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  • 特許-被覆材 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】被覆材
(51)【国際特許分類】
   C09D 201/00 20060101AFI20240510BHJP
   B01J 35/39 20240101ALI20240510BHJP
   B01J 35/60 20240101ALI20240510BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240510BHJP
【FI】
C09D201/00
B01J35/39
B01J35/60 F
C09D7/61
【請求項の数】 38
(21)【出願番号】P 2018545701
(86)(22)【出願日】2016-11-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2019-01-17
(86)【国際出願番号】 GB2016053591
(87)【国際公開番号】W WO2017085493
(87)【国際公開日】2017-05-26
【審査請求日】2019-11-14
【審判番号】
【審判請求日】2021-12-03
(31)【優先権主張番号】1520463.9
(32)【優先日】2015-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】GB
(73)【特許権者】
【識別番号】518176622
【氏名又は名称】ベナトール マテリアルズ ユーケー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ロブ ジョン
(72)【発明者】
【氏名】ワン アン サラ
(72)【発明者】
【氏名】ローリー カール
(72)【発明者】
【氏名】ウォーターズ ダレン ジェイ.
(72)【発明者】
【氏名】エドワード ジョン エル.
【合議体】
【審判長】門前 浩一
【審判官】塩見 篤史
【審判官】瀬下 浩一
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第101418151(CN,A)
【文献】特開平11-226422(JP,A)
【文献】特開2001-269573(JP,A)
【文献】特開2004-67500(JP,A)
【文献】特開2010-150434(JP,A)
【文献】特開平9-249871(JP,A)
【文献】特表2016-536266(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C09D1/00-201/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境中の汚染ガスの濃度を低減させることが可能な被覆材の形成における使用に好適なコーティング組成物であって、当該コーティング組成物は、高分子物質とメソ多孔質チタニア粒子との組合せを有し、
前記粒子は、球状、円環形状、又は楕円体であって、連続する弧を描く凸状の外表面及び2μm以上50μm以下の粒径と、30m/g~350m/gのBET比表面積と、5nm以上50nm以下の最頻細孔径と、水銀圧入式ポロシメーターを用いて測定される0.8ml/g以下の全細孔容積と、水銀圧入式ポロシメーターを用いて測定される直径10ミクロン以下の細孔に対応する細孔容積が、水銀圧入式ポロシメーターを用いて測定される全細孔容積のうちの85%以上であるような細孔寸法の分布と、を有し、
前記コーティング組成物は、0.01%体積/体積~10%体積/体積の前記粒子を有し、5%体積/体積~99.99%体積/体積の高分子物質を有する、コーティング組成物。
【請求項2】
請求項1に記載のコーティング組成物であって、前記メソ多孔質チタニア粒子は、0.01重量%~5重量%のシリカ微粒子を有する、コーティング組成物。
【請求項3】
請求項1又は請求項2に記載の前記コーティング組成物からなる被覆材であって、前記メソ多孔質チタニア粒子は前記被覆材中に分散されるか、或いは前記被覆材の外面において層として設けられるか、のいずれかである、被覆材。
【請求項4】
請求項3に記載の被覆材であって、当該被覆材は、使用中に汚染ガスを含む環境に対して曝露される表面に施される、被覆材。
【請求項5】
請求項4に記載の被覆材であって、当該被覆材は、使用中に紫外線に対して曝露される表面に施される、被覆材。
【請求項6】
被覆材を表面に施すための工程であって、前記被覆材は環境中の汚染ガスの濃度の低減における使用に好適であり、当該工程は、
a)高分子物質と、任意で溶媒又は添加剤或いはキャリア等の1つ又は複数の追加のコーティング組成物成分とを有するコーティングベースを提供することと、
b)前記コーティングベースを表面に塗布して層を形成することと、
c)前記層にメソ多孔質チタニア粒子を塗布することで、前記コーティングベースと前記粒子とを有する被覆材を形成することと、を有し、
前記粒子は、球状、円環形状、又は楕円体であって、連続する弧を描く凸状の外表面及び2μm以上50μm以下の粒径と、30m/g~350m/gのBET比表面積と、5nm以上50nm以下の最頻細孔径と、水銀圧入式ポロシメーターを用いて測定される0.8ml/g以下の全細孔容積と、水銀圧入式ポロシメーターを用いて測定される直径10ミクロン以下の細孔に対応する細孔容積が、水銀圧入式ポロシメーターを用いて測定される全細孔容積のうちの85%以上であるような細孔寸法の分布と、を有し、
前記被覆材は、0.01%体積/体積~10%体積/体積の前記粒子を有し、5%体積/体積~99.99%体積/体積の高分子物質を有する、工程。
【請求項7】
請求項6に記載の工程であって、前記メソ多孔質チタニア粒子は前記層に対して前記粒子を散布することにより塗布される、工程。
【請求項8】
表面に被覆材を施すための工程であって、前記被覆材は環境中の汚染ガスの濃度の低減における使用に好適であり、当該工程は、
i)請求項1又は請求項2に記載のコーティング組成物を提供することと、
ii)前記コーティング組成物を表面に塗布して層を形成することと、を有する工程。
【請求項9】
請求項8に記載の工程であって、ステップi)において提供される前記コーティング組成物は、前記メソ多孔質チタニア粒子と前記高分子物質とが混合されたものである、工程。
【請求項10】
請求項8又は請求項9に記載の工程であって、ステップi)において前記コーティング組成物は、初めに高分子物質を有するコーティングベースを提供した後、前記コーティングベース中に前記メソ多孔質チタニア粒子を分散させてコーティング組成物を形成することで提供される、工程。
【請求項11】
請求項10に記載の工程であって、ステップi)において前記コーティング組成物は、初めに高分子物質と1つ又は複数の追加のコーティング組成物成分とを有するコーティングベースを提供することにより提供される、工程。
【請求項12】
請求項10又は請求項11に記載の工程であって、ステップi)において前記メソ多孔質チタニア粒子が前記コーティングベース中に分散された後、1つ又は複数の追加のコーティング組成物成分が添加される、工程。
【請求項13】
表面を有する物品であって、前記表面の少なくとも一部は請求項1又は請求項2に記載の組成物からなる被覆材で被覆される、物品。
【請求項14】
請求項13に記載の物品であって、当該物品の前記表面の少なくとも一部は請求項3に記載される被覆材で被覆される、物品。
【請求項15】
請求項13又は14に記載の物品であって、当該物品は外表面を有し、前記外表面の少なくとも一部は請求項1又は請求項2に記載の組成物からなる被覆材で被覆される、物品。
【請求項16】
請求項13から15のいずれか1項に記載の物品であって、当該物品は建築物又は建築物の一部である、物品。
【請求項17】
請求項13から16のいずれか1項に記載の物品であって、当該物品は、舗装、自動車、路面、道路トンネル、航空機、水容器、ボート及び水上船舶、標識、フェンス、デッキ、遮音壁、並びに手摺りからなる群から選択される、物品。
【請求項18】
請求項13から16のいずれか1項に記載の物品であって、当該物品は、使用中に汚染ガスと紫外線との両方に対して曝露される少なくとも1つの表面を有する物品。
【請求項19】
請求項18に記載の物品であって、前記紫外線は直射日光由来である、物品。
【請求項20】
環境から汚染ガスを除去するための方法であって、当該方法は、
-請求項13から19のいずれか1項に記載の物品を提供するステップと、
-前記被覆された表面が汚染ガスを含む環境に接触するのを許容するステップと、を有する、方法。
【請求項21】
請求項20に記載の方法であって、前記被覆された表面は、前記被覆材が日光由来の紫外線に曝露された状況において汚染ガスを含む環境に接触するのを許容される、方法。
【請求項22】
請求項20又は請求項21に記載の方法であって、前記被覆された表面は1,000時間以上の期間にわたり汚染ガスを含む環境に接触するのを許容される、方法。
【請求項23】
請求項22に記載の方法であって、前記被覆された表面は20,000時間以上の期間にわたり汚染ガスを含む環境に接触するのを許容される、方法。
