(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】置去り物監視装置およびこれを備えた置去り物監視システムならびに置去り物監視方法
(51)【国際特許分類】
H04N 7/18 20060101AFI20240510BHJP
G08B 21/00 20060101ALI20240510BHJP
G08B 25/00 20060101ALI20240510BHJP
G06T 7/254 20170101ALI20240510BHJP
【FI】
H04N7/18 D
G08B21/00 E
G08B25/00 510M
G06T7/254 A
(21)【出願番号】P 2020068193
(22)【出願日】2020-04-06
【審査請求日】2023-03-28
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001379
【氏名又は名称】弁理士法人大島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 偉志
【審査官】長谷川 素直
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-042270(JP,A)
【文献】特開2008-181347(JP,A)
【文献】特開2013-098797(JP,A)
【文献】特開2019-071578(JP,A)
【文献】国際公開第2018/179202(WO,A1)
【文献】特開2017-117349(JP,A)
【文献】特開2015-046732(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 7/18
G08B 21/00
G08B 25/00
G06T 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
撮像装置により撮像された監視領域の撮像画像に基づいて前記監視領域内に置き去りにされた置去り物を検出し、前記置去り物が検出された場合に警報を発報する置去り物監視装置であって、
前記置去り物を検出する処理を行うプロセッサを備えており、
前記プロセッサは、
前記監視領域内のマスクエリアと指定置き去り物の種別とを対応付けて設定するものであり、
前記撮像画像から前記監視領域内に出現した物体を検出し、検出された物体毎に前記撮像画像間で追跡し、
前記検出された物体毎の追跡結果に基づき、予め定められた時間を超えて変位しない前記物体を前記置去り物として検出し、
検出された前記置去り物が、
前記マスクエリア内に存在するか否かを判定すると共に、検出された前記置去り物の種別により、前記指定置き去り物であるか否かを判定し、
これらの判定により、前記置き去り物が、
前記マスクエリア内に存在すると判定され、前記指定置き去り物と判定された場合には、その前記置去り物を、警報の発報対象から除外することを特徴とする置去り物監視装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、前記監視領域内に前記マスクエリアを設定するための設定画面を生成することを特徴とする請求項1に記載の置去り物監視装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、前記マスクエリアを取り囲む枠画像を前記撮像画像に重畳した画像を生成し、
前記枠画像の表示形態は、前記マスクエリアに対応付けられた前記指定置き去り物の種別に応じて決定されることを特徴とする
請求項1に記載の置去り物監視装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、前記マスクエリアに対応付けられた前記指定置き去り物の代表位置を検出し、検出された前記代表位置を所定期間蓄積して作成した前記代表位置の統計データに基づいて、前記マスクエリアの範囲を変更することを特徴とする
請求項1に記載の置去り物監視装置。
【請求項5】
前記マスクエリアは、それを使用する期間を示す使用期間を対応付けて設定されており、
前記プロセッサは、前記使用期間が有効な前記マスクエリアについてのみ、前記指定置き去り物がそのマスクエリア内に存在するか否かの判定を行うことを特徴とする請求項1
ないし4のいずれかに記載の置去り物監視装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、検出された前記置去り物の代表位置を検出し、検出された前記代表位置に基づいて、その置去り物が前記マスクエリアに含まれるか否かを判定することを特徴とする請求項1
ないし5のいずれかに記載の置去り物監視装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、1つの前記マスクエリア内に複数の前記置去り物が検出された場合には、その後の判定処理は、個々の前記置去り物毎に行うことを特徴とする請求項1
ないし6のいずれかに記載の置去り物監視装置。
【請求項8】
請求項1ないし
請求項7のいずれかに記載の置去り物監視装置と、
監視領域を撮像するための撮像装置と、
前記置去り物監視装置から発報された警報をユーザに報知する報知装置と、
を備えた置去り物監視システム。
【請求項9】
撮像装置により撮像された監視領域の撮像画像に基づいて前記監視領域内に置き去りにされた置去り物を検出し、前記置去り物が検出されたときに警報を発報する
処理を情報処理装置により実行する置去り物監視方法であって、
前記監視領域内のマスクエリアと指定置き去り物の種別とを対応付けて設定するステップと、
前記撮像装置により撮像された前記監視領域の撮像画像を取得するステップと、
前記撮像画像から前記監視領域内に出現した物体を検出し、検出された物体毎に前記撮像画像間で追跡するステップと、
前記検出された物体毎の追跡結果に基づき、予め定められた時間を超えて変位しない前記物体を前記置去り物として検出するステップと、
検出された前記置去り物が、
前記マスクエリア内に存在するか否かを判定すると共に、検出された前記置去り物の種別により、前記指定置き去り物であるか否かの判定を行うステップと、
これらの判定を行うステップにより、前記置き去り物が、
前記マスクエリア内に存在すると判定され、前記指定置き去り物と判定された場合には、その前記置去り物を、警報の発報対象から除外するステップと、
を含むことを特徴とする置去り物監視方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置により撮像された監視領域の撮像画像に基づいて監視領域内に置き去りにされた置去り物を検出し、置去り物が検出された場合に警報を発報する置去り物監視装置およびこれを備えた置去り物監視システムならびに置去り物監視方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、駅、空港、商業施設、商店街、地下街等の不特定多数の者が利用する空間では、防犯等を目的として、不審物の置き去りを監視することが行われている。置き去りの監視は一般的に、監視カメラ(撮像装置)により撮像された監視領域の撮像画像を監視員がモニタリングすることにより行われるが、監視員の負担軽減および置き去り検出の精度向上のために、監視領域の撮像画像に基づいて置去り物を自動的に検出することが求められている。
