(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法及びその応用
(51)【国際特許分類】
B01J 20/30 20060101AFI20240510BHJP
B01J 20/22 20060101ALI20240510BHJP
G21F 9/12 20060101ALI20240510BHJP
A01N 59/20 20060101ALN20240510BHJP
A01P 3/00 20060101ALN20240510BHJP
【FI】
B01J20/30
B01J20/22 Z
G21F9/12 501A
A01N59/20
A01P3/00
(21)【出願番号】P 2022196308
(22)【出願日】2022-12-08
【審査請求日】2022-12-08
(31)【優先権主張番号】202211308845.8
(32)【優先日】2022-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(73)【特許権者】
【識別番号】522478754
【氏名又は名称】陝西科技大学
【氏名又は名称原語表記】SHAANXI UNIVERSITY OF SCIENCE & TECHNOLOGY
【住所又は居所原語表記】Xi’an Weiyang University Park, Xi’an, Shaanxi, 710021, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】強 涛涛
(72)【発明者】
【氏名】蒲 亜東
(72)【発明者】
【氏名】阮 暁楠
【審査官】横山 敏志
(56)【参考文献】
【文献】特開2000-176279(JP,A)
【文献】特開昭58-205543(JP,A)
【文献】特開平03-021344(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第113413921(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第113578278(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第114160103(CN,A)
【文献】中国特許出願公開第115216957(CN,A)
【文献】国際公開第2001/011955(WO,A2)
【文献】国際公開第2012/036034(WO,A1)
【文献】PU, Yadong et al.,Anti-biofouling bio-adsorbent with ultrahigh uranium extraction capacity: One uranium resource recycling solution,Desalination,2022年03月24日,Vol.531,115721 pp.1-10
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J20/00-20/28
20/30-20/34
G21F 9/12
A01N 1/00-65/48
A01P 1/00-23/00
CAplus/REGISTRY(STN)
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
Science Direct
Japio-GPG/FX
J-STAGE
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法であって、
シアノ基付きの基材、銅塩及び塩基性物質を混合して混合物を得て、
前記シアノ基付きの基材はシアノ基変性ケラチン繊維であり、前記混合物の中の前記シアノ基変性ケラチン繊維と前記銅塩の使用量比率は、質量比で5:1であり、前記混合物の中の前記銅塩と前記塩基性物質のモル比は1:2であるステップと、
前記混合物にヒドロキシルアミン溶液を添加し、
予め設定された温度で予め設定された時間に前記混合物と反応させて第1生成物を得て、前記ヒドロキシルアミン溶液により、前記混合物におけるシアノ基をアミドキシム基に変性させるとともに、前記銅塩をCu2Oに還元させ
、前記ヒドロキシルアミン溶液は、ヒドロキシルアミン塩酸塩及び水酸化ナトリウムをメタノール水溶液に溶解して調製し得るものであり、前記ヒドロキシルアミン溶液のpHは7であるステップ
と、
前記第1生成物を水洗、乾燥した後にCu2O複合アミドキシム基吸着材を製造し得るステップと、を含むことを特徴とする
ウランを吸着するCu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法。
【請求項2】
前記銅塩は、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅及び/又は炭酸銅のうちの1種または複数種の組み合わせを含むことを特徴とする請求項1に記載のCu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法。
【請求項3】
前記ヒドロキシルアミン溶液を製造する場合、前記メタノール水溶液におけるメタノールの体積含有量は10~30%であり、