【請求項24】
請求項20から23のいずれか1項に記載の方法であって、前記被覆された表面は1,000時間以上の期間にわたり日光由来の紫外線に対して曝露される、方法。
【請求項25】
請求項24に記載の方法であって、前記被覆された表面は20,000時間以上の期間にわたり日光由来の紫外線に対して曝露される、方法。
【請求項26】
請求項20から25のいずれか1項に記載の方法であって、物品を提供するステップは、請求項8から12のいずれか1項に記載の前記工程の実施を含む、方法。
【請求項27】
汚染ガスの除去のための、請求項3から5のいずれか1項に記載の前記被覆材の使用又は請求項13から19のいずれか1項に記載の前記被覆された物品の使用。
【請求項28】
請求項27に記載の使用であって、前記被覆材又は前記被覆された物品は、当該前記被覆材が日光由来の紫外線に対して曝露される状況において、汚染ガスの除去のために使用される、使用。
【請求項29】
請求項28に記載の使用であって、前記被覆材又は前記被覆された物品は、当該前記被覆材が1,000時間以上の期間にわたり紫外線に対して曝露される状況において汚染ガスの除去のために使用される、使用。
【請求項30】
請求項29に記載の使用であって、前記被覆材又は前記被覆された物品は、当該前記被覆材が20,000時間以上の期間にわたり紫外線に対して曝露される状況において汚染ガスの除去のための使用。
【請求項31】
(a)美観及び/又は機能の低下に対して耐性を有すると同時に、(b)雰囲気の質を向上させるよう作用する被覆材を提供するための、請求項3から5のいずれか1項に記載の前記被覆材の使用又は請求項13から19のいずれか1項に記載の前記被覆された物品の使用。
【請求項32】
請求項1又は2に記載のコーティング組成物であって、前記コーティング組成物は、0.1%体積/体積~5%体積/体積の前記粒子を有し、5%体積/体積~99.9%体積/体積の高分子物質を有する、コーティング組成物。
【請求項33】
請求項1、2、又は32に記載のコーティング組成物であって、前記メソ多孔質チタニア粒子の前記最頻細孔径は、5nm以上25nm以下である、コーティング組成物。
【請求項34】
請求項1、2、32及び33のいずれか1項に記載のコーティング組成物であって、前記メソ多孔質チタニア粒子は、前記全細孔容積のうちの90%以上が10ミクロン以下の直径を有する細孔に対応付けられるような細孔寸法の分布を有する、コーティング組成物。
【請求項35】
請求項1、2、及び3234のいずれか1項に記載のコーティング組成物であって、前記メソ多孔質チタニア粒子は0.5ml/g以下の全細孔容積を有する、コーティング組成物。
【請求項36】
請求項1、2、及び3235のいずれか1項に記載のコーティング組成物であって、前記メソ多孔質チタニア粒子は2μm~35μmの粒径を有する、コーティング組成物。
【請求項37】
請求項1、2、及び3236のいずれか1項に記載のコーティング組成物であって、前記メソ多孔質チタニア粒子は70m/g~250m/gのBET比表面積を有する、コーティング組成物。
【請求項38】
請求項1、2、及び3237のいずれか1項に記載のコーティング組成物であって、前記メソ多孔質チタニア粒子は球状である、コーティング組成物。
【発明の詳細な説明】
【発明の詳細な説明】
【0001】
[発明の分野]
本発明は、メソ多孔質チタニア粒子を有する被覆材及び汚染ガスの除去における被覆材の使用に関する。
[背景技術]
近年、空気、水、及び/又は土壌の汚染が、とりわけ都市部において重要な問題となった。環境汚染物質の主要な種類のうちの2つは、窒素酸化物(NOx)及び揮発性有機化合物(VOCs)である。とりわけこれらの化合物は、二次汚染物質の生成を引き起こすことから、望ましくないと考えられている。
【0002】
環境中の空気汚染物質の濃度を低減させるため、あらゆる解決策が提案されてきた。
二酸化チタン(TiO)の光触媒特性がよく知られている。二酸化チタンは紫外(UV)線と反応し、窒素酸化物や揮発性有機化合物等の空気汚染物質を酸化する。それゆえ、二酸化チタンは有害なNOxガス(NO及びNO)を硝酸に酸化させることで、大気から除去するのに利用されてきた。
【0003】
例えば、チタニア粒子を舗装に塗布することで、排出汚染物をその排出源の近隣にて、すなわち、乗物の付近にて除去する一助となり得る。チタニアを含むコンクリート舗石による窒素酸化物の低下は、研究されており、M.M. Ballari et al. Applied Catalysis B: Environmental, 95, (2010), 245-254において記載されている。
【0004】
例えば、塗料又はプラスチック被覆材等、チタニア粒子を含む光触媒面は、光消滅的なラジカルメカニズムによりNOxの除去を促進する。それゆえ、とくにポリマー等、被覆材における他の物質が関連して光消滅することが不可避の結果であった。したがって、このような二酸化チタニア粒子の光触媒特性により、チタニアを含む被覆材の寿命は非常に短くなる。
【0005】
今日まで、高レベルの二酸化チタン光触媒を有する被覆材は、当該触媒が酸化し、被覆材内の高分子物質(例えば、バインダー等)を分解しやすいことから、提供することが困難であった。この問題は、被覆材が屋外用塗料である場合、日光由来の強烈な紫外線に対して曝露されると悪化する。
【0006】
屋外用塗料については、風化後に汚染ガスを除去する活性が低下する恐れがある。
同様に、屋外用塗料では、チタニアが塗料の高分子バインダーを分解するのに起因して、風化後に著しい重量減少が通常発生する。光沢の減少や色褪せ(非白色面)は、より明白な劣化の兆候である。
【0007】
したがって、著しい光分解を受けることなく、表面において優れた汚染除去特性を発揮することのできるコーティング組成物に対する需要があることを発明者等は認識してきた。
【0008】
被覆材が曝露される環境にかかわらず、このような特性が備えられていることが望ましい。したがって、当該特性は、屋内で使用される被覆材と、直射日光由来の強烈な紫外線に対して曝露される被覆材と、の両方に備えられている必要がある。
【0009】
このことから、塗料等の被覆材であって、光に対して曝露されても長期の被覆材寿命を有し、優れた汚染ガス除去を行う被覆材を提供することが可能であることがとりわけ望ましい。
【発明の概要】
【0010】
第1の局面おいて、本開示は、環境中の汚染ガスの濃度を低減させることが可能な被覆材の形成において好適に使用されるコーティング組成物であって、当該コーティング組成物は、高分子物質とメソ多孔質チタニア粒子とを有し、前記粒子は、連続する凸状の外表面及び1μm以上50μm以下の粒径と、30m/g~350m/gのBET比表面積と、5nm以上50nm以下の最頻細孔径と、全細孔容積のうちの85%以上が10ミクロン以下の直径を有する細孔により定められるような細孔寸法の分布と、を有し、前記コーティング組成物は、当該前記コーティング組成物の全体積に対し、0.01体積%~10体積%の前記粒子を備え、当該前記コーティング組成物の全体積に対し、5体積%~99.99体積%の高分子物質を有する、コーティング組成物を提供する。
【0011】
驚くべきことに、このようなコーティング組成物からなる被覆材は、例えば、空気由来又は水由来等の、被覆材付近の環境中の汚染ガスの濃度を低減させるのに効果的であり、風化(日光由来の強烈な紫外線に対する曝露を含む)後であっても、当該被覆材には著しい重量減少、色褪せ、又は光沢の低下が生じない。これは、このような所定の微粒子型にチタニアを含有させても、当該チタニアが被覆材に対して効率的にラジカルを与えたり、高分子物質を分解したりしないということを示唆している。
【0012】
前記コーティング組成物は、高分子物質及び任意で溶媒又は添加剤或いはキャリア等の1つ又は複数の追加のコーティング組成物成分を有するコーティングベースである第1剤と、メソ多孔質チタニア粒子である第2剤と、を有するキットとして提供されてもよい。第1剤と第2剤とを混和し、次いで層として表面に塗布される混合剤を形成することができる。或いは、第1剤を第1の層として表面に塗布し、第2剤を第2の層として塗布することができる(例えば、第2剤を第1の層の上に散布する、第1の層の上に第2剤を積層する、或いは2つの剤を共押出しして2層にする)。いずれの場合においても、被覆材は高分子物質とメソ多孔質チタニア粒子と(任意で、溶媒又は添加剤並びにキャリア等の1つ又は複数の追加のコーティング組成物成分と)を有する表面の上に施される。
【0013】
第2の局面において、本開示は、本開示の第1の局面において記載されるコーティング組成物からなる被覆材であって、前記メソ多孔質チタニア粒子は前記被覆材中に分散されるか、或いは前記被覆材の外面において層として設けられるか、のいずれかである被覆材を提供する。
【0014】
好適には、当該被覆材は、使用中に汚染ガスを含む環境に対して曝露される表面に施される。この表面は、前述の環境に対して曝露される表面でもよいし、前述の環境に対して曝露されることになる表面でもよい。被覆材の外面とは、汚染ガスを含む環境に対して曝露される面である。
【0015】
