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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】液体の脱気手段および方法
(51)【国際特許分類】
   C25B 1/00 20210101AFI20240510BHJP
   B01D 19/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C25B1/00
B01D19/00 E
【請求項の数】 16
(21)【出願番号】P 2021575277
(86)(22)【出願日】2020-06-12
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-15
(86)【国際出願番号】 EP2020066399
(87)【国際公開番号】W WO2020254211
(87)【国際公開日】2020-12-24
【審査請求日】2022-01-21
(31)【優先権主張番号】1908727.9
(32)【優先日】2019-06-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】321003751
【氏名又は名称】エナプター エス.アール.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】100141173
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 啓一
(72)【発明者】
【氏名】シュミット ヤンユストゥス
(72)【発明者】
【氏名】シュミット マックス イシュトヴァーン
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-087779(JP,A)
【文献】米国特許第04539023(US,A)
【文献】米国特許第06251167(US,B1)
【文献】特表2002-537968(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2003/0150324(US,A1)
【文献】特公昭64-001161(JP,B1)
【文献】特開平03-207404(JP,A)
【文献】国際公開第2015/079571(WO,A1)
【文献】米国特許第05132011(US,A)
【文献】実公平07-004447(JP,Y2)
【文献】英国特許出願公開第02012608(GB,A)
【文献】英国特許出願公開第01045102(GB,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 19/00
B01D 45/00-18、50/00
C25B 1/00
F24H 9/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気分解装置で生成されるガスと、前記電気分解装置で使用される液体と、からなる気液混合物を脱気する密閉されたタンク、
を有してなり、
前記液体は、前記タンクの内部の中間の高さの通常動作液位を備え、
前記タンクは、
前記液体の相対的乱流状態を収容する第1領域と、
前記液体の相対的平穏状態を収容する第2領域と、
前記タンクの内部に配置されるバッフルと、
前記気液混合物を、前記第1領域への控室出口を有する控室に導入するための入口と、
前記第2領域に配置される第1出口と、
前記第2領域に配置される第2出口と、
前記第1領域から前記第2領域への前記ガスの移送のための、前記バッフルの周りにあるガス移送ギャップと、
前記液体を所望の液位に維持するために、前記液体を前記タンクに補給する補給口と、
を備え、
記バッフルは、
前記第1領域と前記第2領域との境界を画定し、前記第1領域から前記第2領域への前記液体の移送のための液体移送ギャップを提供して、
水平方向において、前記第1領域と前記第2領域との前記境界を画定し、垂直方向において、前記液体移送ギャップと前記ガス移送ギャップとの境界を画定して、
前記第1出口は、前記電気分解装置に再循環される脱気された前記液体の流出に適合されて、
