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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ロールバー
(51)【国際特許分類】
   B60R 21/13 20060101AFI20240510BHJP
   B60R 15/00 20060101ALI20240510BHJP
   B65D 88/12 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B60R21/13 A
B60R15/00
B65D88/12 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2024035897
(22)【出願日】2024-03-08
【審査請求日】2024-03-08
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】524090817
【氏名又は名称】株式会社SeaDog
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】岩邊 誠
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】欧州特許出願公開第3699036(EP,A1)
【文献】中国実用新案第205273326(CN,U)
【文献】中国特許出願公開第107651022(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R21/00-21/13
B60R15/00
B65D88/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に貯水可能な貯水空間が形成された管状部材により構成される、車体または船体に載置可能な枠体であるバー本体と、前記貯水空間に連通して設けられた注排水機構および通気機構とを備えるロールバー。
【請求項2】
前記バー本体は、前記貯水空間を開閉可能に仕切る仕切り機構を有する請求項1に記載のロールバー。
【請求項3】
前記貯水空間内に貯められた水を加熱する加熱機構を有する請求項1に記載のロールバー。
【請求項4】
前記貯水空間内の前記水の水位を目視確認可能な水位確認機構を有する請求項1に記載のロールバー。
【請求項5】
前記バー本体は、形状が一定で前記車体または前記船体に載置される定常部と、前記定常部に対して着脱可能な着脱部とを有し、前記定常部と前記着脱部とにより前記枠体が構成される請求項1に記載のロールバー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両または船舶に設置される、管状部材を所定の形状に組み合わせて形成されたロールバーに関する。なお、一般的に、管状部材を組み合わせた場合には「ロールケージ」と称される場合があるが、本書においては「ロールバー」と称する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば高剛性の鋼製等の管状部材を所定の形状に組み合わせて形成されるロールバーを車両に設置することが行われている。
【0003】
このようなロールバーを車両内部に設置することにより、車体の剛性を補強することができ、車両内にいる乗員の安全性を向上することが可能になる。また、ロールバーをトラックの荷台に載置することにより、当該荷台上の人や物を覆うルーフテントや幌を形成することが可能になる(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2022-111510号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、新型コロナウイルス等の感染症の広がりもあり、比較的安全な屋外でキャンプやバーベキューを行う、アウトドアレジャーの人気が高まっている。こうしたアウトドアレジャーにおいては、移動手段や食材等の物資の運搬手段としてはもちろん、居住空間としても車両が用いられているが、これらの用途で車両を使用する際には、レジャーに必要な物資の積載量をいかに確保するかということが重要になる。
【0006】