【0003】
そこで、撮像装置により撮像された監視領域の撮像画像に基づいて置去り物を自動的に検出するための様々な技術が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の従来技術では、所定の時間間隔で撮像入力される監視対象領域の入力画像と監視対象領域の初期画像との差を求めて監視対象領域内における人物像を切り出し、この所定の時間間隔で逐次求められる人物像を相互に比較して該人物像から分離する物体像を検出し、物体像が検出されたときにはこの物体像の放置時間を計測し、所定の時間が経過したときに警報を発報するようにしている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1の従来技術では、置去り物が検出されると、置去り物の種別に関わらず一律に発報されるため、例えば、店舗の置き看板(店舗看板)、清掃看板、工事用コーン、工事看板、案内板等の、警報発報が不要な置去り物に対しても警報が発報されてしまうという問題があった。このように、警報発報が不要な置去り物に対しても警報が発報されてしまうと、監視員が確認する必要のある置去り物の数が増えるため、監視員の負担が大きくなる。このことは、とりわけ、監視領域内に警報発報が不要な置去り物が多数存在する場合や、監視領域が広範囲である場合に顕著となる。もし、警報発報が不要な置去り物を警報の発報対象から除外することができれば、監視員の負担を軽減することが可能となるので有益である。
【0006】
本発明は、このような従来技術の課題を鑑みて案出されたものであり、警報発報が不要な置去り物を警報の発報対象から除外することが可能な置去り物監視装置およびこれを備えた置去り物監視システムならびに置去り物監視方法を提供することを主目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の置去り物監視装置は、撮像装置により撮像された監視領域の撮像画像に基づいて前記監視領域内に置き去りにされた置去り物を検出し、前記置去り物が検出された場合に警報を発報する置去り物監視装置であって、前記置去り物を検出する処理を行うプロセッサを備えており、前記プロセッサは、前記監視領域内のマスクエリアと指定置き去り物の種別とを対応付けて設定するものであり、前記撮像画像から前記監視領域内に出現した物体を検出し、検出された物体毎に前記撮像画像間で追跡し、前記検出された物体毎の追跡結果に基づき、予め定められた時間を超えて変位しない前記物体を前記置去り物として検出し、検出された前記置去り物が、前記マスクエリア内に存在するか否かを判定すると共に、検出された前記置去り物の種別により、前記指定置き去り物であるか否かを判定し、これらの判定により、前記置き去り物が、前記マスクエリア内に存在すると判定され、前記指定置き去り物と判定された場合には、その前記置去り物を、警報の発報対象から除外することを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、マスクエリア内に存在すると判定された置去り物が、その種別により、そのマスクエリアに対応付けられた指定置き去り物であると判定された場合に、その置去り物を警報の発報対象から除外することができる。これにより、とりわけ監視領域内に警報発報が不要な置去り物が多数存在する場合や監視領域が広範囲である場合に、監視員の負担を軽減することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の第1実施形態に係る置去り物監視システムの概略構成図
【
図2】置去り物監視システムの置去り物監視装置の概略構成を示すブロック図
【
図3】マスクエリア設定画面と置去り物種別設定画面とを示す図
【
図4】マスクエリア設定画面と使用期間設定画面とを示す図
【
図6】置去り物監視装置の発報対象判定部での判定処理の例を示す図
【
図7】置去り物監視装置の発報対象判定部での判定処理の例を示す図
【
図8】置去り物監視装置の発報対象判定部での判定処理の例を示す図
【
図10】置去り物監視装置での処理の流れを示すフロー図
【
図11】本発明の第2実施形態に係る置去り物監視システムの概略構成図
【発明を実施するための形態】
【0010】
上記課題を解決するためになされた第1の発明は、撮像装置により撮像された監視領域の撮像画像に基づいて前記監視領域内に置き去りにされた置去り物を検出し、前記置去り物が検出された場合に警報を発報する置去り物監視装置であって、前記置去り物を検出する処理を行うプロセッサを備えており、前記プロセッサは、前記監視領域内のマスクエリアと指定置き去り物の種別とを対応付けて設定するものであり、前記撮像画像から前記監視領域内に出現した物体を検出し、検出された物体毎に前記撮像画像間で追跡し、前記検出された物体毎の追跡結果に基づき、予め定められた時間を超えて変位しない前記物体を前記置去り物として検出し、検出された前記置去り物が、前記マスクエリア内に存在するか否かを判定すると共に、検出された前記置去り物の種別により、前記指定置き去り物であるか否かを判定し、これらの判定により、前記置き去り物が、前記マスクエリア内に存在すると判定され、前記指定置き去り物と判定された場合には、その前記置去り物を、警報の発報対象から除外することを特徴とする。
【0011】
これによると、マスクエリア内に存在すると判定された置去り物が、その種別により、そのマスクエリアに対応付けられた指定置き去り物であると判定された場合に、その置去り物を警報の発報対象から除外することができる。これにより、警報の発報対象の数を抑制することができるので、監視員の負担を軽減することが可能となる。
【0012】
また、第2の発明では、上記第1の発明において、前記プロセッサは、前記監視領域内に前記マスクエリアを設定するための設定画面を生成することを特徴とする。
【0013】
これによると、ユーザは、マスクエリアを簡単な操作で容易に設定することが可能となる。
【0018】
また、第3の発明では、上記第1の発明において、前記プロセッサは、前記マスクエリアを取り囲む枠画像を前記撮像画像に重畳した画像を生成し、前記枠画像の表示形態は、前記マスクエリアに対応付けられた前記指定置き去り物の種別に応じて決定されることを特徴とする。
【0019】
これによると、枠画像によってマスクエリアの範囲をユーザに対して視覚的に分かりやすく表示することが可能となる。また、枠画像の表示形態は指定置去り物の種別に応じて決定されるので、そのマスクエリアに対応付けられた指定置去り物の種別をユーザに対して視覚的に分かりやすく表示することが可能となる。
【0020】
