(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】スイングバルブ
(51)【国際特許分類】
F16K 15/03 20060101AFI20240510BHJP
F02B 37/18 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F16K15/03 F
F02B37/18 A
(21)【出願番号】P 2020196786
(22)【出願日】2020-11-27
【審査請求日】2023-02-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000291
【氏名又は名称】弁理士法人コスモス国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 弘樹
【審査官】加藤 昌人
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-72351(JP,A)
【文献】国際公開第2018/122975(WO,A1)
【文献】特開2018-132003(JP,A)
【文献】特開昭61-207829(JP,A)
【文献】特開2014-206112(JP,A)
【文献】実開昭51-29800(JP,U)
【文献】実開昭56-93572(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 15/00-15/20
F02B 33/00-41/10
F16K 1/00- 1/54
F16K 31/44-31/62
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流路を有するハウジングと、
前記流路に設けられた弁座と、
前記ハウジングに回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸を回転駆動させるためのアクチュエータと、
前記回転軸に一端部が支持され、前記回転軸の回転に伴いスイングするスイングアームと、
前記スイングアームのスイング端部に配置され、前記スイングアームと一体にスイングする弁体と、
前記弁体を前記スイングアームに連結するための連結部と
を備えたスイングバルブにおいて、
前記スイングアーム又は前記連結部には、前記弁体が前記弁座から離間して開弁するときに前記連結部又は前記スイングアームに当接する当接部が設けられ、
前記連結部は、前記弁体の軸線が伸びる方向と平行な中心軸を有し、前記当接部は、前記中心軸と前記回転軸との間に配置され
、
前記連結部は、前記中心軸が伸びる方向における一端側にて前記弁体が連結され、前記中心軸が伸びる方向における他端側には、前記弁体との間で前記スイングアームを挟む挟み部が設けられ、
前記当接部は、前記スイングアーム上にて前記挟み部に対向して突出する突出部である
ことを特徴とするスイングバルブ。
【請求項2】
請求項
1に記載のスイングバルブにおいて、
前記弁体は弁中心を有し、
前記連結部は、前記弁中心と前記回転軸との間に配置される
ことを特徴とするスイングバルブ。
【請求項3】
流路を有するハウジングと、
前記流路に設けられた弁座と、
前記ハウジングに回転可能に支持された回転軸と、
前記回転軸を回転駆動させるためのアクチュエータと、
前記回転軸に一端部が支持され、前記回転軸の回転に伴いスイングするスイングアームと、
前記スイングアームのスイング端部に配置され、前記スイングアームと一体にスイングする弁体と、
前記弁体を前記スイングアームに連結するための連結部と
を備えたスイングバルブにおいて、
前記スイングアーム又は前記連結部には、前記弁体が前記弁座から離間して開弁するときに前記連結部又は前記スイングアームに当接する当接部が設けられ、
前記連結部は、前記弁体の軸線が伸びる方向と平行な中心軸を有し、前記当接部は、前記中心軸と前記回転軸との間に配置され、
前記弁体は弁中心を有し、
前記連結部
の全部は、前記弁中心と前記回転軸との間に配置される