前記ヒドロキシルアミン塩酸塩の濃度は、50~90g/Lであることを特徴とする請求項
1に記載のCu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法。
【請求項4】
前記ヒドロキシルアミン溶液が前記混合物と反応する場合、前記シアノ基付きの基材と前記ヒドロキシルアミン溶液との使用量比率範囲は、1g:20mL~1g:40mL、反応の予め設定された温度は60~80℃、反応の予め設定された時間は6~8時間であることを特徴とする請求項
1に記載のCu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法。
【請求項5】
海水中のウランを吸着回収するための吸着材としてCu2O複合アミドキシム基吸着材の応用であって、
前記Cu2O複合アミドキシム基吸着材は、請求項1~
4のいずれか一項に記載のCu2O複合アミドキシム基吸着材であることを特徴とするCu2O複合アミドキシム基吸着材の応用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、放射性元素であるウランを吸着分離する吸着材の製造技術領域に属し、Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法及びその応用に関する。
【背景技術】
【0002】
原子力は、炭素排出量が極めて少ない新型エネルギーである。原子力の活発な開発は、現在のエネルギー危機を解決し、「カーボンピークアウトとカーボンニュートラル」との目標を達成するための効果的な戦略である。しかしながら、原子力の活発な開発は、ウラン資源の安定供給に大きな課題をもたらす。海水には3.3ppbのウランが含まれ、その濃度が非常に低いが、海水の膨大な量を考慮すると、海水には45億トン超えのウランが含まれ、合理的な方案により海水からウランを捕集することで、陸上のウラン資源の不足の問題を解決できる。現在、アミドキシム基吸着材は、最も研究され、かつウランとの親和性に優れた基である。そのため、材料にアミドキシム基吸着材をグラフトすることは、材料の吸着性を向上する最適な方法である。しかしながら、海水中のウラン濃度が極めて低いため、吸着材による海水からのウランの吸着は1つの長期プロセスになる。この期間中に、海水中に大量の細菌が存在し、これらの海洋の細菌は吸着材の表面に吸着して活性部位の閉塞を引き起こすことで、材料の吸着性を急激に低下させ、吸着材のサイクル寿命を短くし、海水からのウランの捕集コストを増加し、さらに、単純のアミドキシム基変性により吸着材を抗菌化できず、アミドキシム基材料の実際の海水への応用は深刻な課題に直面している。
【0003】
このため、上記の従来技術の欠点を克服することは、当技術分野において解決が必要な課題となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の従来技術の欠点を克服するために、本発明の目的は、Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法及びその応用を提供することである。本発明では、ヒドロキシルアミン溶液によりアミドキシム基とCu2Oを同時に製造することで、アミドキシム基吸着材にCu2Oを複合させ、Cu2Oを抗菌剤として吸着材の抗菌性を高め、これにより、吸着材の抗菌性及び吸着性を向上させる。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明は以下の技術により実現される。
本発明は、Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法を開示する。この方法は、シアノ基付きの基材、銅塩及び塩基性物質を混合して混合物を得て、前記混合物にヒドロキシルアミン溶液を添加し、前記ヒドロキシルアミン溶液により、前記混合物におけるシアノ基をアミドキシム基に変性させるとともに、前記銅塩をCu2Oに還元させることで、Cu2O複合アミドキシム基吸着材を得るステップを含む。
【0006】
好ましくは、前記シアノ基付きの基材は、アミノ基変性またはシアノ基グラフトにより繊維材料から製造される。
【0007】
好ましくは、前記銅塩は、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅及び/又は炭酸銅のうちの1種または複数種の組み合わせを含む。
【0008】
好ましくは、前記方法は、
シアノ基付きの基材を容器内に入れ、前記容器内に銅塩及び塩基性物質を添加して混合物を得るステップと、
ヒドロキシルアミン溶液を前記容器内に添加し、予め設定された温度で予め設定された時間に前記混合物と反応させて第1生成物を得るステップと、
前記第1生成物を水洗、乾燥した後にCu2O複合アミドキシム基吸着材を製造し得るステップと、を含む。
【0009】
好ましくは、前記混合物における前記銅塩と前記塩基性物質とのモル比は、1:1~3である。
【0010】
好ましくは、前記混合物における前記シアノ基付きの基材と前記銅塩との使用量比率範囲は、質量比で5:1~20:1である。
【0011】
