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特許7486179バグフィルタ用筒状濾体及びバグフィルタ用筒状濾体の製造方法
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  • 特許-バグフィルタ用筒状濾体及びバグフィルタ用筒状濾体の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】バグフィルタ用筒状濾体及びバグフィルタ用筒状濾体の製造方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 46/02 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B01D46/02 Z
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2020162843
(22)【出願日】2020-09-29
(65)【公開番号】P2022055426
(43)【公開日】2022-04-08
【審査請求日】2023-06-30
(73)【特許権者】
【識別番号】505037648
【氏名又は名称】株式会社相模商会
(74)【代理人】
【識別番号】100088731
【弁理士】
【氏名又は名称】三井 孝夫
(72)【発明者】
【氏名】古尾谷 昌弘
(72)【発明者】
【氏名】斉藤 嘉一
【審査官】目代 博茂
(56)【参考文献】
【文献】特表平10-507968(JP,A)
【文献】特表2005-527347(JP,A)
【文献】登録実用新案第3079032(JP,U)
【文献】特開2007-237160(JP,A)
【文献】特開2012-223701(JP,A)
【文献】特開2019-042677(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106492626(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D46/00-46/90
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒形状の濾布と、
筒形状の内周に沿って間隔をおいて多数配置され、夫々が筒形状の長手方向に沿って延設され、濾布の局部的な補剛を行う補剛手段と、を具備して成り、円周方向に隣接する補剛手段間にお いて濾布は外周面側に自由ループ部を形成するようにされ
前記補剛手段により補剛される濾布の局部的な部位は半径内方に突出するよう濾布に形成される曲折部であり、
前記補剛手段は、曲折部において濾布対向面を密着維持させることにより曲折部の補剛を行うバグフィルタ用筒状濾体。
【請求項2】
請求項に記載の発明において、 前記補剛手段は、前記曲折部に外側より当てられる当布と、前記曲折部において濾布が対向面にて密接するように当布と曲折部とを縫着する縫着部とから成るバグフィルタ用筒状濾体。
【請求項3】
請求項1若しくは2に記載の一個の筒状濾体に口元部(セルプレート取付部を含む)及び底部を連接することにより構成されるバグフィルタであって、口元部及び底部以外のバグフィルタの長手方向の実質的全長において濾布は円周方向の継目を持たないバグフィルタ。
【請求項4】
請求項1に記載のバグフィルタ用筒状濾体のための濾布形成方法であって、筒形状の全周長をまかない得る幅を有した連続濾布のロールを準備し、
ロール からバグフィルタの実質的全長に相当する長さ分引き出し、切断することにより矩形の濾布切片に形成し、
夫々が前記濾布切片の長手方向に延設され、濾布切片の長手方向に沿った前記曲折部の形成部位に基準線をマーキングし、
マーキングされた基準線に沿って濾布の局部的な補剛を行うことよりなる方法。
【請求項5】
請求項に記載の発明において、濾布の局部的な補剛は、マーキングされた基準線に沿って濾布を筒形状の半径内方に突出するように曲折部を形成し、曲折部において濾布対向面を密着維持させることより成る方法。
【請求項6】
請求項に記載の発明において、補剛される濾布の局部的な部位は半径内方に突出するよう濾布に形成される曲折部であり、補剛は、該曲折部に外側より当布を当て、曲折部において濾布が対向面にて密接するように当布と曲折部とを縫着することより行われる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は焼却設備等における集塵装置に使用されるバグフィルタ筒状濾体用に関し、特に、集塵効率を高めつつバグフィルタの実質的全長(口元部及び底部における筒状濾体との接合部を除いたバグフィルタの全長部位)にわたり円周方向の継ぎ目無しに構成することが可能な長尺構造のバグフィルタとして適したバグフィルタ用筒状濾体の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
