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特許7486258口腔内崩壊錠用顆粒、その製造方法および口腔内崩壊錠
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】口腔内崩壊錠用顆粒、その製造方法および口腔内崩壊錠
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/26 20060101AFI20240510BHJP
   A61K 47/32 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 47/04 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 47/02 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 9/16 20060101ALI20240510BHJP
   A61K 9/20 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A61K47/26
A61K47/32
A61K47/04
A61K47/02
A61K9/16
A61K9/20
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2019236974
(22)【出願日】2019-12-26
(65)【公開番号】P2021104973
(43)【公開日】2021-07-26
【審査請求日】2022-12-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000226415
【氏名又は名称】物産フードサイエンス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100110766
【弁理士】
【氏名又は名称】佐川 慎悟
(74)【代理人】
【識別番号】100165515
【弁理士】
【氏名又は名称】太田 清子
(74)【代理人】
【識別番号】100169340
【弁理士】
【氏名又は名称】川野 陽輔
(74)【代理人】
【識別番号】100195682
【弁理士】
【氏名又は名称】江部 陽子
(74)【代理人】
【識別番号】100206623
【弁理士】
【氏名又は名称】大窪 智行
(72)【発明者】
【氏名】山中 邦裕
【審査官】田澤 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-225624(JP,A)
【文献】特開2008-37853(JP,A)
【文献】国際公開第2019/131411(WO,A1)
【文献】特開平11-263723(JP,A)
【文献】特開2013-67611(JP,A)
【文献】特表2013-530163(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 47/00-47/69
9/00-9/72
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エリスリトールと、クロスポビドンと、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択される流動化剤とを含む基質を含有する口腔内崩壊錠用顆粒であって、前記エリスリトールの含有割合が70質量%以上99質量%以下であり、前記基質がイソマルトで被覆されていることを特徴とする、口腔内崩壊錠用顆粒。
【請求項2】
流動化剤が軽質無水ケイ酸であり、軽質無水ケイ酸を0質量%超1質量%未満の割合で含有する、請求項1に記載の口腔内崩壊錠用顆粒。
【請求項3】
クロスポビドンを1質量%超10質量%未満の割合で含有する、請求項1または請求項2に記載の口腔内崩壊錠用顆粒。
【請求項4】
イソマルトを1質量%以上10質量%以下の割合で含有する、請求項1~のいずれかに記載の口腔内崩壊錠用顆粒。
【請求項5】
エリスリトールの含有割合が70質量%以上99質量%以下である口腔内崩壊錠用顆粒の製造方法であって、エリスリトールと、クロスポビドンと、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択される流動化剤とを含む基質を流動または攪拌しながら、当該基質に、イソマルトを含有する噴霧液を噴霧した後に乾燥させる造粒工程を有する、前記製造方法。
【請求項6】
請求項1~のいずれかに記載の口腔内崩壊錠用顆粒と薬効成分または食品材料とを含むことを特徴とする、口腔内崩壊錠。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、口腔内崩壊錠の製造に用いられる顆粒および当該顆粒の製造方法、ならびに当該顆粒を用いた口腔内崩壊錠に関する。
【背景技術】
【0002】
口腔内崩壊錠とは、一般に、水無しで、あるいは少量の水とともに摂取した際に、口腔内で速やかに崩壊する形態の錠剤をいう。口腔内崩壊錠は、嚥下が困難な患者や高齢者、小児においても服用可能なこと、係る対象者に限らずとも、水無しで手軽に服用できることなどから、近年、需要が高まっている錠剤形態である。
【0003】