好ましくは、前記ヒドロキシルアミン溶液は、ヒドロキシルアミン塩酸塩及び水酸化ナトリウムをメタノール水溶液に溶解して調製し得るものであり、前記ヒドロキシルアミン溶液のpHは7である。
【0012】
好ましくは、前記ヒドロキシルアミン溶液を製造する場合、前記メタノール水溶液におけるメタノールの体積含有量は10~30%であり、前記ヒドロキシルアミン塩酸塩の濃度は、50~90g/Lである。
【0013】
好ましくは、前記ヒドロキシルアミン溶液が前記混合物と反応する場合、前記シアノ基付きの基材と前記ヒドロキシルアミン溶液との使用量比率範囲は、1g:20mL~1g:40mL、反応の予め設定された温度は60~80℃、反応の予め設定された時間は6~8時間である。
【0014】
本発明は、海水中のウランを吸着回収するための吸着材として上記のいずれかのCu2O複合アミドキシム基吸着材の応用を開示する。
【0015】
本発明の有益な効果は以下の通りである。
Cu2Oは、広域スペクトル光触媒抗菌剤であり、繊維材料や船舶コーティングの抗菌性を高めるためによく使用される。Cu2Oは、照明条件下で活性酸素(ROS)と大量の電子正孔を生成可能である。活性酸素(ROS)の生成により、材料に優れた抗菌性を付与する。大量の電子正孔の生成により、吸着材と、海水中に負に帯電したウラニルイオンとを静電気で引き寄せ、吸着材によるウランへの吸着性を向上させる。アミドキシム基材料は、通常、シアノ基がヒドロキシルアミンと反応して得られ、ヒドロキシルアミンの強還元性によりCu2+をCu2Oに還元させることができる。本発明は、アミドキシム基とCu2Oを同時に吸着材に複合させ、吸着材の抗菌及びウラン吸着の強化である二重改質を実現する。アミドキシム基吸着材にCu2Oを複合した後、Cu2Oは、抗菌剤としてアミドキシム基吸着材の抗菌性を高め、海水中の細菌が吸着材の表面に吸着することを防止する。本発明は、アミドキシム基とCu2Oを同時に吸着材に複合させ、吸着材の抗菌及びウラン吸着の強化である二重改質を実現し、海水からウランを捕集する吸着材において、大量の細菌が吸着材の表面に付着して活性部位の閉塞を引き起し、吸着材の吸着性を急激に低下させ、吸着材のサイクル寿命を短くし、海水からのウランの捕集コストを増加するという従来の技術問題を効果的に改善する。
【0016】
Cu2Oとアミドキシム基を共同複合させる方案は1つの生材に限定されない。生材は、天然由来のバイオマス素材であってもよいし、人工的に合成された繊維ポリマーや新型多孔質素材であってもよい。また、Cu2O複合アミドキシム基吸着材は、自己設計のゲルタイプ、バイオマスタイプ、フィルムタイプのアミドキシム基吸着材に用いられてもよく、簡便かつ高い汎用性を有する。本発明では、アミドキシム基の製造とCu2Oの合成を同時に行い、より多くの製造工程を減らし、製造方法をより簡便にする。
【図面の簡単な説明】
【0017】
本発明の実施例における技術案をより明確に説明するために、以下、実施例の説明に必要な図面を簡単に紹介する。もちろん、以下の説明における図面は本発明の一部の実施例に過ぎず、当業者であれば、創造的な労働を必要せず、これらの図面に示す構造から他の図面も取得できる。
【
図1】実施例1で合成されたCu
2O複合アミドキシム基吸着材のサンプルのSEM画像である。
【
図2】実施例1で合成されたCu
2O複合アミドキシム基吸着材のサンプルのFT-IRスペクトルである。
【
図3】実施例1で合成されたCu
2O複合アミドキシム基吸着材のサンプルのXRDスペクトルである。
【
図4】実施例1で合成されたCu
2O複合アミドキシム基吸着材のサンプルの、異なるpH溶液におけるウランの吸着効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
当業者が本発明の技術案をより良く理解するために、以下、本発明の実施例の図面を組み合わせながら、本発明の実施例における技術案を明確、完全に説明する。明らかに、説明される実施例が本発明の実施例の一部のみであり、全ての実施例ではない。本発明の実施例に基づき、当業者が創造的な労力を要せずに想到し得る全ての他の実施例は、本発明の保護範囲に属するべきである。
【0019】
なお、本発明の明細書と特許請求の範囲及び上記の図面中の「第一」、「第二」などの用語は、類似の対象を区別するためのものであり、特定の順序又は前後順序を説明することに用いられる必要がない。このように用いられるデータは、ここで説明される本発明の実施例がここで図示又は記載されるもの以外の順序で実施されることができるように、適切な場合で交換可能であると理解すべきである。また、「含む」と「有する」の用語及びそれらの任意の変形は、非排他的な包括を覆うことを意図し、例えば、一連のステップ又はユニットを含む過程、方法、システム、製品又は装置は明確に列挙されたステップ又はユニットに限定される必要がなく、明確に列挙されないもの又はこれらのプロセス、方法、製品又は装置の固有の他のステップ又はユニットを含むことができる。
【0020】
