(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】締結装置及びそれを用いた締結体製造方法
(51)【国際特許分類】
B21D 39/03 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B21D39/03 B
(21)【出願番号】P 2020037711
(22)【出願日】2020-03-05
【審査請求日】2023-01-27
(73)【特許権者】
【識別番号】596112790
【氏名又は名称】三徳コーポレーション株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000004673
【氏名又は名称】パナソニックホームズ株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000006655
【氏名又は名称】日本製鉄株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000523
【氏名又は名称】アクシス国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】原田 隆司
(72)【発明者】
【氏名】原 守
(72)【発明者】
【氏名】喜多 和也
(72)【発明者】
【氏名】川合 紀之
(72)【発明者】
【氏名】松原 茂雄
(72)【発明者】
【氏名】水川 寛
【審査官】石川 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開平08-039169(JP,A)
【文献】特開2002-316295(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0173869(US,A1)
【文献】特開2016-013569(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2019/0001392(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B21D 39/03
B21J 15/10
F16B 4/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
互いに重ねられた金属板を締結するための締結装置であって、
直動可能な直動部を有するアクチュエータと、
前記直動部に接続された第1及び第2パンチと、
前記第1パンチから第1方向に離間して配置され、前記第1パンチとともに前記金属板が押し込み可能な第1ダイと、
前記第2パンチから前記第1方向とは逆の第2方向に離間して配置され、前記第2パンチとともに前記金属板が押し込み可能な第2ダイと
を備え、
前記直動部の直動が前記第1及び第2パンチに伝えられることにより、前記第1ダイへの前記第1パンチの押込みと、前記第2ダイへの前記第2パンチの押込みとが行われるように構成されて
おり、
前記直動部と前記第1及び第2パンチとの間に介在された梃子部
をさらに備え、
前記梃子部は、
梃子部本体と、
前記梃子部本体に軸支された第1及び第2梃子体と
を有し、
前記第1梃子体は、前記梃子部本体に軸支された第1軸支部と、前記第1軸支部が間に位置するように配置された第1及び第2端部とを有し、前記第1端部が前記直動部に接続され、前記第2端部が前記第1パンチに接続されており、
前記第2梃子体は、前記梃子部本体に軸支された第2軸支部と、前記第2軸支部が間に位置するように配置された第3及び第4端部とを有し、前記第3端部が前記直動部に接続され、前記第4端部が前記第2パンチに接続されている、
締結装置。
【請求項2】
前記第1端部と前記第1軸支部との間の距離が前記第2端部と前記第1軸支部との間の距離よりも長くされており、
前記第3端部と前記第2軸支部との間の距離が前記第4端部と前記第2軸支部との間の距離よりも長くされている、
請求項
1記載の締結装置。
【請求項3】
前記第1端部と前記第1軸支部との間の距離と前記第2端部と前記第1軸支部との間の距離との比率が、前記第3端部と前記第2軸支部との間の距離と前記第4端部と前記第2軸支部との間の距離との比率と等しくされている、
請求項
2記載の締結装置。
【請求項4】
前記第1及び第2パンチは、それぞれの往復動の延長線が互いに重なるよう直線上に配置されており、
前記直動部は、前記第1及び第2パンチの側方に配置されている、
請求項
1から請求項
3までのいずれか1項に記載の締結装置。
【請求項5】
前記直動部は、
前記第1梃子体の前記第1端部が接続された第1梃子接続部と、
前記第2梃子体の前記第3端部が接続された第2梃子接続部と
を有し、
前記第1及び第2梃子接続部が互いに分離可能に設けられている、
請求項
1から請求項
4までのいずれか1項に記載の締結装置。
【請求項6】
前記第1ダイへの前記第1パンチの押込みと、前記第2ダイへの前記第2パンチの押込みとが交互に行われるように構成されている、
請求項1から請求項
5までのいずれか1項に記載の締結装置。
【請求項7】
前記第1及び第2パンチにより前記金属板に加えられる荷重を測定する荷重測定器と、
前記アクチュエータを介して前記第1及び第2パンチの移動を制御するコントローラと
をさらに備え、
前記コントローラは、前記締結のために前記第1及び第2ダイに向けて前記第1及び第2パンチを移動させるとき、前記荷重測定器により測定される荷重及び前記第1及び第2パンチの位置を監視して、前記荷重が増大し始める前記第1及び第2パンチの位置に応じて前記第1及び第2パンチのストローク量を決定
し、
前記コントローラは、
前記荷重が増大し始める前記第1及び第2パンチの位置の区分毎に予め決定されたストローク量を記憶しており、
前記締結のために前記第1及び第2ダイに向けて前記第1及び第2パンチを移動させるとき、前記荷重が増大し始める前記第1及び第2パンチの位置の区分を判定し、判定された区分に対応するストローク量を使用する、
請求項1から請求項
6までのいずれか1項に記載の締結装置。
【請求項8】
互いに重ねられた金属板を締結するための締結装置であって、
直動可能な直動部を有するアクチュエータと、
前記直動部に接続された第1及び第2パンチと、
前記第1パンチから第1方向に離間して配置され、前記第1パンチとともに前記金属板が押し込み可能な第1ダイと、
前記第2パンチから前記第1方向とは逆の第2方向に離間して配置され、前記第2パンチとともに前記金属板が押し込み可能な第2ダイと
を備え、
前記直動部の直動が前記第1及び第2パンチに伝えられることにより、前記第1ダイへの前記第1パンチの押込みと、前記第2ダイへの前記第2パンチの押込みとが行われるように構成されており、
前記第1ダイへの前記第1パンチの押込みと、前記第2ダイへの前記第2パンチの押込みとが交互に行われるように構成されている、
締結装置。
【請求項9】
互いに重ねられた金属板を締結するための締結装置であって、
直動可能な直動部を有するアクチュエータと、
前記直動部に接続された第1及び第2パンチと、
前記第1パンチから第1方向に離間して配置され、前記第1パンチとともに前記金属板が押し込み可能な第1ダイと、
前記第2パンチから前記第1方向とは逆の第2方向に離間して配置され、前記第2パンチとともに前記金属板が押し込み可能な第2ダイと
を備え、
前記直動部の直動が前記第1及び第2パンチに伝えられることにより、前記第1ダイへの前記第1パンチの押込みと、前記第2ダイへの前記第2パンチの押込みとが行われるように構成されており、
前記第1及び第2パンチにより前記金属板に加えられる荷重を測定する荷重測定器と、
前記アクチュエータを介して前記第1及び第2パンチの移動を制御するコントローラと
をさらに備え、
前記コントローラは、前記締結のために前記第1及び第2ダイに向けて前記第1及び第2パンチを移動させるとき、前記荷重測定器により測定される荷重及び前記第1及び第2パンチの位置を監視して、前記荷重が増大し始める前記第1及び第2パンチの位置に応じて前記第1及び第2パンチのストローク量を決定し、
前記コントローラは、
