(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】客室温度測定装置および鉄道車両
(51)【国際特許分類】
B61D 27/00 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B61D27/00 F
B61D27/00 V
B61D27/00 L
(21)【出願番号】P 2020091217
(22)【出願日】2020-05-26
【審査請求日】2023-03-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】390021577
【氏名又は名称】東海旅客鉄道株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】大島 聡
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 翔太
(72)【発明者】
【氏名】和泉 勧
(72)【発明者】
【氏名】菅野 浩之
(72)【発明者】
【氏名】伊東 隼
(72)【発明者】
【氏名】見並 克俊
【審査官】西中村 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-001426(JP,A)
【文献】特開平10-086821(JP,A)
【文献】特開平11-048970(JP,A)
【文献】特開2016-049939(JP,A)
【文献】実公平06-035853(JP,Y2)
【文献】中国特許出願公開第103661458(CN,A)
【文献】韓国公開特許第10-2008-0030987(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61D 27/00
B60H 1/00ー 3/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
客室と、前記客室の内面を構成する内装パネルと、前記内装パネルの前記客室とは反対の側に配設され、空調エアを送風する送風流路を内部に有するとともに、前記空調エアを前記客室に吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、を備える鉄道車両の、前記客室の温度を、温度センサにより測定する客室温度測定装置において、
前記客室に連通し、前記内装パネルから、前記空調ダクトまで延伸する温度測定用流路を備えること、
前記温度測定用流路は、前記送風流路内又は前記吹出口近傍に開口する開口部を備えること、
前記温度測定用流路上に、前記温度センサが配置されること、
前記空調ダクトの内部を前記空調エアが流れることで
前記開口部に生じる負圧により、前記温度測定用流路に、前記客室の空気が誘引されること、
を特徴とする客室温度測定装置。
【請求項2】
客室と、前記客室の内面を構成する内装パネルと、前記内装パネルの前記客室とは反対の側に配設され、空調エアを送風する送風流路を内部に有するとともに、前記空調エアを前記客室に吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、を備える鉄道車両の、前記客室の温度を、温度センサにより測定する客室温度測定装置において、
前記客室に連通し、前記内装パネルから、前記空調ダクトまで延伸する温度測定用流路を備えること、
前記温度測定用流路上に、前記温度センサが配置されること、
前記空調ダクトの内部を前記空調エアが流れることで生じる負圧により、前記温度測定用流路に、前記客室の空気が誘引されること、
前記空調ダクトは、前記送風流路内に、前記空調エアの流れに平行な方向に延伸する副流路を備えること、
前記副流路の、前記吹出口の側の端部に、前記吹出口と同じ方向に開口する第1開口部を備え、他方の端部に、前記第1開口部とは反対の方向に開口する第2開口部を備え、前記送風流路を流れる前記空調エアが、前記第2開口部から前記副流路に流入され、前記第1開口部から流出されること、
前記温度測定用流路は、前記副流路の前記第1開口部と前記第2開口部との間において、前記副流路と連通していること、
を特徴とする客室温度測定装置。
【請求項3】
請求項2に記載の客室温度測定装置において、
前記副流路の流路面積は、前記第2開口部から前記温度測定用流路が連通している箇所に向かって漸減し、前記温度測定用流路が連通している箇所から、前記第1開口部に向かって漸増すること、
を特徴とする客室温度測定装置。
【請求項4】
客室と、前記客室の内面を構成する内装パネルと、前記内装パネルの前記客室とは反対の側に配設され、空調エアを送風する送風流路を内部に有するとともに、前記空調エアを前記客室に吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、を備える鉄道車両の、前記客室の温度を、温度センサにより測定する客室温度測定装置において、
前記客室に連通し、前記内装パネルから、前記空調ダクトまで延伸する温度測定用流路を備えること、
前記温度測定用流路上に、前記温度センサが配置されること、
前記空調ダクトの内部を前記空調エアが流れることで生じる負圧により、前記温度測定用流路に、前記客室の空気が誘引されること、
前記温度測定用流路は、前記客室と前記送風流路とを連通していること、
前記送風流路は、前記温度測定用流路が連通している箇所において、流路面積が絞られていること、
を特徴とする客室温度測定装置。
【請求項5】
