主面側から見たときの斜視図である。
【
図8】
図8は、実施の形態1に係る蛍光体ホイールの実機試作品に対する検証結果を示す図である。
【
図9】
図9は、比較例に係る放熱部材の1つの領域に形成される1つのフィン近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
【
図10】
図10は、実施の形態1に係る放熱部材における1つの領域の対辺に形成される2つのフィン近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
【
図13A】
図13Aは、変形例3に係る突出部を第1主面側から見たときの拡大斜視図の一例である。
【
図13B】
図13Bは、変形例3に係る突出部を第1主面側から見たときの拡大斜視図の一例である。
【
図14A】
図14Aは、変形例4に係る放熱部材及び基板の一部拡大側面図の一例である。
【
図14B】
図14Bは、変形例4に係る放熱部材及び基板の一部拡大側面図の一例である。
【
図14C】
図14Cは、変形例4に係る放熱部材及び基板の一部拡大側面図の一例である。
【
図15A】
図15Aは、実施の形態2に係る放熱部材の1つの領域に形成されるフィンの拡大図である。
【
図15B】
図15Bは、実施の形態2に係るフィンの平面形状の一例を示す図である。
【
図16A】
図16Aは、実施の形態2の変形例に係る放熱部材の1つの領域に形成されるフィンの拡大図である。
【
図16B】
図16Bは、実施の形態2の変形例に係るフィンの平面形状の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本開示の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。以下に説明する実施の形態は、いずれも本開示の好ましい一具体例を示すものである。したがって、以下の実施の形態で示される数値、形状、材料、構成要素、構成要素の配置位置及び接続形態などは、一例であって本開示を限定する主旨ではない。よって、以下の実施の形態における構成要素のうち、本開示の最上位概念を示す独立請求項に記載されていない構成要素については、任意の構成要素として説明される。
【0011】
なお、各図は、模式図であり、必ずしも厳密に図示されたものではない。また、各図において、実質的に同一の構成に対しては同一の符号を付しており、重複する説明は省略又は簡略化する。
【0012】
また、以下の実施の形態で説明に用いられる図面においては座標軸が示される場合がある。Z軸方向は、蛍光体ホイールの高さ方向として説明される。Z軸+側は、上側(上方)と表現され、Z軸-側は、下側(下方)と表現される場合がある。また、X軸方向及びY軸方向は、Z軸方向に垂直な平面上において、互いに直交する方向である。以下の実施の形態において、正面図とはX軸+側から見たときの図面を意味し、背面図とはX軸-側から見たときの図面を意味する。また、側面図とはY軸方向から見たときの図面を意味する。
【0013】
(実施の形態1)
[蛍光体ホイール1]
以下、実施の形態1に係る蛍光体ホイール1の構成について、
図1及び
図2を用いて説明する。
図1は、実施の形態1に係る蛍光体ホイール1の分解斜視図である。
図2は、実施の形態1に係る蛍光体ホイール1の側面図である。
【0014】
実施の形態1に係る蛍光体ホイール1は、反射型の蛍光体ホイールであり、レーザプロジェクタなどの光源等に使用される。蛍光体ホイール1は、
図1及び
図2に示されるように、基板11と、基板11に設けられた蛍光体層12と、放熱部材30と、モータ40と、調整板41とを備える。なお、調整板41は、モータ40の回転動力を基板11等にバランスよく伝達するために回転時の重心ずれの調整に用いられるが、必須構成ではない。調整板41は、モータ40のハブであってもよい。
【0015】
[基板11]
図3は、実施の形態1に係る基板11を第1主面側から見たときの正面図である。
【0016】
基板11は、互いに背向する第1主面及び第2主面を有し、モータ40によって回転軸Jを中心として回転駆動される円盤状の板材である。換言すると、基板11の平面視における形状は、円形である。なお、平面視における形状とは、基板11に垂直な方向(X軸+側)から見た場合の形状(つまり、正面形状)である。基板11の直径は、例えば、5cm程度以下であるが、特に限定されない。
【0017】
図3に示すように、基板11では、第1主面に蛍光体層12が設けられている。基板11の中央には、調整板41と連結されるモータ40の一部(ハブ、ロータ等)を突出させるための開口13が設けられている。また、基板11は、中心(中心位置)に回転軸Jが通り、モータ40によって回転軸Jを中心として回転駆動される。
【0018】
基板11の材料は、アルミニウム、ステンレスまたはサファイアなど熱伝導性の良好な金属であれば特に限定されない。本実施の形態では、基板11は、例えば、アルミニウムによって形成される。アルミニウムは比較的熱伝導率が高く、軽量であるため、基板11は、アルミニウムによって形成されることにより放熱性能を高めることができるだけでなく軽量化も実現されるからである。また、基板11の厚みは、例えば、1.5mm以下である。
【0019】
[蛍光体層12]
蛍光体層12は、基板11の第1主面に設けられる。
【0020】
ここで、蛍光体層12は、例えば、YAG系の多数の黄色蛍光体粒子を含む樹脂材料からなるとしてもよい。この場合、樹脂材料の基材は、例えば、透光性及び熱硬化性を有するシリコーン樹脂である。蛍光体層12は、このような樹脂材料が基板11の第1主面にスクリーン印刷された後、加熱炉で加熱硬化されることによって設けることができる。
【0021】
また、蛍光体層12は、例えば、YAG系の黄色蛍光体粒子とバインダとで構成されていてもよい。この場合、蛍光体層12では、光変換効率の改善のため、励起光から蛍光への変換に寄与するYAG系の黄色蛍光体粒子の量が多いほうがよい。つまり、蛍光体層12では、蛍光体粒子含有比率は大きい方がよい。バインダは、蛍光体層12を構成する黄色蛍光体粒子以外の混合物である。バインダは、例えば、アルミナなどの熱伝導率の高い無機物質によって形成される。アルミナの熱伝導率は、シリコーン樹脂の熱伝導率の10倍以上である。このため、蛍光体層12は、黄色蛍光体粒子とアルミナによって形成されたバインダとによって構成されることにより、高い熱伝導率を実現することができる。
【0022】
なお、
図1~
図3では図示されないが、基板11の第1主面と蛍光体層12との間には、反射膜が設けられてもよい。
【0023】
本実施の形態では、蛍光体層12は、
図3に示すように、平面視において、円盤状の基板11の周方向θに沿って帯状となるリング状(円環状)に設けられる。より具体的には、蛍光体層12は、蛍光体ホイール1の回転中心である回転軸Jから距離が等しい円周上にリング状(円環状)に設けられる。換言すると、蛍光体層12の径方向rにおける幅は、一定となっている。さらに、蛍光体層12は、第1主面の周縁に設けられるのが望ましい。なお、基板11が円盤状の基板ではない場合にも、蛍光体層12は円環状に設けられるとよい。
【0024】
ところで、蛍光体層12は、レーザ光が照射されることにより発光する。このとき、蛍光体層12の一点に集中的にレーザ光が照射されることを避けるため、蛍光体ホイール1は、蛍光体層12にレーザ光が照射されている間、モータ40によって、回転軸Jを中心に回転される。これにより、レーザ光の照射による発熱によって蛍光体層12に含まれる蛍光体粒子の劣化が抑制される。
【0025】
[放熱部材30]
