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特許7486116無線通信受入方法、及び当該方法を用いる通信システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】無線通信受入方法、及び当該方法を用いる通信システム
(51)【国際特許分類】
   H04W 76/10 20180101AFI20240510BHJP
   H04W 74/06 20090101ALI20240510BHJP
   B61B 13/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H04W76/10
H04W74/06
B61B13/00 V
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020065723
(22)【出願日】2020-04-01
(65)【公開番号】P2021164088
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】000006297
【氏名又は名称】村田機械株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】500112146
【氏名又は名称】サイレックス・テクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100118784
【弁理士】
【氏名又は名称】桂川 直己
(72)【発明者】
【氏名】倉谷 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】下地 龍二
(72)【発明者】
【氏名】川嵜 雅央
【審査官】永田 義仁
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-236877(JP,A)
【文献】特許第4360344(JP,B2)
【文献】特開平08-256148(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61B1/00-15/00
B65G1/00-1/133
1/14-1/20
G05D1/00-1/12
H03J9/00-9/06
H04B7/24-7/26
H04Q9/00-9/16
H04W4/00-99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
コントローラと、前記コントローラに接続されたアクセスポイントと、それぞれ無線通信部を有する複数の走行車と、を備え、所定のポーリング周期毎に、前記コントローラと前記複数の走行車との間で、前記アクセスポイントを経由した無線ポーリング通信を行う通信システムに、新規走行車を無線通信の対象として受け入れる無線通信受入方法であって、
前記ポーリング周期内において、前記コントローラと前記複数の走行車との間の無線ポーリング通信が完了した後であって、無線ポーリング通信が可能な期間の終期までの時間である空き時間が、所定時間以上であるか否かを判定する接続可否判定工程を含む処理を行い、
前記接続可否判定工程で前記空き時間が所定時間以上と判定された場合、前記空き時間内に、前記新規走行車を前記通信システムに受け入れさせるための、無線通信を伴う接続シーケンスを実行する無線通信相手追加工程を行い、
前記接続可否判定工程で前記空き時間が所定時間未満であると判定された場合、前記無線通信相手追加工程を行わないことを特徴とする無線通信受入方法。
【請求項2】
請求項1記載の無線通信受入方法であって、
前記無線通信相手追加工程では、前記コントローラが、前記空き時間内に、前記接続シーケンスを開始するためのフレームを、前記アクセスポイントを経由して無線送信することを特徴とする無線通信受入方法。
【請求項3】
請求項に記載の無線通信受入方法であって、
前記無線通信相手追加工程において、前記接続シーケンスを開始するためのフレームの送信を、前記コントローラが、オペレータの操作により入力された受入指令に応じて行うことを特徴とする無線通信受入方法。
【請求項4】
請求項1記載の無線通信受入方法であって、
前記無線通信相手追加工程では、前記新規走行車が、前記空き時間内に、前記接続シーケンスを開始するためのフレームを無線送信することを特徴とする無線通信受入方法。
【請求項5】
請求項に記載の無線通信受入方法であって、
前記新規走行車が、前記コントローラと前記複数の走行車との間の無線ポーリング通信を傍受し、前記空き時間を推定する空き時間推定工程を含む処理を行うことを特徴とする無線通信受入方法。
【請求項6】
コントローラと、前記コントローラに接続されたアクセスポイントと、それぞれ無線通信部を有する複数の走行車と、を備える通信システムであって、
前記コントローラは、自己の管轄である所定数の前記走行車との間で、所定のポーリング周期毎に前記アクセスポイントを経由した無線ポーリング通信を行い、
前記ポーリング周期内において、前記コントローラと前記アクセスポイントを経由した前記所定数の前記走行車との間の無線ポーリング通信が完了した後の時間であって、前記ポーリング周期の終期までの時間である空き時間が、所定時間以上であるか否かを判定し、
前記空き時間が所定時間以上と判定された場合、前記空き時間内に、無線ポーリング通信の対象である前記複数の走行車に含まれない新規走行車との無線通信を受け入れるための、無線通信を伴う接続シーケンスを実行し、
前記空き時間が所定時間未満であると判定された場合、前記接続シーケンスを実行しないことを特徴とする通信システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として、走行車を対象とした無線通信に関する。詳細には、無線通信システムへ、新規走行車を無線通信の対象として受け入れる方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、例えば自動搬送システムにおいて、コントローラと、管理下の複数の走行台車と、の間で、無線によるポーリング通信(以降、無線ポーリング通信と呼ぶ)を行う通信システムが用いられている。特許文献1は、この種の自動搬送システムを開示する。
【0003】
特許文献1の自動搬送システム(搬送台車システム)は、コントローラと、台車が備える台車コントローラとが、無線によりポーリング方式の通信を行う構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4360344号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
