(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】眼用保護シートおよびその使用方法
(51)【国際特許分類】
A61F 9/04 20060101AFI20240510BHJP
A61K 9/70 20060101ALI20240510BHJP
A61K 47/32 20060101ALI20240510BHJP
A61P 27/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61F9/04 305
A61K9/70
A61K47/32
A61P27/02
(21)【出願番号】P 2019192442
(22)【出願日】2019-10-23
【審査請求日】2022-10-19
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用 令和元年5月31日新大阪ワシントンホテルプラザにおいて開催された第42回日本顔面神経学会にて、「兎眼性角膜潰瘍に対する手術用手袋から作成したシートの応用」を公開。
(73)【特許権者】
【識別番号】519379259
【氏名又は名称】佐々木 香る
(74)【代理人】
【識別番号】100086380
【氏名又は名称】吉田 稔
(74)【代理人】
【識別番号】100103078
【氏名又は名称】田中 達也
(74)【代理人】
【識別番号】100130650
【氏名又は名称】鈴木 泰光
(74)【代理人】
【識別番号】100135389
【氏名又は名称】臼井 尚
(74)【代理人】
【識別番号】100168099
【氏名又は名称】鈴木 伸太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100168044
【氏名又は名称】小淵 景太
(74)【代理人】
【識別番号】100200609
【氏名又は名称】齊藤 智和
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 香る
(72)【発明者】
【氏名】吉村 彩野
(72)【発明者】
【氏名】五味 文
【審査官】小林 睦
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2018/003952(WO,A1)
【文献】特開2003-192580(JP,A)
【文献】特表2013-524867(JP,A)
【文献】特開平10-071169(JP,A)
【文献】特開2017-118941(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2005/0142172(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 9/04
A61K 9/70
A61K 47/32
A61P 27/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
眼およびその周囲を覆蓋するための眼用保護シートであって、
気・液不透過性を有するとともに滅菌処理がなされ、0.05~0.2mmの厚みを有するニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、またはクロロプレンゴムで形成することにより
、それ自体で眼の周囲の皮膚に密着可能な伸縮性および柔軟性が付与されて
おり、
眼およびその周囲を覆蓋した状態において、眼の周囲の皮膚に密着し、眼球の表面に接触させた眼用軟膏の漏出を防止することを特徴とする、眼用保護シート。
【請求項2】
表面はパウダーフリーである、請求項1に記載の眼用保護シート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼用保護シートおよびその使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば兎眼の治療にあたっては、瞼を開いたままの眼球の表面(角膜表面)に眼用軟膏が直接接触した状態をつくり、この状態を所定時間保持し、保湿状態を保つことが有効とされている。
【0003】
眼を覆って保護する用具として眼帯(例えば特許文献1参照)がある。このような眼帯は一般に通気性・通液性を有し、かつ眼の周囲に対する密着性に欠けるため、眼球に軟膏を触れさせた眼をこのような眼帯で覆っても、重力による軟膏の漏出のため、乾燥を防ぎながら眼球の表面に眼用軟膏が直接接触した状態を所要時間保持することは困難である。
【0004】
一方、食品用ラップフィルムを用い、眼球に軟膏を接触させた眼を覆うという方法が試行されることがある。しかしながら、食品用ラップフィルムは、そもそも医用を予定した滅菌処理がなされていないのでそのまま使用することは不適であるし、伸縮性および柔軟性が不足しているために眼の周囲に密着させることが困難であり、患者にとっても取扱い性に欠ける問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記した事情のもとで考え出されたものであって、取扱い性が良く、瞼を開いたままの眼球の表面に眼用軟膏が直接接触した状態を所要時間保持するのに適した眼用保護シートを提供することを主たる課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するため、本発明では、次の技術的手段を採用した。
【0008】
すなわち、本発明の第1の側面によって提供される眼用保護シートは、滅菌処理した所定厚みの合成ゴムからなることを特徴とする。
【0009】
好ましい実施の形態では、上記合成ゴムは、ニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、またはクロロプレンゴムである。
【0010】
好ましい実施の形態では、当該眼用保護シートは、0.05~0.2mmの厚みを有する。
【0011】
好ましい実施の形態では、当該眼用保護シートの表面はパウダーフリーである。
【0012】
