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特許7486231ブレーキ粒子の捕捉システムによる機械の制限
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ブレーキ粒子の捕捉システムによる機械の制限
(51)【国際特許分類】
   F16D 65/00 20060101AFI20240510BHJP
   B60T 17/22 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F16D65/00 C
B60T17/22 Z
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2022551710
(86)(22)【出願日】2021-02-24
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-04-17
(86)【国際出願番号】 EP2021054611
(87)【国際公開番号】W WO2021170681
(87)【国際公開日】2021-09-02
【審査請求日】2022-10-26
(31)【優先権主張番号】2002025
(32)【優先日】2020-02-28
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(73)【特許権者】
【識別番号】514287580
【氏名又は名称】タラノ・テクノロジーズ
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ロイック・アダムザック
(72)【発明者】
【氏名】クリストフ・ロッカ-セラ
【審査官】宮下 浩次
(56)【参考文献】
【文献】特表2019-529840(JP,A)
【文献】国際公開第2019/224034(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2014/0262633(US,A1)
【文献】国際公開第2016/188809(WO,A1)
【文献】仏国特許出願公開第03081781(FR,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16D 65/00
B60T 17/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
機械(90)の摩擦ブレーキシステム(10)からのブレーキ粒子を捕捉するための捕捉システム(1)であって、真空源(20)と、前記摩擦ブレーキシステム(10)を前記真空源(20)に接続している空圧回路(30)と、前記空圧回路(30)に配置されていると共に支持体(41)に取り付けられているフィルタ(40)と、を備えている前記捕捉システム(1)において、
前記捕捉システム(1)が、制御ユニット(60)と、前記機械(90)のための制御デバイス(70)と、前記フィルタ(40)のための目詰まり検知デバイス(50)であって、前記フィルタ(40)が目詰まりした場合に少なくとも1つの信号を前記制御ユニット(60)に送信する前記目詰まり検知デバイス(50)と、を備えており、
前記制御ユニット(60)が、前記信号に基づいて前記フィルタ(40)の目詰まりを判定し、且つ、前記目詰まり検知デバイス(50)から前記制御ユニット(60)へ送られる信号がないことに基づいて前記目詰まり検知デバイス(50)が動作不能か否かを判定し、
前記制御ユニット(60)が、前記フィルタ(40)が目詰まりした場合又は前記目詰まり検知デバイス(50)が動作不能である場合に、前記機械(90)の動作を制限するために、前記制御デバイス(70)を作動させることを特徴とする、捕捉システム(1)。
【請求項2】
前記制御ユニット(60)が、前記フィルタ(40)の目詰まり又は前記目詰まり検知デバイス(50)の故障をユーザに通知する、請求項1に記載の捕捉システム(1)。
【請求項3】
前記目詰まり検知デバイス(50)が、前記フィルタ(40)の上流において前記空圧回路(30)に配置されている圧力センサ(51)を備えており、
前記目詰まり検知デバイス(50)が、前記フィルタ(40)の上流における前記空圧回路(30)の圧力Pの測定値を前記制御ユニット(60)に信号で送り、
