(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】耐震天井
(51)【国際特許分類】
E04B 9/18 20060101AFI20240510BHJP
E04B 9/06 20060101ALI20240510BHJP
E04B 9/10 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
E04B9/18 E
E04B9/18 A
E04B9/18 F
E04B9/06 B
E04B9/10
(21)【出願番号】P 2020171300
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】594062260
【氏名又は名称】株式会社佐藤型鋼製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100092875
【氏名又は名称】白川 孝治
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 公章
【審査官】山口 敦司
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-007882(JP,A)
【文献】特開2013-224574(JP,A)
【文献】特開2016-169558(JP,A)
【文献】特開2017-101479(JP,A)
【文献】特開2020-153215(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第106555794(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04B 9/18
E04B 9/06
E04B 1/98
E04B 9/10
E04H 9/02
E04B 1/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
建物構造体に取り付けられる棚型の主構造体と、該主構造体の下部に連結一体化される副構造体と、該副構造体の下部に取り付けられる天井枠とを備え、上記主構造体を水平方向に延びる強度の高い閉断面構造の複数本の構造材、上記副構造体を鉛直方向に延びる軽量で強度の高い閉断面構造の複数本の準構造材により構成することによって、天井部全体として準構造型の耐震天井を構成し、上記副構造体を構成する準構造材の鉛直方向途中に複数本の水平補強材をクロス状態で連結すると共に、同連結部にブレース材として機能するコーナー部材を設けたことを特徴とする耐震天井。
【請求項2】
ブレース材として機能するコーナー部材が、鉛直方向に延びる準構造材と水平方向に延びる水平補強材との間のコーナー部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の耐震天井。
【請求項3】
ブレース材として機能するコーナー部材が、水平方向に延びる水平補強材相互の間のコーナー部に設けられていることを特徴とする請求項1記載の耐震天井。
【請求項4】
ブレース材として機能するコーナー部材が、鉛直方向に延びる準構造材と水平方向に延びる水平補強材との間のコーナー部および水平方向に延びる水平補強材相互の間のコーナー部にそれぞれ設けられていることを特徴とする請求項1記載の耐震天井。
【請求項5】
準構造材の下端に取り付けられる格子構造の天井枠が、軽量で強度の高い閉断面構造の準構造材により形成されていることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の耐震天井。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、建物の構造体に対して取り付けられる準構造型の耐震天井の構成に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ホールや体育館などの大型の建物の天井構造には、一般に吊り天井が多く用いられている。吊り天井は、建物天井裏の所定の構造体(H形鋼などの構造躯体)から吊りボルトを介して所定の天井主体(鉄骨ぶどう棚など)を吊り下げ、同天井主体における天井枠取り付け用の水平材に対して、吊りボルトを介して格子状の天井枠(野縁および野縁受け)を吊り下げ、同天井枠の下面に天井パネル(化粧ボードなど)を取り付ける構成となっている。
【0003】
そのため、吊り天井の場合、直天井と違って天井裏に広い空間ができ、電気、水道、空調設備などの設置に必要なペースを有効に確保することができ、それらのメンテナンス性も高くすることができる。
【0004】
しかし、吊り天井の場合、地震発生時に天井全体が大きく揺れる問題があり、特に水平方向の揺れを有効に抑制しないと、天井落下の危険性がある。そのため、従来の吊り天井では、このような水平方向の揺れを抑制するために、建物天井裏の所定の構造体(H形鋼などの構造躯体)から吊り下げられる複数本の平行する吊りボルト間および天井主体(ぶどう棚)の水平材から吊り下げられる複数本の吊りボルト間に各々ブレース材(振れ止め材)を設けて水平方向の揺れを抑制する、また上記吊りボルトに代えて、剛性の高い角形鋼(鉛直補強材)を用いて吊り下げ部の剛性を高くし、かつ該角形鋼よりなる吊り下げ材の途中に水平部材を設けて水平方向の揺れを抑制する、などの構成が採用されている(特許文献1、特許文献2の構成を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2020-7882号公報
【文献】特開2016-169558号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところが、吊り天井の場合、上記のようにブレース材を追加したり、吊り下げ材を角形鋼のような剛性の高いものに変更しても、天井全体としての剛性、耐力の向上には限界があり、地震発生時の水平方向の変位量を十分に抑制することはできない。吊り下げ材の途中にX方向又はY方向いずれかの方向に水平部材を設けることは有効であるが、X方向又はY方向いずれか一方向のみでは十分でない。また、単に水平部材を設けただけでは、吊り下げ材と水平部材相互の間の曲げ変形を防止することはできない。これらの傾向は、天井の懐が深く、建物構造体から天井枠までの吊り下げ距離が大きい場合ほど顕著である。
【0007】
本願発明は、このような課題を解決するためになされたもので、天井部を、建物構造体に取り付けられる主構造体、主構造体の下部に連結一体化される副構造体、副構造体の下部に取り付けられる天井枠により構成する一方、主構造体を水平方向に延びる閉断面構造の複数本の構造材、副構造体を鉛直方向に延びる閉断面構造の複数本の準構造材により形成することによって、天井部全体として準構造型の耐震天井を構成し、さらに副構造体を形成する準構造材の鉛直方向途中に複数本の水平補強材をクロス状態で連結すると共に、同連結部にブレース材として機能するコーナー部材を設けることによって、天井部全体の剛性、耐力を有効に向上させた耐震天井を提供することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明の耐震天井は、上記の課題を解決するために、次のような課題解決手段を備えて構成されている。
【0009】
(1)本願発明の第1の課題解決手段
まず本願発明の第1の課題解決手段における耐震天井は、建物構造体に取り付けられる棚型の主構造体と、該主構造体の下部に連結一体化される副構造体と、該副構造体の下部に取り付けられる天井枠とを備え、上記主構造体を水平方向に延びる強度の高い閉断面構造の複数本の構造材、上記副構造体を鉛直方向に延びる軽量で強度の高い閉断面構造の複数本の準構造材により構成することによって、天井部全体として準構造型の耐震天井を構成し、上記副構造体を構成する準構造材の鉛直方向途中に複数本の水平補強材をクロス状態で連結すると共に、同連結部にブレース材として機能するコーナー部材を設けたことを特徴としている。
【0010】
このような構成の場合、まず建物構造体側に取り付けられるぶどう棚等の棚型の主構造体部分が水平方向に延びる強度の高い閉断面構造の複数本の構造材により構成されることから、非常に剛性、耐力の高い構造体となり、吊り天井の場合(吊りボルトとブレース材のみの場合)と異なって、きわめて耐震性の高いものとなる。
【0011】
また、同時に主構造体の下部に連結一体化される副構造体部分が鉛直方向に延びる軽量で強度の高い閉断面構造の複数本の準構造材(鉛直補強材)により構成されており、軽量ではあるが、同様に剛性、耐力の高い構造体となり、きわめて耐震性の高い構成のものとなる。
【0012】
そして、それら剛性、耐力の高い主構造体と副構造体が相互に連結一体化されて、全体として単一の準構造型の(準構造化された)耐震天井構造を実現している。したがって、同天井構造では、それ自体としても有効な耐震性を実現することができる。
【0013】