また、第4の発明では、上記第1の発明において、前記プロセッサは、前記マスクエリアに対応付けられた前記指定置き去り物の代表位置を検出し、検出された前記代表位置を所定期間蓄積して作成した前記代表位置の統計データに基づいて、前記マスクエリアの範囲を変更することを特徴とする。
【0021】
これによると、マスクエリアに対応付けられた指定置去り物の実際の置き位置に合わせて、マスクエリアの範囲をより正確に設定することが可能となる。
【0022】
また、第5の発明では、上記第1の発明ないし第4の発明のいずれかにおいて、前記マスクエリアは、それを使用する期間を示す使用期間を対応付けて設定されており、前記プロセッサは、前記使用期間が有効な前記マスクエリアについてのみ、前記指定置き去り物がそのマスクエリア内に存在するか否かの判定を行うことを特徴とする。
【0023】
これによると、マスクエリアに対応付けられた指定置去り物が実際に使用されるときにのみ、その指定置去り物に対応するマスクエリアを使用することが可能となる。これにより、置去り物の検出後の判定処理の数を抑制することができるので、判定処理の負荷を軽減することが可能となる。
【0024】
また、第6の発明では、上記第1の発明ないし第5の発明のいずれかにおいて、前記プ
ロセッサは、検出された前記置去り物の代表位置を検出し、検出された前記代表位置に基
づいて、その置去り物が前記マスクエリアに含まれるか否かを判定することを特徴とする
。
【0025】
これによると、検出された置去り物がマスクエリアに含まれるか否かの判定を、その置去り物の代表位置に基づいてより容易かつより正確に行うことが可能となる。
【0026】
また、第7の発明では、上記第1の発明ないし第6の発明のいずれかにおいて、前記プロセッサは、1つの前記マスクエリア内に複数の前記置去り物が検出された場合には、その後の判定処理は、個々の前記置去り物毎に行うことを特徴とする。
【0027】
これによると、1つのマスクエリア内に複数の置去り物が検出された場合でも、個々の置去り物についての判定処理を確実に行うことが可能となる。
【0028】
また、第8の発明は、上記第1の発明ないし第7の発明のいずれかに記載の置去り物監視装置と、監視領域を撮像するための撮像装置と、前記置去り物監視装置から発報された警報をユーザに報知する報知装置と、を備えた置去り物監視システムである。
【0029】
また、第9の発明は、撮像装置により撮像された監視領域の撮像画像に基づいて前記監視領域内に置き去りにされた置去り物を検出し、前記置去り物が検出されたときに警報を発報する処理を情報処理装置により実行する置去り物監視方法であって、前記監視領域内のマスクエリアと指定置き去り物の種別とを対応付けて設定するステップと、前記撮像装置により撮像された前記監視領域の撮像画像を取得するステップと、前記撮像画像から前記監視領域内に出現した物体を検出し、検出された物体毎に前記撮像画像間で追跡するステップと、前記検出された物体毎の追跡結果に基づき、予め定められた時間を超えて変位しない前記物体を前記置去り物として検出するステップと、検出された前記置去り物が、前記マスクエリア内に存在するか否かを判定すると共に、検出された前記置去り物の種別により、前記指定置き去り物であるか否かの判定を行うステップと、これらの判定を行うステップにより、前記置き去り物が、前記マスクエリア内に存在すると判定され、前記指定置き去り物と判定された場合には、その前記置去り物を、警報の発報対象から除外するステップと、を含むことを特徴とする。
【0030】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0031】
(第1実施形態)
まず、本発明の第1実施形態に係る置去り物監視システム1について、
図1~10を参照して説明する。この置去り物監視システム1は、撮像装置2により撮像された監視領域の撮像画像に基づいて監視領域内に置き去りにされた置去り物を検出し、置去り物が検出された場合に警報を発報するためのシステムであり、駅、空港、商業施設、商店街、地下街等の不特定多数の者が利用する空間での不審物の置き去りの監視に適用可能である。
【0032】
以下では、本発明に係る置去り物監視システム1を、例えば、商業施設、商店街、地下街等での不審物の置き去りの監視に適用した場合について説明する。商業施設、商店街、地下街等には、店舗の置き看板(店舗看板)や清掃看板等の警報発報が不要な置去り物が多数存在するので、このような警報発報が不要な置去り物を、警報の発報対象(以降、単に「発報対象」と称する)から除外することができれば、監視員の負担を軽減することが可能となる。
【0033】
図1は、本発明の第1実施形態に係る置去り物監視システム1の概略構成図である。
図1に示すように、置去り物監視システム1は、撮像装置2と、置去り物監視装置3と、表示装置4とを備えて構成される。表示装置は、監視員に対して警報を報知するための報知装置としての役割を果たす。置去り物監視装置3は、撮像装置2および表示装置4と、LAN(Local Area Network)等の有線または無線通信(例えば、Wi-Fi(登録商標)等)を介して接続されている。なお、置去り物監視装置3と、撮像装置2および表示装置4との接続形態は特に限定されるものではなく、例えば、インターネット等のネットワークを介した接続であってよいし、汎用のインターフェース(例えば、USB(Universal Serial Bus)インターフェース)を用いて通信ケーブルで互いに接続してもよい。
【0034】
撮像装置2は、例えばCCDカメラ等の一般的な撮像装置であり、商業施設、商店街、地下街等の各所の壁、天井、ポール等に設置され、予め定められた監視領域を、静止画像または動画像として時系列に撮像する。なお、撮像装置2は、監視領域を時系列に撮像可能な限りにおいて、その形態、機能、配置、数量等については、特に限定されるものではなく種々の変更が可能である。例えば、撮像装置2は、壁等に設置され1台で180度撮影できるパノラマ型カメラや、天井等に設置され1台で360度撮影できる全方位型カメラであってもよい。撮像装置2により時系列に撮像された監視領域の撮像画像は、置去り物監視装置3に入力される。
【0035】
表示装置4は、監視員が監視業務を行う監視室等に設置されたモニタ(ディスプレイ)等の一般的な表示装置であり、置去り物監視装置3から出力された報知画像(
図9参照)を表示する。報知画像の詳細については後述する。なお、表示装置4は、報知画像の表示が可能な限りにおいて、その形態、機能、配置、数量等については、特に限定されるものではなく種々の変更が可能である。例えば、表示装置4は、巡回等で監視室を離れる場合に監視員が携帯する携帯端末の表示画面であってもよい。
【0036】
置去り物監視装置3は、公知の構成を有する一般的なコンピュータ装置であり、撮像装置2から入力された撮像画像に基づいて監視領域内に置き去りにされた置去り物を検出し、置去り物が検出された場合に、警報発報のための報知画像を生成して表示装置4に出力する。また、置去り物監視装置3は、置去り物が検出されるまでは、画像取得部13から入力された撮像画像をそのまま表示装置4に出力する。