前記信号を受信した場合に、前記制御ユニット(60)が、前記圧力センサ(51)によって圧力Pを測定する際における前記真空源(20)の基準動作状態Eについての前記フィルタ(40)の目詰まり閾値を決定するために、圧力Pの測定値を前記空圧回路(30)の圧力である基準圧力Pと比較し、
前記制御ユニット(60)が、圧力Pの測定値が前記基準圧力P以上である場合に、前記機械(90)の動作を制限する、請求項1又は2に記載の捕捉システム(1)。
【請求項4】
前記目詰まり検知デバイス(50)が、
前記フィルタ(40)の上流において前記空圧回路(30)に配置されている第1の圧力センサ(51)であって、前記目詰まり検知デバイス(50)が、前記フィルタ(40)の上流における前記空圧回路(30)の第1の圧力Pの測定値を前記制御ユニット(60)に信号で送る、前記第1の圧力センサ(51)と、
前記フィルタ(40)の下流において前記空圧回路(30)に配置されている第2の圧力センサ(52)であって、前記目詰まり検知デバイス(50)が、前記フィルタ(40)の下流における前記空圧回路(30)の第2の圧力Pの測定値を前記制御ユニット(60)に信号で送る、前記第2の圧力センサ(52)と、
を備えており、
前記制御ユニット(60)が、少なくとも1つの前記信号を受けると、前記第1の圧力Pの測定値と前記第2の圧力Pの測定値とを比較し、
前記第1の圧力Pの測定値と前記第2の圧力Pの測定値との差(P-P)が、前記フィルタ(40)の所定の目詰まり閾値に対応する圧力差閾値ΔPと実質的に等しい又はより大きい場合に、前記制御ユニット(60)が、前記機械(90)の動作を制限する、請求項1又は2に記載の捕捉システム(1)。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか一項に記載の捕捉システム(1)を備える機械(90)。
【請求項6】
機械(90)の摩擦ブレーキシステム(10)からのブレーキ粒子を捕捉するために捕捉システム(1)のフィルタ(40)の目詰まりを検知するための方法であって、前記捕捉システム(1)が、真空源(20)と、前記摩擦ブレーキシステム(10)を前記真空源(20)に接続している空圧回路(30)と、前記空圧回路(30)に配置されていると共に支持体(41)に取り付けられているフィルタ(40)と、を備えている、前記方法において、
(a)前記捕捉システム(1)の一部である制御ユニット(60)、前記機械(90)のための制御デバイス(70)、及び前記フィルタ(40)のための目詰まり検知デバイス(50)を準備するステップと、
(b)前記制御ユニット(60)が、前記目詰まり検知デバイス(50)から前記制御ユニット(60)へ送られる信号がない場合に前記目詰まり検知デバイス(50)が動作不能であると判定するステップと、
(c)前記フィルタ40が目詰まりした場合に、前記目詰まり検知デバイス(50)が動作可能であれば、前記目詰まり検知デバイス(50)が少なくとも1つの信号を前記制御ユニット60に送るステップと、
(d)前記制御ユニット(60)が、前記信号に基づいて、前記フィルタ(40)が目詰まりしたか否かを判定するステップと、
(e)前記フィルタ(40)が詰まった場合又は前記目詰まり検知デバイス(50)が動作不能である場合に、前記制御ユニット(60)が、前記機械(90)の動作を制限するために前記制御デバイス(70)を作動させるステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項7】
前記方法が、
(f)前記制御ユニット(60)が、前記フィルタ(40)の目詰まり又は前記目詰まり検知デバイス(50)の故障をユーザに通知するステップ
を備えている、請求項6に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空源と、真空源に摩擦ブレーキシステムを接続する空圧回路と、空圧回路に配置され支持体に取り付けられたフィルタとを備える機械の摩擦ブレーキシステムからのブレーキ粒子の捕捉システムに関する。
【背景技術】
【0002】
そのような摩擦ブレーキシステムは道路車両又は軌条車両に装備され得る。そのような摩擦ブレーキシステムはまた、風力タービン又は工業機械などの固定されたロータ装置に装備され得る。
【0003】