ことを特徴とするスイングバルブ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この明細書に開示される技術は、流体が流れる流路を開閉するために使用されるスイングバルブに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の技術として、例えば、下記の特許文献1に記載されるアーム付スイング型開閉弁(スイングバルブ)が知られている。この技術が適用されるエンジンシステムには、高圧段タービンをバイパスするために並列に設けられた第1バイパス通路及び第2バイパス通路と、第1バイパス通路を開閉する小径バルブと、第2バイパス通路を開閉し、小径バルブよりも径の大きい大径バルブとを備えた2段過給装置が設けられる。
【0003】
ここで、小径バルブは、スイングバルブにより構成される。このスイングバルブは、アクチュエータのロッドが伸縮することで回動する回転軸を含む。回転軸には、スイングアームが揺動可能に設けられ、スイングアームの先端には弁体が設けられる。このアクチュエータにより回転軸が回動し、スイングアームを揺動させることで、弁体が弁座に対し着座(閉弁)又は離間(開弁)し、流路における排気の流れが遮断又は許容される。このスイングアームでは、開弁時の弁体の最大開度を規制するために、スイングアームの先端が当接するストッパが設けられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、特許文献1に記載のスイングバルブでは、開弁時にスイングアームの先端がストッパに当接するので、弁体が開弁するたびに、スイングアームとストッパとの衝突が繰り返される。そのため、スイングアームが衝突疲労を起こすおそれがあり、スイングアームの耐久性、延いてはスイングバルブの耐久性が低下するおそれがあった。
【0006】
この開示技術は、上記事情に鑑みてなされたものであって、その目的は、スイングアームがストッパに繰り返し衝突してもスイングアームの衝突疲労を軽減し、スイングアームの耐久性を向上させることを可能としたスイングバルブを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、請求項1に記載の技術は、流路を有するハウジングと、流路に設けられた弁座と、ハウジングに回転可能に支持された回転軸と、回転軸を回転駆動させるためのアクチュエータと、回転軸に一端部が支持され、回転軸の回転に伴いスイングするスイングアームと、スイングアームのスイング端部に配置され、スイングアームと一体にスイングする弁体と、弁体をスイングアームに連結するための連結部とを備えたスイングバルブにおいて、スイングアーム又は連結部には、弁体が弁座から離間して開弁するときに連結部又はスイングアームに当接する当接部が設けられ、連結部は、弁体の軸線が伸びる方向と平行な中心軸を有し、当接部は、中心軸と回転軸との間に配置され、連結部は、中心軸が伸びる方向における一端側にて弁体が連結され、中心軸が伸びる方向における他端側には、弁体との間でスイングアームを挟む挟み部が設けられ、当接部は、スイングアーム上にて挟み部に対向して突出する突出部であることを趣旨とする。
【0008】
上記技術の構成によれば、アクチュエータの動作により弁体が弁座から離間して開弁するときには、連結部がストッパに衝突して弁体の最大開度が規制される。ここで、連結部材に当接する突出部がスイングアームに設けられ、その突出部が連結部の中心軸と回転軸との間、すなわち連結部の中心軸よりも回転軸に近い側に配置される。そして、閉弁状態の弁体が開弁するときは、突出部が連結部に当接し、その当接点を作用点としてスイングアームに荷重が作用する。このとき、その作用点から回転軸までの距離は、連結部の中心軸から回転軸までの距離よりも短くなるので、流路における流体の圧力に抗してスイングアームと弁体をスイングさせるために必要なトルクが減少する。従って、開弁時にスイングアームに作用する負荷が軽減され、駆動開始後、弁体が弁座から離間するまでの時間が短縮され、開弁時に弁体の前後差圧が早期になくなり、スイングによる弁体の開弁速度が減少し、連結部がストッパに衝突するときの荷重が減少する。
【0009】
上記目的を達成するために、請求項2に記載の技術は、請求項1に記載の技術において、弁体は弁中心を有し、連結部は、弁中心と回転軸との間に配置されることを趣旨とする。
【0010】
上記技術の構成によれば、請求項1に記載の技術の作用に加え、スイングアームに対する連結部の中心軸が、弁中心よりも回転軸に近い側に配置され、連結部に当接する突出部が、更に回転軸の側に近づけられる。
【0011】
