(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】コンバイン
(51)【国際特許分類】
A01D 67/00 20060101AFI20240510BHJP
A01D 57/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
A01D67/00 D
A01D67/00 F
A01D57/00 L
(21)【出願番号】P 2019119901
(22)【出願日】2019-06-27
【審査請求日】2021-06-22
【審判番号】
【審判請求日】2022-10-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000001052
【氏名又は名称】株式会社クボタ
(74)【代理人】
【識別番号】110001818
【氏名又は名称】弁理士法人R&C
(72)【発明者】
【氏名】山内 一樹
(72)【発明者】
【氏名】征矢 保
(72)【発明者】
【氏名】松本 健
(72)【発明者】
【氏名】安東 良将
(72)【発明者】
【氏名】池田 太
【合議体】
【審判長】前川 慎喜
【審判官】古屋野 浩志
【審判官】佐藤 史彬
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-188812(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A01D 41/00-67/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
左右の走行装置と、前記左右の走行装置を備えた走行機体と、前記走行機体の前部に設けられ、7条分の植立穀稈を刈り取り可能な刈取部とが備えられ、
前記刈取部に、左右方向に間隔をあけて設けられ、かつ、7つの穀稈導入経路を区画形成する複数の分草具と、全ての前記穀稈導入経路のそれぞれに対応して設けられ、かつ、植立穀稈を引き起こす7つの穀稈引起し装置と、全ての前記穀稈導入経路に導入される植立穀稈を切断する刈取装置と、刈り取った刈取穀稈を刈幅方向に合流させて後方に搬送する搬送装置とが備えられ、
前記搬送装置が、搬送下手側ほど幅狭となるように後方窄まり状に構成され、
前記刈取部における刈取作業領域の右側外端部の左右方向での位置が、右側の前記走行装置の横外端部の位置と略同じ位置にあるか、あるいは、右側の前記走行装置の横外端部の位置よりも右側外方に位置ずれしており、
前記刈取作業領域の左側外端部の左右方向での位置が、左側の前記走行装置の横外端部の位置と略同じ位置にあるか、あるいは、左側の前記走行装置の横外端部の位置よりも左側外方に位置ずれしており、
前記刈取部は、前記7つの穀稈導入経路のうちの右端の前記穀稈導入経路の左右幅内に、右側の前記走行装置の横外端部が位置し、かつ、前記7つの穀稈導入経路のうちの左端の前記穀稈導入経路の左右幅内に、左側の前記走行装置の横外端部が位置するように構成されて
おり、
前記穀稈引起し装置は、内部に駆動機構が設けられる引起こしケースを備えており、
右端の前記引起こしケースの左右幅内に、右側の前記走行装置の横外端部が位置しているコンバイン。
【請求項2】
前記刈取作業領域の右側外端部の左右方向での位置が、右側の前記走行装置の横外端部の位置よりも右側外方に位置ずれしており、かつ、前記刈取作業領域の左側外端部の左右方向での位置が、左側の前記走行装置の横外端部の位置よりも左側外方に位置ずれしている請求項1に記載のコンバイン。
【請求項3】
前記走行機体の左右方向一方側の横外端部の左右方向での位置が、前記刈取作業領域の左右方向一方側の横外端部の位置と、略同じ位置にあるか、あるいは、前記刈取作業領域の左右方向一方側の横外端部の位置よりも左右方向一方側外方に位置ずれしている請求項1又は2に記載のコンバイン。
【請求項4】
前記穀稈引起し装置に、横向きに突出する状態で上方に移動しながら穀稈を引き起こす複数の引起し爪が備えられ、
前記引起し爪が互いに向かい合う状態で隣り合う2つの前記穀稈引起し装置は、それぞれの前記引起し爪による引起し作用領域が重複する状態で備えられている請求項1から3のいずれか1項に記載のコンバイン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走行機体の前部に複数条の植立穀稈を刈り取り可能な刈取部が備えられているコンバインに関する。
【背景技術】
【0002】
