(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】洗濯乾燥機
(51)【国際特許分類】
D06F 34/14 20200101AFI20240510BHJP
D06F 103/42 20200101ALN20240510BHJP
【FI】
D06F34/14
D06F103:42
(21)【出願番号】P 2020161180
(22)【出願日】2020-09-25
【審査請求日】2023-07-28
(73)【特許権者】
【識別番号】512128645
【氏名又は名称】青島海爾洗衣机有限公司
【氏名又は名称原語表記】QINGDAO HAIER WASHING MACHINE CO.,LTD.
(73)【特許権者】
【識別番号】307036856
【氏名又は名称】アクア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】弁理士法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】八田 聡
【審査官】大内 康裕
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-042741(JP,A)
【文献】特開2011-067235(JP,A)
【文献】国際公開第2019/210747(WO,A1)
【文献】中国特許出願公開第1724799(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
D06F 1/00~60/00
D06F 103/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筐体と、
前記筐体内に配置され、洗濯物を収容する洗濯槽と、
前記筐体内に配置され、前記洗濯槽に接続された取出口及び戻し口を含む空気循環路と、
前記洗濯槽内の空気を前記取出口から前記空気循環路内に取り出して前記戻し口から前記洗濯槽内に戻すことによって循環させる送風部と、
冷媒を圧縮するコンプレッサと、前記空気循環路内に配置され、冷媒と前記空気循環路内の空気との間で熱交換を行う熱交換器と、前記コンプレッサと前記熱交換器との間で冷媒を循環させる冷媒循環路とを含むヒートポンプと、
前記空気循環路内に配置されて前記空気循環路内の空気から異物を捕獲するフィルタと、
前記コンプレッサによって圧縮された冷媒の温度を測定する冷媒温度計測部と、
前記送風部及び前記ヒートポンプを制御することによって、前記洗濯槽内の洗濯物を乾燥させる乾燥運転を実行する制御部と、
前記空気循環路に設けられた第1着脱口を開閉する第1扉と、
前記筐体に設けられた第2着脱口を開閉する第2扉と
、
前記洗濯槽内の空気の温度を測定する空気温度計測部とを含み、
前記フィルタは、前記第1着脱口及び前記第2着脱口を通って前記空気循環路から前記筐体外へ取り外し可能であり、
前記乾燥運転開始から所定時間経過後に前記冷媒温度計測部が測定した温度、又は、当該温度の上昇度合いが所定の閾値未満である場合には、前記制御部は、前記フィルタが前記空気循環路内に無いと判断
し、
前記乾燥運転開始から所定時間経過後に前記空気温度計測部が測定した温度、又は、当該温度の上昇度合いが所定の閾値未満である場合にも、前記制御部は、前記フィルタが前記空気循環路内に無いと判断する、洗濯乾燥機。
【請求項2】
前記熱交換器は、前記コンプレッサによって圧縮された冷媒によって加熱される第1熱交換器と、前記第1熱交換器を通過した冷媒によって冷却される第2熱交換器とを含み、
前記冷媒循環路は、前記コンプレッサによって圧縮された冷媒を前記第1熱交換器に導く吐出路と、冷媒を前記第2熱交換器から前記コンプレッサに導く戻し路とを含み、
前記冷媒温度計測部が測定する温度は、前記第1熱交換器における冷媒の流路の温度、又は、前記吐出路の温度である、請求項1に記載の洗濯乾燥機。
【請求項3】
前記フィルタが前記空気循環路内に無いと前記制御部が判断した場合に、前記フィルタが前記空気循環路内に無いことを報知する報知部をさらに含む、請求項1~
2のいずれか一項に記載の洗濯乾燥機。
【請求項4】
前記制御部は、前記フィルタが前記空気循環路内に無いと判断した場合に、前記乾燥運転を延長する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の洗濯乾燥機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、洗濯乾燥機に関する。
【背景技術】
【0002】
下記特許文献1に記載の洗濯乾燥機は、外筐と、外筐の内部に配置された水槽と、水槽の内部に収容された回転ドラムと、回転ドラムの内部に乾燥風を供給するための乾燥風路及び送風ユニットとを含む。乾燥風路は、水槽と一体形成された導出ダクト及び導入ダクトを含む。送風ユニットは、導出ダクトに連結された連結ダクトと、連結ダクトに連結された送風ファンと、送風ファンと導入ダクトとをつないだヒータと、連結ダクトに設けられたフィルタ装着部に装着された乾燥フィルタとを含む。洗濯乾燥機の乾燥運転では、送風ファンの駆動に応じて、水槽内の空気が、導出ダクト及び連結ダクトを流れ、ヒータによって加熱されて乾燥風となり、導入ダクトから水槽内に流入して回転ドラム内の洗濯物を乾燥させる。乾燥フィルタは、連結ダクトを流れる空気に含まれる塵埃を捕捉する。
【0003】
乾燥フィルタは、フィルタ装着部の上面に設けられた開口から取り外し可能である。フィルタ装着部の近傍には、連結ダクト内を流れる乾燥風の音を集音して音信号を取得する集音部が設けられる。乾燥フィルタがフィルタ装着部に装着された状態での乾燥運転では、乾燥風路が密閉状態にあって送風ファンが発する音が比較的静かなので、連結ダクト内を流れる乾燥風の騒音レベルが比較的低い。一方、乾燥フィルタがフィルタ装着部に非装着の状態での乾燥運転では、連結ダクト内において風路抵抗が小さくなって乾燥風の風量が増加するので、連結ダクト内を流れる乾燥風の騒音レベルが比較的高い。洗濯乾燥機では、集音部が取得する音信号の強度、つまり騒音レベルの差異に基いて、フィルタ装着部に対する乾燥フィルタの装着有無が判断される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載の洗濯乾燥機では、乾燥フィルタの装着有無を判断するための集音部が高価なので、コスト上昇が不可避である。
【0006】