自動搬送システムにおいては、輸送力の増強、故障時の予備の台車との交換等を目的として、新規の台車が事後的に追加されることがある。特許文献1のような搬送台車システムに新規の台車を追加する場合、新規の台車を無線ポーリング通信の対象として通信システムに認識させる必要がある。
【0006】
無線ポーリング通信の対象として新規の台車を追加する一般的な手順としては、例えば以下のようにすることが考えられる。通信システム側は、追加すべき台車を検知するためのビーコンを所定時間間隔で送信し続ける。台車は、ビーコンを受信すると、受信したビーコンから無線通信に関する情報を取得して、無線通信のための設定を行う。
【0007】
台車側が、自機の追加を要求するビーコンを所定時間間隔で送信し続けることも考えられる。この場合、通信システムは、ビーコンを受信すると、受信したビーコンから無線通信に関する情報を取得して、無線通信のための設定を行う。
【0008】
特許文献1の搬送台車システムでは、稼動中は常時、コントローラと台車コントローラとの間で、周期的な無線ポーリング通信がほぼ間断なく行われる。従って、新規の台車を追加するために上記のようにビーコンが送信され続けると、無線ポーリング通信が阻害され、台車の制御の安定性が損なわれるおそれがある。
【0009】
本発明は以上の事情に鑑みてされたものであり、その目的は、既に行われている無線ポーリング通信への影響を抑制しつつ、通信システムに新規走行車を無線通信の対象として受け入れることにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0010】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0011】
本発明の第1の観点によれば、以下の構成の無線通信受入方法が提供される。即ち、この無線通信受入方法は、通信システムに新規走行車を無線通信の対象として受け入れる方法である。前記通信システムは、コントローラと、アクセスポイントと、複数の走行車と、を備える。前記アクセスポイントは、前記コントローラに接続される。前記複数の走行車のそれぞれは、無線通信部を有する。前記通信システムは、所定のポーリング周期毎に、前記コントローラと前記複数の走行車との間で、前記アクセスポイントを経由した無線ポーリング通信を行う。当該無線通信受入方法は、接続可否判定工程を含む処理を行う。前記接続可否判定工程では、前記ポーリング周期内において、前記コントローラと前記複数の走行車との間の無線ポーリング通信が完了した後であって、無線ポーリング通信が可能な期間の終期までの時間である空き時間が、所定時間以上であるか否かを判定する。前記接続可否判定工程で前記空き時間が所定時間以上と判定された場合、無線通信相手追加工程を行う。前記無線通信相手追加工程では、前記空き時間内に、前記新規走行車を前記通信システムに受け入れさせるための、無線通信を伴う接続シーケンスを実行する。前記接続可否判定工程で前記空き時間が所定時間未満であると判定された場合、前記無線通信相手追加工程を行わない。
【0012】
このように、無線ポーリング通信が行われていない空き時間に新規走行車の接続シーケンスを実行することで、接続シーケンスの実行による無線ポーリング通信への影響を無くすことができる。また、通信システムに新規走行車を簡単な作業で受け入れさせることができる。接続シーケンスの実行による無線ポーリング通信への阻害を確実に防止することができる。
【0015】
前記の無線通信受入方法において、前記無線通信相手追加工程では、前記コントローラが、前記空き時間内に、前記接続シーケンスを開始するためのフレームを、前記アクセスポイントを経由して無線送信することが好ましい。
【0016】
これにより、無線通信のための情報(例えば、アクセスポイントの識別情報等)を、事前に新規走行車に入力する作業が不要になる。従って、入力ミスの発生を防止することができるとともに、オペレータの作業負担を低減することができる。
【0017】
前記の無線通信受入方法において、前記無線通信相手追加工程では、前記接続シーケンスを開始するためのフレームの送信を、前記コントローラが、オペレータの操作により入力された受入指令に応じて行うことが好ましい。
【0018】
これにより、オペレータの操作がない場合はフレームが送信されないので、新規走行車が無い場合における送信の無駄を回避することができる。
【0019】
前記の無線通信受入方法において、前記無線通信相手追加工程では、前記新規走行車が、前記空き時間内に、前記接続シーケンスを開始するためのフレームを無線送信することが好ましい。
【0020】
これにより、無線通信のための情報(例えば、新規走行車の識別情報等)を事前にアクセスポイント又はコントローラに入力する作業が不要になる。従って、入力ミスの発生を防止することができるとともに、オペレータの作業負担を低減することができる。
【0021】
前記の無線通信受入方法において、以下の構成とすることが好ましい。即ち、前記の無線通信受入方法では、新規走行車が、空き時間推定工程を含む処理を行う。前記空き時間推定工程では、前記新規走行車が、前記コントローラと前記複数の走行車との間の無線ポーリング通信を傍受し、前記空き時間を推定する。
【0022】
これにより、無線ポーリング通信が行われていない空き時間を、新規走行車側で推定することができる。従って、無線ポーリング通信が行われていない時間帯で、新規走行台車が無線通信へ加入するためのフレームを送信することができる。即ち、フレームの送信が無線ポーリング通信を阻害することを回避できる。
【0023】
本発明の第2の観点によれば、以下の構成の通信システムが提供される。即ち、この通信システムは、コントローラと、アクセスポイントと、複数の走行車と、を備える。前記アクセスポイントは、前記コントローラに接続される。前記複数の走行車のそれぞれは、無線通信部を有する。この通信システムにおいて、前記コントローラは、自己の管轄である所定数の前記走行車との間で、所定のポーリング周期毎に前記アクセスポイントを経由した無線ポーリング通信を行う。前記ポーリング周期内において、前記コントローラと前記アクセスポイントを経由した前記所定数の前記走行車との間の無線ポーリング通信が完了した後の時間であって、前記ポーリング周期の終期までの時間である空き時間が、所定時間以上であるか否かを判定する。前記空き時間が所定時間以上と判定された場合、前記空き時間内に、無線ポーリング通信の対象である前記複数の走行車に含まれない新規走行車との無線通信を受け入れるための、無線通信を伴う接続シーケンスを実行する。前記空き時間が所定時間未満であると判定された場合、前記接続シーケンスを実行しない。