前記荷重が増大し始める前記第1及び第2パンチの位置の区分毎に予め決定されたストローク量を記憶しており、
前記締結のために前記第1及び第2ダイに向けて前記第1及び第2パンチを移動させるとき、前記荷重が増大し始める前記第1及び第2パンチの位置の区分を判定し、判定された区分に対応するストローク量を使用する、
締結装置。
【請求項10】
前記アクチュエータは、サーボモータを含む、
請求項1から請求項9までのいずれか1項に記載の締結装置。
【請求項11】
互いに重ねられた金属板を締結した締結体を製造するための締結体製造方法であって、
請求項1から請求項10までのいずれか1項に記載の締結装置を用いて前記金属板を締結することを含む、締結体製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、互いに重ねられた金属板を締結するための締結装置及びそれを用いた締結体製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来用いられていたこの種の締結装置としては、例えば下記の特許文献1等に示されている装置を挙げることができる。すなわち、従来装置は、2つの方向からの締結接合を可能とするように構成されている。具体的には、従来装置は、第1油圧シリンダと、第1油圧シリンダの伸縮方向に沿って往復動作可能な上側パンチと、上側パンチに対向して設けられる上側ダイと、第2油圧シリンダと、第2油圧シリンダに枢動可能な梃子部材を介して接続されるとともに往復動作可能な下側パンチと、下側パンチに対向して設けられる下側ダイとを備える。第2油圧シリンダは第1油圧シリンダの側方に並べて配置され、梃子部材は、第2油圧シリンダの伸縮方向と異なる方向に動作させるように第2油圧シリンダの動作を下側パンチに伝達する。上側パンチと上側ダイとの間、及び下側パンチと下側ダイとの間に互いに重ねられた金属板がそれぞれ配置される。各パンチとともに金属板が各ダイに押し込まれることにより、それぞれの位置で金属板が締結される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記のような従来装置では、第1及び第2パンチを2つの油圧シリンダによりそれぞれ駆動しているので、装置の導入コスト及びメンテナンスコストが増大する。
【0005】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、その目的は、装置の導入コスト及びメンテナンスコストを抑えることができる締結装置及びそれを用いた締結体製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係る締結装置は、互いに重ねられた金属板を締結するための締結装置であって、直動可能な直動部を有するアクチュエータと、直動部に接続された第1及び第2パンチと、第1パンチから第1方向に離間して配置され、第1パンチとともに金属板が押し込み可能な第1ダイと、第2パンチから第1方向とは逆の第2方向に離間して配置され、第2パンチとともに金属板が押し込み可能な第2ダイとを備え、直動部の直動が第1及び第2パンチに伝えられることにより、第1ダイへの第1パンチの押込みと、第2ダイへの第2パンチの押込みとが行われるように構成されており、直動部と第1及び第2パンチとの間に介在された梃子部をさらに備え、梃子部は、梃子部本体と、梃子部本体に軸支された第1及び第2梃子体とを有し、第1梃子体は、梃子部本体に軸支された第1軸支部と、第1軸支部が間に位置するように配置された第1及び第2端部とを有し、第1端部が直動部に接続され、第2端部が第1パンチに接続されており、第2梃子体は、梃子部本体に軸支された第2軸支部と、第2軸支部が間に位置するように配置された第3及び第4端部とを有し、第3端部が直動部に接続され、第4端部が第2パンチに接続されている。
また、本発明に係る締結装置は、互いに重ねられた金属板を締結するための締結装置であって、直動可能な直動部を有するアクチュエータと、直動部に接続された第1及び第2パンチと、第1パンチから第1方向に離間して配置され、第1パンチとともに金属板が押し込み可能な第1ダイと、第2パンチから第1方向とは逆の第2方向に離間して配置され、第2パンチとともに金属板が押し込み可能な第2ダイとを備え、直動部の直動が第1及び第2パンチに伝えられることにより、第1ダイへの第1パンチの押込みと、第2ダイへの第2パンチの押込みとが行われるように構成されており、第1ダイへの第1パンチの押込みと、第2ダイへの第2パンチの押込みとが交互に行われるように構成されている。
また、本発明に係る締結装置は、互いに重ねられた金属板を締結するための締結装置であって、直動可能な直動部を有するアクチュエータと、直動部に接続された第1及び第2パンチと、第1パンチから第1方向に離間して配置され、第1パンチとともに金属板が押し込み可能な第1ダイと、第2パンチから第1方向とは逆の第2方向に離間して配置され、第2パンチとともに金属板が押し込み可能な第2ダイとを備え、直動部の直動が第1及び第2パンチに伝えられることにより、第1ダイへの第1パンチの押込みと、第2ダイへの第2パンチの押込みとが行われるように構成されており、第1及び第2パンチにより金属板に加えられる荷重を測定する荷重測定器と、アクチュエータを介して第1及び第2パンチの移動を制御するコントローラとをさらに備え、コントローラは、締結のために第1及び第2ダイに向けて第1及び第2パンチを移動させるとき、荷重測定器により測定される荷重及び第1及び第2パンチの位置を監視して、荷重が増大し始める第1及び第2パンチの位置に応じて第1及び第2パンチのストローク量を決定し、コントローラは、荷重が増大し始める第1及び第2パンチの位置の区分毎に予め決定されたストローク量を記憶しており、締結のために第1及び第2ダイに向けて第1及び第2パンチを移動させるとき、荷重が増大し始める第1及び第2パンチの位置の区分を判定し、判定された区分に対応するストローク量を使用する。
【0007】
本発明に係る締結体製造方法は、互いに重ねられた金属板を締結した締結体を製造するための締結体製造方法であって、上述の締結装置を用いて金属板を締結することを含む。
【発明の効果】
【0008】
本発明の締結装置及びそれを用いた締結体製造方法によれば、直動部の直動が第1及び第2パンチに伝えられることにより、第1ダイへの第1パンチの押込みと、第2ダイへの第2パンチの押込みとが行われるように構成されているので、装置の導入コスト及びメンテナンスコストの抑えることができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施の形態1による締結装置を示す説明図である。
【
図2】
図1の締結装置によって締結された締結体を示す斜視図である。
【
図3】
図2の面IIIにおける締結体の断面図である。
【
図4】
図1のダイベース、第1梃子接続部及び第2梃子接続部の断面図である。
【
図5】
図4の第1及び第2梃子体の動作を示す説明図である。
【
図6】
図1の第1パンチ及び第1ダイを示す一部断面の正面図である。
【
図7】
図6の第1パンチ及び第1ダイにより締結された後の第1及び第2金属板の接合部分の断面図である。
【
図8】
図1の第1及び第2金属板の締結時に荷重測定器によって測定される荷重と第1パンチ7の位置との関係を示すグラフである。
【
図9】
図1のコントローラによる制御動作を示すフローチャートである。
【
図10】本発明の実施の形態2による締結装置を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について、図面を参照して説明する。本発明は各実施の形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で構成要素を変形して具体化できる。また、各実施形態に開示されている複数の構成要素の適宜な組み合わせにより、種々の発明を形成できる。例えば、実施の形態に示される全構成要素からいくつかの構成要素を削除してもよい。さらに、異なる実施形態の構成要素を適宜組み合わせてもよい。
【0011】
実施の形態1.