放熱部材30は、板材からなり、基板11の第1主面及び第2主面のいずれかの面に対向して配置され、かつ、基板11とともに回転される。
図1及び
図2に示す例では、放熱部材30は、基板11の第2主面に対向して配置されている。基板11の第1主面は、蛍光体層12が設けられている。
【0026】
図4は、
図2に示す放熱部材30の拡大側面図である。
図5は、実施の形態1に係る放熱部材30を第1主面側から見たときの正面図である。
図6は、実施の形態1に係る放熱部材30を第1主面側から見たときの斜視図である。
図7は、
図5に示す放熱部材の一部拡大正面図である。なお、背面とは、基板11の第2主面と対向する面(正面)と反対側、かつ、放熱部材30に垂直な方向(すなわちX軸-側)から放熱部材30を見たときの面である。
【0027】
放熱部材30は、モータ40によって回転軸Jを中心として回転駆動される円盤状の板材である。換言すると、放熱部材30の平面視における形状は、円形である。なお、放熱部材30の直径は、例えば、5cm程度であるが、基板11の直径の同程度または基板11の直径よりひと周り小さくなれば、3cm~80cmの範囲においてどのような直径で形成されてもよい。なお、放熱部材30の直径は、放熱部材30が基板11の第2主面に対向して配置される場合には、蛍光体層12の外径よりも小さく、かつ蛍光体層12の内径よりも大きくすればよいが、これに限定されない。放熱部材30の直径は、蛍光体層12の外径よりも大きくてもよい。例えば、なお、放熱部材30の直径は、放熱部材30が基板11の第1主面に対向して配置される場合には、蛍光体層12の内径よりも小さくすればよい。
【0028】
本実施の形態では、放熱部材30は、
図1、
図2、
図4~
図7に示すように、複数のフィン31A、31Bと、突出部34とを有する。放熱部材30は、例えば
図1及び
図2に示すように、基板11の第2主面に対向して配置されている。また、複数のフィン31A、31Bは基板11の第2主面に向かって切り起こされており、突出部34も基板11の第2主面に向かって突出している。より具体的には、複数のフィン31A、31Bは、放熱部材30における板材の複数の一部領域である複数の領域32を切り起こすことで形成される。複数の領域32は、複数のフィン31A、31Bが形成された後に貫通孔となる。複数の領域32は、放熱部材30が基板11とともに回転されるときには通気孔として機能する。なお、突出部34及び複数のフィン31A、31B及び領域32等の詳細は後述する。
【0029】
放熱部材30の材料は、例えばステンレス、鉄、銅、サファイアまたはアルミニウムなどの金属の板材であればよいが、特に限定されない。
【0030】
<突出部34>
突出部34は、基板11の第1主面及び第2主面のいずれかの面に向かって突出するように放熱部材30の中央部に設けられ、当該いずれかの面と接する接触面を有する。突出部34は、接触面を介して基板11に接することにより、基板11と放熱部材30との間に一定の間隔を確保し、かつ、基板11の熱を放熱部材30の中央部を除く周辺領域まで伝導する。
【0031】
本実施の形態では、突出部34は、例えば
図2に示すように、基板11と放熱部材30との間隔を一定に保持するために、基板11の第2主面に突出するように放熱部材30の中央部に設けられている。突出部34は、絞り加工により形成される。
【0032】
突出部34の厚みすなわち、基板11と放熱部材30との間隔は、
図2に示すように、後述する放熱部材30の周辺領域に形成される複数のフィン31A、31Bの高さ以上であればよい。突出部34は、例えば
図5及び
図6に示すように、基板11の第2主面に接触させるための接触面であって帯状かつ円環状の接触面を有する。
【0033】
なお、突出部34の中央には、開口33が設けられ、モータ40と調整板41を介して接続される。これにより、放熱部材30は、中心(中心位置)に回転軸Jが通り、モータ40によって回転軸Jを中心として、基板11とともに回転駆動される。なお、この開口33の大きさ(直径)は、調整板41と連結するためのモータ40の一部が突出できる程度の大きさであればよい。例えば、開口33は、モータ40の一部と最大1mmの隙間を有する大きさであればよい。
【0034】
また、突出部34の直径は、放熱部材30の内径よりも小さければよく、開口33の径よりも大きければ、特に限定されない。
【0035】
このように、突出部34は、
図1、
図2、
図4~
図6に示される通り、帯状かつ円環状の接触面を有するように、放熱部材30の中央部に設けられる。これにより、突出部34は、基板11と放熱部材30の周辺領域との間に空気からなる一定の間隔の空隙(空間)を形成することができるスペーサとして機能するだけでなく、蛍光体層12で生じる熱を基板11から放熱部材30の周辺領域に伝えることができる熱伝導の経路として機能する。
【0036】
<フィン31A、31B>
複数のフィン31A、31Bは、切り起こし加工により形成される。より具体的には、複数のフィン31A、31Bは、放熱部材30の板材のうち中央部を除く周辺領域における複数の領域32を切り起こして形成される。複数のフィン31A、31Bのそれぞれは、基板11の第1主面及び第2主面のいずれかの面に向かって切り起こされている。
【0037】
本実施の形態では、例えば
図1、
図2及び
図4に示されるように、複数のフィン31A、31Bは、複数の領域32が基板11の第2主面に向かって切り起こされることで、基板11の第2主面に向かって立設されている。複数のフィン31A、31Bの高さは、
図2及び
図4に示すように、突出部34の厚みよりも小さい。
【0038】
本実施の形態では、さらに、複数の領域32のそれぞれには、2つのフィン31A、31Bが形成され、2つのフィン31A、31Bは、放熱部材30の回転方向に沿って対向する当該領域32の辺(対辺)に形成される。ここで、
図5~
図7に示される例では、2つのフィン31A、31Bの一方の大きさは、他方と略同一である。換言すると、2つのフィン31A、31Bの当該領域32の対辺に沿った方向における幅は、略同一となっている。そして、2つのフィン31A、31Bは、複数の領域32のそれぞれにおいて切り起こしにより形成され、複数の領域32のそれぞれの対辺で曲げられて対向して立設される。
【0039】
複数のフィン31A、31Bは、例えば
図5~
図7に示すように、放熱部材30の周辺領域において、中心(回転軸J)から一定の距離に、周方向θに沿って円環状に配置される。複数のフィン31A、31Bの形状は、例えば、略矩形状(略台形状)であるが、先端部の角が落とされて丸くなっていてもよい。換言すると、
図5~
図7に示す例のように、複数のフィン31Aのそれぞれと複数のフィン31Bのそれぞれとは、周辺領域において径方向rに対して一定の角度を有するように形成されており、基板11の第2主面(または放熱部材30の正面)に対して一定の角度を有するように切り起こされている。なお、複数のフィン31A、31Bのそれぞれは、周辺領域に形成されていればよく、径方向rに沿って形成されていなくてもよい。また、複数のフィン31A、31Bのそれぞれは、基板11の第2主面(または放熱部材30の正面)に対して垂直に立設されなくてもよい。
【0040】
ところで、本実施の形態において、複数のフィン31A、31Bのそれぞれは、回転軸Jを中心として、放熱部材30の回転に応じて当該フィン31A、31Bよりも外側(遠心方向)に風を送る。換言すると、複数のフィン31A、31Bのそれぞれは、放熱部材30の背面側(X軸-側)にある空気(流体)を、貫通孔である複数の領域32を抜けて、基板11と放熱部材30との間の空間の外側に向けて送る。これにより、複数のフィン31A、31Bによって生じる空気の流れである風(気流)を、蛍光体層12の冷却に用いることができる。