【0024】
このように、無線ポーリング通信が行われていない空き時間に新規走行車の接続シーケンスを実行することで、接続シーケンスの実行による無線ポーリング通信への影響を無くすことができる。また、通信システムに新規走行車を簡単な作業で受け入れさせることができる。接続シーケンスの実行による無線ポーリング通信への阻害を確実に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の第1実施形態に係る通信システムの構成を示す図。
図2】通信管理部、アクセスポイント及び走行台車の関係を示す模式図。
図3】新規走行台車を無線通信対象として受け入れるためのビーコンの送信タイミングを示すタイミングチャート。
図4】無線ポーリング通信の空き時間と、接続シーケンスの開始タイミングと、の関係を示す図。
図5】第2実施形態において、通信管理部、アクセスポイント及び走行台車の関係を示す模式図。
図6】第2実施形態において、予測される空き時間と、接続シーケンスの開始タイミングと、の関係を示す図。
図7】第2実施形態の接続シーケンスの一例を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0026】
次に、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。図1は、本発明の第1実施形態に係る通信システム100の構成を示す図である。図2は、通信管理部3、アクセスポイント2及び走行台車1の関係を示す模式図である。図3は、新規走行台車1aを無線通信対象として受け入れるためのビーコンの送信タイミングを示すタイミングチャートである。図4は、通信管理部3が管轄する4つの通信エリアA~Dのうち、通信エリアAのアクセスポイント2に関する無線ポーリング通信の空き時間と、接続シーケンスの開始タイミングと、の関係を示す図である。
【0027】
図1に示す通信システム100は、例えば、複数の処理装置(図略)を有する半導体製造工場や、複数のスタッカラック(図略)を有する自動倉庫等に設けられた搬送システムに用いられる。
【0028】
通信システム100においては、複数の通信エリアが形成される。通信システム100は、通信エリア毎に、複数の走行台車(走行車)1と、複数のアクセスポイント2と、通信管理部(コントローラ)3と、を有する。通信エリアの数は任意であり、例えば1つであっても良い。
【0029】
各通信エリアに含まれる走行台車1の最大数Nmaxは、例えば、1台の走行台車1と通信管理部3との間で行われる1回の通信に要する単位通信時間t0等を考慮して、予め設定される。走行台車1は、走行に伴って、複数の通信エリアの間で移動することがある。従って、それぞれの通信エリアに属する走行台車1の数は、0以上Nmax以下の範囲で適宜変動する。
【0030】
各走行台車1は、軌道4から構成された走行領域を走行する搬送装置である。軌道4は、例えば、半導体製造工場や、自動倉庫等の天井から吊り下げられて設けられた天井軌道である。軌道4は、あるいは、床面に敷設されたものであっても良い。走行台車1は、例えば、処理装置、スタッカラック等の間で、FOUP等の搬送対象物を搬送するために用いることができる。FOUPは、Front Opening Unify Podの略称である。
【0031】
走行台車1は、例えば、天井から吊り下げられた軌道4に沿って走行する天井走行車である。この態様において、走行台車1は、その本体(図略)が軌道4よりも下方に垂下された状態で軌道4に沿って走行する。天井走行車は、例えばOHTとして構成される。OHTは、Overhead Hoist Transferの略称である。しかし、これに限定されず、走行台車1は、例えば、床面に設けられた軌道4に沿って走行する有軌道式無人搬送車のRGV等から構成されても良い。RGVは、Rail Guided Vehicleの略称である。
【0032】
更に、走行台車1は、例えば無人搬送車のAGVをはじめとする無軌道の走行台車として構成されても良い。AGVとは、Automated Guided Vehicleの略称である。この場合、走行台車1の走行経路及び走行領域は、床面に貼り付けられた磁気テープ等の誘導用テープ、或いはバーコード、二次元コード等からなるガイド部等によって実質的に定められる。
【0033】
走行台車1は、図2に示すように、台車無線通信部(無線通信部)11と、台車制御部12と、を備える。走行台車1には、公知のコンピュータが内蔵されている。このコンピュータは、CPU、HDD、ROM、RAM等を備える。HDD、ROM及びRAMは、無線通信に関する各種の情報を記憶する台車記憶部(図略)を構成している。HDD及びROMからなる台車記憶部の不揮発性メモリには、無線通信を実現するためのプログラム等が記憶されている。上記のハードウェアとソフトウェアの協働により、当該コンピュータを、台車無線通信部11及び台車制御部12として動作させることができる。
【0034】
台車無線通信部11は、所定の無線通信規格に準拠して、アクセスポイント2との間の無線通信を経由して、通信管理部3との間で通信を行う。無線通信規格としては、例えば、IEEE802.11を用いることができるが、無線通信においてマネジメントフレーム等を用いる無線通信規格であればよく、これに限定されない。無線通信は、上記で例示した無線通信規格等に適合する無線LANによって実現することができる。
【0035】
台車無線通信部11は、複数のアクセスポイント2のうち、走行台車1の走行位置に対応する1つのアクセスポイント2との間で無線通信を行う。複数のアクセスポイント2の無線通信可能範囲は、それぞれ異なっている。従って、後述の各通信エリアにおいて、走行台車1の走行位置に応じて、台車無線通信部11が無線通信を行う相手のアクセスポイント2が変化し得る(アクセスポイント2間のローミング)。
【0036】
台車制御部12は、台車無線通信部11における無線通信を制御するとともに、自車の走行位置に応じた通信チャネル、通信レート等を、台車無線通信部11に指示する。台車制御部12は、例えば、走行台車1に取り付けられた図略の位置センサ等を介して、走行領域内における自車の走行位置を示す走行位置情報を取得する。この走行位置情報の取得は、例えば以下のように行われる。
【0037】
