(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ドレンキャップ
(51)【国際特許分類】
E04D 13/04 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
E04D13/04 E
(21)【出願番号】P 2020208459
(22)【出願日】2020-12-16
【審査請求日】2023-10-24
(73)【特許権者】
【識別番号】592179137
【氏名又は名称】株式会社アルテック
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】弁理士法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】篠塚 継男
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 忠明
【審査官】油原 博
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-055140(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0049036(US,A1)
【文献】特開2009-097168(JP,A)
【文献】特開2015-001055(JP,A)
【文献】特開2017-012532(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04D 13/04
E03C 1/12;1/18-1/184;1/20-1/298
E03F 1/00;5/10;5/14-5/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排水口を覆う通水構造のキャップ本体と、該キャップ本体から下方に張り出し且つ前記排水口の内部に窄めて挿入されてから展開して前記排水口の内部周囲に圧接する固定部材とを備えたドレンキャップであって、水平方向に弾性傾動可能なトーションばねが前記キャップ本体の下部内周の複数箇所に装備され、前記トーションばねの一端が前記キャップ本体の下部内周で固定され且つ他端が前記キャップ本体の下部内周に沿い前記一端と逆向きに所要長さ延びてから下向きに屈曲して前記固定部材を成し、該固定部材が前記トーションばねの弾性力により前記排水口の内部周囲に圧接するように構成されていることを特徴とするドレンキャップ。
【請求項2】
固定部材に弾性ゴムから成る滑り防止具が装着され、該滑り防止具を介して前記固定部材が前記排水口の内部周囲に圧接するように構成されていることを特徴する請求項1に記載のドレンキャップ。
【請求項3】
滑り防止具は、排水口の内部周囲への当接面を成す圧接部と、固定部材への装着を担う保持部と、該保持部と前記圧接部との間を繋ぐ連結部とからなり、少なくとも前記圧接部の幅方向両側と前記保持部との間に前記圧接部の弾性変形を助勢する変位空間が確保されていることを特徴する請求項2に記載のドレンキャップ。
【請求項4】
保持部が固定部材を通す穴を有し且つ該穴を通された固定部材の下端が少なくとも横向きに屈曲されて前記滑り防止具の抜け止め部を成すように構成されていることを特徴する請求項2又は3に記載のドレンキャップ。
【請求項5】
抜け止め部の終端が上向きに折り返されて滑り防止具の固定部材回りの転動を規制するよう干渉するストッパ部として形成されていることを特徴する請求項4に記載のドレンキャップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、雨水を排水する排水口に取り付けられるドレンキャップに関するものである。
【背景技術】
【0002】
ビルやマンション等の建築物の屋上や各階のベランダには、雨水を排水する排水口(ドレン)が設けられているのが一般的であり、この種の排水口には、雨水に随伴される落ち葉、小枝、紙、又は、ビニール等といった固形物の侵入防止や、排水口が剥き出しになることによる危険性の回避、美観の保持等といった観点からドレンキャップが取り付けられている。
【0003】