この種のコンバインでは、複数の分草具によって7つの穀稈導入経路が区画形成され、7条全部の植立穀稈を刈取装置により刈り取り、刈取穀稈を後方に搬送するように構成されたものがあった(例えば、特許文献1参照)。そして、このような7条刈りのコンバインでは、刈取部の刈取作業領域の左右方向の幅が大きくなっており、走行機体に備えられたクローラ走行装置の横外端部の位置が、刈取作業領域の横端部よりも大幅に内側に寄った位置に設定されていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記従来構成では、7条分の植立穀稈を同時に刈り取ることができて、作業能率が向上する利点があるものの、刈取部における左右方向の幅が、走行機体の横幅を大きく上回るような大きな幅になっていた。その結果、例えば、コンバインをトラックの荷台に積載できなくなり、トラックでの輸送が行えないものとなったり、又、納屋等に保管するときに大きなスペースが必要となる等の不利があった。そこで、刈取部のうちの一部の装置を取り外すようにしたり、あるいは、一部の装置の姿勢を切り換えて格納する等の対応を取ることが考えられる。しかし、この構成では、取り外した装置を別途管理する作業や、姿勢を切り換えて元に戻す等の煩わしい作業が必要となっていた。
【0005】
そこで、7条分の植立穀稈を同時に刈り取ることができて、収穫作業の能率の向上を図れるものでありながら、コンパクトな刈取部を有するコンバインが要望されていた。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明に係るコンバインの特徴構成は、左右の走行装置と、前記左右の走行装置を備えた走行機体と、前記走行機体の前部に設けられ、7条分の植立穀稈を刈り取り可能な刈取部とが備えられ、前記刈取部に、左右方向に間隔をあけて設けられ、かつ、7つの穀稈導入経路を区画形成する複数の分草具と、全ての前記穀稈導入経路のそれぞれに対応して設けられ、かつ、植立穀稈を引き起こす7つの穀稈引起し装置と、全ての前記穀稈導入経路に導入される植立穀稈を切断する刈取装置と、刈り取った刈取穀稈を刈幅方向に合流させて後方に搬送する搬送装置とが備えられ、前記搬送装置が、搬送下手側ほど幅狭となるように後方窄まり状に構成され、前記刈取部における刈取作業領域の右側外端部の左右方向での位置が、右側の前記走行装置の横外端部の位置と略同じ位置にあるか、あるいは、右側の前記走行装置の横外端部の位置よりも右側外方に位置ずれしており、前記刈取作業領域の左側外端部の左右方向での位置が、左側の前記走行装置の横外端部の位置と略同じ位置にあるか、あるいは、左側の前記走行装置の横外端部の位置よりも左側外方に位置ずれしており、前記刈取部は、前記7つの穀稈導入経路のうちの右端の前記穀稈導入経路の左右幅内に、右側の前記走行装置の横外端部が位置し、かつ、前記7つの穀稈導入経路のうちの左端の前記穀稈導入経路の左右幅内に、左側の前記走行装置の横外端部が位置するように構成されており、前記穀稈引起し装置は、内部に駆動機構が設けられる引起こしケースを備えており、右端の前記引起こしケースの左右幅内に、右側の前記走行装置の横外端部が位置している点にある。
【0007】
本発明によれば、左右の走行装置は、刈取部による刈取作動が行われた箇所を通過することになるが,左右の走行装置は、刈取部により刈取作動が行われた領域内に収まった状態で走行することになるので、走行装置によって未刈穀稈を誤って踏みつけたりすることなく、良好に刈取作業が行える。
【0008】
そして、刈取部は、7条分の植立穀稈を刈り取ることが可能でありながら、右端の穀稈導入経路の左右幅内に右側の走行装置の横外端部が位置し、かつ、左端の穀稈導入経路の左右幅内に左側の走行装置の横外端部が位置するように構成されるので、走行機体の横幅の大きさに対して、刈取部の横幅寸法がそれほど大きくならずに、コンパクトな形状で収めることが可能となる。
【0009】
従って、7条分の植立穀稈を同時に刈り取ることができて、収穫作業の能率の向上を図れるものでありながら、コンパクトな刈取部を有するコンバインを提供することが可能となった。
【0010】
本発明においては、前記刈取作業領域の右側外端部の左右方向での位置が、右側の前記走行装置の横外端部の位置よりも右側外方に位置ずれしており、かつ、前記刈取作業領域の左側外端部の左右方向での位置が、左側の前記走行装置の横外端部の位置よりも左側外方に位置ずれしていると好適である。
【0011】
