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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】管理装置、及び車両用電源システム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240510BHJP
   H01M 10/48 20060101ALI20240510BHJP
   H01M 10/42 20060101ALI20240510BHJP
   H01M 10/44 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H02J7/00 B
H02J7/00 P
H02J7/00 Y
H01M10/48 P
H01M10/48 301
H01M10/42 P
H01M10/44 P
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021530549
(86)(22)【出願日】2020-06-15
(86)【国際出願番号】 JP2020023321
(87)【国際公開番号】W WO2021005969
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-03-02
(31)【優先権主張番号】P 2019127690
(32)【優先日】2019-07-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】314012076
【氏名又は名称】パナソニックIPマネジメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100123102
【弁理士】
【氏名又は名称】宗田 悟志
(72)【発明者】
【氏名】楊 長輝
(72)【発明者】
【氏名】松田 昂
【審査官】高野 誠治
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/133017(WO,A1)
【文献】特開2018-029430(JP,A)
【文献】特開2016-167368(JP,A)
【文献】特開2019-091565(JP,A)
【文献】特開2017-050126(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00 - 7/12
H02J 7/34 - 7/36
H01M 10/42 -10/48
B60L 1/00 - 3/12
B60L 7/00 -13/00
B60L 15/00 -58/40
G01R 31/36 -31/396
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
二次電池の電流、温度の少なくとも1つを測定する測定部と、
前記測定部により測定された値を前記二次電池の使用履歴として蓄積する保持部と、
前記二次電池のSOC(State Of Charge)の使用範囲を拡大するとき、前記SOCの使用範囲の上限値を上げるか下限値を下げて、前記SOCの使用範囲を拡大する制御部と、を備え、
前記制御部は、
前記二次電池のSOCの使用範囲と電流レートに応じたサイクル劣化速度を規定したサイクル劣化特性と、前記二次電池のSOCと温度に応じた保存劣化速度を規定した保存劣化特性の少なくとも一方と、前記二次電池の使用履歴に基づく前記二次電池の代表的な使用条件をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げるか下限値を下げるか、前記二次電池の劣化速度の上昇分が少ない方に、決定することを特徴とする管理装置。
【請求項2】
前記制御部は、
前記二次電池のSOCの使用範囲と充電電流の電流レートに応じた充電時のサイクル劣化速度を規定した充電サイクル劣化特性と、前記二次電池の使用履歴に基づく前記二次電池の代表的な充電電流をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げた場合と下限値を下げた場合の充電時のサイクル劣化速度の上昇分をそれぞれ導出し、
前記二次電池のSOCの使用範囲と放電電流の電流レートに応じた放電時のサイクル劣化速度を規定した放電サイクル劣化特性と、前記二次電池の使用履歴に基づく前記二次電池の代表的な放電電流をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げた場合と下限値を下げた場合の放電時のサイクル劣化速度の上昇分をそれぞれ導出し、
前記SOCの使用範囲の上限値を上げるか下限値を下げるか、前記充電時のサイクル劣化速度の上昇分と前記放電時のサイクル劣化速度の上昇分の合計が少ない方に、決定することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項3】
前記制御部は、
前記二次電池のSOCの使用範囲と充電電流の電流レートに応じた充電時のサイクル劣化速度を規定した充電サイクル劣化特性と、前記二次電池の使用履歴に基づく前記二次電池の代表的な充電電流をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げた場合と下限値を下げた場合の充電時のサイクル劣化速度の上昇分をそれぞれ導出し、