この発明は、かかる背景のもとでなされたもので、乾燥運転用のフィルタの装着有無を低コストで判断できる洗濯乾燥機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、筐体と、前記筐体内に配置され、洗濯物を収容する洗濯槽と、前記筐体内に配置され、前記洗濯槽に接続された取出口及び戻し口を含む空気循環路と、前記洗濯槽内の空気を前記取出口から前記空気循環路内に取り出して前記戻し口から前記洗濯槽内に戻すことによって循環させる送風部と、冷媒を圧縮するコンプレッサと、前記空気循環路内に配置され、冷媒と前記空気循環路内の空気との間で熱交換を行う熱交換器と、前記コンプレッサと前記熱交換器との間で冷媒を循環させる冷媒循環路とを含むヒートポンプと、前記空気循環路内に配置されて前記空気循環路内の空気から異物を捕獲するフィルタと、前記コンプレッサによって圧縮された冷媒の温度を測定する冷媒温度計測部と、前記送風部及び前記ヒートポンプを制御することによって、前記洗濯槽内の洗濯物を乾燥させる乾燥運転を実行する制御部と、前記空気循環路に設けられた第1着脱口を開閉する第1扉と、前記筐体に設けられた第2着脱口を開閉する第2扉とを含む洗濯乾燥機であって、前記フィルタが、前記第1着脱口及び前記第2着脱口を通って前記空気循環路から前記筐体外へ取り外し可能であり、前記乾燥運転開始から所定時間経過後に前記冷媒温度計測部が測定した温度、又は、当該温度の上昇度合いが所定の閾値未満である場合には、前記制御部が、前記フィルタが前記空気循環路内に無いと判断する、洗濯乾燥機である。
【0008】
また、本発明は、前記熱交換器が、前記コンプレッサによって圧縮された冷媒によって加熱される第1熱交換器と、前記第1熱交換器を通過した冷媒によって冷却される第2熱交換器とを含み、前記冷媒循環路が、前記コンプレッサによって圧縮された冷媒を前記第1熱交換器に導く吐出路と、冷媒を前記第2熱交換器から前記コンプレッサに導く戻し路とを含み、前記冷媒温度計測部が測定する温度が、前記第1熱交換器における冷媒の流路の温度、又は、前記吐出路の温度であることを特徴とする。
【0009】
また、本発明は、前記洗濯乾燥機が、前記洗濯槽内の空気の温度を測定する空気温度計測部をさらに含み、前記乾燥運転開始から所定時間経過後に前記空気温度計測部が測定した温度、又は、当該温度の上昇度合いが所定の閾値未満である場合にも、前記制御部が、前記フィルタが前記空気循環路内に無いと判断することを特徴とする。
【0010】
また、本発明は、前記洗濯乾燥機が、前記フィルタが前記空気循環路内に無いと前記制御部が判断した場合に、前記フィルタが前記空気循環路内に無いことを報知する報知部をさらに含むことを特徴とする。
【0011】
また、本発明は、前記制御部が、前記フィルタが前記空気循環路内に無いと判断した場合に、前記乾燥運転を延長することを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、洗濯乾燥機の乾燥運転では、送風部の作動に応じて、洗濯槽内の空気が、取出口から空気循環路内に取り出されて戻し口から洗濯槽内に戻るように循環する。循環する空気は、乾燥循環路内でヒートポンプの熱交換器との熱交換によって加熱されて熱風となり、洗濯槽内の洗濯物を乾燥させる。空気循環路内に配置されたフィルタが、空気循環路内の空気から異物を捕獲する。
使用者は、第1扉及び第2扉を開いて空気循環路の第1着脱口と筐体の第2着脱口とを開放し、空気循環路内のフィルタを、第1着脱口及び第2着脱口から筐体外へ取り外してメンテナンスすることができる。使用者がフィルタを第1着脱口及び第2着脱口から空気循環路内に戻して第1扉及び第2扉を閉じると、空気循環路へのフィルタの装着が完了する。
ヒートポンプを用いた洗濯乾燥機では、フィルタが空気循環路に装着された状態で乾燥運転が開始されると、ヒートポンプにおいてコンプレッサによって圧縮された冷媒の温度が上昇し続けるので、乾燥運転開始から所定時間経過後の冷媒の温度、又は、当該温度の上昇度合いが、それぞれに定められた所定の閾値以上になる。そこで、洗濯乾燥機では、乾燥運転開始から所定時間経過後に冷媒温度計測部が測定した当該冷媒の温度、又は、当該温度の上昇度合いが所定の閾値未満である場合には、制御部が、フィルタが空気循環路内に無いと判断する。このようにヒートポンプの冷媒の温度に着目することにより、フィルタの装着有無を検出するための高価な構成を採用しなくても、乾燥運転用のフィルタの装着有無を低コストで判断できる。なお、冷媒温度計測部が測定する冷媒の温度は、冷媒そのものの温度であってもよいし、冷媒を流す流路の温度であってもよい。
【0013】
また、本発明によれば、熱交換器が、コンプレッサによって圧縮された冷媒によって加熱される第1熱交換器と、第1熱交換器を通過した冷媒によって冷却される第2熱交換器とを含み、冷媒循環路が、コンプレッサによって圧縮された冷媒を第1熱交換器に導く吐出路と、冷媒を第2熱交換器からコンプレッサに導く戻し路とを含む。第1熱交換器における冷媒の流路の温度や、吐出路の温度は、フィルタが空気循環路に装着された状態で乾燥運転が開始されると、顕著に上昇し続ける傾向にあるので、これらの温度に着目することによって、フィルタの装着有無を正確に判断できる。
【0014】
また、本発明によれば、洗濯乾燥機では、フィルタが空気循環路に装着された状態で乾燥運転が開始されると、洗濯槽内の空気の温度が上昇し続けるので、乾燥運転開始から所定時間経過後の空気の温度、又は、当該温度の上昇度合いが所定の閾値以上になる。そこで、洗濯乾燥機では、乾燥運転開始から所定時間経過後に空気温度計測部が測定した当該空気の温度、又は、当該温度の上昇度合いが所定の閾値未満である場合にも、制御部が、フィルタが空気循環路内に無いと判断する。このようにヒートポンプの冷媒の温度だけでなく洗濯槽内の空気の温度にも着目することにより、フィルタの装着有無を低コストで判断できる。
【0015】
また、本発明によれば、洗濯乾燥機では、フィルタが空気循環路内に無いと制御部が判断した場合に、報知部が、その旨を報知するので、使用者に、空気循環路へのフィルタの装着を促すことができる。
【0016】
また、本発明によれば、制御部は、フィルタが空気循環路内に無いと判断した場合に、乾燥運転を延長するので、フィルタが空気循環路内に無いことによって洗濯槽内の洗濯物が乾燥しにくい場合でも、洗濯物を最後まで乾燥させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】この発明の一実施形態に係る洗濯乾燥機の模式的な縦断面右側面図である。