前記第2出口は、前記気液混合物から除去された前記ガスの流出に適合されて、
前記控室出口は、前記液体の前記通常動作液位よりも高い位置にあり、
前記第1出口は、前記液体の前記通常動作液位よりも下にある前記タンクの下半分に位置し、
前記第2出口は、前記液体の前記通常動作液位よりも上にある前記タンクの上半分に位置し、
前記気液混合物は前記タンクに流入されて、脱気された前記液体は前記タンクから流出される、
ことを特徴とする電解システム用のタンク
【請求項2】
排水口が設けられる、
請求項1記載のタンク
【請求項3】
1つまたは複数のセンサが1つまたは複数の制御ユニットと組み合わされて、状態を所定の閾値の範囲内に維持する、
請求項1または2記載のタンク
【請求項4】
1つまたは複数の前記センサが、水位センサと、温度センサと、圧力センサと、のいずれか1つ、またはこれらの組み合わせである、
請求項記載のタンク
【請求項5】
発熱体または熱交換器が設けられる、
請求項1乃至のいずれかに記載のタンク
【請求項6】
前記第2出口にデミスタが設けられる、
請求項1乃至のいずれかに記載のタンク
【請求項7】
前記控室が乱流状態を作り出すように適合されている、
請求項1乃至のいずれかに記載のタンク
【請求項8】
前記控室が円筒形であり、前記控室の前記入口と前記控室出口とが整列していない、
請求項1乃至のいずれかに記載のタンク
【請求項9】
記バッフルが直線、または曲線である、
請求項1乃至のいずれかに記載のタンク
【請求項10】
記バッフルが前記タンク内に棚として配置され、前記バッフルが前記控室に接する、
請求項1乃至のいずれかに記載のタンク
【請求項11】
前記控室出口と前記通常動作液位との間にカスケードトレイが設けられる、
請求項1乃至10のいずれかに記載のタンク
【請求項12】
電気分解装置で生成されるガスと、前記電気分解装置で使用される液体と、からなる気液混合物を脱気する方法であって、
前記気液混合物の前記脱気を必要とする電解システムに使用されて、第1領域と、第2領域と、バッフルと、補給口と、を備える密閉されたタンクを提供する工程
前記気液混合物が、前記電解システム内で、前記タンクの控室への入口を通り、前記第1領域への前記控室の控室出口を通って、前記タンク内を流れるようにする工程と、
気された前記液体が液体移送ギャップを介して前記第1領域から前記第2領域に流れることを可能にする工程と、
前記第2領域に配置される第1出口を介して脱気された前記液体を除去する工程と、
前記ガスが前記バッフル周りにあるガス移送ギャップを介して前記第1領域から前記第2領域に流れることを可能にする工程と、
前記第2領域に配置される第2出口を介して前記タンクから前記ガスを除去する工程と、
を有してなり、
前記タンクを提供する工程において、
前記補給口は、前記液体を所望の液位に維持するために、前記液体を前記タンクに補給して、
前記タンクは、前記タンクの内部の中間の高さの通常動作液位を有する前記液体を収容するように適合されて、
前記第1領域は、前記液体の相対的乱流状態を収容して、
前記第2領域は、前記液体の相対的平穏状態を収容して、
記バッフルは、
前記タンクの内部に配置されて、
前記第1領域と前記第2領域との境界を画定し、前記第1領域から前記第2領域への前記液体の移送のための前記液体移送ギャップを提供して、
水平方向において、前記第1領域と前記第2領域との前記境界を画定し、垂直方向において、前記液体移送ギャップと前記ガス移送ギャップとの境界を画定して、
前記タンク内を流れるようにする工程において、
前記控室出口は、前記液体の前記通常動作液位よりも高い位置にあり、
気された前記液体を除去する工程において、
前記第1出口は、前記液体の前記通常動作液位よりも下にある前記タンクの下半分に位置して、
前記第1出口から流出する前記液体は、前記電気分解装置に再循環され
前記ガスを除去する工程において、
前記第2出口は、前記液体の前記通常動作液位よりも上にある前記タンクの上半分に位置する、
ことを特徴とする気液混合物を脱気する方法。
【請求項13】
水位センサと、温度センサと、圧力センサと、のうち、1つまたは複数のセンサを使用する、