さらに、同構成の耐震天井では、以上の構成に加えて、上記副構造体を形成している準構造材の鉛直方向途中には複数本の水平補強材がクロス状態で連結されている。したがって、それ自体でも剛性、耐力の高い準構造材が、クロス方向に連結された複数本の水平補強材によって、水平方向全体に強固に支持され、準構造体である副構造体部分の水平方向の変位が確実に抑制される。
【0014】
しかも、以上の構成の場合、その上で、同準構造材に対するクロス方向複数本の水平補強材の連結部には、ブレース材として機能するコーナー部材が設けられている。したがって、鉛直方向の準構造材とクロス方向の複数本の水平補強材との間、クロス方向の複数本の水平補強材相互の間でのコーナー部に作用する圧縮荷重が当該コーナー部材による軸力で確実に支持され、準構造体である副構造体部分の剛性、耐力がさらに大きく向上し、水平方向の変位がより確実に抑制される。
【0015】
これらの結果、本願発明の第1の課題解決手段における耐震天井構造では、それぞれ剛性、耐力の高い主構造体および副構造体が確実に準構造体として一体化し、さらに剛性、耐力の高いものとなる。そして、地震発生時には、それら一体化された高剛性、高耐力の主構造体および副構造体が単一の剛体として変位する。その結果、吊り天井に比べて、水平変位量が大きく低減され、耐震性が大きく向上する。
【0016】
また、吊り天井の場合のように、対角線方向のブレース材を必要としないので、設備との取り合いが良くなる。また、天井裏の点検が必要な場合には、水平補強材を利用して足場板を設置することができ、歩行が容易になる。そのため、メンテナンス性がより向上する。
【0017】
また、この場合、ぶどう棚等の棚型の主構造体を形成する閉断面構造の構造材には、たとえば角パイプ等の特に強度の高い構造材が使用され、また副構造体を形成する閉断面構造の準構造材や水平補強材には、たとえば角型鋼等の軽量であるが強度の高い準構造材が採用される。その結果、天井システム全体における十分な剛性及び耐力の向上と軽量化を両立させることができる。
【0018】
ここで使用される閉断面構造の準構造材や水平補強材には、たとえば発明の詳細な説明に示すかしめ角型鋼が適している。
【0019】
(2)本願発明の第2の課題解決手段
次に、本願発明の第2の課題解決手段における耐震天井は、上記第1の課題解決手段の耐震天井の構成において、ブレース材として機能するコーナー部材が、鉛直方向に延びる準構造材と水平方向に延びる水平補強材との間のコーナー部に設けられていることを特徴としている。
【0020】
このように、鉛直方向に延びる準構造材と水平方向に延びる水平補強材との連結部において、ブレース材として機能するコーナー部材が、鉛直方向に延びる準構造材と水平方向に延びる水平補強材との間のコーナー部に設けられていると、ブレース材として機能するコーナー部材が鉛直方向の準構造材と水平方向の水平補強材との間のコーナー部に位置して、トラス構造を形成することになり、同コーナー部材が鉛直方向の準構造材と水平方向の水平補強材間に生じる地震発生時の変位に対して軸力で抵抗する合理的な構造体が実現される。その結果、水平補強材連結部の剛性、耐力が大きく向上し、水平方向の変位量が有効に低減される。
【0021】
この場合、鉛直方向に延びる準構造材と水平方向に延びる水平補強材との間のコーナー部は、クロス状態で連結されるXY方向4本の水平補強材との関係では、その上下両位置においてX方向とY方向にクロスさせて取り付ける取付構造、又は上下両位置において同一平面を形成するようにそれぞれX方向、Y方向に取り付ける取付構造が可能である。
【0022】
前者の取付構造を採用すると、相互に交差する上下各2組のコーナー部材により、X方向およびY方向両方の変位抑制効果を有効に実現することができる。また、後者の取付構造を採用すると、相互に同一平面を形成する上下各2組のコーナー部材により、X方向又はY方向いずれかの方向の変位抑制効果を特に大きくすることができる。
【0023】
これら複数の取付構造は、副構造体を形成する鉛直方向の準構造材の設置位置に応じて所望に組み合わせて配置することにより、全体としてより一層有効に剛性、耐力をアップすることができる。
【0024】
(3)本願発明の第3の課題解決手段
次に、本願発明の第3の課題解決手段における耐震天井は、上記第1の課題解決手段の耐震天井の構成において、ブレース材として機能するコーナー部材が、水平方向に延びる水平補強材相互の間のコーナー部に設けられていることを特徴としている。
【0025】
このように、鉛直方向の準構造材に対する水平補強材の連結部において、ブレース材として機能するコーナー部材が、水平方向に延びる水平補強材相互の間のコーナー部に設けられていると、ブレース材として機能するコーナー部材が水平方向に延びる水平補強材相互の間に位置して、トラス構造を形成することになり、同コーナー部材が隣り合う水平補強材に対して地震発生時の変位に対して軸力で抵抗する合理的な構造体となる。その結果、水平補強材連結部の剛性、耐力が大きく向上し、水平方向の変位量が大きく低減される。
【0026】
このコーナー部材の取付構造は、必要に応じ、上記本願発明の第2の課題解決手段のコーナー部材の取付構造と組み合わせて実施される。
【0027】
(4)本願発明の第4の課題解決手段
次に、本願発明の第4の課題解決手段における耐震天井は、上記第1の課題解決手段の耐震天井の構成において、上記ブレース材として機能するコーナー部材が、鉛直方向に延びる準構造材と水平方向に延びる水平補強材との間のコーナー部および水平方向に延びる水平補強材相互の間のコーナー部にそれぞれ設けられていることを特徴としている。
【0028】
このように、鉛直方向に延びる準構造材に対する水平補強材の連結部において、ブレース材として機能するコーナー部材が、準構造材と水平補強材との間のコーナー部および水平補強材相互の間のコーナー部にそれぞれ設けられていると、ブレース材として機能するコーナー部材が鉛直方向の準構造材と水平方向の水平補強材との間のコーナー部および水平補強材相互の間に位置して、それぞれトラス構造を形成することになり、コーナー部を挟んで相対向する部材間において各コーナー部材が地震発生時の変位に対して軸力で抵抗する合理的な構造体となる。その結果、水平補強材連結部の剛性、耐力が大きく向上し、水平方向の変位量が大きく低減される。
【0029】
(5)本願発明の第5の課題解決手段
次に、本願発明の第5の課題解決手段は、上記本願発明の第1、第2、第3、又は第4の課題解決手段における耐震天井の構成において、上記準構造材の下端に取り付けられる格子構造の天井枠が、軽量で強度の高い閉断面構造の準構造材により形成されていることを特徴としている。
【0030】
軽量で強度の高い閉断面構造の鉛直材である準構造材の下端に取り付けられる格子構造の天井枠は、非構造材であるチャンネル材等により形成することも可能である。しかし、上記副構造体部分と同様に、軽量ではあるが強度の高い閉断面構造の準構造材を採用し、同準構造材により格子構造の天井枠を形成すると、天井枠部分の剛性、耐力も向上し、より水平変位量の小さい準構造型の耐震天井構造を実現することができる。
【発明の効果】
【0031】
以上の結果、本願発明によると、懐が深い場合にも、特定天井に該当しない準構造体の軽量で十分に耐震性の高い天井構造を実現することができる。しかも、それでいながら吊り天井と同様の広い設備スペースを確保することができ、ブレース材を使用しないので、設備との取り合いも良好となる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【
図1】X方向の主構造体構成材に対して副構造体構成材を取り付けるようにした本願発明の実施の形態1に係る耐震天井の全体的な構成(主構造体~副構造体~天井枠)を示す斜視図である。
【
図2】同耐震天井の水平面方向所定位置における主構造体~副構造体~天井枠の構成(主構造体構成材~副構造体構成材~水平補強材連結部~天井枠)を示す拡大斜視図である。
【
図3】同耐震天井の主構造体の構成を示す正面図である。
【
図4】同耐震天井の主構造体の構成を示す拡大側面図である。
【
図5】同耐震天井の主構造体に対する副構造体取付部の構成を示す拡大側面図である。
【
図6】同耐震天井の主構造体に対する副構造体取付部の構成を示す拡大斜視図である。
【
図7】同耐震天井の主構造体に対して副構造体を取り付ける取付部材の構成を示す拡大斜視図である。
【
図8】同耐震天井の主構造体構成材の構成を示す拡大斜視図である。
【
図9】同耐震天井の副構造体構成材の構成を示す拡大斜視図である。
【
図10】同耐震天井の副構造体構成材に対する水平補強材の連結構造および同水平補強材連結部における第1の補強構造に係るコーナー部材の連結構造を示す拡大斜視図である。
【
図11】同耐震天井の副構造体構成材に対する水平補強材の連結構造および同水平補強材連結部における第1の補強構造に係るコーナー部材の連結構造を示す断面図(
図10のA-A)である。
【
図12】同耐震天井の副構造体構成材に対する水平補強材の連結構造および同水平補強材連結部における第1の補強構造に係るコーナー部材の連結構造を示す断面図(
図10のB-B)である。
【