好適には、当該被覆材は、使用中に日光由来の紫外線又は蛍光灯等の人工的光源からの紫外線に対して曝露される表面に施される。
第3の局面において、本開示は被覆材を表面に施すための工程であって、前記被覆材は環境中の汚染ガスの濃度の低減における使用に好適であり、当該工程は、
a)高分子物質と、任意で溶媒又は添加剤或いはキャリア等の1つ又は複数の追加のコーティング組成物成分とを有するコーティングベースを提供することと、
b)前記コーティングベースを表面に塗布して層を形成することと、
c)前記層にメソ多孔質チタニア粒子を塗布することで、前記コーティングベースと前記粒子とを有する被覆材を形成することと、を備え、
前記粒子は、連続する凸状の外表面及び1μm以上50μm以下の粒径と、30m/g~350m/gのBET比表面積と、5nm以上50nm以下の最頻細孔径と、全細孔容積のうちの85%以上が10ミクロン以下の直径を有する細孔に対応付けられるような細孔寸法の分布と、を有し、前記被覆材は、当該前記被覆材の全体積に対し、0.01体積%~10体積%の前記粒子を備え、当該前記被覆材の全体積に対し、5体積%~99.9体積%の高分子物質を有する、工程を提供する。
【0016】
前記メソ多孔質チタニア粒子は、前記層に対して前記粒子を散布することにより塗布されてもよい。前記メソ多孔質チタニア粒子は前記層に対して前記粒子を積層することで塗布されてもよい。前記メソ多孔質チタニア粒子は、前記表面に対して前記コーティングベースで共押出しし、前記表面上において前記コーティングベースの層を形成し、その層の上に前記メソ多孔質チタニア粒子の層を形成してもよい。
【0017】
第4の局面において、本開示は、表面に被覆材を施すための工程であって、前記被覆材は環境中の汚染ガスの濃度の低減における使用に好適であり、当該工程は、
i)第1の局面に記載のコーティング組成物を提供することと、
ii)前記コーティング組成物を表面に塗布して層を形成することと、を有する工程を提供する。
【0018】
ステップi)において提供される前記コーティング組成物は、前記メソ多孔質チタニア粒子と前記高分子物質とが混合されたものでもよく、例えば、前記粒子は前記コーティング組成物中において均一に分散されてもよい。
【0019】
ステップi)において、第1の局面に記載される前記コーティング組成物は、初めに高分子物質を有するコーティングベースを提供した後、前記コーティングベース中に前記メソ多孔質チタニア粒子を分散させてコーティング組成物を形成することで提供されてもよい。
【0020】
初めに提供された前記コーティングベースは、任意で1つ又は複数の追加のコーティング組成物成分を備えていてもよく、例えば、溶媒又は添加剤或いはキャリアである。
1つの実施形態において、前記メソ多孔質チタニア粒子が前記コーティングベース物質中に分散された後、1つ又は複数の追加のコーティング組成物成分が添加される。その後、これらは前記コーティングベース物質中に分散してもよい。
【0021】
第5の局面において、本開示は、外表面を有する物品であって、前記外面の少なくとも一部は第1の局面において記載される組成物からなる被覆材で被覆される、物品を提供する。
【0022】
好ましくは、この物品では、物品の外表面の少なくとも一部は第2の局面に記載される被覆材で被覆される。
前記物品は、第3の局面に記載の工程又は第4の局面に記載の工程を実施することにより得られてもよい。
【0023】
前記物品は、建築物又は、例えば屋根、ドア、又は窓枠等の建築物の一部でもよい。しかしながら、本開示はこのような物品に限定されない。
他に考えられ得る物品には、舗装、自動車、路面、航空機、ボート及び船を含む水上船舶、標識、フェンス、デッキ、遮音壁、及び手摺りが含まれるが、これらに限定されない。
【0024】
物品は、使用中に汚染ガスと紫外線(例えば、日光由来)との両方に対して曝露される少なくとも1つの表面を有するものが好ましい。
第6の局面において、本開示は、汚染ガスを環境から除去するための方法であって、当該方法は、
-第5の局面に記載される物品を提供するステップと、
-前記被覆された表面が汚染ガスを含む環境に接触することを許容するステップと、を有する方法を提供する。
【0025】
とりわけ、前記方法は、屋外状況であって、とくに前記被覆材が日光由来の紫外線に対して曝露される状況で汚染ガスを環境から除去するために用いてもよい。
1つの実施形態において、前記方法は屋外状況であって、例えば、1000時間以上、2000時間以上、又は5000時間以上の期間、例えば、10,000時間以上、20,000時間以上、又は50,000時間以上の期間というように、とくに被覆材が長期にわたり紫外線(例えば、日光由来)に対して曝露される状況で汚染ガスを除去するために用いられてもよい。
【0026】
それゆえ、前記被覆された表面は長期間にわたり前記環境に接触するのを許容されてもよく、例えば、1000時間以上、2000時間以上、又は5000時間以上、例えば、10,000時間以上、20,000時間以上、又は50,000時間以上の期間におよぶ。
【0027】
1つの実施形態において、物品を提供する前記ステップは、第3の局面に記載の工程又は第4の局面に記載の工程の実施を含む。
第7の局面において、汚染ガスの除去のための、本開示の第2の局面に記載の前記被覆材の使用又は本開示の第5の局面に記載の前記物品の使用について提供される。
【0028】
とりわけ、前記被覆材又は前記被覆された物品は、とくに前記被覆材が紫外線(例えば、日光由来)に対して曝露されるような状況等の屋外状況において、汚染ガスの除去のために使用されてもよい。
【0029】
前記被覆材又は前記被覆された物品は、屋外状況であって、例えば1000時間以上、2000時間以上、又は5000時間以上、例えば、10,000時間以上、20,000時間以上、又は50,000時間以上の期間というように、とくに前記被覆材が長期間にわたり紫外線(例えば、日光)に対して曝露されるような状況において、汚染ガスの除去のために使用されてもよい。
【0030】
当業者であれば把握するであろうように、ガスは道路トンネルの内部で充満し、交通量の多い道路付近に設けられたトンネルを含む建築物又は構造物の周囲環境では、汚染物質が高い割合で生じ得る。トンネル並びに他の構造物及び建築物は日光に対して曝露されるだけでなく、紫外線を放射する蛍光灯に照射される場合もある。
【0031】
それゆえ、本開示による前記コーティング組成物は、トンネル、建築物、又は他の構造物であって、とくに環境中に高い割合の汚染物質(例えば、ディーゼル車によるNOxガス)があることが知られている交通量の多い道路付近に設けられるものの外表面を被覆するためにも使用され得る。
【0032】
本開示による前記組成物は、トンネル又は建築物であって、とくに環境中に高い割合の汚染物質(例えば、ディーゼル車によるNOxガス)があることが知られている交通量の多い道路付近に設けられたものの内表面を被覆するために使用され得る。実際には、一般的にトンネル及び建築物等の屋内における場所は、紫外線成分を放射する電球により照射される。
【0033】
本開示による前記組成物は、発電所又は発電所付近に設けられた建築物或いは都心部における建築物であって、発電所の排出物に起因して環境中のNOxガスが顕著なレベルであることが知られているものの外表面を被覆するために使用され得る。
【0034】
本開示による組成物は、揮発性有機化合物が発生し得る住宅用又は商業用建築物の内部に被覆材を施すために使用され得る。
本開示により求められる所定のメソ多孔質チタニア粒子は、大気から汚染ガスを除去する優れた性能を有していることが見出された。驚くべきことに、メソ多孔質チタニア粒子は被覆材中の高分子物質を劣化させないので、被覆材表面の完全性及び外観に与える影響が低いことが見出された。当該被覆材は、風化状況に対して長期間曝露されても、著しい重量減少、色損失、又は光沢の低下を示さない。
【0035】
その結果、第8の局面において、(a)美観及び/又は機能の低下に対して耐性を有すると同時に、(b)大気の質を向上させるように作用する被覆材を提供するための、本開示の第2の局面に記載の前記被覆材又は本開示の第5の局面に記載の前記物品の使用について提供されている。
【0036】
本開示による製品は、長期間風化した後であっても、市販の光触媒を基剤とする被覆材と同程度にNOxを低減し、色素性アナターゼを基剤とする被覆材よりも大いに優れていることが見出された。
【0037】
さらに、本開示に従い調製された塗料の光学性能は、変色性(ΔE)及び光沢の保持性の両面において、市販の紫外線防止剤の光学性能に匹敵する或いはそれよりも若干優れていた。
【0038】
それゆえ、塗料のための紫外線防止剤を提供し、ひいては大気汚染物質に対する予防機能を付与するという課題は、本発明により解決された。
【図面の簡単な説明】
【0039】
図1】走査型電子顕微鏡(SEM)によって得た、本開示における使用に好適なメソ多孔質チタニア粒子のマイクログラフである。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本開示による製品、用途、及び方法により、空気汚染物質等の汚染物質が、光触媒作用を通じて分解されるのを許容する。汚染物質は、とりわけ、窒素酸化物(NOx)、揮発性有機化合物(VOC)、及びそれらの組合せから選択されるものでもよい。1つの実施形態において、本開示による製品、用途、及び方法により、NOx化合物(NO及び/又はNO)のレベルが低減することを許容する。
