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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】医療用処置具及び電磁波医療システム
(51)【国際特許分類】
   A61B 18/18 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A61B18/18 100
【請求項の数】 18
(21)【出願番号】P 2021526954
(86)(22)【出願日】2020-06-20
(86)【国際出願番号】 JP2020024270
(87)【国際公開番号】W WO2020256149
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2023-05-17
(31)【優先権主張番号】P 2019115046
(32)【優先日】2019-06-21
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】504177284
【氏名又は名称】国立大学法人滋賀医科大学
(74)【代理人】
【識別番号】100088904
【弁理士】
【氏名又は名称】庄司 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100124453
【弁理士】
【氏名又は名称】資延 由利子
(74)【代理人】
【識別番号】100135208
【弁理士】
【氏名又は名称】大杉 卓也
(72)【発明者】
【氏名】谷 徹
(72)【発明者】
【氏名】仲 成幸
(72)【発明者】
【氏名】山田 篤史
【審査官】槻木澤 昌司
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-054926(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用処置具であって、
電磁波印加用電極1及び電磁波受手用電極1を含む第1刃又は第1ジョー、
該第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波印加用電極2及び電磁波受手用電極2を含む第2刃又は第2ジョー、
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル、
該中心導体は該電磁波印加用電極1及び該電磁波印加用電極2に直接又は間接的に接続しており、並びに、該外部導体は該電磁波受手用電極1及び該電磁波受手用電極2に直接又は間接的に接続しており、
ここで、該電磁波印加用電極1は該電磁波受手用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーの上側に位置しかつ該電磁波印加用電極2は該電磁波受手用電極2に対して該第2刃又は第2ジョーの上側に位置し、又は、該電磁波受手用電極1は該電磁波印加用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーの上側に位置しかつ該電磁波受手用電極2は電磁波印加用電極2に対して該第2刃又は第2ジョーの上側に位置し、
該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、
該電磁波印加用電極1と該電磁波印加用電極2が向かい合いかつ該電磁波受手用電極1と該電磁波受手用電極2が向かい合い、
該第1刃若しくは第1ジョー及び該第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射並びに該第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射かつ及び該第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射することを特徴とする医療用処置具。
【請求項2】
医療用処置具であって、
電磁波印加用電極1及び電磁波受手用電極1を含む第1刃又は第1鉗子嘴(ジョー)、
該第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波印加用電極2及び電磁波受手用電極2を含む第2刃又は第2ジョー、
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル、
ここで、該電磁波印加用電極1は電磁波受手用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーの上側に位置しかつ該電磁波受手用電極2は電磁波印加用電極2に対して該第2刃又は第2ジョーの上側に位置し並びに該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、該電磁波印加用電極1と該電磁波受手用電極2が向かい合いかつ該電磁波受手用電極1と該電磁波印加用電極2が向かい合い、
又は、
該電磁波受手用電極1は電磁波印加用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーの上側に位置しかつ該電磁波印加用電極2は電磁波受手用電極2に対して該第2刃又は第2ジョーの上側に位置し並びに該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、該電磁波受手用電極1と該電磁波印加用電極2が向かい合いかつ該電磁波印加用電極1と該電磁波受手用電極2が向かい合い、
該中心導体は該電磁波印加用電極1及び該電磁波印加用電極2に直接又は間接的に接続しており、並びに、該外部導体は該電磁波受手用電極1及び該電磁波受手用電極2に直接又は間接的に接続しており、
該第1刃若しくは第1ジョー及び該第2刃若しくは第2ジョーの両方から電磁波を照射可能である医療用処置具。
【請求項3】
医療用処置具であって、
電磁波印加用電極1、電磁波印加用電極3、電磁波受手用電極1及び電磁波受手用電極3を含む第1刃又は第1ジョー、
該第1刃に対向して配置された電磁波印加用電極2、電磁波印加用電極4、電磁波受手用電極2及び電磁波受手用電極4を含む第2刃又は第2ジョー、
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル、
ここで、該電磁波印加用電極1、該電磁波受手用電極1、該電磁波印加用電極3及び該電磁波受手用電極3は順番に該第1刃又は第1ジョーの上側から位置しかつ該電磁波印加用電極2、該電磁波受手用電極2、該電磁波印加用電極4及び該電磁波受手用電極4は順番に該第2刃又は第2ジョーの上側から位置し並びに該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、該電磁波印加用電極1と該電磁波印加用電極2、該電磁波受手用電極1と該電磁波受手用電極2、該電磁波印加用電極3と該電磁波印加用電極4、及び、該電磁波受手用電極3と該電磁波受手用電極4は、それぞれ、向かい合い、
該中心導体は該電磁波印加用電極1、該電磁波印加用電極2、該電磁波印加用電極3及び該電磁波印加用電極4に直接又は間接的に接続しており、並びに、該外部導体は該電磁波受手用電極1、該電磁波受手用電極2、該電磁波受手用電極3及び該電磁波受手用電極4に直接又は間接的に接続している、
該第1刃若しくは第1ジョー及び該第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射並びに該第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射かつ及び該第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射することを特徴とする医療用処置具。
【請求項4】
医療用処置具であって、
電磁波印加用電極1、電磁波印加用電極3、電磁波受手用電極1及び電磁波受手用電極3を含む第1刃又は第1ジョー、
該第1刃に対向して配置された電磁波印加用電極2、電磁波印加用電極4、電磁波受手用電極2及び電磁波受手用電極4を含む第2刃又は第2ジョー、
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル、
ここで、該電磁波印加用電極1、該電磁波受手用電極1、該電磁波印加用電極3及び該電磁波受手用電極3は順番に該第1刃又は第1ジョーの上側から位置しかつ該電磁波受手用電極2、該電磁波印加用電極2、該電磁波受手用電極4及び該電磁波印加用電極4は順番に該第2刃又は第2ジョーの上側から位置し並びに該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、該電磁波印加用電極1と該電磁波受手用電極2、該電磁波印加用電極2と該電磁波受手用電極1、該電磁波印加用電極3と該電磁波受手用電極4、及び、該電磁波印加用電極4と該電磁波受手用電極3は、それぞれ、向かい合い、
該中心導体は該電磁波印加用電極1、該電磁波印加用電極2、該電磁波印加用電極3及び該電磁波印加用電極4に直接又は間接的に接続しており、並びに、該外部導体は該電磁波受手用電極1、該電磁波受手用電極2、該電磁波受手用電極3及び該電磁波受手用電極4に直接又は間接的に接続している、
該第1刃若しくは第1ジョー及び該第2刃若しくは第2ジョーの両方から電磁波を照射可能である医療用処置具。
【請求項5】
医療用処置具であって、