一方、エリスリトールは、あっさりとして後引きがなく、砂糖に似た好ましい甘味質を持つ糖アルコールである。エリスリトールはまた、カロリーがゼロであること、非う蝕性であること、緩下作用が比較的小さいこと、血糖値に影響しないこと、苦みや青臭みなどの好ましくない味を抑制する矯味矯臭効果を有すること等の有用な性質を有しているため、薬物やサプリメント等の錠剤を製造する際の賦形剤として、利用が期待されている。そこで、エリスリトールを用いた口腔内崩壊錠が研究開発されており、例えば、特許文献1には、エリスリトール、崩壊剤およびイソマルトを含む口腔内崩壊錠が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特許第5902677号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、一般に、エリスリトールは圧縮成形性が非常に低いため、これを多く含有し、かつ、十分な錠剤硬度と、短い口腔内崩壊時間とを兼ね備える口腔内崩壊錠を製造することは困難であった。この点、特許文献1に記載の口腔内崩壊錠は、崩壊時間が一定程度短いことが記載されているものの、製品として十分な錠剤硬度を備えるかどうかは不明である。
【0006】
すなわち、係る特許文献を鑑みても、エリスリトールを多く含有し、十分な錠剤硬度と、短い口腔内崩壊時間とを兼ね備える口腔内崩壊錠は、未だ提供されている状況ではない。本発明は、このような課題を解決するためになされたものであって、エリスリトールを多く含有し、十分な錠剤硬度と、短い口腔内崩壊時間とを兼ね備える口腔内崩壊錠、その製造に好適な顆粒および当該顆粒の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意研究の結果、エリスリトールを主成分として、所定の結合剤、崩壊剤および流動化剤を配合した顆粒を打錠することにより、十分な錠剤硬度と、短い口腔内崩壊時間とを兼ね備える口腔内崩壊錠を製造できることを見いだした。そこで、この知見に基づいて、下記の各発明を完成した。
【0008】
(1)本発明に係る口腔内崩壊錠用顆粒は、エリスリトールと、イソマルトと、クロスポビドンと、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択される流動化剤とを含有する。
【0009】
(2)本発明に係る口腔内崩壊錠用顆粒は、エリスリトールを70質量%以上99質量%以下の割合で含有するものであってもよい。
【0010】
(3)本発明に係る口腔内崩壊錠用顆粒において、流動化剤は、軽質無水ケイ酸であってもよい。また、この場合において、口腔内崩壊錠用顆粒は、軽質無水ケイ酸を0質量%超1質量%未満の割合で含有するものであってもよい。
【0011】
(4)本発明に係る口腔内崩壊錠用顆粒は、クロスポビドンを1質量%超10質量%未満の割合で含有するものであってもよい。
【0012】
(5)本発明に係る口腔内崩壊錠用顆粒は、イソマルトを1質量%以上10質量%以下の割合で含有するものであってもよい。
【0013】
(6)本発明に係る口腔内崩壊錠用顆粒の製造方法は、エリスリトールと、クロスポビドンと、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択される流動化剤とを含む基質を流動または攪拌しながら、当該基質に、イソマルトを含有する噴霧液を噴霧した後に乾燥させる造粒工程を有する。
【0014】
(7)本発明に係る口腔内崩壊錠は、本発明に係る口腔内崩壊錠用顆粒と薬効成分または食品材料とを含むことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、製品として十分な錠剤硬度と短い崩壊時間とを兼ね備えた口腔内崩壊錠を製造することができる。また、本発明によれば、エリスリトールの有用な性質を生かした口腔内崩壊錠を製造することができる。また、本発明によれば、上述の口腔内崩壊錠を、特別な装置や製造工程を要することなく、一般的な錠剤製造方法である乾式直接打錠法(直打法)により製造することができる。また、本発明によれば、上述の口腔内崩壊錠の製造に好適な顆粒を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】A図は、各種の結合剤(イソマルト、HPC、PVA、PVA-PEGグラフトコポリマー)を用いて製造した口腔内崩壊錠の錠剤硬度を示す折れ線グラフである。B図は、同試料の口腔内崩壊時間を示す折れ線グラフである。
図2】イソマルトの含有量を変化させて製造した口腔内崩壊錠の錠剤硬度を示す折れ線グラフである。
図3】A図は、クロスポビドンの含有量を変化させて製造した口腔内崩壊錠の錠剤硬度を示す棒グラフである。B図は、同試料の口腔内崩壊時間を示す棒グラフである。
図4】A図は、クロスポビドンの含有量を変化させて製造した口腔内崩壊錠を多湿条件で保存した場合の、保存前後の錠剤硬度を示す棒グラフである。B図は、同試料の保存前後の錠剤厚みを示す棒グラフである。
図5】造粒装置の容器下部を経時的に撮影した写真である。上段(No.21)は、流動化剤を用いずに造粒している場合の写真であり、下段(No.22)は、流動化剤として軽質無水ケイ酸を用いて造粒している場合の写真である。
図6】A図は、各種の流動化剤(軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム)を用いて製造した口腔内崩壊錠の錠剤硬度を示す棒グラフである。B図は、同試料の口腔内崩壊時間を示す棒グラフである。
図7】A図は、軽質無水ケイ酸の含有量を変化させて製造した口腔内崩壊錠の錠剤硬度を示す棒グラフである。B図は、同試料の口腔内崩壊時間を示す棒グラフである。
図8】A図は、含水二酸化ケイ素の含有量を変化させて製造した口腔内崩壊錠の錠剤硬度を示す棒グラフである。B図は、同試料の口腔内崩壊時間を示す棒グラフである。