そのようなシステムには、空圧回路によって摩擦ブレーキシステムに接続された真空源(例えば電動機で駆動される吸引タービン)と、ブレーキシステムが放出した粒子を収集するためのフィルタとが設けられている。このフィルタは、真空源の上流に置かれて、粒子が真空源を通過することや大気に放出されることを防止する。しかしながら、ある特定の状況では、このフィルタが事前定義の許容閾値を超えて詰まったり、フィルタ目詰まり検知システムが、例えば意図的に又は不注意から接続を絶たれて機能しなかったりする。これらの状況では機械の動作の効率が悪くなる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、これらの不都合を改善することを目的とするものである。
【0005】
本発明の目的は、フィルタが詰まったとき、又はフィルタ目詰まり検知システムが機能しないとき、車両又は固定式装置の動作を制限することを可能にする、ブレーキ粒子の捕捉システムを提案することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
この目的は、捕捉システムが、制御ユニットと、機械用の制御デバイスと、フィルタ用の目詰まり検知デバイスであって、フィルタが詰まったとき、制御ユニットに少なくとも1つの信号を送ることができる目詰まり検知デバイスとを備えるという事実によって達成され、制御ユニットは、この信号を基にフィルタの目詰まりを判定することができ、検知デバイスが動作不能かどうかを判定することができ、制御ユニットは、フィルタが詰まったとき又は検知デバイスが動作不能であるときには制御デバイスを作動させて機械の動作を制限することができ、フィルタの目詰まりをユーザに通知することができる。
【0007】
これらの機構により、空圧回路におけるフィルタの目詰まりが検知されて判定され、この場合、機械の動作が制限される。加えて、制御ユニットは、目詰まり検知デバイスが動作不能かどうかを判定して、動作不能であれば機械の動作を制限することもできる。
【0008】
有利には、ユーザは、制御ユニットによって、フィルタの目詰まり又は検知デバイスの故障を通知される。
【0009】
有利には、検知デバイスは、空圧回路においてフィルタの上流に配置された圧力センサを備え、検知デバイスは、フィルタの上流の空圧回路における圧力Pの測定値を、制御ユニットへの信号で送ることができ、制御ユニットは、この信号を受け取ると、測定された圧力Pを、圧力センサによる圧力Pの測定中の真空源の基準動作状態Eについてフィルタの判定された目詰まり閾値に関する空圧回路における圧力である基準圧力Pと比較することができ、制御ユニットは、測定された圧力Pが実質的に基準圧力P以上であるときには、機械の動作を制限することができる。
【0010】
このように、フィルタの目詰まりが確実に判定される。
【0011】
あるいは、検知デバイスは、空圧回路においてフィルタの上流に配置された第1の圧力センサを備え、検知デバイスが、フィルタの上流の空圧回路における第1の圧力Pの測定値を、制御ユニットへの信号で送ることができ、また、空圧回路においてフィルタの下流に配置された第2の圧力センサを備え、検知デバイスが、フィルタの下流の空圧回路における第2の圧力Pの測定値を、制御ユニットへの信号で送ることができ、制御ユニットは、少なくとも1つの信号を受け取ると、第1の測定された圧力Pと第2の測定された圧力Pとを比較することができ、制御ユニットが、第1の測定された圧力Pと第2の測定された圧力Pとの間の差(P-P)が、実質的に、フィルタの判定された目詰まり閾値に対応する圧力差閾値ΔP以上であるときには、機械の動作を制限することができる。
【0012】
このように、フィルタの目詰まりが確実に判定される。
【0013】
本発明はまた、本発明による捕捉システムを備える機械に関する。
【0014】
本発明は、機械の摩擦ブレーキシステムからのブレーキ粒子の捕捉システムにおけるフィルタの目詰まりを検知するための方法にも関し、この捕捉システムは、真空源と、真空源に摩擦ブレーキシステムを接続する空圧回路と、空圧回路に配置され支持体に取り付けられたフィルタとを備える。
【0015】
本発明によれば、この方法は、
(a)捕捉システムの一部である、制御ユニット、機械用の制御デバイス、及びフィルタ用の目詰まり検知デバイスを準備するステップと、
(b)制御ユニットが、検知デバイスが動作不能かどうかを判定するステップと、
(c)検知デバイスが動作可能であれば、フィルタが詰まったとき、検知デバイスが制御ユニットに少なくとも1つの信号を送るステップと、