即ち、走行台車1が走行する軌道4に沿って、複数の指標(例えば、バーコード等)が設けられており、走行台車1の台車制御部12は、図略の指標リーダにより読み取られた情報に基づいて指標を特定することで自車の走行位置情報を取得する。あるいは、走行台車1が走行する軌道4に沿って所定の間隔を空けて基準マーク(IDタグ)が設けられており、走行台車1の台車制御部12は、車輪エンコーダ出力をカウントすることで基準マークからの距離を算出することで自車の走行位置情報を取得するものであっても良い。あるいは、走行台車1に取り付けられた位置センサは、光受信器から構成されるものであっても良い。この態様では、走行台車1が走行する軌道4に沿って、複数の光送信器が設けられている。走行領域における各光送信器の座標は、各光送信器の識別情報と対応付けられた状態で、予め台車記憶部により記憶される。各光送信器は、自機器を識別するための識別情報を含む光信号を送信する。走行台車1が軌道4の所定の位置を通過するとき、位置センサ(光受信器)は、光送信器から送信されてきた光信号を受信する。走行台車1の台車制御部12は、受信した光信号に基づいて光送信器を特定することで自車の走行位置情報を取得する。
【0038】
台車制御部12には、通信システム100の全体を対象として、走行範囲内の各走行位置と、当該走行位置で行う無線通信に用いられる通信チャネル及び通信レート等と、の対応情報が予め記憶されている。
【0039】
台車制御部12は、上記のように取得した自車の走行位置情報に基づいて、記憶している対応情報から通信チャネル及び通信レート等の情報を取得して、台車無線通信部11に指示する。しかし、これに限定されず、通信レート等の情報を、アクセスポイント2との無線通信により取得しても良い。
【0040】
アクセスポイント2は、LANケーブルを用いる有線LAN5を介して通信管理部3と接続され、通信管理部3との間で有線通信を行う。有線LAN5には、適宜の数のスイッチングハブ(図略)等が配置されても良い。
【0041】
アクセスポイント2は、通信管理部3との間で有線通信を行うとともに、自身を中心とした無線ネットワークを形成する。アクセスポイント2は、自身を中心とした無線通信エリアに存在する走行台車1との間で、無線通信を行うことができる。
【0042】
本実施形態の通信システム100においては、走行台車1が走行する走行領域の全域がアクセスポイント2の無線通信可能範囲でカバーされるように、軌道4に沿ってアクセスポイント2が複数設けられている。
【0043】
本実施形態のアクセスポイント2のそれぞれには、無線通信可能範囲に含まれた走行台車1の走行領域において、何れの位置に存在する走行台車1と無線通信するかについての情報が予め設定されている。特に、2つのアクセスポイント2の無線通信可能範囲の一部が重畳している部分において、当該重畳部分に含まれた走行領域の各位置を受け持つアクセスポイント2が予め定められている。
【0044】
本実施形態では、走行台車1の各位置と、当該走行台車1と無線通信を行うアクセスポイント2と、の対応関係が事前に決まっている。従って、走行範囲内の各走行位置と、当該走行位置で行う無線通信に用いられる通信チャネル及び通信レート等と、の上記の対応情報を事前に作成することが可能になる。
【0045】
通信管理部3は、所定数以下の走行台車1のそれぞれを管理するために用いられるコンピュータである。通信管理部3は、図1に示す上層の搬送管理部6等から与えられた複数の搬送タスクのそれぞれを、管理している複数の走行台車1の何れかに割り当て、それぞれの走行台車1の走行経路等を決定する。
【0046】
搬送管理部6は、通信システム100が適用されている搬送システムを統括的に制御する。搬送管理部6は、1又は複数のコンピュータにより構成され、搬送管理に伴う各種の制御を行う。
【0047】
搬送管理部6が管理している複数の通信管理部3は、例えば図1に示すように、有線LAN5を介して互いに通信可能に接続されている。通信管理部3同士が互いに直接接続されず、搬送管理部6を経由して通信する構成であっても良い。
【0048】
通信管理部3は、例えば、図示しないCPU、ROM、RAM、HDD等を有する公知のコンピュータとして構成される。ROM、RAM、HDDには、各種プログラム、管理に関するデータ等が記憶されている。
【0049】
通信管理部3は、アクセスポイント2を経由して、管轄する通信エリア内に存在する複数の走行台車1に対して、順番に問合せを行うポーリング通信を無線により実行している。通信システム100に備えられた複数のアクセスポイント2は、同一の通信チャネルを用いて無線通信を行う場合がある。この場合、同一の通信チャネルを用いる複数のアクセスポイント2相互間の距離は、通信の干渉を防止するために十分に大きく設定されるべきであり、それら複数のアクセスポイント2の間で通信の干渉が発生するおそれがない場合、それらアクセスポイント2を経由して実行されるポーリング通信においては、他のアクセスポイント2を考慮する必要がない。即ち、アクセスポイント2は、ポーリング周期Tで無線ポーリング通信を実行する。
【0050】
一方、同一の通信チャネルを用いる複数のアクセスポイント2の間で通信の干渉が発生するおそれがある場合、ポーリング周期Tは分割される。例えば、4つのアクセスポイント2が同一の通信チャネルを用いて無線通信を行う場合において、それら4つのアクセスポイント2相互間で通信の干渉が発生するおそれがある場合には、ポーリング周期Tは4つに分割される。即ち、4つに分割されたポーリング周期が、4つのアクセスポイント2それぞれに割り当てられる。以下、このように割り当てられた期間を割当期間Taと呼ぶことがある。各々のアクセスポイント2は、自らに割り当てられた割当期間Ta内で無線ポーリング通信を実行する。従って、割当期間Taとは、通信管理部3がそれぞれのアクセスポイント2を経由して当該アクセスポイント2配下の走行台車1との間で無線ポーリング通信を行うことができる期間と考えることができる。
【0051】
割当期間Taの長さは、上記単位通信時間t0と、アクセスポイント2が受け持つ通信エリアにおける走行台車1の最大数Nmaxと、に基づいて設定される。この割当期間Taの長さは、例えば、単位通信時間t0と走行台車1の最大数Nmaxとの積とすることができる。即ち、Ta=t0×Nmax。これにより、通信エリアに存在する走行台車1の多少にかかわらず、無線ポーリング通信に必要な時間を常に確保することができる。ポーリング周期Tをアクセスポイント2の数に応じて分割する場合、その分割されたポーリング周期(即ち、割当期間Ta)は、この条件を満たす必要がある。
【0052】
通信管理部3は、アクセスポイント2ごとに、各ポーリング周期T内において、当該アクセスポイント2の通信エリアに存在する複数の走行台車1に対して順番に問い合わせて、通信を行う。このポーリング通信は、アクセスポイント2を経由して、無線により行われる。通信管理部3は、1つのポーリング周期T内(厳密に言えば、割当期間Ta内)において各走行台車1との通信を完了した後、次のポーリング周期T(割当期間Ta)が到来するまで、走行台車1との無線ポーリング通信を待機する。