図1は本発明の実施の形態1による締結装置を示す説明図であり、
図2は
図1の締結装置によって締結された締結体100を示す斜視図であり、
図3は
図2の面IIIにおける締結体100の断面図である。
図1に示す締結装置は、互いに重ねられた第1及び第2金属板1,2並びに第3及び第4金属板3,4をそれぞれ締結するためのものである。第1及び第2金属板1,2が互いに締結され、第3及び第4金属板3,4が互いに締結される。
【0012】
締結は、第1及び第2金属板1,2並びに第3及び第4金属板3,4をそれぞれ乾式接合により互いに接合することと理解できる。特に、本実施の形態の締結装置では、リベット等の副資材を用いずに第1及び第2金属板1,2並びに第3及び第4金属板3,4を接合できる。本実施の形態の締結装置による接合をかしめ接合又はクリンチかしめ接合と呼ぶこともある。しかしながら、締結装置は、リベット等の副資材を用いて第1及び第2金属板1,2並びに第3及び第4金属板3,4を締結してもよい。
【0013】
第1~第4金属板1~4としては、種々の金属板を用いることができ、限定はされないが例えば鋼板、ステンレス鋼板、アルミ板若しくは銅板又はそれらに表面処理を施した物等を用いることができる。表面処理には、塗装及びめっきが含まれる。第1~第4金属板1~4の板厚は、互いに同じであってもよいし、互いに異なっていてもよい。また、第1~第4金属板1~4として、異なる板厚を有する種々の金属板が使用され得る。用いられる金属板によって、第1及び第2金属板1,2の合計板厚並びに第3及び第4金属板3,4の合計板厚が変わることもある。
【0014】
第1~第4金属板1~4は、
図2及び
図3に示す締結体100の一部であり得る。
図2に示す締結体100は、第1~第3溝形鋼101~103がコ字形をなすように互いに締結されたものである。第1金属板1が第1溝形鋼101の上フランジ101aであり、第2金属板2が第2溝形鋼102の上フランジ102aであり、第3金属板3が第1溝形鋼101の下フランジ101bであり、第4金属板4が第2溝形鋼102の下フランジ102bであり得る。同様に、第1金属板1が第1溝形鋼101の上フランジ101aであり、第2金属板2が第3溝形鋼103の上フランジ103aであり、第3金属板3が第1溝形鋼101の下フランジ101bであり、第4金属板4が第3溝形鋼103の下フランジ103bであり得る。
図2において、第1及び第2溝形鋼101,102が重なる部分並びに第1及び第3溝形鋼101,103が重なる部分に示す円形は、締結箇所を表している。
【0015】
図1に示すように、本実施の形態の締結装置は、アクチュエータ5、上部カバー6、第1パンチ7、第1ダイ8、第2パンチ9、第2ダイ10、ダイベース11、第1梃子体12、第2梃子体13、荷重測定器14及びコントローラ15を含んでいる。
【0016】
アクチュエータ5は、第1及び第2パンチ7,9を往復動させるための機器である。本実施の形態のアクチュエータ5は、サーボモータ50、第1プーリ51、第2プーリ52、ボールネジ53、伝達部材54、ロッド55、第1梃子接続部56及び第2梃子接続部57を有している。
【0017】
サーボモータ50は、コントローラ15の制御に応じて動作される。サーボモータ50の動力は交流電源及び直流電源のいずれでもよい。
【0018】
第1プーリ51は、サーボモータ50の回転軸に取り付けられており、その回転軸と一体に回転可能とされている。第2プーリ52は、ボールネジ53の一端に取り付けられており、そのボールネジ53と一体に回転可能に設けられている。伝達部材54は、第1及び第2プーリ31,32に巻き掛けられた部材であり、サーボモータ50の駆動力をボールネジ53に伝えることができる。本実施の形態の伝達部材54はベルトによって構成されている。しかしながら、例えばチェーン又は鋼索等の他の部材によって構成されてもよい。
【0019】
ボールネジ53は、他端側の外周面にネジ溝が設けられた長手状の部材である。本実施の形態では、ボールネジ53は、サーボモータ50の側方に配置されるとともに、サーボモータ50の回転軸と平行に延在されている。
【0020】
ロッド55は、内側に挿通空間を有する長手状の部材である。挿通空間はロッド55の一端において開口されており、ロッド55の一端から挿通空間内にボールネジ53が挿通されている。挿通空間の内周面には、ボールネジ53の外周面に設けられたネジ溝と螺合するロッド側ネジ溝が設けられている。
【0021】
第1梃子接続部56及び第2梃子接続部57は、ロッド55の先端に取り付けられた部材である。第1梃子接続部56に第1梃子体12が接続され、第2梃子接続部57に第2梃子体13が接続されている。第1梃子接続部56及び第2梃子接続部57の構造については後に詳しく説明する。
【0022】
サーボモータ50の駆動力によりボールネジ53が回転駆動されることにより、ロッド55、第1梃子接続部56及び第2梃子接続部57がロッド55の長手方向55aに沿って進退され得る。ロッド55、第1梃子接続部56及び第2梃子接続部57は、直動可能な直動部を構成している。本実施の形態の締結装置では、ロッド55、第1梃子接続部56及び第2梃子接続部57の直動が第1及び第2梃子体12,13を介して第1及び第2パンチ7,9に伝えられることで、第1及び第2パンチ7,9が往復動作可能とされている。
【0023】
アクチュエータ5がサーボモータ50を含むことにより、第1及び第2パンチ7,9の往復動の応答性を良くすることができる。しかしながら、アクチュエータ5の構成は任意であり、アクチュエータ5は例えば油圧シリンダ又は空気シリンダ等の他の構成を含んでいてもよい。
【0024】
上部カバー6は、締結装置の上部に設けられたカバーである。本実施の形態の上部カバー6は、アクチュエータ5の第1プーリ51、第2プーリ52及び伝達部材54等を収納している。また、上部カバー6は、サーボモータ50及びボールネジ53に着脱可能に固定されている。図示はしないが、上部カバー6の上部に係合体が取り付けることができる。係合体を利用して締結装置の全体を吊り下げることが可能である。また、鉛直方向を軸として回転可能に締結装置を吊り下げられることができる。
【0025】
第1パンチ7は、第1パンチベース70の先端に着脱可能に取り付けられている。第1パンチ7は、第1パンチベース70及び第1梃子体12を介してアクチュエータ5の第1梃子接続部56に接続されており、アクチュエータ5の動力により往復動作可能に構成されている。第1ダイ8は、第1パンチ7から第1方向7aに離間して配置され、第1パンチ7とともに第1及び第2金属板1,2が押し込み可能に構成されている。本実施の形態では、第1方向7aは、鉛直方向に係る下方向とされている。第1方向7aは、水平方向又は鉛直方向若しくは水平方向に対して傾いた方向であってもよい。
【0026】
