(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ガスセンサ装置
(51)【国際特許分類】
G01N 27/12 20060101AFI20240510BHJP
G01N 27/04 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G01N27/12 B
G01N27/04 F
G01N27/12 M
G01N27/12 C
(21)【出願番号】P 2020114790
(22)【出願日】2020-07-02
【審査請求日】2023-04-05
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 慎也
(72)【発明者】
【氏名】糸井 清一
(72)【発明者】
【氏名】末次 大輔
(72)【発明者】
【氏名】野口 憲路
(72)【発明者】
【氏名】高木 宣俊
【審査官】倉持 俊輔
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-173307(JP,A)
【文献】特表2002-535651(JP,A)
【文献】国際公開第2008/149972(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 27/04,27/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の電極と、
第2の電極と、
前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極および前記第2の電極に接する金属酸化物層と、
前記第1の電極の一部、前記第2の電極の一部および前記金属酸化物層の一部を覆う被覆絶縁膜と、
水素のみを透過する水素透過膜と、を備え、
前記金属酸化物層の内部には、前記第2の電極と接する局所領域であって、前記金属酸化物層における他の領域よりも酸素不足度が大きい前記局所領域が設けられ、
前記被覆絶縁膜には、前記第2の電極の主面の一部である気体接触部を露出させる開口部が設けられ、
前記水素透過膜は
、前記気体接触部を覆う
第1の被覆部と、前記開口部を区画する側壁部を覆う第2の被覆部と、を備える金属薄膜であり、
前記第2の被覆部は、前記第1の被覆部よりも厚く形成されており、
前記第1の被覆部の厚さは、10nm以上30nm以下であり、
前記第2の被覆部の厚さは、50nm以上100nm以下である、ガスセンサ装置。
【請求項2】
前記水素透過膜は、Pd、Pd合金、Pd-Cu合金、TiNから選択される少なくとも1つを含む
金属薄膜である、請求項
1に記載のガスセンサ装置。
【請求項3】
前記第2の電極の前記気体接触部に水素含有ガスが接触したことに伴う前記金属酸化物層に流れる電流値の変化を測定する測定回路をさらに備える、請求項1
または2に記載のガスセンサ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ガスセンサ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素社会の実現の為には水素貯蔵、輸送などのインフラ整備を進める上で安全安心を担保する必要があり、ガスセンサ装置の重要性が増してきている。ガスセンサ装置には、あらゆる環境下、特に高湿度の環境下において、水による電極劣化の影響なく長期間利用できることが求められている。また、水素型燃料電池が普及したり、供給パイプラインが構築されたりして、水素供給システムの運用が開始されるときには、水素が導管から漏洩した場合の保安を特に確保する必要がある。水素センサには、重要なインフラ設備として、メンテナンスフリー、省電力、耐環境性能が特に求められている。
【0003】
ここで、
図2を用いて、特許文献1のガスセンサ装置の概略について説明する。
図2は、特許文献1に記載のガスセンサ装置の一例を示す断面図である。
図2に示すように、特許文献1のガスセンサ装置は、基板101と、絶縁膜102と、第1の電極103と、気体感応性抵抗膜104と、第2の電極106とが積層された積層物を覆う層間絶縁膜107を備える。層間絶縁膜107には、対象気体ガスを検知させるための開口部107aが設けられている。気体感応性抵抗膜104として遷移金属酸化物が用いられており、当該遷移金属酸化物(金属膜)は、第1の電極103および第2の電極106によって挟まれている。気体感応性抵抗膜104には、第2の電極106と接し、第1の電極103に接していない局所領域105が設けられている。
【0004】