【0053】
通信システム100の通信範囲内において軌道4を走行する走行台車1のそれぞれは、事前に通信システム100に登録されている。この登録については後述する。
【0054】
以下、走行台車1が走行するのに伴って1つの通信エリアから他の通信エリアに移動する場合を考える(異なる通信管理部3の通信エリア間でのローミング)。ここでは、走行台車1の移動元の通信エリアを管轄する通信管理部3を第1通信管理部と呼び、移動先の通信エリアを管轄する他の通信管理部3を第2通信管理部と呼ぶ。
【0055】
第1通信管理部は、管轄する通信エリアから出る走行台車1の識別情報を、有線LAN5を介して第2通信管理部に送信する。これとほぼ同時に、第1通信管理部は、記憶部に記憶されている無線ポーリング通信の対象のリストから、管轄する通信エリアから出る走行台車1の識別情報を削除する。これにより、当該走行台車1が、第1通信管理部による次回以降の無線ポーリング通信の対象に含まれなくなる。第2通信管理部は、第1通信管理部から受信した当該走行台車1の識別情報を無線ポーリング通信の対象のリストに追加する。これにより、当該走行台車1が、第2通信管理部による次回以降の無線ポーリング通信の対象に含まれるようになる。
【0056】
続いて、既存の搬送システムに新規の走行台車1である新規走行台車(新規走行車)1aを追加する際に、通信システム100に新規走行台車1aを無線通信の対象として受け入れる方法について説明する。本明細書において、既に幾つかの走行台車1と無線通信を行っている通信システム100が、新規走行台車1aを無線通信の対象として追加的に受け入れることを、「入線」と呼ぶことがある。本実施形態では、入線に伴って、新規走行台車1aの存在を通信システム100(何れかの通信管理部3及び搬送管理部6)に認識させ、新規走行台車1aとの無線通信が可能となるように、各種の処理が行われる。
【0057】
本実施形態の通信システム100においては、新規走行台車1aを追加する専用の位置である台車追加位置10を設けている。この台車追加位置10は、任意に設定することができるが、例えば図1に示すように、既存の走行台車1の走行を邪魔しない位置に設定することが好ましい。なお、専用の台車追加位置10を特別に設けずに、軌道4の任意の位置に新規走行台車1aを追加することもできる。
【0058】
オペレータは、新規走行台車1aを台車追加位置に配置した後、図3に示すように、搬送管理部6に対して新規走行台車入線操作(受入指令)を行う。当該新規台車入線操作は、当該新規走行台車1aを追加する旨を指示する操作である。具体的な操作としては、搬送管理部6において、例えば、新規台車入線を指示するメニュー又はアイコンをオペレータがクリックすること等が考えられる。しかし、これに限定されない。
【0059】
新規走行台車入線操作が行われると、搬送管理部6は、入線が必要な新規走行台車1aが存在することを認識する。搬送管理部6は、当該新規走行台車1aを入線するための入線指示を、台車追加位置を含む通信エリアを管轄する通信管理部3に送信する。
【0060】
通信管理部3は、新規走行台車1aに対する入線指示を搬送管理部6から受信すると、次のポーリング周期Tにおいて、台車追加位置10を含んだエリアのアクセスポイント2に割り当てられた割当期間Taのうち、無線でのポーリング通信が実質的に行われない空き時間を取得する。空き時間は、図3及び図4に例示されている。図4において、通信エリアAは、新規走行台車1aが含まれる通信エリアである。
【0061】
走行台車1に対する無線ポーリング通信は、割当期間Taが開始するのとほぼ同時に開始される。管轄する通信エリア内に複数の走行台車1がある場合、無線ポーリング通信は、図3に簡略的に示されるように、相手の走行台車1を異ならせながら1台ずつ順次行われる。割当期間Taにおける空き時間とは、台車追加位置10を含んだエリアのアクセスポイント2が走行台車1の全てとの無線ポーリング通信を完了した(図4の全ポーリング期間に相当)後、割当期間Taが終了するまでの空き時間を意味する。空き時間は、アクセスポイント2の配下にいる走行台車1の数によって変動し、走行台車1の数が多ければ短く、数が少なければ長くなる。通信管理部3は、管轄する通信エリア内の走行台車1の全てとの無線ポーリング通信が完了した時点で、現在の時刻と、割当期間Taが終了する時刻と、に基づいて、空き時間を計算により得る。
【0062】
通信管理部3は、上記のように算出した空き時間を、予め設定された接続必要時間(所定時間)と比較し、新規走行台車1aに対する接続シーケンスが空き時間内で完了可能であるか否かを判定する(接続可否判定工程)。この接続必要時間は、通信システム100に新規走行台車1aを受け入れるために実行する接続シーケンスが開始してから完了するまでに要する時間である。
【0063】
上記の判定において、空き時間が接続必要時間以上であると判断された場合、通信管理部3は、接続シーケンスを直ちに実行する(無線通信相手追加工程)。
【0064】
以下、接続シーケンスを具体的に説明する。通信管理部3は、図3に示すように、アクセスポイント2を経由(より詳細には指示)して、所定の情報を含むビーコンを、当該アクセスポイント2を中心とした無線通信可能範囲内にブロードキャストで送信する。ビーコンに記述される情報には、通信に必要な情報として、当該アクセスポイント2の識別情報(例えばMACアドレス等)が含まれる。通信に必要な情報には、他の情報、例えば通信レート等が含まれても良い。
【0065】
当該無線通信可能範囲内に位置する新規走行台車1aは、アクセスポイント2からブロードキャストで送信されたビーコンを受信して、当該ビーコンに含まれるアクセスポイント2の情報(識別情報等)を記憶することで、無線通信に関する設定を行う。
【0066】
そして、新規走行台車1aは、無線通信のための自車情報が記述された入線応答を、アクセスポイント2との無線通信を経由して、通信管理部3に送信する。入線応答を受信したアクセスポイント2は、当該入線応答に含まれる新規走行台車1aの情報を記憶するとともに、当該情報を通信管理部3に送信する。通信管理部3は、無線ポーリング通信の対象として新規走行台車1aを追加するように、当該新規走行台車1aの情報を記憶する。即ち、新規走行台車1aの無線通信に関する情報が、通信管理部3の無線ポーリング通信の対象のリストに追加される。なお、当該情報には、例えば、新規走行台車1aのMACアドレス等の識別情報を含む。
【0067】