第2パンチ9は、第2パンチベース90に着脱可能に取り付けられている。第2パンチ9は、第2パンチベース90及び第2梃子体13を介してアクチュエータ5の第2梃子接続部57に接続されており、アクチュエータ5の動力により往復動作可能に構成されている。第2ダイ10は、第2パンチ9から第1方向7aとは逆の第2方向9aに離間して配置され、第2パンチ9とともに第3及び第4金属板3,4が押し込み可能に構成されている。本実施の形態では、第2方向9aは、鉛直方向に係る上方向とされている。第2方向9aは、第1方向7aと同様に水平方向又は鉛直方向若しくは水平方向に対して傾いた方向であってもよい。
【0027】
本実施の締結装置では、第1及び第2パンチ7,9は、それぞれの往復動の延長線が互いに重なるよう直線上に配置されている。より具体的には、第1及び第2パンチ7,9は、鉛直方向に沿って往復動作可能に構成されており、鉛直方向に沿って上下に配置されている。しかしながら、第1及び第2パンチ7,9は水平方向に互いにずれて配置されていてもよい。第1及び第2パンチ7,9並びに第1及び第2ダイ8,10の構造については後に図を用いて説明する。
【0028】
アクチュエータ5の直動部(ロッド55、第1梃子接続部56及び第2梃子接続部57)は、第1及び第2パンチ7,9の側方に配置されている。アクチュエータ5の直動部の軌道と第1及び第2パンチ7,9の軌道は互いに平行とされている。
【0029】
ダイベース11は、第1及び第2ダイ8,10を支持する部材である。本実施の形態のダイベース11には、第1及び第2梃子体12,13が軸支されている梃子部本体を構成する。ダイベース11(梃子部本体)は、第1及び第2梃子体12,13とともに、直動部と第1及び第2パンチ7,9との間に介在された梃子部を構成する。本実施の形態のダイベース11は、シャフト110を介してボールネジ53に支持されている。すなわち、アクチュエータ5の直動部(ロッド55、第1梃子接続部56及び第2梃子接続部57)が直動しても、ダイベース11は移動しない。ダイベース11の構造については、後に図を用いて説明する。
【0030】
第1梃子体12は、ダイベース11に軸支されるとともに、第1パンチ7とアクチュエータ5の第1梃子接続部56との間に介在されている。第1梃子体12は、アクチュエータ5の直動部の往復動を第1パンチ7に伝える。同様に、第2梃子体13は、ダイベース11に軸支されるとともに、第2パンチ9とアクチュエータ5の第2梃子接続部57との間に介在されている。第2梃子体13は、アクチュエータ5の直動部の往復動を第2パンチ9に伝える。第1及び第2梃子体12,13の構造については後に図を用いて説明する。
【0031】
荷重測定器14は、第1及び第2パンチ7,9により第1~第4金属板1~4に加えられる荷重を測定するための機器である。荷重測定器14は、第1~第4金属板1~4に第1及び第2パンチ7,9が押し当てられた際の反力を荷重として測定することができる。荷重測定器14の配置は任意である。後に図を用いて説明するように、第1ダイ8への第1パンチ7の押込みと、第2ダイ10への第2パンチ9の押込みとが交互に行われる。本実施の形態の荷重測定器14は、第1パンチ7により第1及び第2金属板1,2に加えられる荷重と、第2パンチ9により第3及び第4金属板3,4に加えられる荷重とを交互に測定することができる。
【0032】
コントローラ15は、アクチュエータ5を介して第1及び第2パンチ7,9の移動を制御するものであり、例えばプログラムに基づいて演算処理を行うコンピュータ又は専用回路等の機器により構成することができる。本実施の形態のコントローラ15は、サーボモータ50及び荷重測定器14に接続されており、締結のために第1及び第2ダイ8,10に向けて第1及び第2パンチ7,9を移動させるとき、荷重測定器14により測定される荷重及び第1及び第2パンチ7,9の位置を監視することができる。コントローラ15は、第1及び第2パンチ7,9の移動を制御しているため、第1パンチ7の位置を認識できる。第1及び第2パンチ7,9の位置は、エンコーダ等の位置測定器からの信号に基づいて監視してもよい。
【0033】
後に詳しく説明するように、本実施の形態のコントローラ15は、締結のために第1及び第2ダイ8,10に向けて第1及び第2パンチ7,9を移動させるとき、荷重測定器14により測定される荷重が増大し始める第1及び第2パンチ7,9の位置に応じて第1及び第2パンチ7,9のストローク量を決定できる。ここでいうストローク量とは、第1及び第2パンチ7,9の基準位置から下死点までの第1及び第2パンチ7,9の変位量である。ストローク量を変更することは、第1及び第2パンチ7,9の下死点を変更することと理解することができる。
【0034】
次に、
図4は
図1のダイベース11、第1梃子接続部56及び第2梃子接続部57の断面図であり、
図5は
図4の第1及び第2梃子体12,13の動作を示す説明図である。
図4に示すように、ダイベース11には、一対の側壁部111、上壁部112及び中央部113が設けられている。
図4では紙面奥側の側壁部111のみを示しているが、紙面手前側にも側壁部111が設けられている。
【0035】
上壁部112は、ダイベース11の高さ方向11aに係る上部において側壁部111間を接続している。
図1に示すシャフト110は上壁部112に固定される。上壁部112には、ダイベース11の幅方向11bに係る一端側においてダイベース11の高さ方向11aに延在された挿通孔112aが設けられている。上壁部112の挿通孔112aには、第1梃子接続部56が挿通されている。挿通孔112aは、高さ方向11aに沿う第1梃子接続部56の進退を案内する。
【0036】
中央部113は、ダイベース11の高さ方向11aに係る中央において側壁部111間を接続している。中央部113には、ダイベース11の幅方向11bに係る一端側においてダイベース11の高さ方向11aに延在された挿通孔113aが設けられている。中央部113の挿通孔113aには、第2梃子接続部57が挿通されている。挿通孔113aは、高さ方向11aに沿う第2梃子接続部57の進退を案内する。
【0037】
中央部113には、ダイベース11の幅方向11bに係る他端側に配置されるとともに、ダイベース11の高さ方向11aに互いに離間された第1突出部114、第2突出部115及び第3突出部116が設けられている。
【0038】
第1突出部114は、第2突出部115の上方に配置されている。第1突出部114には、ダイベース11の高さ方向11aに延在された挿通孔114aが設けられている。第1突出部114の挿通孔114aには、第1パンチベース70が挿通されている。挿通孔114aは、高さ方向11aに沿う第1パンチベース70の進退を案内する。
【0039】