集塵装置において集塵効率を高めるため濾布をプリーツ形状等の所謂成形フィルタに構成することが行われる。プリーツ形状等の折り畳み構造とすることにより、同一径における表面積が相対的に大きくなり、その分集塵効率が高められる。濾布にプリーツ形状に賦形する技術としては、プリーツ加工機を使用するものが最も一般的であり、プリーツ加工機は濾布に対するプリーツ形状の賦形部を備える。プリーツ形状の恒久性確保は、濾布を構成するプラスチック素材の熱硬化性に依拠している(特許文献1)。
【0003】
また、プリーツ加工機に依拠しない濾布に対するプリーツ形状の賦形手段としては、本出願人と同一の出願人により縫着構造によるプリーツ形状の形成が提案されている(特許文献2)。濾布に対するプリーツ形状の恒久的な確保のためプリーツに沿った織布の対向面の縫着構造を提案している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第4384644号公報
【文献】特許第5748541号公報
【文献】特開2019-42677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1のプリーツ加工機によるものは、プリーツ形状の確保が素材の熱硬化性に依拠しているため、素材によってはプリーツ加工機によって得られたプリーツ形状の確保が困難なものがあり、例えば焼却炉用バグフィルタとして耐熱性が特に優れたPTFE(ポリテトラフルオロエチレン)素材の濾布等はプリーツ加工機によるプリーツ形状の賦形に適さない。
【0006】
他方、特許文献2の縫着構造はプリーツ形状に賦形された濾布のプリーツ部を縫着するもので、プリーツ形状を縫着により維持することができるため、PTFEの如きプリーツ加工機によるプリーツ形状の賦形に適さない素材においても強固なプリーツ形状を恒久的に維持することができる利点がある。しかしながら、特許文献2の方法においは濾布の内周及び外周における全てのプリーツ部において縫着を行う必要があり、縫着作業の手間が大きく作業コストが嵩んでしまう問題点がある。

【0007】
また、プリーツ成形機に依拠したプリーツ賦形は、濾布原反ロールから引き出される濾布をプリーツ成形機にかけるため、濾布原反の幅方向(バグフィルタとした場合における円周方向)にプリーツをかける(プリーツの折目方向は原反の幅方向となる)。そのため、プリーツ成形機を通した後に濾布を筒状としたときの個々の筒状濾体の長さは濾布原反の幅を超えることかできず、単体の筒状濾体長は原反ロールの幅相当の高々2m程度しか取り得ない。しかしながら、最近の大型の焼却炉ではバグフィルタ全長は7mにも及ぶものがあり、単体の筒状濾体を複数継足すことによりバグフィルタの必要な全長を得ていた。筒状濾体の継ぎ足しは作業的に複雑化するし、焼却設備の現場で行わざるを得ないため作業効率も良くなくコスト増の一因となっていた。
【0008】
この発明はかかる問題点に鑑みてなされたものであり、プリーツ成形機によるプリーツ形状の賦形がし難い素材について、プリーツ賦形された濾布との対比でもそれ程遜色ない濾過性能を持ち、かつ製造コストも抑制するできるバグフィルタ用筒状濾体の新規な構造を提供することを目的とする。
【0009】
また、本発明は濾布原反におけるロール幅の制限に関わらず、長尺のバグフィルタにおいても継ぎ足し無しに必要な濾長を得ることができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
この発明のバグフィルタ用筒状濾体は、
筒形状の濾布と、
筒形状の内周に沿って間隔をおいて多数配置され、夫々が筒形状の長手方向に沿って延設され、濾布の局部的な補剛を行う補剛手段と、
を具備して成り、円周方向に隣接する補剛手段間において濾布は外周面側に自由ループ部を形成するようにされる。
【0011】
補剛手段により補剛される濾布の局部的な部位は半径内方に突出するよう濾布に形成される曲折部であり、補剛手段により、曲折部において濾布対向面を密着維持させることにより曲折部の補剛を行うようにすることができる。 補剛手段は、濾布の曲折部に外側より当てられる当布と、曲折部において濾布が対向面にて密接維持するように当布と曲折部とを縫着する縫着部とから構成することができる。
【0012】
この発明のバグフィルタ用筒状濾体のための濾布形成方法は、
筒形状の全周長をまかない得る幅を有した濾布のロールを準備し、
ロール からバグフィルタの実質的全長に相当する長さ引き出し、切断することにより矩形の濾布切片に形成し、
夫々が前記濾布切片の長手方向に延設され、濾布切片の長手方向に沿った前記曲折部の形成部位に基準線をマーキングし、
マーキングされた基準線に沿って濾布の局部的な補剛を行う諸工程より構成される。