(d)制御ユニットが、信号を基に、フィルタが詰まったかどうかを判定するステップと、
(e)フィルタが詰まったとき又は検知デバイスが動作不能であるときには、制御ユニットが制御デバイスを作動させて機械の動作を制限するステップとを含む。
【0016】
有利には、この方法は、
(f)制御ユニットが、ユーザに、フィルタの目詰まり又は検知デバイスの故障を通知するステップをさらに含む。
【0017】
いくつかの実施形態の非限定的な例として表現された以下の詳細な説明を読み取れば、本発明がより良く理解され、その利点がより明らかになるであろう。この説明は添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明による捕捉システムの概略図である。
図2図1の捕捉システムにおける、フィルタを担持するハウジングと、このフィルタ用の目詰まり検知デバイスとの斜視図である。
図3図1の捕捉システムにおける、フィルタを担持するハウジングと、このフィルタ用の代替の目詰まり検知デバイスとの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
図1は、本発明による、摩擦ブレーキシステム10によって放出され粒子の捕捉システム1を概略的に示す。
【0020】
この摩擦ブレーキシステム10は、機械90にブレーキをかけるためのブレーキパッド11を備える。この機械は車両又は固定式装置のいずれかである。このパッド11は、バッキングプレート12と、摩擦材で作製してバッキングプレート12に固定されたライニング13とを備える。図1において、パッド11は、最前面にあるバッキングプレート12の下に見られる。
【0021】
パッド11(第1のパッド)は、機械90によって、例えば機械が車両であるときにはその車輪によって、回転駆動されるディスク9に面している。ディスク9の、第1のパッド11の反対側に、同一の第2のパッド(図1には示されていない)が配置されており、これら2つのパッドがディスク9を挟む。これら2つのパッドがディスク9に接近したとき、ディスク9に対する2つのライニング(13)の摩擦によってディスク9のブレーキが実現される。
【0022】
捕捉システム1は空圧回路30及び真空源20を備える。パッド11及び第2のパッドは、この空圧回路30によって真空源20に接続されている。例えば、真空源20は、電動機21と、この電動機21によって駆動される吸引タービン22とを備える。
【0023】
動作において、真空源20は、ライニング(13)によって粒子が放出されたとき、空圧回路30を通じて粒子を吸引することができる。通常動作中の空気及び粒子の循環の方向は、図1の矢印Fによって指示されている。従って、矢印Fは上流から下流への流れを指示する。捕捉システム1は、回路30に配置されたフィルタ40をさらに備え、回路30の内部で循環する空気がフィルタを通過することを意味する。このフィルタ40は、パイプ30に固定された支持体41に取り付けられている。例えば、支持体41は、図に示されるように、フィルタ40を収容するハウジングである。フィルタ40は、このように、ハウジング41を上流部分と下流部分とに分離する。回路30の上流部分からやってきた空気は、ハウジング41の上流端においてハウジング41に入ってフィルタ40を通過し、ハウジング41の下流端においてハウジング41を出て、回路30の下流部分に入る。
【0024】
捕捉システム1は、制御ユニット60と、機械90用の制御デバイス70と、フィルタ40用の検知デバイス50とをさらに備える。この制御ユニット60及びこの検知デバイス50は、ある特定の目詰まり閾値を超えるフィルタ40の目詰まりを判定するために使用される。制御ユニット60は、検知デバイス50から信号を受け取り(検知デバイス50はこれらの信号を生成して送るための要素を備える)、また、真空源20を制御し、真空源20から情報を受け取って、機械90用の制御デバイス70を制御することができる。制御ユニット60、制御デバイス70、検知デバイス50、及び真空源20との間のこれらの相互作用は、図1に、実線によって概略的に表現されている。これらの相互作用は電線路によって実施され得る。この制御ユニット60、制御デバイス70、及びこの検知デバイス50の動作が以下で説明される。
【0025】