本発明の第2の側面によって提供される眼用保護シートの使用方法は、上記本発明の第1の側面に係る眼用保護シートを用い、眼用軟膏を介して眼およびその周囲を覆蓋することを特徴とする。
【発明の効果】
【0013】
本発明者は、上記した課題を解決するために様々なシート材を用いて試行した結果、気・液不透過性を有し、適度な伸縮性と柔軟性を有しているために眼表面および眼の周りの皮膚への良好な密着性が確保でき、かつ滅菌処理が施されているとともにパウダーフリーであるという理由により、高度に清潔である手術用手袋を構成する合成ゴムシートが最適であるとの知見を得て本発明をするに至った。
【0014】
上記構成の眼用保護シートは、例えば0.05~0.2mmの厚みの薄状合成ゴムシートであるために、適度な伸縮性と柔軟性を有している。また、この保護シートは気・液不透過性を有している。そのため、眼球に直接接触させた眼用軟膏を覆うように眼の周囲にわたって付着させるとき、この保護シートは眼表面(角膜と結膜の表面、以下において同じ)を塞ぎ、かつ眼の周囲の皮膚に容易に密着させることができる。この状態において、眼用軟膏をその漏出を適切に防止して眼表面に滞留させ、保湿状態を長時間保持することができるとともに、この保護シートは滅菌処理されていることと相まって、雑菌が保護シートの内側の眼用軟膏ないしこれに覆われている眼球表面に浸入することを適切に防止することもできる。
【0015】
その結果、この眼用保護シートは、取扱い性が良く、瞼を開いたままの眼球の表面に眼用軟膏が直接接触した状態を所要時間保持するのに適したものとなる。
【0016】
本発明のその他の特徴および利点は、図面を参照して以下に行う詳細な説明から、より明らかとなろう。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明の一実施形態に係る眼用保護シートの平面図である。
【
図3】
図1に示す眼用保護シートの使用状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の好ましい実施の形態につき、図面を参照して具体的に説明する。
【0019】
図1は、本発明の一実施形態に係る眼用保護シートA1の平面図を、
図2は、
図1のII-II線に沿う断面図を、
図3は、当該眼用保護シートA1の使用状態を示す正面図を、
図4は、
図3のIV-IV線に沿う断面図を、それぞれ示す。
【0020】
この保護シートA1は、厚さ0.05~0.2mm、好ましくは厚さ0.05~0.1mmの合成ゴムシートからなり、例えば横4~5cm、縦3~4cmの略矩形に裁断されている。合成ゴムとしては、例えばニトリルゴム、スチレンブタジエンゴム、またはクロロプレンゴムが選択され、天然ゴムは、使用時に天然の有害物質の漏出の恐れがあるため採用されない。この保護シートA1の表面は滑らかであり、パウダーを付着させない、いわゆるパウダーフリーな表面とされる。さらには、この保護シートA1の表面は、手術用手袋に施されるのと同様の滅菌処理がなされている。
【0021】
この保護シートA1は、例えば次のようにして製造することができる。
【0022】
すなわち、所定粘度に調整した流動状態の合成ゴム液中に表面が滑らかな平板を浸漬した後に引き上げることによりこの平板表面に所定厚みの合成ゴム液膜を付着させ、この合成ゴム液膜を乾燥させた後平板から剥がすことにより合成ゴムシートを得る。そしてこの合成ゴムシートに所定の滅菌処理をした後に裁断して
図1に示す保護シートA1を得る。
【0023】
図3および
図4に示すように、この保護シートA1は、例えば、兎眼、すなわち、瞼が開いたままの眼の眼球aに眼用軟膏bを接触させ、この眼用軟膏bに蓋をするようにして、眼Bを覆うように付着させて使用する。この保護シートA1は、薄状合成ゴムシートであるために、適度な伸縮性と柔軟性を有しており、また、気・液不透過性を有している。そのため、眼球aに直接接触させた眼用軟膏bを覆うように眼Bの周囲にわたって付着させるとき、この保護シートA1は、眼表面を塞ぎ、かつ眼の周囲の皮膚cに、空気の迷入なく容易に密着させることができる。この状態において、眼用軟膏bをその漏出を適切に防止して眼表面に滞留させ、保湿状態を長時間保持することができ、乾燥による眼表面の障害の発生を適切に防止することができる。さらには、この保護シートA1は滅菌処理されていることから、雑菌が保護シートAの内側の眼用軟膏bないしこれに覆われている眼球aの表面に浸入することをも適切に防止することができる。
【0024】
兎眼患者にとって、角膜潰瘍等の進行を防止するためには、日常生活において、可能な限り、雑菌の侵入なく角膜を眼用軟膏で覆った保湿状態を保持することが有効であるが、本発明に係る眼用保護シートA1は、眼表面を塞ぎ、かつ眼の周囲に密着させた状態を容易に作り出すことができるため、兎眼患者にとって、日常での適切な使用が可能となる。
【0025】
もちろん、この発明は上記した実施形態に限定されるものではなく、各請求項に記載した事項の範囲内でのあらゆる変更は、すべて本発明の範囲に含まれる。
【0026】
本発明に係る保護シートA1の使用にあたっては、眼を覆うように付着させた保護シートA1を脱落防止のためにテープや眼帯でさらに覆ってもよい。
【0027】
また、製品化にあたっては、
図5および
図6に示すように、保護シートA1の片面における眼の周囲に接触する領域に滅菌処理した粘着剤層Aaを形成し、この粘着剤層Aaを含めた片面に離型紙Abを付着させておいてもよい。このような製品A2は、滅菌処理された密封袋に収容して提供することが適切である。
【0028】
使用にあたっては、密封袋から取り出し、離型紙を剥がした保護シートA1を上記のようにして予め眼用軟膏を眼球aに接触させた眼を覆うようにする。この場合、保護シートA1の外周領域が粘着剤層によって眼の周囲の皮膚に密着するので、眼用軟膏の漏出と雑菌の侵入をより確実に防止することができるとともに、保護シートA1の脱落を防ぐことができて脱落防止用のテープや眼帯の使用が不要となり、患者にとってより取扱いが便利になる。
【符号の説明】
【0029】
A1 眼用保護シート
A2 製品
Aa 粘着剤層
Ab 離型紙
B 眼
a 眼球
b 眼用軟膏
c 皮膚