【
図2】洗濯乾燥機の電気的構成を示すブロック図である。
【
図3】フィルタが装着された状態にある洗濯乾燥機の乾燥運転中における各測定箇所の温度の経時変化を示すタイムチャートである。
【
図4】フィルタが非装着である状態での乾燥運転中における各測定箇所の温度の経時変化を示すタイムチャートである。
【
図5】乾燥運転中における第1実施例に係るフィルタ検出処理を示すフローチャートである。
【
図6】第2実施例に係るフィルタ検出処理を示すフローチャートである。
【
図7】第3実施例に係るフィルタ検出処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下には、図面を参照して、この発明の実施形態について具体的に説明する。
図1は、この発明の一実施形態に係る洗濯乾燥機1の模式的な縦断面右側面図である。
図1の紙面に直交する方向を洗濯乾燥機1の左右方向Xといい、
図1における左右方向を洗濯乾燥機1の前後方向Yといい、
図1における上下方向を洗濯乾燥機1の上下方向Zという。左右方向Xのうち、
図1の紙面における奥側を左側X1といい、
図1の紙面における手前側を右側X2という。前後方向Yのうち、
図1における左側を前側Y1といい、
図1における右側を後側Y2という。上下方向Zのうち、上側を上側Z1といい、下側を下側Z2という。
【0019】
洗濯乾燥機1は、筐体2と、筐体2内に配置された洗濯槽3と、洗濯槽3に接続された給水路4及び排水路5と、排水路5を通って洗濯槽3から排出される水から異物を捕獲する排水フィルタ6とを含む。洗濯槽3は、外槽7と、外槽7内に収容されたドラム8とを含む。そのため、洗濯乾燥機1は、いわゆるドラム式の洗濯乾燥機である。洗濯乾燥機1は、ドラム8を回転させるモータ9と、ドラム8内に収容される洗濯物Lを乾燥させる乾燥ユニット10とを含む。
【0020】
筐体2は、ボックス状に形成される。筐体2は、垂直に延びる前壁2Aと、前壁2Aの上端から後側Y2へ水平に延びる天壁2Bと、前壁2Aの下端から後側Y2へ水平に延びる底壁2Cとを有する。前壁2Aには、筐体2の内外を連通させる開口2Dが形成される。前壁2Aには、開口2Dを開閉する扉11が設けられる。
【0021】
外槽7は、筐体2の底壁2Cから上側Z1へ延びるショックアブソーバ12の上端に連結される。これにより、外槽7及びドラム8を含む洗濯槽3の全体が、ショックアブソーバ12を介して、底壁2Cによって弾性支持される。外槽7は、水平方向Hに沿って前後方向Yに延びる軸線Jを中心とした円筒状の円周壁7Aと、円周壁7Aの中空部分を後側Y2から塞いだ円盤状の背面壁7Bと、円周壁7Aの前端縁につながったリング状の正面壁7Cとを有する。
【0022】
背面壁7Bは、垂直に配置され、円環状の外周部7Dと、外周部7Dよりも後側Y2へ一段突出した円筒状の中央部7Eとを有する。中央部7Eの中心には、軸線Jに沿って中央部7Eを前後方向Yに貫通した貫通穴7Fが形成される。正面壁7Cは、円周壁7Aの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の第1部7Gと、第1部7Gの内周縁から前側Y1へ突出した円筒状の第2部7Hと、第2部7Hの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の第3部7Iとを有する。第3部7Iの内側には、円周壁7Aの中空部分に前側Y1から連通した出入口7Jが形成される。出入口7Jは、筐体2の開口2Dに対して後側Y2から対向して連通する。
【0023】
給水路4は、蛇口(図示せず)に接続された一端(図示せず)と、外槽7の背面壁7Bにおける例えば中央部7Eに接続された他端4Aとを有する。給水時には、蛇口からの水が給水路4から外槽7内に供給される。外槽7内には、水道水や、水道水に洗剤が溶けた洗剤水などの水が溜められる。給水路4の途中には、給水を開始したり停止したりするために開閉される給水弁13が設けられる。
【0024】
排水路5は、外槽7の下端部、例えば正面壁7Cの第1部7Gの下端部に接続される。外槽7内の水は、排水路5から機外に排出される。排水路5の途中には、排水を開始したり停止したりするために開閉される排水弁14が設けられる。
【0025】
排水フィルタ6は、排水路5において排水弁14よりも外槽7に近い上流部に設けられる。排水フィルタ6の前端は、筐体2の前壁2Aから前側Y1に露出されるので、使用者は、排水フィルタ6の前端を掴んで排水フィルタ6を筐体2に対して着脱させることができる。排水フィルタ6の構成として、公知の構成を用いることができる。
【0026】
ドラム8は、外槽7よりも一回り小さい。ドラム8は、外槽7の円周壁7Aと同軸上に配置された円筒状の円周壁8Aと、円周壁8Aの中空部分を後側Y2から塞いだ円盤状の背面壁8Bと、円周壁8Aの前端縁から軸線J側へ張り出した円環状の環状壁8Cとを有する。ドラム8において少なくとも円周壁8Aには、複数の貫通穴8Dが形成され、外槽7内の水は、貫通穴8Dを介して、外槽7とドラム8との間で行き来する。そのため、外槽7内の水位とドラム8内の水位とは、一致する。ドラム8の背面壁8Bの中心には、軸線Jに沿って後側Y2へ延びる支持軸15が設けられる。支持軸15の後端部は、外槽7の背面壁7Bの貫通穴7Fを通って背面壁7Bよりも後側Y2に配置される。
【0027】
環状壁8Cの内側には、円周壁8Aの中空部分に前側Y1から連通した出入口8Eが形成される。出入口8Eは、外槽7の出入口7J及び筐体2の開口2Dに対して後側Y2から対向して連通する。出入口7J及び出入口8Eは、開口2Dとともに、扉11によって一括開閉される。洗濯乾燥機1の使用者は、開放された開口2D、出入口7J及び出入口8Eを介して、ドラム8内に洗濯物Lを出し入れする。
【0028】
モータ9は、外槽7の背面壁7Bの中央部7Eとほぼ同じ外径を有する円盤状であり、筐体2内において、中央部7Eの後側Y2に配置されて中央部7Eに固定される。モータ9は、ドラム8に設けられた支持軸15に連結される。モータ9が発生した駆動力は、支持軸15に伝達され、ドラム8が、支持軸15を伴って軸線Jまわりに回転駆動される。なお、モータ9と支持軸15と間には、モータ9の駆動力を支持軸15に伝達したり遮断したりするクラッチ機構(図示せず)が設けられてもよい。
【0029】