図13】同耐震天井の副構造体構成材に対する水平補強材の連結構造および同水平補強材連結部に連結される第1の補強構造に係るコーナー部材の構成を示す分解斜視図である。
【
図14】同耐震天井の副構造体構成材に対して水平補強材を連結する連結部材の全体構成を示す拡大斜視図である。
【
図15】同耐震天井の副構造体構成材に対して水平補強材を連結する連結部材の全体構成を示す左側面図である。
【
図16】同耐震天井の副構造体構成材に対して水平補強材を連結する連結部材の全体構成を示す拡大平面図である。
【
図17】同耐震天井の副構造体構成材に対して水平補強材を連結する連結部材の全体構成を示す拡大断面図(
図14のC-C)である。
【
図18】同耐震天井の副構造体構成材に対して水平補強材を連結する連結部材の構成を示す拡大分解斜視図である。
【
図19】同耐震天井の副構造体構成材に対して水平補強材を連結する連結部材の本体部分の構成を示す拡大斜視図である。
【
図20】同耐震天井の副構造体構成材に対して水平補強材を連結する連結部材の水平補強材支持部の構成を示す拡大斜視図である。
【
図21】同耐震天井の副構造体構成材と該副構造体構成材に対して水平補強材を連結する水平補強材連結部材との対応関係(嵌合関係)を示す拡大斜視図である。
【
図22】同耐震天井の副構造体構成材に対して水平補強材連結部材を介して水平補強材を連結する連結関係を示す拡大分解斜視図である。
【
図23】同耐震天井の副構造体構成材に対する水平補強材の連結部(相互のコーナー部)において、副構造体構成材と水平補強材とを連結するコーナー部材の構成を示す拡大斜視図である。
【
図24】同耐震天井の副構造体構成材に対する水平補強材の連結部において、副構造体構成材と水平補強材とを連結するコーナー部材の構成を示す拡大断面図(
図23のD-D)である。
【
図25】同耐震天井の副構造体構成材に対する水平補強材の連結部において、副構造体構成材と水平補強材とを連結するコーナー部材の構成を示す拡大平面図である。
【
図26】同耐震天井の副構造体構成材に対する水平補強材の連結部において、副構造体構成材と水平補強材とを連結するコーナー部材の構成を示す拡大底面図である。
【
図27】同耐震天井の副構造体構成材に対する水平補強材の連結構造および同水平補強材連結部における第2の補強構造に係るコーナー部材の連結構造を示す拡大斜視図である。
【
図28】同耐震天井の副構造体構成材に対する水平補強材の連結構造および同水平補強材連結部における第3の補強構造に係るコーナー部材の連結構造を示す拡大斜視図である。
【
図29】同耐震天井の副構造体構成材に対する天井枠および天井パネル取付部の構成を示す拡大斜視図である。
【
図30】同耐震天井の副構造体構成材に対する天井枠取付部の上下位置調整機構の構成を示す拡大左側面図である。
【
図31】同耐震天井の副構造体構成材に対する天井枠取付部の上下位置調整機構の構成を示す拡大断面図(
図30のE-E)である。
【
図32】同耐震天井の副構造体構成材に対する天井枠取付部の上下位置調整機構の構成を示す拡大分解斜視図である。
【
図33】同耐震天井の副構造体構成材に対する水平補強材の連結構造および同水平補強材連結部における第4の補強構造に係るコーナー部材の連結構造を示す拡大斜視図である。
【
図34】Y方向の主構造体構成材に対して副構造体構成材を取り付けるようにした同耐震天井の全体的な構成(主構造体~副構造体~天井枠)を示す斜視図である。
【
図35】本願発明の実施の形態2に係る耐震天井の全体的な構成(主構造体~副構造体~天井枠)を示す斜視図である。
【
図36】同耐震天井の水平面方向所定位置における主構造体~副構造体~天井枠の構成を示す拡大斜視図である。
【
図37】同耐震天井の副構造体構成材に対する天井枠取付部の上下位置調整機構の構成を示す拡大斜視図である。
【
図38】同耐震天井の副構造体構成材に対する天井枠取付部の上下位置調整機構の構成を示す拡大断面図(
図37のF-F)である。
【
図39】同耐震天井の副構造体構成材に対する天井枠取付部の上下位置調整機構の構成を示す拡大断面図(
図37のG-G)である。
【
図40】同耐震天井の副構造体構成材に対する天井枠取付部の上下位置調整機構における上下位置調整部材の構成を示す拡大斜視図である。
【
図41】Y方向の主構造体構成材に対して副構造体構成材を取り付けるようにした同耐震天井の全体的な構成(主構造体~副構造体~天井枠)を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0033】
以下、添付の
図1~
図41を参照して、本願発明に係る耐震天井を実施するための幾つかの具体的な形態について詳細に説明する。
【0034】
<本願発明の実施の形態1に係る耐震天井の構成について:
図1~
図33>
(天井構造全体の構成について:
図1および
図2)
まず
図1は、本願発明の実施の形態1に係る耐震天井の天井構造の全体的な構成を示しており、また
図2は、同天井構造の所定平面位置における天井部の上端から下端までの構成(
図1の矢視イ部の構成)を示している。
【0035】
本願発明の実施の形態1に係る耐震天井は、たとえば
図1に示すように、建物構造体に取り付けられる上端側の主構造体部分と、該主構造体の下部側に連結一体化される副構造体部分と、該副構造体の下端側に取り付けられる天井枠部分の3つの部分からなっている。
【0036】
先ず、主構造体部分の構成について説明する。主構造体は、たとえば
図8に示すような、所定の断面寸法(100mm×50mm)、所定の板厚(2.3mm)の強度の高い閉断面構造の複数本の構造材(角パイプ)3,3・・、3,3・・をX方向(
図1参照)及びY方向(
図34参照)に配設することにより、剛性および耐力の高いぶどう棚を構成している。
【0037】
X方向(
図1参照)及びY方向(
図34参照)に延びる閉断面構造の複数本の構造材(角パイプ)3,3・・、3,3・・は、たとえば
図3及び
図4に示されるように、H型鋼よりなる建物構造体(構造躯体)40,40・・、40,40・・の底部側縁部40a,40a・・、40a,40a・・の下面に対して、構造材(角パイプ)3,3・・、3,3・・を挟む形で左右一対のL形金具41,41・・、41,41・・を溶接し、同左右一対のL形金具41,41・・、41,41・・間に構造材(角パイプ)3,3・・、3,3・・を通し、ボルト42,42・・、42,42・・およびナット43,43・・、43,43・・で締結固定することにより、H型鋼よりなる建物構造体(構造躯体)40,40・・、40,40・・の底部に固定されるようになっている。左右一対のL形金具41,41・・、41,41・・は、構造材(角パイプ)3,3・・、3,3・・を挟む縦壁部41b,41b・・、41b,41b・・の上下寸法が構造材(角パイプ)3,3・・、3,3・・の長辺寸法よりも所定寸法大きく、またH型鋼よりなる建物構造体(構造躯体)40,40・・、40,40・・の底部側縁部40a,40a・・、40a,40a・・の下面に対して溶接される水平縁部41a,41a・・、41a,41a・・も十分な溶接面積が採れる幅寸法に形成されている。そして、このX方向(
図1参照)及びY方向(
図34参照)に延びる閉断面構造の複数本の構造材(角パイプ)3,3・・、3,3・・に対して、以下に述べる副構造体の上端が連結される。
【0038】
次に、副構造体の構成について説明する。すなわち、副構造体は、たとえば
図1、
図2に示されるように、所定の間隔をおいて上下鉛直方向に延びる所定の長さの複数本の準構造材4,4・・、4,4・・により形成され、それら複数本の準構造材4,4・・の上下方向途中、たとえば上下方向中間部には、それぞれXY方向にクロスして伸びる4本の水平補強材10,10・・が連結されている。これら4本の水平補強材10,10・・は、それぞれ準構造材4,4・・の4方の各側壁面(鉛直面)からXY方向(水平方向)に延びることにより、上記複数本の準構造材4,4・・それぞれを相互にXY方向に連結一体化している。
【0039】
上記4本の準構造材4,4・・は、たとえば
図9に示す断面寸法(縦45mm×横45mm程度)、板厚(1.2mm程度)の角形鋼よりなっている。この角形鋼は、同
図9に示すように、上記板厚の鋼板を断面方形(又は長方形)状に曲げ加工し、その両側縁4a,4b部分を角部の一側で相互にS字形に抱き合わす形で連結し、一方側の側縁の隣接部内側に折り曲げリブ4cを設けることにより抱き合わせ部(連結部)Xを固定して、図示角筒状に一体化した「かしめ構造」の角形鋼が採用されている。同構造の角形鋼(かしめ角形鋼)は、圧縮応力、曲げ応力に対する抵抗が高く、「かしめ部」は鋼材が座屈しても外れることがない。したがって、準構造材として、十分に剛性および耐力の高いものとなる。その結果、上記のように板厚1.2mm程度と軽量化することができ、副構造体構成材(副構造体構成用の鉛直補強材)とするのに適している。
【0040】
この複数本の準構造材(鉛直補強材)4,4・・は、上記主構造体(ぶどう棚)を構成する構造材(高強度の水平材)3,3・・から天井枠8までの天井深さ(ふところ深さ)に応じた長さを有し、