第2突出部115は、第1突出部114と第3突出部116との間に配置されている。第2突出部115には、上側凹部115a及び下側凹部115bが設けられている。上側凹部115a内には、第1ダイ8が配置されている。下側凹部115b内には、第2ダイ10が配置されている。第1及び第2ダイ8,10は、第2突出部115に着脱可能に取り付けられる。
【0040】
第3突出部116は、第2突出部115の下方に配置されている。第2突出部115には、ダイベース11の高さ方向11aに延在された挿通孔116aが設けられている。第3突出部116の挿通孔116aには、第2パンチベース90が挿通されている。挿通孔116aは、高さ方向11aに沿う第2パンチベース90の進退を案内する。
【0041】
第1梃子接続部56には、胴部560と、その胴部560の下端から突出された環状突出部561とが設けられている。胴部560には、ダイベース11の幅方向11bに延在する挿通孔560aが設けられている。挿通孔560aに第1梃子体12の一端(第1端部121)が挿入されることで、第1梃子体12が第1梃子接続部56に接続されている。環状突出部561には、ダイベース11の高さ方向11aに延在された挿通孔561aが設けられている。挿通孔561aには、第2梃子接続部57の上端が挿入されている。環状突出部561及び第2梃子接続部57にピン58が挿通されることで、第1梃子接続部56に第2梃子接続部57が接続されている。ピン58が取り外されることで、第1梃子接続部56から第2梃子接続部57を取り外すことができる。すなわち、第1及び第2梃子接続部56,57は互いに分離可能に設けられている。第1及び第2梃子接続部56,57が互いに分離可能に設けられていることで、第1及び第2梃子接続部56,57を個々に交換でき、メンテナンスコストを低減できる。しかしながら、第1及び第2梃子接続部56,57は互いに分離できないように一体に設けられていてもよい。
【0042】
第2梃子接続部57には、柱部570と、その柱部570の下部に設けられた環状部571とが設けられている。柱部570の上部が第1梃子接続部56の環状突出部561に設けられた挿通孔561aに挿通されている。環状部571には、ダイベース11の幅方向11bに延在する挿通孔571aが設けられている。挿通孔571aに第2梃子体13の一端(第3端部131)が挿入されることで、第2梃子体13が第2梃子接続部57に接続されている。
【0043】
第1梃子体12は、上壁部112と中央部113との間に配置されている。第1梃子体12には、第1軸支部120、第1端部121及び第2端部122が設けられている。第1軸支部120は、ダイベース11(梃子部本体)に軸支されている部分である。より具体的には、第1軸支部120はダイベース11の側壁部111に軸支されている。第1梃子体12は、第1軸支部120を中心に回動可能に設けられている。第1及び第2端部121,122は、第1軸支部120が間に位置するように配置された第1梃子体12の端部である。第1端部121は、第1梃子接続部56の挿通孔560aに挿通されている。第1端部121には、第1梃子接続部56の挿通孔560aの内周下面と接触される接触面121aが設けられている。第1端部121の接触面121a及び挿通孔560aの内周下面は互いに面接触される形状とされている。第2端部122は、リンクプレート123及び第1パンチベース70を介して第1パンチ7に接続されている。リンクプレート123は、第2端部122及び第1パンチベース70に回動可能に取り付けられた接続部材である。リンクプレート123とは異なる部材によって第2端部122が第1パンチベース70に接続されていてもよい。
【0044】
第2梃子体13は、中央部113の下方に配置されている。第2梃子体13には、第2軸支部130、第3端部131及び第4端部132が設けられている。第2軸支部130は、ダイベース11(梃子部本体)に軸支されている部分である。より具体的には、第2軸支部130はダイベース11の側壁部111に軸支されている。第2梃子体13は、第2軸支部130を中心に回動可能に設けられている。第3及び第4端部131,132は、第2軸支部130が間に位置するように配置された第2梃子体13の端部である。第3端部131は、第2梃子接続部57の挿通孔571aに挿通されている。第3端部131には、第2梃子接続部57の挿通孔570aの内周上面と接触される接触面131aが設けられている。第3端部131の接触面131a及び挿通孔570aの内周上面は互いに面接触される形状とされている。第4端部132は、リンクプレート133及び第2パンチベース90を介して第2パンチ9に接続されている。リンクプレート133は、第4端部132及び第2パンチベース90に回動可能に取り付けられた接続部材である。リンクプレート133とは異なる部材によって第4端部132が第2パンチベース90に接続されていてもよい。
【0045】
図4は、第1及び第2パンチ7,9の両方が第1及び第2ダイ8,10から離された中間状態を示している。第1及び第2梃子接続部56,57の変位は、第1及び第2梃子体12,13並びに第1及び第2パンチベース70,90を介して第1及び第2パンチ7,9に伝えられる。
図5の(a)に示すように、第1及び第2梃子接続部56,57が
図4の状態から上方に変位したとき、第1パンチ7が第1ダイ8に向けて移動されるとともに、第2パンチ9が第2ダイ10から離れる方向に移動される。このとき、第1及び第2金属板1,2の締結が行われる。
【0046】
図4に特に示しているように、本実施の形態では、第1端部121と第1軸支部120との間の距離D1が第2端部122と第1軸支部120との間の距離D2よりも長くされている。このため、第1及び第2梃子接続部56,57を上方へと移動させる力が増幅された上で第1パンチ7に伝えられる。すなわち、小さな駆動力で大きな締結力を得ることができる。これにより、アクチュエータ5の駆動源(サーボモータ50)を小形化することができる。但し、距離D1が、距離D2と等しいか又は距離D2より短くてもよい。
【0047】
また、
図5の(b)に示すように、第1及び第2梃子接続部56,57が
図4の状態から下方に変位したとき、第1パンチ7が第1ダイ8から離れる方向に移動されるとともに、第2パンチ9が第2ダイ10に向けて移動される。このとき、第3及び第4金属板3,4の締結が行われる。
【0048】
図4に特に示しているように、本実施の形態では、第3端部131と第2軸支部130との間の距離D3が第4端部132と第2軸支部130との間の距離D4よりも長くされている。このため、第1及び第2梃子接続部56,57を下方へと移動させる力が増幅された上で第2パンチ9に伝えられる。すなわち、小さな駆動力で大きな締結力を得ることができる。これにより、アクチュエータ5の駆動源(サーボモータ50)を小形化することができる。但し、距離D3が、距離D4と等しいか又は距離D4より短くてもよい。