請求項12記載の気液混合物を脱気する方法。
【請求項14】
前記液体を所望の液位に維持することを可能にする排出口が設けられており、前記排出口と前記補給口とは制御ユニットにより制御され、前記制御ユニットは液位を所定の範囲内に維持するように適合されている、
請求項12または13記載の気液混合物を脱気する方法。
【請求項15】
発熱体/熱交換器が、温度センサと前記電解システムとの温度を維持するための制御ユニットと組み合わせて設けられる、
請求項12乃至14のいずれかに記載の気液混合物を脱気する方法。
【請求項16】
前記第2出口から出た前記ガスをデミスタに通す、
請求項12乃至15のいずれかに記載の気液混合物を脱気する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体の脱気手段および方法に関し、特に電解セルまたはそのスタックで使用される液体の脱気に用いるものであるが、これに限定されない。
【背景技術】
【0002】
電気分解装置は、水を分解して水素と酸素とを発生させる装置である。このようなシステムは一般的に、現在利用可能な3つの主要技術、すなわち、陰イオン交換膜(AEM)と、プロトン交換膜(PEM)と、液体アルカリシステムとのいずれかに分類される。
【0003】
AEM電解スタックは、液剤をセル(例えば、アノードハーフセル)の片側のみに供給できるという利点があるので、液体アルカリに勝る。しかしながら、アノードハーフセルにおいては、酸素が発生し、溶解されて水(または水溶液)とともにタンクへの液体配管で循環し得る。効率を維持し、電気分解装置の容積をできる限り小さくするためには、水または水溶液に溶けている廃ガスを除去する必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水溶液の脱気にはいくつかの方法が知られている。それらの方法はヘンリーの法則を利用することと、システムの圧力を下げることとを含む。溶存ガスの量はその分圧に比例するので、システムの圧力を下げると溶存ガスの溶解度が下がる。これは真空脱気としても知られる。真空脱気は、実施にコストがかかるだけでなく、利用可能であるよりも多くのスペースを必要とする場合がある。
【0005】
あるいは、熱調節を利用してもよい。一般的に、ガスは高温になるほど溶解しにくくなるので、水溶液を加熱すると、溶存ガスが溶媒から除去される場合がある。最適な動作にはある一定の動作温度が必要であり得るので、この加熱はすべての状況に適用できるわけではない。
【0006】
ガスは移送できるが液体は移送しない膜を使用する膜脱気は、別の代替方法である。この膜脱気は、すべての溶存ガスを除去することができるが、部品の交換が必要になることも、電解液との互換性がないこともあり得る。
【0007】
水溶液を不活性ガスでかき回すことは別のオプションであるが、用途によってはシステムの効率が低下することがあるので、必ずしも適切ではない。また、還元剤の添加は、結果として生じるイオンが溶液の効率を低下させ得るので、特定の用途には適切ではない。また、還元剤の添加により沈殿物が発生し得、その結果、膜が固化し、さらに効率が低下し得る。
【0008】
本発明の目的は、液体の脱気のための改良された手段を提供することであり、特に電気分解システムで使用されるが、これに限定されない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明によれば、システム内の気液混合物を脱気する手段が提供され、前記手段は、タンク内部の中間の高さで通常動作液位を有する液体を収容する、密閉されたタンクを備え、前記タンクは、前記タンクの本体内に1つまたは複数のバッフルであって、前記バッフルの少なくとも1つは、第1領域と第2領域との境界を実質的に画定し、前記第1領域は前記液体の相対的乱流状態を収容し、前記第2領域は前記液体の相対的平穏状態を収容し、前記第1領域から前記第2領域へ液体を移送するための液体移送ギャップと、前記第1領域から前記第2領域へガスを移送するためのガス移送ギャップと、が設けられる、バッフルと、気液混合物を導入するための入口と