客室と、前記客室の内面を構成する内装パネルと、前記内装パネルの前記客室とは反対の側に配設され、空調エアを送風する送風流路を内部に有するとともに、前記空調エアを前記客室に吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、を備える鉄道車両の、前記客室の温度を、温度センサにより測定する客室温度測定装置において、
前記客室に連通し、前記内装パネルから、前記空調ダクトまで延伸する温度測定用流路を備えること、
前記温度測定用流路上に、前記温度センサが配置されること、
前記空調ダクトの内部を前記空調エアが流れることで生じる負圧により、前記温度測定用流路に、前記客室の空気が誘引されること、
前記温度測定用流路は、前記客室から、前記送風流路の内部を通り、前記吹出口まで延伸するとともに、前記吹出口の側の端部に、前記吹出口と同じ方向に開口する流出口を備え、前記客室の側の端部に、前記客室に開口する吸入口を備えること、
を特徴とする客室温度測定装置。
【請求項6】
請求項5に記載の客室温度測定装置において、
前記流出口は、前記吹出口から、前記空調エアが吹き出される方向に、わずかに突出していること、
を特徴とする客室温度測定装置。
【請求項7】
請求項1乃至6のいずれか1つに記載の客室温度測定装置を備えること、
を特徴とする鉄道車両。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、客室と、客室の内面を構成する内装パネルと、内装パネルの客室とは反対の側に配設され、空調エアを送風する送風流路を内部に有するとともに、空調エアを客室に吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、を備える鉄道車両の、客室の温度を、温度センサにより測定する客室温度測定装置および鉄道車両に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、鉄道車両の客室の温度は、特許文献1に開示されるように、空調ダクトから吹き出される空調エアにより調整される。客室の温度を快適に保つため、客室に設置される温度センサにより、客室の温度を測定し、測定された温度に基づいて、空調の制御が行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来技術には次のような問題があった。
温度センサが客室の温度を正しく測定できるようにするには、温度センサを、客室内の温度を代表する空気の流動がある箇所に設置する必要がある。従来、客室内の温度を代表する空気を検知するために、客室の壁面を構成する内装パネルの表面等に温度センサを設置することが行われていたが、空気の流動という点では十分ではなく、温度センサの反応速度が遅れ、客室の温度を正しく測定することができないおそれがあった。
【0005】
また、内装パネルの表面等は乗客の目に付くため、温度センサに乗客が手を触れることが無いよう、保護カバーを付けることが行われているが、客室の壁面に保護カバーが突出した状態となり、意匠性が低下していた。近年鉄道事業者各社は、特に特急車両などにおいて、客室内の意匠性向上を進めており、乗客の目に付く位置に温度センサを設置することを嫌う傾向にある。しかし、乗客の目に付かない箇所に温度センサを設置したとしても、そのような箇所は、空気の流動がないために、温度センサの反応速度が遅れるおそれがある上、客室の温度を代表する空気も検知することができず、温度センサに客室の温度を正しく測定させることが困難となるおそれがある。
【0006】
本発明は、上記問題点を解決するためのものであり、客室の温度を正しく測定することができるとともに、客室内の意匠性の向上を図ることができる客室温度測定装置および鉄道車両を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明の客室温度測定装置は、次のような構成を有している。
(1)客室と、客室の内面を構成する内装パネルと、内装パネルの客室とは反対の側に配設され、空調エアを送風する送風流路を内部に有するとともに、空調エアを客室に吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、を備える鉄道車両の、客室の温度を、温度センサにより測定する客室温度測定装置において、客室に連通し、内装パネルから、空調ダクトまで延伸する温度測定用流路を備えること、温度測定用流路は、送風流路内又は吹出口近傍に開口する開口部を備えること、温度測定用流路上に、温度センサが配置されること、空調ダクトの内部を空調エアが流れることで開口部に生じる負圧により、温度測定用流路に、客室の空気が誘引されること、を特徴とする。
【0008】
(1)に記載の客室温度測定装置によれば、空調ダクトの内部を空調エアが流れることで生じる負圧により、内装パネルから、空調ダクトまで延伸する温度測定用流路に客室の空気が誘引され、誘引された客室の空気が、温度測定用流路上に配置された温度センサに触れることで、客室の温度を測定することができる。客室の空気の誘引という点で、温度センサが温度を正しく測定するために必要な空気の流動を確保することができる。また、温度測定用流路は、内装パネルから延伸しており、内装パネル付近から客室を代表する空気を誘引可能である。よって、温度センサは、客室の温度を正しく測定することができるようになる。
【0009】
また、内装パネルから、空調ダクトまで延伸する温度測定用流路上に、温度センサが配置されるため、従来のように客室の壁面に突出した保護カバーを設ける必要がなく、客室内の意匠性の向上を図ることができる。
【0010】