本構成によれば、刈取作業領域は、右側及び左側のそれぞれにおいて、走行装置の横外端部の位置よりも横外側方に突出する状態となるから、左右両側において、走行装置の外端位置から刈取部による未作業領域までの間隔(余裕代)を充分取ることができる。その結果、例えば、走行中に方向修正のためにすこし蛇行運転するようなことがあっても、走行装置によって未作業領域を踏み荒らすおそれが少なくなる。
【0012】
本発明においては、前記走行機体の左右方向一方側の横外端部の左右方向での位置が、前記刈取作業領域の左右方向一方側の横外端部の位置と、略同じ位置にあるか、あるいは、前記刈取作業領域の左右方向一方側の横外端部の位置よりも左右方向一方側外方に位置ずれしていると好適である。
【0013】
本構成によれば、コンバインでは、走行機体の前部における左右方向一方側に運転部が備えられる場合が多い。そして、植立穀稈が畦畔に近い位置まで植えられており、走行機体の左右方向一方側に畦畔が位置する状態で刈取作業する場合等において、刈取作業領域が左右方向一方側の横外端部が畦畔に接触することを回避しながら、走行機体をできるだけ畦畔に近づけて作業を行うことが可能となる。
【0014】
本発明においては、前記穀稈引起し装置に、横向きに突出する状態で上方に移動しながら穀稈を引き起こす複数の引起し爪が備えられ、前記引起し爪が互いに向かい合う状態で隣り合う2つの前記穀稈引起し装置は、それぞれの前記引起し爪による引起し作用領域が重複する状態で備えられていると好適である。
【0015】
本構成によれば、2つの穀稈引起し装置それぞれの引起し爪による引起し作用領域が重複しているので、それだけ2つの穀稈引起し装置を左右方向に近づけた状態で配置することができる。そうすると、7つの穀稈引起し装置の左右方向での合計の設置幅が引起し作用領域が重複しない場合に比べて狭くすることが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図8】クローラ走行装置と刈取作業領域との関係を示す正面図である。
【
図11】分岐伝動構造を示す刈取部の一部切り欠き側面図である。
【
図12】曲がり部付近の刈取穀稈の搬送状態を示す縦断面図である。
【
図14】搬送装置の穂先側穀稈搬送状態を示す平面図である。
【
図15】搬送装置の株元側穀稈搬送状態を示す平面図である。
【
図20】第二中間搬送部と第三中間搬送部との合流箇所の穂先案内状態を示す平面図である。
【
図21】第二中間搬送部と第三中間搬送部との合流箇所の株元案内状態を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係るコンバインの実施形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
この実施形態では、
図1,2に符号(F)で示す方向が機体前側、
図1,2に符号(B)で示す方向が機体後側である。
図2に符号(L)で示す方向が機体左側、
図2に符号(R)で示す方向が機体右側である。
【0019】
〔全体構成〕
図1,2に示すように、本発明に係るコンバインは、走行機体1と、7条の植立穀稈を刈り取り可能な刈取部2とを備えている。刈取部2は、横軸芯P1まわりで揺動昇降可能に走行機体1に連結され、昇降用油圧シリンダ3により駆動昇降可能に設けられている。
【0020】
走行機体1は、走行装置としての左右のクローラ走行装置4R,4Lが備えられ、機体前部の右側(左右方向一方側)に運転部5が備えられている。運転部5の後方に、刈取部2にて刈り取られた穀稈を脱穀処理する脱穀装置6と、脱穀処理にて得られた穀粒を貯留する穀粒タンク7とを機体横方向に並ぶ状態で備えられている。運転部5はキャビン8にて覆われている。脱穀装置6は、図示はしないが、刈取部2から搬送される刈取穀稈の株元を脱穀フィードチェーン9により挟持して搬送しながら、扱室内部で穂先側を扱き処理し、扱室の下部に備えられた選別部にて穀粒と塵埃に選別処理する。穀粒は穀粒タンク7に貯留し、塵埃は機外に排出する。穀粒タンク7に貯留される穀粒を外部に排出可能な穀粒排出装置10と、脱穀処理後の排ワラを細断したのちに機外に排出する細断装置11とが備えられている。
【0021】
刈取部2には、左右方向に間隔をあけて設けられ、かつ、7つの穀稈導入経路Q1~Q7を区画形成する複数(8個)の分草具12と、全ての穀稈導入経路Q1~Q7のそれぞれに対応して設けられ、かつ、植立穀稈を引き起こす7つの穀稈引起し装置13(以下、単に引起し装置という)と、全ての穀稈導入経路Q1~Q7に導入される植立穀稈を切断するバリカン型の刈取装置14と、刈り取った刈取穀稈を刈幅方向に合流させて後方に搬送する搬送装置15とが備えられている。