図7に示す如く、従来におけるドレンキャップ1の場合には、建築物の屋上やバルコニー等を構成するコンクリート躯体2に、その表面に溜まる雨水を排出するための排水管3が鉛直方向に埋設され、該排水管3の上端部に、雨水を呼び込む排水口4を形成するドレン本体5が嵌着されている。
【0004】
ここで、前記コンクリート躯体2の表面には、防水シート6が被覆されるようになっているが、この防水シート6は、前記ドレン本体5上端の鍔部7と中空円盤形の防水層押え8とで挟み付けるように固定されており、この防水層押え8は、前記ドレン本体5上端の鍔部7に対しネジ止めされるようになっている。
【0005】
そして、前記排水口4が通水構造のキャップ本体9により覆われており、該キャップ本体9は、図示の如きドーム形を成し且つ雨水を通すための複数の開口10を備え、その内部中央に心棒部9aを備え且つ該心棒部9aに二枚の板ばね部材11がビスで固定されている。尚、この板ばね部材11は、長さが排水口4の径よりも十分に長くなっており、二枚の板ばね部材11が十文字に交差するよう重ね合わせた状態で固定されている。
【0006】
図8は前記キャップ本体9を排水口4に取り付ける様子を示すもので、前記キャップ本体9を取り付ける際は、作業員が二枚の板ばね部材11を撓ませて該各板ばね部材11の下端部を排水口4の直径よりも窄めて排水口4の内部に板ばね部材11を挿入するようしており、その挿入後に作業員の手が板ばね部材11から放されると、該板ばね部材11の下端部が自身の弾性力により広がって前記排水口4直下の排水管3内側に圧接し、これによりキャップ本体9が固定される。
【0007】
ただし、斯かる従来のドレンキャップ1にあっては、十文字に交差させた二枚の板ばね部材11を排水口4の径よりも小さく窄ませて排水口4に挿入するようにしていたため、該排水口4の開口面積のうちの多くの領域が、前記各板ばね部材11の十文字の交差部分により塞がれてしまい、雨水に随伴される落ち葉等が引っ掛かることで排水口4の詰まりが起こり易いという課題があった。
【0008】
そこで、下記の如き特許文献1が本発明と同じ出願人により提案されており、この特許文献1にあっては、
図9に示す如く、キャップ本体9の下部内周の複数箇所に個別に板ばね部材11’を装備し、該各板ばね部材11’により排水口4(
図7参照)の開口面積を極力狭めないようにしたドレンキャップ1’となっている。尚、
図9に示すドレンキャップ1’において、前述の
図7及び
図8と機能的に変わらない構成要件については、説明の便宜上から同じ符号を付すことで説明を割愛している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
しかしながら、このようにキャップ本体9の下部内周の複数箇所に個別に板ばね部材11’を装備したドレンキャップ1’では、排水口4(
図7参照)の開口面積を極力狭めなくて済むというメリットが得られる一方、様々な口径の排水口4に合わせて撓ませた各板ばね部材11’の圧接姿勢が概ね傾斜状態となって局所的な点接触となってしまう上、排水口4の口径変化に応じた各板ばね部材11’の撓み量の変化くらいでは大きな弾性力が得られ難く、排水口4に対し強固な固定を図ることが難しいという課題があった。
【0011】
本発明は、上述の実情に鑑みてなしたもので、排水口の開口面積を極力広く確保しながらも該排水口に対し強固な固定を図り得るドレンキャップを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、排水口を覆う通水構造のキャップ本体と、該キャップ本体から下方に張り出し且つ前記排水口の内部に窄めて挿入されてから展開して前記排水口の内部周囲に圧接する固定部材とを備えたドレンキャップであって、水平方向に弾性傾動可能なトーションばねが前記キャップ本体の下部内周の複数箇所に装備され、前記トーションばねの一端が前記キャップ本体の下部内周で固定され且つ他端が前記キャップ本体の下部内周に沿い前記一端と逆向きに所要長さ延びてから下向きに屈曲して前記固定部材を成し、該固定部材が前記トーションばねの弾性力により前記排水口の内部周囲に圧接するように構成されていることを特徴とするものである。