図9】A図は、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの含有量を変化させて製造した口腔内崩壊錠の錠剤硬度を示す棒グラフである。B図は、同試料の口腔内崩壊時間を示す棒グラフである。
図10】実施例7で製造した顆粒(No.34)および市販の口腔内崩壊錠用プレミックス(No.35、No.36)を用いて製造した口腔内崩壊錠について、錠剤硬度と口腔内崩壊時間との関係を示す折れ線グラフである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明について詳細に説明する。本発明において「口腔内崩壊錠用顆粒」とは、口腔内崩壊錠の製造に用いられる顆粒をいう。その粒子径は特に限定されないが、直打法による錠剤製造に使用する観点からは、平均粒子径が100μm以上300μm未満であることが好ましい。
【0018】
本発明に係る口腔内崩壊錠用顆粒(以下、「本顆粒」という場合がある。)は、エリスリトールと、イソマルトと、クロスポビドンと、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択される流動化剤とを含有する。
【0019】
エリスリトールは、本顆粒において最も多く含有される成分であってよい。その含有割合としては、例えば、70質量%以上、71質量%以上、72質量%以上、73質量%以上、74質量%以上、75質量%以上、76質量%以上、77質量%以上、78質量%以上、79質量%以上、80質量%以上、81質量%以上、82質量%以上、83質量%以上、84質量%以上、85質量%以上、86質量%以上、あるいは、99質量%以下、98質量%以下、97質量%以下、96質量%以下、95質量%以下を例示することができる。
【0020】
エリスリトールは、化学名が1,2,3,4-Butaneterolである糖アルコールであり、エリトリトールとも呼ばれる。本発明において、エリスリトールは主として賦形剤の役割を有するが、その他に、砂糖に似た好ましい甘味質を持つことや、カロリーがゼロであること、非う蝕性であること、緩下作用が比較的小さいこと、血糖値に影響しないこと、苦みや青臭みなどの好ましくない味を抑制する矯味矯臭効果を有すること等の有用な性質を期待することもできる。
【0021】
エリスリトールは市販品を用いてもよく、当業者に公知の方法に従って製造して用いてもよい。エリスリトールの公知の製造方法としては、グルコースなどを炭素源としてエリスリトール生産菌を培養して生産させ、これを精製して得る方法を挙げることができる。ここで、エリスリトール生産菌としては、例えば、トリゴノプシス属またはカンジダ属に属する微生物(特公昭47-41549号公報)、トルロプシス属、ハンゼヌラ属、ピヒア属またはデバリオミセス属に属する微生物(特公昭51-21072号公報)、モニリエラ属に属する微生物(特開昭60-110295号公報、特開平10-215887)、オーレオバシデュウム属に属する微生物(特公昭63-9831号公報)、イエロビア属に属する微生物(特開平10-215887号公報)などを挙げることができ、培養条件は、各菌に適した通常の条件で行うことができる。また、エリスリトールの精製は、菌体分離、クロマトグラフィーによるエリスリトールの分取、脱塩、脱色、晶析、結晶分解および乾燥の工程を常法に従って行うことができる。
【0022】
イソマルトは、α-D-グルコピラノノース-1,6-ソルビトール(GPS)とα-D-グルコピラノシド-1,6-マンニトール(GPM)という二種類の二糖アルコールの混合物であり、「イソマル水和物」とも呼ばれる。イソマルトは、一般に、スクロースを原料として転移酵素によりα-1,2結合をα-1,6結合に作り替えて還元性二糖のイソマルトースを生成し、これをラネー合金触媒の存在下で水素添加(還元)することにより製造される。イソマルトにおけるGPMとGPSとの混合比としては、例えば、GPM:GPS=43~57%:57~43%を例示することができる。GPMおよびGPSの混合比がほぼ等モルである市販品が入手可能であり、本発明においては係る市販品を用いることができる。
【0023】
本発明において、イソマルトは主として結合剤の役割を有し、本顆粒から錠剤を圧縮成形する際の成形性を高め、あるいは錠剤硬度を高める効果を有する。また一方で、後述する実施例で示すように、短い口腔内崩壊時間を達成することにも寄与する。本顆粒におけるイソマルトの含有割合としては、例えば、1質量%以上、1.2質量%以上、1.5質量%以上、1.7質量%以上、2.0質量%以上、2.2質量%以上、2.5質量%以上、2.7質量%以上、3.0質量%以上、あるいは、10.0質量%以下、9.5質量%以下、9.0質量%以下、8.5質量%以下、8.0質量%以下、7.5質量%以下、7.0質量%以下、6.5質量%以下、6.0質量%以下を例示することができる。
【0024】
クロスポビドン(Cross-linked polyvinylpyrolidone、CPVP)は、「架橋ポリビニルピロリドン」、「ポリビニルポリピロリドン」、「不溶性ポリビニルピロリドン」とも呼ばれ、N-ビニル-2-ピロリドンが重合してなるポリビニルピロリドン(PVP)のピロリドン部分が架橋された構造を有する、水に不溶な高分子化合物である。クロスポビドンは市販品を用いることができ、その分子量や粒子径などは、口腔内崩壊錠用顆粒における所望の物性や造粒方法などに応じて適宜設定することができる。市販のクロスポビドンとしては、例えば、Kolidon(登録商標)CL、CL-F、CL-SFおよびCL-M(以上、BASF)、Polyclar 10(Ashland)などを挙げることができる。
【0025】