【0022】
8個の分草具12のうち、最も機体横外側に位置する2個の分草具12は、植立穀稈を刈取対象と対象外とに分草し、刈取対象穀稈をその分草具12に隣接する引起し経路に導入し、対象外の穀稈をその引起し経路の横外側に案内する。その他の分草具12は、2つの植付条に植立する穀稈をその分草具12の両横側に分草して分草具12の両横側の引起し経路に導入する。穀稈導入経路Q1~Q7は、左右両側の分草具12によって区画された幅を有し、1条分の植立穀稈を導入するためのものである。
【0023】
〔刈取部のフレーム構造〕
次に、刈取部2のフレーム構造について説明する。
図1に示すように、刈取部2全体を走行機体1に対して昇降可能に支持する前後向きの円筒状の刈取支持フレーム16が備えられている。この刈取支持フレーム16は、後上部の基端側に備えられた横向きの枢支部17が、機体側の支持台18に横軸芯P1まわりで回動可能に支持されている。刈取支持フレーム16は、支持台18から機体前方下方に向けて延びている。
【0024】
図2,9に示すように、刈取支持フレーム16は、7つの穀稈導入経路Q1~Q7のうちの右端から5番目の穀稈導入経路Q5の後方に対応する箇所に位置する状態で備えられている。後述するように、5番目の穀稈導入経路Q5は、1条分の刈取穀稈が搬送される箇所である。
【0025】
刈取支持フレーム16の前端部に左右方向すなわち刈幅方向に延びる円筒状の下部側横向きフレーム19が連結されている。
図1に示すように、下部側横向きフレーム19の機体横幅方向両端部に、機体前方に向けて延びる状態で左右両側の前後向きの分草フレーム20が連結されている。これら左右両端部の分草フレーム20の前後途中部同士に亘って架設される状態で、機体横幅方向に延びる角筒状の刈刃支持フレーム21が連結されている。刈取装置14は、刈刃支持フレーム21に支持されている。
【0026】
図8,9に示すように、下部側横向きフレーム19は、刈取支持フレーム16の前端部に一体的に設けられる中間部フレーム体22と、中間部フレーム体22の左側部分にフランジ連結される左側フレーム体23と、中間部フレーム体22の右側部分にフランジ連結される右側フレーム体24とを備えている。
【0027】
左右両端部の分草フレーム20の間に、間隔をあけて複数の分草フレーム20が備えられている。それら中間部の分草フレーム20は、後端部が刈刃支持フレーム21に連結され、機体前方に向けて片持ち状に延設されている。分草フレーム20は合計8本備えられ、各分草フレーム20の前端部には夫々、分草具12が備えられている。
【0028】
図1に示すように、下部側横向きフレーム19の左側端部から上方に向けて円筒状の左側上下向きフレーム25が延設されている。図示はしていないが、下部側横向きフレーム19の右側端部からも上方に向けて上下向きフレームが延設されている。そして、左側上下向きフレーム25の上端部と右側の上下向きフレームの上端部とにわたって上部側横向きフレーム26が連結されている(
図3参照)。この上部側横向きフレーム26は、7個の引起し装置13のそれぞれの上端部同士にわたって左右方向に沿って延び且つ各引起し装置13の上端部に連結されている。
【0029】
7個の引起し装置13は夫々、上側が上部側横向きフレーム26に連結され、下側が分草フレーム20に連結される。従って、各引起し装置13は、連結された状態では、上部側横向きフレーム26と分草フレーム20とを連結するフレーム部材として機能する。
【0030】
〔走行装置と刈取作業位置との位置関係〕
図4,6,8に示すように、刈取部2は、左側のクローラ走行装置4Lの横外端部TLが、7つの穀稈導入経路Q1~Q7のうちの左側端の穀稈導入経路Q7の幅内に位置し、かつ、右側のクローラ走行装置4Rの横外端部TRが、7つの穀稈導入経路Q1~Q7のうちの右端の穀稈導入経路Q1の幅内に位置するように構成されている。
【0031】
説明を加えると、刈取装置14によって刈取作業が行われる作業領域である刈取作業領域Wの左側の外端部KLが、左側のクローラ走行装置4Lの横外端部TLに対して左側外方に位置ずれしている。また、刈取作業領域Wの右側の外端部KRが、右側のクローラ走行装置4Rの横外端部TRに対して右側外方に位置ずれしている。
【0032】