図5および
図6に示すように、その上端側を
図7に示す準構造材取付金具5,5・・を介して、上記主構造体(ぶどう棚)を構成する構造材(高強度の水平材)3,3・・に取り付けられている。
【0041】
準構造材取付金具5は、たとえば
図7に示すように、上記角パイプ構造の構造材3に対して所定の幅で背面側から手前側にコの字状に嵌合(外嵌)する第1の嵌合部50Aと、該第1の嵌合部50Aの上端側にあって上記鉛直方向に延びる準構造材4の上端側上部に嵌合(外嵌)する方形筒状の第2の嵌合部50Bと、上記第1の嵌合部50Aの下端側にあって上記鉛直方向に延びる準構造材4の上端側下部に嵌合(外嵌)する方形筒状の第3の嵌合部50B(構造が同じなので第2の嵌合部と同じ符号を使用する)とを有し、それら各嵌合部50A、50B、50Bを単一の構造体に強固に溶接一体化して構成されている。上記第1の嵌合部50Aは、上記第2,第3の嵌合部50B,50Bの間に位置して、それら第2,第3の嵌合部50B,50Bを連結していると共に、その上下両端側で第2,第3の嵌合部50B,50Bを閉断面の嵌合部に形成している。上記第1の嵌合部50Aの上下両端部と上記第2,第3の嵌合部50B,50Bの筒状壁との連結部(相互の間に形成されるコーナー部)は左右に三角形状の縦壁部を有する強度の高いトラス構造体に形成されていると共に、同トラス構造体の連結部をさらに水平補強材3の上下両壁面に対して強固に締結一体化するための取り付け部が設けられている。
【0042】
すなわち、同準構造材取り付け金具5は、例えば上記構造材3に対して背面側からコの字状に嵌合(外嵌)する第1の嵌合部50Aを形成する第1の嵌合部材5Aと、上記鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側上部に嵌合(外嵌)する第2の嵌合部50Bを形成する第2の嵌合部材5Bと、上記鉛直方向に延びる天井枠吊り下げ材4の上端側下部に嵌合(外嵌)する第3の嵌合部50Bを形成する第3の嵌合部材5Bとから構成されており、上記第1の嵌合部材5Aは、上記第2,第3の嵌合部材5B,5Bの間に位置して、それら第2,第3の嵌合部材5B,5Bを相互に連結一体化していると共に、その上下両端側第1、第2のフランジ部52,52で上記第2,第3の嵌合部材5B,5Bにおける第1、第2の方形筒状の嵌合部50B,50Bを形成している。
【0043】
第1の嵌合部材5Aは、所定の幅、所定の長さの鋼板本体51を側面ハット形に折り曲げ、中央部に断面コの字形の構造材3への開断面構造の第1の嵌合部(コの字状部)50A、その上下両端側折り曲げ片の端部に上記第2,第3の嵌合部材5B,5Bの第1、第2の嵌合部50B,50Bを閉じる(筒状の閉断面構造に形成する)第1、第2のフランジ部52,52を形成して構成されている。
【0044】
また、断面コの字形の第1の嵌合部50Aを形成する鋼板本体51の上下2カ所(縦壁面部の2カ所)には、所定のネジ孔51a,51a、またフランジ部52,52の中央部にも同様のネジ孔52a,52aがそれぞれ設けられており、これらのネジ孔51a,51a、52a,52aを介してドリルネジ(又はドリリングタッピングネジ)55,55、55,55が螺合され、第1の嵌合部50Aを形成する第1の嵌合部材5Aの鋼板本体51の縦壁面部が上記構造材3の背面側壁面部に、また同フランジ部52,52が準構造材4の背面側壁面部に強固に締結固定される。
【0045】
また、上記構造材3への第1の嵌合部50Aを形成する上記鋼板本体51の上下両片の左右両端部51b,51b、51b,51bとフランジ部52,52の左右両端部52b,52b、52b,52b部分は、次に述べるように第2、第3の嵌合部材5B,5Bの左右両側壁部53,53、53,53間に間装されて同左右両側壁部53,53、53,53と一体に溶接(鉤状に)されて、その第2、第3の嵌合部50B,50Bの前端面側の側壁を形成することにより、当該第2、第3の嵌合部50B,50Bを方形環状の筒状に閉じられた断面方形の嵌合部50B,50Bに形成すると共に、該第2、第3の嵌合部材5B,5Bを強固に連結一体化する。
【0046】
他方、第2、第3の嵌合部材5B,5Bは、それぞれ上記第1の嵌合部材5Aと同様の鋼板を上下に縦壁構造となるように平面視U状に折り曲げ、その左右側両側壁53,53の先端側テーパー部53b,53bの下部両側に、上記水平補強材3の上端面幅に等しい前後方向長さ、かつ所定左右方向幅のフランジ状の取り付け部54,54を設けて構成されている。当該U状に折り曲げられた左右両側壁53,53間の寸法は、上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4の外径寸法に対応し、上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4を緩みなく、しかし上下にスライドできる状態で嵌挿できる寸法に設定されている。同寸法は、また上記第1の嵌合部材5Aの金属板本体51の幅とも、同様の関係で一致するように設定されている。
【0047】
そして、それにより上記第1の嵌合部材5Aの金属板本体51の上下両端側フランジ部52,52の左右両端部52b,52b、52b,52b及び同金属板本体51の上下両片の左右両端部51b,51b、51b,51bが、側面視直角状態に連続する形で上記第2、第3の嵌合部材5B,5Bの鋼板本体左右の両側壁53,53の中間部に位置して強固に溶接一体化され、その後壁部側に上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4の外径寸法に対応した上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4を緩みなく嵌挿し、かつ上下方向にスライドし得る正方形の嵌合孔を残して、筒状部を形成するように連結一体化されている。
【0048】
そして、同正方形の筒状の嵌合孔を形成する左右両側壁53,53部分の前後及び上下方向中央部、その後壁部の左右及び上下方向中央部、第1の嵌合部材5Aのフランジ部52の左右及び上下方向中央部には、それぞれ当該筒状の嵌合孔内に嵌挿された上記断面方形(正方形)の天井枠吊り下げ材4の対応する前後左右各側壁部分にドリルネジ(又はタッピングネジ)を螺合するネジ孔53a,53a、50a、52aが形成されている。そして、これにより上記上下第2,第3の嵌合部材5B,5B部分及び第1の嵌合部材5Aの上下フランジ部52,52部分が強度の高い角形鋼管よりなる天井枠吊り下げ材4の外周に嵌合状態で強固に連結固定される。
【0049】
他方、同上下第2,第3の嵌合部材5B,5Bの前端側左右の取付部54,54には、その前後方向に所定の間隔をおいて、それぞれ2組のドリルネジ(又はタッピングネジ)を螺合する溜めのネジ孔54a,54a、54a,54aが設けられており、同取付部54,54、54,54部分は、それらネジ孔54a,54a、54a,54aを介して上記角形鋼管よりなる水平補強材3の上端面及び下端面にドリルネジ(又はタッピングネジ)55,55、55,55、55,55、55,55で強固に締結一体化される。
【0050】
この結果、天井枠吊り下げ材4の上端部は、水平補強材3の上下両端面及び左右一側面に強固に締結固定される第1の嵌合部材5Aの断面コの字形の嵌合部50Aに加えて、天井枠吊り下げ材4の所定の距離を空けた上端部上下の2カ所で、天井枠吊り下げ材4の外周面4面に強固に締結固定されると共に、さらにその左右両側壁部53,53を取付部54,54を介して上記水平補強材3の上下両端面に強固に締結一体化されるから、水平補強材3に対する天井枠吊り下げ材4の取り付け強度が大きく向上する。
【0051】
特に第2,第3の嵌合部材5B,5Bの第2,第3の嵌合部50B,50Bは、取り付けるべき構造材3の断面形状、外径寸法に対応した断面正方形の筒体構造となっており、天井枠吊り下げ材4の連結すべき上端部の所定寸法離れた上下2カ所に位置して、上記準構造材4の連結すべき上端部を嵌合状態で連結固定している。
【0052】
しかも、同筒体構造の準構造材嵌合部50B,50Bを形成する第2、第3の嵌合部材5B,5Bは、平面視U状の縦壁構造をなし、その先端側を幅の広い取付部54,54、54,54を介して構造材3の上下両端面に締結一体化され、第1の嵌合部材5A本体の上下両端面との間の連結部(コーナー部)を閉断面のトラス構造体に形成している。
【0053】
したがって、第1の嵌合部材5Aと第2、第3の嵌合部材5B、5Bとの連結強度が大きく向上し、それらを介した構造材3と天井枠吊り下げ材4との連結強度も大きく向上することになる。
【0054】
このような取付構造では、水平方向、上下方向はもちろん、捩り方向にも強度が高い非常に耐震性の高い連結構造が実現される。その結果、主構造体に対する副構造体の取付強度が大きく向上し、単一の構造体として、大きく剛性、耐力が向上する。
【0055】