また、通信管理部3は、受信した新規走行台車1aの情報を搬送管理部6に送信する。搬送管理部6は、通信管理部3から受信した新規走行台車1aの情報を記憶する。このようにして、新規走行台車1aの存在が通信システム100に認識される。
【0068】
以上により、通信システム100への新規走行台車1aの入線が完了する。通信管理部3は、次のポーリング周期T(割当期間Ta)において、アクセスポイント2を経由し、新規走行台車1aを含む複数の走行台車1に対して、順番に無線ポーリング通信を行う。
【0069】
図3及び図4に示すように、接続シーケンスの開始タイミングは、接続シーケンスに伴う無線通信が無線ポーリング通信と衝突しないように自動的に調整される。従って、ビーコンの送受信による無線ポーリング通信の阻害を避けることができる。
【0070】
一方、上記の判定において、空き時間が接続必要時間を下回ると判定された場合、通信管理部3は、新規走行台車1aに対する接続シーケンスを実行せず、次のポーリング周期Tが開始されるまで待機する。そして、通信管理部3は、次のポーリング周期T(割当期間Ta)において、空き時間が十分であるか否かを再び判定する。通信管理部3は、新規走行台車1aの入線が完了するまで、上記の処理を反復的に実行し続ける。
【0071】
上述のように、本実施形態の入線方法(即ち無線通信受入方法)は、新規走行台車入線操作をもとに新規走行台車1aの入線のタイミングを自律的に見出すことで、シームレスな新規走行台車1aの導入を実現している。また、本実施形態の入線方法を用いることで、無線通信相手の情報を、その場で行った無線通信により取得して登録することができる。従って、新規走行台車1aの識別情報をオペレータによって搬送管理部6に手入力させる方法等と比較して、ミスによる誤登録を回避することができる。また、新規走行台車1aの入線のためのビーコンが、既存の走行台車1との間の無線ポーリング通信が行われている最中に送信されることを防止できる。従って、ビーコンの送受信による無線ポーリング通信の阻害を避けることができる。また、本実施形態の入線方法は、通信システム100の通信範囲内において軌道4を走行する走行台車1のそれぞれが運用前に通信システム100に登録される場合にも適用でき、通信システム導入時におけるオペレータの作業負担を低減することができる。
【0072】
以上に説明したように、本実施形態の無線通信受入方法は、通信システム100に、新規走行台車1aを無線通信の対象として受け入れる方法である。通信システム100は、通信管理部3と、アクセスポイント2と、複数の走行台車1と、を備える。アクセスポイント2は、通信管理部3に接続される。複数の走行台車1のそれぞれは、台車無線通信部11を有する。通信システム100は、所定のポーリング周期T毎に、通信管理部3と複数の走行台車1との間で、アクセスポイント2を経由した無線ポーリング通信を行う。当該無線通信受入方法は、無線通信相手追加工程を含む処理を行う。無線通信相手追加工程では、ポーリング周期T内において、通信管理部3と複数の走行台車1との間の無線ポーリング通信が完了した後であって、無線ポーリング通信が可能な期間の終期までの時間である空き時間内(図4を参照)に、新規走行台車1aを通信システム100に受け入れさせるための、無線通信を伴う接続シーケンスを実行する。
【0073】
このように、無線ポーリング通信が行われていない空き時間に新規走行台車1aの接続シーケンスを実行することで、接続シーケンスの実行による無線ポーリング通信への影響を無くすことができる。また、通信システム100に新規走行台車1aを簡単な作業で受け入れさせることができる。
【0074】
また、本実施形態の無線通信受入方法では、空き時間が所定時間以上であるか否かを判定する接続可否判定工程を含む処理を行う。接続可否判定工程で空き時間が所定時間以上と判定された場合、無線通信相手追加工程が行われる。接続可否判定工程で空き時間が所定時間未満であると判定された場合、無線通信相手追加工程が行われない。
【0075】
これにより、接続シーケンスの実行による無線ポーリング通信への阻害を確実に防止することができる。
【0076】
また、本実施形態の無線通信受入方法において、無線通信相手追加工程では、通信管理部3が、空き時間内に、接続シーケンスを開始するためのビーコンを、アクセスポイント2を経由して無線送信する。
【0077】
これにより、無線通信のための情報(例えば、アクセスポイント2のMACアドレス等)を、事前に新規走行台車1aに入力する作業が不要になる。従って、入力ミスの発生を防止することができるとともに、オペレータの作業負担を低減することができる。
【0078】
また、本実施形態の無線通信受入方法において、無線通信相手追加工程では、接続シーケンスを開始するためのビーコンの送信を、通信管理部3が、オペレータの操作により入力された新規走行台車入線操作に応じて行う。
【0079】
これにより、オペレータの操作がない場合はビーコンが送信されないので、新規走行台車1aが無い場合における送信の無駄を回避することができる。
【0080】
次に、第2実施形態を説明する。図5は、第2実施形態において、通信管理部3、アクセスポイント2及び走行台車1の関係を示す模式図である。図6は、新規走行台車1bによって予測される空き時間と、接続シーケンスの開始タイミングと、の関係を示す図である。なお、本実施形態の説明においては、前述の実施形態と同一又は類似の部材には図面に同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0081】
本実施形態の通信システム100においては、新規走行台車1bの入線のために、アクセスポイント2がブロードキャストでビーコンを送信しない。その代わりに、通信システム100に入線する予定の新規走行台車1bが、受入れを要求するためのビーコンをブロードキャストで送信する。
【0082】
本実施形態の新規走行台車1b(即ち走行台車1)は、図5に示すように、台車無線通信部11及び台車制御部12の他に、無線監視部13と、学習部14と、を備える。
【0083】
新規走行台車1bは、内蔵されている公知のコンピュータが備えるハードウェアとソフトウェアの協働により、当該コンピュータを、無線監視部13及び学習部14として動作させることができる。
【0084】
無線監視部13は、台車制御部12により指示された通信チャネルを監視し、当該通信チャネルにおける無線通信パケット及び受信強度等の情報を取得する。無線監視部13は、取得した情報を学習部14に出力する。台車制御部12は、新規走行台車1bの走行位置に対応するアクセスポイント2の通信チャネルを無線監視部13に予め指示する。無線監視部13は、当該通信チャネルを監視することで、自らの近傍のアクセスポイント2を経由した通信管理部3の通信状況を把握することができる。換言すれば、新規走行台車1bが所定のアクセスポイント2の通信範囲内に存在する場合において、当該新規走行台車1bの無線監視部13は、当該アクセスポイント2の通信チャネルを監視し、その通信状況を把握する。