【0041】
本開示によるコーティング組成物は、環境中の汚染ガスの濃度を低減させることが可能な被覆材を形成するのに使用され得る。当該コーティング組成物は、高分子物質とメソ多孔質チタニア粒子との組合せを備え、前述の粒子は連続する凸状の外表面と、1μm以上50μm以下の粒径と、30m/g~350m/gのBET比表面積と、5nm以上50nm以下の最頻細孔径と、全細孔容積のうちの85%以上が直径10ミクロン以下の細孔に対応付けられる細孔寸法の分布と、を有し、コーティング組成物は、当該コーティング組成物の全体積に対し、0.01体積%~10体積%の上記粒子を備え、また、当該コーティング組成物の全体積に対し、5体積%~99.99体積%の高分子物質を有する。
【0042】
1つの実施形態において、コーティング組成物中のメソ多孔質チタニア粒子の量は、当該コーティング組成物の全体積に対し、0.01体積%~8体積%でもよく、例えば、0.01体積%~5体積%、0.01体積%~3体積%、又は0.01体積%~2体積%である。別の実施形態において、コーティング組成物中のメソ多孔質チタニア粒子の量は、当該コーティング組成物の全体積に対し、0.02体積%~5体積%でもよく、例えば、0.05体積%~4体積%、0.1体積%~3体積%、又は0.2体積%~2体積%である。さらに別の実施形態において、コーティング組成物中のメソ多孔質チタニア粒子の量は、0.5体積%~3体積%でもよく、例えば、0.5体積%~2体積%又は0.5体積%~1体積%である。
【0043】
1つの実施形態において、コーティング組成物は当該コーティング組成物の全体積に対し、0.1体積%~5体積%の上記粒子を備え、当該コーティング組成物の全体積に対し、5体積%~99.9体積%の高分子物質を有する。
【0044】
1つの実施形態において、コーティング組成物は当該コーティング組成物の全体積に対し、0.5体積%~3体積%の上記粒子を備え、当該コーティング組成物の全体積に対し、5体積%~99.5体積%の高分子物質を有する。
【0045】
1つの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子と、高分子物質とが混合される。
そのような1つの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子はコーティング組成物全体に分散され、好適には、コーティング組成物全体において実質的に均一に分散される。
【0046】
それゆえ、当該組成物からなる被覆材は、当該被覆材全体に分散されたメソ多孔質チタニア粒子を有することになる。したがって、粒子のバルク含有が起こり得る。
別の実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子と、高分子物質とは、混合されない。
【0047】
そのような1つの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子は、被覆材がコーティング組成物からなると、当該被覆材の表面にメソ多孔質チタニア粒子が設けられるように提供される。例えば、被覆材におけるチタニア粒子以外の他の全ての成分を層として表面に塗布し、次いで、その表面上にメソ多孔質チタニア粒子を塗布することができるようにしてもよい。1つの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子は、前述の層に散布される。しかしながら、被覆材の外層として粒子を提供する任意の手段を利用してもよい。被覆材の外層としてチタニア粒子層を設けるには、共押出し又はラミネーション等の周知の技法を用いても良い。
【0048】
本開示は、メソ多孔質チタニア粒子であって、色素性二酸化チタンではなく、従来の超微細二酸化チタンでもないメソ多孔質チタニア粒子を用いる。
上述のように、最頻細孔径は5nm以上50nm以下であり、例えば、5nm以上40nm以下である。1つの実施形態において、最頻細孔径は6nm~45nmであり、7nm~45nmというように、例えば10nm~40nmである。1つの実施形態において、最頻細孔径は5nm以上30nm以下である。
【0049】
細孔径は、例えば、Micromeritics(登録商標)MicroActive AutoPore V 9600ポロシメーターを用いるなど、好適には水銀圧入多孔度測定法を用いて測定してもよい。あるいは、細孔径は、例えばMicromeritics TriStar 3020(商標)機を用いるなど、窒素等温線(ナノメートル範囲の細孔径用)を用いて測定してもよい。このような機器を用いることで、当業者であれば直ちに最頻細孔径を決定することができる。
【0050】
1つの実施形態において、最頻細孔径は5nm以上25nm以下であり、例えば、5nm以上23nm以下又は5nm以上22nm以下である。1つの実施形態において、最頻細孔径は6nm~25nmであり、7nm~25nmというように、例えば8nm~25nmである。
【0051】
1つの実施形態において、最頻細孔径は5nm以上20nm以下であり、例えば、5nm以上19nm以下又は5nm以上18nm以下である。1つの実施形態において、最頻細孔径は6nm~20nmであり、7nm~20nmというように、例えば8nm~20nmである。
【0052】
上述のように、メソ多孔質チタニア粒子は、全細孔容積のうちの86%以上、全細孔容積のうちの87%以上、全細孔容積うちの88%以上、又は全細孔容積のうちの89%以上というように、全細孔容積のうちの85%以上が直径10ミクロン以下の細孔に対応付けられるような細孔寸法の分布を有する。
【0053】
1つの実施形態において、例えば、全細孔容積のうちの86%~99.5%又は全細孔容積のうちの87%~99%というように、全細孔容積のうちの85%~99.9%が直径10ミクロン以下の細孔に対応付けられる。
【0054】
例えば、10ミクロン以下の直径を有する細孔のように、上述の直径の細孔に関する細孔容積は、例えば、Micromeritics(登録商標)MicroActive AutoPore V 9600 ポロシメーターを用いるなど、好適には水銀圧入多孔度測定法を用いて測定してもよい。
【0055】
このようなポロシメーター機器は、細孔寸法の範囲にわたる細孔容積の分布に関する情報に加え、粒子試料の全細孔容積に関する情報を提供するのに利用可能であることは、当業者によって理解されるところである。したがって、当業者であれば、定義された寸法範囲の細孔により、この場合、10ミクロン以下の直径を有する細孔により定められる全細孔容積の割合を決定することが可能である。
【0056】
10ミクロン以下の直径を有する細孔に由来する細孔容積が85%よりも著しく低い従来の多孔質チタニア物質と比較し、細孔容積の大部分が10ミクロン以下の直径を有する細孔から得られるメソ多孔質チタニア粒子を使用することで、有益な結果が生じる。本開示によるメソ多孔質チタニア粒子は、例えば、被覆材付近の空気又は水に由来する環境中の汚染ガスの濃度を低減させるために、被覆材に含有させることができ、また、驚くべきことに、被覆材には風化(日光由来の強烈な紫外線の照射に対する曝露を含む)した後であっても、著しい重量減少、色褪せ、又は光沢の低下が生じない。
【0057】
1つの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子は、全細孔容積のうちの91%以上、全細孔容積のうちの92%以上、全細孔容積のうちの93%以上、又は全細孔容積のうちの94%以上というように、全細孔容積のうちの90%以上が10ミクロン以下の直径を有する細孔に対応付けられるような細孔寸法の分布を有する。メソ多孔質チタニア粒子は、全細孔容積のうちの95%以上が10ミクロン以下の直径を有する細孔に対応付けられるような細孔寸法の分布を有していてもよい。
【0058】
本開示において使用されるメソ多孔質チタニア粒子は、0.8ml/g以下の全細孔容積を有していてもよく、例えば、0.75ml/g以下又は0.7ml/g以下である。1つの実施形態において、本開示で使用されるメソ多孔質チタニア粒子は任意で、0.65ml/g以下の全細孔容積を有し、例えば、0.6ml/g以下又は0.55ml/g以下である。
【0059】
1つの実施形態において、全細孔容積は0.5ml/g以下であり、例えば、0.45ml/g以下又は0.4ml/g以下である。1つの実施形態において、全細孔容積は0.05~0.65ml/gであり、例えば、0.1~0.6ml/g、0.15~0.55ml/g、0.2~0.5ml/g、又は0.2~0.45ml/gである。
【0060】
全細孔容積は、例えば、Micromeritics(登録商標)MicroActive AutoPore V 9600 ポロシメーターを用いるなど、好適には水銀圧入多孔度測定法を用いて測定してもよい。
【0061】