本発明において、クロスポビドンは主として崩壊剤の役割を有し、錠剤の口腔内崩壊時間を短くする効果を有する。本顆粒におけるクロスポビドンの含有割合としては、例えば、1.0質量%以上、1.0質量%超、1.1質量%以上、1.2質量%以上、1.3質量%以上、1.4質量%以上、1.5質量%以上、1.6質量%以上、1.7質量%以上、1.8質量%以上、1.9質量%以上、2.0質量%以上、2.1質量%以上、2.2質量%以上、2.3質量%以上、2.4質量%以上、2.5質量%以上、2.6質量%以上、2.7質量%以上、2.8質量%以上、2.9質量%以上、3.0質量%以上、あるいは、15質量%以下、14質量%以下、13質量%以下、12質量%以下、11質量%以下、10質量%以下、10質量%未満、9質量%以下、9質量%未満、8質量%以下、8質量%未満、7質量%以下、7質量%未満、6質量%以下、6質量%未満、5質量%以下を例示することができる。このうち、短い口腔内崩壊時間を達成する観点からは、1質量%超が好ましい。また、多湿環境下での保存や長期保存の後にも品質の劣化が少なく、保存安定性に優れた錠剤を得る観点からは、10質量%未満が好ましい。
【0026】
本発明において、流動化剤は、エリスリトールの流動性の悪さを改善し、造粒難易度を下げる効果を有する。また、後述する実施例で示すように、所定の条件下では、本顆粒を用いて製造された錠剤の錠剤硬度を高めることや口腔内崩壊時間を短くすることにも寄与する。流動化剤としては、二酸化ケイ素またはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムが挙げられる。
【0027】
二酸化ケイ素(SiO、シリカ)は、一般に、圧力や温度などの条件により結晶多形をとり、結晶性シリカ(結晶質シリカ)と非結晶性シリカ(非晶質シリカ)との2つに大別される。本発明においてはこれらのうち、非結晶性シリカを用いることが好ましい。また、シリカ製品はその水分含量や形態により、無水ケイ酸や含水二酸化ケイ素、軽質無水ケイ酸、微粒二酸化ケイ素に分けられる場合があるが、本発明においてはこれらのいずれも用いることができる。また、合成非晶質シリカは、その製法により、乾式シリカや湿式シリカ、溶融シリカなどに分けられる場合があるが、本発明においてはこれらのいずれも用いることができる。
【0028】
メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、MgO・Al・2SiO・xHOの構造式で表される化合物であり、医薬品(制酸剤)として市販されている。本発明において、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、簡便には、係る市販品を用いることができる。
【0029】
本顆粒における流動化剤の含有割合としては、例えば、0質量%超、0.01質量%以上、0.02質量%以上、0.03質量%以上、0.04質量%以上、0.05質量%以上、0.06質量%以上、0.07質量%以上、0.08質量%以上、0.09質量%以上、0.10質量%以上、0.15質量%以上、あるいは、3.0質量%以下、2.9質量%以下、2.8質量%以下、2.7質量%以下、2.6質量%以下、2.5質量%以下、2.4質量%以下、2.3質量%以下、2.2%以下、2.1質量%以下、2.0%以下、1.9質量%以下、1.8質量%以下、1.7質量%以下、1.6質量%以下、1.5質量%以下、1.4質量%未満、1.3質量%以下、1.2質量%以下、1.1質量%以下、1.0質量%以下、1.0質量%未満を例示することができる。
【0030】
本顆粒は、本発明の特徴を損なわない限りにおいて、エリスリトール、イソマルト、クロスポビドン、ならびに、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択される流動化剤以外の物質を含んでいてもよい。そのような物質としては、例えば、加工特性を改良するための結合剤や滑沢剤、錠剤の食感や風味、嗜好性、保存性などを改良するための食品添加物や医薬品添加物、医薬部外品原料を挙げることができる。結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)やヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、プルラン、アルギン酸ナトリウム、寒天、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを挙げることができる。また、滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0031】
本顆粒は、エリスリトールと、クロスポビドンと、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択される流動化剤とを含む基質を流動または攪拌しながら、当該基質に、イソマルトを含有する噴霧液を噴霧した後乾燥させる造粒工程により製造することができる。すなわち、本発明は、上記造粒工程を有する口腔内崩壊錠用顆粒の製造方法をも提供する。
【0032】
上記造粒工程は、後述する実施例に示すように、流動層造粒法により行うことができる。また、攪拌造粒法、噴霧乾燥法などにより行うこともできる。ここで、流動層造粒法とは、湿式造粒の一方法であり、造粒室の下部から熱風を送り込み、原料粉粒体(基質)を空中に巻き上げることにより粒子が流動する状態になる層を形成してから、液体(噴霧液)を噴霧して、凝集や被覆により原料粉粒体を粒状物(顆粒)に成長させる方法である。流動層造粒法による造粒は、市販の造粒装置により行うことができる。
【0033】