(2)客室と、客室の内面を構成する内装パネルと、内装パネルの客室とは反対の側に配設され、空調エアを送風する送風流路を内部に有するとともに、空調エアを客室に吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、を備える鉄道車両の、客室の温度を、温度センサにより測定する客室温度測定装置において、客室に連通し、内装パネルから、空調ダクトまで延伸する温度測定用流路を備えること、温度測定用流路上に、温度センサが配置されること、空調ダクトの内部を空調エアが流れることで生じる負圧により、温度測定用流路に、客室の空気が誘引されること、空調ダクトは、送風流路内に、空調エアの流れに平行な方向に延伸する副流路を備えること、副流路の、吹出口の側の端部に、吹出口と同じ方向に開口する第1開口部を備え、他方の端部に、第1開口部とは反対の方向に開口する第2開口部を備え、送風流路を流れる空調エアが、第2開口部から副流路に流入され、第1開口部から流出されること、温度測定用流路は、副流路の第1開口部と第2開口部との間において、副流路と連通していること、を特徴とする。
【0011】
(2)に記載の客室温度測定装置によれば、空調ダクトは、送風流路内に副流路を備えており、副流路の流路面積は送風流路よりも小さくなる。送風流路よりも流路面積が小さい副流路に空調エアが流れ込むと、副流路において、空調エアの流速が速くなり、圧力が低下する(ベルヌーイの定理)。副流路において圧力が低下することで、副流路に連通している温度測定用流路に客室の空気が誘引される。このため、温度測定用流路上の温度センサにより、客室の温度を正しく測定することが可能となる。
【0012】
(3)(2)に記載の客室温度測定装置において、副流路の流路面積は、第2開口部から温度測定用流路が連通している箇所に向かって漸減し、温度測定用流路が連通している箇所から、第1開口部に向かって漸増すること、を特徴とする。
【0013】
(3)に記載の客室温度測定装置によれば、空調エアが第2開口部から流入され、第1開口部から流出される副流路の流路面積は、第2開口部から温度測定用流路が連通している箇所に向かって漸減し、温度測定用流路が連通している箇所から、第1開口部に向かって漸増している。すなわち、副流路の温度測定用流路が連通している箇所は、他の箇所に比べ、流路面積が絞られている。流路面積が絞られている箇所では、第2開口部から流入され第1開口部に向かう空調エアの流速が速くなり、圧力が低下する(ベルヌーイの定理)。流路面積が絞られている箇所で圧力が低下することで、流路面積が絞られている箇所で連通している温度測定用流路に客室の空気が誘引される。このため、温度測定用流路上の温度センサにより、客室の温度を正しく測定することが可能となる。
【0014】
(4)客室と、客室の内面を構成する内装パネルと、内装パネルの客室とは反対の側に配設され、空調エアを送風する送風流路を内部に有するとともに、空調エアを客室に吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、を備える鉄道車両の、客室の温度を、温度センサにより測定する客室温度測定装置において、客室に連通し、内装パネルから、空調ダクトまで延伸する温度測定用流路を備えること、温度測定用流路上に、温度センサが配置されること、空調ダクトの内部を空調エアが流れることで生じる負圧により、温度測定用流路に、客室の空気が誘引されること、温度測定用流路は、客室と送風流路とを連通していること、送風流路は、温度測定用流路が連通している箇所において、流路面積が絞られていること、を特徴とする。
【0015】
(4)に記載の客室温度測定装置によれば、客室の温度を正しく測定することができる。送風流路は、温度測定用流路が連通している箇所において、流路面積が絞られている。流路面積が絞られている箇所では、送風流路を流れる空調エアの流速が速くなり、圧力が低下する(ベルヌーイの定理)。流路面積が絞られている箇所で圧力が低下することで、流路面積が絞られている箇所で連通している温度測定用流路に客室の空気が誘引される。このため、温度測定用流路上の温度センサにより、客室の温度を正しく測定することが可能となる。
【0016】
(5)客室と、客室の内面を構成する内装パネルと、内装パネルの客室とは反対の側に配設され、空調エアを送風する送風流路を内部に有するとともに、空調エアを客室に吹き出すための吹出口を有する空調ダクトと、を備える鉄道車両の、客室の温度を、温度センサにより測定する客室温度測定装置において、客室に連通し、内装パネルから、空調ダクトまで延伸する温度測定用流路を備えること、温度測定用流路上に、温度センサが配置されること、空調ダクトの内部を空調エアが流れることで生じる負圧により、温度測定用流路に、客室の空気が誘引されること、温度測定用流路は、客室から、送風流路の内部を通り、吹出口まで延伸するとともに、吹出口の側の端部に、吹出口と同じ方向に開口する流出口を備え、客室の側の端部に、客室に開口する吸入口を備えること、を特徴とする。
【0017】
(5)に記載の客室温度測定装置によれば、客室の温度を正しく測定することができる。温度測定用流路は、送風流路の内部を通り、吹出口まで延伸し、吹出口の側の端部に、吹出口と同じ方向に開口する流出口を備えている。このため、吹出口から空調エアが吹き出されると、流出口周辺の流速が速くなるため、流出口周辺において負圧が発生する。流出口周辺において負圧が発生すると、客室に開口する吸入口から温度測定用流路に、客室の空気が誘引される。このため、温度測定用流路上の温度センサにより、客室の温度を正しく測定することが可能となる。
【0018】
(6)(5)に記載の客室温度測定装置において、流出口は、吹出口から、空調エアが吹き出される方向に、わずかに突出していること、を特徴とする。
【0019】
(6)に記載の客室温度測定装置によれば、より確実に流出口周辺において負圧を発生させることができるため、温度測定用流路に、客室の空気がより確実に誘引され、客室の温度を正しく測定することができる。