【0085】
学習部14は、無線通信パケット等を分析(学習)することにより、各ポーリング周期T内(厳密には、割当期間Ta内)において通信管理部3が無線ポーリング通信を行っていない時間(空き時間)を予測する(空き時間推定工程)。学習部14は、予測した空き時間を台車制御部12に出力する。
【0086】
ところで、無線監視部13による通信チャネルの監視期間が仮にポーリング周期Tの一部の期間しか含まない場合、当該監視で取得した無線通信パケットから、当該通信エリア内で無線ポーリング通信の対象となっている走行台車1の数Nを正しく得ることができない。従って、無線監視部13が無線通信を監視する期間は、少なくとも1つのポーリング周期Tの全期間を含むように、十分に長く定められる必要がある。例えば、無線通信の監視期間の長さを、ポーリング周期Tの2倍以上となるように定めることが考えられる。これにより、学習部14は、無線監視部13が受信した通信パケットから、無線ポーリング通信の相手の走行台車1の数を正確に取得することができる。なお、無線監視部13による無線通信の監視期間の長さは、各通信エリア内の走行台車1の数、及びポーリング周期T(割当期間Ta)の長さ等によって、適宜、動的に変更されても良い。
【0087】
学習部14は、通信管理部3による無線ポーリング通信が行われた回数に基づいて、新規走行台車1bの導入が予定されている通信エリア内にある走行台車1の数を取得することができる。学習部14は、例えば、取得した無線通信パケットに含まれる走行台車1のMACアドレス等の固有の識別子を分析することで、通信管理部3による無線ポーリング通信が行われた回数を求める。走行台車1の数を得た後、学習部14は、1台の走行台車1あたりの単位通信時間t0を計算する。単位通信時間t0の算出方法は幾つか考えられるが、例えば単位通信時間t0は、新規走行台車1bが導入される通信エリアの全部の走行台車1に対して通信管理部3が無線ポーリング通信を行うのに要した実際の通信時間(以下、全ポーリング期間と呼ぶことがある。)を、当該通信エリアの走行台車1の数で除算することにより得ることができる。全ポーリング期間の開始と終了のタイミングは、無線監視部13の監視結果に基づいて得ることができる。
【0088】
上述の通信エリア間のローミングにより、ポーリング周期Tと、次のポーリング周期Tと、の間で、他の通信エリアから走行台車1が移動してくる可能性もある。このローミングの発生は事前に知ることはできないが、発生したとしても、ポーリング周期Tの1回の切り換わりで、ポーリングの対象となる走行台車1が増加する数には事実上の上限がある。通信管理部3が通信エリア内で制御できる走行台車1の台数には、設計上の上限が設けられるからである。そこで、学習部14は、この上限数から通信エリア内で制御されている走行台車1の数を減じ、当該数に単位通信時間t0を乗算することで予備期間を求める。なお、前記の上限数は、予め設定され、新規走行台車1bに記憶される。
【0089】
学習部14は、更に、新規走行台車1bが導入される通信エリアを受け持つアクセスポイント2の割当期間Taを、無線監視部13の監視結果から取得する。この割当期間Taは、ポーリング周期Tの中で当該アクセスポイント2が無線ポーリング通信を開始したタイミングと、当該無線ポーリング通信の終了の後に、他のアクセスポイント2が他の通信エリアに対して無線ポーリング通信を開始したタイミングと、に基づいて得ることができる。ただし、この方法による割当期間Taの取得は、図6において通信エリアAだけでなく通信エリアBにおいても無線監視部13の監視チャネルにて無線ポーリング通信が行われ、かつ、通信エリアA及び通信エリアBの両方における無線ポーリング通信を新規走行台車1bが傍受できることが前提になる。
【0090】
割当期間Taの情報は、新規走行台車1b側に予め記憶されても良い。この場合、学習部14による割当期間Taの推定は不要になる。
【0091】
その後、学習部14は、割当期間Taから全ポーリング時間を減算し、更に予備時間を減算することで、次のポーリング周期Tにおける空き時間を推定する。更に、学習部14は、この空き時間を接続必要時間と比較して、新規走行台車1bに対する接続シーケンスが空き時間内で完了可能であるか否かを判定する(接続可否判定工程)。
【0092】
空き時間が接続必要時間以上である場合は、台車制御部12は、次のポーリング周期Tにおいて、通信システム100の無線通信への入線要求を示すビーコンを自車が送信するタイミングを決定する。
【0093】
このビーコンの送信タイミング(接続シーケンス開始タイミング)は、学習部14から入力された分析結果に基づいて決定される。具体的に説明すると、ビーコンの送信タイミングは、現在のポーリング周期Tにおいて、新規走行台車1bが導入される通信エリアを受け持つアクセスポイント2が、配下の全ての走行台車1に対する無線ポーリング通信を終了したタイミングを起点として計算される。具体的には、ビーコンの送信タイミングは、この起点に、他の通信エリアから走行台車が移動してくることを考慮した予備期間を加算したタイミングとなる。
【0094】
ビーコンの送信タイミングは、現在のポーリング周期Tでの割当期間Taの終期を起点として計算することもできる。この場合、ビーコンの送信タイミングは、割当期間Taの終期から接続シーケンス完了に要する時間だけ遡った時点となる。
【0095】
一方、空き時間が接続必要時間を下回る場合、台車制御部12は、ビーコンの送信を台車無線通信部11に指示しない。この場合、無線監視部13による無線通信の監視が継続され、学習部14は、新たなポーリング周期Tでの監視結果に基づいて、接続可否の判定を再び行う。上記の処理が、空き時間が接続必要時間以上となるまで反復される。
【0096】
無線監視部13は、無線通信をリアルタイムで監視し、取得した無線通信パケットを学習部14に出力している。従って、新規走行台車1bの接続可否に関し、現在の状況に即した判定を行うことができる。
【0097】
続いて、通信システム100へ入線するために走行台車1が行う接続シーケンスの一例について、図7を参照して簡単に説明する。図7は、第2実施形態の接続シーケンスの一例を示す図である。
【0098】
新規走行台車1bが台車追加位置に配置された後、図7に示すように、台車制御部12は、新規走行台車1bを導入しようとする通信エリアを管轄する通信管理部3の情報(又は通信管理部3が経由するアクセスポイント2の情報)を、台車無線通信部11に出力する。当該情報には、例えば、通信管理部3又はアクセスポイント2の識別情報、通信チャネル等が含まれる。