【0041】
なお、フィン31A、31Bの径方向rに対する角度、及び、フィン31A、31Bの第2主面に対する角度は、外側に効果的に風を送ることができればよく、
図1、
図2、
図3~
図7に示される例にも限定されない。
【0042】
また、フィン31A、31Bのそれぞれには、複数の穴が形成されていてもよい。フィン31A、31Bに設けられる複数の穴の数、位置、形状及び大きさ等は、適宜決められればよく限定されない。
【0043】
<領域32>
複数の領域32のそれぞれには、上述したように、2つのフィン31A、31Bが形成される。領域32は、放熱部材30の板材のうちの一部領域であり、2つのフィン31A、31Bが形成された後には貫通孔となる。
【0044】
より具体的には、複数の領域32は、放熱部材30の中央部を除く周辺領域に位置する。さらに、複数の領域32は、相似する形状であってもよいが、相似する形状に限らない。
【0045】
複数の領域32は、
図5~
図7に示すように、放熱部材30を貫通する貫通孔となっている。複数の領域32は、放熱部材30が基板11とともに回転されるときには、複数のフィン31A、31Bによって生じる風の通る通気孔として機能する。複数の領域32は、例えば
図5に示すように、周辺領域において、放熱部材30の中心(回転軸J)から一定の距離に、周方向θに沿って円環状に位置している。
【0046】
なお、複数の領域32がランダムに配置されると、放熱部材30の回転が安定せず、異音等が生じる原因になるので、複数の領域32は略等間隔に配置される。複数の領域32の形状は、例えば、略矩形状(略台形状)であるが、角が落とされて丸くなっていてもよい。
【0047】
また、複数の領域32のそれぞれは、径方向rに沿って形成されていなくてもよい。
【0048】
[モータ40]
モータ40は、例えば
図1に示すように、電子回路(不図示)に制御されることにより、基板11及び放熱部材30を回転駆動する。モータ40は、例えば、アウターロータ型のモータであってもよいが、特に限定されない。
【0049】
[効果等]
以上説明したように、本実施の形態に係る蛍光体ホイール1は、互いに背向する第1主面及び第2主面を有する基板11と、第1主面に設けられた蛍光体層12と、基板11の第2主面に対向して配置され、かつ、基板11とともに回転される、板材からなる放熱部材30とを備える。放熱部材30は、当該第2主面に向かって突出するように放熱部材30の中央部に設けられ、当該第2主面と接する接触面を有する突出部34と、中央部を除く周辺領域における複数の領域32を切り起こして形成される複数のフィン31A、31Bと、を有する。突出部34は、接触面を介して基板11に接することにより、基板11と放熱部材30との間に一定の間隔を確保し、かつ、基板11の熱を放熱部材30の周辺領域まで伝導する。そして、複数の領域32のそれぞれには、2つのフィン31A、31Bが形成される。当該2つのフィン31A、31Bは、放熱部材30の回転方向に沿って対向する当該領域32の辺(対辺)に形成される。
【0050】
このように、本実施の形態に係る蛍光体ホイール1は、反射型の蛍光体ホイールであり、基板11の第1主面にのみ蛍光体層12を備える。また、蛍光体ホイール1は、突出部34が設けられた放熱部材30を備えることにより、基板11と放熱部材30との間に一定の間隔の空間を形成することができる。これにより、複数のフィン31A、31Bによって生じる風を、複数の領域32(貫通孔)を抜けさせて、基板11と放熱部材30との間の空間の外側に向けて送ることができる。つまり、複数のフィン31A、31Bによって生じる風を蛍光体層12の冷却に用いることができる。
【0051】
また、蛍光体ホイール1は、基板11と突出部34とが接触することにより、蛍光体層12で生じる熱を基板11から放熱部材30の周辺領域に伝える熱伝導の経路を形成することができるので、放熱性能を向上することができる。
【0052】
さらに、本実施の形態では、複数の領域32のそれぞれには、2つのフィン31A、31Bが当該領域の対辺に形成されるので、基板11の表面近傍に位置する複数のフィンの面積が増加する。これにより、基板11への対流による放熱がより促進され、蛍光体層12の温度を低減させることができる。よって、蛍光体ホイール1の放熱性能を向上することができる。
【0053】
なお、放熱部材30の中央に設けられた開口33の大きさは、調整板41と連結するためのモータ40の一部が突出できる程度の大きさであればよいとして説明したが、これに限らない。開口33の大きさより大きくして、通風のために用いるとしてもよい。すなわち、放熱部材30は、放熱部材30の中心部に、通風のために形成された開口33を有しており、基板11とともに回転される放熱部材30の回転軸Jは、開口33を通るとしてもよい。
【0054】
これにより、複数のフィン31A、31Bによって生じる風を、複数の領域32(貫通孔)を抜けさせるだけでなく、開口33も抜けさせて、基板11と放熱部材30との間の空間(空隙)の外側に向けて送ることができる。したがって、蛍光体層12の冷却に用いることができる、基板11と放熱部材30との間の空間を通る風の量を増やすことができるので、蛍光体ホイール1の放熱性能をより向上することができる。
【0055】
なお、蛍光体ホイール1の構成は、上述した態様に限らず、放熱性能をさらに向上させるために、基板11にフィンを形成してもよいし、基板11に貫通孔としての開口を形成してもよい。
【0056】
続いて、以上のように構成された本実施の形態に係る蛍光体ホイール1の実機を試作して検証した検証結果について説明する。
【0057】
図8は、実施の形態1に係る蛍光体ホイール1の実機試作品に対する検証結果を示す図である。
図8には、所定時間動作させたときの蛍光体層12の温度上昇が検証結果として示されている。なお、
図8には、比較例として、放熱部材の複数の領域のそれぞれに1つのフィンのみを形成する構成を有する蛍光体ホイール1の実機試作品に対する検証結果も併せて示されている。
【0058】
図8から、実施の形態1に係る蛍光体ホイール1の蛍光体層12の温度上昇(118.7[K])が、比較例に係る蛍光体ホイール1の蛍光体層12の温度上昇(136[K])よりも低いことが確認できる。
【0059】
図9は、比較例に係る放熱部材90の1つの領域92に形成される1つのフィン91近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
図9には、通気孔として機能する領域92を通り、フィン91に向かう流体(空気)の流れの様子が流線で示されている。
図10は、実施の形態1に係る放熱部材30における1つの領域32の対辺に形成される2つのフィン31A、31B近傍の流体の流れの解析結果を示す図である。
図10には、通気孔として機能する領域32を通り、フィン31A、31Bに向かう流体(空気)の流れの様子が流線で示されている。なお、
図9及び
図10に示すベクトル線は、流体(空気)の流れを表示したものである。
【0060】
例えば
図10に示すフィン31A、31Bは、放熱部材30の平面部と基板11とで挟み込まれた領域(例えば
図1及び
図2参照)に存在する流体(空気)を、放熱部材30の外周方向へかき出す機能を有する。この機能により、実施の形態1に係る蛍光体ホイール1では、対流による熱伝達が促進されるので、基板11に設けられている蛍光体層12の温度を低減させることができる。また、通気孔として機能する領域32からフィン31A、31Bに向かって流れ込む流体も、フィン31A、31Bに当たり、その後に放熱部材30の外周へかき出されることになる。これもまた、熱伝達を促進する一助となる。