【0049】
本実施の形態では、距離D1と距離D2との比率が距離D3と距離D4との比率と等しくされている。これにより、第1及び第2金属板1,2の締結と第3及び第4金属板3,4の締結とをより確実に同じ力で行うことができる。しかしながら、これらの比率は互いに異なっていてもよい。
【0050】
次に、
図6は、
図1の第1パンチ7及び第1ダイ8を示す一部断面の正面図である。
図6を用いて第1パンチ7及び第1ダイ8の具体的構造について説明する。第2パンチ9及び第2ダイ10の具体的構造は、第1パンチ7及び第1ダイ8の具体的構造と同じである。
【0051】
図6に示すように、第1パンチ7には、基端部71、先端部72、中間部73及び緩衝部材74が設けられている。
【0052】
基端部71、先端部72及び中間部73は、一体に構成されている。基端部71は、
図4の第1パンチベース70に装着される部分である。先端部72は、第1パンチ7の先端を構成する部分であり、円柱状に形成されている。先端部72は、第1及び第2金属板1,2に押し当てられるとともに、これら第1及び第2金属板1,2とともに第1ダイ8に押し込められる。中間部73は、基端部71及び先端部72の中間に位置する部分である。中間部73には、先端部72の外径よりも大きな外径を有するフランジ部73aが設けられている。
【0053】
緩衝部材74は、先端部72を囲むように配置された円筒状の部材である。緩衝部材74の上面はフランジ部73aの下面に固着されている。緩衝部材74の下面74aは先端部72の下面72aよりも下方に位置されており、先端部72よりも先に緩衝部材74が第1及び第2金属板1,2に押し当てられる。緩衝部材74と第1ダイ8とにより第1及び第2金属板1,2を挟み込むことにより、先端部72が第1及び第2金属板1,2に押し当てられる前に、第1及び第2金属板1,2を互いに密着させることができる。緩衝部材74と第1ダイ8とにより第1及び第2金属板1,2を挟み込むことをプリクランプと呼ぶことがある。緩衝部材74は例えばゴム等の可撓性を有する素材により構成されている。緩衝部材74が第1及び第2金属板1,2に押し当てられた後に第1パンチ7が第1ダイ8に向けてさらに変位されることにより、緩衝部材74が圧縮されるとともに、先端部72が第1及び第2金属板1,2に押し当てられる。
【0054】
第1ダイ8は、ケース81、アンビル82及び複数のブレード83を有している。
【0055】
ケース81には、基端部81a及び収容部81bが設けられている。基端部81aは、
図4のダイベース11に装着される部分である。収容部81bは、基端部81aの上部に設けられた有底筒状の部分である。収容部81bの内側にアンビル82及びブレード83が収容されている。
【0056】
アンビル82は、円柱状の基部82aと、基部82aの上面から突出された円柱状の凸部82bとを有している。凸部82bの外径は基部82aの外径よりも小さくされており、収容部81bの内周面と凸部82bの外周面との間に空隙が形成されている。凸部82bの軸中心は、基部82aの軸中心と一致されていることが好ましい。
【0057】
複数のブレード83は、凸部82bの周方向に互いに間隔を置いて凸部82bの外周面と収容部81bの内周面との間に配置されている。各ブレード83は、図示しないバネ等の付勢手段により凸部82bの径方向内側に向かって付されており、付勢手段の付勢を超える外力が作用した際に凸部82bの径方向外側に向かって変位可能に構成されている。各ブレード83の上面は、アンビル82の凸部82bの上面よりも上方に設けられている。
【0058】
アンビル82の凸部82bの上面及び各ブレード83の内周面は、凹部84を形成している。緩衝部材74とブレード83の上面とにより第1及び第2金属板1,2が挟み込まれた後、第1パンチ7が第1ダイ8に向けてさらに変位されたとき、第1パンチ7並びに第1及び第2金属板1,2が凹部84内に押し込まれる。凹部84内への第1パンチ7並びに第1及び第2金属板1,2の押し込みが進むにつれて凸部82bの径方向外側に向かう外力が各ブレード83に作用し、その外力が付勢手段の付勢を超えた際に各ブレード83が凸部82bの径方向外側に向けて変位する。
【0059】
次に、
図7は、
図6の第1パンチ7及び第1ダイ8により締結された後の第1及び第2金属板1,2の接合部分20の断面図である。第1パンチ7並びに第1及び第2金属板1,2が凹部84内に押し込まれることにより、
図3に示す接合部分20が第1及び第2金属板1,2に形成される。
【0060】
接合部分20には、圧縮部200及びかしめ部201が形成されている。
【0061】
圧縮部200は、第1パンチ7の先端部41とアンビル82の凸部82bとにより第1及び第2金属板1,2が板厚方向に圧縮された部分である。圧縮部200における第1及び第2金属板1,2の合計板厚(締結によって圧し潰された後の第1及び第2金属板1,2の合計板厚Ta)は、第1パンチ7の先端部41とアンビル82の凸部82bとにより圧縮されていない部分における第1及び第2金属板1,2の合計板厚(締結前の第1及び第2金属板1,2の合計板厚Tb)よりも薄くなっている。
【0062】
かしめ部201は、第1及び第2金属板1,2がかしめられた部分である。かしめ部201は、第1金属板1に形成された凸部201aと、第2金属板2に形成された凹部201bとを含んでいる。第1金属板1の凸部201aは、第2金属板2の凹部201bに嵌合されている。かしめ部201の凸部201a及び凹部201bは、圧縮部200が形成される際に、第1ダイ8の各ブレード83が径方向外方に向けて変位されることにより生じた空間を埋めるように第1及び第2金属板1,2を構成する金属が変形することで形成される。
【0063】
次に、
図8は、
図1の第1及び第2金属板1,2の締結時に荷重測定器14によって測定される荷重と第1パンチ7の位置との関係を示すグラフである。第3及び第4金属板3,4の締結時に荷重測定器14によって測定される荷重と第2パンチ9の位置との関係も同様である。
【0064】
図8には、複数の曲線C1~C3が示されている。実線にて示す曲線C1は、第1及び第2金属板1,2として2.3mmの金属板をそれぞれ用いた場合の荷重と第1パンチ7の位置との関係を示している。第1パンチ7の位置は、基準位置からの第1パンチ7の移動量として理解することができる。一点鎖線にて示す曲線C2は、第1及び第2金属板1,2の一方として2.3mmの金属板を用い、他方として1.6mmの金属板を用いた場合の荷重と第1パンチ7の移動量との関係を示している。二点鎖線にて示す曲線C3は、第1及び第2金属板1,2として1.6mmの金属板をそれぞれ用いた場合の荷重と第1パンチ7の移動量との関係を示している。すなわち、曲線C1~C3は、第1及び第2金属板1,2の合計板厚が異なる場合の荷重と第1パンチ7の位置との関係を示している。