【0013】
而して、キャップ本体から下方に張り出している各固定部材を各トーションばねの弾性力に抗し内側に寄せて窄めた状態とし、斯かる状態で排水口の内部に挿入してから前記各固定部材を前記各トーションばねの弾性力により展開させると、前記各固定部材が前記排水口の内部周囲に圧接して前記キャップ本体が固定されることになる。
【0014】
この際、前記各固定部材は、排水口の軸心方向と平行な姿勢(下向きに垂下した姿勢)に維持された状態のまま自身が撓むことなく内側に寄ったり外側に展開したりするだけなので、前記各固定部材の圧接姿勢が前記排水口の内部周囲に対し傾斜状態とならずに確実に沿う状態となって該排水口の軸心方向の所要範囲に亘る線接触が得られることになる。
【0015】
しかも、前記各固定部材を前記排水口の内部周囲に圧接させるトーションばねは、従来の如き板ばね形式のものと比較して単位体積あたりに蓄えられる弾性エネルギーが大きいため、このようなトーションばねを採用すれば、排水口の口径変化に応じ従来の各板ばね部材が撓んで生み出す弾性力よりも大きな弾性力を発揮させることが可能となる。
【0016】
この結果、前記各固定部材を確実に前記排水口の内部周囲に沿わせて所要範囲に亘り線接触で効果的に圧接させ、しかも、前記各固定部材の撓みに依存せずに前記各トーションばねにより大きな弾性力をかけ、前記排水口に対する強固なドレンキャップの固定を図ることが可能となる。
【0017】
尚、各固定部材を排水口の内部周囲に圧接させた状態において、各トーションばねはキャップ本体の下部内周に沿う形となって前記排水口の開口部分に大きく張り出さないため、該排水口の開口面積が極力広く確保されることになり、雨水に随伴される落ち葉等が引っ掛かる虞れが殆どなくなって排水口の詰まりが起こり難くなる。
【0018】
更に、本発明をより具体的に実施するにあたっては、固定部材に弾性ゴムから成る滑り防止具が装着され、該滑り防止具を介して前記固定部材が前記排水口の内部周囲に圧接するように構成されていることが好ましい。
【0019】
このようにすれば、弾性ゴムから成る滑り防止具を介在させることで排水口の内部周囲に対する摩擦力が高められることに加え、各固定部材の所要範囲に亘る線接触が面接触に拡張されることにもなり、排水口の内部周囲に対する各固定部材の滑り止め効果が従来よりも大幅に向上されてドレンキャップの抜脱が効果的に防止される。
【0020】
更に、前記滑り防止具は、排水口の内部周囲への当接面を成す圧接部と、固定部材への装着を担う保持部と、該保持部と前記圧接部との間を繋ぐ連結部とからなり、少なくとも前記圧接部の幅方向両側と前記保持部との間に前記圧接部の弾性変形を助勢する変位空間が確保されていると良い。
【0021】
このようにした場合に、前記各固定部材を滑り防止具を介して排水口の内部周囲に圧接させると、前記滑り防止具の圧接部における幅方向両側が排水口の周方向の曲面に沿うように弾性変形する結果、前記圧接部が排水口の内部周囲に対し良好に圧接されることになる。
【0022】
尚、前記排水口の口径が変化しても、これに追従して前記排水口の周方向の曲面に沿うように前記滑り防止具の圧接部が弾性変形することになるので、様々な口径の排水口の内部周囲に対し常に前記圧接部を圧接させることが可能で、前記排水口の口径にかかわらず高い滑り止め効果が発揮されることになる。
【0023】
また、前記保持部が固定部材を通す穴を有し且つ該穴を通された固定部材の下端が少なくとも横向きに屈曲されて前記滑り防止具の抜け止め部を成すように構成されていることが好ましく、このようにすれば、前記抜け止め部により前記滑り防止具の脱落を防止することが可能となる。
【0024】
この際、前記抜け止め部の終端が上向きに折り返されて滑り防止具の固定部材回りの転動を規制するよう干渉するストッパ部として形成されていると良く、このようにすれば、ドレンキャップの設置時に前記滑り防止具が固定部材回りに転動しなくなり、前記滑り防止具の圧接部を確実に排水口の内部周囲に対峙させることが可能となる。
【発明の効果】
【0025】
本発明のドレンキャップによれば、下記の如き種々の優れた効果を奏し得る。