電磁波印加用電極1、電磁波受手用電極1、電磁波印加用電極3、電磁波受手用電極3、電磁波印加用電極5、電磁波受手用電極5を含む第1刃又は第1ジョー、
該第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波受手用電2、電磁波印加用電極2、電磁波受手用電極4、電磁波印加用電極4、電磁波受手用電極6、電磁波印加用電極6を含む第2刃又は第2ジョー、
ここで、該電磁波印加用電極1、該電磁波受手用電極1、該電磁波印加用電極3、該電磁波受手用電極3、該電磁波印加用電極5及び電磁波受手用電極5は該第1刃又は第1ジョーの先端側から順番に配置されており、かつ該電磁波受手用電2、該電磁波印加用電極2、該電磁波受手用電極4、該電磁波印加用電極4、該電磁波受手用電極6及び該電磁波印加用電極6は該第2刃又は第2ジョーの先端側から順番に配置されており、
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル、
該中心導体は該電磁波印加用電極1、該電磁波印加用電極2、該電磁波印加用電極3、該電磁波印加用電極4、該電磁波印加用電極5及び該電磁波印加用電極6に直接又は間接的に接続しており、並びに、該外部導体は該電磁波受手用電極1、該電磁波受手用電極2、該電磁波受手用電極3、該電磁波受手用電極4、該電磁波受手用電極5及び該電磁波受手用電極6に直接又は間接的に接続しており、
該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、電磁波印加用電極1と電磁波受手用電2、電磁波受手用電極1と電磁波印加用電極2、電磁波印加用電極3と電磁波受手用電極4、電磁波受手用電極3と電磁波印加用電極4、電磁波印加用電極5と電磁波受手用電極6及び電磁波受手用電極5と電磁波印加用電極6は、それぞれ向かい合い、
該第1刃若しくは第1ジョー及び該第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射並びに該第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射かつ及び該第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射することを特徴とする医療用処置具。
【請求項6】
前記電磁波印加用電極1及び前記電磁波受手用電極1の一部又は全部は前記第1刃又は第1ジョーに内蔵又は埋設されており、かつ前記電磁波印加用電極2及び前記電磁波受手用電極2の一部又は全部は前記第2刃又は第2ジョーに内蔵又は埋設されている、請求項1又は2に記載の医療用処置具。
【請求項7】
前記電磁波印加用電極1、前記電磁波受手用電極1、前記電磁波印加用電極3及び前記電磁波受手用電極3の一部又は全部は前記第1刃又は第1ジョーに内蔵又は埋設されており、かつ前記電磁波印加用電極2、前記電磁波受手用電極2、前記電磁波印加用電極4及び前記電磁波受手用電極4の一部又は全部は前記第2刃又は第2ジョーに内蔵又は埋設されている、請求項3又は4に記載の医療用処置具。
【請求項8】
前記第1刃又は第1ジョーにおいて、前記電磁波印加用電極1及び前記電磁波受手用電極1は絶縁体又は誘電体を介して設置されており、並びに、前記第2刃又は第2ジョーにおいて、前記電磁波印加用電極2及び前記電磁波受手用電極2は絶縁体又は誘電体を介して設置されている請求項1又は2に記載の医療用処置具。
【請求項9】
前記第1刃又は第1ジョーにおいて、前記電磁波印加用電極1、前記電磁波受手用電極1、前記電磁波印加用電極3及び前記電磁波受手用電極3は絶縁体又は誘電体を介して設置されており、並びに、前記第2刃又は第2ジョーにおいて、前記電磁波印加用電極2、前記電磁波受手用電極2、前記電磁波印加用電極4及び前記電磁波受手用電極4は絶縁体又は誘電体を介して設置されている請求項3又は4に記載の医療用処置具。
【請求項10】
請求項1の医療用処置具において、開閉器を有し、
前記中心導体は、該開閉器を介して前記電磁波印加用電極1又は前記電磁波印加用電極2に直接又は間接的に接続しており、以下のいずれか1以上の電磁波の照射を有することを特徴とする医療用処置具。
(1)前記第1刃若しくは第1ジョー及び前記第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射する
(2)該第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射する
(3)該第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射する
【請求項11】
請求項3の医療用処置具において、開閉器を有し、
前記中心導体は、該開閉器を介して前記電磁波印加用電極1、前記電磁波印加用電極2、前記電磁波印加用電極3又は前記電磁波印加用電極4に直接又は間接的に接続しており、以下のいずれか1以上の電磁波の照射を有することを特徴とする医療用処置具。
(1)前記第1刃若しくは第1ジョー及び前記第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射する
(2)該第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射する
(3)該第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射する
【請求項12】
請求項5の医療用処置具において、開閉器を有し、
前記中心導体は、該開閉器を介して前記電磁波印加用電極1、前記電磁波印加用電極2、前記電磁波印加用電極3、前記電磁波印加用電極4、前記電磁波印加用電極5又は前記電磁波印加用電極6に直接又は間接的に接続しており、以下のいずれか1以上の電磁波の照射を有することを特徴とする医療用処置具。
(1)前記第1刃若しくは第1ジョー及び前記第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射する
(2)該第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射する
(3)該第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射する
【請求項13】
前記絶縁体又は誘導体は、フッ素樹脂又は石英である請求項8~9のいずれか1に記載の医療用処置具。
【請求項14】
前記電磁波はマイクロ波である請求項1~13のいずれか1に記載の医療用処置具。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか1に記載の医療用処置具において、
さらに、前記第1刃若しくは第1ジョー及び/又は前記第2刃若しくは第2ジョーに直接又は間接的に接続したトリガー又はグリップを有し、
該トリガー又はグリップの動きにより、該第1刃若しくは第1ジョー及び/又は該第2刃若しくは第2ジョーの開閉を操作する、医療用処置具。
【請求項16】
請求項1~15のいずれか1に記載の医療用処置具であって、
さらに、前記第1刃若しくは第1ジョー並びに前記第2刃若しくは第2ジョーの基端側に接続した手首関節運動部、並びに
該手首関節運動部の基端側に接続したシャフト、並びに
該シャフトの基端側に接続した動力接続部を有し、
手首関節部の動作、刃若しくはジョーの開閉動作及びシャフトの回転及び長手方向の前後移動が動力接続部の動力により自動で行うことができることを特徴とする医療症処置具。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか1に記載の医療用処置具、該処置具に電磁波を供給する電磁波発生装置、該処置具を操作する駆動ユニット、該処置具の映像を提供するモニター、並びに該モニター、該医療用処置具、該電磁波発生装置及び該駆動ユニットを制御する制御ユニットを有する電磁波医療システム。
【請求項18】
請求項1~16のいずれか1に記載の医療用処置具又は請求項17に記載の電磁波医療システムを使用してヒトを除く有機材質を凝固させることを特徴とする有機材質凝固方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、刃又は鉗子嘴(ジョー)の側面からの電磁波加熱が可能な医療用処置具及び電磁波医療システムに関する。
本出願は、参照によりここに援用されるところの日本出願特願2019-115046号優先権を請求する。
【背景技術】
【0002】
(マイクロ波を使用したデバイス)
マイクロ波は、消化器、肝臓、膀胱、前立腺、子宮、血管、腸管等の生体組織を低温で凝固(固定化)できることが知られている。そして、マイクロ波を用いた手術支援用の種々のデバイスが開発されている。
【0003】
(先行文献)
マイクロ波を使用したデバイスとして、以下の複数が報告されている。
特許文献1は、「医療用処置具であって、1又は複数のマイクロ波印加用アンテナ1及び1又は複数のマイクロ波受手用アンテナ1を含む第1電極、1又は複数のマイクロ波印加用アンテナ2及び1又は複数のマイクロ波受手用アンテナ2を含む第2電極、第1中心導体及び第1外部導体を含む第1同軸ケーブル、ここで、該第1中心導体及び該第1外部導体は、それぞれ、該マイクロ波印加用アンテナ1及び該マイクロ波受手用アンテナ1に直接又は間接的に接続しており、第2中心導体及び第2外部導体を含む第2同軸ケーブル、ここで、該第2中心導体及び該第2外部導体は、それぞれ、該マイクロ波印加用アンテナ2及び該マイクロ波受手用アンテナ2に直接又は間接的に接続しており、マイクロ波伝送用同軸ケーブル、及び該マイクロ波伝送用同軸ケーブルにより伝達されたマイクロ波を該第1中心導体及び該第2中心導体に分波するマイクロ波分波器を含み、該第1電極及び該第2電極の両方からマイクロ波を照射可能であることを特徴とする医療用処置具。」を開示している。