【0020】
また、上記課題を解決するために、本発明の鉄道車両は、次のような構成を有している。
(7)(1)乃至(6)のいずれか1つに記載の客室温度測定装置を備えること、を特徴とする。
【0021】
(7)に記載の鉄道車両によれば、客室の温度を正しく測定することができるとともに、客室内の意匠性の向上を図ることができる。
【発明の効果】
【0022】
本発明の客室温度測定装置および鉄道車両によれば、客室の温度を正しく測定することができるとともに、客室内の意匠性の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】第1の実施形態に係る客室温度測定装置を用いた鉄道車両の、枕木方向に切断した断面図である。
【
図4】第1の実施形態に係る客室温度測定装置に用いられる空調ダクトの斜視図である。
【
図6】第1の実施形態に係る客室温度測定装置の変形例を表す図であり、
図2に対応する図である。
【
図7】第2の実施形態に係る客室温度測定装置を表す図であり、
図3に対応する図である。
【
図8】第3の実施形態に係る客室温度測定装置を表す図であり、
図3に対応する図である。
【
図9】第3の実施形態に係る客室温度測定装置の変形例を表す図であり、
図2に対応する図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
(第1の実施形態)
本発明に係る客室温度測定装置および鉄道車両の第1の実施形態について、図面を参照しながら詳細に説明する。
【0025】
図1は第1の実施形態に係る客室温度測定装置を用いた鉄道車両1の、枕木方向に切断した断面図である。鉄道車両1は、例えば特急車両であり、台枠111と、台枠111の枕木方向両端部に立設される一対の側構体112と、一対の側構体112の上端部に接続される屋根構体113と、台枠111の軌道方向両端部に立設される不図示の妻構体と、により6面体をなすように構成された車両構体11を備えている。そして、車両構体11に囲まれた空間として、客室2を内部に有している。
【0026】
客室2の床面は、床板パネル12により形成されている。客室2の側壁は、内装パネル13により形成されている。客室2の天井は、天井パネル14により形成されている。
【0027】
床板パネル12には、複数の座席21が、床板パネル12の枕木方向中央部よりも
図1中右寄りおよび
図1中左寄りのそれぞれにおいて、軌道方向に一列に並んで配設されている。そして、座席21の上側には、荷棚22が備え付けられている。また、床板パネル12の下側には、床中送気ダクト33が、鉄道車両1の軌道方向に連通するように2本配置される。
【0028】
2本の床中送気ダクト33は、床下送気ダクト34で接続されている。また、床中送気ダクト33は、分岐ダクト32を介して、後述する空調ダクト31に接続されている。
【0029】
床中送気ダクト33と床下送気ダクト34との間は、台枠111に支えられた気密床15によって仕切られており、床板パネル12は、気密床15と床板パネル12との間に設けられた複数の床受16によって支えられている。また、床下送気ダクト34は、空調装置44と接続されている。本実施形態では、空調装置44は1両の鉄道車両1に対して1台又は2台設けられている。
【0030】
側構体112の客室2側には、内装パネル13が配置される。
図2に、客室2側から内装パネル13を見た断面図を示す。
図1のAA断面に相当する。
【0031】
図2に示すように、内装パネル13は3つのピースからなっており、第1内装パネル13A、第2内装パネル13B、及び第3内装パネル13Cを有する。第2内装パネル13Bが吹寄部の中央に来るような配置となり、左右から第1内装パネル13Aと第3内装パネル13Cとが、第2内装パネル13Bに重ねられるように配置され、吹寄部の両脇に側窓104を形成している。
【0032】
図3は、
図1のX1部分の部分拡大図である。第2内装パネル13Bと側構体112との間には、空調ダクト31が配設されており、空調ダクト31から吹き出される空調エアは、第2内装パネル13Bの客室2の天井側端部(上端部)から、上方に吹き出される(矢印A1参照)。
【0033】
図4は、空調ダクト31の斜視図であり、
図5は、
図4のX2部分の部分拡大図である。空調ダクト31は、客室2の上下方向に長手方向を有するとともに、上端部、下端部ともに開口された角筒状に形成されている。下端部側の開口は、分岐ダクト32を接続するための接続口31dである。また、上端部側の開口は、空調エアを吹き出すための吹出口31cである。そして、接続口31dから吹出口31cまでは、送風流路31bにより連通されている。また、空調ダクト31の第2内装パネル13B側の面には、送風流路31bと空調ダクト31の外部とを連通する連通孔31aが設けられている。
【0034】
送風流路31b内の、連通孔31aが設けられている側の内壁には、空調エアの流れに平行な方向に延伸する副流路18(
図3参照)を構成する角筒部材41が結合されている。
【0035】
角筒部材41は、中空状に形成されており、吹出口31cの側の端部に、吹出口31cと同じ方向に開口する第1開口部41aを有し、他方の端部に、第1開口部41aとは反対の方向に開口する第2開口部41bを有している。そのため、送風流路31bを流れる空調エアが、第2開口部41bから副流路18に流入され、第1開口部41aから流出されるようになっている(
図3中の矢印A11参照)。
【0036】