、控室であって、前記入口は前記控室に入り、前記控室は前記第1領域に向けられた出口を有し、前記控室の出口は前記液体の前記通常動作液位よりも高い位置にある、控室と、第1出口であって、前記第1出口は実質的に脱気された液体の流出に適合され、前記第1出口は前記液体の前記通常動作液位よりも実質的に下にある前記タンクの下半分に位置する、第1出口と、第2出口であって、前記第2出口は前記気液混合物から除去されたガスの流出に適合され、前記第2出口は前記液体の前記通常動作液位よりも実質的に上にある前記タンクの上半分に位置する、第2出口と、前記気液混合物を前記タンクに流入させる手段と、実質的に脱気された液体を前記タンクから流出させる手段と、を有する。
【0010】
本明細書で使用されるとおり、「気液混合物」という用語は、水溶液、溶存ガスを含む液体、液体とガス、液体と蒸気、液体ガスと蒸気などを含むがこれらに限定されず、タンクを流れるすべての流体を包含して広く使用される。
【0011】
本明細書で使用されるとおり、「ガス」という用語は、いかなるガス、蒸気、またはそれらの混合物も包含して広く使用され、「ガス蒸気混合物」という用語も使用してよい。
【0012】
本明細書で使用されるとおり、「システム」という用語は、タンクがその一部を構成するいかなるシステム、特に電気分解装置も包含して広く使用されるが、これらに限定されない。
【0013】
本明細書で使用されるとおり、「乱流状態」という用語は、タンクの第1領域で観察される乱流を指すために使用される。「平穏状態」という用語は、第2領域で得られる実質的に脱気された液体の相対的に平穏な性質を指すために使用される。第1領域を「沈降する」領域、第2領域を「沈降された」領域とみなしてもよい。
【0014】
好適な実施形態では、第1出口は、好ましくは、タンクの第2領域にある。あるいは、第1出口は、第1領域にあってもよい。
【0015】
控室は、液体が導入される際のこの液体の乱流を収容し、任意に乱流を生じさせ、また導入された液体の乱流を増加させるように適合されてもよい。一例として、控室は実質的に円筒形でもよく、控室入口と控室出口が一列に並ばなくてもよい。あるいは、楕円形の控室、または他の適切な幾何学的断面の控室が使用されてもよい。
【0016】
タンクにはさらなる出口がなくても機能することとするが、排水口として機能する第3出口を設け得ることとする。このような排水口は、排水口を開けた場合に、完全ではないにしてもシステムが実質的に空になるように、好ましくはタンクの底部またはその近くに設置される。排水は第1領域から可能だが、好ましくは、システムからの排水を第2領域から行う。
【0017】
排水口に加え、必要に応じて、システムに補給を行うための補給口である第2入口を設けてもよい。補給口は第2領域または控室にあってもよいが、好適な実施形態では、補給口は第1領域にある。
【0018】
排水と補給のシステムはどちらも手動で操作されてもよいが、所定の閾値を持つ制御ユニットを採用し、自動的に所望の範囲の液位を保つこととする。同じことが、温度制御および他のパラメータの制御にもいえる。通常、ほとんどのセンサおよびその関連パラメータには、上限と下限の閾値が使用される。このような上限と下限の閾値は、あらかじめ定められていることとする。
【0019】
センサの助けなしでシステムを動作させることも可能だが、1つまたは複数のセンサを採用することが好ましい。好ましくは、1つまたは複数のセンサを、1つまたは複数の制御ユニットに接続することができる。制御ユニットは、タンクの状態を所望の範囲内に維持するように適合されていることが好ましい。
【0020】
通常、水位を測定および監視するために、少なくとも1つの水位センサがある。好ましくは、水位センサが2つある、または、タンク内の上側と下側の両方の領域の閾値を測定できるように水位センサが適合されている。1つまたは複数の水位センサは、タンク内の所望の液位またはシステム内の所望の体積を維持するためにタンクの補給または排水を開始させる、1つまたは複数の制御ユニットに接続されることとする。特定の液位でない場合、制御装置は、測定されたパラメータを適切な、通常は所定の範囲に維持するように適合されていることが好ましい。