本特許文献は、マイクロ波の分配回路を開示しているが、本発明の医療用処置具の構成を開示していない。
【0004】
特許文献2は、「入力線路と導通する入力端子の近傍で2本に分岐すると共に、それぞれの出力端子において対応する出力線路と導通する2本の分配線路を備える電力分配回路であって、前記2本の分配線路の出力端子のそれぞれに導通する2本の接続線路と、前記2本の接続線路の間に配置されるアイソレーション抵抗と、前記2本の分配線路の分岐部に設けられるスタブと、を備えることを特徴とする電力分配回路」を開示している。
本特許文献は、本発明の医療用処置具の構成を開示していない。
【0005】
特許文献3は、「生体組織にマイクロ波を照射するための電極部を有する手術器本体と、前記手術器本体に内蔵され、マイクロ波を発振するマイクロ波発振器と、前記手術器本体に内蔵され、前記電極部と前記マイクロ波発振器との間に接続されており、前記マイクロ波発振器からのマイクロ波を増幅させて前記電極部に送る増幅器と、を備えた、マイクロ波手術器であって、前記増幅器と前記電極部との間に接続され、前記増幅器の出力インピーダンスと前記生体組織のインピーダンスとを整合させるための可変出力整合回路と、前記増幅器と電極部との間における反射電力及び入射電力を別々に検出する検出回路と、前記検出回路により検出された入射電力および反射電力の値に基づいて前記可変出力整合回路を制御する制御手段と、をさらに備えた、マイクロ波手術器。」を開示している。
本特許文献は、本発明の医療用処置具の刃の側面から電磁波(特に、マイクロ波)を加熱可能であること及び刃の構成を開示していない。
【0006】
特許文献4は、「互いに関して旋回可能でその間の間隙を開閉する1組の顎要素、前記間隙へ隣接する前記1組の顎要素の一方に取り付けられた第1伝送線路構造、前記第1伝送線路構造に対向して前記間隙へ隣接する前記1組の顎要素の他方に取り付けられた第2伝送線路構造、マイクロ波周波数エネルギーを伝達する同軸ケーブル、及び前記同軸ケーブルの先端側にパワー・スプリッタ、を備え、前記パワー・スプリッタは、前記第1伝送線路構造及び前記第2伝送線路構造間で前記同軸ケーブルにより伝達された前記マイクロ波周波数エネルギーを分割するように配列され、各前記第1伝送線路構造及び前記第2伝送線路構造は、不平衡な損失伝送線路からなり、進行波として前記マイクロ波エネルギーを支援し、各前記第1伝送線路構造及び前記第2伝送線路構造は、前記マイクロ波エネルギーへ非共振である前記進行波沿いに電気長を有する、電気外科鉗子」を開示している。
本特許文献は、本発明の医療用処置具の刃の構成を開示していない。
【0007】
以上により、先行特許文献は、本発明の医療用処置具の構造(特に、刃の側面からのマイクロ波加熱が可能な構造)を開示又は示唆をしていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】PCT/JP2018/3884
【文献】特開平11-330813
【文献】特開2012-115384
【文献】特表2016-533862
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
電磁波の一種であるマイクロ波の誘電加熱を利用すると、電極間の組織は均一かつ低温で組織固定ができる。そして、該電極間又は近傍の局所で加熱できることから、加熱目的部位や疾患部に限定した処置ができ、正常な組織に影響が及ばない利点がある。しかしながら、一般にハサミ型は組織を電極に挟持される部位のみ、攝子型は電極を組織に充てる部位のみが加熱できる。そのため、刃の側面に組織が接する実質臓器等(肝、腎、脾臓等)を組織固定(タンパク質凝固、止血)し切開するにはやや止血力がそがれる。速やかな止血処理ではハサミ型と攝子型を持ち替えることが必要で、迅速な処置、連続な処置ができなかった。特に、アンテナが付いた刃に近い側面では良く組織を加熱できていたが、アンテナが付いていない刃側では組織を十分に加熱することができず、アンテナ側の刃とアンテナがない刃では、組織の加熱状態に差がでていた。
そこで、本発明は上記の問題を鑑み、切開・切断部位の局所の組織固定だけでなく、鉗子・攝子型の電極の側面での加熱により組織(鉗子先が組織に埋もれるような組織も含む)固定できる医療用処置具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意研究を重ねた結果、両刃での電磁波印加用電極(特に、マイクロ波印加用電極)及び電磁波受手用電極(特に、マイクロ波受手用電極)の配置を最適化することにより、刃で組織を挟持する組織部位及び刃の側面を当接する組織部位を、同時又は逐次に、加熱(誘電加熱)することができることを見出して、本発明を完成した。
なお、処置対象である生体組織が誘電体であり、マイクロ波加熱回路を構成する部材であることを理解したことにより、マイクロ波印加用電極及びマイクロ波受手用電極を最適に配置することができた。
より詳しくは、従来の極限に近い刃の刃線先でのピンポイント凝固をマイクロ波の一定距離まで均一に飛ぶ性質を生かし凝固幅を広くすることができた。
【0011】
すなわち本発明は、以下からなる。
1.医療用処置具であって、
電磁波印加用電極1及び電磁波受手用電極1を含む第1刃又は第1ジョー、
該第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波印加用電極2及び電磁波受手用電極2を含む第2刃又は第2ジョー、
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル、
該中心導体は該電磁波印加用電極1及び該電磁波印加用電極2に直接又は間接的に接続しており、並びに、該外部導体は該電磁波受手用電極1及び該電磁波受手用電極2に直接又は間接的に接続しており、
ここで、該電磁波印加用電極1は該電磁波受手用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーの上側に位置し(若しくは該電磁波印加用電極1は、該電磁波受手用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線(以後、接線と称する場合がある)よりも遠方側に位置し)かつ該電磁波印加用電極2は該電磁波受手用電極2に対して該第2刃又は第2ジョーの上側に位置し(若しくは該電磁波印加用電極2は、該電磁波受手用電極2に対して該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線よりも近辺側に位置し)、又は、該電磁波受手用電極1は該電磁波印加用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーの上側に位置し(若しくは該電磁波印加用電極1は、該電磁波受手用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線よりも近辺側に位置し)かつ該電磁波受手用電極2は電磁波印加用電極2に対して該第2刃又は第2ジョーの上側に位置し(若しくは該電磁波印加用電極2は、該電磁波受手用電極2に対して該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線よりも遠方側に位置し)、
該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態、又は、該第1刃又は第1ジョーは接線よりも下側若しくは該第2刃又は第2ジョーは接線よりも上側の状態において、
該電磁波印加用電極1と該電磁波印加用電極2が向かい合いかつ該電磁波受手用電極1と該電磁波受手用電極2が向かい合い、
該第1刃若しくは第1ジョー及び該第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射並びに該第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射かつ及び該第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射することを特徴とする医療用処置具。
2.医療用処置具であって、
電磁波印加用電極1及び電磁波受手用電極1を含む第1刃又は第1鉗子嘴(ジョー)、
該第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波印加用電極2及び電磁波受手用電極2を含む第2刃又は第2ジョー、
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル、
ここで、該電磁波印加用電極1は電磁波受手用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーの上側に位置し(若しくは該電磁波印加用電極1は、該電磁波受手用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線よりも遠方側に位置し)かつ該電磁波受手用電極2は電磁波印加用電極2に対して該第2刃又は第2ジョーの上側に位置し(若しくは該電磁波受手用電極2は、該電磁波印加用電極2に対して該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線よりも近辺側に位置し)並びに該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、該電磁波印加用電極1と該電磁波受手用電極2が向かい合いかつ該電磁波受手用電極1と該電磁波印加用電極2が向かい合い、