刈取部2が上記したように構成されることにより、刈取作業中において、左右のクローラ走行装置4R,4Lが、未刈穀稈を踏み倒すおそれがなく、良好に刈取作業を行うことができる。又、
図4に示すように、走行機体1における右側端部(左右方向一方側の一例)の左右方向の位置と、刈取作業領域Wの右側の外端部KRの左右方向の位置とが略同じ位置になるように構成されている。
【0033】
走行機体1と刈取作業位置との位置関係について説明を加えると、
図4に示すように、走行機体1の右側の横外端部の左右方向での位置ERが、刈取作業領域Wの右側の横外端部の位置KRと略同じ位置に位置するように構成されている。走行機体1の右側の横外端部は、キャビン8の横側に固定状態で設けられている乗降用の手摺8aの外端部である。尚、キャビン8に備えられているバックミラー8bは、通常使用状態では外方に突出するが、基端部の支点部にて揺動可能であり、手摺8aの外端部より内方側に格納可能である。
【0034】
走行機体1の左側の横外端部の左右方向での位置ELが、刈取作業領域Wの左側の横外端部の位置KLよりも左右方向内方側に位置ずれしている。走行機体1の左側の横外端部は、脱穀装置6の外装ケース6a(
図2参照)の外端部である。
【0035】
〔引起し装置〕
図1,3に示すように、引起し装置13は、下端側が機体前部側に位置し且つ上端側ほど機体後方側に位置する後倒れ傾斜状態の起立姿勢で備えられている。そして、
図4に示すように、引起し装置13は、フレームを兼用する引起しケース27の内部に、上側に位置する駆動スプロケット28と緊張用スプロケット29、及び、下側に位置する従動スプロケット30の夫々にわたって巻回される無端回動チェーン31が備えられ、その無端回動チェーン31には、長手方向に沿って所定間隔をあけて複数の引起し爪32が備えられている。引起し爪32は、起立姿勢と倒伏姿勢とに姿勢変更可能に無端回動チェーン31に支持されている。
【0036】
図5に示すように、7個の引起し装置13の上部同士に亘って左右方向に延びる引起し駆動軸33が備えられている。この引起し駆動軸33からの動力が中継伝動ケース34内に備えられた中継伝動軸35を介して駆動スプロケット28に動力が伝達される。図示はしないが、引起し駆動軸33は断面形状が六角形であり、角形嵌合状態で動力を伝達するように構成されている。
【0037】
引起し装置13は、無端回動チェーン31の左右両側の上下移動経路のうちのいずれかが引起し作用経路として設定され、反対側が非作用戻し経路として設定されている。図示はしないが、引起し作用経路においては、無端回動チェーン31が通過する箇所に引起し爪32を起立案内するガイド板が備えられている。
【0038】
図4に示すように、複数の引起し装置13のうち右側から5番目の引起し装置13以外の引起し装置13は、左右に隣り合うもの同士が互いに引起し爪32が向き合う状態で配置されている。右側から5番目の引起し装置13は、引起し爪32が左方向に突出して起立する状態で配置されている。
【0039】
引起し装置13は、引起し作用経路においては、横向きに突出する引起し爪32が穀稈に梳き上げ作用しながら上昇移動し、引起し作用経路の終端に到達すると、穀稈から外れて引起しケース27の内部に収納されて非作用戻し経路を下降して引起し作用経路側に戻っていく。これにより、各引起し装置13は、上昇移動する引起し爪32によって引起し経路に導入された植立穀稈を引起し処理する。
【0040】
引起し爪32が互いに向かい合う状態で隣り合う2つの穀稈引起し装置13は、それぞれの引起し爪32による引起し作用領域Mが重複する状態で備えられている。すなわち、
図4に示すように、互いに向かい合う左右の引起し爪32による引起し作用領域Mが、左右方向に設定量mだけ重なり合うように位置が設定されている。又、向かい合う左右の引起し爪32は、上下方向に少しだけ位置がずれた状態で上方に移動するように回動位相が設定されている。このように引起し作用領域Mが左右方向に重複する構成とすることにより、刈取部2の左右方向の全幅をできるだけ小さくして、機体全体をトラックの荷台に積載可能なように、刈取部2における左右方向の幅が荷台の左右幅に収まる幅に設定されている。
【0041】
〔刈取装置〕
刈取装置14は、全ての刈取対象条(7条)の植立穀稈に作用するように左右方向(刈幅方向に対応する)の全幅にわたる長尺状に形成され、周知構造のバリカン型刈刃にて構成されている。刈取装置14の左右方向の全長は、刈取部2による左右方向での刈取作業領域Wに対応する。
【0042】
そして、