【0021】
システムによっては、適切に動作するために一定の温度を維持する必要があり得る。そのため、発熱体または熱交換器を設けてもよい。1つまたは複数の制御ユニットに接続され、それにより加熱/冷却ユニットを制御する温度センサも設けられることが好ましい。エネルギー効率の観点から、熱統合を行ってもよいが、そのような機能は使用するシステムによって異なる。
【0022】
通常、このタンクを使用し得るシステムのどこかには圧力センサがあるが、第2出口、またはその他の出口が塞がれた場合などに圧力が動作容量を超えないようにするために、タンクにも圧力センサを設けてよいこととする。したがって、圧力リリーフバルブ、機械的その他、任意の適切な部品を設けて所望の動作条件を維持してもよい。
【0023】
液体用の第1出口は、タンクの下半分にあることとする。好ましくは、第1出口は実質的にタンクの底部またはその近くに位置する。好適な実施形態では、第1出口は、底部またはその近くに、排水口と整列して、または排水口の上に位置する。
【0024】
ガス用の第2出口は、タンクの上半分に位置する。好適な実施形態では、第2出口は、実質的にタンクの上部またはその近くに位置する。さらに好ましくは、第2出口はタンクの上部にあり、それにより大気に、またはデミスタを通って排出されるガスの流れをよりスムーズにする。
【0025】
好適な実施形態では、第2出口にデミスタが設けられ、排気されるガスと混合した液体の液滴の放出を低減または軽減する。さらに、ガスを回収/貯留してもよい。システムによっては、スクラビングその他の処理が必要な場合があり得る。
【0026】
一例では、第1領域をバッフルの一方の側、第2領域をバッフルの他方の側と定義して、少なくとも1つのバッフルが液体中を、実質的に垂直に、上向きに延伸しているが、45℃の角度を適切とし、さらに浅い傾斜でも十分であり得る。第1領域の乱流は、控室から液体が流入し、タンク内の液体に降り注ぐことで生じ得る。好ましくは、液体移送ギャップとガス移送ギャップの両方があり、ガスと液体とがそれぞれの移送ギャップを通って第1領域から第2領域に流れることができ、ガス移送ギャップは通常の液面よりも上にあり、例えば、タンクの上部に隣接している。
【0027】
別の例では、少なくとも1つのバッフルが棚として配置され、傾斜および穿孔があってもよく、控室から導入された液体は、バッフルの上またはバッフルを通って流れ、または高さの異なる一連のバッフルの上またはバッフルを通って流れ、最も低いバッフルの下にある第2領域に到達する。1つまたは複数のバッフルは直線状でもよいが、気液混合物から除去されたガスをよりよく導くために、バッフルに角度をつけたり、湾曲させたりしてもよい。
【0028】
このような実施形態の一つは、バッフルの上端が第1領域に向かって延伸し、バッフルの下端が第2領域に向かってより延伸するように、バッフルの角度を変えることである。あるいは、上端が第2領域に傾き、下端が第1領域に伸びるように、角度や曲線を逆にすることもできる。
【0029】
バッフルは自立型でもよく、好適な実施形態では、少なくとも1つのバッフルが控室に接する。好ましくは、バッフルは境界画定バッフルである。他の実施形態では、第1領域は、複数のバッフルにより画定され、バッフル間に間隔があってもよい。
【0030】
任意の構造材を使用してもよいこととし、好ましくは、構造材は、タンク内を循環する気液混合物と反応しないような、ステンレス鋼、エポキシ樹脂コーティングプラスチックなどの材質であるが、これらに限定されない。タンクは、3Dプリンターまたは、従来の方法で製造することが可能である。
【0031】
通常、気液混合物を脱気するには、控室および第1領域からの乱流で十分である。別の実施形態では、混合物をさらに撹拌するために、カスケードトレイ、穿孔トレイまたは同様の装置があることとする。カスケードトレイは、流れ落ちる前に溶液を溶液の本体に集めて沈降させるための複数の小開口部を有してもよいし、トレイでの流体の蓄積を減少させるためにより大きな穴を有してもよい。
【0032】