前記二次電池のSOCの使用範囲と放電電流の電流レートに応じた放電時のサイクル劣化速度を規定した放電サイクル劣化特性と、前記二次電池の使用履歴に基づく前記二次電池の代表的な放電電流をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げた場合と下限値を下げた場合の放電時のサイクル劣化速度の上昇分をそれぞれ導出し、
前記保存劣化特性と、前記二次電池の使用履歴に基づく前記二次電池の代表的な温度をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げた場合と下限値を下げた場合の保存劣化速度の上昇分をそれぞれ導出し、
前記SOCの使用範囲の上限値を上げるか下限値を下げるか、前記充電時のサイクル劣化速度の上昇分と前記放電時のサイクル劣化速度の上昇分と前記保存劣化速度の上昇分の合計が少ない方に、決定することを特徴とする請求項1に記載の管理装置。
【請求項4】
前記制御部は、
前記SOCの使用範囲の上限値または下限値を所定のステップ幅で変更し、前記二次電池のSOCの使用範囲の増加分が目標値に到達すると、前記SOCの使用範囲の上限値または下限値の変更を終了することを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載の管理装置。
【請求項5】
電動車両に搭載される二次電池と、
前記二次電池を管理する請求項1から4のいずれか1項に記載の管理装置と、
を備えることを特徴とする車両用電源システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、二次電池を管理する管理装置、及び車両用電源システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ハイブリッド車(HV)、プラグインハイブリッド車(PHV)、電気自動車(EV)が普及してきている。これらの電動車両にはキーデバイスとして、二次電池が搭載される。
【0003】
電動車両に搭載する二次電池では、劣化抑制のため、SOC(State Of Charge)の使用範囲に制限(例えば、20~80%に制限)が設けられることが多い。二次電池の劣化により二次電池の満充電容量が減少してくると、必要な距離を走行するのに電池容量が不足してくる場合が発生する。その場合、SOCの使用範囲を見直して、SOCの使用範囲を拡大する必要がある。しかしながら、SOCの使用範囲の拡大により、劣化の進行速度が加速してしまうことがある。
【0004】
これに対して、二次電池の劣化度を推定し、二次電池の劣化度を補正要因として、SOCの使用範囲の上限値または下限値を調整する手法が提案されている。例えば、二次電池の使用履歴から二次電池の劣化度を推定し、推定した劣化度が、事前に設定された劣化度を下回る場合、SOCの使用範囲の上限値を上昇させる手法が提案されている(例えば、特許文献1参照)。また、二次電池の使用履歴から二次電池のシフトロスを推定し、推定したシフトロスから正極の下限電圧の変化量を計算し、計算した正極の下限電圧の変化量に応じて、SOCの使用範囲の下限値を減少させる手法が提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2018-29430号公報
【文献】特開2016-167368号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、いずれの手法も走行性能を優先し、二次電池の劣化抑制の観点では不十分な制御であった。
【0007】
本開示はこうした状況に鑑みなされたものであり、その目的は、必要な容量を確保しつつ、二次電池の劣化を最適に抑制する技術を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、本開示のある態様の管理装置は、二次電池の電流、温度の少なくとも1つを測定する測定部と、測定部により測定された値を二次電池の使用履歴として蓄積する保持部と、二次電池のSOCの使用範囲を拡大するとき、SOCの使用範囲の上限値を上げるか下限値を下げて、SOCの使用範囲を拡大する制御部と、を備える。制御部は、二次電池のSOCの使用範囲と電流レートに応じたサイクル劣化速度を規定したサイクル劣化特性と、二次電池のSOCと温度に応じた保存劣化速度を規定した保存劣化特性の少なくとも一方と、二次電池の使用履歴に基づく二次電池の代表的な使用条件をもとに、SOCの使用範囲の上限値を上げるか下限値を下げるか、二次電池の劣化速度の上昇分が少ない方に、決定する。
【0009】
なお、以上の構成要素の任意の組み合わせ、本開示の表現を方法、装置、システムなどの間で変換したものもまた、本発明の態様として有効である。
【発明の効果】
【0010】
本開示によれば、必要な容量を確保しつつ、二次電池の劣化を最適に抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】実施の形態に係る電動車両の概略構成を示す図である。
図2図1に示した電動車両の電源システムの詳細な構成を説明するための図である。