上述のような構成を有する特許文献1のガスセンサ装置によれば、第1の電極103と第2の電極106との間に流れる電流が、酸素不足度が大きい金属酸化物を含む局所領域105に集中するので、局所領域105の温度が上昇する。この局所領域105での発熱により第2の電極106の局所領域105と接した部分が加熱され、水素含有ガスから水素原子が解離する効率が高くなる。その結果、検査対象である気体中に水素含有ガスが存在すると、第2の電極106において水素含有ガスから解離された水素原子が局所領域105内の酸素原子と結合して、局所領域105の抵抗値が低下する。このような抵抗値変化を利用して、第2の電極106に検査対象である気体を接触させ、第1の電極103と第2の電極106との間の抵抗値が低下することをもって、気体に含まれる水素含有ガスを検出することができる。特許文献1のガスセンサ装置は、ヒーターで加熱することなく水素含有ガスを検出できるので、省電力性に優れている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に記載のガスセンサ装置では、第2の電極106に対象気体ガスを接触させるための開口部107aが層間絶縁膜107に設けられているため、高湿度の環境下において第2の電極106が水分で覆われてしまい、ガスの検知能力が低下するおそれがある。
【0007】
本開示は、高湿度の環境下において耐湿性能を向上させることができるガスセンサ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示のガスセンサ装置は、第1の電極と、第2の電極と、前記第1の電極と前記第2の電極との間に配置され、前記第1の電極および前記第2の電極に接する金属酸化物層と、前記第1の電極の一部、前記第2の電極の一部および前記金属酸化物層の一部を覆う被覆絶縁膜と、水素のみを透過する水素透過膜と、を備え、前記金属酸化物層の内部には、前記第2の電極と接する局所領域であって、前記金属酸化物層における他の領域よりも酸素不足度が大きい前記局所領域が設けられ、前記被覆絶縁膜には、前記第2の電極の主面の一部である気体接触部を露出させる開口部が設けられ、前記水素透過膜は、前記気体接触部を覆う第1の被覆部と、前記開口部を区画する側壁部を覆う第2の被覆部と、を備える金属薄膜であり、前記第2の被覆部は、前記第1の被覆部よりも厚く形成されており、前記第1の被覆部は、前記第2の被覆部よりも薄く形成されており、前記第1の被覆部の厚さは、10nm以上30nm以下であり、前記第2の被覆部の厚さは、50nm以上100nm以下である。
【発明の効果】
【0009】
本開示のガスセンサ装置によれば、高湿度の環境下において耐湿性能を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本開示の一実施の形態におけるガスセンサ装置の断面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本開示の実施の形態について図面を参照し、説明する。なお、図面は、模式的または概念的なものであり、同一の構成、動作および効果を表す要素については、必ずしも現実のものと同一とは限らない。同一部分を表す場合であっても、図面により寸法や比率が異なって表現される場合もある。
図1は、本開示の一実施の形態に係る気体センサの構成例を示す断面図である。
【0012】
<ガスセンサ装置の構造>
図1に示すように、ガスセンサ装置100は、基板1と、基板1上に配置された絶縁膜2と、絶縁膜2の上方に配置された第1の電極3と、第2の電極6と、第1の電極3および第2の電極6で挟まれた気体感応性抵抗膜4と、層間絶縁膜7と、ビア8と、配線導体9と、水素透過膜10と、を備えている。
【0013】
基板1は、上面である第1の主面を有する。基板1としては、シリコン単結晶基板、半導体基板、樹脂材料などを用いることができるが、これらの材料に限定されるわけではない。
【0014】
絶縁膜2は、下面である第1の主面と、上面である第2の主面とを有する。絶縁膜2は、シリコンを材料にした場合、熱酸化法により成形することができる。例えば、シリコンを高温の雰囲気下で酸素、水蒸気中で酸化させることによって、二酸化シリコンの絶縁膜2を形成することができる。成形する絶縁膜2の厚さは、絶縁機能を有する厚さであればよく、例えば、100nm以上1000nm以下である。
【0015】
第1の電極3は、下面である第1の主面と、上面である第2の主面とを有する。第2の電極6は、下面である第3の主面と、上面である第4の主面とを有する。第1の電極3の第2の主面と第2の電極6の第3の主面とは、対向して配置されている。第1の電極3の第2の主面と第2の電極6の第3の主面とに接して、気体感応性抵抗膜4が配置されている。