又は、
該電磁波受手用電極1は電磁波印加用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーの上側に位置し(若しくは該電磁波受手用電極1は、該電磁波印加用電極1に対して該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線よりも遠方側に位置し)かつ該電磁波印加用電極2は電磁波受手用電極2に対して該第2刃又は第2ジョーの上側に位置し(該電磁波印加用電極2は、該電磁波受手用電極2に対して該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線よりも近辺側に位置し)並びに
該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態、又は、該第1刃又は第1ジョーは接線よりも下側若しくは該第2刃又は第2ジョーは接線よりも上側の状態において、
該電磁波受手用電極1と該電磁波印加用電極2が向かい合いかつ該電磁波印加用電極1と該電磁波受手用電極2が向かい合い、
該中心導体は該電磁波印加用電極1及び該電磁波印加用電極2に直接又は間接的に接続しており、並びに、該外部導体は該電磁波受手用電極1及び該電磁波受手用電極2に直接又は間接的に接続しており、
該第1刃若しくは第1ジョー及び該第2刃若しくは第2ジョーの両方から電磁波を照射可能である医療用処置具。
3.医療用処置具であって、
電磁波印加用電極1、電磁波印加用電極3、電磁波受手用電極1及び電磁波受手用電極3を含む第1刃又は第1ジョー、
該第1刃に対向して配置された電磁波印加用電極2、電磁波印加用電極4、電磁波受手用電極2及び電磁波受手用電極4を含む第2刃又は第2ジョー、
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル、
ここで、該電磁波印加用電極1、該電磁波受手用電極1、該電磁波印加用電極3及び該電磁波受手用電極3は順番に該第1刃又は第1ジョーの上側から位置し(該電磁波印加用電極1、該電磁波受手用電極1、該電磁波印加用電極3及び該電磁波受手用電極3は順番に該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線よりも遠方側に位置し)かつ該電磁波印加用電極2、該電磁波受手用電極2、該電磁波印加用電極4及び該電磁波受手用電極4は順番に該第2刃又は第2ジョーの上側から位置し(該電磁波印加用電極2、該電磁波受手用電極2、該電磁波印加用電極4及び該電磁波受手用電極4は順番に該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線よりも近辺側に位置し)並びに、
該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態、又は、該第1刃又は第1ジョーは接線よりも下側若しくは該第2刃又は第2ジョーは接線よりも上側の状態において、該電磁波印加用電極1と該電磁波印加用電極2、該電磁波受手用電極1と該電磁波受手用電極2、該電磁波印加用電極3と該電磁波印加用電極4、及び、該電磁波受手用電極3と該電磁波受手用電極4は、それぞれ、向かい合い、
該中心導体は該電磁波印加用電極1、該電磁波印加用電極2、該電磁波印加用電極3及び該電磁波印加用電極4に直接又は間接的に接続しており、並びに、該外部導体は該電磁波受手用電極1、該電磁波受手用電極2、該電磁波受手用電極3及び該電磁波受手用電極4に直接又は間接的に接続している、
該第1刃若しくは第1ジョー及び該第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射並びに該第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射かつ及び該第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射することを特徴とする医療用処置具。
4.医療用処置具であって、
電磁波印加用電極1、電磁波印加用電極3、電磁波受手用電極1及び電磁波受手用電極3を含む第1刃又は第1ジョー、
該第1刃に対向して配置された電磁波印加用電極2、電磁波印加用電極4、電磁波受手用電極2及び電磁波受手用電極4を含む第2刃又は第2ジョー、
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル、
ここで、該電磁波印加用電極1、該電磁波受手用電極1、該電磁波印加用電極3及び該電磁波受手用電極3は順番に該第1刃又は第1ジョーの上側から位置し(該電磁波印加用電極1、該電磁波受手用電極1、該電磁波印加用電極3及び該電磁波受手用電極3は順番に該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線よりも遠方側に位置し)かつ該電磁波受手用電極2、該電磁波印加用電極2、該電磁波受手用電極4及び該電磁波印加用電極4は順番に該第2刃又は第2ジョーの上側から位置し(該電磁波受手用電極2、該電磁波印加用電極2、該電磁波受手用電極4及び該電磁波印加用電極4は順番に該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーとが向かいあう線よりも近辺側に位置し)並びに
該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態、又は、該第1刃又は第1ジョーは接線よりも下側若しくは該第2刃又は第2ジョーは接線よりも上側の状態において、該電磁波印加用電極1と該電磁波受手用電極2、該電磁波印加用電極2と該電磁波受手用電極1、該電磁波印加用電極3と該電磁波受手用電極4、及び、該電磁波印加用電極4と該電磁波受手用電極3は、それぞれ、向かい合い、
該中心導体は該電磁波印加用電極1、該電磁波印加用電極2、該電磁波印加用電極3及び該電磁波印加用電極4に直接又は間接的に接続しており、並びに、該外部導体は該電磁波受手用電極1、該電磁波受手用電極2、該電磁波受手用電極3及び該電磁波受手用電極4に直接又は間接的に接続している、
該第1刃若しくは第1ジョー及び該第2刃若しくは第2ジョーの両方から電磁波を照射可能である医療用処置具。
5.医療用処置具であって、
電磁波印加用電極1、電磁波受手用電極1、電磁波印加用電極3、電磁波受手用電極3、電磁波印加用電極5、電磁波受手用電極5を含む第1刃又は第1ジョー、
該第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波受手用電2、電磁波印加用電極2、電磁波受手用電極4、電磁波印加用電極4、電磁波受手用電極6、電磁波印加用電極6を含む第2刃又は第2ジョー、
ここで、該電磁波印加用電極1、該電磁波受手用電極1、該電磁波印加用電極3、該電磁波受手用電極3、該電磁波印加用電極5及び電磁波受手用電極5は該第1刃又は第1ジョーの先端側から順番に配置されており、かつ該電磁波受手用電2、該電磁波印加用電極2、該電磁波受手用電極4、該電磁波印加用電極4、該電磁波受手用電極6及び該電磁波印加用電極6は該第2刃又は第2ジョーの先端側から順番に配置されており、
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル、
該中心導体は該電磁波印加用電極1、該電磁波印加用電極2、該電磁波印加用電極3、該電磁波印加用電極4、該電磁波印加用電極5及び該電磁波印加用電極6に直接又は間接的に接続しており、並びに、該外部導体は該電磁波受手用電極1、該電磁波受手用電極2、該電磁波受手用電極3、該電磁波受手用電極4、該電磁波受手用電極5及び該電磁波受手用電極6に直接又は間接的に接続しており、
該第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、電磁波印加用電極1と電磁波受手用電2、電磁波受手用電極1と電磁波印加用電極2、電磁波印加用電極3と電磁波受手用電極4、電磁波受手用電極3と電磁波印加用電極4、電磁波印加用電極5と電磁波受手用電極6及び電磁波受手用電極5と電磁波印加用電極6は、それぞれ向かい合い、
該第1刃若しくは第1ジョー及び該第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射並びに該第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射かつ及び該第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射することを特徴とする医療用処置具。
6.前記電磁波印加用電極1及び前記電磁波受手用電極1の一部又は全部は前記第1刃又は第1ジョーに内蔵又は埋設されており、かつ前記電磁波印加用電極2及び前記電磁波受手用電極2の一部又は全部は前記第2刃又は第2ジョーに内蔵又は埋設されている、前項1又は2に記載の医療用処置具。