検知デバイス50が動作可能である場合には、捕捉システム1の動作の際に、検知デバイス50は、少なくとも1つの信号を制御ユニット60に送る。「少なくとも1つの信号」とは、連続信号又は一定間隔の信号のいずれかを送ることを意味することに留意すべきである。当該信号は、フィルタ40の目詰まりに直接的又は間接的に関連する情報(すなわちフィルタ40の実質的な目詰まりレベル)を含んでいる。フィルタ40が、事前に規定された所定の目詰まり閾値を超えて目詰まりした場合に、フィルタ40が実質的に目詰まりしたものと見なされる。制御ユニット60は、当該信号に基づいて、フィルタ40の実質的な目詰まりレベルと所定の目詰まり閾値とを比較することによって、フィルタ40の目詰まりを判定する。
【0026】
検知デバイス50が動作不能(動作故障)になる可能性もある。これは、例えば、検知デバイス50に不具合がある場合、あるいは検知デバイス50が意図的に又は不注意から接続を絶たれた場合のことである。この状況では、検知デバイス50は、フィルタ40の目詰まりを検知することができず、制御ユニット60に信号を送ることができない。この信号が連続的なものであるときには信号の中断として、この信号が周期性のときには、送られるべきときの信号の送信の欠如によって、この信号の送信の欠如が生じる。従って、制御ユニット60によって、制御ユニット60が検知デバイス50からもはや信号を受け取らないという事実に基づいて、検知デバイス50の動作故障が判定される。
【0027】
上記2つの場合(フィルタ40の目詰まりがある特定の目詰まり閾値を超えた場合及び検知デバイス50が動作不能である場合)には、制御ユニットは、機械90の制御デバイス70を作動させて、機械90の動作を制限し、例えば摩擦ブレーキシステム10が取り付けられているディスクの回転速度を制限する。機械90が車両である場合には、この制限は車両の運転速度の制限である。機械90が固定式である場合には、この動作制限は、機械90の始動を防止するものでよい。機械90が車両である場合には、車両は静止したままである。
【0028】
一実施形態によれば、制御ユニット60は、フィルタ40の目詰まり(又は制御デバイス70の動作故障)をユーザに通知する。この情報は、例えば、車両のダッシュボードに「フィルタ目詰まり」、「フィルタ検知動作不能」などのテキストを表示することにより、又はロゴもしくは表示灯により、及び/又はシートの中にあって制御ユニット60によって制御される振動システムを介して振動でユーザに刺激を与えることといった任意の手段によって、提供され得る。
【0029】
フィルタ40用の検知デバイス50の一実施形態が、図2を参照しながら以下で説明される。図2は、支持体41、フィルタ40、及び検知デバイス50の、より詳細な図である。
【0030】
検知デバイス50は、空圧回路30においてフィルタ40の上流に配置された(第1の)圧力センサ51を備える。理想的には、圧力センサ51は、測定した圧力が、フィルタ40の位置又はフィルタ40が存在したなら想定される位置の圧力と同一になるように、フィルタ40に対して十分に近く配置される。従って、圧力センサ51は、空圧回路30におけるフィルタ40の支持体41の近く、又は図2に表現されるようにフィルタ40の支持体41に配置される。「支持体41に配置される」は、圧力センサが支持体上に配置されること、又はこの支持体がハウジングであれば支持体の中に配置されることを意味するものと理解され、どちらの場合にも、このセンサはこの支持体41の位置における圧力を測定する。
【0031】
圧力センサ51は、フィルタ40の上流における空圧回路30の(第1の)圧力Pを測定することができ、検知デバイス50は、当該測定値を制御ユニット60に信号で送ることができる。このような測定の際に、真空源20は、基準動作状態Eと呼称される動作状態で動作する。当該動作状態は、例えば吸引タービン22の回転速度Vであるパラメータによって特徴づけられている。従って、基準動作状態Eでは、吸引タービン22は回転速度Vで回転する。制御ユニット60は、基準圧力Pをメモリに格納しており、基準圧力Pは、真空源20の基準動作状態Eについてのフィルタ40の目詰まり閾値を決定するために生成された空圧回路30の圧力である。基準圧力Pは、この基準動作状態Eの関数として変化することに留意すべきである。従って、基準圧力Pは、タービン22の回転速度Vの関数として変化する。制御ユニット60は、空圧回路30の圧力Pの測定値を含む信号を受けると、当該圧力Pの測定値を基準圧力Pと比較する。