【0013】
濾布の局部的な補剛は、マーキングされた基準線に沿って濾布を筒形状の半径内方に突出するように曲折部を形成し、曲折部において濾布対向面を密着維持させることより行うことができる。また、曲折部の補剛工程は、該曲折部に外側より当布を当て、曲折部において濾布が対向面にて密接するように当布と曲折部とを縫着することより実施することができる。
【発明の効果】
【0014】
この発明によれば、被処理ガスとの接触のため、筒状濾体における、夫々が長手方向に延設され、かつ縫着等により補剛された補剛部間において濾布にフリーループ部を形成しており、プリーツ成形機によるプリーツ成形に依拠することなく、濾布の断面積若しくは断面長増大による被処理ガスとの接触面積の増大を得ることができる。
【0015】
補剛のための濾布曲折部の縫着等による補剛部の形成を筒状濾体の内周側のみで行っているため縫着等の補剛箇所の相対的な削減(特許文献2との対比)が得られ、濾過効率を確保しつつ製造コストの低減を実現することができる。
【0016】
また、筒状濾体(バグフィルタ)の長手方向を濾布原反ロールの引き出し方向としているため、原反ロールの幅方向にプリーツを形成する制約のあるプリーツ成形機によるプリーツ成形のとの対比で筒状濾体の長さがロール幅に限定されないため、大型焼却設備用の長大なバグフィルタであっても、原反ロールから引き出しカットされた一枚の濾布(切片)でバグフィルタの実質的全長を賄うことができ、即ち、長大なバグフィルタであっても筒状濾体の長手方向の継ぎ足しが必要なくなり、設備若しくは補修コストの低減を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1図1はこの発明の筒状濾体の横断面図(図5のI-I線に沿う矢視断面図)である。
図2図2は筒状濾体の製造過程において原反ロールからの濾布の引き出しを模式的に示す斜視図である。
図3図3は原反ロールから引き出された濾布に対する曲折部の形成のため濾布表面に描かれた基準マークを模式的に示す濾布の上面図である。
図4】濾布に対する曲折部の形成及び当布の縫着工程を説明する模式的な斜視図である。
図5図1図4の筒状濾体を備えたバグフィルタのセルプレートに対する装着状態を示す側面図である。
図6図6図1図4の筒状濾体をバグフィルタに構成するため口元布及び底布を準備した状態を示す側面図である。
図7図7は縫着による筒状濾体の端部処理を説明する模式的斜視図である。
図8図8図5における口元布からセルプレート取付具に至る部位の拡大断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
図1はこの発明の実施形態におけるバグフィルタの構成要素となる筒状濾体10を横断面にて示している。筒状濾体10は濾布12を円筒形状に形成して構成される。濾布12は、例えば、ガラス繊維等の無機繊維より成る糸条を織製して成る基布に、PTFE等の耐熱性の繊維をニードルパンチングによって植毛することにより構成することができ、目付としては400~900g/mのものが所望の濾過性能を得つつ筒状濾体10に形成したときの形態維持の観点から好ましい。基布はガラス繊維等の無機繊維の代わりにPTFE等の耐熱性繊維より成る織布とし、PTFE等の耐熱性の有機繊維をニードルパンチングによって植毛することにより構成することも可能であり、この場合においては、目付としては600~800g/のものが好適である。
【0019】
筒状濾体10を形成する濾布12は、後述するように、バグフィルタの長手方向に相当する方向において実質的全長が一枚もの(円周方向の継目無し)であり、全長において円周方向の継目無しという構成は、大型の焼却装置用の、例えば、7~8mといった長尺のバグフィルタであっても該当する。ここに“バグフィルタの実質的全長”とは連接構造が必須となるバグフィルタの底部及びセルプレート取付部を除いた全長の意味であり、筒状濾体の継ぎ足し構造のバグフィルタにおける一つ一つの筒状濾体の全長の意味ではないことは勿論である。後述のように、筒状濾体10の形成のため濾布12は原反ロールから供給されるが、原反ロールからの濾布12の引き出し方向がバグフィルタの長さ方向となっているため、長尺のバグフィルタであっても筒状濾体10を長手方向の全長に亘り一枚ものとすることが可能となる。図1において、そのような円周方向の継ぎ目となる濾布12の端部を12-1によって表している。
【0020】