本発明は、アミドキシム基とCu2Oを同時に吸着材に複合させ、吸着材の抗菌及びウラン吸着の強化である二重改質を実現し、海水からウランを捕集する吸着材において、大量の細菌が吸着材の表面に付着して活性部位の閉塞を引き起し、吸着材の吸着性を急激に低下させ、吸着材のサイクル寿命を短くし、海水からのウランの捕集コストを増加するという従来の技術問題を効果的に改善する。
【0021】
Cu2Oは、広域スペクトル光触媒抗菌剤であり、繊維材料や船舶コーティングの抗菌性を高めるためによく使用される。Cu2Oは、照明条件下で活性酸素(ROS)と大量の電子正孔を生成可能である。活性酸素(ROS)の生成により、材料に優れた抗菌性を付与する。大量の電子正孔の生成により、吸着材と、海水中に負に帯電したウラニルイオンとを静電気で引き寄せ、吸着材によるウランへの吸着性を向上させる。アミドキシム基材料は、通常、シアノ基がヒドロキシルアミンと反応して得られ、ヒドロキシルアミンの強還元性でCu2+をCu2Oに還元する。本発明は、アミドキシム基とCu2Oを同時に吸着材に複合させ、吸着材の抗菌及びウラン吸着の強化である二重改質を実現する。
【0022】
Cu2Oとアミドキシム基を共合成する方案は1つの生材に限定されない。生材は、天然由来のバイオマス素材であってもよいし、人工的に合成された繊維ポリマーや新型多孔質素材であってもよい。また、Cu2O複合アミドキシム基吸着材は、自己設計のゲルタイプ、バイオマスタイプ、フィルムタイプのアミドキシム基吸着材に用いられてもよく、簡便かつ高い汎用性を有する。本発明では、アミドキシム基の製造とCu2Oの合成を同時に行い、より多くの製造工程を減らし、製造方法をより簡便にする。
【0023】
Cu
2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法は、シアノ基付きの基材、銅塩及び塩基性物質を混合して混合物を得て、前記混合物にヒドロキシルアミン溶液を添加し、前記ヒドロキシルアミン溶液により、前記混合物におけるシアノ基をアミドキシム基に変性させるとともに、前記銅塩をCu
2Oに還元させることで、Cu
2O複合アミドキシム基吸着材を得るステップを含む。なお、方法は以下の通りのステップを含む。
S1:シアノ基付きの基材を容器内に入れ、前記容器内に銅塩及び塩基性物質を添加して混合物を得る。塩基性物質の添加は、銅塩がヒドロキシルアミンと反応する前に、銅イオンを水酸化銅へ反応させて沈殿させた後にヒドロキシルアミンによって還元する必要がある。
S2:ヒドロキシルアミン溶液を前記容器内に添加し、予め設定された温度で予め設定された時間に前記混合物と反応させて第1生成物を得る。ヒドロキシルアミン溶液を中性に維持することは、ヒドロキシルアミンを与える物質がヒドロキシルアミン塩酸塩であり、塩酸の除去が必要であるため、アルカリでヒドロキシルアミン塩酸塩における塩酸を中和してヒドロキシルアミンを残し、ヒドロキシルアミンをシアノ基及び銅塩と再反応させる必要がある。
S3:前記第1生成物を水洗、乾燥した後にCu
2O複合アミドキシム基吸着材を製造し得る。
本発明では、Cu
2Oの合成ステップは以下の通りである。
アミドキシム基の合成ステップは以下の通りである。
【0024】
本発明では、アミドキシム基の製造とCu2Oの合成を同時に行うため、より多くの製造工程を減らし、製造方法をより簡便にする。
【0025】
実施例1
Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法は以下の通りである。
シアノ基変性ケラチン繊維をシアノ基付きの基材とし、CuSO4・5H2Oを銅塩とし、水酸化ナトリウムを塩基性物質として選択した。5gのシアノ基変性ケラチン繊維、1gのCuSO4・5H2O、0.32gのNaOHをフラスコに入れ、20%のメタノール水溶液で調製されて濃度が70g/Lのヒドロキシルアミン塩酸塩溶液150mLを添加した。70℃で6時間反応させて第1生成物を得た。反応後、第1生成物を3~5回水洗し、最後に、40℃で恒量までに乾燥してCu2O複合アミドキシム基吸着材を得た。
【0026】
実施例2
Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法は以下の通りである。
シアノ基変性ケラチン繊維をシアノ基付きの基材とし、CuSO4・5H2Oを銅塩とし、水酸化ナトリウムを塩基性物質として選択した。5gのシアノ基変性ケラチン繊維、1gのCuSO4・5H2O、0.32gのNaOHをフラスコに入れ、20%のメタノール水溶液で調製されて濃度が90g/Lのヒドロキシルアミン塩酸塩溶液100mLを添加した。70℃で6時間反応させて第1生成物を得た。反応後、第1生成物を3~5回水洗し、最後に、40℃で恒量までに乾燥してCu2O複合アミドキシム基吸着材を得た。
【0027】
実施例3
Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法は以下の通りである。
シアノ基ポリアクリロニトリル繊維をシアノ基付きの基材とし、CuSO4・5H2Oを銅塩とし、水酸化ナトリウムを塩基性物質として選択した。5gのシアノ基ポリアクリロニトリル繊維、1gのCuSO4・5H2O、0.32gのNaOHをフラスコに入れ、20%のメタノール水溶液で調製されて濃度が70g/Lのヒドロキシルアミン塩酸塩溶液150mLを添加した。70℃で6時間反応させて第1生成物を得た。反応後、第1生成物を3~5回水洗し、最後に、40℃で恒量までに乾燥してCu2O複合アミドキシム基吸着材を得た。