【0016】
第1の電極3および第2の電極6の材料は、例えば、Pt(白金)、Ir(イリジウム)、Pd(パラジウム)、Ag(銀)、Ni(ニッケル)、W(タングステン)、Cu(銅)、Al(アルミニウム)、Ta(タンタル)、Ti(チタン)、TiN(窒化チタン)、TaN(窒化タンタル)およびTiAlN(窒化チタンアルミニウム)などから選択される。具体的には、第2の電極6の材料としては、白金(Pt)、イリジウム(Ir)、パラジウム(Pd)など、水素原子を有する気体分子から水素原子を解離する触媒作用を有する材料を用いる。また、第1の電極3の材料としては、例えば、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、タンタル(Ta)、チタン(Ti)、アルミニウム(Al)、窒化タンタル(TaN)、窒化チタン(TiN)など、金属酸化物を構成する金属と比べて標準電極電位が、より低い材料を用いてもよい。標準電極電位は、その値が高いほど酸化しにくい特性を表す。
【0017】
これらの第1の電極3と第2の電極6の成形方法として、スパッタリング法によるドライプロセスを用いることができる。例えば、スパッタリング法による第1の電極3の成形は、真空中にターゲットである金属膜と絶縁膜2を互いに対向するように設置し、電圧を印加することで窒素、アルゴン等の不活性ガスをイオン化させ、イオン化した不活性ガスをターゲット表面に衝突させ、ターゲットからはじき飛ばされた成分を絶縁膜2上に堆積積層させることによって行われる。この際、堆積積層させる金属層の厚さは、50nm以上300nm以下が好ましい。その理由は、最もガス感応性が高まるからである。第2の電極6は、第1の電極3と同様のスパッタリング法を用い、ターゲットからはじき飛ばされた成分を気体感応性抵抗膜4上に堆積積層させることによって成形することができる。
【0018】
気体感応性抵抗膜4は、第1の電極3と第2の電極6との間に配置されている。気体感応性抵抗膜4は、第1の電極3と第2の電極6との間に与えられる電気的信号に基づいて、可逆的に抵抗値が変化する層である。気体感応性抵抗膜4として、第1の電極3と第2の電極6との間に与えられる電圧、および、第2の電極6が接触する気体中の水素含有ガスの有無に応じて、抵抗値が変化する金属酸化物を用いる。
【0019】
気体感応性抵抗膜4は、酸素不足型の金属酸化物を含有する金属酸化物層の一例である。当該金属酸化物の母体金属は、タンタル(Ta)、ハフニウム(Hf)、チタニウム(Ti)、ジルコニウム(Zr)、ニオブ(Nb)、タングステン(W)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)などの遷移金属と、アルミニウム(Al)とからなる群から少なくとも1つ選択されてもよい。気体感応性抵抗膜4が含有する金属酸化物としてハフニウム酸化物を用いる場合、その組成をHfOxと表記した場合にxが1.6以上であるとき、気体感応性抵抗膜4の抵抗値を安定して変化させることができる。この場合、ハフニウム酸化物の膜厚は、3nm以上4nm以下としてもよい。また、気体感応性抵抗膜4が含有する金属酸化物としてジルコニウム酸化物を用いる場合、その組成をZrOxと表記した場合にxが1.4以上であるとき、気体感応性抵抗膜4の抵抗値を安定して変化させることができる。この場合、ジルコニウム酸化物の膜厚は、1nm以上5nm以下としてもよい。また、気体感応性抵抗膜104が含有する金属酸化物としてタンタル酸化物を用いる場合、組成をTaOxと表記した場合にxが2.1以上であるとき、気体感応性抵抗膜4の抵抗値を安定して変化させることができる。気体感応性抵抗膜4はスパッタリング法によるドライプロセスを用いて成形してもよい。
【0020】
気体感応性抵抗膜4の内部には、局所領域5が設けられている。局所領域5は、第1の電極3と第2の電極6との間に電圧を印加することによって、気体感応性抵抗膜4内に形成される。初期ブレイク電圧の印加により、
図1に示すように、気体感応性抵抗膜4内に、第2の電極6と接し、第1の電極3と接していない局所領域5が形成される。ここで、初期ブレイク電圧は、気体感応性抵抗膜4を高抵抗状態と低抵抗状態との間を可逆的に遷移させるために、第1の電極3と第2の電極6との間に印加する通常の書き込み電圧より絶対値が大きい電圧であってもよい。初期ブレイク電圧は、前記書き込み電圧より絶対値が小さい電圧であってもよい。この場合は、初期ブレイク電圧を繰り返し印加するか、または所定時間連続して印加してもよい。