図3図3(a)-(b)は、サイクル劣化特性マップの一例を示す図である。
図4】保存劣化特性マップの一例を示す図である。
図5】実施の形態に係る管理部による、セルのSOCの使用範囲の拡大処理の流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
図1は、実施の形態に係る電動車両1の概略構成を示す図である。図1に示す電動車両1は、一対の前輪2f、一対の後輪2r、動力源としてのモータ5を備える後輪駆動(2WD)の電気自動車(EV)である。一対の前輪2fは前輪軸3fで連結され、一対の後輪2rは後輪軸3rで連結される。変速機4は、モータ5の回転を所定の変換比で後輪軸3rに伝達する。
【0013】
車両制御部20は電動車両1全体を制御する車両ECU(Electronic Control Unit)であり、例えば、統合型のVCM(Vehicle Control Module)で構成されていてもよい。
車両制御部20には、電動車両1内の各種センサから電動車両1の状態を示す各種の検出情報が入力される。各種センサとして図1では、車速センサ31、GPSセンサ32及びジャイロセンサ33を備えている。
【0014】
車速センサ31は、前輪軸3fまたは後輪軸3rの回転数に比例したパルス信号を発生させ、発生させたパルス信号を車両制御部20に送信する。車両制御部20は、車速センサ31から受信したパルス信号をもとに電動車両1の速度を検出する。
【0015】
GPSセンサ32は、電動車両1の位置情報を検出し、検出した位置情報を車両制御部20に送信する。GPSセンサ32は具体的には、複数のGPS衛星から、それぞれの発信時刻を含む電波をそれぞれ受信し、受信した複数の電波にそれぞれ含まれる複数の発信時刻をもとに受信地点の緯度経度を算出する。
【0016】
ジャイロセンサ33は、電動車両1の角速度を検出し、検出した角速度を車両制御部20に送信する。車両制御部20は、ジャイロセンサ33から受信した角速度を積分して、電動車両1の傾斜角を検出することができる。
【0017】
無線通信部34は、インターネット上の各種サーバ、路側機、他の車両などと無線通信を行う。無線通信網として、例えば、携帯電話網(セルラー網)、無線LAN、ETC(Electronic Toll Collection System)、DSRC(Dedicated Short Range Communications)、V2I(Vehicle-to-Infrastructure)、V2V(Vehicle-to-Vehicle)を使用することができる。
【0018】
図2は、図1に示した電動車両1の電源システム10の詳細な構成を説明するための図である。電源システム10は、リレーRY1及びインバータ6を介してモータ5に接続される。インバータ6は力行時、電源システム10から供給される直流電力を交流電力に変換してモータ5に供給する。回生時、モータ5から供給される交流電力を直流電力に変換して電源システム10に供給する。モータ5は三相交流モータであり、力行時、インバータ6から供給される交流電力に応じて回転する。回生時、減速による回転エネルギーを交流電力に変換してインバータ6に供給する。
【0019】
リレーRY1は、電源システム10とインバータ6を繋ぐ配線間に挿入されるコンタクタである。車両制御部20は、走行時、リレーRY1をオン状態(閉状態)に制御し、電源システム10と電動車両1の動力系を電気的に接続する。車両制御部20は非走行時、原則としてリレーRY1をオフ状態(開状態)に制御し、電源システム10と電動車両1の動力系を電気的に遮断する。なおリレーの代わりに、半導体スイッチなどの他の種類のスイッチを用いてもよい。
【0020】
電源システム10は、電池モジュール11と管理部12を備え、電池モジュール11は、直列接続された複数のセルE1-Enを含む。セルには、リチウムイオン電池セル、ニッケル水素電池セル、鉛電池セル等を用いることができる。以下、本明細書ではリチウムイオン電池セル(公称電圧:3.6-3.7V)を使用する例を想定する。セルE1-Enの直列数は、モータ5の駆動電圧に応じて決定される。
【0021】
複数のセルE1-Enと直列にシャント抵抗Rsが接続される。シャント抵抗Rsは電流検出素子として機能する。なおシャント抵抗Rsの代わりにホール素子を用いてもよい。また電池モジュール11内に、複数のセルE1-Enの温度を検出するための複数の温度センサT1、T2が設置される。温度センサは各蓄電モジュールに1つ設置されてもよいし、複数のセルごとに1つ設置されてもよい。温度センサT1、T2には例えば、サーミスタを使用することができる。
【0022】
管理部12は、電圧測定部13、温度測定部14、電流測定部15及び制御部16を備える。直列接続された複数のセルE1-Enの各ノードと、電圧測定部13との間は複数の電圧線で接続される。電圧測定部13は、隣接する2本の電圧線間の電圧をそれぞれ測定することにより、各セルE1-Enの電圧を測定する。電圧測定部13は、測定した各セルE1-Enの電圧を制御部16に送信する。
【0023】