上記目的を達成するために、請求項3に記載の技術は、流路を有するハウジングと、 前記流路に設けられた弁座と、前記ハウジングに回転可能に支持された回転軸と、前記回転軸を回転駆動させるためのアクチュエータと、前記回転軸に一端部が支持され、前記回転軸の回転に伴いスイングするスイングアームと、前記スイングアームのスイング端部に配置され、前記スイングアームと一体にスイングする弁体と、前記弁体を前記スイングアームに連結するための連結部とを備えたスイングバルブにおいて、前記スイングアーム又は前記連結部には、前記弁体が前記弁座から離間して開弁するときに前記連結部又は前記スイングアームに当接する当接部が設けられ、前記連結部は、前記弁体の軸線が伸びる方向と平行な中心軸を有し、前記当接部は、前記中心軸と前記回転軸との間に配置され、前記弁体は弁中心を有し、前記連結部の全部は、前記弁中心と前記回転軸との間に配置されることを趣旨とする。
【0012】
上記技術の構成によれば、アクチュエータの動作により弁体が弁座から離間して開弁するときには、連結部がストッパに衝突して弁体の最大開度が規制される。ここで、連結部材又はスイングアームに当接する当接部がスイングアーム又は連結部に設けられ、その当接部が連結部の中心軸と回転軸との間、すなわち連結部の中心軸よりも回転軸に近い側に配置される。そして、閉弁状態の弁体が開弁するときは、当接部が連結部又はスイングアームに当接し、その当接点を作用点としてスイングアームに荷重が作用する。このとき、その作用点から回転軸までの距離は、連結部の中心軸から回転軸までの距離よりも短くなるので、流路における流体の圧力に抗してスイングアームと弁体をスイングさせるために必要なトルクが減少する。従って、開弁時にスイングアームに作用する負荷が軽減され、駆動開始後、弁体が弁座から離間するまでの時間が短縮され、開弁時に弁体の前後差圧が早期になくなり、スイングによる弁体の開弁速度が減少し、連結部がストッパに衝突するときの荷重が減少する。スイングアームに対する連結部の中心軸が、弁中心よりも回転軸に近い側に配置され、スイングアーム又は連結部に当接する当接部が、更に回転軸の側に近づけられる。
【発明の効果】
【0013】
請求項1に記載の技術によれば、スイングアームがストッパに繰り返し衝突してもスイングアームの衝突疲労を軽減することができ、スイングアームの耐久性、延いてはスイングバルブの耐久性を向上させることができる。
【0014】
請求項2に記載の技術によれば、請求項1に記載の技術の効果に加え、弁体を開弁させるときに連結部とスイングアーム(突出部)との当接部(作用点)に作用する荷重を更に低減することができる。
【0015】
請求項3に記載の技術によれば、スイングアームがストッパに繰り返し衝突してもスイングアームの衝突疲労を軽減することができ、スイングアームの耐久性、延いてはスイングバルブの耐久性を向上させることができる。また、弁体を開弁させるときに連結部とスイングアームとの当接部(作用点)に作用する荷重を更に低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】第1実施形態に係り、スイングバルブの閉弁状態を示す斜視図。
【
図2】第1実施形態に係り、スイングバルブの開弁状態を示す斜視図。
【
図3】第1実施形態に係り、閉弁状態のスイングバルブを示す正面図。
【
図4】第1実施形態に係り、閉弁状態のスイングバルブを示す背面図。
【
図5】第1実施形態に係り、閉弁状態のスイングバルブを示す右側面図。
【
図6】第1実施形態に係り、閉弁状態のスイングバルブを示す
図3のA-A線断面図。
【
図7】第1実施形態に係り、閉弁状態のスイングバルブを示す
図3のB-B線断面図。
【
図8】第1実施形態に係り、開弁状態のスイングバルブを示す
図6に準ずる断面図。
【
図9】第1実施形態に係り、開弁状態のスイングバルブを示す
図7に準ずる断面図。
【
図10】第1実施形態に係り、
図6に1点鎖線四角で囲った部分を示す拡大断面図。
【
図11】第2実施形態に係り、スイングバルブの特徴部分を示す
図10に準ずる拡大断面図。
【
図12】第3実施形態に係り、スイングバルブの特徴部分を示す
図10に準ずる拡大断面図。
【
図13】第4実施形態に係り、スイングバルブの特徴部分を示す
図10に準ずる拡大断面図。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、スイングバルブを具体化したいくつかの実施形態につき図面を参照して詳細に説明する。