【0061】
ここで、
図9と
図10を比較する。実施の形態1に係る複数の領域32のそれぞれの対辺に2つのフィン31A、31Bを形成された
図10に示す放熱部材30では、放熱部材30の外周へ流体がスムーズに押し出され、対流による放熱が促進されている様子が確認できる。一方、比較例に係る複数の領域92のそれぞれに1つのフィン91を形成された
図9に示す放熱部材90では、フィン91周辺で流体のよどみが見られるので、対流による放熱が
図10に示す場合よりも促進されない様子が確認できる。
【0062】
つまり、
図9と
図10とによれば、複数の領域32のそれぞれの対辺に2つのフィン31A、31Bを形成することは、複数の領域32のそれぞれに1つのフィンを形成することよりも、蛍光体層12と放熱部材30との間で生じる流体の流れを促進することができることがわかる。よって、蛍光体ホイール1の放熱性能を向上することができる。
【0063】
(変形例1)
上記の実施の形態1では、複数の領域32のそれぞれに形成される2つのフィン31A、31Bの大きさが略同一であるとして説明したが、これに限らない。2つのフィンの一方の大きさは、他方よりも大きくてもよい。以下、この場合の例を変形例1として説明する。以下では、実施の形態1で説明した放熱部材30と異なる点を中心に説明する。
【0064】
図11A及び
図11Bは、変形例1に係る放熱部材の拡大正面図の一例である。なお、
図7等と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0065】
図11Aには、変形例1に係る放熱部材30Aにおける複数の領域32Cのそれぞれの対辺に形成される2つのフィン31A、31Cが一例として示されている。
図11Bには、変形例1に係る放熱部材30Bにおける複数の領域32Dのそれぞれの対辺に形成される2つのフィン31A、31Dが一例として示されている。
【0066】
より具体的には、例えば
図11Aに示すように、放熱部材30Aにおける複数の領域32Cのそれぞれには、2つのフィン31A、31Cが形成される。2つのフィン31A、31Cは、放熱部材30Aの回転方向に沿って対向する当該領域32Cの辺(対辺)に形成される。そして、2つのフィン31A、31Cの一方の大きさは、他方より大きい。換言すると、2つのフィン31A、31Cの当該領域32Cの対辺に沿った方向における幅は異なり、フィン31Cの幅は、フィン31Aの幅より短い。
【0067】
また、
図11Aに示すように、フィン31Cは、フィン31Aが形成される領域32Cの辺のうち放熱部材30Aの径方向rの内側となる辺の部分に対向する位置の辺に形成されている。なお、フィン31A、31Cの形状は、例えば、略矩形状(略台形状)であるが、
図11Aに示すように先端部の角が落とされて丸くなっていてもよい。
【0068】
同様に、例えば
図11Bに示すように、放熱部材30Bにおける複数の領域32Dのそれぞれには、2つのフィン31A、31Dが形成される。2つのフィン31A、31Dは、放熱部材30Bの回転方向に沿って対向する当該領域32Dの辺(対辺)に形成される。そして、2つのフィン31A、31Dの一方の大きさは、他方より大きい。換言すると、2つのフィン31A、31Dの当該領域32Dの対辺に沿った方向における幅は異なり、フィン31Dの幅は、フィン31Aの幅より短い。
【0069】
また、
図11Bに示すように、フィン31Dは、フィン31Aが形成される領域32Dの辺のうち放熱部材30Bの径方向rの外側となる辺の部分に対向する位置の辺に形成されている。なお、フィン31Aの大きさはフィン31Dの大きさよりも大きい。フィン31A、31Dの形状は、例えば、略矩形状(略台形状)であるが、
図11Bに示すように先端部の角が落とされて丸くなっていてもよい。
【0070】
以上のように構成された変形例1に係る蛍光体ホイール1の実機を試作して検証した。その結果、変形例1に係る蛍光体ホイール1の蛍光体層12の温度上昇は、比較例に係る蛍光体ホイール1の蛍光体層12の温度上昇よりも低いことが確認できた。一方で、変形例1に係る蛍光体ホイール1の蛍光体層12の温度上昇は、実施の形態1に係る蛍光体ホイール1の蛍光体層12の温度上昇より高かった。
【0071】
(変形例2)
変形例1では、複数の領域32のそれぞれに形成される2つのフィンの一方の大きさが、他方よりも大きい場合の例について説明し、大きさの異なる2つのフィンの形状は共に略矩形状(略台形状)であるとして説明したが、これに限らない。2つのフィンうち小さい方のフィンの形状は、略矩形状(略台形状)でなくてもよく、略三角形状であってもよい。
【0072】
以下、この場合の例を変形例2として説明する。以下では、実施の形態1で説明した放熱部材30と異なる点を中心に説明する。
【0073】
図12A及び
図12Bは、変形例2に係る放熱部材の拡大正面図の一例である。なお、
図7等と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。
【0074】
図12Aには、変形例2に係る放熱部材30Cにおける複数の領域32Eのそれぞれの対辺に形成される2つのフィン31A、31Eが一例として示されている。
図12Bには、変形例2に係る放熱部材30Dにおける複数の領域32Fのそれぞれの対辺に形成される2つのフィン31A、31Fが一例として示されている。
【0075】
より具体的には、例えば
図12Aに示すように、放熱部材30Cにおける複数の領域32Eのそれぞれには、2つのフィン31A、31Eが形成される。2つのフィン31A、31Eは、放熱部材30Cの回転方向に沿って対向する当該領域32Eの辺(対辺)に形成される。そして、2つのフィン31A、31Eの一方の大きさは、他方より大きい。
【0076】
また、
図12Aに示すように、フィン31Eは、フィン31Aが形成される領域32Eの辺のうち放熱部材30Cの径方向rの内側となる辺の部分に対向する位置の辺に形成されている。フィン31Aの形状は、例えば略矩形状(略台形状)であるが、
図12Aに示すように先端部の角が落とされて丸くなっていてもよい。一方、フィン31Eの形状は、例えば略三角形状であるが、
図12Aに示すように先端部の角が落とされて丸くなっていてもよい。
【0077】
同様に、例えば
図12Bに示すように、放熱部材30Dにおける複数の領域32Fのそれぞれには、2つのフィン31A、31Fが形成される。2つのフィン31A、31Fは、放熱部材30Dの回転方向に沿って対向する当該領域32Fの辺(対辺)に形成される。そして、2つのフィン31A、31Fの一方の大きさは、他方より大きい。
【0078】
また、
図12Bに示すように、フィン31Fは、フィン31Aが形成される領域32Fの辺のうち放熱部材30Dの径方向rの外側となる辺の部分に対向する位置の辺に形成されている。フィン31Aの形状は、例えば略矩形状(略台形状)であるが、
図12Bに示すように先端部の角が落とされて丸くなっていてもよい。一方、フィン31Fの形状は、例えば略三角形状であるが、
図12Bに示すように先端部の角が落とされて丸くなっていてもよい。
【0079】
以上のように構成された変形例2に係る蛍光体ホイール1の実機を試作して検証した。その結果、変形例2に係る蛍光体ホイール1の蛍光体層12の温度上昇は、比較例に係る蛍光体ホイール1の蛍光体層12の温度上昇よりも低いことが確認できた。一方で、変形例2に係る蛍光体ホイール1の蛍光体層12の温度上昇は、実施の形態1に係る蛍光体ホイール1の蛍光体層12の温度上昇より高かった。
【0080】
(変形例3)