【0037】
図2は、置去り物監視装置3の概略構成を示すブロック図である。置去り物監視装置3は、公知のハードウェア構成を備えており、所定の制御プログラム(例えば、置去り物監視プログラム)に基づき置去り物監視システム1における各処理を統括的に実行するプロセッサ101、このプロセッサ101のワークエリア等として機能する揮発性メモリであるRAM102、プロセッサ101が実行する制御プログラムやデータを格納する不揮発性メモリであるROM103、置去り物監視装置3の動作に必要なプログラムやデータを記憶するストレージを有する記憶部104、ユーザに必要な情報を表示するモニタを有する表示部105、ユーザの入力操作を可能とするキーボードやマウス等の入力デバイスを有する入力部106、ネットワークを介した通信を実行する通信モジュールを有する通信部107等を備えている。
【0038】
置去り物監視装置3の各機能は、
図2に示したハードウェア構成において、プロセッサ101が所定の制御プログラムを実行することによって実現可能である。なお、置去り物監視装置3としては、コンピュータ装置に限らず、同様の機能を果たすことが可能な他の情報処理装置(サーバ等)を用いることもできる。また、置去り物監視装置の機能の少なくとも一部を他の公知のハードウェアによる処理によって代替してもよい。
【0039】
再び
図1を参照して、置去り物監視装置3は、マスクエリア情報設定部11と、マスクエリア情報記憶部12と、画像取得部13と、画像処理部14と、報知画像生成部15とを含んでいる。そして、画像処理部14は、物体追跡部21と、置去り物検出部22と、置去り物種別判定部23と、発報対象判定部24とを有している。上記の各部は、図示しない制御部によって制御される。
【0040】
マスクエリア情報設定部11は、監視領域内に予め設定されるマスクエリアに関する情報(以降、「マスクエリア情報」と称する)を設定するためのマスクエリア情報設定画面を生成し、置去り物監視装置3の表示部105(
図2)等に出力して表示する。置去り物監視装置3のユーザは、キーボードやマウス等の入力デバイスを操作して、マスクエリア情報設定画面に各種の情報を入力することにより、マスクエリア情報を設定する。
【0041】
マスクエリア情報には、マスクエリアの名称と、マスクエリアの範囲と、マスクエリアに対応付けられた置去り物の種別(以降、「指定置去り物」と称する)とが含まれる。マスクエリアの範囲とは、監視領域中に設定される任意の領域のことである。なお、本実施形態では、マスクエリアの範囲は、矩形に設定されるが、これに限定されるものではなく、他の様々な形状に設定可能である。
【0042】
また、マスクエリア情報には、マスクエリアの範囲を示すマスクエリア枠画像の表示形態と、マスクエリアの使用期間とも含まれる。
【0043】
本実施形態では、マスクエリア枠画像は、マスクエリアを取り囲む矩形の破線の画像であり、指定置去り物に応じて色付けされる。なお、マスクエリア枠画像の表示形態は、破線の画像に限らず、他の様々な形態が可能である。例えば、マスクエリア枠画像は、実線の画像であってもよい。また、指定置去り物に応じたマスクエリア枠画像の色付けは必須ではなく、不要であれば行わなくてもよい。
【0044】
マスクエリアの使用期間は、そのマスクエリアを使用する時間帯や曜日等の期間を示す情報である。上述したように、マスクエリアは指定置去り物を対応付けて設定されるので、マスクエリアの使用期間をマスクエリアにさらに対応付ければ、指定置去り物が実際に使用されるとき(置かれるとき)にのみ、その指定置去り物に対応するマスクエリアを使用することが可能となる。これにより、発報対象判定部における後述する判定処理の数を抑制することができるので、発報対象判定部での判定処理の負荷を軽減することが可能となる。
【0045】
例えば、指定置去り物が店舗看板である場合、店舗看板は、それに対応する店舗の営業時間および営業日にしか使用されないので、マスクエリアは、店舗看板が実際に使用される時間帯および曜日にのみ使用すればよい。また、例えば、指定置去り物が工事用コーンである場合、工事用コーンは、それに対応する工事や作業が行われるときにしか使用されないので、マスクエリアは、工事用コーンが実際に使用される工事期間に対応した時間帯および曜日にのみ使用すればよい。
【0046】
なお、マスクエリア情報は、上記の各情報以外にも、他の様々な情報を含むことができる。例えば、マスクエリアの指定置去り物の画像データ等をさらに含んでもよい。
【0047】
図3は、マスクエリア情報設定部11により生成されるマスクエリア情報設定画面31の一例を示す図である。マスクエリア情報設定画面31は、左側に表示されるマスクエリア設定画面32と、右側に表示される指定置去り物設定画面33とを含む。また、指定置去り物設定画面33の下側には、指定置去り物設定画面33を後述する使用期間設定画面36に切り替えるための画面切替ボタン34が表示されている。
【0048】
マスクエリア設定画面32には、撮像装置2により撮像された監視領域の撮像画像が表示される。
図3の例では、商店街の予め定められた監視領域の撮像画像が表示されている。
【0049】
指定置去り物設定画面33には、マスクエリアに対応付ける指定置去り物を指定するためのチェックボックスが、指定置去り物に応じてマスクエリア枠画像を色付けする色と共に表示されている。
図3の例では、指定置去り物として、店舗看板、掲示板、清掃看板、工事用コーンが示されており、店舗看板には赤色、掲示板には青色、清掃看板には黄色、工事用コーンには緑色が、マスクエリア枠画像を色付けする色として対応付けられている。
【0050】
置去り物監視装置3のユーザが、このマスクエリア情報設定画面31に各種の情報を入力してマスクエリア情報を設定するときは、まず、指定置去り物設定画面33のチェックボックスを操作して、指定置去り物を指定する。
図3の例では、店舗看板が指定されている。次いで、マウス等を使用して、マスクエリア設定画面32中の所望の領域を指定することにより、マスクエリアの範囲を設定する。
【0051】
なお、指定置去り物が店舗看板の場合、店舗看板が置かれる位置は日々変わる可能性がある。また、店舗看板を置いた後も、通行人との接触等により、店舗看板の位置が変わる可能性もある。そのため、マスクエリアの範囲は、店舗看板の位置の変更に対応できるように、店舗看板が置かれる位置として想定される範囲よりも広めに設定するとよい。
【0052】
図3の例では、マスクエリア設定画面32中の右下側に、マスクエリアA1が設定されている。マスクエリアA1は、マスクエリア枠画像35で取り囲むことにより示されている。マスクエリアA1の指定置去り物として店舗看板が指定されおり、店舗看板には赤色が対応付けられているので、マスクエリア枠画像35は赤色で色付けされている。このようにして、
図3の例では、マスクエリアA1は、店舗看板を対応付けて設定される。
【0053】
なお、