本開示で使用されるチタニア粒子は、ナノ粒子よりも大きくなるよう寸法決めされている。したがって、本発明で使用されるメソ多孔質チタニア粒子は、1μm以上の粒径を有するメソ多孔質粒子である。上述のように、粒径は1μm以上50μm以下である。粒径は、1μm以上40μm以下、1μm以上35μm以下、又は1μm以上30μm以下でもよい。
【0062】
粒径(粒子寸法)は、好適にはレーザー回析法によって決定し、レーザー回析機を用いて測定してもよく、例えば、MasterSizer(登録商標)機等のマルバーン インスツルメント社から入手可能なレーザー回析機である。あるいは、粒径(粒子寸法)は、X線沈降法によって決定し、X線ディスク遠心分離機を用いて測定してもよく、例えば、BI-XDC機等のブルックへブンから入手可能なX線ディスク遠心分離機である。
【0063】
1つの実施形態において粒径は、1.1μm以上、1.2μm以上、1.3μm以上、1.4μm以上、1.5μm以上、1.6μm以上、1.7μm以上、1.8μm以上、又は1.9μm以上である。粒径は2μm以上でもよい。
【0064】
いくつかの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子は、1.5μm~45μmの粒径を有していてもよく、1.5μm~35μmというように、例えば1.5μm~20μm又は1.5μm~15μmであり、又は1.5μm~12μmである。
【0065】
いくつかの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子は2μm~35μmの粒径を有していてもよく、例えば、2μm~30μmである。いくつかの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子は2μm~25μmの粒径を有していてもよく、2μm~20μmというように、例えば、2μm~15μm又は2μm~12μmである。好ましくは、粒子は20μm以下の直径を有しており、例えば、2~20μmである。
【0066】
粒径は、粒径寸法に対する幾何平均重量値である(上述のような粒子に対して検出される近似的な対数正規分布に適している)。
当業者であれば把握できるように、結晶寸法は粒子寸法と区別される。結晶寸法は、微粒子物質を形成していて、内部において一定の格子面を有する基本結晶単位の寸法に関連している。粒子寸法は複数の要因に影響され、例えば、結晶寸法や結晶の融合不良、また、湿式、乾式、又は結合的なミリング等の製造中に用いられるミリング技術及び結晶の凝集を引き起こす意図的な処理等のその後の処理である。
【0067】
二酸化チタンの結晶寸法及び粒子寸法は、当業者にとり周知の方法で決定してもよい。例えば、結晶寸法は試料に対し透過型電子顕微鏡によって決定してもよく、結果写真の画像分析とともに行う。結晶寸法の結果は、各種文献において幅広く入手可能な格子間隔情報を参照してさらに分析してもよい。上述のように、二酸化チタンの粒子寸法を決定するために使用され得る方法はレーザー回析法である。代わりに、X線沈降法を用いてもよい。
【0068】
したがって、二酸化チタンの粒子寸法は、通常、結晶寸法より大きい或いは実質的に同一である。本開示において使用される粒子については、粒径が結晶寸法よりも大きく、例えは、結晶寸法よりも少なくとも2倍、少なくとも3倍、又は少なくとも5倍大きい。このことから、本開示において使用される粒子は、結晶寸法よりも少なくとも一桁大きい粒子寸法を有していてもよく、換言すれば、結晶寸法よりも少なくとも10倍大きい。1つの実施形態において、本開示で使用される粒子は、結晶寸法の少なくとも100倍を超える又は結晶寸法の少なくとも1000倍を超える粒子寸法を有する。
【0069】
1つの実施形態において、結晶寸法は5nm以下であり、粒子寸法は1ミクロン以上50ミクロンを含むそれ以下であり、例えば、2ミクロン以上50ミクロンを含むそれ以下である。
【0070】
上述のように、粒子は、30m/g~350m/gのBET比表面積を有する。1つの実施形態において、粒子は、50m/g以上のBET比表面積を有し、例えば、50~320m/g又は50m/g~250m/gである。好ましくは、粒子は、70m/g以上のBET比表面積を有し、例えば、70~320m/g又は70m/g~250m/gである。
【0071】
比表面積は、J. Am. Chem. Soc., 1938, 60, 309に記載されるように、Brunauer、Emmett、及びTeller法(BET法)を用いて決定してもよい。
【0072】
1つの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子は、75m/gを超える比表面積を有していてもよい。そのような1つの実施形態において、粒子は、75m/g~350m/gのBET比表面積を有し、例えば、75m/g~320m/g、75m/g~250m/g、又は75m/g~240m/gである。
【0073】
1つの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子は、80m/g以上の比表面積を有していてもよい。そのような1つの実施形態において、粒子は、80m/g~350m/gのBET比表面積を有しており、例えば、80m/g~320m/g、80m/g~250m/g、又は80m/g~240m/gである。
【0074】
いくつかの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子は、125m/gを超える比表面積を有していてもよく、例えば、150m/g以上又は175m/g以上である。1つの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子は、200m/g以上の比表面積を有しており、例えば、210m/g以上、220m/g以上、又は225m/g以上である。
【0075】
1つの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子は、230m/g以上の比表面積を有しており、例えば、235m/g以上、240m/g以上、又は250m/gである。
【0076】
メソ多孔質チタニア粒子の比表面積は、1つの実施形態において、330m/g以下、320m/g以下、300m/g以下、250m/g以下、又は240m/g以下でもよい。
【0077】
粒子は、連続して弧を描く(凸状の)外面を有する。粒子は、例えば、球状又は円環形状でもよい。粒子は楕円体でもよく、例えば、扁長の(細長い)回転楕円体又は扁円(扁平)回転楕円体である。1つの実施形態において、粒子は球状である。粒子は、例えば、メソ多孔質のビーズでもよい。
【0078】
国際公開第2015/040426号では、チタニア粒子のモルフォロジーの制御について、粒子の全体形状(例えば、球状又は円環形状、平滑な外面又は粗い外面、高密度又は中空)と、細孔寸法(比表面積に影響を及ぼすもの)と、の両方の観点から論じられている。とりわけ、メソ多孔質チタニア粒子の生成について記載され、連続した弧を描く(凸状の)外面であって、例えば、球状又は円環形状でもよい外面を有する粒子を生成するのに利用可能な条件について詳述されている。
【0079】
例えば、チタニア粒子の生成工程は、チタニアゾルを提供することと、次いで当該ゾルを噴射乾燥して乾燥したチタニア粒子を提供すること、とを備え、(i)当該チタニアゾルはスラリーを含むTiOから製造され、スラリーのpHは、例えば解膠剤を添加することにより、チタニアゾルが凝集する度合いを低減させるために、チタニアの等電点から3pH単位以上となるように制御されるか、或いは(ii)当該チタニアゾルはTiOを含むスラリーから製造され、チタニアゾルが凝集する度合いを低減させるために、例えば分散剤を添加することにより、等電点がスラリーのpHから3pH単位以上となるように調節されてもよい。
【0080】
しかしながら、本開示はそのような工程によるチタニア粒子の製造に限定されない。
粒子が連続して弧を描く(凸状の)外表面を有しているか否かは、粒子を映し出す走査型電子顕微鏡(SEM)を用いて判断可能であることは、当業者であれば理解されるところである。
【0081】
走査型電子顕微鏡を用いてそのままの粒子の画像を得るには、以下の非限定的プロトコルを利用することでき、それにより当業者は粒子が連続して弧を描く(凸状の)外表面を有するか否かを目視で確認することができる。
【0082】
両面粘着テープを片面が上向きになるように顕微鏡の試料ホルダーに付着させ、当該試料ホルダーに粘着面を設ける。次いで、粒子の試料を試料ホルダーの粘着面に散布する。例えば、試料をスパチュラの上に用意し、その後、粒子を落下させるために(かすかに知覚可能)スパチュラを傾注させるか、或いはタップすることで、試料ホルダーの粘着面に軽く散布してもよい。次いで試料が散布された試料ホルダーは、従来慣行に従い、導電物質(例えば、金)で被覆される。従来慣行については、例えば、試料ホルダーに供給された粒子に導電性金属(金、金/パラジウム、プラチナ、銀、クロム、又はイリジウム等)の超薄型被覆材を塗布するため、スパッタコーティングを利用してもよい。SEM用にスパッタされたフィルムは、一般的に、2~20nmの範囲の厚みを有する。このようにして用意された試料ホルダーは、その後、走査型電子顕微鏡に導入され、粒子の画像が得られる。