電圧測定部13は制御部16に対して高圧であるため、電圧測定部13と制御部16間は絶縁された状態で、通信線で接続される。電圧測定部13は、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)または汎用のアナログフロントエンドICで構成することができる。電圧測定部13はマルチプレクサ及びA/D変換器を含む。マルチプレクサは、隣接する2本の電圧線間の電圧を上から順番にA/D変換器に出力する。A/D変換器は、マルチプレクサから入力されるアナログ電圧をデジタル値に変換する。
【0024】
温度測定部14は分圧抵抗およびA/D変換器を含む。A/D変換器は、複数の温度センサT1、T2と複数の分圧抵抗によりそれぞれ分圧された複数のアナログ電圧を順次、デジタル値に変換して制御部16に出力する。制御部16は当該デジタル値をもとに複数のセルE1-Enの温度を推定する。例えば制御部16は、各セルE1-Enの温度を、各セルE1-Enに最も隣接する温度センサで測定された値をもとに推定する。
【0025】
電流測定部15は差動アンプ及びA/D変換器を含む。差動アンプはシャント抵抗Rsの両端電圧を増幅してA/D変換器に出力する。A/D変換器は、差動アンプから入力されるアナログ電圧をデジタル値に変換して制御部16に出力する。制御部16は当該デジタル値をもとに複数のセルE1-Enに流れる電流を推定する。
【0026】
なお制御部16内にA/D変換器が搭載されており、制御部16にアナログ入力ポートが設置されている場合、温度測定部14及び電流測定部15はアナログ電圧を制御部16に出力し、制御部16内のA/D変換器でデジタル値に変換してもよい。
【0027】
制御部16は、電圧測定部13、温度測定部14及び電流測定部15により測定された複数のセルE1-Enの電圧、温度、及び電流をもとに複数のセルE1-Enの状態を管理する。制御部16と車両制御部20間は、車載ネットワークにより接続される。車載ネットワークとして例えば、CAN(Controller Area Network)やLIN(Local Interconnect Network)を使用することができる。
【0028】
制御部16は、複数のセルE1-EnのそれぞれのSOC及びSOH(State Of Health)を推定する。制御部16は、OCV(Open Circuit Voltage)法と電流積算法を組み合わせて、SOCを推定する。OCV法は、電圧測定部13により測定される各セルE1-EnのOCVと、SOC-OCVカーブをもとにSOCを推定する方法である。電流積算法は、各セルE1-Enの充放電開始時のOCVと、電流測定部15により測定される電流の積算値をもとにSOCを推定する方法である。電流積算法は、充放電時間が長くなるにつれて、電流測定部15の測定誤差が累積していく。従って、OCV法により推定されたSOCを用いて、電流積算法により推定されたSOCを補正する必要がある。
【0029】
SOHは、初期のFCC(Full Charge Capacity)に対する現在のFCCの比率で規定され、数値が低いほど(0%に近いほど)劣化が進行していることを示す。SOHは、完全充放電による容量測定により求めてもよいし、保存劣化とサイクル劣化を合算することにより求めてもよい。
【0030】
またSOHは、セルの内部抵抗との相関関係をもとに推定することもできる。内部抵抗は、セルに所定の電流を所定時間流した際に発生する電圧降下を、当該電流値で割ることにより推定することができる。内部抵抗は温度が上がるほど低下する関係にあり、SOHが低下するほど増加する関係にある。
【0031】
制御部16はマイクロコンピュータ及び不揮発メモリ(例えば、EEPROM(Electrically Erasable Programmable Read-Only Memory)、フラッシュメモリ)により構成することができる。不揮発メモリ内に、劣化特性マップ16a及び使用履歴保持部16bが構築される。劣化特性マップ16aは、充電サイクル劣化特性マップ、放電サイクル劣化マップ、及び保存劣化特性マップを含む。
【0032】
なお、制御部16の一部の機能はクラウドサーバ上で実行してもよい。例えば、劣化特性マップ16a及び使用履歴保持部16bはクラウドサーバに構築されてもよい。クラウドサーバは、電動車両1の制御部16と無線通信で接続され、セルE1-Enの使用履歴を制御部16から収集する。またクラウドサーバは、各種制御用の計算結果を制御部16にフィードバックする。
【0033】
サイクル劣化は、充放電の回数が増えるにつれ進行する劣化である。サイクル劣化は主に、活物質の膨張または収縮による割れや剥離などに起因して発生する。サイクル劣化は、使用するSOC範囲、温度、電流レートに依存する。一般的に、使用するSOC範囲が広いほど、また温度が高いほど、また電流レートが高いほど、サイクル劣化速度は増加する。
【0034】
保存劣化は、二次電池の各時点における温度、各時点におけるSOCに応じて経時的に進行する劣化である。充放電中であるか否かを問わず時間経過とともに進行する。保存劣化は主に、負極に被膜(SEI(Solid Electrolyte Interphase)膜)が形成されることに起因して発生する。保存劣化は、各時点におけるSOCと温度に依存する。一般的に、各時点におけるSOCが高いほど、また各時点における温度が高いほど、保存劣化速度は増加する。