図3の例では、指定置去り物を設定した後に、マスクエリアの範囲を設定したが、マスクエリアの範囲および指定置去り物を設定する順序はこれに限定されるものではなく、マスクエリアの範囲を設定した後に、指定置去り物を設定してもよい。この場合は、マスクエリアの範囲の設定時には、マスクエリア枠画像35は黒色等で表示しておき、指定置去り物が設定されたときに、マスクエリア枠画像35の色が指定置去り物に対応付けられた色に変更されるようにするとよい。
【0054】
図4は、マスクエリアの使用期間を設定するための使用期間設定画面36を示す。使用期間設定画面36は、上述したように、画面切替ボタン34を操作することにより、指定置去り物設定画面33から表示を切り替えることができる。
【0055】
使用期間設定画面36には、マスクエリアを使用する使用期間を指定するための入力ボックスが表示されている。本実施形態では、使用期間として、時間帯および曜日を設定する。なお、使用期間は、これに限定されるものではなく、例えば、日、週、月、年等の単位であってよい。また、使用期間は、開始日時と終了日時を指定することにより、指定された開始日時と終了日時との間の連続的な期間に設定してもよい。また、使用期間が、周期的な使用期間である場合には、マスクエリア機能ONの時間帯や曜日が、所定の期間にわたって繰り返されるように設定するとよい。
【0056】
図4の例では、マスクエリアを使用する時間帯、すなわち、マスクエリア機能をONにする時間帯は、「8:00~22:00」に設定されており、マスクエリアを使用しない時間帯、すなわち、マスクエリア機能をOFFにする時間帯は、「22:00~8:00」に設定されている。この店舗看板に対応する店舗の営業時間が8:00~22:00であり、それ以外の時間帯は店舗看板を出さないためである。また、
図4の例では、マスクエリアを使用する曜日(マスクエリア機能をONにする曜日)は、「月~金に」設定されており、マスクエリアを使用しない曜日(マスクエリア機能をOFFにする曜日)は、「土、日」に設定されている。この店舗看板に対応する店舗の営業日は月曜日~金曜日であり、土曜日と日曜日は店舗看板を出さないためである。
【0057】
マスクエリア情報設定部11で設定されたマスクエリア情報は、マスクエリア情報記憶部12に記憶される。本実施形態では、マスクエリアの範囲は、マスクエリア設定画面32上での、マスクエリア枠画像の矩形枠の左上の座標と、右下の座標とにより定義している。
【0058】
図5は、マスクエリア情報記憶部12に記憶されるマスクエリア情報の一例を示す図である。
図5に示すように、マスクエリア情報には、マスクエリアの名称を示す「マスクエリア名」と、それに紐付けられた、そのマスクエリアの指定置去り物を示す「指定置去り物」、マスクエリア枠画像の座標を示す「枠画像の座標」、マスクエリア枠画像の色を示す「枠座標の色」、マスクエリアの使用期間を示す「使用期間」が含まれる。
図5の例では、マスクエリア名「マスクエリアA1」に、指定置去り物「店舗看板」、枠画像の座標「(x800、y300)、(x900、y200)」、枠座標の色「赤色」、使用期間「時間帯:8:00-22:00、曜日:月~金」の各情報が紐付けられている。
【0059】
画像取得部13は、撮像装置2と接続されており、撮像装置2から監視領域の撮像画像を取得する。画像取得部13は、画像処理部14および報知画像生成部15と接続されており、画像取得部13が撮像装置2から取得した撮像画像は、画像処理部14および報知画像生成部15に入力される。
【0060】
画像処理部14は、画像取得部13から撮像画像を取得する。撮像画像が所定時間間隔で撮像された静止画像である場合は、その静止画像データとして取得し、撮像画像が動画像である場合は、該動画像から所定時間間隔で抽出した静止画像データ(画像フレームデータ)として取得する。画像処理部14が画像取得部13から取得した撮像画像(静止画像データ)は、物体追跡部21、置去り物検出部22、置去り物種別判定部23、および発報対象判定部24で処理される。
【0061】
物体追跡部21は、撮像画像から監視領域に出現した物体(以降、「出現物体」と称する)を検出し、検出された出現物体毎に、該出現物体の検出以降の撮像画像間で追跡する。出現物体は、例えば、紙袋、店舗看板、清掃看板、かばん等であり得る。出現物体の検出は、予め撮像した背景画像と撮像画像との比較、または時系列において互いに隣接する2枚の撮像画像の比較により行われる。具体的には、比較される撮像画像間の対応する画素の画素値(例えば、輝度値)の相違度(差または相関値)を求め、求められた相違度が予め定められた閾値を超える画素を抽出し、近接して抽出された画素をまとめた領域を出現物体として検出する。撮像画像から出現物体が検出されたら、検出された出現物体毎に個別の識別符号を付与し、該出現物体の検出以降の撮像画像間で追跡する。
【0062】
置去り物検出部22は、物体追跡部21による出現物体毎の追跡結果に基づき、置去り物を検出する。具体的には、物体追跡部21で検出された出現物体毎に、該出現物体の撮像画像内での経時的な変位を求め、予め定められた時間を超えて変位しない出現物体、すなわち予め定められた時間を超えて静止している出現物体を、置去り物として検出する。置去り物が検出されたら、検出された置去り物毎に固有の識別符号を付与し、該置去り物の検出以降の撮像画像間で追跡する。また、置去り物が検出された場合は、その検出結果が報知画像生成部15に入力される。
【0063】
置去り物種別判定部23は、置去り物検出部22で検出された置去り物の種別を判定する。置去り物の種別の判定は、ディープラーニングによる識別器等の公知の画像認識技術を用いて行うことができる。例えば、撮像画像から検出された置去り物の形状特徴やテクスチャ特徴に基づいて置去り物の種別を識別する識別器を用いるとよい。この場合は、置去り物の形状特徴やテクスチャ特徴と置去り物の種別との対応関係を予め記憶したデータベースを用意しておく。なお、置去り物の種別を識別する方法は特に限定されるものではなく、従来公知の様々な方法を用いることが可能である。置去り物種別判定部23で判定された置去り物の種別は、報知画像生成部15に入力される。
【0064】
発報対象判定部24は、置去り物検出部22で検出された置去り物について、その置去り物が発報対象であるか否かについて判定する。なお、置去り物検出部22で複数の置去り物が検出された場合は、個々の置去り物毎に判定処理を行う。
【0065】
発報対象判定部24での判定処理は、マスクエリア情報記憶部12に記憶されたマスクエリア情報を参照して行われる。上述したように、マスクエリア情報には、マスクエリアの範囲(マスクエリア枠画像の座標)と、マスクエリアの指定置去り物とが含まれている。また、この判定処理では、使用期間が有効なマスクエリアのみを使用することとする。また、監視領域内に複数のマスクエリアが設定されている場合は、個々のマスクエリア毎に判定処理を行うこととする。
【0066】
具体的には、まず、置去り物検出部22で検出された置去り物が、マスクエリア内に存在するか否かを判定する。この判定は、公知の画像解析技術を用いて行うことができる。検出された置去り物が、マスクエリア内に存在しないと判定された場合、その置去り物は、発報対象と判定される。