【0026】
(I)本発明の請求項1に記載の発明によれば、キャップ本体の下部内周の複数箇所に装備して排水口の開口部分に大きく張り出させないようにしたトーションばねにより各固定部材を確実に排水口の内部周囲に沿わせ、該排水口の軸心方向の所要範囲に亘る線接触の状態として効果的に圧接させることができ、前記各固定部材の撓みに依存せずに前記各トーションばねにより大きな弾性力をかけることもできるので、前記排水口の開口面積を極力広く確保しながらも該排水口に対し強固な固定を図ることができる。
【0027】
(II)本発明の請求項2に記載の発明によれば、弾性ゴムから成る滑り防止具を介在させることで排水口の内部周囲に対する摩擦力を高め且つ各固定部材の所要範囲に亘る線接触を面接触に拡張することができ、排水口の内部周囲に対する各固定部材の滑り止め効果を従来よりも大幅に向上することができてドレンキャップの抜脱をより一層確実に防止することができる。
【0028】
(III)本発明の請求項3に記載の発明によれば、滑り防止具の圧接部における幅方向両側を排水口の周方向の曲面に沿うように弾性変形させ、前記圧接部を排水口の内部周囲に対し良好に圧接させることができるので、前記排水口の口径にかかわらず高い滑り止め効果を発揮させることができる。
【0029】
(IV)本発明の請求項4に記載の発明によれば、滑り防止具における保持部の穴を通された固定部材の下端を少なくとも横向きに屈曲して抜け止め部としたことにより、前記滑り防止具の脱落を確実に防止することができる。
【0030】
(V)本発明の請求項5に記載の発明によれば、抜け止め部の終端を上向きに折り返して形成したストッパ部が干渉することで滑り防止具の固定部材回りの転動が規制されるので、ドレンキャップの設置時に前記滑り防止具が固定部材回りに転動しなくなり、前記滑り防止具の圧接部を確実に排水口の内部周囲に対峙させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】本発明のドレンキャップの一実施例を示す断面図である。
【
図2】
図1のドレンキャップを斜め上方から見た斜視図である。
【
図3】
図1のドレンキャップを下方から仰ぎ見た平面図である。
【
図4】
図1のトーションばねを斜め上方から見た斜視図である。
【
図5】
図4のトーションばねを上方から見下ろした平面図である。
【
図6】
図5の滑り防止具の変形例を示す断面図である。
【
図8】
図7のドレンキャップを排水口に取り付ける様子を示す斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0033】
図1~
図3は本発明のドレンキャップの一実施例を示すもので、
図1に本発明のドレンキャップを使用状態で示している通り、建築物の屋上やバルコニー等を構成するコンクリート躯体2の表面に防水シート6が被覆され、該防水シート6上に溜まる雨水を排出するための排水口4を上端部に開口した排水管3が前記コンクリート躯体2の鉛直方向に埋設されており、前記排水口4を覆うドーム形を成し且つ雨水を通すための複数の開口10を備えたキャップ本体12と、該キャップ本体12から下方に張り出し且つ前記排水口4の内部に窄めて挿入されてから展開して前記排水口4の内部周囲(排水管3の内周部分)に圧接する固定部材13とを備えたドレンキャップ14となっているが、水平方向に弾性傾動可能なトーションばね15が前記キャップ本体12の下部内周の複数箇所に装備され、前記トーションばね15の一端が前記キャップ本体12の下部内周で固定され且つ他端が前記キャップ本体12の下部内周に沿い前記一端と逆向きに所要長さ延びてから下向きに屈曲して前記固定部材13を成し、該固定部材13が前記トーションばね15の弾性力により前記排水口4の内部周囲に圧接するように構成されているところが特徴となっている。
【0034】
より詳細に述べると、前記トーションばね15は