【0035】
サイクル劣化速度および保存劣化速度は、電池メーカによる実験やシミュレーションにより、二次電池の製品ごとに予め導出される。
【0036】
図3(a)-(b)は、サイクル劣化特性マップの一例を示す図である。図3(a)は充電サイクル劣化特性マップの一例を示し、図3(b)は放電サイクル劣化特性マップの一例を示している。横軸はSOC[%]の使用範囲を示す。図3(a)-(b)において、各SOCの値は、10%の使用範囲の下限値を示している。例えば、SOC10%はSOCが10~20%の範囲で充放電すること、SOC11%はSOCが11~21%の範囲で充放電することを示している。縦軸はサイクル劣化速度[%/√Ah]を示している。サイクル劣化は、アンペア時(Ah)の0.5乗則(平方根)で進行することが知られている。
【0037】
図3(a)-(b)では簡略化のため、0.1Cと0.8Cの2種類の電流レートに対するサイクル劣化特性しか描いていないが、実際には多数の電流レートに対するサイクル劣化特性が生成される。充電時は、図3(a)に示すようにSOCの使用範囲が低い領域と高い領域でサイクル劣化速度が増加することが分かる。放電時は、図3(b)に示すようにSOCの使用範囲が低い領域でサイクル劣化速度が増加することが分かる。
【0038】
またサイクル劣化特性は、電流レートほどの寄与はないが温度の影響も受ける。したがってサイクル劣化速度の推定精度を上げるには、複数の電流レートと複数の温度の二次元の組み合わせにごとに、SOC使用範囲とサイクル劣化速度の関係を規定したサイクル劣化特性を用意することが好ましい。一方、簡易的なサイクル劣化特性マップを生成する場合、温度は常温とみなし、複数の電流レートごとのサイクル劣化特性を用意するだけでよい。
【0039】
なおサイクル劣化特性は、マップではなく、SOC使用範囲と電流レートと温度を説明変数とし、サイクル劣化速度を目的変数とするサイクル劣化特性モデル(関数)で定義されてもよい。なお温度は定数であってもよい。
【0040】
図4は、保存劣化特性マップの一例を示す図である。横軸はSOC[%]を示し、縦軸は保存劣化速度[%/√h]を示している。保存劣化は、時間h(hour)の0.5乗則(平方根)で進行することが知られている。
【0041】
図4では簡略化のため、25℃と45℃の2種類の温度に対する保存劣化特性しか描いていないが、実際には多数の温度に対する保存劣化特性が生成される。なお保存劣化特性は、マップではなく、SOCと温度を説明変数とし、保存劣化速度を目的変数とする保存劣化特性モデル(関数)で定義されてもよい。
【0042】
図2に戻る。使用履歴保持部16bは、各セルE1-Enの使用履歴を蓄積する。例えば、各セルE1-Enに流れる電流と、各セルE1-Enの温度をヒストグラムで記録する。なお電流は充電と放電に分けてヒストグラムを生成することが好ましい。また各セルE1-Enの電圧またはSOCの履歴を蓄積してもよい。
【0043】
また制御部16は、不揮発メモリ(例えば、EEPROM)内に、セルのSOCの使用範囲の設定値を保持する。SOCの使用範囲は、使用範囲の下限値と上限値(SOC_l,SOC_h)で規定される。出荷時は例えば、(20,80)に設定される。
【0044】
セルの容量は劣化とともに減少するため、セルが劣化してくると電動車両1の走行可能距離が短くなってくる。電動車両1が業務用の車両(例えば、配送車両、タクシー)である場合、1日の業務に必要な走行距離を確保するための容量を、業務開始前に電池モジュール11内に充電する必要がある。電池モジュール11に充電可能な容量が、必要な走行距離に対応する容量に満たない場合、SOCの使用範囲を拡大して、電池モジュール11に充電可能な容量を増加させる必要がある。
【0045】
図5は、実施の形態に係る管理部12による、セルのSOCの使用範囲の拡大処理の流れを示すフローチャートである。制御部16は不揮発メモリ内から、セルのSOC使用範囲の下限値と上限値(SOC_l,SOC_h)を取得する。また制御部16は、使用範囲を拡大すべきSOCの値(ΔSOC)を取得する(S10)。拡大すべきSOCの値(ΔSOC)は、追加する必要がある容量を、現在の満充電容量(FCC)で割ることにより算出することができる。現在の満充電容量(FCC)は、初期の満充電容量(FCC)に劣化度(SOH)を掛けることにより算出することができる。
【0046】
追加する必要がある容量は、上述した業務用の車両の例では、1日の業務に必要な走行距離を確保するための容量と、現在のSOCの使用範囲で供給可能な容量との差分(不足分)になる。自家用車の場合、追加する必要がある容量は任意の値に設定できる。例えば、電池モジュール11の使用から数年経過後(例えば2年経過後)に、予め設定された値を追加する処理でもよい。
【0047】
制御部16は、使用履歴保持部16b内のセルの使用履歴から、代表放電電流と代表充電電流を取得する(S11)。制御部16は、セルの放電電流のヒストグラムから最も使用頻度が高い電流区間の中央値を代表放電電流に設定し、セルの充電電流のヒストグラムから最も使用頻度が高い電流区間の中央値を代表充電電流に設定する。なお、代表放電電流と代表充電電流の決め方は当該方法に限るものではない。例えば、放電電流の複数の履歴値を加重平均(放電電流が流れた時間を係数とする)して代表放電電流を算出してもよいし、放電電流の複数の履歴値の中央値を代表放電電流に設定してもよい。代表充電電流についても同様である。