筒状濾体10を形成する濾布12は、長手方向(図1の紙面直交方向)の全長に沿った折線に沿って濾布12に半径内向き凸となるように形成された曲折部12-2を備え、曲折部12-2は筒状濾体10の全周に沿って等間隔に配置される。濾布12の曲折部12-2においては濾布12の対向面(外面)は長手方向全長に亘りに密着されている。そして、各曲折部12-2において、この曲折部12-2における濾布12の対向面の密着維持のため、細長い矩形状の当布16が全長に亘り外側より包み込むように当てられ、両側より当布16を介して曲折部12-2の縫糸18による縫着が行われ、曲折部12-2の対向面は全長に亘り密着せしめられる。曲折部12-2に当布16を外側より包み込むように当て、両側より当布16を介して曲折部12-2の縫糸18による縫着を行う構造は、本発明の補剛手段としての補剛部14を構成し、この補剛部14は筒状濾体10を構成する濾布12を円周方向に間隔おいた箇所において局所的な濾布の剛性を補い高める機能を達成する。補剛部14は、本実施形態においては、バグフィルタの円周方向に等間隔に設けられる。尚、濾布12の円周方向の端部12-1においては、円周方向に近接する端縁を沿設させ、当布16´を当て、縫糸18´にて縫着しているが、この構造によっても補剛部14の機能が同等に達成され、バグフィルタの全周に亘り補剛部14, 14’が形成される。この実施形態においては、縫糸18´が濾布12を筒形状(筒状濾体10)とするための縦方向全長に沿った縫目を形成する。尚、当布としては濾布と共布でも良いが耐熱性繊維より成る150~200g/mの目付の布帛とすることができる。
【0021】
円周方向において隣接する補剛部14, 14’間において濾布12は半径外方にループ状に突出したフリー部分(又はフリーループ)12-3を形成し、このフリー部分12-3において濾布12は基本的に原反ロールより引き出したままの状態であり、角付け若しくはプリーツ形成されたり補剛を受けた箇所は皆無でありまた当然に無緊張下にある。ただ、フリー部分12-3を形成する濾布部分が補剛された曲折部12-2から半径外方に延出した構造であり、かつ濾布12を形成するニードルパンチ布自体が前述目付の比較的高剛性のものであるため、フリー部分12-3の半径外方に突出したループの形状維持性は高いものとなる。そして、このフリー部分12-3が集塵機能に主として関与し、効率的な集塵のためにはこのフリー部分12-3の周長ができるだけ長いこと(塵埃との接触面積が大きいこと)が望ましい。濾布12はこの実施形態でガラス織布にPTFE短繊維をニードルパンチしたものであり、比較的高剛性であるので、外周側に張り出したループ形状をなすが、周長が相当値長い場合は又は濾布が幾分低剛性の場合にあっては、想像線12-3’に示すように襞状のループを形成し、この場合も本発明の思想に包含される。また補剛部14, 14’の構成としては、補剛は弱くなるが、当布16, 16’を省略し、濾布12の曲折部12-2を単に対向面が密着するように縫着する(当布16, 16’を設けない)ことができる。または、濾布12の曲折部12-2を縫着することなく若しくは縫着とともに接着材若しくは熱硬化樹脂により高剛性化することにより局部的な補剛を行うことも本発明に包含される。
【0022】
図1においては、筒状濾体10の中心部にリテーナ19(図も参照)が挿入された状態が示され、補剛部14, 14’が半径方向の内周端において、リテーナ19に当接した位置関係を表す。周知のように、濾布に堆積した塵埃の除去のための空気圧パルスによる逆洗操作時に、濾布12がリテーナ19に叩きつけられることにより濾布から塵埃を叩き落とす役割のものである。バグフィルタの最内径側に位置するも補剛部14の当布構造は、逆洗操作時における荷重に対しバグフィルタの補強にも役立つ。
【0023】
次に図1のバグフィルタ用筒状濾体10の製造方法について図2図4を参照して説明すると、図2において原反ロール20は、ガラス繊維等の無機繊維より成る糸条を織製して成る基布にPTFE等の耐熱性の有機繊維をニードルパンチングによって植毛することにより構成される本実施形態の濾布をロールに巻き取ったものである。原反ロール20は巻芯22を備える。原反ロール20の巻幅Lは、必要なトリミングを行った後に、図1のバグフィルタ用筒状濾体10における濾布12の全周長を賄うことができるものである。原反ロール20より連続濾布12´が、バグフィルタの縦長さL2相当分が引き出され、カットライン24にてカットされ濾布12(矩形の濾布切片(図3))となる。図2においては、便宜上、原反ロール20は1個のバグフィルタの口径部を丁度賄うように図示されているが、巻幅Lは通常2000mm程度であり、通常の口径110~165mmのバグフィルタの場合、3~5個程度の濾布12の枚数を賄うことができる。
【0024】
図3において、カットされた後の細長い長方形の織布12(幅L、長さL2)は図示しない作業上に全面にて展開載置され、濾布12に付す各曲折部12-2の形成部位に沿った濾布12の片面上に基準線26がマーカーにより描かれる。即ち、基準線26は図1のバグフィルタ用筒状濾体10における各曲折部12-2の夫々の中心位置に対応して設けられる。
【0025】