図8に示すように、刈取部2における刈取作業領域Wの左側外端部KLの左右方向での位置が、左側のクローラ走行装置4Lの横外端部TLの位置よりも、左側外方に位置ずれしている。又、刈取作業領域Wの右側外端部KRの左右方向での位置が、右側のクローラ走行装置4Rの横外端部TRの位置よりも右側外方に位置ずれしている。
【0043】
刈取装置14には、
図8に示すように、左右方向に並設した2分割された2組のバリカン型の刈刃36と、2組の刈刃36をそれぞれ駆動する左右の刈刃駆動機構37とが備えられている。詳述はしないが、左右の刈刃36には、それぞれ左右方向に多数並設された固定刃と、この固定刃の上側に摺接する状態で多数並設された可動刃とが備えられている。左右の刈刃36の外側寄り近くに備えられた可動刃操作体38に作用する刈刃駆動機構37の駆動によって、可動刃を機体横幅方向に沿って左右往復駆動するように構成されている。
【0044】
刈刃駆動機構37は、可動刃操作体38に係合する操作ローラ39を一端部に備えたアーム40、このアーム40の他端部に一端側が連結された連動ロッド41、この連動ロッド41の他端側に連結されたクランクアームとして機能する駆動回転体42を備えている。そして、駆動回転体42の回転駆動力を往復動力に変換して可動刃を左右往復駆動する。
【0045】
〔搬送装置〕
次に、搬送装置15について説明する。
図6に示すように、搬送装置15は、刈取装置14により刈り取られた穀稈の株元を後方に掻き込む7つの掻き込み部43、右側から1番目の条と2番目の条の2条分の刈取穀稈を後方に搬送する第一中間搬送部44、右側から3番目の条と4番目の条の2条分の刈取穀稈を第一中間搬送部44への合流箇所に搬送する第二中間搬送部45、右側から5番目の条の1条分の刈取穀稈を後方に搬送する第三中間搬送部46、右側から6番目の条と7番目の条の2条分の刈取穀稈を第一中間搬送部44への合流箇所に搬送する第四中間搬送部47、合流した7条の刈取穀稈を脱穀フィードチェーン9の始端部にまで搬送する供給搬送部48(
図5参照)を備えている。第三中間搬送部46は、刈取穀稈を第四中間搬送部47への合流箇所に搬送するように構成されている。
【0046】
図6,9に示すように、掻き込み部43は、刈取装置14の上方近くに機体左右方向に並んで位置して噛み合い回動する穀稈掻き込み用の回転式のパッカー43A(外形が略星形に形成された掻き込み回転体)と、そのパッカー43Aよりも上方に位置する突起付き無端回動ベルト43Bとを備えている。右端から5番目の掻き込み部43を除く6つの掻き込み部43は、左右の2条分の刈取穀稈を2条分ずつ寄せ集めながら後方に掻き込むように構成されている。右端から5番目の掻き込み部43は、右側から5番目の条の1条分の刈取穀稈を後方に掻き込むように構成されている。
【0047】
右端から5番目の掻き込み部43(以下、1条用の掻き込み部43と称する)を除く6つの掻き込み部43(以下、2条用掻き込み部43と称する)におけるパッカー43Aは、左右方向に並んで互いに噛み合う状態で備えられている。又、1条用の掻き込み部43におけるパッカー43Aは、右端から4番目の2条用掻き込む部のパッカー43Aに対して、左右方向に並んで互いに噛み合う状態で備えられている。全てのパッカー43Aは、同じ高さで左右に並ぶ状態で備えられ、右端から5番目までの5つのパッカー43Aは互いに噛み合う状態であり、5番目のパッカー43Aと6番目のパッカー43Aとは分離している。
【0048】
図5,7,9に示すように、第一中間搬送部44には、刈取穀稈の株元側箇所を挟持搬送する第一株元挟持搬送装置50と、刈取穀稈の穂先側を係止搬送する第一穂先係止搬送装置51とが備えられている。
図5に示すように、第一株元挟持搬送装置50は、複数のスプロケット52にわたって巻回された無端回動チェーン53を備えている。第一穂先係止搬送装置51は、複数のスプロケット54にわたって巻回された係止突起55付きの無端回動チェーン56を備えている。係止突起55は、起伏揺動可能に支持され、搬送作用領域では起立姿勢が維持されるように係止案内される。この係止突起55の構成は、以下の各穂先係止搬送装置でも同じ構成となっている。
【0049】
第二中間搬送部45には、刈取穀稈の株元側箇所を挟持搬送する第二株元挟持搬送装置57と、刈取穀稈の穂先側を係止搬送する第二穂先係止搬送装置58とが備えられている。
図5に示すように、第二株元挟持搬送装置57は、複数のスプロケット59にわたって巻回された無端回動チェーン60を備えている。第二穂先係止搬送装置58は、複数のスプロケット61にわたって巻回された係止突起62付きの無端回動チェーン63を備えている。