しかし、車両に従来のロールバーを設置する場合には、ロールバーの設置に要するスペースの分だけ積載可能な物資の量が減少してしまうため、積載可能な物資の量を多く確保しつつ設置可能なロールバーがあれば好ましい。また、そのようなロールバーは、船舶においても需要がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述した問題点に鑑みてなされたものであり、車両または船舶に積載可能な物資の量が減少してしまうことを防止しつつ、車両または船舶に設置可能なロールバーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するため、本発明の第1の態様に係るロールバーは、内部に貯水可能な貯水空間が形成された管状部材により構成される、車体または船体に載置可能な枠体であるバー本体と、前記貯水空間に連通して設けられた注排水機構および通気機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
上記ロールバーにおいて、前記バー本体は、前記貯水空間を開閉可能に仕切る仕切り機構を有することが好ましい。
【0010】
上記ロールバーにおいて、前記貯水空間内に貯められた水を加熱する加熱機構を有することが好ましい。
【0011】
上記ロールバーにおいて、前記貯水空間内に貯められた前記水の水位を目視確認可能な水位確認機構を有することが好ましい。
【0012】
上記ロールバーにおいて、前記バー本体は、形状が一定で前記車体または前記船体に載置される定常部と、前記定常部に対して着脱可能な着脱部とを有し、前記定常部と前記着脱部とにより前記枠体が構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0013】
上述した構成からなる本発明によれば、車両または船舶にロールバーを設置した場合でも、ロールバーの内部に水を貯めることでアウトドアレジャーに必要な物資のうち水を積載するための水タンクを省略することができる。これにより、ロールバーの設置により車両または船舶に積載可能な物資の量が減少してしまうことを防止することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の実施形態に係るロールバーの使用状態を示す模式図であり、(A)がトラックの荷台(車体)に設置された場合を示す模式図、(B)が船舶のデッキ(船体)に設置した場合を示す模式図である。
図2】本発明の実施形態に係るロールバーを示す斜視図である。
図3図2のロールバーから着脱部が取り外される様子を示す斜視図である。
図4図2のロールバーの領域Gの、管状部材の伸張方向に平行な平面による断面図である。
図5図4のロールバーにおいて、仕切り機構を開いた状態を示す断面図である。
図6図2のロールバーの領域Hの、管状部材の伸張方向に平行な平面による断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るロールバーについて説明する。
【0016】
図1(A)は、本発明の実施形態に係るロールバー1がトラックTの荷台Cに設置され使用される様子を示す模式図である。また、図1(B)は、本発明の実施形態に係るロールバー1が船舶MのデッキDに設置され使用される様子を示す模式図である。図1に示すように、本実施形態に係るロールバー1は、車両としてのトラックTの荷台C上または船舶MのデッキD上に載置されて用いられるものであり、荷台C上またデッキD上に載置されたロールバー1に覆い(不図示)を被せることにより、ルーフテントや幌を形成することができる。
【0017】
なお、図1(A)に示すようにロールバー1をトラックTの荷台C上に載置する場合に限らず、ロールバー1をスポーツ・ユーティリティ・ビークル(SUV)やワンボックスカーの車内に設置する場合等においても、ロールバー1を任意の固定手段(不図示)を用いて車両に着脱可能に固定することが好ましい。同様に、図1(B)に示すようにロールバー1を船舶MのデッキD上に載置する場合に限らず、ロールバー1をキャビン等の船内に設置する場合等においても、ロールバー1を任意の固定手段(不図示)を用いて船舶に着脱可能に固定することが好ましい。このような固定手段としては、例えばボルト締結、シャックルによる固定、鋼製ワイヤを用いた固定等、種々の固定手段を用いることができる。
【0018】
また、以下の実施形態の説明において、荷台C、デッキDおよびそれらに設置されたロールバー1について、車両または船舶の前進方向を前方、その逆側の方向を後方とすると共に、運転手が運転席に座った状態において、右側の方向を右方、左側の方向を左方、運転手の頭側の方向を上方、足側の方向を下方とする。前後、上下、左右のそれぞれの方向は、便宜のため図1図6において矢印を用いて示されている。
【0019】