【0021】
局所領域5に含まれる金属酸化物の酸素不足度は、第1の電極3と第2の電極6との間に与えられる電気的信号の印加、および、第2の電極6が接触する気体中の水素含有ガスの有無に応じて、可逆的に変化する。局所領域5に含まれる金属酸化物の酸素不足度が大きくなると、局所領域5の抵抗値が低下する。検査対象である気体中に水素ガスが存在すると、第2の電極6において水素ガスから解離された水素原子が局所領域5内の酸素原子と結合して、局所領域5の抵抗値が低下し、ひいては気体感応性抵抗膜4の抵抗値が低下する。当該特性により、第2の電極6に検査対象である気体を接触させ、第1の電極3と第2の電極6との間の抵抗値が低下することをもって、気体に含まれる水素ガスを検出することができる。
【0022】
また、気体感応性抵抗膜4に局所領域5が存在すると、第1の電極3と第2の電極6との間に電気的信号を印加した際、気体感応性抵抗膜4内の電流は局所領域5に集中的に流れる。局所領域5は小さい。そのため、例えば、抵抗値を読み出すための1V程度の電圧印加時の数十μA程度の電流(つまり、0.1mW未満の消費電力)による発熱で、比較的大きな温度上昇が生じる。よって、第2の電極6を触媒作用のある金属、例えばPtで構成し、第2の電極6の局所領域5と接した部分を局所領域5での発熱により加熱することで、水素含有ガスから水素原子が解離する効率を高くすることができる。すなわち、検査対象である気体に含まれる水素ガスの濃度が低くても、水素ガスを検出することができる。
【0023】
層間絶縁膜7は、被覆絶縁膜の一例である。層間絶縁膜7は、絶縁膜2、第1の電極3、第2の電極6および気体感応性抵抗膜4を覆い、かつ、第2の電極6の第4の主面上の一部分である気体接触部6aを覆わないように設けられている。つまり、層間絶縁膜7は、第2の電極6の気体接触部6aを外部に露出させ、第2の電極6を検査対象である気体に接触させるための、開口部7aを有する。層間絶縁膜7は、例えば、二酸化シリコンやガラス膜などの不導体絶縁物で構成することができ、スピンコート法などにより成形することができる。層間絶縁膜7の厚さとして、0.1μm以上300μm以下であることが好ましい。なお、層間絶縁膜7を構成する不導体絶縁物が十分な絶縁性能を有する場合、層間絶縁膜7の厚さは、上述の範囲内でなくてもよい。
【0024】
層間絶縁膜7のうち、第2の電極6を覆っている部分に、ビア8が配置されている。ビア8は、層間絶縁膜7を貫通して第2の電極6に接続されている。ビア8の上には、配線導体9が配置されている。配線導体9は、測定回路や演算回路に接続されている。第2の電極6の気体接触部6aに水素含有ガスが接触すると、気体感応性抵抗膜4の抵抗値が低下し、この抵抗値の低下に伴い気体感応性抵抗膜4に流れる電流値が変化する。このような電流値の変化を、測定回路で測定することができる。測定回路での測定結果に基づき、水素ガスの濃度を演算回路で計算することができる。
【0025】
層間絶縁膜7には、当該層間絶縁膜7の上面7b、開口部7aを区画する側壁部7c、および、第2の電極6の気体接触部6aを覆うように配置された水素透過膜10が設けられている。水素透過膜10は、第2の電極6の気体接触部6aを覆う第1の被覆部10aと、側壁部7cを覆う第2の被覆部10bと、層間絶縁膜7の上面7bを覆う第3の被覆部10cとを備える。なお、水素透過膜10は、少なくとも第1の被覆部10aを有していればよい。
【0026】
水素透過膜10は、多孔質膜または非多孔質膜からなる。水素透過膜10は、精密ろ過膜としてガス中や溶液中で用いることができるため、このろ過性能に着目し、水に対する、防湿膜として利用することができる。緻密に成形された水素透過膜10に水素ガスが接触した場合、水素のみが、原子状に解離、溶解、拡散、再結合し第2の電極6に到達することで、水素ガスを検知することができる。水素透過膜10としては、PdまたはPd合金、Pd-Cu合金、TiNなどの金属薄膜を適用することができるが、水素透過膜の材質としてはこれに限ったものではない。水素透過膜10を形成する方法としては、スパッタリング法がある。例えば、スパッタリング法で水素透過膜10を形成する場合、ガスセンサ装置100の検出性能を十分に保持させるためには、水素透過膜10の膜厚を10nm以上100nm以下にする必要がある。より好ましくは、水素透過膜10の膜厚は、50nm以下であることが好ましい。
【0027】
<ガスセンサ装置の製造方法>
次に、ガスセンサ装置100の製造方法の一例について説明する。
【0028】