すなわち、上記造粒工程を流動層造粒法により行う場合は、エリスリトールと、クロスポビドンと、二酸化ケイ素およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウムから選択される流動化剤とを含む基質を熱風で流動しながら、当該基質にイソマルトを含有する噴霧液を噴霧した後、当該熱風により乾燥させることにより、口腔内崩壊錠用顆粒を製造することができる。
【0034】
噴霧液におけるイソマルトの分散媒は、例えば、水やエタノールなどのアルコール、あるいはこれらの混合物などを挙げることができる。噴霧液には、本発明の特徴を損なわない限りにおいて、結合剤や崩壊剤、糖アルコール、香料や着色料、保存料などの食品添加物や医薬品添加物を添加して用いてもよい。また、噴霧液におけるイソマルトの濃度は、上述の本顆粒におけるイソマルトの含有割合に応じて適宜設定すればよい。
【0035】
造粒工程における造粒装置は、例えば、通常流動層型造粒機や強制循環型流動層造粒機、噴流層型造粒機などのバッチ式流動層造粒機、箱型連続式流動層造粒機や円筒型連続式流動層造粒機などの連続式流動層造粒機を用いることができる。造粒装置における噴霧液のスプレーノズルの位置は、例えば、底部スプレー方式、トップスプレー方式、接線スプレー方式のいずれであってもよい。造粒条件は基質の仕込み量や本顆粒における所望の物性などに応じて適宜設定することができるが、例えば、熱風入口温度を60~100℃、風量を0.4~1.0m/分、噴霧液の噴霧圧力を0.1~0.3MPaとすることができる。
【0036】
最後に、本発明に係る口腔内崩壊錠は、本顆粒と薬効成分または食品材料とを含むことを特徴とする。
【0037】
口腔内崩壊錠は、本顆粒と薬効成分または食品材料との混合物を直打法により打錠する打錠工程により製造することができる。当該打錠工程において、本顆粒と薬効成分との混合物を打錠すれば、口腔内崩壊錠の形態を有する医薬品や医薬部外品を製造することができ、本顆粒と食品材料との混合物を打錠すれば、口腔内崩壊錠の形態を有する菓子(錠菓)やサプリメントなどの飲食品を製造することができる。
【0038】
上記打錠工程において、直打法は、当業者に公知の方法に従って行うことができる。すなわち、本顆粒と薬効成分または食品材料との混合物を市販の打錠機に仕込み、錠剤の形状に圧縮成型すればよい。打錠圧や錠剤のサイズは、製品の用途や含有成分等に応じて適宜設定することができる。打錠圧としては、例えば、錠剤の面積0.5cmに対して、40.0kN未満、35kN未満、30kN未満、25kN未満、20kN未満、あるいは15.0kN未満などとすることができる。
【0039】
なお、口腔内崩壊錠には、本発明の特徴を損なわない限りにおいて、本顆粒および薬効成分または食品材料以外の物質を含んでいてもよい。そのような物質としては、例えば、加工特性を改良するための結合剤や滑沢剤、錠剤の食感や風味、嗜好性、保存性などを改良するための食品添加物や医薬品添加物、医薬部外品原料を挙げることができる。結合剤としては、例えば、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)やヒドロキシプロピルメチルセルロース(HPMC)、メチルセルロース、ヒドロキシエチルメチルセルロース、プルラン、アルギン酸ナトリウム、寒天、ゼラチン、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリビニルピロリドン、ポリビニルアルコールなどを挙げることができる。また、滑沢剤としては、例えば、ステアリン酸マグネシウム、グリセリン脂肪酸エステル、ソルビタン酸脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステルなどを挙げることができる。
【0040】
以下、本発明について、各実施例に基づいて説明する。なお、本発明の技術的範囲は、これらの実施例によって示される特徴に限定されない。
【実施例
【0041】
<試験方法>
本実施例は、別段に記載のない限り下記(1)~(4)の方法で行った。また、本実施例においては、別段に記載のない限り「%」は「質量%」を意味する。
【0042】
(1)材料
本実施例で用いた材料を表1に示す。
【表1】
【0043】
(2)造粒方法
口腔内崩壊錠用顆粒の製造は、流動層造粒法により行った。具体的には、造粒装置「マルチプレックス FD-MP-01D(パウレック社)」に、基質としてエリスリトール、崩壊剤および流動化剤を仕込み、熱風入口温度が80℃、風量が0.6m/分、噴霧圧力が0.2MPaにて、噴霧液を噴霧しながら造粒を行った。噴霧液には、水に結合剤を溶解してなる水溶液を用いた。
【0044】
(3)打錠方法
口腔内崩壊錠用顆粒を用いて、直打法により錠剤を製造した。すなわち、口腔内崩壊錠用顆粒99重量部に対して、ステアリン酸マグネシウム(滑沢剤)1重量部を添加した後、卓上型単発式打錠機「AUTOTAB-200(市橋精機株式会社)」に仕込み、産業上、実施可能な打錠圧(5~15kN)で、錠剤の形状に圧縮成型した。錠剤のサイズは、直径が8mm、1錠当たりの重量は約200mgとした。すなわち、錠剤の面積(π×0.4cm×0.4cm≒0.5cm)に対して5~15kN(100~300MPa)の打錠圧をかけることにより錠剤を製造した。
【0045】
(4)評価項目および評価方法
[4-1]錠剤硬度
錠剤の硬度は、ロードセル式錠剤硬度計(PC-30、岡田精工)を用いて測定した。測定した錠剤硬度が50N以上であれば、製品の硬度として「好適(略記:◎)」、30N以上であれば「適する(略記:○)」、30N未満であれば「不適(略記:×)」と評価した。
【0046】
[4-2]口腔内崩壊時間