【0065】
まず、実線にて示す曲線C1に基づき、荷重測定器14によって測定される荷重と第1パンチ7の移動量との関係を説明する。
【0066】
第1及び第2金属板1,2の締結には、第1期間P1、第2期間P2及び第3期間P3が含まれる。第1期間P1は、第1パンチ7が基準位置から第1ダイ8に向けて移動を開始した時から第1パンチ7の緩衝部材74が第1及び第2金属板1,2に接触するまでの期間である。第2期間P2は、緩衝部材74が第1及び第2金属板1,2に接触した時から第1及び第2金属板1,2がアンビル82の凸部82bの上面に接触するまでの期間である。第3期間P3は、第1及び第2金属板1,2がアンビル82の凸部82bの上面に接触した時から第1パンチ7が所定の下死点に到達するまでの期間である。
【0067】
曲線C1により表されているように、第1期間P1では、第1パンチ7の移動に拘わらず荷重測定器14によって測定される荷重の値に大きな変化は生じない。第2期間P2が始まった時、すなわち第1パンチ7の先端が第1及び第2金属板1,2に接触した時、荷重測定器14によって測定される荷重が急激に増大する。第2期間P2中、荷重が徐々に増大し、第3期間P3が始まった時、すなわち第1及び第2金属板1,2がアンビル82の凸部82bの上面に接触した時に、再び荷重が急激に増大する。荷重測定器14によって測定される荷重は、第1及び第2金属板1,2の締結の進展に応じて非連続に増大する。
【0068】
上述のように、曲線C1~C3は、第1及び第2金属板1,2の合計板厚が異なる場合の荷重と第1パンチ7の位置との関係を示している。曲線C1~C3を比較することで分かるように、第1及び第2金属板1,2の合計板厚が厚いほど第2期間P2が早く始まる。すなわち、第2期間P2が始まる第1パンチ7の位置に基づいて第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別することができる。
【0069】
第2期間P2が始まる第1パンチ7の位置は、荷重測定器14によって測定される荷重と第1パンチ7の位置とを監視することで検出することができる。すなわち、第1ダイ8に向けての第1パンチ7の移動を開始した後、荷重測定器14によって測定される荷重の増大が始まるタイミングを検出した際、その時の第1パンチ7の位置を第2期間P2が始まる第1パンチ7の位置として扱うことができる。荷重の微分値が閾値を超えた時を、荷重の増大が始まるタイミングと扱うことができる。すなわち、荷重測定器14によって測定される荷重と第1パンチ7の位置とを監視することにより、第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別することができる。
【0070】
次に、
図9は、
図1のコントローラ15による制御動作を示すフローチャートである。
図9では、第1ダイ8に向けて第1パンチ7を移動させる際の制御動作を示している。第2ダイ10に向けて第2パンチ9を移動させる際の制御動作も同様である。
図9に示すように、コントローラ15は、締結のために第1ダイ8に向けて第1パンチ7を移動させ始めた後(ステップS1)、荷重測定器14により測定される荷重及び第1パンチ7の位置を監視する(ステップS2)。コントローラ15は、荷重及び位置を監視しているとき、荷重の増大が始まるか否かを判定する(ステップS3)。コントローラ15は、荷重の微分値が閾値を超えた際に荷重の増大が始まったと判定することができる。荷重及び位置の監視は、荷重の増大が始まるまで実施される。
【0071】
コントローラ15は、荷重の増大が始まったと判定したとき、その時の第1パンチ7の位置に基づいて第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別する(ステップS4)。本実施の形態のコントローラ15は、荷重が増大し始める第1パンチ7の位置の区分(範囲)と第1及び第2金属板1,2の合計板厚との対応関係に係る情報を予め有しており、荷重の増大が始まったと判定した時の第1パンチ7の位置がどの区分の位置であるかに基づいて、第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別する。
【0072】
コントローラ15は、第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別した後、第1パンチ7のストローク量を決定する(ステップS5)。
【0073】
ここで、締結(第1及び第2金属板1,2のかしめによる接合)の強度は、第1及び第2金属板1,2の圧下率と関係を有する。圧下率は、締結時に第1パンチ7及び第1ダイ8により第1及び第2金属板1,2をどの程度圧し潰したかを表す指標であり、締結前の第1及び第2金属板1,2の合計板厚をTbとし、締結によって圧し潰された後の第1及び第2金属板1,2の合計板厚をTaとしたとき、{(Tb-Ta)/Tb}×100[%]で表すことができる。圧下率は、パンチのストローク量(変位量)の設定を変更することにより調整することができる。
【0074】
本実施の形態のコントローラ15は、荷重が増大し始める第1パンチ7の位置の区分(すなわち第1及び第2金属板1,2の合計板厚)毎に、予め決定された第1パンチ7のストローク量(締結強度を高めるとの観点から最適と考えられるストローク量)を記憶している。コントローラ15は、第1及び第2金属板1,2の合計板厚を判別した後、荷重が増大し始める第1パンチ7の位置の区分を判定し、判定された区分に対応するストローク量を使用する。
【0075】
コントローラ15は、第1パンチ7のストローク量を決定した後、そのストローク量に対応する下死点に第1パンチ7が到達するか否かを判定する(ステップS6)。コントローラ15は、第1パンチ7が下死点に到達したと判定した場合、第1ダイ8から遠ざかるように第1パンチ7の移動を反転させて(ステップS7)、第1及び第2金属板1,2の接合部分20から第1パンチ7を引き抜く。
【0076】
コントローラ15は、第1パンチ7が下死点に到達したと判定した後、今回の締結の合否を判定する(ステップS8)。コントローラ15は、適正に締結が行われた際の荷重測定器14によって測定される荷重と第1パンチ7の位置との関係を示す基準情報を有しており、今回の締結時に荷重測定器14によって測定される荷重及び第1パンチ7の位置と基準情報とを比較して合否を判定することができる。例えば、第1パンチ7の位置毎又は位置の区分毎に基準情報における荷重と実際に測定された荷重との差が所定範囲内であるとき今回の締結を合格と判定することができる。
【0077】
コントローラ15は、締結を特定する情報に関連づけて、その締結時に判別した合計板厚、その締結時に適用したストローク量及びその締結の合否を記憶するとともに、それらの少なくとも1つを図示しない表示装置に表示させることができる。