なお、第2、第3の嵌合部材5B、5Bの左右側両側壁53,53の縦壁部先端側上部は、先端方向に下降するテーパー部53b、53bに形成されている。そのため、上記第1の嵌合部材5A側上下のフランジ部52,52部分をドリルネジ(又はタッピングネジ)55,55で天井枠吊り下げ材4に螺合締結する際の螺合作業も容易である。
【0056】
<準構造材途中の水平補強材連結部の構造>
次に
図10~
図28は、上記準構造材4,4・・の途中に連結される水平補強材10,10・・連結部の構造を示している。
【0057】
すでに述べたように、上記鉛直方向に延びる複数本の準構造材4,4・・の途中(中間位置)には、それぞれクロス状態でXY方向4方(水平方向4方)に延びる水平補強材10,10・・の一端が連結されている。以下、この準構造材4,4・・に対する水平補強材10,10・・の連結構造について説明する。
【0058】
鉛直方向に延びる準構造材4,4・・に対してXY方向にクロスする形で連結される4本の水平補強材10,10・・は、上述した鉛直方向に延びる準構造材材4,4・・と同一の構造(
図9のかしめ構造)、同一の断面寸法、同一の板厚の準構造材である角形鋼管が採用されている。そして、同角形鋼管よりなる4本の水平補強材10,10・・は、上述した鉛直方向に延びる準構造材4,4・・のXY方向4壁面に対して、
図14~
図22に示す水平補強材連結金具34を用いて連結されている。
【0059】
水平補強材連結金具34は、
図14~
図20に示すように、準構造材4,4・・の外形形状と外径寸法に対応して、準構造材4,4・・の外周側に隙間なく外嵌し得る角形鋼管(溶接鋼管)よりなる所定の長さの金具本体(筒体部)34aと、該金具本体34aの4方の壁面部中央に突き当て状態で溶接一体化された断面コ字型の水平補強材取付部34b、34b・・とから構成されている。金具本体34aの4方の壁面部中央に突き当て状態で溶接一体化された断面コ字型の水平補強材取付部34b、34b・・は、上方側が開口面となる状態で溶接固定されている。
【0060】
この水平補強材連結金具34は、たとえば
図21に示すようにして準構造材4,4・・の外周側にガタツキなく嵌合され、たとえば
図22に示すように、その上下方向中間位置で準構造材4,4・・の外周壁にドリルネジ(又はタッピングネジ)を螺合することにより固定される。
図22中では、表示を簡略化するため、ドリルネジ(又はタッピングネジ)の螺合用挿通孔(4方の各壁面で上下2カ所)しか図示していないが、実際には同部分に各々ドリルネジ(又はタッピングネジ)が螺合されている(
図13を参照)。
【0061】
そして、同
図22の状態において、上記断面コ字型の水平補強材取付部34b、34b・・に対して、図示のようにXY方向4方から水平補強材10,10・・の一端が突き合わせ状態で嵌合され、同嵌合状態において、
図13のように、水平補強材取付部34b、34b・・の左右各側壁部分を介してドリルネジ(又はタッピングネジ)が螺合され(上下斜め方向の2カ所に)、確実に連結固定される。この水平補強材取付部34b、34b・・の連結固定は、隣り合う全ての準構造材4,4・・についてなされる。
【0062】
この結果、鉛直方向に延びる複数本の準構造材4,4・・は、それぞれ相互に4本の水平補強材10,10・・によってXY方向に連鎖的に連結されることになり、それら4本の水平補強材10,10・・と共に、上下左右方向(XYZ方向)に立体的な2段構造の副構造体を構成する。
【0063】
したがって、基本となる複数本の準構造材4,4・・と、同じく準構造材である複数本の水平補強材10,10・・により構成される準構造体である副構造体部分の剛性、耐力は大きく向上し、上記主構造体部分の剛性、耐力が大きいことと相俟って、地震発生時の水平方向の変位量が有効に減少する。
【0064】
しかし、上記の構成では、鉛直方向に延びる準構造材4,4・・・途中の側壁面4方に
図14のような連結金具34を介して水平補強材10,10・・の一端を突き合わせ状態で連結しているだけである。したがって、所定レベル以上の震度で、上下および水平方向の振動が加わった場合には、必ずしも十分ではなく、鉛直方向の準構造材4と水平方向の水平補強材10,10・・相互の間および水平補強材10,10・・相互の間で曲げ変形が起こり、水平補強材連結金具34が損傷することも考えられる。
【0065】
そこで、この実施の形態では、上記準構造材4,4・・に対する水平補強材10,10・・の連結部における上記準構造材4と水平補強材10,10・・との間に
図10~
図12に示す第1の補強構造31又は
図27に示す第2の補強構造32を施し、またクロスする水平方向4本の水平補強材10,10・・相互の間に
図28に示す第3の補強構造33を施すことによって、準構造材4,4・・・途中の側壁面4方に連結金具34を介して水平補強材10,10・・を突き合わせ状態で連結している連結部の強度、耐力を向上させている。これら第1~第3の補強構造31~33は、それぞれで補強する方向、補強する部材間の関係を異にしており、上記副構造体を構成する複数本の準構造材4,4・・の上記副構造体中の構成位置において作用する応力の作用方向、集中状態を考慮して、それに応じた補強構造を所望に選択し、たとえば
図1に示すように、全体にバランス良く組み合わせて配置することにより、それぞれの連結部の連結強度を向上させることはもとより、鉛直方向の準構造材4,4・・および水平方向の水平補強材10,10・・よりなる副構造体全体の剛性、耐力を有効、かつ適切に向上させるようにしている。
図1の構成では、あくまで一例であるが、準構造材4,4・・および水平補強材10,10・・前後左右各3列の構成において、前列3組の連結部に第1の補強構造31,31,31、中列左右両側の連結部に第2の補強構造32,32、中列中央の連結部に第3の補強構造33、後列3組の連結部に第1の補強構造31,31,31が採用されている。
【0066】
ここで、上記第1の補強構造31、第2の補強構造32、第3の補強構造33、それぞれの構成及び補強方向、補強関係について説明して置く。
【0067】
(第1の補強構造31について)
すなわち、まず第1の補強構造31は、上記連結部の下部側において鉛直方向に延びる準構造材4とX軸方向に延びる水平補強材10,10とを斜めに連結する所定の長さの2組のコーナー部材35,35と、上記連結部の上部側において鉛直方向に延びる準構造材4とY軸方向に延びる水平補強材10,10とを斜めに連結する所定の長さの2組のコーナー部材36,36とから構成されている。
【0068】
上記連結部の下部側において鉛直方向に延びる準構造材4とX軸方向に延びる水平補強材10,10とを斜めに連結する所定の長さの2組のコーナー部材35,35は、たとえば
図23~
図26に示すように、上記連結金具34の連結金具本体部34aと同様の溶接構造の角形鋼管を用い、その両端側縦壁部35a,35aを鉛直方向の準構造材4とX軸方向の水平補強材10,10とが形成するコーナー部のコーナー面に合わせて傾斜状態にカットすると共に、そのコーナー部内側の上下筒壁部35b、35bを軸方向内側に所定深さ切り欠き、同切り欠き凹部を対応する準構造材4および水平補強材10,10・・に嵌合することにより、上記縦壁部35a,35a部分が対応する準構造材4および水平補強材10,10の下部側側壁面に所定幅重なるように構成されている。そして、この重なり部において、対応する準構造材4および水平補強材10,10に対して
図10~
図12に示すようにドリルネジ(又はタッピングネジ)で確実に締結固定している。この重なり幅は、準構造材4および水平補強材10,10の壁面幅寸法(断面寸法)の1/2に設定されており、準構造材4の壁面部分では隣り合う2組のコーナー部材35,35の各端部が突き合わせ状態で適切に締結固定されるようになっている。上記締結用の縦壁部35a,35a部分には、
図21よび
図22に示すように、傾斜方向上下2カ所に所定の間隔をおいてドリルネジ(又はタッピングネジ)の挿通孔が設けられている。
【0069】
また、上記連結部の上部側において鉛直方向に延びる準構造材4とY軸方向に延びる水平補強材10,10とを斜めに連結する所定の長さのコーナー部材36,36は、上記連結部の上部側において鉛直方向に延びる準構造材4とX軸方向に延びる水平補強材10,10とを連結するコーナー部材35,35と全く同様の構成(
図23~
図26)を有し、鉛直方向に延びる準構造材4,4・・とY軸方向の水平補強材10,10とが形成するコーナー部に斜めにブレース材構造にして設けられている。
【0070】
すなわち、同コーナー部材36,36は、コーナー部材35,35と同様に、上記連結金具34の連結金具本体部34aと同様の溶接構造の角形鋼管を用い、その両端側縦壁部36a,36aを鉛直方向の準構造材4とX軸方向の水平補強材10,10とが形成するコーナー部のコーナー面に合わせて傾斜状態にカットすると共に、そのコーナー部内側の上下筒壁部36b、36bを所定深さ切り欠き、同切り欠き凹部を対応する準構造材4および水平補強材10,10に嵌合することにより、上記縦壁部36a,36a部分が対応する鉛直材4および水平補強材10,10の側壁面に所定幅重なるように構成されている。そして、この重なり部において、対応する準構造材4および水平補強材10,10に対して、