【0067】
そして、検出された置去り物が、マスクエリア内に存在すると判定された場合には、その置去り物の種別が、マスクエリアの指定置去り物であるか否かの判定をさらに行う。その置去り物の種別が指定置去り物であると判定された場合には、その置去り物は、警報発報が不要な置去り物(以降、「非発報対象」と称する)と判定する。一方、その置去り物の種別が該マスクエリアの指定置去り物ではないと判定された場合には、その置去り物は、発報対象と判定される。
【0068】
すなわち、発報対象判定部24は、マスクエリア内に存在し、かつ、マスクエリアの指定置去り物であると判定された置去り物のみを非発報対象として判定し、それ以外の置去り物はすべて発報対象として判定する。
【0069】
図6は、発報対象判定部24での判定処理の一例を示す図である。まず、
図6(a)に示すように、監視領域の右下側に、マスクエリアA1が予め設定されており、そのマスクエリアA1の指定置去り物が店舗看板であるとする。店舗看板には赤色が対応付けられているので、マスクエリア枠画像35は赤色で色付けされている。
【0070】
そして、
図6(b)に示すように、監視領域中に、紙袋41と店舗看板42が検出されたとする。この場合、発報対象判定部24は、紙袋41と店舗看板42が、マスクエリアA1内に存在するか否かを判定する。上述したように、この判定処理は、置去り物毎に行われる。
図6(b)の例では、紙袋41は、マスクエリアA1内に存在しないと判定され、店舗看板42は、マスクエリアA1内に存在すると判定される。したがって、紙袋41は、発報対象と判定される。
【0071】
次いで、発報対象判定部24は、マスクエリアA1内に存在すると判定された店舗看板42が、マスクエリアA1の指定置去り物であるか否かについてさらに判定する。マスクエリアA1の指定置去り物は店舗看板であるので、店舗看板42は、指定置去り物であると判定される。したがって、店舗看板42は、非発報対象と判定される(
図6(c)参照)。
【0072】
このように、マスクエリア内に存在し、かつ、マスクエリアの指定置去り物であると判定された置去り物のみが非発報対象として判定され、それ以外の置去り物はすべて発報対象として判定される。
【0073】
なお、1つのマスクエリア内に複数の置去り物が検出される場合もある。
図7は、その場合の判定処理の一例を示す図である。まず、
図7(a)に示すように、監視領域の中央下側に、マスクエリアA2が予め設定されており、そのマスクエリアA2の指定置去り物が清掃看板であるとする。清掃看板には黄色が対応付けられているので、マスクエリア枠画像35は黄色で色付けされている。
【0074】
そして、
図7(b)に示すように、監視領域中に、清掃看板43とかばん44が検出されたとする。この場合、発報対象判定部24は、清掃看板43とかばん44が、マスクエリアA2内に存在するか否かを判定する。上述したように、この判定処理は、置去り物毎に行われる。
図7(b)の例では、清掃看板43とかばん44は両方とも、マスクエリアA2内に存在すると判定される。
【0075】
次いで、発報対象判定部24は、マスクエリアA2内に存在すると判定された清掃看板43とかばん44が、マスクエリアA2の指定置去り物であるか否かについてさらに判定する。マスクエリアA2の指定置去り物は清掃看板であるので、清掃看板43は、指定置去り物であると判定される。したがって、清掃看板43は、非発報対象と判定される。一方、かばん44は、指定置去り物ではないと判定される。したがって、かばん44は発報対象と判定される(
図7(c)参照)。
【0076】
このように、1つのマスクエリア内に複数の置去り物が検出された場合でも、個々の置去り物毎に判定処理を行うことにより、その置去り物が、発報対象であるか、それとも非発報対象であるかについて判定することができる。
【0077】
また、1つのマスクエリア内に複数の置去り物が重なって検出される場合もある。通常、2つの置去り物が同時に出現することは稀なので、出現順に指定置去り物であるか否かの判定と、非発報対象か発報対象かの判定を行う。この場合も、上記の
図7の例の場合と同様に、個々の置去り物毎に判定を行う。
図8は、その場合の判定処理の一例を示す図である。まず、
図8(a)に示すように、監視領域の右下側に、マスクエリアA1が予め設定されており、そのマスクエリアA1の指定置去り物が店舗看板であるとする。店舗看板には赤色が対応付けられているので、マスクエリア枠画像35は赤色で色付けされている。
【0078】
そして、
図8(b)に示すように、監視領域中に、店舗看板42とかばん44が検出されたとする。この場合、発報対象判定部24は、店舗看板42とかばん44が、マスクエリアA1内に存在するか否かを判定する。上述したように、この判定処理は、置去り物毎に行われる。
図8(b)この例では、店舗看板42とかばん44は両方とも、マスクエリアA1内に存在すると判定される。
【0079】
次いで、発報対象判定部24は、マスクエリアA1内に存在すると判定された店舗看板42とかばん44が、マスクエリアA1の指定置去り物であるか否かについてさらに判定する。マスクエリアA1の指定置去り物は店舗看板であるので、店舗看板42は、指定置去り物であると判定される。したがって、店舗看板42は非発報対象と判定される。一方、かばん44は、指定置去り物ではないと判定される。したがって、かばん44は、発報対象と判定される(
図8(c)参照)。
【0080】
上述したように、置去り物検出部22で検出された置去り物には、個々の置去り物毎に固有の識別符号が付与されているので、複数の置去り物が互いに重なって検出された場合でも、個々の置去り物を識別することができる。したがって、複数の置去り物が互いに重なって検出された場合でも、個々の置去り物がマスクエリア内に存在するか否かを判定すること、および、個々の置去り物の種別を判定することが可能となる。
【0081】
発報対象判定部24での判定結果は、報知画像生成部15に入力される。
【0082】
報知画像生成部15は、発報対象判定部24での判定結果に基づき、発報対象についての警報を発報するための報知画像を生成する。非発報対象は、警報の発報対象から除外する。具体的には、報知画像生成部15は、画像取得部13から入力された撮像画像に、発報対象を取り囲む発報枠画像、置去り物の種別を示す情報、および、マスクエリアを示すマスクエリア枠画像を重畳して、警報を発報するための報知画像を生成する。なお、報知画像において、マスクエリア枠画像の重畳は必須ではなく、マスクエリア枠画像の表示と非表示を選択して設定できるようにしてもよい。
【0083】
発報枠画像51は、赤色や黄色等の目立つ色にするとよい。また、発報枠画像51を点滅させたり、枠画像の近傍に、警報の発報を示す文字や絵等を表示したりしてもよい。本実施形態では、置去り物が種別を示す情報として、置去り物の種別を示す文字を用いている。なお、置去り物が種別を示す情報は、これに限定されるものではなく、例えば、置去り物の種別を示す絵や記号等であってもよい。