乾燥ユニット10は、洗濯槽3内の空気を循環させるための空気循環路20及び送風部21と、循環する空気から異物を捕獲するためのフィルタユニット22と、フィルタユニット22をメンテナンスするための分岐路23及び注水弁24と、循環する空気を加熱したり除湿したりするヒートポンプ25とを含む。
【0030】
空気循環路20は、筐体2内において外槽7の周辺に配置された流路である。空気循環路20は、外槽7よりも高い位置で前後方向Yに延びる途中部分20Aと、途中部分20Aの後端から下側Z2へ延びる後部分20Bと、途中部分20Aの前端から下側Z2へ延びる前部分20Cとを有する。後部分20Bの下端部の前端には、取出口20Dが形成される。取出口20Dは、外槽7の背面壁7Bの外周部7Dにおいて上限水位よりも高い部分に接続され、外槽7内に後側Y2から連通する。前部分20Cの下端には、戻し口20Eが形成される。戻し口20Eは、外槽7の正面壁7Cの第2部7Hの上端部に接続され、外槽7内に上側Z1から連通する。外周部7Dにおいて取出口20Dが接続された開口を出口7Kといい、正面壁7Cにおいて戻し口20Eが接続された開口を入口7Lという。
【0031】
送風部21は、空気循環路20の途中部分20A内において取出口20Dに近い上流側の領域に配置された回転羽根21Aと、回転羽根21Aを回転させる電動のモータ21Bとを含むブロアファンである。回転羽根21Aが回転すると、洗濯槽3内の空気つまり外槽7内及びドラム8内の空気が、太い破線矢印で示すように、取出口20Dつまり出口7Kから空気循環路20内に取り出された後に、戻し口20Eつまり入口7Lから洗濯槽3内に戻される。これにより、洗濯槽3内の空気は、洗濯槽3と空気循環路20とを順に流れるように循環する。
【0032】
フィルタユニット22は、空気循環路20内において回転羽根21Aよりも取出口20Dに近い上流側の領域、詳しくは後部分20B内に配置される。フィルタユニット22は、フィルタF1を単数又は複数含む。フィルタF1は、メッシュシートと、このメッシュシートを支持する枠とによって構成された乾燥フィルタである。フィルタF1は、空気循環路20を流れる空気が通過する位置において、縦に延びた姿勢で配置される。フィルタF1が複数設けられる場合には、これらのフィルタF1は、空気循環路20における空気の流れ方向に重なって配置される。循環のために取出口20Dから取り出されて空気循環路20内を流れる空気がフィルタF1を通過すると、この空気に含まれるリントなどの異物がフィルタF1によって捕獲される。
【0033】
分岐路23は、給水路4において給水弁13よりも蛇口に近い上流部から分岐し、フィルタユニット22に接続される。注水弁24は、分岐路23に設けられ、フィルタユニット22のフィルタF1への注水を開始したり停止したりするために開閉される。注水弁24が開くと、給水路4からの水が分岐路23を通ってフィルタユニット22に供給され、フィルタF1に上側Z1から注がれる。これにより、フィルタF1によって捕獲された異物が、フィルタF1から剥がれ落ちて、空気循環路20の取出口20Dから外槽7内に落下し、排水フィルタ6に捕獲される。排水フィルタ6によって捕獲された異物は、適当なタイミングにおいて使用者が排水フィルタ6を取り外してメンテナンスする際に除去される。
【0034】
ヒートポンプ25は、冷媒を圧縮するコンプレッサ26と、冷媒と空気循環路20内の空気との間で熱交換を行う熱交換器27と、コンプレッサ26と熱交換器27との間で冷媒を循環させる冷媒循環路28とを含む。
【0035】
コンプレッサ26として、公知の電動コンプレッサを採用できる。コンプレッサ26は、例えば、ドラム8の回転軸線である軸線Jよりも低い位置に配置されて筐体2の底壁2Cに固定される。
【0036】
熱交換器27は、空気循環路20の途中部分20A内において、送風部21の回転羽根21Aよりも戻し口20Eに近い下流側、具体的には前側Y1の領域に配置される。熱交換器27は、加熱側のコンデンサである第1熱交換器27Aと、冷却側のエバポレータである第2熱交換器27Bと、第1熱交換器27Aと第2熱交換器27Bとをつなぐキャピラリチューブ27Cとを含む。
【0037】
第1熱交換器27Aは、この実施形態では、途中部分20A内において第2熱交換器27Bよりも下流側つまり前側Y1に配置される。第1熱交換器27Aには、複数の放熱フィン27Dが設けられ、第2熱交換器27Bには、複数の冷却フィン27Eが設けられる。第1熱交換器27Aの内部には、冷媒の流路27Fが設けられ、第2熱交換器27Bの内部には、冷媒の流路27Gが設けられる。流路27F及び流路27Gのそれぞれは、アルミニウムなどの金属製のパイプである。複数の放熱フィン27Dは、流路27Fの周囲に配置される。複数の冷却フィン27Eは、流路27Gの周囲に配置される。キャピラリチューブ27Cは、流路27Fと流路27Gとをつなぐ。
【0038】
冷媒循環路28は、アルミニウムなどの金属製のパイプによって構成され、コンプレッサ26と熱交換器27とをつなぐ。冷媒循環路28は、コンプレッサ26から冷媒を取り出した後に熱交換器27を経て再びコンプレッサ26に戻す循環流路である。冷媒循環路28は、コンプレッサ26によって圧縮された冷媒を第1熱交換器27A内の流路27Fに導く吐出路28Aを含む。冷媒循環路28は、第1熱交換器27Aからキャピラリチューブ27Cを経由して第2熱交換器27Bの流路27Gを流れた冷媒を第2熱交換器27Bからコンプレッサ26に導く戻し路28Bをさらに含む。流路27Fを吐出路28Aの一部とみなしてもよく、流路27Gを戻し路28Bの一部とみなしてもよい。
【0039】
洗濯乾燥機1は、タイマ内蔵のマイコンが搭載された基板によって構成された制御部30をさらに含む。制御部30には、モータ9、乾燥ユニット10、給水弁13、排水弁14及び注水弁24などの電気部品が電気的に接続される(
図2も参照)。制御部30は、これらの電気部品の動作を制御することによって洗濯乾燥運転を実行する。洗濯乾燥運転は、洗い工程と、すすぎ工程と、脱水工程と、乾燥工程とを含む。乾燥工程は、単独の乾燥運転として、洗濯乾燥運転とは別に実行されてもよい。以下の説明において、乾燥工程と乾燥運転とは同じである。
【0040】
洗い工程の開始に先立って、ドラム8内に洗剤が投入される。制御部30は、洗い工程では、排水弁14を閉じた状態で、給水弁13を所定時間開いて外槽7及びドラム8に給水してから、モータ9によってドラム8を回転させる。これにより、ドラム8内の洗濯物Lが、たたき洗いされる。たたき洗いでは、洗濯物Lがある程度持ち上げられてから水面に自然落下するというタンブリングが繰り返される。タンブリングによる衝撃や、ドラム8に溜まった洗剤水に含まれる洗剤成分によって、洗濯物Lから汚れが取り除かれる。タンブリングの開始から所定時間が経過した後に、制御部30が排水弁14を開いて排水すると、洗い工程が終了する。