【0099】
台車無線通信部11は、無線監視部13を介して通信チャネルを継続的に監視する。上述のように、接続シーケンスを完了可能な空き時間があると判定した場合、台車制御部12により指示された接続シーケンスの開始タイミングにおいて、台車無線通信部11は、ブロードキャストでビーコンを送信する。このビーコンには、新規走行台車1bの識別情報(例えばMACアドレス)が含まれている。
【0100】
当該ビーコンを受信したアクセスポイント2は、新規走行台車1bに対して応答フレームを送信する。更に、アクセスポイント2は、新規走行台車1bから受信したビーコン(又は、ビーコンに含まれる新規走行台車1bの情報)を、通信管理部3に送信する。
【0101】
通信管理部3は、ビーコンに含まれる新規走行台車1bの情報を記憶することにより、当該新規走行台車1bを無線ポーリング通信の相手として登録する。そして、通信管理部3は、当該新規走行台車1bの情報を搬送管理部6に送信する。
【0102】
このように、アクセスポイント2、通信管理部3及び搬送管理部6において、入線する新規走行台車1bの情報を登録することで、新規走行台車1bの入線を完了する。この結果、アクセスポイント2を経由する、通信管理部3と新規走行台車1bとの通信を開始することができる。
【0103】
以上に説明したように、本実施形態の無線通信受入方法において、無線通信相手追加工程では、新規走行台車1bが、空き時間内に、接続シーケンスを開始するためのビーコンを無線送信する。
【0104】
これにより、無線通信のための情報(例えば、新規走行台車1bのアドレス等)を事前にアクセスポイント2又は通信管理部3に入力する作業が不要になる。従って、入力ミスの発生を防止することができるとともに、オペレータの作業負担を低減することができる。
【0105】
また、本実施形態の無線通信受入方法では、新規走行台車1bが、空き時間推定工程を含む処理を行う。空き時間推定工程では、新規走行台車1bが、通信管理部3と複数の走行台車1との間の無線ポーリング通信を傍受し、空き時間を推定する。
【0106】
これにより、無線ポーリング通信が行われていない空き時間を、新規走行台車1b側で推定することができる。従って、無線ポーリング通信が行われていない時間帯で、新規走行台車1bが無線通信へ加入するためのビーコンを送信することができる。即ち、ビーコンの送信が無線ポーリング通信を阻害することを回避できる。
【0107】
以上に本発明の好適な実施の形態を説明したが、上記の構成は例えば以下のように変更することができる。
【0108】
第1実施形態において、新規走行台車1aの入線に関する上記接続シーケンスの実行(ビーコン送信時期の判別等)は、アクセスポイント2が備える制御部により行っても良い。
【0109】
第1実施形態において、新規走行台車1aの追加のために予め定められた台車追加位置10において、新規走行台車1aが存在するか否かを検出するセンサが設けられても良い。この場合、オペレータの手作業による新規走行台車入線操作の代わりに、前記センサの検出結果に基づいて、通信システム100への新規走行台車1aの受入れの必要があるか否かを自動的に判定することができる。この構成では、新規走行台車1aが存在することを示すセンサの検出結果が、新規走行台車入線操作の代わりに、受入指令として搬送管理部6に送信される。
【0110】
第1実施形態及び第2実施形態において、通信管理部3又は走行台車1が、各ポーリング周期Tにおいて、空き時間が接続必要時間以上である場合、ビーコンを自発的に送信しても良い。
【0111】
第1実施形態及び第2実施形態において、空き時間の代わりに、通信エリア内に通信可能の走行台車1の最大数Nmaxから、実際に存在する走行台車1の台数を減算して得られた空き台数に基づいて、新規走行台車1a,1bに対する接続シーケンスを実行するか否かを判定しても良い。
【0112】
第1実施形態及び第2実施形態において、空き時間の代わりに、全ポーリング期間と、予め設定された閾値時間と、を比較することにより、接続シーケンスを実行するか否かを判定しても良い。具体的には、全ポーリング期間が閾値時間以下である場合、接続シーケンスを実行する。なお、当該閾値時間は、例えば、割当期間Taと、接続シーケンスの実行時間と、に基づいて設定することができる。
【0113】
第1実施形態及び第2実施形態において、1つのポーリング周期Tを複数に分割して各通信管理部3に割り当てる場合、等しく分割しても良いし、不等に分割しても良い。
【0114】
割当期間Taのタイミング及び長さは、通信システム100の稼動中に動的に変化しても良い。第1実施形態では、割当期間Taが動的に変化しても、空き時間を取得することは容易である。第2実施形態では、次回のポーリング周期Tにおける割当期間Taのタイミング及び長さを新規走行台車1b側で何らかの形で予測することができれば、それに基づいて空き時間を推定することができる。
【0115】
通信エリアの数が少ない場合(例えば、1つである場合)は、1つのポーリング周期Tを分割せずに、全部を1つの割当期間Taとすることができる。また、無線ポーリング通信のためのチャネルを、複数とせず、1つだけにすることもできる。
【0116】
第2実施形態において、新規走行台車1bは、無線監視部13(又は台車無線通信部11)により通信チャネルをスキャンすることで、監視する通信チャネルを取得しても良い。
【0117】
第2実施形態の新規走行台車1bにおいて、無線監視部13は、無線通信パケットを取得せず、通信チャネルの使用率を監視しても良い。この場合、例えば、通信チャネルの使用率がゼロに近い閾値以下である場合、無線ポーリング通信が行われていないと判定することができる。
【0118】
第2実施形態においては、無線監視部13の監視期間を、ポーリング周期Tの2回分以上の全てを含むように定めても良い。この場合、学習部14は、それぞれのポーリング周期Tに対して全ポーリング期間を求めることができる。複数の全ポーリング期間の相加平均を求めることにより、得られた平均値を、例えばビーコンの送信タイミングを決定するために用いることができる。全ポーリング期間のバラツキを示す値(例えば、分散)に応じて、予備期間の長さを調整することもできる。
【符号の説明】
【0119】
1 走行台車(走行車)
1a 新規走行台車(新規走行車)
2 アクセスポイント
3 通信管理部(コントローラ)
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7