図10に示すように、ドリルネジ(又はタッピングネジ)で確実に締結固定されている。この重なり幅も、準構造材4および水平補強材10,10の壁面幅寸法(断面寸法)の1/2に設定されており、準構造材4の壁面部分では2組のコーナー部材36,36の上端側各端部が突き合わせ状態で適切に締結固定されるようになっている。また、水平補強材10,10の壁面部分では、その下端側各端部が同様に上記コーナー部材35,35の上端側各端部と突き合わせ状態で適切に締結固定されるようになっている。準構造材4および水平補強材10,10に対する締結用の縦壁部36a,36a部分には、上記コーナー部材35,35の場合と同様に、傾斜方向上下2カ所に所定の間隔をおいてドリルネジ(又はタッピングネジ)の挿通孔が設けられている。
【0071】
これにより、たとえば
図10~
図12に示すように、鉛直方向に延びる準構造材4の上下方向中間部分には、連結金具34(
図14)を介してXY方向に延びる4本の水平補強材10,10・・が連結され、さらに鉛直方向に延びる準構造材4とX軸方向、Y軸方向の水平補強材10,10・・とをそれぞれ斜めに連結する所定の長さのコーナー部材35,35、36,36が連結されて、鉛直方向の準構造材4と水平補強材10,10・・との連結部が補強される。
【0072】
その結果、鉛直方向に延びる鉛直材4の中間部は、X軸方向、Y軸方向の水平補強材10,10・・によって確実に固定され、水平方向の剛性および耐力が向上し、地震発生時の水平変位量が確実に減少する。
【0073】
しかも、同構成では、さらに、それらX軸方向、Y軸方向の各水平補強材10,10・・と鉛直方向(Z軸方向)の準構造材4とのコーナー部にそれぞれ斜め補強材である前後左右一対のコーナー部材35,35、36,36が上下に位置し、X方向、Y方向に90度位置を変えて連結されている。そして、これら前後左右一対のコーナー部材35,35、36,36がX軸方向、Y軸方向の各水平補強材10,10・・と鉛直方向(Z軸方向)の準構造材4とのコーナー部に二等辺三角形状のトラス構造(最も剛性及び耐力が高い連結角45度)を形成している。
【0074】
したがって、これら前後左右一対のコーナー部材35,35、36,36が、上記X軸方向、Y軸方向の各水平補強材10,10・・と鉛直方向(Z軸方向)の準構造材4とのコーナー部の圧縮荷重に対する剛性、耐力を高め、上記X軸方向、Y軸方向の各水平補強材10,10・・と鉛直方向(Z軸方向)の準構造材4,4・・間にブレース材を連結したのと同様の耐力増大作用を奏する。その結果、さらに水平方向の剛性および耐力が向上し、地震発生時の水平変位量がより確実に減少する。そのため、設置状態における壁とのクリアランスも小さくすることができる。しかも、上記X軸方向、Y軸方向の各水平補強材10,10・・と鉛直方向(Z軸方向)の準構造材4,4・・間に多数本のブレース材を連結した場合のように、準構造材4,4・・間のスペースを制約することもない(取り合いが良くなる)。また、単なる所定の長さのコーナー部材35,35、36,36であるから、それ自体軽量で、連結作業も容易である。その結果、天井システム全体の軽量化にも寄与する。
【0075】
なお、上記コーナー部材35,35、36,36は、例えば
図11~
図13に示すように、その筒体部全体の長さを設定することにより、所望の斜辺長さの二等辺三角形(連結角45度のトラス構造)を形成することができ、軸力の調節を行うことが可能である。
【0076】
(第2の補強構造32について)
次に、
図27は、上記第1の補強構造31において、連結部上部側のコーナー部材36,36の連結位置を連結部下部側のコーナー部材35,35と同一にした第2の補強構造32の構成を示している。その他の構成は、第1の補強構造31と全く同一である。
【0077】
このような構成によると、相互にクロスする4組の水平補強材10,10・・による準構造材4の水平方向の変位量の低減に加えて、鉛直方向(Z軸方向)の鉛直材4とX軸方向の水平補強材10,10相互のコーナー部の前後方向の曲げ変形剛性が大きく向上し、同方向における耐震性を特に有効に改善することができる。
【0078】
(第3の補強構造33について)
次に、
図28は、上記準構造材4に対してXY方向にクロスする形で連結される4本の水平補強材10,10・・相互のコーナー部における曲げ変形剛性を向上させた第3の補強構造33の構成について示している。
【0079】
この第3の補強構造33は、上記鉛直方向の準構造材4に対してXY方向にクロスする形で連結される4本の水平補強材10,10・・相互の各コーナー部をそれぞれ所定の長さのコーナー部材37,37・・で斜めに連結し、同コーナー部に上記同様の二等辺三角形状のトラス構造を形成し、それら4本の水平補強材10,10・・相互の水平方向の曲げ変形剛性を向上させたことを特徴としている。
【0080】
このような構成によると、上記鉛直方向の準構造材4に対してXY方向にクロスする形で連結される4本の水平補強材10,10・・各々の剛性、耐力が大きく向上し、上記鉛直方向の準構造材4と水平補強材10,10・・との連結部補強効果、水平補強材10,10・・による副構造体の水平方向の変位量抑制効果が向上する。
【0081】
(天井枠8を構成する野縁2,2・・と野縁受け1,1・・相互の取り付け構造について)
この実施の形態の天井枠8は、たとえば
図2および
図29に示すように、上部側に位置する複数本の野縁受け1,1・・と、該複数本の野縁受け1,1・・の下部側に取り付けられる複数本の野縁2,2・・とからなり、それら野縁受け1,1・・と野縁2,2・・を相互に格子状に枠組みして構成されている。野縁受け1,1・・と野縁2,2・・は耐震クリップ構造の結合金具7,7・・により相互にクロスする状態で結合され、野縁2,2・・の下面に天井パネル(化粧ボード)80が取り付けられている。
【0082】
この実施の形態の場合、野縁受け1,1・・および野縁2,2・・は何れもウエブ部両側に所定幅のフランジ部を有する溝形鋼により構成されているが、野縁2,2・・のフランジ部には、フック構造のリブ(鉤状の曲成片)が設けられている。
【0083】
そして、両者は、例えば野縁受け1がウエブ部を上下方向に立てた状態、野縁2がウエブ部を水平方向に寝かせた状態で直交方向に配置され、その交差部を耐震クリップ構造の結合金具7によって相互に連結されている。この耐震クリップ構造の結合金具7は、たとえば2枚の同じ形状の板材を拝み状態で重合させており、相互に重合する上端部7a,7aが締結部、野縁受け1を両側から挟む中間部7b,7bが野縁受け固定部、野縁2のフック構造のリブの内側にスライド可能に係合して、野縁2を野縁受け1に連結する下端部(見えないため図示省略)が係合部となっている。また、同係合部である下端部のリブ外周部分には、当該結合金具7係止(滑り止め)のための固定部材7dがネジ止めされている。
【0084】
そして、上記上端部7a,7a部分をドリルネジ(又はタッピングねじ)9aで、また中間部7b,7b部分をドリルネジ(又はタッピングねじ)9bで、それぞれ相互に締結固定することにより、
図2、
図29に示す交差状態で相互に結合している。これにより、
図1のような格子構造の天井枠8が形成されている。そして、この天井枠8の下面側に天井パネル80が取り付けられる。
【0085】
(準構造材4,4・・の下端に対する天井枠8の取り付け構造:
図29~
図32)
他方、以上のようにして、上端部側が上記主構造体の構造材3,3・・に対して強固に取り付けられた副構造体を構成する準構造材4,4・・の下端部に対しては、さらに以下のようにして天井枠8(同天井枠8の野縁受け1部分)が取り付けられる。この準構造材4,4・・の下端部に対する天井枠8(野縁受け1,1・・)の取り付けは、例えば
図30~
図32に示す天井枠8の取付位置調節機能(高さ調節機能)を備えた天井枠取付金具6を用いてなされる。
【0086】
すなわち、この天井枠8の取付位置調節機能を備えた天井枠取付金具6は、準構造材4,4・・の下端部の正面(野縁受け1に取り付けられる面と反対側の面)に取り付けられる位置決め金具6Bと、この位置決め金具6Bを介して準構造材4,4・・の下端部および野縁受け1に取り付けられる固定金具6Aと、上記位置決め金具6Bに対して固定金具6Aを上下移動可能な高さ調節状態および上下移動不可能な固定状態に連結する連結ボルト12と、上記位置決め金具6Bを準構造材4,4・・の下端部に螺合固定するドリルネジ13,13と、上記固定金具6Aを準構造材4,4・・の下端部に螺合固定するドリルネジ14,14と、上記固定金具6Aを天上枠側野縁受け1に螺合固定するドリルネジ15,15とからなっている。なお、上記固定金具6Aを準構造材4,4・・の下端部に螺合固定するドリルネジ14,14は、上下に2本ではなく、中央部に1本でも構わない。
【0087】
位置決め金具6Bは、上下に長い溝形のボルト装着部61aと、該ボルト装着部61aの中央部に形成された上下方向に延びる長穴(スロット)61bと、上記ボルト装着部61aの両側に一体に形成されたフランジ形の固定部61c,61cと、該フランジ形の固定部61c,61cの中央部に設けられたドリルネジ挿通孔61d,61dとを備えた全体として断面ハット形の金属板とからなっている。