水溶液の流れを発生させる手段は、関連システムの一部と考えられ、当業者に既知の手段を含むので、ここにはこれ以上記載されない。
【0033】
本発明によれば、気液混合物を脱気する方法も提供され、前記方法は、気液混合物の脱気を必要とするシステムに使用する、タンク内部の中間の高さで通常動作液位を有する液体を収容するように適合された、密閉されたタンクを提供する工程であって、前記タンク内の1つまたは複数のバッフルは第1領域と第2領域とを画定し、前記第1領域は前記液体の相対的乱流状態を収容し、前記第2領域は前記液体の相対的平穏状態を収容し、液体が前記第1領域から前記第2領域に移動できるように液体移送ギャップが存在し、ガスが前記第1領域から前記第2領域に移動できるようにガス移送ギャップが存在する、工程と、前記気液混合物を前記システム内で、前記タンクの、前記液体の前記通常動作液位より上にある出口を有する控室への入口を通って、前記タンクに流れるようにする工程と、前記気液混合物を、前記控室の出口を通って流れ、その後前記第1領域に入るようにする工程であって、前記気液混合物は前記第1領域へ流れ落ち、前記第1領域の乱流が前記気液混合物に溶解しているガスの除去を促す、工程と、前記実質的に脱気された液体が前記液体移送ギャップを介して前記第1領域から前記第2領域に流れることを可能にする工程と、前記システムの他の場所で使用するために、前記実質的に脱気された流体が前記第2領域から第1出口を通って流れるようにする工程と、第2出口を介して前記タンクからガスを除去する工程と、を含む。
【0034】
気液混合物を脱気する前記方法は、前述のとおりタンクの物理的制限のあらゆるすべてを使用してもよい。
【0035】
水溶液は、水溶液の乱流を高めるように任意に調整された控室を経由してタンクに入り、溶存ガスが除去されるのを助ける。乱流溶液は、控室を出て、1つまたは複数のバッフルで画定された第1領域に入る。1つまたは複数のバッフルは、実質的に脱気された液体が第1領域から液体移送ギャップを通って第2領域に流れるのを可能にする。いくつかの実施形態では、いくつかの図で示すように、液体とガスの移送ギャップとは一体でもよい。
【0036】
実質的に脱気された液体をシステムに移送するため、および溶液から除去されたガスを大気に排出するか、回収または使用するために、少なくとも2つの出口が設けられる。システムによっては、このガスを利用することがある。したがって、さらなる処理または保存が望まれる。処理には、圧縮や乾燥などを含んでもよいが、これらに限定されない。
【0037】
液面センサと制御ユニットにより監視および制御されている、容量が所定の閾値を超えた場合に、タンクの排水を可能にするために、さらなる出口を設けてもよい。液面が低くなり過ぎた場合に、タンクに(再)補給するための補給口を設けてもよい。
【0038】
水位センサ、温度センサ、および/または圧力センサなどの複数のセンサを使用してもよく、それぞれのセンサには、タンク内を望ましい状態に保つために所定の閾値が設定されている。所望の状態を確実に維持するために、前記センサが取り付けられた1つまたは複数のコントローラを使用してもよい。さらに、ヒーター/発熱体を採用してもよい。あるいは、脱気される混合物、または脱気された液体あるいは放出されたガスのいずれかを冷却するために、熱交換器を使用してもよい。
【0039】
本操作方法において、好適な実施形態では、ガス出口から出るガスに任意でデミスタを装備してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0040】
図1A図1Aは、本発明によるタンクの第1実施形態の概略側面図を示す。
図1B図1Bは、線B-B上の図1Aのタンクの断面図を示す。
図2A図2Aは、本発明によるタンクの第2実施形態の断面図を示す。
図2B図2Bは、図2Aと同様のタンクの断面図であるが、変更態様を示す。
【発明を実施するための形態】
【0041】
本発明の理解を助けるために、以下、その具体的な実施形態を例示し、添付の図面を参照して説明する。
【0042】