【0048】
制御部16は、取得した代表放電電流に対応する電流レートの放電サイクル劣化特性を、劣化特性マップ16aから取得する。制御部16は、取得した放電サイクル劣化特性と、現在のSOC使用範囲の下限値(SOC_l)をもとに、下限値(SOC_l)を単位ステップ(SOC_step)下げたときの放電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1dを算出する(S12)。本実施の形態では、単位ステップ(SOC_step)がSOC1%に設定されている例を想定している。なお、単位ステップ(SOC_step)の幅は1%に限定されるものではない。例えば、0.5%であってもよいし、2%であってもよい。なお、単位ステップは固定であっても可変であっても良い。
【0049】
制御部16は、取得した代表充電電流に対応する電流レートの充電サイクル劣化特性を、劣化特性マップ16aから取得する。制御部16は、取得した充電サイクル劣化特性と、現在のSOC使用範囲の下限値(SOC_l)をもとに、下限値(SOC_l)を単位ステップ(SOC_step)下げたときの充電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1cを算出する(S13)。
【0050】
制御部16は、取得した放電サイクル劣化特性と、現在のSOC使用範囲の上限値(SOC_h)をもとに、上限値(SOC_h)を単位ステップ(SOC_step)上げたときの放電サイクル劣化速度の上昇分ΔD2dを算出する(S14)。
【0051】
制御部16は、取得した充電サイクル劣化特性と、現在のSOC使用範囲の上限値(SOC_h)をもとに、上限値(SOC_h)を単位ステップ(SOC_step)上げたときの充電サイクル劣化速度の上昇分ΔD2cを算出する(S15)。
【0052】
制御部16は、算出した下限値(SOC_l)を下げたときの、放電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1dと充電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1cを加算して、下限値(SOC_l)を下げたときの劣化速度の上昇分ΔD1を算出する。また制御部16は、算出した上限値(SOC_h)を上げたときの、放電サイクル劣化速度の上昇分ΔD2dと充電サイクル劣化速度の上昇分ΔD2cを加算して、上限値(SOC_h)を上げたときの劣化速度の上昇分ΔD2を算出する(S16)。
【0053】
制御部16は、算出した下限値(SOC_l)を下げたときの劣化速度の上昇分ΔD1と、上限値(SOC_h)を上げたときの劣化速度の上昇分ΔD2を比較する(S17)。前者(ΔD1)が後者(ΔD2)以下の場合(S17のY)、制御部16は、現在の下限値(SOC_l)から単位ステップ(SOC_step)を引いて、新たな下限値(SOC_l)を生成する(S18)。前者(ΔD1)が後者(ΔD2)を超える場合(S17のN)、制御部16は、現在の上限値(SOC_h)に単位ステップ(SOC_step)を足して、新たな上限値(SOC_h)を生成する(S19)。
【0054】
制御部16は、拡大すべきSOCの値(ΔSOC)が0に到達したか否か判定する(S20)。0に到達していない場合(S20のN)、制御部16は、現在の拡大すべきSOCの値(ΔSOC)から単位ステップ(SOC_step)を引いて、新たな拡大すべきSOCの値(ΔSOC)を生成する(S21)。その後、ステップS12に遷移して、ステップS12以降の処理を繰り返し実行する。
【0055】
拡大すべきSOCの値(ΔSOC)が0に到達した場合(S20のY)、制御部16は、更新後のSOC使用範囲の下限値と上限値(SOC_l,SOC_h)を、新たな下限値と上限値(SOC_l,SOC_h)として、不揮発メモリ内に上書保存する(S22)。
【0056】
以上の処理をセルごとに行い、各セルのSOC使用範囲の下限値と上限値(SOC_l,SOC_h)を設定する。
【0057】
図5に示すフローチャートのステップS11では、制御部16は、使用履歴保持部16b内のセルの使用履歴から、代表放電電流と代表充電電流を取得した。この点、制御部16は、使用履歴保持部16b内のセルの使用履歴から、代表放電電流と代表充電電流に加えて、放電時の代表温度と充電時の代表温度を取得してもよい。制御部16は、セルの放電時の温度のヒストグラムから最も発生頻度が高い温度区間の中央値を放電時の代表温度に設定し、セルの充電時の温度のヒストグラムから最も発生頻度が高い温度区間の中央値を充電時の代表温度に設定する。なお、放電時の代表温度と充電時の代表温度の決め方は当該方法に限るものではない。例えば、放電時の温度の複数の履歴値を加重平均(各温度における放電時間を係数とする)して放電時の代表温度を算出してもよいし、放電時の温度の複数の履歴値の中央値を放電時の代表温度に設定してもよい。充電時の代表温度についても同様である。
【0058】