実施の形態1、変形例1及び変形例2では、複数の領域のそれぞれに2つのフィンを形成することで、放熱性能を向上させた蛍光体ホイール1について説明したが、放熱性能を向上させる構成は、上述した態様に限らない。放熱性能をさらに向上させるために、複数の領域のそれぞれに2つのフィンを形成することに加えて、放熱部材の突出部にさらに貫通孔を形成してもよい。この場合の具体例を変形例3として以下説明する。以下では、実施の形態1、変形例1及び変形例2で説明した放熱部材30の突出部34と異なる点を中心に説明する。
【0081】
図13A及び
図13Bは、変形例3に係る突出部を第1主面側から見たときの拡大斜視図の一例である。
図6等と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。なお、
図13Aに示す突出部34A、及び、
図13Bに示す突出部34Bは、形成される貫通孔の説明のため、
図6に示す突出部34と比較すると単純化された形状で示されている。
【0082】
[突出部34A]
図13Aに示す突出部34Aは、
図6に示される突出部34に対して、さらに貫通孔35Aが形成されている点で異なる。
【0083】
より具体的には、例えば
図13Aに示す突出部34Aは、実施の形態1と同様に、基板11の第2主面に向かって突出するように放熱部材30の中央部に設けられている。突出部34Aは、絞り加工により形成される。
【0084】
また、突出部34Aは、第2主面と接する接触面341と接触面341を底面とする周壁342とを有する。
【0085】
本変形例では、さらに、突出部34Aは、周壁342に、通風のために形成された複数の貫通孔35Aを有する。つまり、貫通孔35Aは、突出部34Aの周壁342に設けられる。より具体的には、複数の貫通孔35Aのそれぞれは、
図13Aに示されるように、周壁342と接触面341との境界部に形成される。換言すると、複数の貫通孔35Aのそれぞれは、周壁342と接触面341とに跨って形成されている。
【0086】
また、複数の貫通孔35Aのそれぞれは、放熱部材30の回転軸Jと複数のフィン31A、31Bのそれぞれとを結ぶ領域と異なる位置に形成される。換言すると、貫通孔35Aとフィン31A、31Bとは、径方向rでは並ばないように形成される。
【0087】
[突出部34B]
図13Bに示す突出部34Bは、
図6に示される突出部34に対して、さらに貫通孔35Bが形成されている点で異なる。
【0088】
より具体的には、例えば
図13Bに示す突出部34Bは、突出部34Aと同様に、基板11の第2主面に向かって突出するように放熱部材30の中央部に設けられている。突出部34Bは、絞り加工により形成される。
【0089】
また、突出部34Bは、第2主面と接する接触面341と接触面341を底面とする周壁342とを有する。
【0090】
本変形例では、さらに、突出部34Bは、周壁342のみに、通風のために形成された複数の貫通孔35Bを有する。つまり、貫通孔35Bは、突出部34Bの周壁342に設けられる。より具体的には、複数の貫通孔35Bのそれぞれは、
図13Bに示されるように、周壁342にのみに形成される。さらに、複数の貫通孔35Bのそれぞれは、放熱部材30から接触面341に向かう方向に視て、周壁342の中央に形成されている。なお、複数の貫通孔35Aのそれぞれと同様に、複数の貫通孔35Bのそれぞれは、放熱部材30の回転軸Jと複数のフィン31A、31Bのそれぞれとを結ぶ領域と異なる位置に形成されている。換言すると、貫通孔35Bとフィン31A、31Bとは、径方向rでは並ばないように形成されている。
【0091】
また、複数の貫通孔35Aのそれぞれは、放熱部材30の回転軸Jと複数のフィン31A、31Bのそれぞれとを結ぶ領域と異なる位置に形成されている。つまり、貫通孔35Aとフィン31A、31Bとは、径方向rでは並ばないように形成されている。
【0092】
[効果等]
このように、本変形例に係る蛍光体ホイール1は、実施の形態1、変形例1または変形例2に開示される複数の領域のそれぞれに2つのフィンを形成する構成に加えて、突出部に貫通孔を形成する構成を有する。これにより、蛍光体層12と放熱部材30との間で生じる流体(空気)の流れをさらに促進することができるので、蛍光体層12の温度の低減をさらに図ることができる。よって、蛍光体ホイール1の放熱性能をさらに向上することができる。
【0093】
(変形例4)
実施の形態1~変形例3では、蛍光体ホイール1が有する放熱部材30は、モータ40によって回転軸Jを中心として回転駆動される円盤状の板材であるとして説明したが、これに限らない。実施の形態1~変形例3に係る蛍光体ホイール1が有する放熱部材の外周縁端部は曲げられていてもよい。この場合の具体例を変形例4として以下説明する。以下では、実施の形態1~変形例3に係る放熱部材30と異なる点を中心に説明する。
【0094】
図14A~
図14Cは、変形例4に係る放熱部材及び基板11の一部拡大側面図の一例である。
図2等と同様の要素には同一の符号を付しており、詳細な説明は省略する。なお、
図14A~14Cに示す放熱部材30Eと基板11とは、周縁端部の説明のため、
図2に示す放熱部材30と基板11と比較して、単純化された形状で示されている。
【0095】
[放熱部材30E]
まず、
図14Aに示す放熱部材30Eの外周縁端部について説明する。
【0096】
図14Aに示す放熱部材30Eは、
図2に示される放熱部材30に対して、外周縁端部が基板11の方向にR曲げされている点で異なる。
【0097】
より具体的には、
図14Aに示す放熱部材30Eは、実施の形態1と同様に、板材からなり、基板11の第2主面に対向して配置され、かつ、基板11とともに回転される。また、放熱部材30Eは、モータ40によって回転軸Jを中心として回転駆動される円盤状の板材である。換言すると、放熱部材30Eの平面視における形状は、円形である。
【0098】
また、
図14Aに示される放熱部材30Eには、実施の形態1、変形例1または変形例2で説明したように、複数の領域のそれぞれに2つのフィンが形成されている。また、放熱部材30Eは、変形例3で説明したように突出部にさらに貫通孔が形成されていてもよい。
【0099】
図14Aに示される放熱部材30Eは、さらに、放熱部材30Eから視て複数のフィン31A、31B等が切り起こされる向きと同じ向きに、放熱部材30Eの外周縁端部を曲げて形成され、かつ、鈍角の曲げ角度を有する曲げ端部301を有する。
【0100】
曲げ端部301は、放熱部材30Eの一部を用いて形成される。より具体的には、曲げ端部301は、例えば
図14Aに示すように、放熱部材30Eの外周縁端部を、放熱部材30Eから視て複数のフィン31A、31B等が切り起こされる向きと同じ向きに曲げ加工されて形成される。
【0101】
ここで、放熱部材30Eを径方向rに沿う直線で切断したときの曲げ端部301の形状は、例えば
図14Aに示すように、R曲げ形状となっている。
【0102】
次に、
図14Bに示す放熱部材30Eの外周縁端部について説明する。
【0103】
図14Bに示す放熱部材30Eは、
図2に示される放熱部材30に対して、外周縁端部が基板11の方向に度曲げ(C曲げ)されている点で異なる。
【0104】
より具体的には、
図14Bに示す放熱部材30Eは、実施の形態1と同様に、板材からなり、基板11の第2主面に対向して配置され、かつ、基板11とともに回転される。また、放熱部材30Eは、モータ40によって回転軸Jを中心として回転駆動される円盤状の板材である。換言すると、放熱部材30Eの平面視における形状は、円形である。
【0105】
また、
図14Bに示される放熱部材30Eには、実施の形態1、変形例1または変形例2で説明したように、複数の領域のそれぞれに2つのフィンが形成されている。また、放熱部材30Eは、変形例3で説明したように突出部にさらに貫通孔が形成されていてもよい。