7.前記電磁波印加用電極1、前記電磁波受手用電極1、前記電磁波印加用電極3及び前記電磁波受手用電極3の一部又は全部は前記第1刃又は第1ジョーに内蔵又は埋設されており、かつ前記電磁波印加用電極2、前記電磁波受手用電極2、前記電磁波印加用電極4及び前記電磁波受手用電極4の一部又は全部は前記第2刃又は第2ジョーに内蔵又は埋設されている、前項3又は4に記載の医療用処置具。
8.前記第1刃又は第1ジョーにおいて、前記電磁波印加用電極1及び前記電磁波受手用電極1は絶縁体又は誘電体を介して設置されており、並びに、前記第2刃又は第2ジョーにおいて、前記電磁波印加用電極2及び前記電磁波受手用電極2は絶縁体又は誘電体を介して設置されている前項1又は2に記載の医療用処置具。
9.前記第1刃又は第1ジョーにおいて、前記電磁波印加用電極1、前記電磁波受手用電極1、前記電磁波印加用電極3及び前記電磁波受手用電極3は絶縁体又は誘電体を介して設置されており、並びに、前記第2刃又は第2ジョーにおいて、前記電磁波印加用電極2、前記電磁波受手用電極2、前記電磁波印加用電極4及び前記電磁波受手用電極4は絶縁体又は誘電体を介して設置されている前項3又は4に記載の医療用処置具。
10.前項1、3又は5の医療用処置具において、開閉器を有し、
前記中心導体は、該開閉器を介して前記電磁波印加用電極1、前記電磁波印加用電極2、前記電磁波印加用電極3、前記電磁波印加用電極4、前記電磁波印加用電極5及び前記電磁波印加用電極6に直接又は間接的に接続しており、以下のいずれか1以上の電磁波の流れを有することを特徴とする医療用処置具。
(1)前記第1刃若しくは第1ジョー及び前記第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射する
(2)該第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射する
(3)該第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射する。
11.前記絶縁体又は誘導体は、フッ素樹脂又は石英である前項1~10のいずれか1に記載の医療用処置具。
12.前記電磁波はマイクロ波である前項1~11のいずれか1に記載の医療用処置具。
13.前項1~12のいずれか1に記載の医療用処置具において、
さらに、前記第1刃若しくは第1ジョー及び/又は前記第2刃若しくは第2ジョーに直接又は間接的に接続したトリガー又はグリップを有し、
該トリガー又はグリップの動きにより、該第1刃若しくは第1ジョー及び/又は該第2刃若しくは第2ジョーの開閉を操作する、医療用処置具。
14.前項1~13のいずれか1に記載の医療用処置具であって、
さらに、前記第1刃若しくは第1ジョー並びに前記第2刃若しくは第2ジョーの基端側に接続した手首関節運動部、並びに
該手首関節運動部の基端側に接続したシャフト、並びに
該シャフトの基端側に接続した動力接続部を有し、
手首関節部の動作、刃若しくはジョーの開閉動作及びシャフトの回転及び長手方向の前後移動が動力接続部の動力により自動で行うことができることを特徴とする医療症処置具。
15.前項1~14のいずれか1に記載の医療用処置具、該処置具に電磁波を供給する電磁波発生装置、該処置具を操作する駆動ユニット、該処置具の映像を提供するモニター、並びに該モニター、該医療用処置具、該電磁波発生装置及び該駆動ユニットを制御する制御ユニットを有する電磁波医療システム。
16.前項1~14のいずれか1に記載の医療用処置具又は請求項12に記載の電磁波医療システムを使用して有機材質を凝固させることを特徴とする有機材質凝固方法。
【発明の効果】
【0012】
本発明の医療用処置具は、以下のいずれか1以上の効果を有する。
(1)両刃間で組織を切開・切断する時に該組織にマイクロ波を印加し、該組織を誘電加熱できる。
(2)刃の側面が、刃の側面に当接する組織部位を誘電加熱することができる。
(3)刃で組織を挟持する組織部位および刃の側面に当接する組織部位を、同時又は逐次に、誘電加熱することができる。
(4)刃の側面のみで組織の誘電加熱をすることができるので、一方の刃又は一方のジョーのみで凝固をすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】本発明の医療用処置具(1)のパターン1~4の両刃の図(各矢印はマイクロ波の流れを意味する。パターン1,2では、第1刃若しくは第1ジョー及び第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射並びに第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射かつ及び第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射する)。
図2】本発明の医療用処置具(1)のパターン5~6の両刃の図(各矢印はマイクロ波の流れを意味する。パターン6では、第1刃若しくは第1ジョー及び第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射並びに第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射かつ及び第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射する)。
図3】本発明の医療用処置具(1)と従来の医療用処置具の相違点。
図4】本発明の医療用処置具(1)のパターン1の先端図。
図5】本発明の医療用処置具(1)のパターン4の先端図。
図6】本発明の医療用処置具(1)のパターン1のマイクロ波回路(誘電加熱回路)図。
図7】刃での電界強度の説明図。
図8】ハサミの構造と用語の定義。
図9】電磁波医療システムの概要図。
図10】手首関節部の動作、刃若しくはジョーの開閉動作及びシャフトの回転及び長手方向の移動を自動で行うことができる医療処置具。
図11】本発明の医療用処置具(1)では、刃先に加えて、刃の側面に接触する生体組織(7)も誘電加熱することができる。
図12】本発明の医療用処置具(1)のパターン7の全体図(矢印は、電磁波の流れを示す)。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明について図面を参照して説明するが、本発明は図面に記載された医療用処置具に限定されるものではない。
【0015】
(医療用処置具)
本発明の医療用処置具(1)は、両刃又は両ジョーの側面からの電磁波(特に、マイクロ波)加熱が可能なマイクロ波加熱器具(特に、マイクロ波加熱手術器具)に関する(参照:図1~2)。
本発明の医療用処置具(1)は、図1図2に記載のように、6種類のパターン(実施態様)を含む。
なお、本発明での電磁波とは、3x1019Hz~300 kHzの周波数であり、好ましくは周波数が300MHz~300GHzのマイクロ波を意味する。
【0016】
(本発明の医療用処置具)
本発明の医療用処置具(1)は、図1図2に記載のように、いわゆるハサミ型医療用処置具ではあるが、鉗子・攝子型の電磁波(特に、マイクロ波)加熱の特徴である刃(両刃)の側面からの電磁波(特に、マイクロ波)で有機材質{組織(生体組織)}を加熱することができる。具体的には、図1及び図2の「刃の側面からのマイクロ波加熱を受ける生体組織(7)」を参照することができる。なお、本図を含むすべての図において、図面を正面から見て上を「上側」、下を「下側」とする。なお、ハサミの構造と実施例説明の用語は、図8を参照することができる。
本明細書中での「先端」とは、刃又はジョーの先端側(参照:図4、矢印の方向(長軸方向(長手方向))が先端側であり、反対方向が近位側(基端側))を意味する。
なお、有機材質とは、組織(生体組織)だけでなく、炭素を含む化合物全般を意味する。
本発明の医療用処置具(1)は、目的部や疾患周辺の組織固定と実質無出血切開を連続/同時処置することにより、処置の確実性、迅速性、安全性を向上することができ、患者・術者(医師)の負担を軽減できる。より詳しくは、刃と生体組織が接触する実質すべての面空間・空間および切断前、切断中、切断後のすべての時間帯で生体組織を電磁波(特に、マイクロ波)加熱により組織固定できる。そのため、迅速な処置、連続の処置が可能になる。
従来の片側のみにアンテナ設置の医療用処置具の場合では、アンテナ設置側と比べ反対側の凝固域が少なくなった。しかし、本発明の医療用処置具を使用すれば、例えば、両刃の刃先からのマイクロ波加熱を受ける生体組織(8)は、確実な止血切開が可能になる。特に、がんの手術治療では、リンパ液等の漏出を防止できるので、がん細胞の播種飛散による転移を防止できる効果がある。
加えて、術者は、本発明の医療用処置具(1)を使用すれば、両刃の側面からのマイクロ波照射により刃の側面で任意に広い面を組織固定でき、刃の側面が組織に接する肝臓の切除の場合、刃線の組織のみならず側面断面を組織固定させ、直ちに又は同時に固定した局所を切開できるようになることで、医療用処置具を交換することなく、完全に止血切開できる。また両側から組織を挟み、マイクロ波照射部位の大部分を切開目的組織面に接して使え、体液中等の周辺環境にマイクロ波を吸収されずに、効率よく凝固、止血できる。
より詳しくは、図3に記載の機能図で説明できる。図3に記載のように、本発明の医療用処置具(1)では、鉗子型・攝子型の処置及びハサミ型の処置の両方を1本の処置具で実行することができるので、疾患周辺の組織固定と無出血切開を連続/同時処置することが可能となり、処置の確実性、迅速性、安全性が向上して、患者・術者の負担軽減となる。