また、角筒部材41は、第1開口部41aと第2開口部41bとの間に、狭小部41cを有しており、副流路18の流路面積が、第2開口部41bから狭小部41cに向かって漸減し、狭小部41cから、第1開口部41aに向かって漸増するように構成されている。なお、副流路18の空調エアの流れに直交する方向の断面は、第1開口部41aと第2開口部41bとの間のどこを切断したとしても、略正方形状に形成されている。また、狭小部41cには、狭小部41cと角筒部材41の送風流路31bの内壁に密着している面を貫通する連通孔41dが設けられている。
【0037】
以上のような角筒部材41は、吹出口31cの長手方向中央部において、第1開口部41aが、空調ダクト31の吹出口31cと、客室2の上下方向において略同一の高さとなるように、また、連通孔41dが、空調ダクト31の連通孔31aと同一位置となるように、空調ダクト31の送風流路31b内に、不図示のリベット等により結合されている。連通孔41dが、空調ダクト31の連通孔31aと同一位置となることで、副流路18が、連通孔41dおよび連通孔31aを介して、空調ダクト31の外部に連通している。なお、角筒部材41の第1開口部41aは、必ずしも空調ダクト31の吹出口31cと、客室2の上下方向において略同一の高さとする必要はなく、第1開口部41aが空調ダクト31の吹出口31cよりも低い位置としても良い。
【0038】
空調ダクト31と第2内装パネル13Bとの間の間隙には、
図3に示すように、温度センサ固定スペース37が設けられている。温度センサ固定スペース37は、空調ダクト31と第2内装パネル13Bおよび断熱材36に囲まれた空間として形成されている。なお、断熱材36は、
図3中の上下方向のみでなく、
図3中の奥側と手前側にも配設されており、温度センサ固定スペース37の四方を囲んでいる。
【0039】
温度センサ固定スペース37内には、温度センサ35が固定されている。第2内装パネル13Bには、温度センサ固定スペース37と客室2を連通する貫通孔131が設けられている。さらに、貫通孔131には、保護部材38が組付けられている。保護部材38の客室2に面する端面は、例えばメッシュ状となっており、温度センサ固定スペース37と客室2との連通を阻害することなく、乗客が温度センサ固定スペース37に指を入れて温度センサ35に触れることが出来ないようにされている。なお、保護部材38は、乗客が温度センサ固定スペース37に指を入れることができないようにできれば良いため、大きな部品とする必要はなく、第2内装パネル13Bからの突出量は最小限にし、客室2の意匠性を害しないよう配慮されている。
【0040】
さらに、温度センサ固定スペース37は、空調ダクト31の連通孔31aおよび角筒部材41の連通孔41dを介して、角筒部材41により形成される副流路18に連通している。そして、貫通孔131と、温度センサ固定スペース37と、連通孔31aと、連通孔41dとが温度測定用流路42を構成している。
【0041】
次に、空調装置44から客室2までの空調エアの流れについて簡単に説明する。空調装置44は、床下送気ダクト34を通じて、床中送気ダクト33に繋がっているので、空調装置44からの空調エアは床中送気ダクト33内を鉄道車両1の長手方向に送られる。そして、床中送気ダクト33に設けられている複数の分岐ダクト32から、空調ダクト31に空調エアが送られる。
【0042】
空調ダクト31に送られた空調エアは、送風流路31bを通り、吹出口31cから客室2へ吹き出される(矢印A1)。ここで、空調エアは、送風流路31bを通る際に、副流路18へも流入される(矢印A11)。副流路18に空調エアが流入されると、狭小部41cにおいて流路が絞られているため、空調エアの流速が速くなる。すると、ベルヌーイの定理により、狭小部41cにおいて圧力が低下する。狭小部41cは温度測定用流路42に連通しているため、狭小部41cにおいて圧力が低下すると、温度測定用流路42に客室2の空気が誘引され、誘引された空気によって、温度センサ35は客室2の温度を計測することができるのである。
【0043】
次に、第1の実施形態の変形例について説明する。
図6は、第1の実施形態に係る客室温度測定装置の変形例を表す図であり、
図2に対応する図である。
【0044】
上記の第1の実施形態においては、温度センサ固定スペース37が、第2内装パネル13Bに設けられた貫通孔131により、客室2と連通していたが、温度センサ固定スペース37を客室2と連通させるためには、以下の構成を取ることもできる。
【0045】
例えば、
図6に示すように、温度センサ固定スペース37から管状の通気用流路84を、軌道方向に平行に第3内装パネル13Cの側(
図6中右側)に延伸させる。そして、当該通気用流路84は、第3内装パネル13Cの側構体112側と客室2側とを貫通し、客室2と温度センサ固定スペース37を連通させるのである。通気用流路84が第3内装パネル13Cを貫通している箇所においては、
図6に示すように、保護部材38を設け、異物が通気用流路84に入らないようにしても良い。なお、通気用流路84は、温度センサ固定スペース37から、第1内装パネル13A側(
図6中左側)に延伸させ、第1内装パネル13Aの側構体112側と客室2側とを貫通して、客室2と温度センサ固定スペース37を連通させることとしても良い。
【0046】
以上説明したように、第1の実施形態の客室温度測定装置および鉄道車両1によれば、
(1)客室2と、客室2の内面を構成する内装パネル13と、内装パネル13の客室2とは反対の側に配設され、空調エアを送風する送風流路31bを内部に有するとともに、空調エアを客室2に吹き出すための吹出口31cを有する空調ダクト31と、を備える鉄道車両1の、客室2の温度を、温度センサ35により測定する客室温度測定装置において、客室2に連通し、内装パネル13から、空調ダクト31まで延伸する温度測定用流路42を備えること、温度測定用流路42上に、温度センサ35が配置されること、空調ダクト31の内部を空調エアが流れることで生じる負圧により、温度測定用流路42に、客室2の空気が誘引されること、を特徴とする。