図4に示す如き形状を成しており、弾性線材の途中を巻き回してコイル部16とし、該コイル部16の上側で一端を固定アーム17として水平に延ばし且つキャップ本体12の下部内周に宛がって固定する一方、前記コイル部16の下側で他端を前記キャップ本体12の下部内周に沿う可動アーム18として水平に延ばし且つ排水口4の内側に少しだけ入り込ませてから下向きに屈曲させて前記固定部材13を成すようにしてあるが、特に本実施例にあっては、前記固定部材13に弾性ゴムから成る滑り防止具19が装着され、該滑り防止具19を介して前記固定部材13が前記排水口4の内部周囲に圧接されるようにしてある。
【0035】
一方、前記キャップ本体12の下部内周の複数箇所には、前記トーションばね15のコイル部16を収容して支持するための収容室20が夫々形成されており、これらの各収容室20は、一部の側面と底面とを開放した箱形構造を成しており、その開放された一部の側面からは前記トーションばね15の固定アーム17が突き出し、開放された底面からは前記トーションばね15の可動アーム18が一段下がった位置で突き出して水平方向に自由に弾性傾動できるようになっている。
【0036】
ここで、前記収容室20に収容されたトーションばね15のコイル部16には、下端に受け座21を備えた案内棒22が下から挿通され、該案内棒22の上端を前記収容室20の天井面に差し込み固定することで前記コイル部16が前記受け座21により前記収容室20内に保持されるようにしてある。
【0037】
また、
図5に上方から見下ろした平面図で示している通り、ここに一例として示している滑り防止具19では、排水口4の内部周囲への当接面を成す圧接部23と、固定部材13を通す穴24aを有して前記固定部材13への装着を担う保持部24と、該保持部24と前記圧接部23との間を繋ぐ連結部25とを備え、前記圧接部23の幅方向両側と前記保持部24との間に前記圧接部23の弾性変形を助勢する変位空間26が確保されるようになっている。
【0038】
この際、前記保持部24の穴24aを通された固定部材13の下端が横向きに屈曲されて前記滑り防止具19の抜け止め部27を成すように構成され、該抜け止め部27の終端が更に上向きに折り返されて前記保持部24の掛止溝24bに下から嵌まり込むストッパ部28を成すように構成されており、該ストッパ部28における前記掛止溝24bの両側壁への干渉により前記滑り防止具19の固定部材13回りの転動が規制されるようにしてある。
【0039】
而して、キャップ本体12から下方に張り出している各固定部材13を各トーションばね15の弾性力に抗し内側に寄せて窄めた状態とし、斯かる状態で排水口4の内部に挿入してから前記各固定部材13を前記各トーションばね15の弾性力により展開させると、前記各固定部材13が滑り防止具19を介し前記排水口4の内部周囲に圧接して前記キャップ本体12が固定されることになる。
【0040】
この際、前記各固定部材13は、排水口4の軸心方向と平行な姿勢(下向きに垂下した姿勢)に維持された状態のまま自身が撓むことなく内側に寄ったり外側に展開したりするだけなので、前記各固定部材13の圧接姿勢が前記排水口4の内部周囲に対し傾斜状態とならずに確実に沿う状態となって該排水口4の軸心方向の所要範囲に亘る線接触が得られるが、特に本実施例にあっては、前記固定部材13が滑り防止具19を介して前記排水口4の内部周囲に圧接するようになっているため、該排水口4の内部周囲に対する摩擦力が高められることに加え、各固定部材13の所要範囲に亘る線接触が面接触に拡張されることにもなり、排水口4の内部周囲に対する各固定部材13の滑り止め効果が従来よりも大幅に向上されてドレンキャップ14の抜脱が効果的に防止される。
【0041】
しかも、前記各固定部材13を滑り防止具19を介して前記排水口4の内部周囲に圧接させるトーションばね15は、従来の如き板ばね形式のものと比較して単位体積あたりに蓄えられる弾性エネルギーが大きいため、このようなトーションばね15を採用すれば、排水口4の口径変化に応じ従来の各板ばね部材が撓んで生み出す弾性力よりも大きな弾性力を発揮させることが可能となる。
【0042】
この結果、前記各固定部材13を確実に前記排水口4の内部周囲に沿わせて所要範囲に亘り滑り防止具19を介在させた面接触で効果的に圧接させ、しかも、前記各固定部材13の撓みに依存せずに前記各トーションばね15により大きな弾性力をかけ、前記排水口4に対する強固なドレンキャップの固定を図ることが可能となる。