【0041】
制御部30は、すすぎ工程では、排水弁14を閉じた状態で、給水弁13を所定時間開いて外槽7及びドラム8に給水してから、モータ9によってドラム8を回転させる。すると、前述したタンブリングが繰り返されるので、洗濯物Lがドラム8内の水道水によってすすがれる。タンブリングの開始から所定時間が経過した後に、制御部30が排水すると、すすぎ工程が終了する。すすぎ工程は、複数回繰り返されてもよい。制御部30は、脱水工程では、排水弁14を開いた状態で、ドラム8を脱水回転させる。ドラム8の脱水回転により生じた遠心力によって、ドラム8内の洗濯物Lが脱水される。脱水により洗濯物Lから染み出た水は、排水路5から機外に排出される。脱水工程は、すすぎ工程後だけでなく、洗い工程後にも実施されてもよい。
【0042】
制御部30は、乾燥工程では、送風部21とヒートポンプ25のコンプレッサ26とを作動させることによって、熱風を発生させてドラム8と空気循環路20との間で循環させ、ドラム8内の洗濯物Lに供給する。具体的には、ヒートポンプ25では、冷媒が、コンプレッサ26によって圧縮されることで高温高圧になり、その後、吐出路28Aを経て第1熱交換器27A内の流路27Fを通過する際に放熱する。第1熱交換器27Aでは、流路27Fを通過する冷媒の放熱によって放熱フィン27Dが加熱されて高温になる。第1熱交換器27Aを通過した冷媒は、キャピラリチューブ27Cを通過する際に減圧されることによって低温になり、その後、第2熱交換器27B内の流路27Gを通過する際に冷却フィン27Eを冷やす。
【0043】
乾燥工程における空気循環路20内の空気は、空気循環路20内で第2熱交換器27Bの冷却フィン27Eの周囲を通過する際に除湿される。除湿された空気は、第1熱交換器27Aの放熱フィン27Dの周囲を通過する際に加熱されて熱風になる。つまり、空気循環路20内の空気は、第1熱交換器27Aを流れる冷媒との間での熱交換によって熱風となる。この熱風が外槽7の入口7Lから外槽7内に流入してドラム8内の洗濯物Lに供給されることにより、洗濯物Lが乾燥する。この際、制御部30は、モータ9を作動させてドラム8を回転させてもよい。これにより、洗濯物Lに満遍なく熱風を浴びせることができる。
【0044】
乾燥工程中では、リントなどの異物が熱風に乗って流れるが、前述したように、フィルタユニット22のフィルタF1によって捕獲される。制御部30は、乾燥工程中又は乾燥工程後の適切なタイミングにおいて、メンテナンス処理として、注水弁24を開いてフィルタF1に注水し、フィルタF1から異物を取り除く。
【0045】
洗濯乾燥機1は、空気循環路20内でフィルタF1が捕獲しきれなかった異物を捕獲するためのフィルタF2をさらに含む。フィルタF2は、単数又は複数存在する。フィルタF2は、フィルタF1と同様に、メッシュシートと、このメッシュシートを支持する枠とによって構成された乾燥フィルタである。フィルタF2は、空気循環路20の途中部分20A内において、例えば、送風部21の回転羽根21Aと熱交換器27との間に配置される。フィルタF2は、空気循環路20を流れる空気を横切るように、例えば、縦に延びた姿勢で配置される。フィルタF2が複数設けられる場合には、これらのフィルタF2は、空気循環路20における空気の流れ方向に重なって配置される。
【0046】
フィルタF1は、前述したように取り外さなくても自動的にメンテナンスできるが、フィルタF2は、取り外して定期的にメンテナンスする必要がある。そこで、空気循環路20の途中部分20Aにおける天壁20Fには、フィルタF2に上側Z1から臨む第1着脱口20Gが設けられる。筐体2の天壁2Bにおいて第1着脱口20Gの真上の位置には、第2着脱口2Eが設けられる。第1着脱口20G及び第2着脱口2Eのそれぞれは、フィルタF2を通す大きさを有する開口である。
【0047】
洗濯乾燥機1は、第1着脱口20Gを開閉する第1扉31と、第2着脱口2Eを開閉する第2扉32とをさらに含む。第1扉31は、例えば、ヒンジ33を介して空気循環路20の天壁20Fに連結されることにより、ヒンジ33まわりに回動可能である。第2扉32も、例えば、ヒンジ34を介して筐体2の天壁2Bに連結されることにより、ヒンジ34まわりに回動可能である。
【0048】
使用者は、第1扉31及び第2扉32を上側Z1へ回動させることによって第1着脱口20G及び第2着脱口2Eを開放し、空気循環路20内のフィルタF2を第1着脱口20G及び第2着脱口2Eに通して空気循環路20から筐体2の外に取り外して、フィルタF2の掃除などのメンテナンスをすることができる。使用者は、取り出したフィルタF2を、第1着脱口20G及び第2着脱口2Eから空気循環路20内に戻し、第1扉31及び第2扉32を下側Z2へ回動させることによって第1着脱口20G及び第2着脱口2Eを閉じる。これにより、空気循環路20へのフィルタF2の装着が完了する。空気循環路20内には、フィルタF2を位置決めする位置決め部(図示せず)が設けられる。また、第1扉31と第2扉32とは、第1着脱口20G及び第2着脱口2Eを一括開閉する1つの扉に一体化されてもよい。つまり、第1扉31と第2扉32の一方が他方を兼ねてもよい。
【0049】
以下では、第1着脱口20G及び第2着脱口2Eが閉じた状態において、空気循環路20を流れる空気を横切るように空気循環路20内における所定の装着位置に位置決めされたときのフィルタF2を、空気循環路20に装着された状態にあるフィルタF2という。一方、空気循環路20の外にあるフィルタF2を、空気循環路20内に無いフィルタF2、つまり非装着状態のフィルタF2という。フィルタF2が空気循環路20内に無い場合において、第1着脱口20G及び第2着脱口2Eは、閉じた状態にあってもよいし開いた状態にあってもよい。
【0050】
このように空気循環路20から筐体2の外へ取り外し可能なフィルタF2の場合には、使用者が、取り外したフィルタF2を空気循環路20に戻し忘れてしまうことが想定される。フィルタF2が空気循環路20内に無い状態で乾燥運転が実行されると、異物が熱交換器27に付着することなどによって、熱交換器27と空気循環路20内の空気との熱交換が鈍くなるので、洗濯物Lの乾燥効率が低下するおそれがある。さらに、第1着脱口20G及び第2着脱口2Eが開放されたままだと、空気循環路20内の空気がこれらの着脱口から漏れることによって、空気循環路20内から洗濯物Lに供給される熱風の風量が低下するので、洗濯物Lの乾燥効率が一層低下するおそれがある。洗濯物Lの乾燥効率が低下すると、洗濯物Lの乾燥が終わるまでに時間がかかるので、消費電力や乾燥運転の増大が懸念される。