【0083】
SEM画像は、粒子が連続して弧を描く(凸状の)外表面を有しているか否かを判断するために目視で評価され、例えば、粒子が球状、円環形状、又は楕円体であるか否かを確認することができる。
【0084】
図1は、走査型電子顕微鏡(SEM)によって得られる、本開示における使用に好適なメソ多孔質チタニア粒子のマイクログラフである。図では、粒子が連続して弧を描く(凸状の)外表面を有し、球状であることが確認できる。粒子は、メソ多孔質のビーズであると見なしてもよい。
【0085】
メソ多孔質チタニア粒子は、チタニア物質が粒子化する前か、或いは粒子が形成された後かのいずれかにおいて、チタニア物質の処理によって任意に処理されてもよい。ただし、処理された粒子が連続する凸状の外表面と、1μm以上50μm以下の粒径と、30m/g~350m/gのBET比表面積と、5nm以上50nm以下の最頻細孔径と、全細孔容積のうちの85%以上が10ミクロン以下の直径を有する細孔に対応付けられるような細孔寸法の分布と、を有する場合に限る。
【0086】
例えば、被覆材、ドーピング、及び焼成法等は全て、可能な処理として想定され得るものである。1つ又は複数の処理法を用いてもよい。
一般的に、粒子(例えば、国際公開第2015/040426号に記載されるように作製される)は、コーティング組成物に含有される前に処理されてもよい。この処理は、耐久性を向上させる目的で、顔料表面に対して化学的に被覆材を塗布する任意の周知方法により適用してもよい。
【0087】
1つの実施形態において、粒子に気体透過性の被覆材を施してもよい。これにより、粒子の細孔構造に気体分子が侵入するのを許容した状態で、TiO粒子とポリマーとの間に物理的間隔を設けることができる。これは、とりわけ、被覆材が(a)美観及び/又は機能の低下に対して耐性を有し、かつ(b)雰囲気の質を向上するよう作用するのを助勢する際に有益である場合がある。
【0088】
したがって、1つの実施形態において、メソ多孔質チタニア粒子はコーティング組成物(例えば、塗料又は高分子被覆材)に含有される前に、断熱物質(シリカ等)の超微粒子により被覆材されてもよい。
【0089】
断熱粒子は、メソ多孔質チタニア粒子に被覆材を施すため、単純にメソ多孔質チタニア粒子と混和してもよく、或いは、ヘテロ凝集してもよい。
1つの実施形態において、粒子は、例えばシリカ等の無機酸化被覆材のような被覆材により、部分的又は全体的に被包してもよい。各粒子における外表面のうちの80重量%以上、例えば、90重量%以上、95重量%以上、又は99重量%以上が、シリカ等の被覆材に被覆されていてもよい。被覆材は、メソ多孔質チタニア粒子の残留性の光触媒化をさらに低減させるため、シリカでもよい。
【0090】
シリカ又はその他の被覆材による粒子のコーティングは、周知の技術により実現してもよい。例えば、安定性ナノシリカゾルと、チタニア粒子が形成されるTiOゾルとを混合してもよく、次いで、この混合物が噴射乾燥され得る。その結果、より小さいナノシリカ粒子が噴射乾燥処理において液滴の外縁部に移動するので、チタニア粒子がシリカに被包される得る。これにより、シリカに完全に被包されたチタニア粒子が得られる。或いは、チタニア粒子は水性媒体内で形成して再度分散することができ、その後、ナノシリカゾルを添加して粒子にシリカコーティングを施す。その後、被覆された粒子は任意で乾燥され得る。
【0091】
1つの実施形態において、チタニア粒子はドープされる。このドーピングは、金属、例えば、Fe、Cr、Mn、Ce、Ni、Cu、Sn、Al、Pb、Ag、Zr、Zn、Co、Mo、及びW、及び/又は非金属、例えば、B、C、N、P、As、S、Se、Te、F、CI、Br、及びIで行ってもよい。これらドーパントの一覧は例であって限定するものではなく、その他のドーパント、例えば、Pd、Ru、Os、La、Er、V等も想定され得る。
【0092】
このような元素でのドーピングは、触媒特性の向上及び/又は触媒特性の低下を引き起こし得る。それゆえ、バンドギャップを変化させて光触媒作用を低減させることにより、紫外線防止を向上させることが可能である。ドーピングは、周知の技術により実現し得る。例えば、共沈法を用いて遷移金属を二酸化チタン格子にドープすることができ、それによりチタン硫酸塩の溶液にドーパントが添加され、その後析出されると、チタニアがドープされる。
【0093】
1つの実施形態において、チタンは焼成されてもよい。これは隣接する結晶粒をアナターゼ型の結晶構造を維持させたまま溶解するよう作用し得る。得られた粒子は溶解されてはいるものの、超微小範囲で寸法を維持する。
【0094】
本開示によるコーティング組成物は、あらゆる形態をとり得る。1つの実施形態において、コーティング組成物は塗料である。別の実施形態において、コーティング組成物は高分子コーティング物質である。別の実施形態において、コーティング組成物は日焼け止剤である。
【0095】
当業者であれば、粒子はバルクの追加によってコーティング組成物中に設けられることは理解されるところであるが、これは必要不可欠ではない。したがって、例えば、層として粒子が塗布される場合もある。1つの実施形態において、コーティング組成物に対して粒子の層を塗布するのに、共押出しやラミネーション等の技術が用いられる場合がある。これは、コーティング組成物が高分子コーティング物質である実施形態においてとりわけ有効的であり、共押出し又はラミネーション等の技術は、バルクポリマーに対して粒子の層を塗布するのに用いられ、ポリマーへのバルクの追加のコストを回避することができる。
【0096】
1つの実施形態において、コーティング組成物は流体であり、例えば、塗料のように液状である。別の実施形態において、コーティング組成物は粉状又は表面に施工することが可能な可撓性の固体層である。
【0097】
1つの実施形態において、高分子物質は合成又は天然の樹脂であるか、或いは合成又は天然の樹脂を有する。好適なプラスチック樹脂としては、ポリオレフィン樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、ABS樹脂、ポリスチレン樹脂、及びメタクリル樹脂等の汎用樹脂;ポリカーボネート樹脂、ポリエチレンテレフタレート樹脂、及びポリアミド樹脂等のエンジニアリング・プラスチック樹脂が挙げられる。高分子物質は、塗料用の樹脂バインダーであるか、或いは塗料用の樹脂バインダーを有し、樹脂バインダーは、例えば、アクリル樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリエステル樹脂、メラミン樹脂、又はエポキシ樹脂である。一例では、高分子物質は、アルキド樹脂などのポリエステル樹脂であるか、或いはアルキド樹脂などのポリエステル樹脂を有する。
【0098】
1つの実施形態において、高分子物質はしたがってバインダーであるか、或いはバインダーを有し、バインダーは、例えばアクリルポリマーバインダー又はアクリル共重合バインダー等の有機高分子バインダーでもよい。
【0099】
バインダーには、限定はされないが合成又は天然の樹脂が含まれていてもよく、樹脂は、例えば、アルキド、アクリル、ビニル-アクリル、酢酸ビニル/エチレン(VAE)、ポリウレタン、ポリエステル、メラミン樹脂、エポキシ樹脂、又は油である。
【0100】
1つの実施形態において、コーティング組成物はさらに水等の水性キャリア又は水性溶剤、及び/又は、有機キャリア又は有機溶剤等の非水性キャリア又は非水性溶剤を有する。キャリア又は溶剤は、例えば、脂肪族溶剤、芳香族溶剤、アルコール、又はケトンでもよい。
【0101】
コーティング組成物はさらに1つ又は複数の添加剤を有していてもよい。コーティング組成物において使用され得る添加剤には、限定はされないが、表面張力を修正し、フロー特性を高め、仕上げの外観を向上させ、湿潤縁部を増加させ、顔料の安定性を改善し、不凍特性を付与し、泡立ちを制御し、皮張を制御する添加剤、増粘剤、安定剤、乳化剤、調質剤、粘着促進剤、UV安定剤、フラット剤(艶消し剤)等が含まれていてもよい。
【0102】
本開示によるコーティング組成物は、任意の周知の方法により表面に塗布してもよく、例えば、噴射(例えば、空気式又は回転噴霧式)、浸漬、ローリング、ブラッシング等により塗布される。1つの実施形態において、コーティング組成物は表面に対し噴射されて層を形成する。
【0103】
本開示において使用されるメソ多孔質チタニア粒子は、国際公開第2015/040426号に記載される工程に従い作製することができ、その開示内容は参照により本願に援用される。
【0104】
上述のように、チタニアは任意でドープされてもよい。したがって、国際公開第2015/040426号に記載される工程だけでなくドーピング工程も含めた方法を利用してもよい。
【0105】
メソ多孔質チタニア粒子を調製するための工程には、まず、チタニアゾルの提供が含まれていてもよい。チタニアゾルはTiO粒子のコロイド状懸濁液である。チタニアゾルは、硫酸塩法(例えば、メクレンブルグ沈降法又はブルメンフェルト沈降法)によりパルプを作製することで得てもよい。
【0106】
その後、上記のパルプは、(例えば、水性アンモニアにより)中和され、硫酸を含有しないように洗浄された。