【0017】
(パターン1-2)
本発明の医療用処置具(1)のパターン1-2は、少なくとも以下の構成を含む。
〇パターン1(図4
電磁波(マイクロ波)印加用電極1及び電磁波(マイクロ波)受手用電極1を含む第1刃又は第1ジョー。
第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波(マイクロ波)印加用電極2及び電磁波(マイクロ波)受手用電極2を含む第2刃又は第2ジョー。
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル。
なお、中心導体は電磁波(マイクロ波)印加用電極1及び該電磁波(マイクロ波)印加用電極2に直接又は間接的に接続しており、並びに、外部導体は電磁波(マイクロ波)受手用電極1及び電磁波(マイクロ波)受手用電極2に直接又は間接的に接続している。
さらに、電磁波(マイクロ波)印加用電極1は電磁波(マイクロ波)受手用電極1に対して第1刃又は第1ジョーの上側に位置し、かつ電磁波(マイクロ波)印加用電極2は電磁波(マイクロ波)受手用電極2に対して第2又は第2ジョーの上側に位置している。第1刃又は第1ジョーと第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、電磁波(マイクロ波)印加用電極1と電磁波(マイクロ波)印加用電極2が向かい合いかつ電磁波(マイクロ波)受手用電極1と電磁波(マイクロ波)受手用電極2が向かい合っている。
なお、第1刃と第2刃、第1ジョーと第2ジョーは、発明を説明するために、別途記載しているが、これらは交換可能な記載である。他のパターンでも同様である。
〇パターン2
電磁波(マイクロ波)印加用電極1及び電磁波(マイクロ波)受手用電極1を含む第1刃又は第1ジョー。
第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波(マイクロ波)印加用電極2及び電磁波(マイクロ波)受手用電極2を含む第2刃又は第2ジョー。
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル。
なお、中心導体は電磁波(マイクロ波)印加用電極1及び電磁波(マイクロ波)印加用電極2に直接又は間接的に接続しており、並びに、外部導体は電磁波(マイクロ波)受手用電極1及び電磁波(マイクロ波)受手用電極2に直接又は間接的に接続している。
さらに、電磁波(マイクロ波)受手用電極1は電磁波(マイクロ波)印加用電極1に対して第1刃又は第1ジョーの上側に位置しかつ電磁波(マイクロ波)受手用電極2は電磁波(マイクロ波)印加用電極2に対して第2刃又は第2ジョーの上側に位置している。第1刃又は第1ジョーと第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、電磁波(マイクロ波)印加用電極1と電磁波(マイクロ波)印加用電極2が向かい合いかつ電磁波(マイクロ波)受手用電極1と電磁波(マイクロ波)受手用電極2が向かい合う。
本発明の医療用処置具(1)のパターン1(参照:図4)及びパターン2では、刃又はジョーの側面からの電磁波(マイクロ波)加熱により刃又はジョーの側面で広い面を組織固定できるだけでなく、両刃の刃先又は両ジョーからの電磁波(マイクロ波)加熱を受ける生体組織(7)は確実な止血切開が可能になる。
【0018】
(パターン3-4)
本発明の医療用処置具(1)のパターン3-4は、少なくとも以下の構成を含む。
〇パターン3
電磁波(マイクロ波)印加用電極1及び電磁波(マイクロ波)受手用電極1を含む第1刃又は第1ジョー。
第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波(マイクロ波)印加用電極2及び電磁波(マイクロ波)受手用電極2を含む第2刃又は第2ジョー。
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル。
なお、中心導体は電磁波(マイクロ波)印加用電極1及び電磁波(マイクロ波)印加用電極2に直接又は間接的に接続しており、並びに、外部導体は電磁波(マイクロ波)受手用電極1及び電磁波(マイクロ波)受手用電極2に直接又は間接的に接続している。
さらに、電磁波(マイクロ波)印加用電極1は電磁波(マイクロ波)受手用電極1に対して第1刃又は第1ジョーの上側に位置しかつ電磁波(マイクロ波)受手用電極2は電磁波(マイクロ波)印加用電極2に対して第2刃又は第2ジョーの上側に位置している。第1刃又は第1ジョーと第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、電磁波(マイクロ波)印加用電極1と電磁波(マイクロ波)受手用電極2が向かい合いかつ電磁波(マイクロ波)受手用電極1と電磁波(マイクロ波)印加用電極2が向かい合っている。
〇パターン4(図5
電磁波(マイクロ波)印加用電極1及び電磁波(マイクロ波)受手用電極1を含む第1刃又は第1ジョー。
第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波(マイクロ波)印加用電極2及び電磁波(マイクロ波)受手用電極2を含む第2刃又は第2ジョー。
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル。
なお、中心導体は電磁波(マイクロ波)印加用電極1及び電磁波(マイクロ波)印加用電極2に直接又は間接的に接続しており、並びに、外部導体は電磁波(マイクロ波)受手用電極1及び電磁波(マイクロ波)受手用電極2に直接又は間接的に接続している。
さらに、電磁波(マイクロ波)受手用電極1は電磁波(マイクロ波)印加用電極1に対して第1刃又は第1ジョーの上側に位置しかつ電磁波(マイクロ波)印加用電極2は電磁波(マイクロ波)受手用電極2に対して第2電極の上側に位置し並びに第1刃又は第1ジョーと第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、電磁波(マイクロ波)受手用電極1と電磁波(マイクロ波)印加用電極2が向かい合いかつ電磁波(マイクロ波)印加用電極1と電磁波(マイクロ波)受手用電極2が向かい合っている。
本発明の医療用処置具(1)のパターン3及びパターン4(参照:図5)では、刃又はジョーの側面からの電磁波(マイクロ波)加熱により刃又はジョーの側面で広い面を組織固定できる。
【0019】
(パターン5-6)
本発明の医療用処置具(1)のパターン5-6は、少なくとも以下の構成を含む。
〇パターン5(図2
電磁波(マイクロ波)印加用電極1、電磁波(マイクロ波)印加用電極3、電磁波(マイクロ波)受手用電極1及び電磁波(マイクロ波)受手用電極3を含む第1刃又は第1ジョー。
第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波(マイクロ波)印加用電極2、電磁波(マイクロ波)印加用電極4、電磁波(マイクロ波)受手用電極2及び電磁波(マイクロ波)受手用電極4を含む第2刃又は第2ジョー。
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル。
電磁波(マイクロ波)印加用電極1、電磁波(マイクロ波)受手用電極1、電磁波(マイクロ波)印加用電極3及び電磁波(マイクロ波)受手用電極3は順番に第1刃又は第1ジョーの上側から位置しかつ電磁波(マイクロ波)受手用電極2、電磁波(マイクロ波)印加用電極2、電磁波(マイクロ波)受手用電極4及び電磁波(マイクロ波)印加用電極4は順番に該第2刃又は第2ジョーの上側から位置している。
中心導体は電磁波(マイクロ波)印加用電極1、電磁波(マイクロ波)印加用電極2、電磁波(マイクロ波)印加用電極3及び電磁波(マイクロ波)印加用電極4に直接又は間接的に接続しており、並びに、外部導体は電磁波(マイクロ波)受手用電極1、電磁波(マイクロ波)受手用電極2、電磁波(マイクロ波)受手用電極3及び電磁波(マイクロ波)受手用電極4に直接又は間接的に接続している。
さらに、第1刃又は第1ジョーと第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、電磁波(マイクロ波)印加用電極1と電磁波(マイクロ波)受手用電極2、電磁波(マイクロ波)印加用電極2と電磁波(マイクロ波)受手用電極1、電磁波(マイクロ波)印加用電極3と電磁波(マイクロ波)受手用電極4、及び、電磁波(マイクロ波)印加用電極4と電磁波(マイクロ波)受手用電極3は、それぞれ、向かい合う構成となっている。
本発明の医療用処置具(1)のパターン5では、刃又はジョーの側面からの電磁波(マイクロ波)加熱により刃又はジョーの側面で広い面を組織固定できる。
〇パターン6(図2
電磁波(マイクロ波)印加用電極1、電磁波(マイクロ波)印加用電極3、電磁波(マイクロ波)受手用電極1及び電磁波(マイクロ波)受手用電極3を含む第1刃又は第1ジョー。
第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波(マイクロ波)印加用電極2、電磁波(マイクロ波)印加用電極4、電磁波(マイクロ波)受手用電極2及び電磁波(マイクロ波)受手用電極4を含む第2刃又は第2ジョー。
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル。