ステップS12では、制御部16は、取得した代表放電電流に対応する電流レートと、放電時の代表温度の組み合わせに対応する放電サイクル劣化特性を劣化特性マップ16aから取得する。ステップS13では、制御部16は、取得した代表充電電流に対応する電流レートと、充電時の代表温度の組み合わせに対応する充電サイクル劣化特性を劣化特性マップ16aから取得する。
【0059】
また、図5に示すフローチャートのステップS12-ステップS14では、下限値(SOC_l)を単位ステップ(SOC_step)下げたときの放電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1dと充電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1cと、上限値(SOC_h)を単位ステップ(SOC_step)上げたときの放電サイクル劣化速度の上昇分ΔD2dと充電サイクル劣化速度の上昇分ΔD2cを算出した。この点、下限値(SOC_l)を単位ステップ(SOC_step)下げたときの保存劣化速度の上昇分ΔD1sと、上限値(SOC_h)を単位ステップ(SOC_step)上げたときの保存劣化速度の上昇分ΔD2sを追加で算出してもよい。
【0060】
この場合、制御部16は、代表温度に対応する保存劣化特性を劣化特性マップ16aから取得する。代表温度には、セルの使用期間全体の代表温度を使用する。制御部16は、取得した保存劣化特性と、現在のSOC使用範囲の下限値(SOC_l)をもとに、下限値(SOC_l)を単位ステップ(SOC_step)下げたときの保存劣化速度の上昇分ΔD1sを算出する。同様に制御部16は、取得した保存劣化特性と、現在のSOC使用範囲の上限値(SOC_h)をもとに、上限値(SOC_h)を単位ステップ(SOC_step)上げたときの保存劣化速度の上昇分ΔD2sを算出する。
【0061】
ステップS16において制御部16は、算出した下限値(SOC_l)を下げたときの、保存劣化速度の上昇分ΔD1sと放電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1dと充電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1cを加算して、下限値(SOC_l)を下げたときの劣化速度の上昇分ΔD1を算出する。また制御部16は、算出した上限値(SOC_h)を上げたときの、保存劣化速度の上昇分ΔD2sと放電サイクル劣化速度の上昇分ΔD2dと充電サイクル劣化速度の上昇分ΔD2cを加算して、上限値(SOC_h)を上げたときの劣化速度の上昇分ΔD2を算出する。
【0062】
なお、保存劣化速度の上昇分ΔD1s、ΔD2sに係数を掛けて、保存劣化速度の上昇分ΔD1s、ΔD2sの寄与度を調整してもよい。例えば、1日あたりの充放電期間が短い場合、1より大きい係数を掛けて、保存劣化速度の上昇分ΔD1s、ΔD2sの寄与度を大きくしてもよい。
【0063】
以上説明したように本実施の形態によれば、SOCの使用範囲を拡大する際、下限値を下げるか上限値を上げるか、劣化が少ないほうに単位ステップずつ拡大していく。これにより、電動車両1の必要な走行性能を達成しつつ、二次電池の劣化抑制効果を最大化することができる。業務用の車両の場合、必要な走行距離を確保しつつ、二次電池の劣化抑制効果を最大化することができる。上記特許文献1、2に記載された制御は、SOCの使用範囲を拡大する際、SOCの使用範囲を劣化が小さいほうへ選択的に拡張するものではなく、二次電池の劣化抑制が最適化されているとはいえない。
【0064】
以上、本開示を実施の形態をもとに説明した。実施の形態は例示であり、それらの各構成要素や各処理プロセスの組み合わせにいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本開示の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【0065】
上述した実施の形態では、下限値(SOC_l)を下げたときの劣化速度の上昇分ΔD1を、放電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1dと充電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1cの和、又は保存劣化速度の上昇分ΔD1sと放電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1dと充電サイクル劣化速度の上昇分ΔD1cの和により算出した。この点、下限値(SOC_l)を下げたときの劣化速度の上昇分ΔD1を、保存劣化速度の上昇分ΔD1sだけで特定してもよい。同様に上限値(SOC_h)を上げたときの劣化速度の上昇分ΔD2を、保存劣化速度の上昇分ΔD2sだけで特定してもよい。
【0066】
なお、実施の形態は、以下の項目によって特定されてもよい。
【0067】
[項目1]
二次電池(E1)の電流、温度の少なくとも1つを測定する測定部(15、14)と、
前記測定部(15、14)により測定された値を前記二次電池(E1)の使用履歴として蓄積する保持部(16b)と、