その後、スラリーは(例えば、塩酸により)解膠される。チタニアの等電点が(例えば、クエン酸の添加により)低下する。
【0107】
その後、スラリーは(例えば、モノイソプロパノールアミンにより)中和されてもよい。
解膠された好適なゾルが提供されると、次いで当該ゾルに乾燥処理を行う。
【0108】
乾燥工程中に採用される温度は、得られる乾燥チタニア粒子のモルフォロジーを制御するために制御され得る。好ましくは、当該温度は得られる乾燥チタニア粒子の粒子形状を制御するために制御される。高い乾燥温度では円環形状(ドーナツ状)の粒子となり、低い乾燥温度では、より球状の粒子となる。
【0109】
粒子は、コーティング組成物に添加される前に、残留性の酸を除去されてもよい。例えば、粒子は焼成されるか、或いは紫外線を照射し、生成工程から残留する酸(例えば、クエン酸)を除去してもよい。
【0110】
1つの実施形態において、この処理には次の2つの工程のうち、1つを含む。(a)400℃~600℃の温度で、例えば6時間~10時間、焼成を行うこと、或いは(b)5W/m~15W/mの強さで、例えば60時間~90時間、紫外線を粒子に照射することである。
【0111】
上述のように、粒子の各種処理が想定される。したがって、当技術分野で周知の任意の方法により、粒子は任意に焼成及び/又は好適な化学物質又は微粒子でコーティングされてもよい。
【0112】
本発明は以下の非限定例により、詳述される。
【実施例
【0113】
実施例1:メソ多孔質チタニア粒子の製造
メソ多孔質チタニア粒子は、国際公開第2015/040426号に記載される方法に従い得られた。
【0114】
これに関し、硫酸塩法によるパルプは中和され、硫酸を含有しないよう洗浄された。パルプを解膠するためにHClが添加され、クエン酸を添加して等電点をシフトさせた。次いでpHを約7まで上昇させるためにモノイソプロパノールアミンが添加されると、クリアゾルが生成されたことが確認された。中性のクリアゾルは管理された条件のもと噴射乾燥された。具体的には、その後、17重量%の固形分の濃縮ゾルが、試験室用噴射乾燥機であるLab Plant Super 7を利用して110℃の噴射乾燥機に送り込まれ、メソ多孔質チタニア粒子が製造された。
【0115】
メソ多孔質チタニア粒子は、クエン酸を除去するために処理された。処理には、以下の2つの工程うちの1つが含まれた。(a)500℃の温度で8時間の焼成を行うこと、或いは(b)10W/mの強さで72時間紫外線を粒子に照射することである。
【0116】
チタニア粒子はメソ多孔質の球状のビーズであった。チタニア粒子は、表1に記載される特性を有していた。この特性は以下のように測定された。
粒子寸法
約1gの試料が30mlの0.5%ケイ酸ナトリウム溶液に分散された。分散は撹拌によってのみ行われた。(粉砕も高速分散も利用されなかった。)その後、分散された試料の滴数がレーザー回析粒子寸法分析機であるマルバーン社のMasterSizerの試料ホルダーに滴下され、正確な光減衰レベルが当該機器の指示に従い登録されるまで行われた。チタニアの結晶構造が、ルチル「3_YYX」或いはアナターゼ「3_ANA318」に応じ、マルバーン社が導入している正確な計算プロトコルが選択され、計測が行われた。
【0117】
細孔特性
全ての細孔特性(最頻細孔径、対応細孔容積、及び10ミクロン以下の細孔径に対応付けられる細孔容積の%割合)は、イギリスのケンブリッジ州のMCA Servicesにより、独自のSC11手法による水銀圧入多孔度測定法を用いて細孔特性を測定するために、Micromeritics(登録商標)MicroActive AutoPore V 9600ポロシメーターを用いて測定された。
【0118】
BET比表面積
0.3g~0.4gの試料が正確に重み付けされ、Micromeritics(登録商標)Flowprep 060脱気システムを用いて摂氏300度で30分間脱気された。その後、Micromeritics(登録商標)Gemini VII 2390a表面積解析機を用いて多点のBET表面積が測定された。
【0119】
さらには、以下の商業的に利用可能な製品が提供された。
・市販のアナターゼ顔料:Tioxide(登録商標)A-HR顔料(Huntsman P&A UK社から入手可能)
・市販の超微細チタニア光触媒:PC6A(Huntsman P&A UK社から入手可能)
・酸化アルミニウムとステアリン酸とに被覆された市販の超微細ルチル光防止剤:UV Titan(登録商標)M160顔料(Merckから入手可能)
【0120】
【表1】
【0121】
これらの製品は、細孔寸法の分布において大いに異なる。本発明のメソ多孔質製品は、ビーズ内の空孔と、ビーズ間の空孔と、にそれぞれ対応する2つの鋭いピークを有する。最頻細孔径と対応細孔容積とに関して示された値は、ビーズ内の空孔に対するものである。従来製品における非メソ多孔質粒子型は、より不規則な構造を有しており、それゆえ1つ又は複数の広いピークを有する。最頻細孔径と対応細孔容積とに関して示された値は、各試料の主要ピークに対するものである。
【0122】
本発明による焼成及び紫外線照射された粒子は、走査型電子顕微鏡(SEM)により確認可能なように、球状のビーズであった。
実施例2-メソ多孔質チタニア粒子を含む塗料の製造
補記1に従い、塗料ベースが調製され、その後、上述の表1に記載される粒子に使用された。
【0123】
「ブランク」塗料(試料1)については、顔料は添加されなかった。
試料2については、塗料ベースを生成するにあたり顔料は添加されなかったが、代わりに、従来の顔料アナターゼチタン(Huntsman P&A UK社によるTioxide(登録商標)A-HR顔料)が、以下に記載される方法で、当該塗料ベースの上層として施された。
【0124】
試料3については、塗料ベースを形成するにあたり顔料は添加されなかったが、代わりに、従来の超微細アナターゼチタニア(Huntsman P&A UK 社によるPC6A)が、以下に記載される方法で、当該塗料ベースの上層として施された。
【0125】
試料4については、オプション(b)として、実施例1で得られた紫外線照射されたメソ多孔質チタニアが、顔料として添加された。
試料5については、塗料ベースを生成するにあたり顔料は添加されなかったが、代わりに、オプション(b)として、実施例1で得られた紫外線照射されたメソ多孔質チタニアが、以下記載される方法で、当該塗料ベースの上層として施された。
【0126】
試料6については、塗料ベースを形成するにあたり顔料は添加されなかったが、代わりに、オプション(a)として、実施例1で得られた焼成されたメソ多孔質チタニアが、以下記載される方法で、当該塗料ベースの上層として施された。
【0127】
塗料は、金属プレートに塗布された。
試料1及び試料4については、調製された塗料によりコーティングが施された。
試料2、試料3、試料5、及び試料6については、調製された塗料により第1の層が施され、当該第1の層が濡れたままの状態で、その表面上に第2の層としてチタニアを散布した。被覆材は、第1の層及び第2の層を組み合わせたものであった。
【0128】
実施例3-NOガス除去性能
実施例2で作製された被覆金属プレートは、キセノンアーク風化室で1000時間風化される前に、質量が測定された。
【0129】
1000時間のところで重量減少について測定され、パネルについても、ISO22197-1に従い、毎分1.5リットルの流量で1000ppbのNOガス流からNOガスを除去する性能を評価するために、分析された。
【0130】
結果は、以下の表2に示す。
【0131】
【表2】
【0132】
同一の曝露処理後、本発明による試料(試料4、5、及び6)では、従来の(非多孔質)チタニアを使用した試料(試料2及び3)と比較し、塗料の重量減少が著しく低かった。これらの試料の重量減少は、ブランク試料(試料1:樹脂のみ)と類似していた。
【0133】
それゆえ、驚くべきことに、高表面積アナターゼである本発明によるメソ多孔質チタニアを有する製品(試料4、5、及び6)は、顔料アナターゼを有する製品と比較し、塗料における高分子樹脂の光分解の面で著しく有害性が低い。
【0134】
一般的にアナターゼがルチルよりも問題性のある光触媒作用を付与することは、当業者であれば理解するところである。さらに、膜の劣化傾向(結晶構造は問わない)は、表面積が増加するにつれてより顕著となる。
【0135】
さらには、本発明による分析された試料(試料4、5、及び6)により、1000ppbのガス流からNOガスが著しく除去されることは、留意すべきところである。汚染ガスを除去するこのような性能は、顔料アナターゼ(試料2)を有する試料やブランク試料(樹脂のみ)と比較して、著しく優れている。
【0136】
汚染ガスに対する効果は、従来の超微細アナターゼ(試料3)を使用する試料ほど顕著ではないものの、測定されたガス流からのNOガスの除去は、依然として著しいレベルであることは、当業者が理解するところである。それゆえ、その効果は、工業的に応用可能且つ商業的に有用であるには確実に十分なものである。
【0137】