【0028】
実施例4
Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法は以下の通りである。
シアノ基変性ケラチン繊維をシアノ基付きの基材とし、塩化銅を銅塩とし、水酸化ナトリウムを塩基性物質として選択した。5gのシアノ基変性ケラチン繊維、0.54gのCuCL2、0.32gのNaOHをフラスコに入れ、20%のメタノール水溶液で調製されて濃度が70g/Lのヒドロキシルアミン塩酸塩溶液150mLを添加した。70℃で6時間反応させて第1生成物を得た。反応後、第1生成物を3~5回水洗し、最後に、40℃で恒量までに乾燥してCu2O複合アミドキシム基吸着材を得た。
【0029】
実施例5
Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法は以下の通りである。
シアノ基ポリアクリロニトリル繊維をシアノ基付きの基材とし、CuSO4・5H2Oを銅塩とし、水酸化ナトリウムを塩基性物質として選択した。5gのシアノ基ポリアクリロニトリル繊維、1gのCuSO4・5H2O、0.32gのNaOHをフラスコに入れ、20%のメタノール水溶液で調製されて濃度が70g/Lのヒドロキシルアミン塩酸塩溶液150mLを添加した。80℃で8時間反応させて第1生成物を得た。反応後、第1生成物を3~5回水洗し、最後に、40℃で恒量までに乾燥してCu2O複合アミドキシム基吸着材を得た。
【0030】
実施例6
Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法は以下の通りである。
シアノ基ポリアクリロニトリル繊維をシアノ基付きの基材とし、CuSO4・5H2Oを銅塩とし、水酸化ナトリウムを塩基性物質として選択した。5gのシアノ基ポリアクリロニトリル繊維、1gのCuSO4・5H2O、0.32gのNaOHをフラスコに入れ、20%のメタノール水溶液で調製されて濃度が70g/Lのヒドロキシルアミン塩酸塩溶液150mLを添加した。60℃で6時間反応させて第1生成物を得た。反応後、第1生成物を3~5回水洗し、最後に、40℃で恒量までに乾燥してCu2O複合アミドキシム基吸着材を得た。
【0031】
実施例7
Cu2O複合アミドキシム基吸着材の製造方法は以下の通りである。
シアノ基変性ケラチン繊維をシアノ基付きの基材とし、CuSO4・5H2Oを銅塩とし、水酸化ナトリウムを塩基性物質として選択した。5gのシアノ基変性ケラチン繊維、0.25gのCuSO4・5H2O、0.08gのNaOHをフラスコに入れ、20%のメタノール水溶液で調製されて濃度が50g/Lのヒドロキシルアミン塩酸塩溶液200mLを添加した。60℃で6時間反応させて第1生成物を得た。反応後、第1生成物を3~5回水洗し、最後に、40℃で恒量までに乾燥してCu2O複合アミドキシム基吸着材を得た。
【0032】
なお、上記の実施例1~5のそれぞれで製造されたCu
2O複合アミドキシム基吸着材のサンプルに対してSEM、FT-IR及びXRD分析を行った。結果としては、上記の各実施例で製造されたCu
2O複合アミドキシム基吸着材のサンプルは、アミドキシム基とCu
2Oとを複合させることができた。
図1~
図3には、実施例1のSEM、FT-IR及びXRD分析結果のみが示される。
【0033】
図1から分かるように、5μmの電子顕微鏡下で、実施例1で製造されたCu
2O複合アミドキシム基吸着材は、繊維表面に粒状のCu
2Oが複合され、Cu
2Oを抗菌剤としてアミドキシム基吸着材の抗菌性を高め、海水中の細菌が吸着材の表面に吸着することを防止した。
【0034】
図2から分かるように、実施例1で製造されたCu
2O複合アミドキシム基吸着材は、赤外波長1649cm
―1と951cm
―1の箇所にアミドキシム基の特性吸収のピークが現れ、すなわち、吸着材にアミドキシム基があることを証明し、赤外波長621cm
―1の箇所にCu
2Oの特性吸収のピークが現れ、吸着材にCu
2Oが存在することを証明する。
【0035】
図3から分かるように、実施例1で製造されたCu
2O複合アミドキシム基吸着材は、29.64°、39.56°及び42.23°の箇所に鋭い結晶化ピークが現れ、これらの結晶化ピークがCu
2O標準データPDF#77-0199カードの(110)、(111)及び(200)面と一致して対応し、すなわち、吸着材にCu
2Oが存在することを証明する。
【0036】
また、本発明で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材について、ウランの吸着試験及び異なる細菌に対する抗菌試験を行った。
1)本発明の上記の実施で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材について、ウランの吸着試験を行った。その結果は以下の通りである。