図2は、本発明の実施形態に係るロールバー1を示す斜視図である。ロールバー1は、中空の管状部材を用いて形成されている枠体であり、ロールバー1が載置される車両または船舶の種類や形状、載置方法(荷台もしくはデッキに載置する、または車内空間もしくは船内空間に載置する等)、ロールバー1の使用目的(アウトドアレジャー時に人の居住空間にもなるルーフテントとして使用する、または荷物運搬用の幌として使用する)等に応じて種々の形状を採用することができる。なお、ロールバー1は、剛性向上の観点から、鋼管製であることが望ましい。
【0020】
ロールバー1は、形状が一定で荷台C上またはデッキD上に載置される定常部20および定常部20に対して着脱可能な着脱部24とから構成される枠体であるバー本体2と、ロールバー1の上端部に設けられた通気機構4と、ロールバー1内の貯水空間S(図3図5参照)を開閉可能に仕切る仕切り機構5と、ロールバー1内の貯水空間S内に対する水の注排水を行う注排水機構3と、貯水空間S内の水を加熱する加熱機構6とを備えて構成されている。
【0021】
定常部20は、車両または船舶の左側に位置する左側枠体21と、車両または船舶の右側に位置する右側枠体22と、左側枠体21と右側枠体22とを荷台前方の上端部で連結する連結枠体23とを備えている。左側枠体21、右側枠体22および連結枠体23の内部にはそれぞれ貯水可能な貯水空間S(図3図5参照)が形成され、それぞれの貯水空間Sは、仕切り機構5により開閉可能に連通している。好ましくは、左側枠体21と右側枠体22のそれぞれに注排水機構3と加熱機構6を備える。
【0022】
本発明に係るロールバーにあっては、左側枠体21と右側枠体22のそれぞれについて、貯水空間S内の貯水量が増加し、水位が連結枠体23まで到達した場合には、連結枠体23内の貯水空間Sを通じて左側枠体21と右側枠体22の内部の水が連通して、互いの水量が均一になる。しかし、左側枠体21と右側枠体22の水位が少なく、連結枠体23まで到達しない場合には、左側枠体21と右側枠体22の貯水量が不均一になり、車両または船舶の重量バランスが悪くなることがある。そのため、好ましくは、水位確認機構213を左側枠体21と右側枠体22の両方に設けることにより、互いの貯水量を目視確認しながら均一にすることが可能になる。また、左側枠体21側の注排水機構3と、右側枠体22側の注排水機構3とを継手等を介してホース等の管状部材で繋げることにより、左側枠体21と右側枠体22の貯水量を一致させることもできる。
【0023】
また、水位確認機構213として、図2等に示すように、例えば管状部材211に設けられた透明な樹脂等が嵌め込まれた上下に長い窓部や、貯水空間Sに連通して形成された管状部材211に沿う透明な筒状部材である。このような水位確認機構213が設けられていることにより、ロールバー1の貯水空間Sへの貯水量を目視確認することができ、貯水量を適切なものに保つことができる。同様な水位確認機構213を右側枠体22にも設けることができるのは勿論である。また、後述するように、通気機構4と注排水機構3とを透明または半透明のホースで繋ぐことにより、当該ホースを簡易的な水位確認機構とすることができる。
【0024】
図3は、図2のロールバー1から着脱部が取り外される様子を示す斜視図である。着脱部24は、定常部20の後端上部に着脱可能に取り付けられる管状部材であり、本実施形態においては定常部20を構成する管状部材と同じ種類の管状部材を用いて形成されている。着脱部24の定常部20への着脱可能な取り付けは、任意の手段を用いて行うことができる。
【0025】
例えば、図2および図3に示すように、着脱部24の取り付け箇所において、左側枠体21と右側枠体22にピン孔28を設けると共に、着脱部24の長手方向両端部にピン孔241を設け、これらのピン孔28、241にピン27を挿入することにより着脱部24の着脱可能な固定を行ってもよい。着脱部24が着脱可能であることにより、例えば荷台C上にバイク等の大きな荷物を積載する場合に、当該荷物をロールバー1内の積載空間L内に容易に積み込むことが可能になる。デッキD上に大きな荷物を積載する場合も同様である。
【0026】
なお、本実施例においては、左側枠体21と右側枠体22の貯水空間Sは、着脱部24の固定箇所の近傍において閉塞部材25により閉塞され、当該閉塞箇所から先(着脱部24側)に貯水されないようになっている。閉塞部材25は、例えばロールバー1を構成する管状部材の内部空間(貯水空間S)に溶接等で固定されてこれを閉塞する板状部材等である。このように閉塞部材25を設ける構成により、貯水されている水が車体または船体の揺れなどで動いたり波打ったりするのを適切に防ぐことができる。ただし、本発明においては、閉塞部材25の替わりに弁を設けて、着脱部24側にも貯水可能とすることも実施に応じ任意である。