錠剤の口腔内崩壊時間は、口腔内崩壊錠試験器(ODT-101、富山産業)を用いて測定した。測定条件は、錘(直径15mm、15g)、回転数25回転/分(rpm)、温度37±0.5℃とした。口腔内崩壊時間が30秒以下であれば「好適(略記:◎)」、30秒超60秒以下であれば「適する(略記:○)」、60秒超180秒以下であれば「やや不適(略記:△)」、180秒超であれば「不適(略記:×)」と評価した。
【0047】
<実施例1>結合剤の検討
造粒装置に、基質としてエリスリトール、クロスポビドンおよび軽質無水ケイ酸(合計388g)を仕込み、噴霧液120mLを噴霧しながら造粒を行って、No.1~4の顆粒を製造した。噴霧液は、イソマルトを10%となるよう溶解した水溶液(No.1)、ヒドロキシプロピルセルロース(HPC)を10%となるよう溶解した水溶液(No.2)、ポリビニルアルコール(PVA)を3.33%となるよう溶解した水溶液(No.3)、および、ポリビニルアルコール・ポリエチレングリコール・グラフト共重合体(PVA-PEGグラフトコポリマー)を6.67%となるよう溶解した水溶液(No.4)を用いた。各顆粒の配合を表2上段に示す。その後、これらの顆粒99重量部に対して、ステアリン酸マグネシウム1重量部を添加した後、9kNおよび11kNの打錠圧で錠剤を製造し、錠剤硬度および口腔内崩壊時間を評価した。その結果を表2下段および図1に示す。
【表2】
【0048】
表2および図1に示すように、錠剤硬度は、No.1、No.2およびNo.4で、いずれの打錠圧においても好適(◎)であった。特に、No.1およびNo.2の錠剤硬度が高かった。また、口腔内崩壊時間は、No.1でいずれの打錠圧においても好適(◎)であった。すなわち、イソマルトを用いた錠剤は、高い錠剤硬度と短い口腔内崩壊時間とを兼ね備えていた。これらの結果から、イソマルトを含有させることにより、「高い錠剤硬度と短い口腔内崩壊時間とを兼ね備える口腔内崩壊錠」の製造に好適な顆粒を製造できることが明らかになった。
【0049】
<実施例2>結合剤の含有量の検討
造粒装置に基質としてエリスリトールを仕込み、噴霧液を噴霧しながら造粒を行って、No.5~7の顆粒を製造した。エリスリトールの仕込み量は、No.5が288g、No.6が282g、No.7が267gとした。また、No.5の噴霧液は、イソマルトを15%となるよう溶解した水溶液60mLを用いた。No.6の噴霧液は、イソマルトを25%となるよう溶解した水溶液60mLを用いた。No.7の噴霧液は、イソマルトを25%となるよう溶解した水溶液120mLを用いた。各顆粒の配合を表3上段に示す。その後、これらの顆粒99重量部に対して、ステアリン酸マグネシウム1重量部を添加した後、3kN、5kN、9kNおよび11kNの打錠圧で錠剤を製造し、錠剤硬度を評価した。その結果を表3下段および図2に示す。
【表3】
【0050】
表3および図2に示すように、錠剤硬度は、No.5~7のいずれも、全ての打錠圧において、口腔内崩壊錠として好適(◎)または適する(○)値であった。また、いずれの打錠圧においても、錠剤硬度はNo.7>No.6>No.5の順に高かった。この結果から、口腔内崩壊錠用顆粒におけるイソマルトの含有量は、3%程度でも高い錠剤硬度が得られることが明らかになった。また、口腔内崩壊錠用顆粒におけるイソマルトの含有量が大きいほど、錠剤硬度が高くなる傾向が明らかになった。
【0051】
<実施例3>崩壊剤の検討
造粒装置に、基質としてエリスリトールおよび崩壊剤(合計285g)を仕込み、噴霧液(15%イソマルト水溶液)100mLを噴霧しながら造粒を行って、No.8~12の顆粒を製造した。崩壊剤は、結晶セルロース(No.8)、部分アルファー化デンプン(No.9)、クロスポビドン(No.10)、アルファー化デンプン(No.11)およびカルメロースカルシウム(No.12)をそれぞれ用いた。各顆粒の配合を表4上段に示す。その後、これらの顆粒99重量部に対して、ステアリン酸マグネシウム1重量部を添加した後、5kNの打錠圧で錠剤を製造し、錠剤硬度および口腔内崩壊時間を評価した。その結果を表4下段に示す。
【表4】
【0052】
表4に示すように、錠剤硬度は、No.8~12のいずれにおいても、好適(◎)または適する(○)値であった。一方、口腔内崩壊時間は、No.8、9、11および12で60秒以上とやや長かったのに対して、No.10では30秒以下と顕著に短かった。すなわち、クロスポビドンを用いた錠剤は、高い錠剤硬度と短い口腔内崩壊時間とを兼ね備えていた。
【0053】
これらの結果から、クロスポビドンを含有させることにより、「高い錠剤硬度と短い口腔内崩壊時間とを兼ね備える口腔内崩壊錠」の製造に好適な顆粒を製造できることが明らかになった。
【0054】
<実施例4>崩壊剤の含有量の検討
(1)錠剤硬度および口腔内崩壊時間
造粒装置に基質としてエリスリトール、クロスポビドンおよび軽質無水ケイ酸(合計388g)を仕込み、噴霧液(10%イソマルト水溶液)120mLを噴霧しながら造粒を行って、No.13~16の顆粒を製造した。クロスポビドンの配合割合は、1%(No.13)、3%(No.14)、5%(No.15)または10%(No.16)とした。各顆粒の配合を表5上段に示す。その後、これらの顆粒99重量部に対して、ステアリン酸マグネシウム1重量部を添加した後、9kNおよび11kNの打錠圧で錠剤を製造し、錠剤硬度および口腔内崩壊時間を評価した。その結果を表5下段および図3に示す。
【表5】
【0055】