【0106】
図14Bに示される放熱部材30Eは、さらに、放熱部材30Eから視て複数のフィン31A、31B等が切り起こされる向きと同じ向きに、放熱部材30Eの外周縁端部を曲げて形成され、かつ、鈍角の曲げ角度を有する曲げ端部301Bを有する。
【0107】
曲げ端部301Bは、放熱部材30Eの一部を用いて形成される。より具体的には、曲げ端部301Bは、例えば
図14Bに示すように、放熱部材30Eの外周縁端部を、放熱部材30Eから視て複数のフィン31A、31B等が切り起こされる向きと同じ向きに曲げ加工されて形成される。
【0108】
ここで、放熱部材30Eを径方向rに沿う直線で切断したときの曲げ端部301Bの形状は、例えば
図14Bに示すように、度曲げ形状となっている。
【0109】
最後に、
図14Cに示す放熱部材30Eの外周縁端部について説明する。
【0110】
図14Cに示す放熱部材30Eは、
図2に示される放熱部材30に対して、外周縁端部が基板11の方向にZ曲げされている点で異なる。
【0111】
より具体的には、
図14Cに示す放熱部材30Eは、実施の形態1と同様に、板材からなり、基板11の第2主面に対向して配置され、かつ、基板11とともに回転される。また、放熱部材30Eは、モータ40によって回転軸Jを中心として回転駆動される円盤状の板材である。換言すると、放熱部材30Eの平面視における形状は、円形である。
【0112】
また、
図14Cに示される放熱部材30Eには、実施の形態1、変形例1または変形例2で説明したように、複数の領域のそれぞれに2つのフィンが形成されている。また、放熱部材30Eは、変形例3で説明したように突出部にさらに貫通孔が形成されていてもよい。
【0113】
図14Cに示される放熱部材30Eは、さらに、放熱部材30Eから視て複数のフィン31A、31B等が切り起こされる向きと同じ向きに、放熱部材30Eの外周縁端部を曲げて形成され、かつ、鈍角の曲げ角度を有する曲げ端部301Dを有する。
【0114】
曲げ端部301Dは、放熱部材30Eの一部を用いて形成される。より具体的には、曲げ端部301Dは、例えば
図14Cに示すように、放熱部材30Eの外周縁端部を、放熱部材30Eから視て複数のフィン31A、31B等が切り起こされる向きと同じ向きに曲げ加工されて形成される。
【0115】
ここで、放熱部材30Eを径方向rに沿う直線で切断したときの曲げ端部301Dの形状は、例えば
図14Cに示すように、Z曲げ形状となっている。
【0116】
[効果等]
このように、本変形例に係る蛍光体ホイール1は、実施の形態1、変形例1または変形例2に開示される複数の領域のそれぞれに2つのフィンを形成する構成に加えて、放熱部材30の外周縁端部がR曲げ、度曲げまたはZ曲げされた構成を有してもよい。また、本変形例に係る蛍光体ホイール1は、突出部に貫通孔を形成する構成を有してもよい。
【0117】
(実施の形態2)
実施の形態2では、実施の形態1、変形例1、変形例2、変形例3または変形例4に係る蛍光体ホイール1が有する複数のフィン31A、31B等の形状に、さらに生物模倣技術の知見を応用した形状要素(風受け流し形状)を追加する場合について説明する。
【0118】
以下では、鳥の翼の平面形状を生物模倣して応用する場合の例として、アホウドリの細く鋭い翼の形状要素をフィンの形状に追加する場合の例について説明する。
【0119】
また、以下では、実施の形態1に係る放熱部材30の複数の領域32のそれぞれに形成される2つのフィン31A、31Bのうちのフィン31Aの形状に、アホウドリの細く鋭い翼の形状要素を追加する場合を例にあげて、実施の形態1に係るフィン31Aと異なる点のみ説明する。なお、フィン31Bの形状に当該形状要素を追加する場合に限らず、変形例1、変形例2、変形例3または変形例4に係る放熱部材30の複数の領域のそれぞれに形成される2つのフィンの形状に当該形状要素を追加する場合についても同様のことが言えるので、それらの説明は省略する。
【0120】
[実施の形態2に係るフィン31A]
図15Aは、実施の形態2に係る放熱部材30の1つの領域32に形成されるフィン31Aの拡大図である。なお、
図15Aには、説明を簡単にするため、1つの領域32に形成される2つのフィン31A、31Bのうちのフィン31Aのみが示され、フィン31Bの図示は省略されている。
【0121】
図15Aに示す実施の形態2に係るフィン31Aは、
図5~
図7に示される実施の形態1に係るフィン31Aに対して、生物模倣技術の知見を応用した形状要素が追加されている点で、形状が異なる。
【0122】
実施の形態2に係るフィン31Aの端部は、凹んだ部分を少なくとも1つ有するように形成されている。つまり、実施の形態2に係る複数のフィン31A、31Bのそれぞれの端部には、凹んだ部分を少なくとも1つ有するように形成されている。
【0123】
より具体的には、
図15Aに示すように、実施の形態2に係るフィン31Aは、例えば
図7に示される実施の形態1に係るフィン31Aのそれぞれの端部に対して、さらに凹んだ部分を有するように形成される。ただし、実施の形態2に係るフィン31Aの面積は、実施の形態1に係るフィン31Aの面積と略同一となるように形成されている。つまり、実施の形態2に係るフィン31Aの放熱部材30からの高さ(長さ)は、当該凹んだ部分を除き、実施の形態1に係るフィン31Aよりも高く(長く)なっている。また、当該凹んだ部分は、傾きを有するように形成されており、凹んだ部分における実施の形態2に係るフィン31Aの長さは、当該傾きに従って短くなっている。
【0124】
ここで、実施の形態2に係るフィン31Aが有する凹んだ部分は、アホウドリの細く鋭い翼の形状要素を生物模倣した形状(風受け流し形状)として形成されている。
【0125】
図15Bは、実施の形態2に係るフィン31Aの平面形状の一例を示す図である。
【0126】
実施の形態2に係るフィン31Aも板材であることから、アホウドリの翼の形状をそのまま反映したフィン31Aの形状を作成することは難しい。そこで、実施の形態2では、アホウドリの翼の形状要素を生物模倣して、
図15Bに示すように、フィン31Aが切り起こされたときの上端部に、傾きを有する凹んだ部分を形成することで、フィン31Aの下端から上端までの長さを傾きに従って短くした形状に加工する。なお、
図15Aに示すフィン31Aの形状は加工可能な形状の一例である。換言すると、アホウドリの細く鋭い翼の形状要素が、一方端に向けて段々細くなる形状であると捉え、
図15Bに示す例のように、傾きを有する凹んだ部分をフィン31Aに形成することで、下端から上端までの長さが段々短くなるフィン31Aの形状を実現する。
【0127】
[効果等]
本実施の形態によれば、複数のフィン31A、31Bは、実施の形態1に係るフィン31A、31Bと同様に、放熱部材30の中央部を除く周辺領域における複数の領域を切り起こして形成される。さらに、本実施の形態に係る複数のフィン31A、31Bのそれぞれの端部は、凹んだ部分を少なくとも1つ有するように形成されている。そして、凹んだ部分は、傾きを有するように形成されており、凹んだ部分におけるフィンの長さは、当該傾きに従って短くなっている。
【0128】
これにより、本実施の形態に係る複数のフィン31A、31Bのそれぞれは、風切り騒音を抑制することができる可能性がある。
【0129】
ところで、物体が移動することによって空気の流れが乱され、物体の後ろに時々刻々と変化する渦が発生する。そして、この渦による力が物体に作用し、その反力が空気に作用することで、音が発生すると考えられている。このため、この渦を低減すること、及び、空気の乱れ(渦乱れ)を抑制することで、物体が移動することによる音の発生を抑制できる可能性が高い。