基準圧力Pは、真空源20の基準動作状態Eについてのフィルタ40の目詰まり閾値を決定するための、空圧回路30の圧力に相当し、第1の圧力Pは、基準動作状態Eの際に、圧力センサ51によって測定される。結果的に、第1の圧力Pが基準圧力Pに実質的に等しい又はより大きい場合、このことは、フィルタ40が目詰まり閾値を超えて目詰まりしたことを意味する。「実質的に等しい」は、圧力が基準圧力近傍の制限された範囲内にあることを意味することに留意すべきである。例えば、このような範囲は、基準圧力値の+/-1%、又は+/-2%、又は+/-5%、又は+/-10%である。従って、第1の圧力Pが基準圧力P実質的に等しい又はより大きい状況においては、制御ユニット60が機械90の動作を制限する。
【0032】
この実施形態の、以下で説明される変形形態では、検知デバイス50は第1の圧力センサ51に加えて第2の圧力センサ52を備える。この変形形態は図3に示されている。第1の圧力センサ51は、回路30においてフィルタ40の上流に配置されている。第2の圧力センサ52は、回路30においてフィルタ40の下流に配置されている。例えば、第1のセンサ51及び第2のセンサ52は、図3に示されるように支持体41の中に配置されている。第1の圧力センサ51は、フィルタ40の上流の、空圧回路30の第1の圧力Pを測定することができ、検知デバイス50は、この測定値を、制御ユニット60への信号で送ることができる。並行して、例えば同時に、第2の圧力センサ52は、フィルタ40の下流の、空圧回路30の第2の圧力Pを測定することができ、検知デバイス50は、この測定値を、制御ユニット60への信号で送ることができる。例えば、第1の圧力Pの測定値と第2の圧力Pの測定値とが同一の信号で送られる。制御ユニット60は、この信号又はこれらの信号を受け取ると、第1の圧力Pを第2の圧力Pと比較することができる。測定された第1の圧力Pと測定された第2の圧力Pとの間の差(P-P)が実質的に圧力差閾値ΔP以上であると、これは、フィルタ40が目詰まり閾値を超えて詰まったことを意味する。制御ユニット60は、この圧力差閾値ΔPをメモリに有し、ΔPは、第1の圧力P及び第2の圧力Pの測定中の真空源20の動作状態に関して有効である。従って、(P-P)が実質的にΔP以上である状況では、制御ユニット60は機械90の動作を制限する。
【0033】
上記の実施形態とその変形形態とは組み合わされ得る。従って、制御ユニットは、(P-P)をΔPと比較することと、PをPと比較することとの両方が可能である。
【0034】
本発明は、上記で説明されたような捕捉システム1を備える機械にも関する。
【0035】
本発明は、機械90の摩擦ブレーキシステム10からのブレーキ粒子の捕捉システム1におけるフィルタ40の目詰まりを検知するための方法にも関する。上記で説明されたように、この捕捉システム1は、真空源20と、真空源20に摩擦ブレーキシステム10を接続する空圧回路30と、空圧回路30に配置され支持体41に取り付けられたフィルタ40とを備える。この方法は、
(a)捕捉システム1の一部である、制御ユニット60、機械90用の制御デバイス70、及びフィルタ40用の検知デバイス50を準備するステップと、
(b)制御ユニット60が、検知デバイス50が動作不能かどうかを判定するステップと、
(c)検知デバイス50が動作可能であれば、フィルタ40が詰まったとき、検知デバイス50が制御ユニット60に少なくとも1つの信号を送るステップと、
(d)制御ユニット60が、信号を基に、フィルタ40が詰まったかどうかを判定するステップと、
(e)フィルタ40が詰まったとき又は検知デバイス50が動作不能であるときには、制御ユニット60が制御デバイス70を作動させて機械90の動作を制限するステップとを含む。
【0036】
加えて、この方法は、ステップ(e)の直前又は直後に、
(f)制御ユニット60が、ユーザに、フィルタ40の目詰まり又は検知デバイス50の故障を通知するステップを含む。
【符号の説明】
【0037】
1 ブレーキ粒子の捕捉システム
9 ディスク
10 摩擦ブレーキシステム
11 ブレーキパッド
12 バッキングプレート
13 ライニング
20 真空源
21 電動機
22 吸引タービン
30 空圧回路、パイプ
40 フィルタ
41 支持体、ハウジング
50 検知デバイス
51 第1の圧力センサ
52 第2の圧力センサ
60 制御ユニット
70 制御デバイス
90 機械
図1
図2
図3