【0050】
第三中間搬送部46には、刈取穀稈の株元側箇所を挟持搬送する第三株元挟持搬送装置64と、刈取穀稈の穂先側を係止搬送する第三穂先係止搬送装置65とが備えられている。
図5,12に示すように、第三株元挟持搬送装置64は、複数のスプロケット66にわたって巻回された無端回動チェーン67を備えている。第三穂先係止搬送装置65は、複数のスプロケット68にわたって巻回された係止突起69付きの無端回動チェーン70を備えている。
【0051】
第四中間搬送部47には、刈取穀稈の株元側箇所を挟持搬送する第四株元挟持搬送装置71と、刈取穀稈の穂先側を係止搬送する第四穂先係止搬送装置72とが備えられている。第四株元挟持搬送装置71は、複数のスプロケット73にわたって巻回された無端回動チェーン74を備えている。第四穂先係止搬送装置72は、複数のスプロケット75にわたって巻回された係止突起76付きの無端回動チェーン77を備えている。
【0052】
図1,5に示すように、供給搬送部48は、第一中間搬送部44、第二中間搬送部45、第三中間搬送部46、及び、第四中間搬送部47により搬送されて合流した7条分の刈取穀稈の株元を挟持して脱穀フィードチェーン9に向けて搬送する扱深さ用搬送装置78と、その扱深さ用搬送装置78から脱穀フィードチェーン9の始端部に刈取穀稈を受け渡す受け渡し供給装置79とを備えている。
図5に示すように、扱深さ用搬送装置78及び受け渡し供給装置79は、共に、複数のスプロケット80にわたって巻回された無端回動チェーン81を備えている。図示はしないが、無端回動チェーン81に対向して挟持レールが備えられ、無端回動チェーン81と挟持レールとにより刈取穀稈の株元を挟持して搬送する。
【0053】
図示はしないが、扱深さ用搬送装置78は、搬送始端側を支点にして搬送終端側が稈長方向に移動するように揺動可能に支持されている。搬送終端側を移動することで、合流箇所から受け継いだ刈取穀稈を稈長方向(上下方向)に位置変更して、脱穀装置6に対する入り込み深さを変更調整できるように構成されている。
【0054】
〔第一中間搬送部と第二中間搬送部の合流箇所について〕
図15,21に示すように、第一中間搬送部44のうちの第一株元挟持搬送装置50は、搬送始端部から第二中間搬送部45における第二株元挟持搬送装置57からの合流箇所にわたる領域に、無端回動チェーン53に対向して第一挟持レール82を備えている。無端回動チェーン53と第一挟持レール82により刈取穀稈の株元を挟持して後方に搬送する。
図15に示すように、第二株元挟持搬送装置57にも同様に、無端回動チェーン60に対向して第二挟持レール83が備えられ、無端回動チェーン60と第二挟持レール83により刈取穀稈の株元を挟持して後方に搬送する。
【0055】
第一株元挟持搬送装置50と第二株元挟持搬送装置57とは穀稈搬送経路が向き合っており、かつ、各穀稈搬送経路が交差する状態で、第二株元挟持搬送装置57にて搬送される刈取穀稈を第一株元挟持搬送装置50の搬送経路に合流するように構成されている。
【0056】
第一株元挟持搬送装置50に、第一挟持レール82を無端回動チェーン53に対して押圧付勢並びに退避移動可能に支持する第一支持枠体84が備えられている。第二株元挟持搬送装置57に、第二挟持レール83を無端回動チェーン60に対して押圧付勢並びに退避移動可能に支持する第二支持枠体85が備えられている。それぞれの支持枠体84,85は、板体を略U字状に曲げて形成され、対応する無端回動チェーン53,60に沿って延びる状態で備えられている。
図22に示すように、各支持枠体84,85の内部には挟持レール82,83を押圧付勢するためのコイルバネ86が備えられている。各支持枠体84,85は、分草フレーム20に固定支持された支持部材87に固定されている。
【0057】
図21に示すように、第一株元挟持搬送装置50の第一挟持レール82は、穀粒の合流箇所よりも搬送方向上手側の箇所にて挟持終端位置が設定されている。そして、第一挟持レール82の挟持終端位置よりも第一株元挟持搬送装置50の搬送下手側において、無端回動チェーン53に対して経路上側箇所及び経路下側箇所のそれぞれに、補助搬送ガイド88,89が備えられている。
【0058】
図15,21,22に示すように、無端回動チェーン53に対して経路上側に位置する状態で、板バネにて構成される上側補助搬送ガイド88が備えられている。又、無端回動チェーン53に対して経路下側に位置する状態で、ピアノ線にて構成される下側補助搬送ガイド89が備えられている。