前記二次電池(E1)のSOCの使用範囲を拡大するとき、前記SOCの使用範囲の上限値を上げるか下限値を下げて、前記SOCの使用範囲を拡大する制御部(16)と、を備え、
前記制御部(16)は、
前記二次電池(E1)のSOCの使用範囲と電流レートに応じたサイクル劣化速度を規定したサイクル劣化特性と、前記二次電池(E1)のSOCと温度に応じた保存劣化速度を規定した保存劣化特性の少なくとも一方と、前記二次電池(E1)の使用履歴に基づく前記二次電池(E1)の代表的な使用条件をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げるか下限値を下げるか、前記二次電池(E1)の劣化速度の上昇分が少ない方に、決定することを特徴する管理装置(12)。
これによれば、二次電池(E)の劣化を最適に抑制しながら、二次電池(E1)のSOCの使用範囲を拡大することができる。
[項目2]
前記制御部(16)は、
前記二次電池(E1)のSOCの使用範囲と充電電流の電流レートに応じた充電時のサイクル劣化速度を規定した充電サイクル劣化特性と、前記二次電池(E1)の使用履歴に基づく前記二次電池(E1)の代表的な充電電流をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げた場合と下限値を下げた場合の充電時のサイクル劣化速度の上昇分をそれぞれ導出し、
前記二次電池(E1)のSOCの使用範囲と放電電流の電流レートに応じた放電時のサイクル劣化速度を規定した放電サイクル劣化特性と、前記二次電池(E1)の使用履歴に基づく前記二次電池(E1)の代表的な放電電流をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げた場合と下限値を下げた場合の放電時のサイクル劣化速度の上昇分をそれぞれ導出し、
前記SOCの使用範囲の上限値を上げるか下限値を下げるか、前記充電時のサイクル劣化速度の上昇分と前記放電時のサイクル劣化速度の上昇分の合計が少ない方に、決定することを特徴とする項目1に記載の管理装置(12)。
これによれば、二次電池(E)のサイクル劣化を最適に抑制しながら、二次電池(E1)のSOCの使用範囲を拡大することができる。
[項目3]
前記制御部(16)は、
前記二次電池(E1)のSOCの使用範囲と充電電流の電流レートに応じた充電時のサイクル劣化速度を規定した充電サイクル劣化特性と、前記二次電池(E1)の使用履歴に基づく前記二次電池(E1)の代表的な充電電流をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げた場合と下限値を下げた場合の充電時のサイクル劣化速度の上昇分をそれぞれ導出し、
前記二次電池(E1)のSOCの使用範囲と放電電流の電流レートに応じた放電時のサイクル劣化速度を規定した放電サイクル劣化特性と、前記二次電池(E1)の使用履歴に基づく前記二次電池(E1)の代表的な放電電流をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げた場合と下限値を下げた場合の放電時のサイクル劣化速度の上昇分をそれぞれ導出し、
前記保存劣化特性と、前記二次電池(E1)の使用履歴に基づく前記二次電池(E1)の代表的な温度をもとに、前記SOCの使用範囲の上限値を上げた場合と下限値を下げた場合の保存劣化速度の上昇分をそれぞれ導出し、
前記SOCの使用範囲の上限値を上げるか下限値を下げるか、前記充電時のサイクル劣化速度の上昇分と前記放電時のサイクル劣化速度の上昇分と前記保存劣化速度の上昇分の合計が少ない方に、決定することを特徴とする項目1に記載の管理装置(12)。
これによれば、二次電池(E)のサイクル劣化と保存劣化を最適に抑制しながら、二次電池(E1)のSOCの使用範囲を拡大することができる。
[項目4]
前記制御部(16)は、
前記SOCの使用範囲の上限値または下限値を所定のステップ幅で変更し、前記二次電池(E1)のSOCの使用範囲の増加分が目標値に到達すると、前記SOCの使用範囲の上限値または下限値の変更を終了することを特徴とする項目1から3のいずれか1項に記載の管理装置(12)。
これによれば、きめ細やかな制御により、SOCの使用範囲の拡大による劣化を最小限に抑えることができる。
[項目5]
電動車両(1)に搭載される二次電池(E1)と、
前記二次電池(E1)を管理する項目1から4のいずれか1項に記載の管理装置(12)と、
を備えることを特徴とする車両用電源システム(10)。
これによれば、二次電池(E)の劣化を最適に抑制しながら、二次電池(E1)のSOCの使用範囲を拡大することができる電動車両(3)を実現できる。
【符号の説明】
【0068】
1 電動車両、 2f 前輪、 2r 後輪、 3f 前輪軸、 3r 後輪軸、 4 変速機、 5 モータ、 6 インバータ、 10 電源システム、 11 電池モジュール、 12 管理部、 13 電圧測定部、 14 温度測定部、 15 電流測定部、 16 制御部、 16a 劣化特性マップ、 16b 使用履歴保持部、 E1-En セル、 Rs シャント抵抗、 T1,T2 温度センサ、 20 車両制御部、 31 車速センサ、 32 GPSセンサ、 33 ジャイロセンサ、 34 無線通信部、 RY1 リレー。
図1
図2
図3
図4
図5