【0084】
図9(a)~
図9(c)は、報知画像生成部15で生成された報知画像の例を示す図である。
【0085】
図9(a)は、
図6に示した判定処理に対応する例を示す図である。この
図9(a)の例では、置去り物として紙袋41と店舗看板42が検出されており、紙袋41は発報対象と判定され、店舗看板42は非発報対象と判定されている。このため、撮像画像に、発報対象である紙袋41を取り囲む発報枠画像51を重畳して報知画像P1を生成している。また、
図9(a)の例では、発報対象の置去り物が紙袋41なので、置去り物の種別を示す情報として「紙袋」という文字52が、撮像画像にさらに重畳されている。加えて、
図9(a)の例では、マスクエリアA1を示すマスクエリア枠画像35が、撮像画像にさらに重畳されている。店舗看板には赤色が対応付けられているので、マスクエリア枠画像35は赤色で色付けされている。
【0086】
図9(b)は、
図7に示した判定処理に対応する例を示す図である。この
図9(b)の例では、置去り物として清掃看板43とかばん44が検出されており、清掃看板43は非発報対象と判定され、かばん44は発報対象と判定されている。このため、撮像画像に、発報対象であるかばん44を取り囲む発報枠画像51を重畳して報知画像P2を生成している。また、
図9(b)の例では、発報対象の置去り物がかばん44なので、置去り物の種別を示す情報として「カバン」という文字52が、撮像画像にさらに重畳されている。加えて、
図9(b)の例では、マスクエリアA2を示すマスクエリア枠画像35が、撮像画像にさらに重畳されている。清掃看板には黄色が対応付けられているので、マスクエリア枠画像35は黄色で色付けされている。
【0087】
図9(c)は、
図8に示した判定処理に対応する例を示す図である。この
図9(c)の例では、置去り物として店舗看板42とかばん44が検出されており、店舗看板42は非発報対象と判定され、かばん44は発報対象と判定されている。このため、撮像画像に、発報対象であるかばん44を取り囲む発報枠画像51を重畳して報知画像P3を生成している。また、
図9(c)の例では、発報対象の置去り物がかばん44なので、置去り物の種別を示す情報として「カバン」という文字52が、撮像画像にさらに重畳されている。加えて、
図9(c)の例では、マスクエリアA1を示すマスクエリア枠画像35が、撮像画像にさらに重畳されている。店舗看板には赤色が対応付けられているので、マスクエリア枠画像35は赤色で色付けされている。
【0088】
報知画像生成部15で生成された報知画像は、表示装置4に出力される。また、報知画像生成部15は、置去り物検出部22で置去り物が検出されるまでは、画像取得部13から入力された撮像画像をそのまま表示装置4に出力する。
【0089】
なお、表示装置に報知画像を表示するときは、表示装置の音声出力機能や、表示装置と連動する発報装置等を使用して、警報音声や警報ランプの点滅等によって警報の発報を行うようにしてもよい。これにより、監視員に注意をより強く喚起することが可能となる。
【0090】
次に、
図1に示した本発明の第1実施形態に係る置去り物監視システム1の置去り物監視装置3での処理の流れを、
図10のフロー図を参照して説明する。
【0091】
まず、画像取得部13が、撮像装置2から撮像画像を取得し、画像処理部14および報知画像生成部15に入力する(ステップST101)。続いて、物体追跡部21が、撮像画像から監視領域内に出現した出現物体の検出を行う(ステップST102)。出現物体が検出された場合(ステップST102:Yes)は、ステップST103に進み、出現物体が検出されなかった場合(ステップST102:No)は、ステップST101に戻る。
【0092】
ステップST103では、物体追跡部21が、検出された出現物体毎に、該出現物体の検出以降の撮像画像間での追跡を開始する。続くステップST104では、置去り物検出部22が、物体追跡部21による出現物体毎の追跡結果に基づき、予め定められた時間を超えて変位しない出現物体を置去り物として検出する。置去り物が検出された場合(ステップST104:Yes)は、ステップST105に進み、置去り物が検出されなかった場合(ステップST104:No)は、ステップST101に戻る。ステップST101に戻った場合、その次のステップST102では、既に検出済みの出現物体以外の、新規に検出される出現物体の検出を行う。
【0093】
ステップST105では、置去り物種別判定部23が、置去り物検出部22で検出された置去り物の種別を判定する。上述したように、この判定処理は、置去り物毎に行われる。以降の判定処置でも同様である。
【0094】
次いで、ステップST106では、発報対象判定部24が、置去り物検出部22で検出された置去り物が、監視領域内に予め設定されたマスクエリア内に存在するか否かを判定する(
図6(b)、
図7(b)、
図8(b)参照)。上述したように、この判定処理では、使用期間が有効なマスクエリアのみを使用することとする。また、監視領域内に複数のマスクエリアが設定されている場合は、個々のマスクエリア毎に判定処理を行うこととする。
【0095】
置去り物検出部22で検出された置去り物が、マスクエリア内に存在すると判定された場合(ステップST106:Yes)は、ステップST107に進み、マスクエリア内に存在しないと判定された場合(ステップST106:No)は、ステップST109に進む。
【0096】
ステップST107では、発報対象判定部24が、その置去り物の種別が、該マスクエリアの指定置去り物であるか否かをさらに判定する(
図6(c)、
図7(c)、
図8(c)参照)。その置去り物の種別が該マスクエリアの指定置去り物であると判定された場合(ステップST107:Yes)は、ステップST108に進み、指定置去り物ではないと判定された場合(ステップST107:No)は、ステップST109に進む。
【0097】
ステップST108では、その置去り物を非発報対象と判定し、その後、処理を終了する。
【0098】
ステップST109では、その置去り物を発報対象と判定し、その後、処理を終了する。
【0099】
以上のように、この第1実施形態によれば、監視領域内に予め設定されたマスクエリア内に存在すると判定された置去り物を、警報の発報対象から除外することができる。これにより、警報の発報対象の数を抑制することができるので、監視員の負担を軽減することが可能となる。また、この第1実施形態によれば、マスクエリア内に存在すると判定された置去り物の種別が、そのマスクエリアに対応付けられた置去り物の種別であると判定された場合にのみ、その置去り物を警報の発報対象から除外することができる。これにより、警報発報が不要な置去り物を警報の発報対象から除外することができるので、監視員の負担をさらに軽減することが可能となる。
【0100】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態に係る置去り物監視システム1について、