【0047】
(1)に記載の客室温度測定装置によれば、空調ダクト31の内部を空調エアが流れることで生じる負圧により、内装パネル13から、空調ダクト31まで延伸する温度測定用流路42に客室2の空気が誘引され、誘引された客室2の空気が、温度測定用流路42上に配置された温度センサ35に触れることで、客室2の温度を測定することができる。客室2の空気の誘引という点で、温度センサ35が温度を正しく測定するために必要な空気の流動を確保することができる。また、温度測定用流路42は、内装パネル13から延伸しており、内装パネル13付近から客室2を代表する空気を誘引可能である。よって、温度センサ35は、客室2の温度を正しく測定することができるようになる。
【0048】
また、内装パネル13から、空調ダクト31まで延伸する温度測定用流路42上に、温度センサ35が配置されるため、従来のように客室2の壁面に突出した保護カバーを設ける必要がなく、客室2内の意匠性の向上を図ることができる。
【0049】
(2)(1)に記載の客室温度測定装置において、空調ダクト31は、送風流路31b内に、空調エアの流れに平行な方向に延伸する副流路18を備えること、副流路18の、吹出口31cの側の端部に、吹出口31cと同じ方向に開口する第1開口部41aを備え、他方の端部に、第1開口部41aとは反対の方向に開口する第2開口部41bを備え、送風流路31bを流れる空調エアが、第2開口部41bから副流路18に流入され、第1開口部41aから流出されること、温度測定用流路42は、副流路18の第1開口部41aと第2開口部41bとの間において、副流路18と連通していることを特徴とする。
【0050】
(2)に記載の客室温度測定装置によれば、空調ダクト31は、送風流路31b内に副流路18を備えており、副流路18の流路面積は送風流路31bよりも小さくなる。送風流路31bよりも流路面積が小さい副流路18に空調エアが流れ込むと、副流路18において、空調エアの流速が速くなり、圧力が低下する(ベルヌーイの定理)。副流路18において圧力が低下することで、副流路18に連通している温度測定用流路42に客室2の空気が誘引される。このため、温度測定用流路42上の温度センサ35により、客室2の温度を正しく測定することが可能となる。
【0051】
(3)(2)に記載の客室温度測定装置において、副流路18の流路面積は、第2開口部41bから温度測定用流路42が連通している箇所に向かって漸減し、温度測定用流路42が連通している箇所から、第1開口部41aに向かって漸増すること、を特徴とする。
【0052】
(3)に記載の客室温度測定装置によれば、空調エアが第2開口部41bから流入され、第1開口部41aから流出される副流路18の流路面積は、第2開口部41bから温度測定用流路42が連通している箇所に向かって漸減し、温度測定用流路42が連通している箇所から、第1開口部41aに向かって漸増している。すなわち、副流路18の温度測定用流路42が連通している箇所は、他の箇所に比べ、流路面積が絞られている。流路面積が絞られている箇所では、第2開口部41bから流入され第1開口部41aに向かう空調エアの流速が速くなり、圧力が低下する(ベルヌーイの定理)。流路面積が絞られている箇所で圧力が低下することで、流路面積が絞られている箇所で連通している温度測定用流路42に客室2の空気が誘引される。このため、温度測定用流路42上の温度センサ35により、客室2の温度を正しく測定することが可能となる。
【0053】
(7)(1)乃至(3)のいずれか1つに記載の客室温度測定装置を備えること、を特徴とする鉄道車両1によれば、客室2の温度を正しく測定することができるとともに、客室2内の意匠性の向上を図ることができる。
【0054】
(第2の実施形態)
次に、本発明に係る客室温度測定装置および鉄道車両の第2の実施形態について、図面を参照しながら、第1の実施形態と異なる点のみ説明する。
図7は、第2の実施形態に係る客室温度測定装置を表す図であり、第1の実施形態の
図3に対応する図である。
【0055】
第2内装パネル13Bと、側構体112の間には、分岐ダクト32に接続される空調ダクト61が配設されている。空調ダクト61は、客室2の上下方向に長手方向を有する角筒状に形成されており、上端部側、下端部側ともに開口されている。上端部側の開口は、空調エアを吹き出すための吹出口61cであり、下端部側の開口(不図示)は、分岐ダクト32に接続されている。そして、下端部側の開口から吹出口61cまでは、送風流路61bにより連通されている。また、空調ダクト61の第2内装パネル13B側の面には、送風流路61bと空調ダクト61の外部とを連通する連通孔61aが設けられている。さらに、空調ダクト61は、連通孔61aが設けられている箇所の近傍から、吹出口61cまで、送風流路61bの流路面積を絞る絞り部61dが形成されている。この絞り部61dは、送風流路61bの流路面積を、軌道方向(
図7中の奥行方向)全域に渡って絞っている。
【0056】
空調ダクト61と第2内装パネル13Bとの間の間隙には、温度センサ固定スペース37が設けられている。温度センサ固定スペース37の構成は、第1の実施形態と同様であるが、温度測定用流路142は、第2内装パネル13Bの貫通孔131と、温度センサ固定スペース37と、空調ダクト61の連通孔61aとによって、構成されている。そして、温度測定用流路142は、空調ダクト61の送風流路61bに連通している。
【0057】