【0018】
<第1実施形態>
先ず、第1実施形態について説明する。この実施形態では、一例として、スイングバルブは、エンジンの過給機に設けられ、高密閉で過給圧を遮断するエアコントロールバルブとして使用される場合を想定する。
【0019】
図1に、スイングバルブ1の閉弁状態を斜視図により示す。
図2に、スイングバルブ1の開弁状態を斜視図により示す。
図3に、閉弁状態のスイングバルブ1を正面図により示す。
図4に、閉弁状態のスイングバルブ1を背面図により示す。
図5に、閉弁状態のスイングバルブ1を右側面図により示す。
図6に、閉弁状態のスイングバルブ1を、
図3のA-A線断面図により示す。
図7に、閉弁状態のスイングバルブ1を、
図3のB-B線断面図により示す。
図8に、開弁状態のスイングバルブ1を、
図6に準ずる断面図により示す。
図9に、開弁状態のスイングバルブ1を、
図7に準ずる断面図により示す。
【0020】
[スイングバルブの構成の概略について]
図1~
図9に示すように、スイングバルブ1は、流路2を有するハウジング3と、流路2に設けられた弁座4と、ハウジング3に回転可能に支持された回転軸5と、回転軸5を回転駆動させるためのアクチュエータ6と、回転軸5に一端部(基端部)が支持され、回転軸5の回転に伴いスイングするスイングアーム7と、スイングアーム7の先端部であるスイング端部7aに配置され、スイングアーム7と一体にスイングする弁体8と、弁体8をスイングアーム7に連結するための連結ピン9とを備える。連結ピン9は、この開示技術の連結部の一例に相当する。
【0021】
ハウジング3は、例えば、アルミ等の金属により略四角枠形状に形成される。ハウジング3の流路2の周囲には、後述する配管16を接続するための複数のボルト孔3aが形成される。弁座4は、流路2の中にてハウジング3と一体に円筒状に形成される。回転軸5は、その両端部がハウジング3にて軸受(図示略)を介して回転可能に支持される。
【0022】
[弁体、スイングアーム及び連結ピンについて]
図10に、
図6に1点鎖線四角S1で囲った部分を拡大断面図により示す。弁体8は、金属板材により円形に形成され、
図6、
図8に断面で示すように凹みを有する略皿形に形成される。スイングアーム7は、金属板材により略四角形状に形成され、基端部がネジ10を介して回転軸5に固定され、スイング端部7aには、連結ピン9を介して弁体8が連結される。連結ピン9は、その中心軸L1(
図10参照)が伸びる方向における一端側にて弁体8が連結され、その中心軸L1が伸びる方向における他端側には、フランジ9aが形成される。連結ピン9の一端側は、弁体8に対してかしめられる。また、連結ピン9のフランジ9aが、弁体8との間でスイングアーム7を挟むようになっている。フランジ9aは、この開示技術における「挟み部」の一例に相当する。
【0023】
この実施形態で、スイングアーム7には、連結ピン9に当接可能な当接部11が設けられる。この実施形態で、当接部11は、スイングアーム7上にて連結ピン9のフランジ9aに対向して突出する突出部7bにより構成される。また、連結ピン9の中心軸L1は、弁体8の軸線L2(
図10参照)が伸びる方向と平行をなし(この実施形態では同軸をなす)、突出部7bは、その中心軸L1と回転軸5との間に配置される。
図6、
図10に示すように、この実施形態では、弁体8の閉弁状態において、連結ピン9のフランジ9aとスイングアーム7との間に隙間G1、及び連結ピン9のフランジ9aと突出部7bとの間に隙間G2が形成されるようになっている。
【0024】
[アクチュエータについて]
アクチュエータ6は、ブラケット21を介してハウジング3にボルト22により固定される。この実施形態で、アクチュエータ6は、いわゆるダイアフラム式アクチュエータにより構成される。すなわち、
図7、
図9に示すように、アクチュエータ6は、金属製のケーシング23と、そのケーシング23の中を、負圧が導入される負圧室24と、大気が作用する大気室25とに区画する可撓性材よりなるダイアフラム26と、ダイアフラム26の中央を表裏両面から挟む二枚の板材27,28と、両板材27,28とダイアフラム26に対し一端部(基端部)が固定されたロッド29と、負圧室24にてケーシング23と一方の板材27との間に介在されたスプリング30とを備える。ロッド29の他端部(先端部)は、リンク31を介して回転軸5の一端に駆動連結される。ケーシング23の負圧室24に対応する頂部には、負圧を供給するパイプに接続される負圧ポート23aが突出して形成される。ケーシング23の大気室25に対応する底部には、大気に連通する大気孔23bが形成される。