電磁波(マイクロ波)印加用電極1、電磁波(マイクロ波)受手用電極1、電磁波(マイクロ波)印加用電極3及び電磁波(マイクロ波)受手用電極3は順番に第1刃又は第1ジョーの上側から位置しかつ電磁波(マイクロ波)印加用電極2、電磁波(マイクロ波)受手用電極2、電磁波(マイクロ波)印加用電極4及び電磁波(マイクロ波)受手用電極4は順番に第2刃又は第2ジョーの上側から位置している。
中心導体は電磁波(マイクロ波)印加用電極1、電磁波(マイクロ波)印加用電極2、電磁波(マイクロ波)印加用電極3及び電磁波(マイクロ波)印加用電極4に直接又は間接的に接続しており、並びに、外部導体は電磁波(マイクロ波)受手用電極1、電磁波(マイクロ波)受手用電極2、電磁波(マイクロ波)受手用電極3及び電磁波(マイクロ波)受手用電極4に直接又は間接的に接続している。
第1刃又は第1ジョーと該第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、電磁波(マイクロ波)印加用電極1と電磁波(マイクロ波)印加用電極2、電磁波(マイクロ波)受手用電極1と電磁波(マイクロ波)受手用電極2、電磁波(マイクロ波)印加用電極3と電磁波(マイクロ波)印加用電極4、及び、電磁波(マイクロ波)受手用電極3と電磁波(マイクロ波)受手用電極4は、それぞれ、向かい合う構成となっている。
本発明の医療用処置具(1)のパターン6(参照:図2)では、両刃の刃先又は両ジョーからの電磁波(マイクロ波)加熱を受ける生体組織(7)は確実な止血切開が可能になると同時に、刃又はジョーの側面からの電磁波(マイクロ波)加熱により刃又はジョーの側面で広い面を組織固定できるようになる。刃又はジョーの側面で予め広い面で組織固定を行った後、切開/切断するようにすれば、出血防止の確度をさらに高めて処置することができる。
【0020】
(パターン7)
本発明の医療用処置具(1)のパターン7(図12)は、少なくとも以下の構成を含む。
電磁波印加用電極1、電磁波受手用電極1、電磁波印加用電極3、電磁波受手用電極3、電磁波印加用電極5、電磁波受手用電極5を含む第1刃又は第1ジョー。
第1刃又は第1ジョーに対向して配置された電磁波受手用電2、電磁波印加用電極2、電磁波受手用電極4、電磁波印加用電極4、電磁波受手用電極6、電磁波印加用電極6を含む第2刃又は第2ジョー。
電磁波印加用電極1、電磁波受手用電極1、電磁波印加用電極3、電磁波受手用電極3、電磁波印加用電極5及び電磁波受手用電極5は第1刃又は第1ジョーの先端側から順番に配置されており、かつ電磁波受手用電2、電磁波印加用電極2、電磁波受手用電極4該電磁波印加用電極4、電磁波受手用電極6及び電磁波印加用電極6は第2刃又は第2ジョーの先端側から順番に配置されている。
中心導体及び外部導体を含む同軸ケーブル。
中心導体は電磁波印加用電極1、電磁波印加用電極2、電磁波印加用電極3、電磁波印加用電極4、電磁波印加用電極5及び電磁波印加用電極6に直接又は間接的に接続しており、並びに、外部導体は電磁波受手用電極1、電磁波受手用電極2、電磁波受手用電極3、電磁波受手用電極4、電磁波受手用電極5及び電磁波受手用電極6に直接又は間接的に接続している。
第1刃又は第1ジョーと第2刃又は第2ジョーが閉じた状態において、電磁波印加用電極1と電磁波受手用電2、電磁波受手用電極1と電磁波印加用電極2、電磁波印加用電極3と電磁波受手用電極4、電磁波受手用電極3と電磁波印加用電極4、電磁波印加用電極5と電磁波受手用電極6及び電磁波受手用電極5と電磁波印加用電極6は、それぞれ向かい合っている。
第1刃若しくは第1ジョー及び該第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射並びに該第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射かつ及び該第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射する。
【0021】
本発明の医療用処置具(1)は、第1刃(2)及び第2刃(3)である両刃が生体組織を切断・切開できるように可動であれば特に限定されない。例えば、第1刃(2)及び第2刃(3)の両方が可動刃であっても良く、一方が固定刃であっても良い。
【0022】
本発明の医療用処置具(1)は、さらに、第1刃若しくは第1ジョー及び/又は第2刃若しくは第2ジョーに直接又は間接的に接続したトリガー、及びグリップを有することができる。使用者・操作者(医師)が、自身の手のひらでグリップを持ち、人差し指でトリガーを末端側に移動することにより(引くことにより)、第1刃若しくは第1ジョー及び第2刃若しくは第2ジョーの開閉を操作することができる。
【0023】
(加熱マイクロ波)
本発明の医療用処置具(1)のマイクロ波伝送用同軸ケーブル(4)に伝送されるマイクロ波は、特に、限定されないが、300MHz~300GHz(波長:1m~1mm)、好ましくは、0.9GHz~ 5GHzである。なお、伝送方法は、自体公知の方法、例えば、自体公知のマイクロ波を発振するマイクロ波発振器に接続すること、又は、該発振器を医療用処置具(1)に内蔵することにより容易に達成することができる。
なお、本発明において使用される電力は0.1W~200W、好ましくは1.0W~80Wである。
【0024】
(同軸ケーブル)
本発明で用いられる同軸ケーブル(4)は、例えば、銅からなる導電体の中心導体(41)と、中心導体(41)を覆う絶縁体又は誘電体(例えば、テフロン(登録商標)、ポリエチレン、石英等からなる)のシールドチューブと、銅、ステンレス、真鍮等からなる外部導体(42)(導電体)のアースパイプ又は編組銅線からなる。
なお、同軸ケーブル(4)は、自体公知のセミリジット同軸ケーブルでも良い。
中心導体(41)は先端が2本の分岐した形状でもよく、マイクロ波印加用電極1及びマイクロ波印加用電極2は該2本の分岐した中心導体と直接又は間接的に接続することができる。また、中心導体(41)は先端が4本の分岐した形状でもよく、マイクロ波印加用電極1、マイクロ波印加用電極2、マイクロ波印加用電極3及びマイクロ波印加用電極4は該4本の分岐した中心導体と直接又は間接的に接続することができる。
【0025】
(電極)
本発明のマイクロ波印加用電極1、2、3及び4は、マイクロ波を供給することができる材質であれば特に、限定されない。例えば、銀、銅、金、鉄、チタン、ステンレス、リン青銅又は真鍮等広く導電性材料が使用可能である。好適には、銀、銅、金、ステンレス、真鍮等が例示される。
本発明のマイクロ波受手用電極1、2、3及び4は、マイクロ波を受けることができる材質であれば特に、限定されない。例えば、銀、銅、金、鉄、チタン、ステンレス、リン青銅又は真鍮等広く導電性材料が使用可能である。好適には、銀、銅、金、ステンレス、真鍮等が例示される。
電極の形状は、特に限定されないが、円錐、三角錐、四角錐、円柱、四角柱、三角柱、球、立方体、直方体等が例示される。
本発明のマイクロ波印加用電極の具体的な形状(刃形)は四角柱であり、マイクロ波受手用電極の具体的な形状は四角柱である。
各電極間には絶縁性誘電体(例えば、四フッ化エチレン樹脂、ポリエチレン、ポリプロピペン、ポリスチレン、ポリイソプチレン、ポリブデン、ブタジエン、PEEK樹脂、テフロン(登録商標)、セラミックス)が塗布され、電極間の絶縁耐圧を維持するように構成されていても良い。
特に、本発明の医療用処置具(1)では、電磁波が通っても透過し、加熱されないためには、ε・tan δ積が小さい、フッ素樹脂か石英(石英SiO2)が好ましい。
【0026】
(刃)
刃は、どのような材質でも良いが、例えば、金属、セラミックス等を使用することができる。
また、刃は、組織との接触において、凝固組織が付着し難いコーティングが一部又は全部にされていても良い。コーティングは、テフロン系、シリコン系部材等で行なわれる。これにより、高い撥水性が得られ、抵抗加熱を生じやすい水溶成分を除去し、上記の絶縁性誘電体として機能する。同時に、凝固後の組織が付着することなく、連続的に凝固、切断の処理が行える。
【0027】
(マイクロ波分波器)
本発明の医療用処置具では、必要に応じて、マイクロ波分波器を含んでいても良い。例えば、マイクロ波伝送用同軸ケーブルより伝達されたマイクロ波を2つの中心導体(第1中心導体及び第2中心導体)に分波することができれば、自体公知のマイクロ波分波器を採用することができる。例えば、ウィルキンソン電力分配器、3dBカプラ分波回路、ラットレース分波回路、90度ハイブリッド分波回路等を例示することができる。
また、マイクロ波伝送用同軸ケーブルのインピーダンス(マイクロ波発振インピーダンス)と第1同軸ケーブル及び第2同軸ケーブルのインピーダンスを整合するための必要な装置(回路)を設置しても良い。このような回路は、コイルと複数の可変コンデンサとを備えており、該可変コンデンサの静電容量を調節することで、または、長さ可変であるスタブ、スリーブ等を備え、それらの長さ等を調節することで、インピーダンス整合を行うことができる。
【0028】
(開閉器)
本発明の医療用処置具では、開閉器を有しても良い。
中心導体は、開閉器を介して電磁波印加用電極1、電磁波印加用電極2、電磁波印加用電極3、電磁波印加用電極4、電磁波印加用電極5及び電磁波印加用電極6に直接又は間接的に接続すれば、以下のいずれか1以上の電磁波の流れを達成することができる。
(1)第1刃若しくは第1ジョー及び第2刃若しくは第2ジョー間で電磁波が照射する。