次に、空調装置44から客室2までの空調エアの流れについて簡単に説明する。空調装置44は、床下送気ダクト34、床中送気ダクト33、分岐ダクト32を介して、空調ダクト61に空調エアを送る。
【0058】
空調ダクト61に送られた空調エアは、送風流路61bを通り、吹出口61cから客室2へ吹き出される(矢印A2)。ここで、空調エアは、空調ダクト61の絞り部61dを通る際、流路面積が絞られているため、空調エアの流速が速くなる。すると、ベルヌーイの定理により、絞り部61dにおいて圧力が低下する。絞り部61dは、温度測定用流路142に連通しているため、絞り部61dにおいて圧力が低下すると、温度測定用流路142に客室2の空気が誘引され、誘引された空気によって、温度センサ35は客室2の温度を計測することができるのである。なお、上記の絞り部61dは、温度測定用流路142が送風流路61bに連通している箇所から吹出口61cまで流路面積を絞っているが、温度測定用流路142が送風流路61bに連通している箇所のみの流路面積を絞り、温度測定用流路142が送風流路61bに連通している箇所から吹出口61cまで流路面積を漸増させることとしても良い。
【0059】
以上説明したように、第2の実施形態の客室温度測定装置および鉄道車両によれば、
(4)(1)に記載の客室温度測定装置において、温度測定用流路142は、客室2と送風流路61bとを連通していること、送風流路61bは、温度測定用流路142が連通している箇所において、流路面積が絞られていること、を特徴とする。
【0060】
(4)に記載の客室温度測定装置によれば、客室2の温度を正しく測定することができる。送風流路61bは、温度測定用流路142が連通している箇所において、流路面積が絞られている。流路面積が絞られている箇所では、送風流路61bを流れる空調エアの流速が速くなり、圧力が低下する(ベルヌーイの定理)。流路面積が絞られている箇所で圧力が低下することで、流路面積が絞られている箇所で連通している温度測定用流路142に客室2の空気が誘引される。このため、温度測定用流路142上の温度センサ35により、客室2の温度を正しく測定することが可能となる。
【0061】
(7)(4)に記載の客室温度測定装置を備えること、を特徴とする鉄道車両によれば、客室2の温度を正しく測定することができるとともに、客室2内の意匠性の向上を図ることができる。
【0062】
(第3の実施形態)
次に、本発明に係る客室温度測定装置および鉄道車両の第3の実施形態について、図面を参照しながら、第1の実施形態と異なる点のみ説明する。
図8は、第3の実施形態に係る客室温度測定装置を表す図であり、第1の実施形態の
図3に対応する図である。
【0063】
第2内装パネル13Bと、側構体112の間には、分岐ダクト32に接続される空調ダクト31が配設されている。空調ダクト31の構成は、第1の実施形態と同様である。空調ダクト31の送風流路31b内には、
図8に示すように、送風流路31bと平行な方向に長手方向を有するように、角筒部材71が取り付けられている。
【0064】
角筒部材71は、空調エアの流れに直交する方向の断面が略正方形状に形成されている。また、中空状に形成されており、空調ダクト31の吹出口31cの側の端部に、吹出口31cと同じ方向に開口する流出口71aを有し、他方の端部は閉塞されている。角筒部材71は、このような形状を有することにより、送風流路31b内に、送風流路31bとは独立した流路である通気用流路71bを形成している。さらに、また、角筒部材71は、通気用流路71bと角筒部材71の送風流路31bの内壁に密着している面を貫通する連通孔71cが設けられている。
【0065】
角筒部材71は、吹出口31cの長手方向の中央部において、流出口71aが、空調ダクト31の吹出口31cと、客室2の上下方向において略同一の高さとなるように、また、連通孔71cが、空調ダクト31の連通孔31aと同一位置となるように、空調ダクト31の送風流路31b内に、不図示のリベット等により結合されている。連通孔71cが、空調ダクト31の連通孔31aと同一位置となることで、通気用流路71bが、連通孔71cおよび連通孔31aを介して、空調ダクト31の外部に連通している。
【0066】
空調ダクト31と第2内装パネル13Bとの間の間隙には、温度センサ固定スペース37が設けられている。温度センサ固定スペース37の構成は、第1の実施形態と同様である。第2内装パネル13Bの貫通孔131(吸入口の一例)と、温度センサ固定スペース37と、連通孔31aと、連通孔71cと、通気用流路71bとによって、客室2から、送風流路31bの内部を通り、吹出口31cまで延伸する温度測定用流路242が構成される。
【0067】
次に、空調装置44から客室2までの空調エアの流れについて簡単に説明する。空調装置44は、床下送気ダクト34、床中送気ダクト33、分岐ダクト32を介して、空調ダクト31に空調エアを送る。
【0068】
空調ダクト31に送られた空調エアは、送風流路31bを通り、吹出口31cから客室2へ吹き出される(矢印A3)。ここで、空調エアが、吹出口31cから吹き出される際、角筒部材71の流出口71a周辺の空気の流速が速くなるため、流出口71a周辺において負圧が発生する。これにより、客室2の空気が、客室2に開口している第2内装パネル13Bの貫通孔131から温度測定用流路242に誘引され、流出口71aから流出する。このため、温度測定用流路242上の温度センサ35により、客室2の温度を正しく測定することが可能となる。
【0069】
なお、角筒部材71の流出口71aを、空調ダクト31の吹出口31cから空調エアが吹き出される方向に、わずかに突出させると、より効果的に流出口71a周辺に負圧を発生させることができ、より確実に客室2の空気を温度測定用流路242に誘引することができる。