図11~13を参照して説明する。この第2実施形態は、置去り物監視装置3の画像処理部14が代表位置検出部25をさらに有している点が、
図1に示した第1実施形態と異なる。他の点は上述した第1実施形態と同じであるので、同一の符号を付してその説明は省略する。
【0101】
代表位置検出部25は、置去り物検出部22で置去り物が検出された場合に、公知の画像解析技術を用いて、その置去り物の代表位置を検出する。置去り物の代表位置としては、例えば、重心位置や、下端中心の位置を用いることができる。
【0102】
図12は、置去り物の代表位置の例を示す図であり、
図12(a)は、代表位置として重心を用いる例を示し、
図12(b)は、代表位置として下端中心を用いる例を示す。
図12(a)の例では、置去り物として店舗看板42が検出されており、代表位置検出部25は、店舗看板42の代表位置として、店舗看板42の重心位置61を検出している。
図12(b)の例では、置去り物として清掃看板43が検出されており、代表位置検出部25は、清掃看板43の代表位置として、清掃看板43の下端中心の位置62を検出している。
【0103】
そして、この第2実施形態では、発報対象判定部24は、置去り物の代表位置に基づいて、その置去り物がマスクエリアに存在するか否かを判定する。具体的には、その置去り物の代表位置がマスクエリア内に存在する場合には、その置去り物は、マスクエリア内に存在すると判定する。
図12(a)の例では、店舗看板42は、その右側の一部がマスクエリアA1からはみ出ているが、店舗看板42の重心位置61がマスクエリアA1内に存在するので、店舗看板42は、マスクエリアA1内に存在すると判定される。
図12(b)の例では、清掃看板43は、その左側の一部がマスクエリアA2からはみ出ているが、下端中心の位置62がマスクエリアA2内に存在するので、清掃看板43は、マスクエリアA2内に存在すると判定される。
【0104】
このように、検出された置去り物がマスクエリアに含まれるか否かの判定を、その置去り物の代表位置(重心位置、下端中心の位置)に基づいて行うことにより、判定をより容易かつより正確に行うことが可能となる。
【0105】
なお、置去り物の代表位置は、重心位置や、下端中心の位置に限定されるものではなく、例えば、上端中心の位置、左上端の位置、右上端の位置、左下端の位置、右下端の位置等の他の様々な位置を用いることができる。実際の判定処理時には、置去り物の一部や下端が、通行者や他の置去り物等の陰に隠れてしまい、その置去り物の重心位置や下端中心の位置を検出できない場合がある。そのような場合には、上端中心の位置、左上端の位置、右上端の位置等を、その置去り物の代表位置として用いるとよい。
【0106】
また、この第2実施形態では、マスクエリアの指定置去り物の代表位置の統計データに基づいて、マスクエリアの範囲を変更する。例えば、店舗看板42や清掃看板43等の看板は、置かれる位置が日々変わる可能性がある。また、看板を置いた後も、通行人との接触等により、看板の位置が変わる可能性もある。したがって、指定置去り物の実際の置き位置に合わせてマスクエリアの範囲を変更することは有益である。
【0107】
具体的には、まず、置去り物検出部22で検出された指定置去り物の代表位置のデータを所定期間蓄積して、指定置去り物の代表位置の統計データを作成する。そして、作成された統計データを、公知の統計分析技術を用いて分析して、指定置去り物の実際の置き位置に合わせて、マスクエリアの範囲を変更する。
【0108】
本実施形態では、マスクエリアの範囲の変更は、マスクエリアの位置の移動することにより行われる。具体的には、指定置去り物の代表位置がマスクエリアの範囲の中心位置から所定距離内に位置するように、マスクエリアの位置を移動させるとよい。本実施形態では、マスクエリアの範囲は、マスクエリア枠画像の矩形枠の左上の座標と右下の座標とにより定義しているので、マスクエリアの範囲の中心位置(座標)は、マスクエリア枠画像の左上の座標と右下の座標とに基づいて求めることができる。マスクエリアの範囲の中心位置からの所定距離は、指定置去り物の全体をマスクエリアの範囲内に含むことができる距離に設定するとよい。
【0109】
図13は、マスクエリアの範囲を変更した例を示す図である。
図13(a)は、マスクエリアA1の範囲を変更した例を示し、A1-1が変更前のマスクエリアA1を示し、A1-2が変更後のマスクエリアA1を示す。図示のように、変更後は、マスクエリアA1の位置は、少しだけ右側に移動されている。
図13(b)は、マスクエリアA2の範囲を変更した例を示し、A2-1が変更前のマスクエリアA2を示し、A2-2が変更後のマスクエリアA2を示す。図示のように、変更後は、マスクエリアA2の位置は、少しだけ左側に移動されている。
【0110】
なお、
図13の例では、マスクエリアの位置を移動させることによりマスクエリアの範囲を変更したが、マスクエリアの範囲の変更は、これに限定されるものではない。例えば、マスクエリアの範囲の変更は、マスクエリアのサイズを変更することにより行ってもよい。この場合は、指定置去り物の代表位置の統計データに基づき、マスクエリアのサイズを大きくまたは小さくすることにより、マスクエリアの範囲を変更するとよい。また、マスクエリアの範囲の変更は、マスクエリアの形状を変更すること行ってもよい。この場合は、指定置去り物の代表位置の統計データに基づき、マスクエリアの形状を、最初に設定されている矩形から、それ以外の様々な形状に変更することにより、マスクエリアの範囲を変更するとよい。
【0111】
このように、指定置去り物の代表位置の統計データに基づいて、マスクエリアの範囲を変更することにより、指定置去り物の実際の置き位置に合わせて、マスクエリアの範囲をより正確に設定することが可能となる。
【0112】
以上、本発明を特定の実施形態に基づいて説明したが、これらの実施形態はあくまでも例示であって、本発明はこれらの実施形態によって限定されるものではない。なお、上記実施形態に示した本発明に係る置去り物監視装置およびこれを備えた置去り物監視システムならびに置去り物監視方法の各構成要素は、必ずしも全てが必須ではなく、少なくとも本開示の範囲を逸脱しない限りにおいて適宜取捨選択することが可能である。
【産業上の利用可能性】
【0113】
本発明に係る置去り物監視装置およびこれを備えた置去り物監視システムならびに置去り物監視方法は、警報発報が不要な置去り物を警報の発報対象から除外することが可能な置去り物監視装置およびこれを備えた置去り物監視システムならびに置去り物監視方法等として有用である。
【符号の説明】
【0114】
1 置去り物監視システム
2 撮像装置
3 置去り物監視装置
4 表示装置(報知装置)
11 マスクエリア情報設定部
12 マスクエリア情報記憶部
13 画像取得部
14 画像処理部
15 報知画像生成部
21 物体追跡部
22 置去り物検出部
23 置去り物種別判定部
24 発報対象判定部
25 代表位置検出部