次に、図4に示すように、一つの基準線26に沿って(イ)濾布12にバグフィルタの内径側を先端が向くように曲折部12-2を形成し、(ロ)長手方向の全長に延びる長さを有する当布18を当て、(ハ) 曲折部12-2における濾布12の対向面が当接するように縫糸18にて縫着(ミシン使用)し、補剛部14を形成する。そして、(イ)、(ロ)、(ハ)の操作をロール全幅方向(筒状濾体10の円周方向)に亘り各基準線26について繰り返すことにより、濾布12に(原反ロール20から引き出される連続濾布の幅方向に)ループ部12-3を順次形成してゆくことができ、図1に示す筒状濾体10を完成させることができる。
【0026】
図2図4によるバグフィルタ用筒状濾体10の製造方法は、原反ロール20から引き出される濾布12の長手方向の折線26によって個々のループ部12-3を長手方向(図3のL2の方向)に形成しており、全長7mといった大型のバグフィルタであっても、そのまま全長分を賄うことができる。そのため、プリーツ成形機によるプリーツ成形との対比では、原反ロールの幅方向にプリーツ成形機によりプリーツを形成しなければならないため、原反ロール超がせいぜい2メートルの幅しかとり得ないことから、全長7mのバグフィルタの場合は長手方向に筒状濾体の継ぎ足し必ず必要となることとの対比において、大型のバグフィルタ用でも筒状濾体の縦方向き継ぎ足しが必要でなくなり、この点において本発明の優位性が明らかである。
【0027】
特許文献1及び2のプリーツとの対比では本願発明のループ部12-3はプリーツ程には凹凸を大きく取れないが、ループ部12-3のピッチ設定とループの適当な張出量の設定により必要な浄化性能の確保は可能である。
【0028】
図5は本発明の実施形態において、筒状濾体10よりバグフィルタに構成し、焼却炉の除塵装置に設置した一例を示す。筒状濾体10は、本発明においては長手方向の全長に亘り一枚物の濾布12により構成されるが、バグフィルタとして除塵装置に設置する場合、口元布及び底布については別布とし、縫着構造により一体化せざるを得ない。図6は、図1図4において説明した筒状濾体10に対する口元布30及び底布32の装着を模式的に示しており、筒状濾体10の上端部10a及び下端部10bにおいては、図7に示すように、ループ部分12-3は平坦に圧潰され、縫糸33a, 33bにより全周を縫着することにより平坦化されかつ幾分縮径を受ける。この縮径された上端部10a及び下端部10bに口元布30及び底布32が縫着される。図5の縫着後の状態において示すように、口元布30は筒状濾体10の上端部10aに縫糸31により縦継されているだけであるが、底布32については閉鎖端部を成形するように縫糸35により筒状濾体10の下端部10bに縫着される。
【0029】
そして、図5において口元部30は、集塵装置のセルプレート34への取付具36を備えており、取付具36の構造としては公知の任意の手段で良いが、一例としては、本出願人になる特許文献3等と同様の構成とすることができ、図8に示すように、スナップリング保持布38は金属製スナップリング40を包み込むように設けられ、スナップリング保持布38は継布42に縫糸44により連接され、継布42が縫糸46により口元布30に連接され、これにより筒状濾体10に対する取付具36の連結が行われる。取付具36のスナップリング40は外周に環状凹部40-1を形成しており、集塵装置のセルプレート34の一つのバグフィルタ取付孔48(周知のようにセルプレート34にバグフィルタ設置数だけ間隔を置いて設置されている)にワンタッチ式に装着することができる。即ち、取付具36を上から対応の一つのバグフィルタ取付孔48に押し込むことにより、スナップリング40はその弾性により半径内方に変形し、バグフィルタ取付孔48の内縁とスナップリング40の環状凹部40-1とをスナップリング保持布38を介して係合に至らしめることにより、取付具36、換言すれば、取付具36に連接された筒状濾体10のワンタッチ式の装着が可能となる。このワンタッチ式の装着は本出願人によりイージースナップ(登録商標)なる商品名で市場に提供されているものであるが、この方式に依拠しないバグフィルタの取付方式のものにも本発明の技術的思想は採用可能であることはいうまでもない。
【0030】
尚、本発明の筒状濾体10の技術的思想は、円周方向継目により複数の筒状濾体を連接し、口元部及び底部を連接することによりバグフィルタとする構造としても実施可能である。
【符号の説明】
【0031】
10…筒状濾体
12…濾布
12-2…曲折部
12-3…フリーループ
12´…連続濾布
14…補剛部
16…当布
18…補剛部の縫糸
20…原反ロール
26…基準線
30…口元布30
32…底布
34…セルプレート
36…取付具
40…スナップリング
48…バグフィルタ取付孔
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8