【0070】
次に、第3の実施形態の変形例について、
図9乃至
図11を用いて説明する。
図9は、第3の実施形態に係る客室温度測定装置の変形例を表す図であり、第1の実施形態に係る
図2に対応する図である。
図10は、
図9のBB断面図である。
図11は、
図9のCC断面図である。
【0071】
空調ダクト81は、客室2の上下方向に長手方向を有するとともに、上端部、下端部ともに開口された角筒状に形成されている。下端部側の開口は、分岐ダクト32を接続するための接続口81c(
図9参照)である。また、上端部側の開口は、空調エアを吹き出すための吹出口81a(
図11参照)である。そして、接続口81cから吹出口81aまでは、送風流路81bにより連通されており、接続口81cから流入される空調エアが送風流路81bを流れ、吹出口81aから吹き出されるようになっている(矢印A4)。
【0072】
第3内装パネル13Cの客室2の反対側には、箱状の断熱部材82が固定されている。そして、断熱部材82は、その内部に、温度センサ35を配設するための温度センサ固定スペース137を形成している。
【0073】
さらに、断熱部材82には、管状に形成された通気用流路83が、温度センサ固定スペース137に連通した状態で結合されている。該通気用流路83は、断熱部材82から、客室2の軌道方向に平行に、空調ダクト81に向かって延伸され、空調ダクト81の外表面から空調ダクト81の送風流路81bに挿入されている。そして、空調ダクト81の軌道方向中央部付近で、吹出口81a側に折れ曲がり、吹出口81aまで延伸されている。吹出口81aまで延伸された通気用流路83は、吹出口81aと同一方向に開口する流出口83aを有する。なお、流出口83aは、吹出口81aからわずかに突出している。
【0074】
そして、第3内装パネル13Cの貫通孔133(吸入口の一例)と、温度センサ固定スペース137と、通気用流路83とによって、客室2から、送風流路81bの内部を通り、吹出口81aまで延伸する温度測定用流路342が構成される。なお、貫通孔133には、保護部材38が取り付けられており、異物が温度測定用流路342に入らないようにされている。
【0075】
次に、空調装置44から客室2までの空調エアの流れについて簡単に説明する。空調装置44は、床下送気ダクト34、床中送気ダクト33、分岐ダクト32を介して、空調ダクト31に空調エアを送る。
【0076】
空調ダクト31に送られた空調エアは、送風流路81bを通り、吹出口81aから客室2へ吹き出される(矢印A4)。ここで、空調エアが、吹出口81aから吹き出される際、通気用流路83の流出口83a周辺の空気の流速が速くなるため、流出口83a周辺において負圧が発生する。これにより、客室2の空気が、客室2に開口している第2内装パネル13Bの貫通孔133から温度測定用流路342に誘引され、流出口83aから流出する。このため、温度測定用流路342上の温度センサ35により、客室2の温度を正しく測定することが可能となる。
【0077】
以上説明したように、第3の実施形態の客室温度測定装置および鉄道車両によれば、
(5)(1)に記載の客室温度測定装置において、温度測定用流路242,342は、客室2から、送風流路31b,81bの内部を通り、吹出口31c,81aまで延伸するとともに、吹出口31c,81aの側の端部に、吹出口31c,81aと同じ方向に開口する流出口71a,83aを備え、客室2の側の端部に、客室2に開口する吸入口(例えば貫通孔131,133)を備えること、を特徴とする。
【0078】
(5)に記載の客室温度測定装置によれば、客室2の温度を正しく測定することができる。温度測定用流路242,342は、送風流路31b,81bの内部を通り、吹出口31c,81aまで延伸し、吹出口31c,81aの側の端部に、吹出口31c,81aと同じ方向に開口する流出口71a,83aを備えている。このため、吹出口31c,81aから空調エアが吹き出されると、流出口71a,83a周辺の流速が速くなるため、流出口71a,83a周辺において負圧が発生する。流出口71a,83a周辺において負圧が発生すると、客室2に開口する吸入口(例えば貫通孔131,133)から温度測定用流路242,342に、客室2の空気が誘引される。このため、温度測定用流路242,342上の温度センサ35により、客室2の温度を正しく測定することが可能となる。
【0079】
(6)(5)に記載の客室温度測定装置において、流出口71a,83aは、吹出口31c,81aから、空調エアが吹き出される方向に、わずかに突出していること、を特徴とする。
【0080】
(6)に記載の客室温度測定装置によれば、より確実に流出口71a,83a周辺において負圧を発生させることができるため、温度測定用流路242,342に、客室2の空気がより確実に誘引され、客室2の温度を正しく測定することができる。
【0081】
(7)(5)または(6)に記載の客室温度測定装置を備えること、を特徴とする鉄道車両によれば、客室2の温度を正しく測定することができるとともに、客室2内の意匠性の向上を図ることができる。
【0082】
なお、上記の実施形態は単なる例示にすぎず、本発明を何ら限定するものではない。したがって本発明は当然に、その要旨を逸脱しない範囲内で様々な改良、変形が可能である。例えば、副流路18の空調エアの流れに直交する方向の断面が略正方形状に形成されるものとしているが、断面形状はこれに限定されるものでない。
【符号の説明】
【0083】
1 鉄道車両
2 客室
13 内装パネル
31 空調ダクト
31b 送風流路
31c 吹出口
35 温度センサ
42 温度測定用流路