表5および図3に示すように、錠剤硬度は、No.16の打錠圧9kNでやや低かったものの、それ以外の試料は全て、口腔内崩壊錠として適する(○)値であった。一方、口腔内崩壊時間は、No.13でいずれの打錠圧においても60秒前後でやや長かった。これに対して、No.14~16は、いずれの打錠圧においても顕著に短く、口腔内崩壊錠として好適(◎)な値であった。すなわち、クロスポビドンの含有割合が1%の試料は口腔内崩壊時間がやや長かったが、3%、5%および10%の試料は短い口腔内崩壊時間と高い錠剤硬度とを兼ね備えていた。この結果から、口腔内崩壊錠用顆粒におけるクロスポビドンの含有量は、短い口腔内崩壊時間を達成するためには、1%超が好ましいことが明らかになった。
【0056】
(2)保存安定性
造粒装置に基質としてエリスリトール、クロスポビドンおよび軽質無水ケイ酸(合計388g)を仕込み、噴霧液(10%イソマルト水溶液)120mLを噴霧しながら造粒を行って、No.17~20の顆粒を製造した。クロスポビドンの配合割合は、1%(No.17)、3%(No.18)、5%(No.19)または10%(No.20)とした。各顆粒の配合を表6上段に示す。その後、これらの顆粒99重量部に対して、ステアリン酸マグネシウム1重量部を添加した後、打錠圧9kNで錠剤を製造し、錠剤硬度および錠剤厚みを測定した。続いて、温度25℃、湿度75%および解放条件で1ヶ月間保存した後、同様に錠剤硬度および錠剤厚みを測定した。錠剤厚みについては、保存後の値から保存前の値を減じて、増加量を算出した。その結果を表6下段および図4に示す。なお、保存後の錠剤硬度の目標値は20N、錠剤厚み増加量の目標値は+0.2mm以下である。
【表6】
【0057】
表6および図4に示すように、保存後の錠剤硬度は、No.17~19では20Nを上回っていたが、No.20では20Nよりも顕著に低かった。一方、錠剤厚みの増加量は、No.17~20のいずれにおいても0.2mm以下であった。すなわち、クロスポビドンの含有量が10%よりも小さい錠剤では、多湿条件下での保存後も、錠剤硬度が適切な範囲に維持されており、錠剤の膨張も少なかった。この結果から、口腔内崩壊錠用顆粒におけるクロスポビドンの含有量は、錠剤の保存安定性を担保するためには、10%未満が好ましいことが明らかになった。
【0058】
<実施例5>流動化剤の検討
造粒装置に、基質としてエリスリトール、クロスポビドンおよび流動化剤(合計388g)を仕込み、噴霧液(10%イソマルト水溶液)120mLを噴霧しながら造粒を行って、No.22~24の顆粒を製造した。流動化剤は、軽質無水ケイ酸(No.22)、含水二酸化ケイ素(No.23)およびメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(No.24)をそれぞれ用いた。また、流動化剤を添加しないもの(No.21)も同様に製造した。造粒時の流動性を評価するために、造粒装置の容器下部を撮影した写真を図5に示す。その後、これらの顆粒99重量部に対して、ステアリン酸マグネシウム1重量部を添加した後、7kN、9kNおよび11kNの打錠圧で錠剤を製造し、錠剤硬度および口腔内崩壊時間を評価した。各顆粒の配合および評価結果を、表7および図6に示す。
【表7】
【0059】
表7および図5に示すように、No.21では造粒時の流動性が悪く、凝集(ダマ)が発生して、顆粒の製造に困難を来した。これに対して、No.22は、造粒時の流動性が良くて凝集(ダマ)も発生せず、顆粒の製造に困難は生じなかった。No.23およびNo.24は図示しないが、No.22と同様に、造粒時に凝集(ダマ)が発生することは無く、顆粒の製造に困難は生じなかった。すなわち、基質に軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素またはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを添加した場合は、エリスリトールの流動性が改善され造粒を容易に行うことができた。
【0060】
一方、No.21(流動化剤無し)とNo.22~24(流動化剤有り)との間で錠剤硬度を比較すると、表7および図6に示すように、No.22~24のいずれもNo.21と同等以上であり、口腔内崩壊錠として適する(○)値であった。特に、No.22は、いずれの打錠圧においてもNo.21と比較して錠剤硬度が高かった。No.23およびNo.24も、高い打錠圧(9kN、11kN)で、No.21と比較して錠剤硬度が高かった。
【0061】
また、No.21(流動化剤無し)とNo.22~24(流動化剤有り)との間で口腔内崩壊時間を比較すると、表7および図6に示すように、No.22~24のいずれもNo.21と同等であり、口腔内崩壊錠として好適(◎)な値であった。特に、No.22は、いずれの打錠圧においてもNo.21と比較して口腔内崩壊時間が短かった。
【0062】
すなわち、軽質無水ケイ酸、含水二酸化ケイ素またはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムはいずれも、錠剤硬度や口腔内崩壊時間に悪影響を与えないことが明らかになった。特に、軽質無水ケイ酸は、錠剤硬度を高くする効果や口腔内崩壊時間を短くする効果も有することが明らかになった。
【0063】
以上の結果から、二酸化ケイ素またはメタケイ酸アルミン酸マグネシウムを用いることにより、口腔内崩壊錠の製造に好適な顆粒を、容易に製造できることが明らかになった。
【0064】
<実施例6>流動化剤の含有量の検討
(1)軽質無水ケイ酸