【0025】
従って、アクチュエータ6の負圧室24に負圧が供給されないときは、
図7に示すように、スプリング30の付勢力によりダイアフラム26が板材27,28と共に押圧される。これにより、ロッド29の大半がケーシング23の外へ突出し、回転軸5がリンク31を介して一方向へ回動付勢され、
図1、
図3~
図7に示すように、弁体8が弁座4に着座する閉弁状態となる。この実施形態では、
図6、
図8に示すように、スイングバルブ1のハウジング3に配管16が斜めに接続される。その配管16の中には、通路内にて突出し、連結ピン9に当接可能なストッパ17が設けられる。このストッパ17は、スイングアーム7の回動を、すなわち弁体8の最大開度を規制するようになっている。
【0026】
一方、アクチュエータ6の負圧室24に負圧が供給されることにより、
図9に示すように、ダイアフラム26が、スプリング30の付勢力に抗して、板材27,28と共に吸引され、変形する。これにより、ロッド29のほぼ半分がケーシング23の中に没入し、回転軸5がリンク31を介して反対方向へ回動付勢され、
図8、
図9に示すように、弁体8が弁座4から離間した開弁状態となる。このとき、連結ピン9の頭頂がストッパ17に当接し、開弁時のスイングアーム7の回動が規制され、弁体8の最大開度が規制される。
【0027】
[スイングバルブの作用及び効果]
以上説明したこの実施形態のスイングバルブ1の構成によれば、アクチュエータ6により弁体8が弁座4から離間して開弁するときには、連結ピン9(連結部)がストッパ17に衝突して弁体8の最大開度が規制される。ここで、連結ピン9のフランジ9aに当接する突出部7b(当接部11)がスイングアーム7に設けられ、その突出部7bが連結ピン9の中心軸L1と回転軸5との間、すなわち連結ピン9の中心軸L1よりも回転軸5に近い側に配置される。そして、閉弁状態の弁体8が開弁するときは、突出部7bが連結ピン9のフランジ9aに当接し、その当接点を作用点としてスイングアーム7に荷重が作用する。このとき、その作用点から回転軸5までの距離は、連結ピン9の中心軸L1から回転軸5までの距離よりも短くなるので、流路2における吸気(流体)の圧力に抗してスイングアーム7と弁体8をスイングさせるために必要なトルクが減少する。従って、開弁時にスイングアーム7に作用する負荷が軽減され、駆動開始後、弁体8が弁座4から離間するまでの時間が短縮され、開弁時に弁体8の前後差圧が早期になくなり、スイングによる弁体8の開弁速度が減少し、連結ピン9がストッパ17に衝突するときの荷重が減少する。この結果、スイングアーム7がストッパ17に繰り返し衝突してもスイングアーム7の衝突疲労を軽減することができ、スイングアーム7の耐久性、延いてはスイングバルブ1の耐久性を向上させることができる。
【0028】
この実施形態では、スイングバルブ1が、エンジンの過給機に設けられ、高密閉で過給圧を遮断するエアコントロールバルブとして使用される。この場合、閉弁状態での弁体8の前後差圧は比較的大きくなる。このような圧力環境下で、従来のスイングバルブの弁体を開弁させた場合、スイングによる開弁速度は相対的に大きくなるので、開弁完了時にスイングアームがストッパに衝突する荷重も相対的に大きくなり、スイングアームに過大な負荷がかかることになる。これに対し、この実施形態のスイングバルブ1では、スイングによる弁体8の開弁速度が減少するので、連結ピン9のストッパ17への衝突時にスイングアーム7にかかる負荷が軽減される。
【0029】
この実施形態のスイングバルブ1は、一例として、従来のスイングバルブに比べ、開弁開始時間が30%早期開弁となり、開弁速度が60%減少し、ストッパへの衝突荷重が40%減少した。
【0030】
<第2実施形態>
次に、第2実施形態について説明する。なお、以下の説明において、第1実施形態と同等の構成要素については同一の符号を付して説明を省略し、異なった点を中心に説明する。
【0031】
[弁体、スイングアーム及び連結ピンについて]
図11に、この実施形態のスイングバルブ1の特徴部分を