【0051】
このように、乾燥運転時にはフィルタF2が空気循環路20に装着された状態にある必要があるが、第1扉31及び第2扉32が閉じた状態では、使用者は、空気循環路20におけるフィルタF2の有無を洗濯乾燥機1の外から目視で確認することができない。そこで、制御部30は、空気循環路20におけるフィルタF2の有無を検出するフィルタ検出処理を乾燥工程中に実行する。フィルタ検出処理に関連して、洗濯乾燥機1は、ヒートポンプ25においてコンプレッサ26によって圧縮された冷媒の温度を測定する冷媒温度計測部35と、洗濯槽3内の空気の温度を測定する空気温度測定部36と、送風部21のモータ21Bを流れる電流の値を測定する電流計37と、報知部38とをさらに含む(
図2も参照)。
【0052】
冷媒温度計測部35は、いずれもサーミスタによって構成された第1温度計41、第2温度計42及び第3温度計43を含む。第1温度計41は、ヒートポンプ25の吐出路28Aに取り付けられて、吐出路28Aの表面の温度を測定する。吐出路28Aの表面の温度は、吐出路28A内を流れる冷媒の温度とほとんど同じであるので、冷媒の温度とみなせる。第1温度計41は、吐出路28A内に露出されて吐出路28A内の冷媒そのものの温度を測定してもよい。
【0053】
第2温度計42は、ヒートポンプ25の第1熱交換器27A、つまりコンデンサの流路27Fの中間部分に取り付けられて、当該中間部分の表面の温度を測定する。流路27Fの表面の温度は、流路27F内を流れる冷媒の温度とほとんど同じであるので、冷媒の温度とみなせる。第2温度計42は、流路27F内に露出されて流路27F内の冷媒そのものの温度を測定してもよい。
【0054】
第3温度計43は、ヒートポンプ25の第2熱交換器27B、つまりエバポレータの流路27Gにおいてキャピラリチューブ27Cにつながった入口部分に取り付けられて、当該入口部分の表面の温度を測定する。流路27Gの表面の温度は、流路27G内を流れる冷媒の温度とほとんど同じであるので、冷媒の温度とみなせる。第3温度計43は、流路27G内に露出されて流路27Gの入口部分内の冷媒そのものの温度を測定してもよい。
【0055】
以下では、第1温度計41が計測する温度を「吐出路28Aの温度」といい、第2温度計42が計測する温度を「第1熱交換器27Aの中間温度」といい、第3温度計43が計測する温度を「第2熱交換器27Bの入口温度」という。第1温度計41、第2温度計42及び第3温度計43の測定結果である「吐出路28Aの温度」、「第1熱交換器27Aの中間温度」及び「第2熱交換器27Bの入口温度」のそれぞれは、リアルタイムで制御部30に入力される。
【0056】
空気温度測定部36は、いずれもサーミスタによって構成された第4温度計44及び第5温度計45を含む。第4温度計44は、外槽7の出口7Kの付近に取り付けられて、出口7Kにおける空気の温度を測定する。第5温度計45は、外槽7の入口7Lの付近に取り付けられて、入口7Lにおける空気の温度を測定する。以下では、第4温度計44が計測する温度を「外槽7の出口温度」といい、第5温度計45が計測する温度を「外槽7の入口温度」という。第4温度計44及び第5温度計45の測定結果である「外槽7の出口温度」及び「外槽7の入口温度」のそれぞれは、リアルタイムで制御部30に入力される。
【0057】
電流計37として、公知の電流計を採用できる。電流計37の測定結果は、リアルタイムで制御部30に入力される。報知部38は、筐体2の前壁2Aに設けられる液晶のタッチパネルの表示部でもよいし、筐体2に内蔵されたブザーであってもよい。
【0058】
図3は、フィルタF2が空気循環路20内に装着された状態での乾燥運転中における各測定箇所の温度の経時変化を示すタイムチャートである。
図4は、フィルタF2が空気循環路20から取り出された状態での乾燥運転中における各測定箇所の温度の経時変化を示すタイムチャートである。
図3及び
図4のそれぞれのタイムチャートでは、横軸が経過時間を示し、縦軸が、「吐出路28Aの温度」、「第1熱交換器27Aの中間温度」、「第2熱交換器27Bの入口温度」、「外槽7の出口温度」及び「外槽7の入口温度」のそれぞれを示す。経過時間の単位は「分」であり、温度の単位は「度」である。
【0059】
ヒートポンプ25のコンプレッサ26によって圧縮された冷媒の温度は、吐出路28A、第1熱交換器27A及び第2熱交換器27Bを順に通過するのに応じて低下するので、吐出路28Aの温度は、第1熱交換器27Aの中間温度よりも高く、第1熱交換器27Aの中間温度は、第2熱交換器27Bの入口温度よりも高い。循環する空気は、外槽7の出口7Kから空気循環路20に流入して第1熱交換器27Aによって加熱された後に、外槽7の入口7Lから外槽7内に流入するので、外槽7の入口温度は、外槽7の出口温度よりも高い。
【0060】
図3は、フィルタF2が空気循環路20に装着された状態で開始された乾燥運転での測定結果を示す。この場合には、吐出路28Aの温度、第1熱交換器27Aの中間温度、第2熱交換器27Bの入口温度、外槽7の出口温度及び外槽7の入口温度のそれぞれは、乾燥運転開始から10分間は安定しないものの、乾燥運転開始から10分経過後は、送風部21及びヒートポンプ25の作動に応じて常に上昇する。そのため、これらの温度は、乾燥運転の状態を表わす指標である。さらに、第1熱交換器27Aの中間温度や吐出路28Aの温度は、コンプレッサ26の状態を示す指標でもあるので、これらの温度が所定の上限値に到達すると、制御部30は、コンプレッサ26の保護のために乾燥運転を中止する。
【0061】
図4は、フィルタF2が空気循環路20内に無く、空気循環路20の第1着脱口20G及び筐体2の第2着脱口2Eが開いた状態で開始された乾燥運転での測定結果を示す。使用者がフィルタF2を空気循環路20に戻し忘れたまま乾燥運転が開始された場合には、吐出路28Aの温度及び第1熱交換器27Aの中間温度のそれぞれは、乾燥運転開始から30分間は上昇するものの、乾燥運転開始から30分経過後は、飽和して上昇しなくなる。この場合、吐出路28Aの温度は、60度に到達しないし、第1熱交換器27Aの中間温度は、45度にも到達しない。第2熱交換器27Bの入口温度は、乾燥運転開始からほとんど上昇せず、20度にも到達しない。