【0130】
一方で、アホウドリは、全ての鳥の中で最も滑空力が高く長距離飛行に適した翼をもつことが知られている。アホウドリの翼は、滑空中に誘導抵抗を抑制するアスペクト比の大きい(細く鋭い)平面形状となっている。これらを鑑みると、アホウドリの翼は、滑空中に発生させる渦も少なく空気の乱れも少ない可能性が高い。
【0131】
したがって、本実施の形態に係る複数のフィン31A、31Bのそれぞれの形状を、アホウドリなどの鳥の翼の形状要素を生物模倣した形状とすることで、複数のフィン31A、31Bが放熱部材30とともに回転されることで発生させてしまう渦を低減したり空気の乱れを抑制したりできる可能性がある。
【0132】
なお、上記の説明では、本実施の形態に係る複数のフィン31A、31Bのそれぞれは、上端部に凹んだ部分を有するとして説明したが、これに限らない。本実施の形態に係る複数のフィン31A、31Bのそれぞれは、左端部及び/または右端部において、上述した凹んだ部分が形成されてもよい。
【0133】
(変形例)
次に、実施の形態2の変形例では、蝶の翼の平面形状を生物模倣して応用する場合の例として、アサギマダラの羽の形状要素をフィンの形状に追加する場合の例について説明する。
【0134】
また、以下では、実施の形態1に係る放熱部材30の複数の領域32のそれぞれに形成される2つのフィン31A、31Bのうちのフィン31Aの形状に、アサギマダラの羽の形状要素を追加する場合を例にあげて、実施の形態1に係るフィン31Aと異なる点のみ説明する。なお、フィン31Bの形状に当該形状要素を追加する場合に限らず、変形例1、変形例2、変形例3または変形例4に係る放熱部材30の複数の領域のそれぞれに形成される2つのフィンの形状に当該形状要素を追加する場合についても同様のことが言えるので、それらの説明は省略する。
【0135】
[実施の形態2の変形例に係るフィン31A]
図16Aは、実施の形態2の変形例に係る放熱部材30の1つの領域32に形成されるフィン31Aの拡大図である。なお、
図16Aには、説明を簡単にするため、1つの領域32に形成される2つのフィン31A、31Bのうちのフィン31Aのみが示され、フィン31Bの図示は省略されている。
【0136】
図16Aに示す実施の形態2の変形例に係るフィン31Aは、
図5~
図7に示される実施の形態1に係るフィン31Aに対して、生物模倣技術の知見を応用した形状要素が追加されている点で、形状が異なる。
【0137】
実施の形態2の変形例に係るフィン31Aの端部は、凹んだ部分を少なくとも1つ有するように形成されている。つまり、実施の形態2に係る複数のフィン31A、31Bのそれぞれの端部には、凹んだ部分を少なくとも1つ有するように形成されている。
【0138】
より具体的には、
図16Aに示すように、実施の形態2の変形例に係るフィン31Aは、例えば
図7に示される実施の形態1に係るフィン31Aのそれぞれの端部に対して、さらに凹んだ部分を有するように形成される。また、当該凹んだ部分は、当該端部の中央から視て両端のいずれか一方の方向に偏った位置に形成されている。ただし、実施の形態2の変形例に係るフィン31Aの面積は、実施の形態1に係るフィン31Aの面積と比較すると小さくなるように形成されている。
【0139】
ここで、実施の形態2の変形例に係るフィン31Aが有する凹んだ部分は、アサギマダラという蝶の羽の形状要素を生物模倣した形状(風受け流し形状)として形成されている。
【0140】
図16Bは、実施の形態2の変形例に係るフィン31Aの平面形状の一例を示す図である。
【0141】
実施の形態2の変形例に係るフィン31Aも板材であることから、アサギマダラの羽の形状をそのまま反映したフィン31Aの形状を作成することは難しい。そこで、本変形例では、アサギマダラの形状要素を生物模倣して、
図16Bに示すように、フィン31Aが切り起こされたときの上端部に、凹んだ部分を形成することで、フィン31Aの上端の中央付近にくびれ形状を有する形状に加工する。なお、
図16Bに示すフィン31Aの形状は加工可能な形状の一例である。換言すると、アサギマダラの羽の形状要素が、中央付近にくびれ形状を有する形状であると捉え、
図16Bに示す例のように、フィン31Aの中央から視て右に偏った位置に凹んだ部分を形成することで、中央付近にくびれ形状を有するフィン31Aの形状を実現する。
【0142】
[効果等]
本変形例によれば、複数のフィン31A、31Bは、実施の形態1に係るフィン31A、31Bと同様に、放熱部材30の中央部を除く周辺領域における複数の領域を切り起こして形成される。さらに、本変形例に係る放熱部材30に形成される複数のフィン31A、31Bのそれぞれの端部は、凹んだ部分を少なくとも1つ有するように形成される。そして、凹んだ部分は、端部の中央から視て両端のいずれか一方の方向(つまり左右)のいずれかに偏って形成される。
【0143】
これにより、本変形例に係る複数のフィン31A、31Bのそれぞれは、風切り騒音を抑制することができる可能性がある。
【0144】
ところで、アサギマダラは、あまり細かく羽ばたかずに、海を渡ることができるなど長距離飛行することが知られている。アサギマダラの飛行能力は現在解明されていないものの、アサギマダラの羽は、中央付近に特有のくびれ形状を有する平面形状となっている。これらを鑑みると、アサギマダラの羽は、飛行中に発生させる渦も少なく空気の乱れも少ない可能性が高い。
【0145】
したがって、本変形例に係る複数のフィン31A、31Bのそれぞれの形状を、アサギマダラなどの蝶の羽の形状要素を生物模倣した形状とすることで、複数のフィン31A、31Bが放熱部材30とともに回転されることで発生させてしまう渦を低減したり空気の乱れを抑制したりできる可能性がある。
【0146】
なお、上記の説明では、本変形例に係る複数のフィン31A、31Bのそれぞれは、上端部に凹んだ部分を有するとして説明したが、これに限らない。複数のフィン31A、31Bのそれぞれは、左端部及び/または右端部において、上述した凹んだ部分が形成されてもよい。
【0147】
(他の実施の形態等)
上述した実施の形態及び変形例は一例にすぎず、各種の変更、付加、省略等が可能であることは言うまでもない。
【0148】
また、上述した実施の形態及び変形例で示した構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示の範囲に含まれる。
【0149】
また、その他、上記実施の形態及び変形例に対して当業者が思い付く各種変形を施して得られる形態や、本開示の趣旨を逸脱しない範囲で各実施の形態における構成要素及び機能を任意に組み合わせることで実現される形態も本開示に含まれる。例えば、実施の形態及び変形例で説明した各構成要素を組み合わせて、新たな実施の形態とすることも可能である。
【0150】
また、添付図面及び詳細な説明に記載された構成要素の中には、課題解決のために必須な構成要素だけでなく、上記技術を例示するために、課題解決のためには必須でない構成要素も含まれ得る。そのため、それらの必須ではない構成要素が添付図面や詳細な説明に記載されていることをもって、直ちに、それらの必須ではない構成要素が必須であるとの認定をするべきではない。
【0151】
また、本開示は、さらに、以下のような蛍光体ホイールで構成される光源装置またはレーザプロジェクタも含まれる。
【0152】