図1A図1Bとを参照すると、控室10を備えたタンク1があり、控室10は、整列していない入口11と出口12とを有している。タンク1は、実質的に垂直なバッフル14により2つの領域に分けられる。入口11は、控室10に供給する。流入する水溶液101は、乱流状態にある控室10に入る。流出する水溶液102は、出口12を介して控室10を出る。控室10の出口12は、タンク1内の通常の液面30よりもかなり高い位置にあるため、水溶液は図のように、出口12から、バッフル14の右側の相対的乱流の第1領域に落下する。
【0043】
脱気される水溶液をさらに撹拌するためのトレイ13は任意である。トレイに穿孔して水溶液が流れるようにしてもよく、また穿孔せずに縁を付け、トレイが満たされ溢れて下に流れ落ち、さらに乱流を作るようにしてもよい。このような場合、トレイとタンクの壁との間に隙間を設けて、流体が流れ落ちることができるようにする。任意の変形形態を採用可能である。
【0044】
バッフル14は、それぞれ矢印103と104とで示されるように、ガス移送ギャップと液体移送ギャップとを画定する。相対的平穏の第2領域(図のようにバッフル14の左側)には、通常はデミスタ18に送られる、ガス蒸気混合物を除去するための、ガス出口17がある。通常の液面30の下には、実質的に脱気された液体を関連システム16で循環させるための出口15が設けられる。また、所望の液面30を維持するための補給口19aと排水口19bも示されている。
【0045】
図1Bは、控室10の好適な円筒形(曲率は縮尺どおりではない)および、液体がどのように流入するか101を示している。断面図は、相対的乱流の第1領域のものであり、相対的平穏領域はバッフル14の反対側にある(太線で示す)。矢印103と104とは、液体とガスとがそれぞれ第1領域から第2領域へと移動するのを示している。縁付きのカスケードトレイ13も示される。
【0046】
図1A図1Bに示されるタンクでは、水溶液は控室に入り、好ましくは高速で控室に入る。控室は、水溶液が乱流状態になるように湾曲している。水溶液は出口12から出て、任意のトレイ13を経由して、第1領域に流れ落ちる。乱流状態によりガスが除去され、ガス蒸気混合物が、ガス移送ギャップを介して第2領域に流れ103、出口17とデミスタ18とを介してタンクの外に出るようにする。実質的に脱気された水溶液は、液体移送ギャップ104を介して第2領域に移動し、出口15を介して付随するシステム16に流出することができる。このような配置にすることで、システム16に流れる水溶液を、比較的気泡がないようにできる。
【0047】
センサとそれに付随する制御ユニットとは図示されていないが、それらの動作モードを簡単に説明する。液面が許容範囲を下回った場合には、補給が行われる。その後通常、所定の第2閾値に達するまで、タンクへの補給を行う。逆に、液面が高くなり過ぎた場合には、液面が所望の範囲内に戻るまで、排水口を介してタンクからの排水ができる。
【0048】
発熱体とそれに対応する熱電対とで温度を制御することができる。冷却は、システムを排水および補給することにより行われてもよいが、好ましくは熱交換器により行われる。効率を上げるために、熱交換器または熱統合システムを使用してもよい。
【0049】
ここで、図2Aを参照すると、タンク2の断面側面図を見ることができる。本実施形態では、控室20は、タンク本体の外部にある。水溶液は、入口21を介して控室20に流れ(201)、その後、タンク2の本体に流れる(202)。穿孔のある、または穿孔のない傾斜したトレイ23の形状であり得るバッフルが、水溶液を第2領域(この場合はタンク2の下部)へと導き、その動きが水溶液の脱気を助ける。
【0050】
実質的に脱気された水溶液は沈降し、出口25を介してタンクから、システム26に出る。ガス蒸気混合物は、出口27を介してタンクを出てデミスタ28に向かうか、あるいは大気に放出することもできる。
【0051】
図2Bを参照すると、図2Aに見られるのと同様のタンクを、異なる視点から見ることができる。水溶液は、控室20を経由してバッフル付きの第1領域に流入し、流れを下向きにして第2沈降領域に導く。この第2領域から水溶液は出口25を介してシステム26に流れ出る。ガス蒸気混合物は、下向きに流れる流体と向流で上部に流れる、あるいは、直接流路(不図示)を通って、第2出口27から大気またはデミスタ28に出る。