【0062】
また、外槽7の出口温度及び外槽7の入口温度のそれぞれは、乾燥運転開始から20分間は上昇するものの、第1着脱口20Gや第2着脱口2Eでの外気の出入りが発生することにより、乾燥運転開始から20分経過後は、これらの温度は、飽和して上昇しなくなる。この場合、外槽7の入口温度は、55度に到達しないし、外槽7の出口温度は、30度にも到達もしない。
【0063】
このように、空気循環路20内におけるフィルタF2の有無に応じて、吐出路28Aの温度、第1熱交換器27Aの中間温度、第2熱交換器27Bの入口温度、外槽7の出口温度及び外槽7の入口温度のそれぞれの変化特性が異なる。特に、ヒートポンプ25を用いた洗濯乾燥機1では、フィルタF2が空気循環路20に装着された状態で乾燥運転が開始されると、ヒートポンプ25においてコンプレッサ26によって圧縮された冷媒の温度が上昇し続ける。そのため、乾燥運転開始から所定時間経過後の冷媒の温度、又は、当該温度の上昇度合いが、以降で述べる所定の閾値以上になる。そこで、制御部30は、このような冷媒の変化特性を主に利用したフィルタ検出処理を実行する。
【0064】
図5は、乾燥運転中における第1実施例に係るフィルタ検出処理を示すフローチャートである。第1熱交換器27Aの中間温度の変化特性を利用する場合には、前述した30分という所定時間が乾燥運転開始から経過すると(ステップS1でYES)、制御部30は、第1熱交換器27Aの中間温度という冷媒の温度を測定する(ステップS2)。この測定値が、例えば60度という閾値以上であれば(ステップS3でYES)、制御部30は、空気循環路20内にフィルタF2が有ると判断してフィルタ検出処理を終了し、乾燥運転を継続する。この閾値は、第1熱交換器27Aの中間温度の変化特性(
図3参照)から事前に得られて制御部30のメモリ(図示せず)に記憶される。これから述べる他の閾値についても同様である。
【0065】
一方、第1熱交換器27Aの中間温度についての測定値が閾値未満であれば(ステップS3でNO)、制御部30は、空気循環路20内にフィルタF2が無いと判断して、空気循環路20内にフィルタF2が無いことを報知部38によって報知する(ステップS4)。そして、制御部30は、フィルタ検出処理を終了して乾燥運転を継続する。
【0066】
吐出路28Aの温度の変化特性を利用する場合のフィルタ検出処理でも、制御部30は、ステップS1~S4の処理を実行するが、ステップS3における閾値は、吐出路28Aの温度の変化特性から得られる値、例えば65度に設定される。第2熱交換器27Bの入口温度の変化特性を利用する場合のフィルタ検出処理でも、制御部30は、ステップS1~S4の処理を実行するが、ステップS3における閾値は、第2熱交換器27Bの入口温度の変化特性から得られる値、例えば25度に設定される。
【0067】
図6は、乾燥運転中における第2実施例に係るフィルタ検出処理を示すフローチャートである。第1熱交換器27Aの中間温度の変化特性を利用する場合には、前述した30分という所定時間が乾燥運転開始から経過すると(ステップS11でYES)、制御部30は、第1熱交換器27Aの中間温度という冷媒の温度を所定時間測定する(ステップS12)。そして、制御部30は、当該所定時間における第1熱交換器27Aの中間温度の上昇度合いを表わすΔtを算出する(ステップS13)。Δtは、第1熱交換器27Aの中間温度の推移を表わす方程式における傾きに相当する。
【0068】
Δtが、例えば1度/分という閾値以上であれば(ステップS14でYES)、制御部30は、空気循環路20内にフィルタF2が有ると判断してフィルタ検出処理を終了し、乾燥運転を継続する。一方、この測定値が閾値未満であれば(ステップS14でNO)、制御部30は、空気循環路20内にフィルタF2が無いと判断して、空気循環路20内にフィルタF2が無いことを報知部38によって報知する(ステップS15)。そして、制御部30は、フィルタ検出処理を終了して乾燥運転を継続する。
【0069】
吐出路28Aの温度の変化特性を利用する場合のフィルタ検出処理でも、制御部30は、ステップS11~S15の処理を実行するが、ステップS14における閾値は、吐出路28Aの温度の変化特性から得られる値に設定される。第2熱交換器27Bの入口温度の変化特性を利用する場合のフィルタ検出処理でも同様である。
【0070】
制御部30は、乾燥運転中において、以上の第1実施例及び第2実施例のどちらか一方に係るフィルタ検出処理だけを実行してもよいし、両方の実施例に係るフィルタ検出処理を並行して実行してもよい。いずれにせよ、乾燥運転開始から所定時間経過後に冷媒温度計測部35が測定した温度、又は、当該温度の上昇度合いΔtが所定の閾値未満である場合には、制御部30は、フィルタF2が空気循環路20内に無いと判断する(ステップS4及びS15)。このようにヒートポンプ25の冷媒の温度に着目することにより、フィルタF2の装着有無を検出するための高価なセンサなどを採用しなくても、乾燥運転用のフィルタF2の装着有無を低コストで正確に判断できる。
【0071】
特に、第1熱交換器27Aの中間温度や、吐出路28Aの温度は、フィルタF2が空気循環路20に装着された状態で乾燥運転が開始されると、第2熱交換器27Bの入口温度と比べて顕著に上昇し続ける傾向にある(
図3参照)。そのため、これらの温度に着目することによって、フィルタF2の装着有無を正確に判断できる。
【0072】
そして、フィルタF2が空気循環路20内に無いと制御部30が判断した場合には、報知部38が、フィルタF2が空気循環路20内に無いことを報知する(ステップS4及びS15)。これにより、使用者に、空気循環路20へのフィルタF2の装着を促すことができる。
【0073】
前述したように、洗濯乾燥機1では、フィルタF2が空気循環路20に装着された状態で乾燥運転が開始されると、循環する空気が熱交換器27によって繰り返し加熱されることによって、洗濯槽3内の空気の温度が上昇し続ける(
図3参照)。これにより、乾燥運転開始から所定時間経過後の空気の温度、又は、当該温度の上昇度合いが所定の閾値以上になる。
【0074】