【0027】
通気機構4は、開閉可能な通気口であり、図2および図3に示すように、ロールバー1を構成する連結枠体23の上端部に設けられている。開閉可能な通気機構4は、図2および図3に示すように、連結枠体23内に埋設した単管で構成し、通気口を下向きに開口するように設け、該開口を蓋や通気弁等の任意の手段で開閉可能とするのが望ましい。当該構成により、連結枠体23の上面に突起や開口を設ける必要がないので、該連結枠体23、左側枠体21および右側枠体22にポリカーボネート製などのパネルを載置して雨風よけとすることも可能となると共に、当該通気口と注排水機構3とを透明または半透明のホースで繋いで簡易的な水位確認機構を構成することもできる。
【0028】
また、通気機構4としては、連結枠体23に形成された通気孔および当該通気孔に設けられた通気弁等、任意のものを用いて実現することもできる。
【0029】
いずれにしても、ロールバー1の上端部である連結枠体23の上端部に通気機構4を設けることにより、ロールバー1内の貯水空間Sに貯水を行う際、または貯水空間Sから排水を行う際に、貯水空間Sに対する吸気や排気をスムーズに行うことができるため、水の貯水と排水をスムーズに行うことが可能になる。また、貯水空間Sの最上部分に通気機構4を設けることにより、当該通気機構4から水が漏出しにくくなるという利点がある。
【0030】
図4は、図2のロールバー1の領域Gの、管状部材211の伸張方向に平行な平面による断面図である。図4に示すように、ロールバー1の左側枠体21(および同様に右側枠体22)には、貯水空間Sを開閉可能に仕切る仕切り機構5が、前後の下端部分に1か所ずつ(5A、5B)、そして前方の上方に1か所(5C)設けられている。
【0031】
仕切り機構5(5A、5B、5C)は、スピンドルバルブ51と、スピンドルバルブ51が挿入される挿入筒部52と、管状部材211の内部に形成された節部53を備えて構成されている。
【0032】
スピンドルバルブ51は、円柱状の本体部511と、本体部511の一端側(図4および図5の紙面上方に向く側)の周囲に形成されたねじ山512と、本体部511の他端側(図4および図5の紙面下方に向く側)に形成された球状先端部514と、を備えて構成されている。
【0033】
円柱状の本体部511の外周面には周方向に沿い円周溝部516が形成されている。円周溝部516は上下に離間して2つ形成されていて、それぞれの円周溝部にシーリング部材としてのОリング515が嵌め込まれている。
【0034】
また、本体部511の上端部には、マイナスドライバーを嵌め込むためのマイナス形状の工具穴513が形成されている。なお、工具穴513の形状はマイナス形状に限定されず、プラスドライバー用のプラス形状であってもよい。
【0035】
円周溝部516よりも上方であって、かつ工具穴513の下方に位置する本体部511の周囲には、ねじ山512が形成されている。ねじ山512は、後述する挿入筒部52のねじ溝521と螺合可能になっている。
【0036】
球状先端部514は、本体部511の下端側に本体部511に連続して設けられた球状構造体であり、後述するように節部53の球状凹部531と密接して連通孔532を密閉可能になっている。
【0037】
挿入筒部52は、管状部材211の周壁から斜め下方に形成された筒状の構造体であり、上端側がスピンドルバルブ51を回転操作するためのマイナスドライバー等の工具を挿入可能な解放端部Oになっている。
【0038】
挿入筒部52の内周面には、スピンドルバルブ51のねじ山512と螺合可能なねじ溝521が形成されていて、スピンドルバルブ51をマイナスドライバー等の工具で回転させることにより、スピンドルバルブ51を挿入筒部52内で挿入方向および抜去方向に移動可能になっている。
【0039】
挿入筒部52の下端部は、一部が節部53に溶接等により固定されていると共に、他の部分は節部53と離間していることにより、水が通過可能な間隙522が形成されている。
【0040】
節部53は、管状部材211の伸張方向に対して垂直に設けられ、管状部材211内部の貯水空間Sを仕切る節になっている。節部53は、例えば略円板状の部材を、管状部材211内に溶接または接着して固定することにより形成されている。
【0041】
節部53には貯水空間S内の水が通過可能な連通孔532が形成されている。また、節部53の上面側であって連通孔532の周囲には、スピンドルバルブ51の球状先端部514と相補的な形状でありこれと密着可能な球状凹部531が形成されている。
【0042】