【0088】
そして、該位置決め金具6Bには、まず上記溝形のボルト装着部(断面コ字形の溝部)61aに対して、ボルト軸部分が上記長穴61bから手前側に突出し、頭部が溝部内に納まる状態で連結ボルト12を装着支持させる。次に、同連結ボルト12を支持させた状態において、上記フランジ形の固定部61c,61c部分を上記天井枠吊り下げ材4の下端部正面(取り付け面)に対して位置合わせ(上下および左右共に)し、その上で、そのドリルネジ挿通孔61d,61d部分を介して上記天井枠吊り下げ材4の下端部にドリルネジ13,13を螺合することによって当該準構造材4,4・・の下端部の正面に確実に固定して取り付けられる。
【0089】
この場合、上記フランジ形の固定部61c,61c部分の上記準構造材4,4・・の下端部の正面(取り付け面)に対する位置合わせは、上述した位置決め金具6Bの下端部端面の左右に設けた第2の嵌合爪61f,61fの上面を準構造材4,4・・の下端面に突き合わすと共にフランジ形の固定部61c,61cの両側面を準構造材4,4・・の両側面に一致させる形で行なわれる。すなわち、位置決め金具6Bの左右の幅寸法は、準構造材4,4・・の左右の幅寸法に等しく形成されている。
【0090】
また、上記ボルト装着部61aの溝部は、連結ボルト12のボルト頭部の厚さ寸法よりも少し深く形成されていて、当該位置決め金具6Bの上記準構造材4,4・・の下端部に対する固定状態においても、ボルト軸を介したボルト12自体の上下スライドが可能となるように構成されている。この点は長穴61bの幅寸法とボルト軸の直径との関係も同様である。
【0091】
他方、固定金具6Aは、
図32のような全体として断面ハット形の形状に成形された金属板本体60よりなり、平面視U字形の準構造材4,4・・に対する第1の嵌合部60aと、該第1の嵌合部60aのU状部基端壁(後端壁)に形成された長穴(スロット)60bと、上記第1の嵌合部60aの左右両側壁中央部の上下2カ所に形成されたドリルネジ挿通孔60c,60c、60c,60cと、該ドリルネジ挿通孔60c,60c、60c,60cに挿通されるドリルネジ14,14、14,14と、上記第1の嵌合部60aの左右両側壁先端部の外側(左右両側)に位置して一体に設けられた(かつクロスして設けられた)側面視コ字形の天井枠(交差方向の野縁受け1)に対して嵌合する第2の嵌合部60d,60dと、該第2の嵌合部60d,60dのコ字状部基端壁(後端壁)中央に形成されたドリルネジ挿通孔60c,60cと、該ドリルネジ挿通孔60c,60cに挿通されるドリルネジ15,15とからなっている。平面視U字形の第1の嵌合部60aは、上記角形鋼菅よりなる準構造材4,4・・の下端部に正面側から嵌合するようになっているとともに、これとクロス方向の側面視コ字形の第2の嵌合部60d,60dは、上記溝形鋼よりなる天上枠の野縁受け1の側面に嵌合するようになっている。
【0092】
固定金具6Aの第1の嵌合部60aは、上記角形鋼菅よりなる準構造材4,4・・の下端部に嵌合するに際し、上記位置決め金具6Bおよび上記位置決め金具6Bのボルト装着部61aに装着された連結ボルト12を介して嵌合されるようになっており、嵌合後、連結ボルト12により連結され、ワッシャー12aおよびナット12bを介して最終的に締結固定されるまでの間は、上記位置決め金具6Bの上記長穴61bおよび固定金具6Aの長穴60bを介して上下方向に自由にスライドし、所定の高さ位置に調節することが可能となっている。
【0093】
すなわち、位置決め金具6Bのボルト装着部61aの溝部の深さは、すでに述べたように、連結ボルト12のボルト頭部の厚さ寸法よりも少し深く形成されており、位置決め金具6Bの上記準構造材4,4・・の下端部に対する固定状態においても、長穴61bの上下方向の長さに応じてボルト軸を用いた連結ボルト12自体の上下スライドが可能となっている。この点は長穴61bの幅寸法とボルト軸の直径との関係も同様であり、左右にスライド可能な隙間を有して連結ボルト12のボルト軸が遊嵌されており、それによって連結ボルト12の上下スライドが可能となっている。
【0094】
そして、準構造材4,4・・の下端部を野縁受け1に取り付ける固定金具6Aの第1の嵌合部60aは、その取り付けに当たって上記準構造材4,4・・の下端部に嵌合される際に、まず先に準構造材4,4・・の下端部に固定されている位置決め金具6Bに支持され、上記のように上下方向にスライド可能な状態に保持されている連結ボルト12の先端側ボルト軸(長穴61b)から突出しているボルト軸部分)が固定金具6A側U状部基端壁の長穴60bを貫通し、同長穴60bの突出端側で同長穴60bの径よりも直径の大きいワッシャー12bを介してナット12cを螺合することにより締結固定される。この場合、固定金具6Aの第1の嵌合部60aの左右両側壁部の長さは、もちろん上記位置決め金具6Bのボルト装着部61aの高さ寸法を考慮して、第2の嵌合部60d,60dが正確に野縁受け1に嵌合され得る長さに形成されている。また、位置決め金具6B側の長穴61bと固定金具6A側の長穴60bとの長さ関係は、長穴61bの長さの方が遥かに長く形成されており、長穴60bの方の長さは連結ボルト12のボルト軸の直径の2倍程度の短いものに形成されている。これは、基本的に天井枠吊り下げ材4に対する天井枠取り付け時(野縁受け1取り付け時)の高さ調節は長穴61bの方で行うが、長穴61bのみでは調節寸法が不足する時の調節寸法の補充、又は最終的に固定する時の固定金具6Aのみの操作による細かいレベル調整は長穴60bを利用して行うようにしているためである。
【0095】
このような構成によると、上記建物構造体40側主構造体の構造材3,3・・に対して強固に取り付けられた鉛直方向の準構造材4,4・・の下端部に対して最終的に天井枠8を取り付けるに際して、次のように、固定金具6Aを連結ボルト12を介して位置決め金具6B(すなわち準構造材4,4・・)に対して上下に移動させることにより、長穴61b(および長穴60b)の長さを利用した有効な取り付け高さの調節を行った上で、最終的に準構造材4,4・・の下端部に固定され、かつ天井枠8の野縁受け1部分を嵌合固定する固定金具6Aを適正な取り付け高さに正確に取り付けることができる。この結果、天井枠8の野縁受け1部分に荷重による撓み等があっても、同部分で、それを十分に修正した可及的に水平な取り付けが可能となる。
【0096】
しかも、この実施の形態の場合、上記位置決め金具6Bの金具本体部分に設けられた天井枠吊り下げ材4に対して嵌合される嵌合爪は、当該位置決め金具6Bの上端部両側にあって天井枠吊り下げ材4の左右両側に嵌合される第1の嵌合爪61e,61eと、同位置決め金具6Bの下端部の左右にあって準構造材4,4・・の位置決め金具6B取り付け部下端部の左右に下方側から水平に係合される表面側から裏面側に水平方向に直角に折り曲げて設けられた鉤状の第2の嵌合爪61f,61fよりなっている。この場合、上端部左右両側の第1の嵌合爪61e,61eは、位置決め金具6Bの金具本体左右の一部を準構造材4側に90度折り曲げて形成されている。他方、下端部左右の第2の嵌合爪61f,61fは、位置決め金具6Bの金具本体底部の一部(左右両側の一部)を天井枠吊り下げ材4の下端部を係合可能に表面側から裏面側に直角に折り曲げて形成されている(水平な係合縁部を形成)。
【0097】
このような構成によると、位置決め金具6Bを準構造材4,4・・の下端部に固定するに際し、位置決め金具6Bの下端部の水平方向に直角に折り曲げられた鉤状の第2の嵌合爪61f,61f(
図30、
図31および
図32参照)を準構造材4,4・・の位置決め金具6B取り付け面の下端部に直角に係合することによって、上下方向の取り付け位置を決めるとともに、同位置決め金具6Bの上端部両側の第1の嵌合爪61e,61eを準構造材4,4・・の両側に嵌合(抱合)することにより、左右方向の取り付け位置を決めて、その全体を確実に仮止めすることができる(
図30の状態を参照)。
【0098】
すなわち、同構成によれば、上下左右の各取り付け位置を正確に位置決めした上で確実に仮止め固定し、その上でドリルネジ13,13により固定することができる(
図32参照)。その結果、作業者が手で支持していなくても確実に位置決め状態に保持され、またドリルネジ13,13を螺合しても全く位置ずれすることなく正確に固定することができるようになる。
【0099】
したがって、位置決め金具6Bを準構造材4,4・・に固定する際の作業性が大きく改善されることはもちろん、天上枠8を嵌合固定する固定金具6Aの位置決め金具6Bを介した準構造材4,4・・に対する取り付け位置の調節が容易になり、準構造材4,4・・に対する天上枠8の取り付け精度も向上する。
【0100】
また、この場合、上記位置決め金具6B下端部の第2の嵌合爪61f,61fは、水平方向に直角に折り曲げられた構成となっているので、天井枠吊り下げ材4,4・・に上述した抱き合わせ部(連結部)X(