そこで、制御部30は、以上のように冷媒の温度の変化特性を利用する場合のフィルタ検出処理に加えて、洗濯槽3内の空気の変化特性を利用したフィルタ検出処理も実行してもよい。洗濯槽3内の空気の変化特性を利用したフィルタ検出処理として、制御部30は、ステップS1~S4又はステップS11~S15の処理を実行するが、ステップS1やS11における所定時間や、ステップS3やS14における閾値は、外槽7の出口温度や入口温度の変化特性から得られる値に設定される。当該所定時間の一例として、例えば20分が設定される。ステップS14における閾値の一例として、例えば1度/分が設定される。
【0075】
このように、乾燥運転開始から所定時間経過後に空気温度測定部36が測定した温度、又は、当該温度の上昇度合いΔtが所定の閾値未満である場合にも、制御部30は、フィルタF2が空気循環路20内に無いと判断してもよい。このようにヒートポンプ25の冷媒の温度だけでなく洗濯槽3内の空気の温度にも着目することにより、フィルタF2の装着有無を低コストで判断できる。
【0076】
空気循環路20内にフィルタF2が無い場合には、空気循環路20内における空気の抵抗が下がるので、送風部21のモータ21Bの電流値が増加する傾向にある。そこで、制御部30は、このようなモータ21Bの電流特性を利用したフィルタ検出処理を、第3実施例に係るフィルタ検出処理として実行してもよい。
【0077】
図7は、乾燥運転中における第3実施例に係るフィルタ検出処理を示すフローチャートである。例えば10分という所定時間が乾燥運転開始から経過すると、モータ21Bの回転数が例えば5000rpmで安定する。その場合(ステップS21でYES)、制御部30は、引き続き作動中のモータ21Bの電流値を電流計37によって測定する(ステップS22)。この測定値が、例えば290mAという閾値未満であれば(ステップS23でNO)、制御部30は、空気循環路20内にフィルタF2が有ると判断してフィルタ検出処理を終了し、乾燥運転を継続する。一方、この測定値が閾値以上であれば(ステップS23でYES)、制御部30は、空気循環路20内にフィルタF2が無いと判断して、空気循環路20内にフィルタF2が無いことを報知部38によって報知する(ステップS24)。そして、制御部30は、フィルタ検出処理を終了して乾燥運転を継続する。
【0078】
図8は、乾燥運転を示すフローチャートである。制御部30は、乾燥運転中において、前述した第1実施例及び第2実施例の少なくともいずれかに係るフィルタ検出処理を実行するが、第3実施例に係るフィルタ検出処理も並行して実行してもよい(ステップS31)。制御部30は、フィルタ検出処理において空気循環路20内にフィルタF2が無いと判断した場合には(ステップS32でYES)、乾燥運転を延長するための延長処理を実行する(ステップS33)。延長処理の一例として、制御部30は、乾燥運転の運転時間そのものを、当初設定された運転時間から例えば30分延長する。当初の運転時間は、洗濯運転の開始時などにおいて、洗濯物Lの量に応じて設定される。
【0079】
延長処理の一例として、制御部30は、洗濯物Lの乾燥終了を判断できる乾燥終了判断基準温度を変更する。乾燥終了判断基準温度として、外槽7の出口温度についてのハイリミッタ温度や、外槽7の出口温度と外槽7の入口温度との差についての温度差判定温度を挙げることができる。外槽7の出口温度がハイリミッタ温度まで上昇したり、外槽7の出口温度と外槽7の入口温度との差が温度差判定温度まで小さくなったりすると、洗濯物Lの乾燥終了を判断できる。延長処理の一例として、制御部30は、ハイリミッタ温度を、当初のハイリミッタ温度から例えば3度高くしたり、温度差判定温度を、当初の温度差判定温度から例えば3度低くしたりする。当初の温度差判定温度は、洗濯運転の開始時などにおいて、洗濯物Lの量に応じて設定される。このように延長処理によって乾燥終了判断基準温度が変更されると、乾燥運転の運転時間が実質的に延長される。
【0080】
そして、延長処理の有無にかかわらず、運転終了条件が満たされた場合には(ステップS34でYES)、制御部39は、乾燥運転を終了する。運転終了条件が満たされた場合とは、運転時間が経過した場合や、外槽7の出口温度がハイリミッタ温度まで上昇した場合や、外槽7の出口温度と外槽7の入口温度との差が温度差判定温度まで小さくなった場合である。
【0081】
このように、制御部30は、フィルタF2が空気循環路20内に無いと判断した場合には(ステップS32でYES)、乾燥運転を延長する(ステップS33)。そのため、フィルタF2が空気循環路20内に無いことによって洗濯槽3内の洗濯物Lが乾燥しにくい場合でも、洗濯物Lを最後まで乾燥させることができる。
【0082】
この発明は、以上に説明した実施形態に限定されるものではなく、請求項に記載の範囲内において種々の変更が可能である。
【0083】
例えば、フィルタF1を備えたフィルタユニット22、フィルタF1のメンテナンスに関する分岐路23及び注水弁24(
図1参照)が省略されてもよい。
【0084】
前述した実施形態では、フィルタF2が空気循環路20内にあるか否かが主に冷媒の温度に基いて検出される。フィルタF2が空気循環路20内にあっても、前述した装着位置にフィルタF2があるか否かに応じて冷媒の温度の変化特性が顕著に異なる場合には、空気循環路20内のフィルタF2が装着位置にあるか否が冷媒の温度に基いて検出されてもよい。これにより、フィルタF2が空気循環路20に正しく装着されたか否かを判断することができ、必要に応じて、報知部38による報知によってフィルタF2の装着し直しを使用者に促すことができる。
【0085】
前述した実施形態では、メインのフィルタ検出処理として、冷媒の温度に基いたフィルタ検出処理が実行される。これとは別に、洗濯槽3内の空気の温度に基いたフィルタ検出処理や、送風部21のモータ21Bの電流値に基いた第3実施例に係るフィルタ検出処理がメインのフィルタ検出処理として単独で実行されてもよい。
【0086】
また、前述した実施形態におけるドラム式の洗濯乾燥機1では、軸線Jが水平方向Hに対して傾斜するように洗濯槽3が配置されてもよい。また、洗濯乾燥機1は、軸線Jが縦に延びる縦型の洗濯乾燥機であってもよい。
【符号の説明】
【0087】
1 洗濯乾燥機
2 筐体
2E 第2着脱口
3 洗濯槽
20 空気循環路
20D 取出口
20E 戻し口
20G 第1着脱口
21 送風部
25 ヒートポンプ
26 コンプレッサ
27 熱交換器
27A 第1熱交換器
27B 第2熱交換器
27F 流路
28 冷媒循環路
28A 吐出路
28B 戻し路
30 制御部
31 第1扉
32 第2扉
35 冷媒温度測定部
36 空気温度測定部
38 報知部
F2 フィルタ
L 洗濯物