(2)第1刃の側面若しくは第1ジョーの側面で電磁波が照射する。
(3)第2刃の側面若しくは第2ジョーの側面で電磁波が照射する。
すなわち、開閉器により、側面加熱と刃間加熱の両方又は一方を選択することができる。これにより、過剰な面積への組織固定を防止する効果が得られ、正常組織を守ることができる。
【0029】
(医療用処置具の自動操作)
本発明の医療用処置具(1)は、さらに、第1刃若しくは第1ジョー(2)並びに第2刃若しくは第2ジョー(3)の基端側に接続した手首関節運動部(12)、手首関節運動部(12)の基端側に接続したシャフト(13)、並びに、シャフトの基端側に接続した動力接続部(14)を有する。なお、シャフト(13)は屈曲することができることが好ましい。
動力接続部(14)の動力により、手首関節部の動作、刃若しくはジョーの開閉動作及びシャフトの回転及び長手方向の前後移動が自動に行うことができる。
これにより、本発明の医療用処置具(1)を、マイクロ波エネルギー手術ロボットハンドにすることができる。
【0030】
(電磁波医療システム)
本発明の電磁波医療システム(15)は、医療用処置具又は自動操作可能な医療用処置具(1)、医療用処置具(1)に電磁波を供給する電磁波発生装置(16)、医療用処置具(1)を操作する駆動ユニット(17){より詳しくは、該ユニットは動力接続部(14)を介して医療用処置具(1)を操作する}、医療用処置具(1)の映像を提供するモニター(18)(医療用処置具の映像には限定されない、例えば、腫瘍の位置、治療域や薬剤等の位置も含む)、並びにモニター(18)、医療用処置具(1)、電磁波発生装置(16)及び駆動ユニット(17)を制御する制御ユニット(19)を有する。さらに、必要に応じて、電磁波を増幅する増幅器を有しても良い。
本発明の電磁波医療システム(15)は、制御ユニット(19)の存在により、本システムの操作者(例えば、医師)が設定した指示(例、処置プログラム)に従い、医療用処置具を操作して手術に必要な操作を行う。
【0031】
(刃の製造方法)
本発明での刃は、上記説明したように、刃の側面からの電磁波(マイクロ波)加熱を実施することが可能であれば特に製造方法は限定されない。例えば、絶縁誘電体上の表面に電極を形成する方法や絶縁誘電体中にバルク電極をインサート成形する方法を例示することができる。
より詳しくは、各電極の一部又は全部を刃に内蔵した場合には、以下の製造方法を例示することができる。
1)Ceramic injectionmoldで、各電極をインサート成型する。
2)必要に応じてMetalinjection mold とCeramicinjection moldを併用する。
3)Direct Bonded Cupper基板で各電極を成形する。
刃は、Ceramicinjection mold又は金属加工により成形する。
なお、各電極を刃の表面に突出させる場合には、フッ素樹脂等の絶縁性誘導体を該表面に塗布しても良い。
さらに、必要に応じて、フッ素樹脂等を刃の表面に塗布し、刃の摺動時の絶縁耐圧を確保しても良い。
本発明の医療用処置具(1)のパターン1のマイクロ波の流れは図6を参照することができる。これにより、刃の側面側(10)及び刃の内面側(11)の両方並びに両刃の刃先では、マイクロ波が流れる。
加えて、図7、8に記載したように、両刃の開口角度(9)を小さくすることにより、両刃の刃元(両電極の接続部分、ネジ(支点))と刃先の電界強度をほぼ一定に保つことができる。すなわち、両刃の先端方向(刃線)を長くして、両刃の刃間距離を狭くすれば、刃先と刃元の電界強度を同じ値に近づけることができる。また、刃間距離が小さい刃を使用することにより誘電加熱(組織固定)を迅速に行うことができる。
【0032】
(本発明の医療用処置具)
本発明の医療用処置具(1)は、以下のいずれか1以上の効果を有する。
〇生体組織を誘電加熱することにより、組織の固定(タンパク質凝固)、封止、止血、体液の組織からの流出防止が可能になる。
〇高速な誘電加熱特性を使って、血管やリンパ管を含む組織を、無出血に、リンパ液等体液の流出なく、組織を切開又は切断することが可能になる。
〇組織の固定(タンパク質凝固)、封止、止血、体液の組織からの流出防止を確実に処置できる。従来のハサミ型誘電加熱は、刃線間の組織を均一に加熱できる代わりに、加熱できる幅は狭かった。本発明の医療用処置具(1)は刃側面に電極をもち、側面を組織に当接するので、広く組織を固定できる特徴を持つ。詳しくは、図11に示す通り、本発明の医療用処置具(1)では、従来の医療用処置具(参照:図11の右図)と異なり刃先に加えて、刃の側面でも生体組織(7)を誘電加熱することができる。
〇ハサミ型(サンドイッチ型電極)は組織の深さに関わらず、均一に加熱でき、攝子型(並置・並列電極)は電極近傍の組織を浅く(相対的に)加熱できる特性を持つので、それらの加熱特性を使い分けることが可能である。さらに、電極を細径に形成できるので、局所の側面処置も可能である。
〇従来は別の処置具を用いて行っていた両刃の刃線間に挟持する組織を誘電加熱することと、刃の側面に配置した電極対に当接する組織を誘電加熱することを、1本の処置具で処置できるようになった。刃線間の加熱と刃側面の加熱の処置を、逐次又は同時に処置でき、処置具を持ち替えたり入れ替えたりする必要がない。処置が適切かつ迅速にできる効果が得られる。
以上のように、本発明の医療用処置具(1)は、「切開・切断部位の局所の組織固定」だけでなく、鉗子・攝子型の電極の側面での加熱である「任意の面積を組織固定」できる処置具を提供できる。
【0033】
(本発明の医療用処置具を使用した有機材質凝固方法)
本発明の医療用処置具を使用した有機材質凝固方法では、本発明の医療用処置具の刃又はジョーに有機材質を挟み、さらに電磁波を印加することにより、該有機材質を凝固(加温、乾燥、加圧を含む)することができる。
【0034】
(試作品での効果の確認)
両刃からマイクロ波加熱ができる医療用処置具(同軸ケーブルが分岐しており、2つの分岐先がそれぞれの刃に接続している)は、片刃のみからマイクロ波加熱ができる医療用処置具と比較して、以下の効果を確認した。
片刃のみからマイクロ波加熱ができる医療用処置具では、卵白中で凝固を行うと、両刃の根部周辺のみでの凝固又はマイクロ波加熱できる刃の一方のみでしか凝固を確認することできなかった。
両刃からマイクロ波加熱ができる医療用処置具は、両方の刃に沿って全面で凝固ができることを確認した。
臨床では、血溜まりの中では超音波も高周波機器でも止血力が極端に低下する事が知られている。しかし、両刃からマイクロ波加熱ができる医療用処置具は、血溜まりの中や液中での凝固ができ、止血力低下を抑えることができる。
【0035】
(本発明の医療用処置具の別の態様)
本発明の医療用処置具(1)は、以下の態様であっても良い。
1.複数の延長部材を有する電磁波電極器具であって、前記複数の延長部材のそれぞれの側面に該延長部材の延在方向に沿って電磁波印加用第1電極と該電磁波印加用第1電極と隣り合って配置された電磁波受手用第2電極を有することを特徴とする電磁波電極器具。
2.前項1に記載の電磁波電極器具の前記複数の延長部材のそれぞれは、延在方向に設けられた前記電磁波印加用第1電極を構成する電磁波印加用第1電極層と、延在方向に設けられた前記電磁波受手用第2電極を構成する電磁波受手用第2電極層を有することを特徴とする電磁波電極器具。
3.前項1に記載の電磁波電極器具は中心導体と外部導体を有するマイクロ波同軸ケーブルと直接又は間接的に接続されたマイクロ波電極器具であって、
前記電磁波印加用第1電極はマイクロ波印加用第1電極であり、
前記電磁波受手用第2電極はマイクロ波受手用第2電極であり、
前記中心導体は前記マイクロ波印加用第1電極に直接又は間接的に接続しており、前記外部導体は前記マイクロ波受手用第2電極に直接又は間接的に接続していることを特徴とするマイクロ波電極器具。
4.前項3に記載のマイクロ波電極器具は医療用処置具であって、前記複数の延長部材は開閉可能に設けられた第1刃と第2刃とからなり、該第1刃と該第2刃の前記マイクロ波印加用第1電極と前記マイクロ波受手用第2電極は、開閉方向において逆の位置に設けられ、前記第1刃及び前記第2刃の両方からマイクロ波を照射可能であることを特徴とする医療用処置具。
【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明では、刃の側面からのマイクロ波を組織に加熱することができる医療用処置具を提供できる。
【符号の説明】
【0037】
1:医療用処置具
2:第1刃(第1ジョー)
21:マイクロ波印加用電極1
22:マイクロ波受手用電極1
23:マイクロ波印加用電極3
24:マイクロ波受手用電極3
3:第2刃(第2ジョー)
31:マイクロ波印加用電極2
32:マイクロ波受手用電極2
33:マイクロ波印加用電極4
34:マイクロ波受手用電極4
4:同軸ケーブル
41:中心導体
42:外部導体
5:絶縁体又は誘電体
7:両刃の側面からのマイクロ波加熱を受ける生体組織
8:両刃の刃先からのマイクロ波加熱を受ける生体組織
9:両刃の開口角度
10:両刃の側面側
11:両刃の内面側
12:手首関節運動部
13:シャフト
14:動力接続部
15:電磁波医療システム
16:電磁波発生装置
17:駆動ユニット
18:モニター
19:制御ユニット
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12