図9参照)があっても支障なく
図30の状態に係合させることができる。
【0101】
<第4の補強構造39について>
次に
図33は、上述した第1~第3の補強構造31~33に加えて使用される第4の補強構造39の構成について示している。
【0102】
この第4の補強構造39は、上述した第1の補強構造31に対して上記第3の補強構造33を組み合わせたものである。ただし、水平補強材10,10・・のコーナー部間に連結されるコーナー部材37,37・・の長さは、上記第3の補強構造33のものよりも所定寸法長くしている。
【0103】
このような構造によれば、上述した第1の補強構造31における水平補強部材10,10・・の水平方向相互間における曲げ変形剛性が一層大きく向上し、より安定したより強度の高い補強構造が実現される。このような構成の補強構造も、上述した第1、第3の補強構造31,33に変えて、また、適宜上記第1~第3の補強構造31~33と組み合わせて使用される。
【0104】
(準構造材4,4・・を取り付ける主構造体側の構造材3,3・・について:
図34)
すでに述べたように、上記棚型の主構造体(ぶどう棚)は、XY方向の複数本の構造材(角パイプ)3,3・・、3,3・・により構成されている。
図1では、副構造体を構成する複数本の準構造材4,4・・が取り付けられる複数本の構造材(角パイプ)3,3・・として、X方向に配置された複数本の構造材(角パイプ)3,3・・を利用する場合を示したが、これは
図34に示すように、Y方向に配置された複数本の構造材(角パイプ)3,3・・を利用して取り付けることも可能であり、もちろん両方の取付構造を組み合わせることもできる。
【0105】
<実施の形態2の構成について:
図35~
図41>
以上の
図1~
図34の実施の形態1の構成では、上記副構造体を構成する準構造材4,4・・の下端に取り付けられる格子構造の天井枠8を、非構造材である溝形鋼により構成した。しかし、同格子構造の天井枠8は、上記副構造体部分などと同様の軽量ではあるが強度の高い閉断面構造の準構造材(角形鋼など)により構成することもできる。
図35~
図41は、そのように構成した本願発明の実施の形態2に係る耐震天井の構成を示している。その他の部分の構成および作用は、上記実施の形態1の構成および作用と全く同一である。
【0106】
天井枠8を構成する野縁2,2・・および野縁受け1,1・・に、上述した副構造体構成材および水平補強材と同様の軽量ではあるが強度の高い、角形鋼などの閉断面構造の準構造材を採用し、同準構造材により格子構造の天井枠8を構成すると、天井枠8部分の剛性、耐力も向上し、より水平変位量の小さい準構造型の耐震天井構造を実現することができる。
【0107】
今、
図35および
図36において、格子構造の天井枠8を構成する野縁2,2・・および野縁受け1,1・・は、いずれも角形鋼などの軽量ではあるが強度が高い閉断面構造の準構造材により形成されている。そして、野縁2,2・・は、野縁2,2・・よりも所定寸法大径の野縁受け1,1・・に対して、野縁取付金具(直交固定金具)70,70・・を介して相互に直交する状態で強固に取り付けられている。符号70a、70a・・は、野縁取付金具70,70・・の野縁受け1,1・・に対する上方側からの嵌合部、符号70b、70b・・は、同嵌合部70a、70a・・と一体の野縁2,2・・の取付部であり、それぞれ野縁受け1,1・・、野縁2,2・・は、それら嵌合部70a、70a・・、野縁取付部70b、70b・・に対してビスネジ等で強固に取り付けられている。嵌合部70a、70a・・と野縁取付部70b、70b・・は、相互に直交する嵌合、取付構造となっている。そして、上記野縁2,2・・の下面側に天井パネル(化粧ボード)80が取り付けられている。
【0108】
このように、天井枠8を構成する野縁2,2・・および野縁受け1,1・・に、上記実施の形態1で述べた副構造体の構成材および水平補強材と同様の軽量ではあるが強度の高い、角形鋼などの閉断面構造の準構造材を採用し、同準構造材によって、
図35に示すような格子構造の天井枠8を構成すると、当該天井枠8部分の剛性、耐力も向上し、主構造体、副構造体の剛性、耐力の向上と合わせて、より水平変位量の小さい準構造型の耐震天井構造を実現することができる。したがって、天井懐が深く、副構造体を構成する準構造材4,4・・の鉛直方向の長さが相当に長いような場合にも、十分に耐震強度の高い天井を構成することができる。この場合、野縁2,2・・および野縁受け1,1・・を構成する角形鋼は、必ずしも
図9のような「かしめ角形鋼」でなくても良い。
【0109】
この実施の形態では、そのような場合において、さらに上記実施の形態1の場合以上に余裕を持って、準構造部材4,4・・の上下方向の取付位置を調整し得る取付位置調整機能を備えた天井枠取付金具90が設けられており、同天井枠取付金具90を介して準構造部材4,4・・の下端に上記構造の天井枠8が取り付けられるようになっている。
【0110】
すなわち、この実施の形態2における天井枠取付金具90は、上記実施の形態1における天井枠取付金具6と異なり、角形鋼よりなる準構造材4,4・・の下端を同じく角形鋼よりなる同径の野縁受け1,1・・の上面に直交させる形で野縁受け1,1・・(天井枠8)を取り付けるように構成されている。そして、そのために、野縁受け1,1・・の上部に跨設状態で嵌合固定される逆U状の野縁受け連結金具90bと、該逆U状の野縁受け連結金具90bの上部側から同寸法で所定の長さ上方に延び、上記準構造材4,4・・の下端部をスライド可能に嵌合(内嵌)する角筒状の準構造材連結金具90aとから構成されている。これら野縁受け連結金具90bと準構造材連結金具90aは、たとえば
図40に示すように、溶接により一体に接合して構成されている。
上記逆U状の野縁受け連結金具90bは、
図37および
図38に示すように、その左右両側壁部92a、92a部分を上記野縁受け1,1・・の準構造材連結位置の左右両側壁部部分にドリルネジ(またはタッピングネジ)94,94・・で強固に締結固定されている。それにより、上記準構造材4,4・・の下端部をスライド可能に嵌合(内嵌)する角筒状の準構造材連結金具90aが、上記野縁受け1,1・・上に正確、かつ強固に取り付けられた状態となる。
【0111】
上記角筒状の準構造材連結金具90aは、
図37~
図40に示すように、その左右両側壁中央に位置して上下両端方向に所定の長さ延びる長穴91a,91bが設けられている。そして、これら各長穴91a,91bには、上記連結される準構造材4,4・・下端のボルト挿通孔4a,4bを通して準構造材連結用のボルト93が貫挿され、同準構造材連結用のボルト93は所定の上下高さ位置でワッシャー93aおよびナット93bにより締結固定されるようになっている。そして、この実施の形態の場合、同準構造材連結用のボルト93の締結固定状態において、準構造材連結金具90aの左右両側壁面の上端側2カ所および前後両壁面の上下2カ所の合計8カ所を通して準構造材4,4・・の左右および前後各壁面にドリルネジ(又はタッピングネジ)94,94・・が螺合され、強固に締結固定される。準構造材連結金具90aの左右両側壁面の上端側2カ所および前後両壁面の上下2カ所には、同ドリルネジ(又はタッピングネジ)94,94・・を螺合するためのネジ穴(挿通孔)が予め設けられている。
【0112】
なお、このドリルネジ(又はタッピングネジ)94,94・・を螺合するためのネジ穴(挿通孔)は、準構造材連結金具90aの前後両壁面側では、たとえば
図37に示すように、上下両端側および中間の3カ所に設けられており、それらのうちの中間部のネジ穴(挿通孔)95,95は、たとえば準構造材4,4・・のボルト挿通孔4a,4bが図示のように下端側に届かなかった場合にも(中間位置近くでも)連結することができるようにしている。なお、
図37中において、上記上下両端側および中間の3カ所のネジ穴(挿通孔)の内、中間部のネジ穴(挿通孔)95以外の部分には符号を省略して示している。
【0113】
このような構成の場合、懐が深く、上記副構造体を構成する準構造材4,4・・が相当に長くなった場合にも、上記準構造材連結金具90aの長さを十分に長くし、天井枠取付位置調節用の長穴91a,91bの長さを長くすれば、有効に対応することができるようになる。
【0114】
そして、この実施の形態2の場合にも、上記主構造体側の構造材(角パイプ)3,3・・には、
図35の場合のようなX方向の構造材(角パイプ)3,3・・に限らず、
図41のようなY方向の構造材(角パイプ)3,3・・を利用して取り付けることも可能であり、もちろん両方の取付構造を組み合わせることも可能である。
【符号の説明】
【0115】
1は、野縁受け
2は、野縁
3は、構造材
4は、準構造材
5は、準構造材取り付け金具
6は、天井枠取付金具
7は、野縁結合金具
8は、天井枠
10は、水平補強材
31は、第1の補強構造
32は、第2の補強構造
33は、第3の補強構造
34は、水平補強材連結金具
35は、コーナー部材
36は、コーナー部材
37は、コーナー部材
39は、第4の補強構造
40は、建物構造体