【0052】
第2実施形態では、第1実施形態と同様に、水溶液は控室20を経由して高速でタンクに入り、控室20内に乱流状態を発生させる。水溶液は相対的に減少した速度で控室を出て、第1領域に入る。この領域のバッフル23により、乱流が減少し、ガスが混合物から出る。その結果、システムに循環させるために底部に集められた溶剤には、比較的気泡がなく、ガス蒸気混合物は比較的乾燥している。さらなる分離のためにデミスタ28を設けてもよい。また、排水口29bと補給口29aも示されている。
【0053】
図2Bの破線33で示されているように、例えば、ポンプ34により、システム26とタンク2とを水溶液が繰り返し循環してもよく、このとき、システム26はガスを水溶液に導入し、このガスはその後タンク2を通って除去される。本発明は、システムおよびポンプなど、プラントのバランスを構成する部品の順序により制限されることを意図するものではない。水溶液は、例えば、水酸化カリウム(KOH)の希釈水溶液でもよいが、任意の適切なアルカリ電解質を使用してもよく、システム26は、水溶液を電気分解して水素および酸素ガスを生成する電気分解ユニットである。水溶液がシステム26の電気分解ユニットに戻される前に残存ガスを除去するために、水溶液はタンク2の中を再循環させられる。水溶液の再循環は、図2Aのタンク2または図1A図1Bのタンク1でも同等に実現可能である。
【0054】
温度と補給液位とを監視するオプションのセンサは不図示である。制御ユニットおよび関連モジュールも不図示である。本発明は、このような特徴に限定されることを意図するものではない。ただし、このようなセンサを制御ユニットやその他の部品と組み合わせることで、このようなシステムのユーザーや設計者による所定の許容範囲内で状態を監視および保持することができる。
【0055】
あらゆるすべての実施形態では、液面センサ、温度センサなど、複数のセンサを採用してもよい。このようなセンサは、予想される方法で採用され、適用される制御システムは、ここで説明する必要はない。
【0056】
溶存ガスの除去は、多くのシステムの運用に有益である。溶存ガスの除去は、機器へのダメージを軽減し、システムのボリュームを一定に保ち、効率を向上させるなどの効果がある。
【0057】
本発明は、前述した実施形態の詳細に限定されることを意図するものではない。例えば、内部控室を外部控室に置き換えること、デミスタまたは同等のものではなく大気に排出することなどと組み合わせることができる。
【0058】
本発明は、循環させる水溶液の物理的特性に応じて、多数の材料が好適であり得るので、構造材に限定されることを意図するものではない。また、タンクの寿命をさらに延ばすために、エポキシなど任意の数のコーティングまたはワニスを施してもよい。
【0059】
本発明は、図に開示された設計に限定されるものではなく、バッフルは直線的に描かれているが、例えば、角度をつけてもよく、また、本発明によれば、立方体または円筒形など形状やより変則的な形状など、多くのタンク形状を使用し得る。本発明によるタンクは、いずれかの、考えられるすべての実施形態の特徴を使用し得る。
【0060】
タンクの全体の規模は限定されることを意図するものではなく、液体脱気手段が使用されるシステムも限定されない。液体脱気手段、およびその操作の方法は、電解システムに使用されることとするが、代替システムがこの装置、および使用の方法を採用してもよい。
【0061】
液体脱気手段が機能するためには、水溶液が流れることが必要である。システムおよびタンクを通る水溶液の流れは、再循環を含んでもよい。この流れは、任意の数のポンプまたは同等の部品により行われることがあり、本発明はこのような機能により制限されない。
【0062】
好適な実施形態では、システムは弱アルカリ性溶液、すなわち希釈KOHの流れを伴う。ただし、システムによっては、中性、強アルカリ性、弱酸性、強酸性などの、異なる溶液を必要とすることもある。本発明の手段と方法とは、本発明の精神から逸脱することなく、任意の流体混合物を脱気するために採用することができる。
図1A
図1B
図2A
図2B