単結晶シリコンである基板1上に、厚さ200nmの絶縁膜2を熱酸化法により形成する。そして、第1の電極3として例えば厚さ100nmのPt膜を、スパッタリング法により絶縁膜2上に形成する。なお、第1の電極3と絶縁膜2との間にTi、TiNなどの密着層をスパッタリング法により形成することもできる。
【0029】
その後、第1の電極3上に、気体感応性抵抗膜4となる酸素不足型の金属酸化物層を、例えばTaターゲットを用いた反応性スパッタリング法で形成する。以上によりTaOの金属酸化物で構成された気体感応性抵抗膜4が形成される。気体感応性抵抗膜4の厚さについては、厚すぎると初期抵抗値が高くなりすぎるなどの不都合があり、薄すぎると安定した抵抗変化が得られないという不都合がある。以上の理由から、気体感応性抵抗膜4の厚さは、1nm以上8nm以下程度であってもよい。
【0030】
次に、気体感応性抵抗膜4上に、第2の電極6として例えば厚さ150nmのPt膜をスパッタリング法により形成する。次に、フォトリソグラフィー工程によって、フォトレジストにより形成する。その後、ドライエッチングによって、第1の電極3、気体感応性抵抗膜4および第2の電極6を素子の形状に形成する。その後、絶縁膜2、第1の電極3、気体感応性抵抗膜4および第2の電極6を覆うように、スピンコート工程によって層間絶縁膜7を形成する。
【0031】
そして、ドライエッチング法によって、層間絶縁膜7に、第2の電極6の上面の一部に到達するビアホールを形成する。次に、層間絶縁膜7の上面およびビアホールの内部を充填するように導体膜を形成する。その後、層間絶縁膜7上の導体膜を除去して、ビアホール内にビア8を形成する。さらに、新たな導体膜を層間絶縁膜7上に配置してパターニングすることによって、ビア8と接続する配線導体9を形成する。
【0032】
次に、エッチングによって、層間絶縁膜7に第2の電極6の上面の一部が露出する開口部7aを形成する。その後、第1の電極3と第2の電極6との間に、電圧を印加することにより、気体感応性抵抗膜4内に局所領域5を形成する。
【0033】
次に、開口部7aが露出する第2の電極6上および層間絶縁膜7上に、スパッタリング法により、厚さ100nmのPd膜を水素透過膜10として形成する。この際、スパッタリング法で形成した水素透過膜10は、層間絶縁膜7の上面7bに対する成膜時のスパッタ入射角を0°(上面7bと直交する方向から成膜材料が入射する角度)から45°に変更した場合、第2の電極6の気体接触部6aを覆う第1の被覆部10aと、開口部7aを区画する側壁部7cを覆う第2の被覆部10bとで膜厚差が生じる構造となる。この際、第2の被覆部10bを薄くしすぎると、図示しない配線パターンが設けられた層間絶縁膜7の防湿性能を確保できないおそれがある。また、第1の被覆部10aを100nm以上の厚さとなるように成膜した場合、水素感応性に不都合が生じる。このため、第2の被覆部10bを厚くし、第1の被覆部10aを薄くすることが好ましい。例えば、第2の被覆部10bの厚さが50nm以上100nm以下の場合、第1の被覆部10aの厚さは10nm以上30nm以下であることが好ましい。第1の被覆部10aをより薄くしたい場合には、層間絶縁膜7の上面7bに対する成膜時のスパッタ入射角をより大きくすればよい。このようにすれば、より速いガス応答性を有するガスセンサ装置100を製造することができる。以上の工程により、ガスセンサ装置100が完成する。
【0034】
<ガスセンサ装置の作用効果>
以上のガスセンサ装置100によれば、気体接触部6aを水素透過膜10で覆っているため、気体接触部6aに水分が接触することを防止しつつ、検査対象である水素のみを接触させることができる。したがって、高湿環境下においてガスセンサ装置100の耐湿性能を向上させることができる。特に、第1の被覆部10aを第2の被覆部10bよりも薄くしているため、層間絶縁膜7の防湿性能を確保することができ、かつ、より速いガス応答性を有するガスセンサ装置100を提供することができる。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本開示のガスセンサ装置は、省電力かつ耐環境性能に優れたガスセンサとして有用である。
【符号の説明】
【0036】
1,101 基板
2,102 絶縁膜
3,103 第1の電極
4,104 気体感応性抵抗膜
5,105 局所領域
6,106 第2の電極
6a 気体接触部
7,107 層間絶縁膜
7a,107a 開口部
7b 上面
7c 側壁部
8 ビア
9 配線導体
10 水素透過膜
10a 第1の被覆部
10b 第2の被覆部
10c 第3の被覆部
100 ガスセンサ装置