上述した仕切り機構5を用いることで、貯水空間Sを開閉可能に仕切ることができる。仕切り機構5を閉じる場合には、図4に示すようにマイナスドライバー等の工具によりスピンドルバルブ51を右回転させ、スピンドルバルブ51を挿入筒部52内で螺進させることにより、球状先端部514を節部53の球状凹部531と密着させて、連通孔532を閉塞する。これにより仕切り機構5は閉じた状態になり、節部53の上下の貯水空間Sはそれぞれ互いに内部の水が行き来できない、隔離された状態になる。当該構成により、貯水されている水が車体または船体の揺れなどで動いたり波打ったりするのを適切に防ぐことができる
【0043】
図5は、図4のロールバー1において、仕切り機構5を開いた状態を示す断面図である。仕切り機構5を開く場合には、図5に示すようにマイナスドライバー等の工具によりスピンドルバルブ51を左回転させ、スピンドルバルブ51を挿入筒部52内で螺退させ、球状先端部514と球状凹部531との間の密着を解除し互いに離間させることで、連通孔532を解放する。そして、解放された連通孔532と、挿入筒部52の下端側に形成されている間隙522とを通じて節部53の上下にある貯水空間Sが連通した状態になることで、双方の貯水空間S内の水が互いに移動可能な状態になる。
【0044】
なお、仕切り機構5において、図5の状態から更にスピンドルバルブ51を螺退させ、スピンドルバルブ51を挿入筒部52から完全に抜去することにより、貯水空間Sは挿入筒部52を通じて外部に連通した状態になる。このような状態にすることにより、挿入筒部52を注水口および排水口として使用することが可能になる。抜去されたスピンドルバルブ51は、再度工具を用いて挿入筒部52に螺合可能であることは勿論である。
【0045】
図6は、図2のロールバー1の領域Hの、管状部材211の長手方向に沿って垂直に断面した断面図である。ロールバー1の左側枠体21および右側枠体22の前方下端部分には、ロールバー1内の貯水空間S内に対する水の注排水を行う注排水機構3と、貯水空間S内の水を加熱する加熱機構6とが設けられている。
【0046】
注排水機構3は、管状部材211の内部の貯水空間Sに連通する管状の流路であり、図示しない開閉可能なバルブを介して貯水空間S内への注水と、貯水空間Sからの排水が可能になっている。
【0047】
加熱機構6は、管状部材211の内部と車体側または船体側に設けられたヒーターやエンジン等の熱源(不図示)との間を廻る環状流路60と、環状流路60内を循環し熱源により加熱される熱源流体(不図示)とを備えて構成されている。
【0048】
環状流路60は、車両側または船体側の熱源に熱源流体を流出するための流出口61と、熱源により加熱された熱源流体を環状流路60内に戻すための流入口62と、流出口61と流入口62との間を接続するループ部63とを備えて構成されている。熱源により加熱された熱源流体がこのループ部63内を循環することにより、ループ部63の周囲にある貯水空間S内の水に熱が伝導し、水を加熱することができる。
【0049】
熱源流体は、蓄熱性と取扱性に優れた液体であれば種々のものを採用することができる。蓄熱性や取扱性に優れ安全な水を用いる他、種々のオイル類や、水とパラフィン等のエマルジョン類等を用いてもよい。
【0050】
上述した実施形態に係るロールバーによると、例えばアウトドアレジャー等の際に、物資の置き場に加えて人の居住空間になるルーフテントや幌を形成するべく車両または船舶にロールバーを設置した場合でも、ロールバー内に貯水可能であることから、載置する物資のうち、水を積載するための水タンクを省略することができる。これにより、車内空間または船上・船内空間を有効活用することができる。
【0051】
また、上述した実施形態においては左側枠体21および右側枠体22の両方に注排水機構3および加熱機構6が設けられているが、この左側枠体21および右側枠体22の貯水空間Sを非連通な状態とし、かつ、左側枠体21および右側枠体22の一方の加熱機構6のみを稼働させることにより、温水と冷水の両方を貯水することが可能になる。
【0052】
そして、例えば、左側枠体21内に温水が貯められ、右側枠体22に冷水が貯められている場合には、左側枠体21に設けられた注排水機構3から温水が排出され、右側枠体22に設けられた注排水機構3から冷水を排出することができ、より便利である。
【0053】
なお、左側枠体21と右側枠体22のうちの一方にのみ加熱機構6を設けることによっても、温水と冷水の両方の貯水を実現することができる。
【0054】
また、左側枠体21および右側枠体22の貯水空間Sを非連通な状態とすることは、例えば全ての仕切り機構5を開状態とした上で、連結枠体23より下方に水面が来るように左側枠体21と右側枠体22内の貯水量を調整することにより実現することができる。