すなわち、上述した実施の形態及び変形例で示した蛍光体ホイールと、レーザ光源などの励起光源と、励起光源からの出射光を蛍光体ホイールに導光する光学系を備える光源装置も本開示に含まれる。また、上述した実施の形態及び変形例で示した蛍光体ホイールと、蛍光体ホイールを回転させるモータと、蛍光体層にレーザ光を照射するレーザ光源と、レーザ光源によって照射されたレーザ光に応じて蛍光体層から発せられる光を映像信号に基づいて変調する光変調素子と、光変調素子によって変調された光を投射する投射レンズとを備える投射型映像表示装置も本開示に含まれる。
【0153】
(付記)
以上の実施の形態の記載により、下記の発明が開示される。
【0154】
(発明1)互いに背向する第1主面及び第2主面を有する基板と、前記第1主面に設けられた蛍光体層と、前記第2主面に対向して配置され、かつ、前記基板とともに回転される、板材からなる放熱部材と、を備え、前記放熱部材は、前記第2主面に向かって突出するように前記放熱部材の中央部に設けられ、前記第2主面と接する接触面を有する突出部と、前記中央部を除く周辺領域における複数の領域を切り起こして形成される複数のフィンとを有し、前記突出部は、前記接触面を介して前記基板に接することにより、前記基板と前記放熱部材との間に一定の間隔を確保し、かつ、前記基板の熱を前記放熱部材の前記周辺領域まで伝導し、前記複数の領域のそれぞれには、前記複数のフィンのうちの2つのフィンが形成され、前記2つのフィンは、前記放熱部材の回転方向に沿って対向する前記領域の辺に形成される、蛍光体ホイール。
【0155】
これにより、複数のフィンによって生じる風を、複数の領域(貫通孔)を抜けさせて、基板と放熱部材との間の空間の外側に向けて送ることができる。つまり、複数のフィンによって生じる風を蛍光体層の冷却に用いることができる。
【0156】
また、基板と突出部とが接触することにより、蛍光体層で生じる熱を基板から放熱部材の周辺領域に伝える熱伝導の経路を形成することができるので、放熱性能を向上することができる。さらに、複数の領域のそれぞれには、2つのフィンが当該領域の対辺に形成されるので、基板の表面近傍に位置する複数のフィンの面積が増加する。これにより、基板への対流による放熱がより促進され、蛍光体層の温度を低減させることができる。
【0157】
(発明2)前記2つのフィンの一方の大きさは、他方と略同一である、発明1記載の蛍光体ホイール。
【0158】
(発明3)前記2つのフィンの一方の大きさは、他方よりも大きい、発明1記載の蛍光体ホイール。
【0159】
(発明4)前記複数のフィンのそれぞれは、前記第2主面に向かって切り起こされている、発明1から発明3のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。この構成により、蛍光体層と放熱部材との間で生じる流体(空気)の流れをさらに促進することができるので、蛍光体層の温度の低減をさらに図ることができる。
【0160】
(発明5)前記蛍光体層は、前記第1主面において帯状かつ円環状に設けられており、前記放熱部材の直径は、前記蛍光体層の外径より小さく、前記蛍光体層の内径よりも大きい、発明1~4のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【0161】
(発明6)さらに、前記放熱部材から視て前記複数のフィンが切り起こされる向きと同じ向きに前記放熱部材の外周縁端部を曲げて形成され、かつ、鈍角の曲げ角度を有する曲げ端部を有する、発明1~5のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。この構成により、蛍光体層と放熱部材との間で生じる流体(空気)の流れをさらに促進することができるので、蛍光体層の温度の低減をさらに図ることができる。
【0162】
(発明7)前記放熱部材を径方向に沿う直線で切断したときの前記曲げ端部の形状は、R曲げ形状である、発明6に記載の蛍光体ホイール。
【0163】
(発明8)前記放熱部材を径方向に沿う直線で切断したときの前記曲げ端部の形状は、Z曲げ形状である、発明6に記載の蛍光体ホイール。
【0164】
(発明9)前記放熱部材を径方向に沿う直線で切断したときの前記曲げ端部の形状は、度曲げ形状である、発明6に記載の蛍光体ホイール。
【0165】
(発明10)前記突出部は、前記接触面を底面とする周壁を有し、前記周壁に、通風のために形成された複数の貫通孔を有する、発明1~9のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。この構成により、蛍光体層と放熱部材との間で生じる流体(空気)の流れをさらに促進することができるので、蛍光体層の温度の低減をさらに図ることができる。
【0166】
(発明11)前記複数の貫通孔のそれぞれは、前記周壁と前記接触面とに跨って形成されている、発明10に記載の蛍光体ホイール。
【0167】
(発明12)前記複数の貫通孔のそれぞれは、前記周壁にのみに形成され、かつ、前記放熱部材から前記接触面に向かう方向に視て、前記周壁の中央に形成されている、発明10に記載の蛍光体ホイール。
【0168】
(発明13)前記複数の貫通孔のそれぞれは、前記放熱部材の回転軸と前記複数のフィンのそれぞれとを結ぶ領域と異なる位置に形成されている、発明10~12のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。この構成により、蛍光体層と放熱部材との間で生じる流体(空気)の流れをさらに促進することができるので、蛍光体層の温度の低減をさらに図ることができる。
【0169】
(発明14)前記複数のフィンのそれぞれには、複数の穴が形成されている、発明1~13のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。この構成により、蛍光体層と放熱部材との間で生じる流体(空気)の流れをさらに促進することができるので、蛍光体層の温度の低減をさらに図ることができる。
【0170】
(発明15)前記基板は、円盤状であり、前記蛍光体層は、前記基板の周方向に沿う帯状に形成されている、発明1~14のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。
【0171】
(発明16)前記複数のフィンのそれぞれの端部には、凹んだ部分を少なくとも1つ有するように形成されている、発明1~15のいずれか1項に記載の蛍光体ホイール。この構成により、複数のフィンのそれぞれは、風切り騒音を抑制することができる可能性がある。
【0172】
(発明17)前記凹んだ部分は、前記端部の中央から視て両端のいずれか一方の方向に偏った位置に形成されている、発明16に記載の蛍光体ホイール。この構成により、複数のフィンのそれぞれは、複数のフィンが放熱部材とともに回転されることで発生させてしまう渦を低減したり空気の乱れを抑制したりできる可能性があるため、風切り騒音を抑制することができる可能性がある。
【0173】
(発明18)前記凹んだ部分は、傾きを有するように形成されており、前記凹んだ部分におけるフィンの長さは、前記傾きに従って短くなる、発明16に記載の蛍光体ホイール。この構成により、複数のフィンのそれぞれは、複数のフィンが放熱部材とともに回転されることで発生させてしまう渦を低減したり空気の乱れを抑制したりできる可能性があるため、風切り騒音を抑制することができる可能性がある。
【符号の説明】
【0174】
1 蛍光体ホイール
11 基板
12 蛍光体層
30、30A、30B、30C、30D、30E 放熱部材
31A、31B、31C、31D、31E、31F フィン
32、32C、32D、32E、32F 領域
33 開口
34、34A、34B 突出部
35A、35B 貫通孔
40 モータ
41 調整板
301、301B、301D 曲げ端部
341 接触面
342 周壁