実施例1で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L8mg/Lのウラン溶液(pH=5)を24時間吸着し、ウランの吸着量は204.65mg/gであった。
【0037】
実施例1で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L8mg/Lのウラン溶液(pH=6)を24時間吸着し、ウランの吸着量は396.28mg/gであった。
【0038】
実施例1で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L8mg/Lのウラン溶液(pH=7)を24時間吸着し、ウランの吸着量は816.56mg/gであった。
【0039】
実施例1で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L8mg/Lのウラン溶液(pH=8)を24時間吸着し、ウランの吸着量は687.34mg/gであった。
【0040】
実施例2で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L8mg/Lのウラン溶液(pH=7)を24時間吸着し、ウランの吸着量は787.92mg/gであった。
【0041】
実施例3で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L8mg/Lのウラン溶液(pH=7)を24時間吸着し、ウランの吸着量は793.54mg/gであった。
【0042】
実施例4で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L8mg/Lのウラン溶液(pH=7)を24時間吸着し、ウランの吸着量は683.36mg/gであった。
【0043】
実施例5で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L8mg/Lのウラン溶液(pH=7)を24時間吸着し、ウランの吸着量は657.74mg/gであった。
【0044】
実施例6で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L8mg/Lのウラン溶液(pH=7)を24時間吸着し、ウランの吸着量は712.32mg/gであった。
【0045】
実施例7で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L8mg/Lのウラン溶液(pH=7)を24時間吸着し、ウランの吸着量は693.34mg/gであった。
【0046】
実施例1で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L4mg/Lのウラン溶液(pH=7)を24時間吸着し、ウランの吸着量は455.76mg/gであった。
【0047】
実施例1で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材5mgを秤量し、1L2mg/Lのウラン溶液(pH=7)を24時間吸着し、ウランの吸着量は267.48mg/gであった。
【0048】
2)さらに、本発明では、製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材について、異なる細菌に対する抗菌試験を行った。具体的には以下の通りである。
実施例1で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材は、黄色ブドウ球菌に対して29.54mmの大きさの抗菌ゾーンを有する。
【0049】
実施例1で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材は、大腸菌に対して26.42mmの大きさの抗菌ゾーンを有する。
【0050】
実施例1で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材は、ビブリオブルニフィカスに対して38.78mmの大きさの抗菌ゾーンを有する。
【0051】
実施例1で製造されたCu2O複合アミドキシム基吸着材は、ビブリオアルギノリティカスに対して33.47mmの大きさの抗菌ゾーンを有する。
【0052】
比較例
比較例のサンプルとしては、アミドキシム基とCu2Oとを複合させないシアノ化ケラチン繊維が用いられる。
【0053】
この比較例のサンプル5mgを秤量し、1L8mg/Lのウラン溶液(pH=7)を24時間吸着し、ウランの吸着量は69.54mg/gであった。
【0054】
比較例のサンプルは、黄色ブドウ球菌、大腸菌、ビブリオブルニフィカス、ビブリオアルギノリティカスに対して抗菌ソーンを有していない。
【0055】
比較試験結果から分かるように、アミドキシム基とCu2Oとを複合させないシアノ化ケラチン繊維は抗菌性を有していないとともに、ウラン元素の吸着性もCu2O複合アミドキシム基吸着材よりも明らかに弱い。
【0056】
以上に説明したものは本発明の好適な実施例のみであり、本発明を限定するものではない。当業者であれば、本発明の精神と原則を逸脱しない前提で、様々な修正や置き換え、改良などを行うことができるが、いずれも本発明の保護範囲と見なされるべきである。