【0055】
あるいは、左側枠体21および右側枠体22の前方上方にある仕切り機構5Cを閉状態とすることにより、左側枠体21および右側枠体22内の水位が仕切り機構5Cより上に到達しなくなるため、これによっても左側枠体21および右側枠体22の貯水空間Sを非連通な状態とすることが可能である。
【0056】
もちろん、使用者のニーズに合わせて、左側枠体21と右側枠体22の双方の水を加熱して温水としたり、あるいは加熱せず冷水のままにしたりすることも可能である。
【0057】
また、上述した実施形態においては左側枠体21および右側枠体22の前方下方の注排水機構3によりそれぞれの貯水空間Sに対する注排水が可能であると共に、仕切り機構5のスピンドルバルブ51を挿入筒部52から完全に抜去することによっても挿入筒部52を注排水口として利用可能である。しかし、本発明においてはこれに限らず、注排水機構3を任意の箇所において、任意の向きに、任意の個数設けてもよい。例えば、上述した実施形態においては注排水機構3は左側枠体21および右側枠体22の前方下方にのみ、前方に向かって設けられているが、本発明においてはこれに限らず、後方下方にも、あるいは後方下方にのみ、後方に向けて設けてもよい。これにより、より使用者のニーズに合わせた注排水を行うことが可能になる。
【0058】
また、仕切り機構5も、本発明においては任意の箇所に、任意の個数設けることができる。これにより、ロールバー1内の貯水の態様(貯水位置や貯水量、特に温水の量と冷水の量)を、使用者のニーズに合わせて適切に調節することが可能になる。さらに、仕切り機構5は、注水完了後にこれを閉状態とすることにより、ロールバー1内で水が移動して車両や船舶の重量バランスが乱れることや、水が漏出することを効果的に防止することが可能になる。
【0059】
なお、本発明は上述した実施形態に係るロールバー1に限定されず、上述した変形以外にも種々の変形を採用することができる。
【0060】
例えば、ロールバー1の枠体形状は図2図3の形態に限定されず、任意の形態にすることができる。また、ロールバー1の設置箇所も、トラックTの荷台Cや船舶のデッキDに限定されない。例えば、本発明に係るロールバー1は、アウトドアレジャーやオフロード走行に使用されるワンボックスカーやSUVにおいて、幌やルーフテントを設置する目的ではなく、車体剛性を向上させる目的のために車内に設置してもよい。また、船舶のキャビン等の船内空間に設置して剛性向上と貯水の両立を図ってもよい。
【0061】
また、ロールバー1の着脱部24も、上述した実施形態においては後方上端部に設けられていて、ロールバー1をトラックTの荷台Cまたは船舶MのデッキDに載置する際に荷物を積載しやすくすることができ便利であるが、本発明においては着脱部24の設置個所や設置個数は任意であり、このような態様に限定されない。
【0062】
例えばオフロード走行を行うワンボックスカー等の場合には、車体剛性向上を目的としてワンボックスカーの車内にロールバー1を設置し、車体左右のスライドドアに面する位置に着脱部24を設けることにより、車体剛性の向上と荷物の積載のし易さの両方を実現しつつ、ロールバー1内に貯水をすることができる。
【符号の説明】
【0063】
1:ロールバー
2:バー本体
3:注排水機構
4:通気機構
5、5A、5B、5C:仕切り機構
6:加熱機構
20:定常部
21:左側枠体
22:右側枠体
23:連結枠体
24:着脱部
27:ピン
28:ピン孔
51:スピンドルバルブ
52:挿入筒部
53:節部
60:環状流路
61:流出口
62:流入口
63:ループ部
211:管状部材
213:水位確認機構
241:ピン孔
511:本体部
512:ねじ山
513:工具穴
514:球状先端部
515:Оリング
516:円周溝部
521:ねじ溝
522:間隙
531:球状凹部
532:連通孔
C:荷台
D:デッキ
M:船舶
О:解放端部
S:貯水空間
T:トラック
【要約】
【課題】 車両または船舶に積載可能な物資の量が減少してしまうことを防止しつつ、車両または船舶に設置可能なロールバーを提供する。
【解決手段】 本発明に係るロールバー1は、内部に貯水可能な貯水空間Sが形成された管状部材211により構成される、車体または船体に載置可能な枠体であるバー本体2と、貯水空間Sに連通して設けられた注排水機構3および通気機構4とを備えることにより、車両または船舶にロールバーを設置した場合でも、ロールバーの内部に水を貯めることでアウトドアレジャーに必要な物資のうち水を積載するための水タンクを省略することができる。
【選択図】 図2
図1
図2
図3
図4
図5
図6