【0078】
本実施の形態の締結体を製造するための締結体製造方法は、上述の締結装置を用いて第1及び第2金属板1,2を締結することを含む。製造方法は、
図9に示すコントローラ15の各工程を含むことができる。
【0079】
このような締結装置及びそれを用いた締結体製造方法では、直動部(ロッド55、第1梃子接続部56及び第2梃子接続部57)の直動が第1及び第2パンチ7,9に伝えられることにより、第1ダイ8への第1パンチ7の押込みと、第2ダイ10への第2パンチ9の押込みとが行われるように構成されているので、装置の導入コスト及びメンテナンスコストの抑えることができる。
【0080】
また、直動部(ロッド55、第1梃子接続部56及び第2梃子接続部57)と第1及び第2パンチ7,9との間に梃子部(ダイベース11、第1梃子体12及び第2梃子体13)が介在されているので、直動部の直動を梃子部で制御した上で第1及び第2パンチ7,9に伝えることができ、より細やかに締結を行うことができる。
【0081】
また、第1梃子体12の第1端部121と第1軸支部120との間の距離D1が第2端部122と第1軸支部120との間の距離D2よりも長くされているとともに、第2梃子体13の第3端部131と第2軸支部130との間の距離D3が第4端部132と第2軸支部130との間の距離Dよりも長くされているので、直動部を変位させる力を増幅した上で第1及び第2パンチ7,9に伝えることができ、アクチュエータ5の駆動源(サーボモータ50)の小形化を図ることができる。
【0082】
また、距離D1と距離D2との比率が距離D3と距離D4との比率と等しくされているので、第1及び第2金属板1,2の締結と第3及び第4金属板3,4の締結とをより確実に同じ力で行うことができる。
【0083】
また、第1及び第2パンチ7,9は、それぞれの往復動の延長線が互いに重なるよう直線上に配置されており、直動部は、第1及び第2パンチ7,9の側方に配置されているので、一つの直動部で第1及び第2パンチ7,9に変位を伝達することができ、
図2のような溝型鋼に対して上面及び下面の連続かしめ接合を効率的に実施できる。また、第1梃子体12と第2梃子体13の長さを変える事により、かしめ接合部へ伝達する応力を制御できる。
【0084】
また、第1及び第2梃子接続部56,57が互いに分離可能に設けられているので、第1及び第2梃子接続部56,57を個々に交換でき、メンテナンスコストを低減できる。
【0085】
また、第1ダイ8への第1パンチ7の押込みと、第2ダイ10への第2パンチ9の押込みとが交互に行われるように構成されているので、これらの押込みが同時に行われる場合と比較してアクチュエータ5の駆動源(サーボモータ50)の小形化を図ることができる。この構成は、コントローラ15による第1及び第2パンチ7,9のストローク量制御を行う場合に特に有用である。
【0086】
また、コントローラ15は、締結のために第1及び第2ダイ8,10に向けて第1及び第2パンチ7,9を移動させるとき、荷重測定器14により測定される荷重及び第1及び第2パンチ7,9の位置を監視して、荷重が増大し始める第1及び第2パンチ7,9の位置に応じて第1及び第2パンチ7,9のストローク量を決定するので、締結体100の製造効率の低下を回避しつつ、締結強度を向上できる。想定されるどの合計板厚であっても所定の締結強度を確保できるように平均的なストロークを採用する場合と比較して、パンチ7,9及びダイ8,10の消耗を抑えることができる。
【0087】
また、コントローラ15は、荷重が増大し始めるパンチ7,9の位置の区分毎に予め決定されたストローク量を記憶しており、締結のために第1及び第2ダイ8,10に向けて第1及び第2パンチ7,9を移動させるとき、荷重が増大し始める第1及び第2パンチ7,9の位置の区分を判定し、判定された区分に対応するストローク量を使用するので、ストローク量の決定に要する演算負荷を低減でき、より確実に締結強度を向上できる。
【0088】
また、アクチュエータ5はサーボモータ50を含むので、第1及び第2パンチ7,9の往復動の応答性を良くすることができる。
【0089】
実施の形態2.
図10は、本発明の実施の形態2による締結装置を示す説明図である。実施の形態1では、第1及び第2梃子体12,13を介してアクチュエータ5が第1及び第2パンチ7,9に接続されるように説明した。しかしながら、第1及び第2パンチ7,9の少なくとも一方が梃子体を介さずにアクチュエータ5に接続されていてもよい。
【0090】
図10には、第1及び第2パンチ7,9の両方が梃子体を介さずにアクチュエータ5に接続されている態様を示している。アクチュエータ5には、第1パンチベース70及び第2パンチベース90を互いに接続するリンク部材59が接続されている。第1パンチベース70には第1パンチ7が取り付けられており、第2パンチベース90には第2パンチ9が取り付けられている。アクチュエータ5の直動部(ロッド55)の直動は、リンク部材59を介して第1及び第2パンチ7,9に伝えられる。その他の構成は、実施の形態1と同様である。
【0091】
このように、第1及び第2パンチ7,9の少なくとも一方が梃子体を介さずにアクチュエータ5に接続されていてもよい。
【0092】
なお、実施の形態1,2では、荷重が増大し始める第1及び第2パンチ7,9の位置の区分からコントローラ15が第1及び第2金属板1,2又は第3及び第4金属板3,4の合計板厚を判別するように説明したが、コントローラ15は、荷重が増大し始めるパンチ7,9の位置と金属板の合計板厚との関係を表す関係式から合計板厚を判別する(すなわち、パンチ7,9の位置に対して一対一の関係で第1及び第2金属板1,2の合計板厚を算出する)等の他の方法を採ってしてもよい。
【0093】
また、荷重が増大し始める第1及び第2パンチ7,9の位置の区分からコントローラ15が使用するストローク量を決定するように説明したが、コントローラは、荷重が増大し始めるパンチの位置と使用すべきストローク量との関係を表す関係式からストローク量を決定する(すなわち、パンチの位置に対して一対一の関係でストローク量を決定する)等の他の方法を採ってもよい。
【0094】
また、2枚の金属板(第1及び第2金属板1,2又は第3及び第4金属板3,4)を締結するように説明したが、3枚以上の金属板を締結してもよい。
【符号の説明】
【0095】
1~4 第1~第4金属板(金属板)
5 アクチュエータ
50 サーボモータ
55 ロッド(直動部)
56 第1梃子接続部(直動部)
57 第2梃子接続部(直動部)
7 第1パンチ
8 第1ダイ
9 第2パンチ
10 第2ダイ
11 ダイベース(梃子部本体)
12 第1梃子体
13 第2梃子体
14 荷重測定器
15 コントローラ