【0043】
尚、前記各固定部材13を全排水口4の内部周囲に圧接させた状態において、前記各トーションばね15がキャップ本体12の下部内周に沿う形となって前記排水口4の開口部分に大きく張り出さないため、該排水口4の開口面積が極力広く確保されることになり、雨水に随伴される落ち葉等が引っ掛かる虞れが殆どなくなって排水口4の詰まりが起こり難くなる。
【0044】
また、前記保持部が固定部材13を通す穴24aを有し且つ該穴24aを通された固定部材13の下端が少なくとも横向きに屈曲されて前記滑り防止具19の抜け止め部27を成すように構成されているので、前記抜け止め部27により前記滑り防止具19の脱落を防止することが可能となる。
【0045】
しかも、本実施例にあっては、前記抜け止め部27の終端が更に上向きに折り返されて滑り防止具19の固定部材13回りの転動を規制するよう干渉するストッパ部28として形成されているので、ドレンキャップ14の設置時に前記滑り防止具19が固定部材13回りに転動しなくなり、前記滑り防止具19の圧接部23を確実に排水口4の内部周囲に対峙させることが可能となる。
【0046】
従って、上記形態例によれば、キャップ本体12の下部内周の複数箇所に装備して排水口4の開口部分に大きく張り出させないようにしたトーションばね15により各固定部材13を確実に排水口4の内部周囲に沿わせ、該排水口4の軸心方向の所要範囲に亘る面接触の状態として効果的に圧接させることができ、前記各固定部材13の撓みに依存せずに前記各トーションばね15により大きな弾性力をかけることもできるので、前記排水口4の開口面積を極力広く確保しながらも該排水口4に対し強固な固定を図ることができる。
【0047】
また、特に本実施例では、弾性ゴムから成る滑り防止具19を介在させることで排水口4の内部周囲に対する摩擦力を高め且つ各固定部材13の所要範囲に亘る線接触を面接触に拡張することができ、排水口4の内部周囲に対する各固定部材13の滑り止め効果を従来よりも大幅に向上することができてドレンキャップ14の抜脱をより一層確実に防止することができる。
【0048】
更に、前記滑り防止具19の圧接部23における幅方向両側を排水口4の周方向の曲面に沿うように弾性変形させ、前記圧接部23を排水口4の内部周囲に対し良好に圧接させることができるので、前記排水口4の口径にかかわらず高い滑り止め効果を発揮させることができる。
【0049】
しかも、前記滑り防止具19における保持部24の穴24aを通された固定部材13の下端を少なくとも横向きに屈曲して抜け止め部27としたことにより、前記滑り防止具19の脱落を確実に防止することができ、また、前記抜け止め部27の終端を更に上向きに折り返してストッパ部28とし、該ストッパ部28が干渉することで滑り防止具19の固定部材13回りの転動が規制されるようにしているので、ドレンキャップ14の設置時に前記滑り防止具19が固定部材13回りに転動しなくなり、前記滑り防止具19の圧接部23を確実に排水口4の内部周囲に対峙させることができる。
【0050】
また、
図6は前記滑り防止具19の変形例を示すもので、先に説明した
図5における掛止溝24bに換えて固定部材13を中心とする円弧状の掛止穴24cを形成し、該掛止穴24cにストッパ部28が下から嵌まり込むようにしたものであるが、このようにした場合でも、ドレンキャップ14の設置時における前記滑り防止具19の転動を規制することができ、前記滑り防止具19の圧接部23を確実に排水口4の内部周囲に対峙させることができる。
【0051】
尚、本発明のドレンキャップは、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、滑り防止具の形状は図示例に限定されないこと、その他、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0052】
4 排水口
12 キャップ本体
13 固定部材
14 ドレンキャップ
19 滑り防止具
23 圧接部
24 保持部
24a 穴
25 連結部
26 変位空間
27 抜け止め部
28 ストッパ部