ポリマー樹脂を劣化させることなく、ひいては塗料用被覆材の寿命に悪影響を与えることなく、汚染ガスを顕著で有用なレベルにまで除去する性能は驚くべきことであり、技術的に非常に有益である。これは、とりわけ、被覆材が屋外で使用され、それゆえ太陽からの紫外光に起因する風化状況に対して曝露される場合の用途に当てはまる。また、被覆材が、例えば蛍光灯等の他の紫外光源に対して曝露される場合の用途においても有益である。
【0138】
したがって、本願の製品が、(a)美観及び/又は機能の低下に対して耐性を有し、且つ(b)汚染物質を除去することにより雰囲気の質を改善するよう作用する被覆材を提供するといった、予期しない複数の特性の組合せの恩恵を受けることは明白である。
【0139】
実施例4-着色塗料-風化及びNOxの除去
表1において報告されている各チタニア物質の選定は、有機顔料で着色された赤色及び青色塗料でそれぞれ分析された。一般的に、有機顔料は紫外線に対して曝露されると劣化するので、このような顔料を含有する塗料の退色特性により紫外線防止について簡便的な測定を行う。
そこで、補記2に従い、一連のアクリルメラミンホルムアルデヒド塗料が配合され、当該塗料のそれぞれには、DPP赤色顔料(PR254)及びフタロシアニン青色顔料(PB15:1)のうちいずれかの着色顔料と共にTiOが含有された。配合は、TiOの乾燥時の体積分率が各着色塗膜において0.01となり、着色顔料の乾燥時の体積分率が各着色塗膜において0.01となるようなものであった。
【0140】
上記表1に記載されるものから4つのTiO物質が、以下の各顔料の色で使用された。
・オプション(a)である、実施例1で得られた焼成済みのメソ多孔質チタニア(「メソ」と称す)。
【0141】
・Merckから入手可能なUVTitan(登録商標)M160顔料。
・Huntsman P&A UK社から入手可能なPC6A。
・Huntsman P&A UK社から入手可能なTioxide(登録商標)A-HR顔料。
【0142】
上記4つの物質の各々は青色塗料試料及び赤色塗料試料を調製するのに使用され、これらは、TiO物質を着色顔料中に分散させることで作製された。赤色塗料及び青色塗料のそれぞれのための第5の試料は、塗膜を形成し、次いで塗布したばかりの濡れた状態の塗膜上にメソ多孔質ビーズを散布することで作製された。それゆえ、合計で10の塗料が配合された。
【0143】
追加のバリアント(「樹脂ブランク」と表示)には、TiOも着色顔料も含有されていなかった。
塗料パネルは光特性及びNOx低減性能について分析され、再分析される前に、Atlas Weatherometer内で500時間風化させられた。その後、塗料パネルは、再分析される前に、Atlas Weatherometer内で合計1000時間まで風化させられた。
【0144】
以下の表3には複数のバリアントが列挙されており、未風化の塗料と、ISO22197第1部において規定される分条件のもとで風化させられた塗料とにおけるNOx低減に関する情報が記載されている。また、各TiO物質で調製された各対の試料における低減結果の平均値についても表3に示されている。
【0145】
【表3】
【0146】
塗布したばかりの塗料(全バリアント)には、NOx低減効果がまったくなかったといえる。しかしながら、500時間の風化を行った後、本開示(「メソ」試料)による粒子でのNOx低減は、市販の光触媒に匹敵し、色素性アナターゼよりも大いに優れたものであった。このような傾向は1000時間の風化の後も続いた。推測どおり、市販の紫外線防止TiO(UVTitan、A-HR、及びPC6A)には、上記の樹脂ブランクに匹敵するNOx低減効果がなかった。
【0147】
塗料の光学性能(発色及び光沢)もまた、風化の影響を受ける。以下の表4において、本発明によるメソ多孔質粒子に係る組織における変色性(ΔE)と光沢の保持性とは、市販の紫外線防止剤のそれに匹敵する(或いは、若干優れる場合もある)。また、各TiO物質で調製された各対の試料における変色結果と光沢保持結果とに関する平均値もまた、表4に示されている。
【0148】
【表4】
【0149】
したがって、塗料に紫外線防止剤を添加し、ひいては大気汚染物質に対する予防機能付与するという課題は、本発明により解決された。
仮想実施例5
メソ多孔質チタニア粒子は国際公開第2015/040426号に記載される工程に従い得られた。
【0150】
この際、硫酸塩法から生じたパルプが中和され、硫酸を含有しないように洗浄された。パルプを解膠するためにHClが添加され、等電点をシフトさせるためにクエン酸が添加された。その後、pHを約7まで上昇させるためにモノイソプロパノールアミンが添加され、その際、クリアゾルが生成されたことが分かった。中性のクリアゾルは、管理された条件のもと噴射乾燥された。具体的には、その後固形分17重量%の濃縮ゾルが試験室用噴射乾燥機であるLab Plant Super 7を利用して110℃の噴射乾燥機に送り込まれ、未焼成のメソ多孔質チタニア粒子が製造された。
【0151】
メソ多孔質チタニア粒子の一部は、メソ多孔質ビーズの焼成をもたらすクエン酸を除去するために、500度で8時間焼成された。
焼成されたビーズと、未焼成のビーズとは、pH7の水に別々に分散された。いずれの場合においても、TiOに対して0.1重量%に等しいシリカナノ粒子(Graceから入手可能な、Ludox(登録商標)-CL)が分散されたものに添加された。
【0152】
いずれの場合においても、得られたシリカに被覆されたチタニア粒子は、その後、噴射乾燥されて着色塗料に含有された。各塗料は、(被覆されていない物質と比較して)退色の改善と、これに準じるNOxの低減を発揮した。
補記1-実施例2のための塗料の調製
3000gの60%Synocryl(登録商標)826S溶液が、容器であってミルベースを生成するために十分に振り混ぜられ、2時間かけて転動された状態の1リットルの63%Cymel UB-26-BX(Allnexから入手可能)を有する容器の中に投入された。Synocryl(登録商標)826Sはヒドロキシ官能性のアクリル樹脂であって、低温乾燥機構の製剤において用いられ、60%溶液としてCray Valleyから入手可能である。
【0153】
「分散済みメソ多孔質」物質の場合、約0.5gのTiOが約20ミリリットルの調製されたミルベースに対して添加され、混合機であるスピードミキサーにより30秒間2500rpmで分散された(Hauschild製のスピードミキサー)。
【0154】
色素性アナターゼ、超微細アナターゼ、散布・照射済みメソ多孔質ビーズ、及び散布・焼成済みメソ多孔質ビーズの場合は、約0.002mgが約10cmX5cmの濡れた状態の塗膜上に散布された。
補記2 -実施例4のための塗料の調製
ミリング溶液 -20%Synocryl 826S
20%のミリング溶液は、60%のSynocryl(登録商標)826S(200g)が、1:1(400g)の比率のキシレンとブタノールと、4.3gのDisperByk 161(BYK製の湿潤分散添加剤)と、に対して十分に混合されるまで転動させることで調製された。
有機着色
着色剤溶液は、赤色及び青色塗料用に次のように調製された。350gの60%Synocryl(登録商標)826S、20gのキシレン、40gのDisperbyk 163、40gの有機顔料(PB15:1 Heliogen Blue K6911FP又はPR254Hosterperm Red D3G70)が、2kgのスチール製6mmバロティーニを用いてレッドデビルで1時間振り混ぜられた。
【0155】
塗料は、以下の方法により調製された(表5に記載されたグラム量を用いた)。
CYMEL(登録商標)651樹脂は、部分的にn-ブチル化したメラミン架橋剤であるAllnexによって、n-ブタノールとキシレンとの混合物中に固形分60%で供給された。
【0156】
成分数については、以下の表5における1行目に表示されている。
塗料メークアップ
塗料メークアップのTiO成分は、適切な固体状であった。その他の成分については、溶液又は懸濁液であった。各成分のグラムでの添加量(固形、溶液、又は懸濁液の重量というように示す)については、以下の表5において示されている。
【0157】
TiO成分と、有機着色成分と、20%Synocryl(登録商標)826S成分と(表5に記載のグラム量)が、ガラス瓶に添加され、170gの8mmガラスビーズと共に16時間転動させた。ある量の60%Synocryl(登録商標)826Sが添加され、まもなくしてピグメントショックを抑制するために塗料を振り混ぜ、その後30分間転動させた。少なくとも1時間の転動に先んじて、さらなる量の60%Synocryl(登録商標)826Sと、ある量の60%Cymel 651溶液とが添加された。その後、上述の塗料をふるいにかけ、使用可能状態にした。
【0158】
メソ多孔質ビーズが塗料に対して散布される場合、0.0018gの粒子が10cmX5cmに寸法決めされたパネルに対して使用された。
以上、本発明の種々の実施形態の作製及び使用について詳細に記載したが、本発明は多様な固有の状況において具現化することが可能な多数の適用可能な発明概念を提供するものであると理解されるべきである。ここで論じられる固有の実施形態は、本発明を作製し及び使用するための固有の方法を単に解説するものであり、本発明の範囲を定めるものではない。
【0159】
【表5】
図1