図10に準ずる拡大断面図により示す。
図11に示すように、この実施形態では、当接部11が、スイングアーム7ではなく連結ピン9に設けられる点で第1実施形態と構成が異なる。すなわち、この実施形態で、当接部11は、連結ピン9のフランジ9aにてスイングアーム7に対向して突出する突出部9bにより構成される。
【0032】
従って、この実施形態のスイングバルブ1の構成によれば、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。
【0033】
<第3実施形態>
次に、第3実施形態について説明する。
【0034】
[弁体、スイングアーム及び連結ピンについて]
図12に、この実施形態のスイングバルブ1の特徴部分を
図10に準ずる拡大断面図により示す。
図12に示すように、この実施形態では、連結部として連結ピン9の代わりに連結材19が使用される点で前記各実施形態と構成が異なる。すなわち、この実施形態で、連結材19は、断面L形をなし、中心軸L3を有する基部19aと、基部19aに対し直交する方向であって回転軸5へ向けて突出する庇部19bとから構成される。基部19aは、スイングアーム7を貫通して弁体8に固定される。連結材19は、その基部19aが、弁体8の弁中心P1を含む軸線L2と回転軸5との間に、すなわち連結材19は、弁体8の弁中心P1を含む軸線L2よりも回転軸5に近い側に配置される。また、スイングアーム7は、庇部19bと弁体8との間に挟まれ、両者19b,8に接触する。そして、庇部19bの内面が、スイングアーム7の表面に当接する当接部11となっている。
【0035】
従って、この実施形態のスイングバルブ1の構成によれば、第1実施形態と同等の作用及び効果を得ることができる。加えて、この実施形態では、スイングアーム7に対する連結材19の中心軸L3が、弁体8の弁中心P1を含む軸線L2よりも回転軸5に近い側に配置され、スイングアーム7に当接する当接部11が回転軸5の側に更に近づけられる。このため、弁体8を開弁させるときに連結材19の庇部19bとスイングアーム7との当接部(作用点)に作用する荷重を更に低減することができる。
【0036】
<第4実施形態>
次に、第4実施形態について説明する。
【0037】
[弁体、スイングアーム及び連結ピンについて]
図13に、この実施形態のスイングバルブ1の特徴部分を
図10に準ずる拡大断面図により示す。
図13に示すように、この実施形態では、スイングアーム7が、第3実施形態のそれよりも長手方向(
図13の上下方向)に短く形成され、そのスイング端部7aが、連結材19の基部19aと庇部19bと弁体8との間に挟み込まれる点で前記第3実施形態と構成が異なる。
【0038】
従って、この実施形態のスイングバルブ1の構成によれば、第3実施形態と同等の作用及び効果が得られる。加えて、この実施形態では、スイングアーム7が、第3実施形態のそれよりも短く形成されるので、スイングアーム7を小型化することができると共に、スイングアーム7の剛性を向上させることができる。
【0039】
なお、この開示技術は前記各実施形態に限定されるものではなく、開示技術の趣旨を逸脱することのない範囲で構成の一部を適宜変更して実施することもできる。
【0040】
(1)前記各実施形態では、アクチュエータ6をダイアフラム式アクチュエータにより構成したが、アクチュエータをDCモータやソレノイド等よりなる電動式アクチュエータにより構成することもできる。
【0041】
(2)前記各実施形態では、スイングバルブ1を、エンジンの過給機に設けられ、高密閉で過給圧を遮断するエアコントロールバルブとして使用される場合を想定したが、スイングバルブを過給機以外の装置において流路を開閉するために使用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0042】
この開示技術は、ガソリンエンジンやディーゼルエンジン等において流体の流路を開閉する開閉弁として利用することができる。
【符号の説明】
【0043】
1 スイングバルブ
2 流路
3 ハウジング
4 弁座
5 回転軸
6 アクチュエータ
7 スイングアーム
7a スイング端部
7b 突出部
8 弁体
9 連結ピン(連結部)
9a フランジ(挟み部)
9b 突出部
11 当接部
19 連結材(連結部)
L1 連結ピンの中心軸
L2 弁体の軸線
L3 連結材の中心軸
P1 弁中心