造粒装置に基質としてエリスリトール、クロスポビドンおよび軽質無水ケイ酸(合計388g)を仕込み、噴霧液(10%イソマルト水溶液)120mLを噴霧しながら造粒を行って、No.25~27の顆粒を製造し、造粒時の流動性を評価した。軽質無水ケイ酸の配合割合は、0.2%(No.25)、0.5%(No.26)または1%(No.27)とした。その後、これらの顆粒99重量部に対して、ステアリン酸マグネシウム1重量部を添加した後、7kN、9kNおよび11kNの打錠圧で錠剤を製造し、錠剤硬度および口腔内崩壊時間を評価した。各口腔内崩壊錠用顆粒の配合および評価結果を、表8および図7に示す。
【表8】
【0065】
表8に示すように、No.25~27はいずれも造粒時の流動性が良く、口腔内崩壊錠用顆粒の製造に困難は生じなかった。また、表8および図7に示すように、錠剤硬度は、No.25およびNo.26ではいずれの打錠圧においても口腔内崩壊錠として適する(○)値であった。これに対して、No.27の錠剤硬度はいずれの打錠圧においても30Nを下回り、口腔内崩壊錠として不適(×)な値であった。一方、口腔内崩壊時間は、No.25~27のいずれにおいても全ての打錠圧で30秒より短く、口腔内崩壊錠として好適(◎)な値であった。
【0066】
これらの結果から、口腔内崩壊錠用顆粒における軽質無水ケイ酸の含有量は、高い錠剤硬度を得る観点からは1%未満が好ましいことが明らかになった。
【0067】
(2)含水二酸化ケイ素
造粒装置に基質としてエリスリトール、クロスポビドンおよび含水二酸化ケイ素(合計388g)を仕込み、噴霧液(10%イソマルト水溶液)120mLを噴霧しながら造粒を行って、No.28~30の顆粒を製造し、造粒時の流動性を評価した。含水二酸化ケイ素の配合割合は、0.2%(No.28)、0.5%(No.29)または1%(No.30)とした。その後、これらの顆粒99重量部に対して、ステアリン酸マグネシウム1重量部を添加した後、7kN、9kNおよび11kNの打錠圧で錠剤を製造し、錠剤硬度および口腔内崩壊時間を評価した。各口腔内崩壊錠用顆粒の配合および評価結果を、表9および図8に示す。
【表9】
【0068】
表9に示すように、No.28~30はいずれも造粒時の流動性が良く、口腔内崩壊錠用顆粒の製造に困難は生じなかった。また、表9および図8に示すように、錠剤硬度は、No.30の打錠圧7kNの場合(27.8N)を除いて、No.28~30のいずれにおいても口腔内崩壊錠として適する(○)値であった。口腔内崩壊時間は、No.28~30のいずれにおいても全ての打錠圧で30秒より短く、口腔内崩壊錠として好適(◎)な値であった。
【0069】
これらの結果から、口腔内崩壊錠用顆粒を製造するにあたり、含水二酸化ケイ素は、その添加量に拘わらず、流動性を良くする効果を発揮し、また、錠剤硬度や口腔内崩壊時間に悪影響を与えないことが明らかになった。
【0070】
(3)メタケイ酸アルミン酸マグネシウム
造粒装置に基質としてエリスリトール、クロスポビドンおよびメタケイ酸アルミン酸マグネシウム(合計388g)を仕込み、噴霧液(10%イソマルト水溶液)120mLを噴霧しながら造粒を行って、No.31~33の顆粒を製造し、造粒時の流動性を評価した。メタケイ酸アルミン酸マグネシウムの配合割合は、0.2%(No.31)、0.5%(No.32)または1%(No.33)とした。その後、これらの顆粒99重量部に対して、ステアリン酸マグネシウム1重量部を添加した後、7kN、9kNおよび11kNの打錠圧で錠剤を製造し、錠剤硬度および口腔内崩壊時間を評価した。各口腔内崩壊錠用顆粒の配合および評価結果を、表10および図9に示す。
【表10】
【0071】
表10に示すように、No.31~33はいずれも造粒時の流動性が良く、口腔内崩壊錠用顆粒の製造に困難は生じなかった。また、表10および図9に示すように、錠剤硬度は、No.31~33のいずれにおいても口腔内崩壊錠として適する(○)値であった。口腔内崩壊時間は、No.31~33のいずれにおいても口腔内崩壊錠として好適(◎)または適する(○)値であった。
【0072】
これらの結果から、エリスリトール顆粒を製造するにあたり、メタケイ酸アルミン酸マグネシウムは、その添加量に拘わらず、流動性を良くする効果を発揮し、また、錠剤硬度や口腔内崩壊時間に悪影響を与えないことが明らかになった。
【0073】
<実施例7>市販品との比較
造粒装置に基質としてエリスリトール、クロスポビドンおよび軽質無水ケイ酸(合計388g)を仕込み、10%イソマルト水溶液120mLを噴霧しながら造粒を行って、No.34の顆粒を製造した。続いて、この顆粒、ならびに、市販の口腔内崩壊錠用プレミックスであるParteckODT(メルク)(No.35)およびPharmaburst(SPI Pharma, Inc.)(No.36)各々99重量部に対して、ステアリン酸マグネシウム1重量部を添加した後、錠剤を製造し、錠剤硬度および口腔内崩壊時間を評価した。なお、打錠圧は7、9および11kN(No.34)、ならびに、3、5および7kN(No.35、No.36)とした。顆粒の配合および評価結果を表11に示す。また、評価結果に基づき、錠剤硬度を横軸に、口腔内崩壊時間を縦軸にとった折れ線グラフを図10に示す。
【表11】
【0074】
No.34~36を同等の錠剤硬度(約50N~約75N)において比較すると、図10に示すように、No.34の口腔内崩壊時間がNo.35、36よりも顕著に短かった。すなわち、本発明に係る口腔内崩壊錠用顆粒を用いた錠剤は、市販の口腔内崩壊錠用プレミックスを用いた錠剤と比較して口腔内崩壊時間が短かった。この結果から、本発明に係る口腔内崩壊錠用顆粒は、適切な錠剤硬度を担保しつつ短い口腔内崩壊時間を達成できる点で、市販品と同等以上の品質を有することが明らかになった。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10