【0059】
上側補助搬送ガイド88及び下側補助搬送ガイド89は、搬送上手側の一端部が第二株元挟持搬送装置57に対応する第二支持枠体85に支持され、搬送下手側の他端部が穀稈搬送経路に向けて片持ち状に延ばされている。
【0060】
第一株元挟持搬送装置50の第一挟持レール82による穀稈挟持領域と、上側補助搬送ガイド88及び下側補助搬送ガイド89による搬送作用領域とは、穀稈搬送方向に沿って一部重複している。これにより、第一株元挟持搬送装置50は、右側から1番目の条と2番目の条の2条分の刈取穀稈を良好に搬送できるとともに、第二株元挟持搬送装置57にて搬送される刈取穀稈が第一挟持レール82によって合流が邪魔されることなく、良好に合流されて後方に搬送することができる。
【0061】
図21に示すように、第一株元挟持搬送装置50における刈取穀稈が合流された後の搬送経路に、第二株元挟持搬送装置57の第二支持枠体85から片持ち状に延設される状態で後部挟持レール90が備えられている。無端回動チェーン53と後部挟持レール90により刈取穀稈の株元を挟持して後方に搬送する。又、合流箇所と同様に、板バネにて構成される上側補助搬送ガイド91と、ピアノ線にて構成される下側補助搬送ガイド92とが備えられ、合流した刈取穀稈を扱深さ用搬送装置78に受け渡すように搬送する。
【0062】
図15,22に示すように、第一株元挟持搬送装置50に、無端回動チェーン53の経路に沿って長く延びる状態で、丸パイプ材からなる株元挟持用支持フレーム93が備えられている。株元挟持用支持フレーム93には、無端回動チェーン53の挟持作用領域において背面から受止め支持する背部案内レール94が備えられている。図示はしないが、株元挟持用支持フレーム93は、前端部が右端の分草フレーム20に支持され、後端部は、刈取支持フレーム16から延設される分岐用伝動ケース95に支持されている。
【0063】
図15,22に示すように、株元挟持用支持フレーム93の長手方向の中間部から一体的に連結される状態で、無端回動チェーン53の戻り経路に対して外面側から摺接する株元側ガイド部材96が備えられている。株元側ガイド部材96は、略帯板状に形成され、前後両側が先細状であり、無端回動チェーン53に対する接触部が緩やかな円弧状に形成されている。この株元側ガイド部材96により無端回動チェーン53の戻り経路をキャビン8から離れて移動するように摺動案内する。
【0064】
〔第一穂先係止搬送装置〕
第一穂先係止搬送装置51は、無端回動チェーン56が回動することで、起立姿勢の係止突起55により刈取穀稈の穂先側を係止しながら左後方に搬送するように構成されている。第一穂先係止搬送装置51の上側には、刈取穀稈の穂先部を受止めて摺接案内する穂先摺接案内板97が備えられている。
【0065】
第一穂先係止搬送装置51の前半部分は、右側から1番目の条と2番目の条の2条分の刈取穀稈について穂先側の係止搬送を行う。搬送途中部からは、第二中間搬送部45により搬送された刈取穀稈が合流された状態で係止搬送する。さらに、搬送後半では、第三中間搬送部46及び第四中間搬送部47により搬送された刈取穀稈が合流して、7条分の刈取穀稈が全て合流する。その後は、7条分の刈取穀稈を係止搬送して脱穀装置6の入口に向けて案内する。
【0066】
このように第一穂先係止搬送装置51は前後方向に長い搬送経路を有しており、しかも、運転部5の前方を通過する。そこで、
図3,6,7,11に示すように、第一穂先係止搬送装置51は、運転部5の前方を通りつつ機体後方に向けて曲げて機体後方に向けて延びている。
【0067】
第一穂先係止搬送装置51は、左側に穀稈の搬送経路が設定され、右側に搬送作用を行わない戻り経路が設定されている。搬送経路及び戻り経路のそれぞれにおいて、運転部5の前方を通りつつ機体後方に向けて曲げて機体後方に向けて延びている。
【0068】
図11,22に示すように、第一穂先係止搬送装置51には、無端回動チェーン56を摺動案内する搬送用案内レール98が備えられている。搬送用案内レール98は、前端側が分草フレーム20に支持され、後端側が揺動支点付近の横向きの枢支部17に支持されている。搬送経路においては、無端回動チェーン56が搬送用案内レール98によって摺動案内される。このとき、係止突起55が起立姿勢になるように起立ガイド部材99により係止案内される。
図7に係止突起55の先端回動軌跡Uを描いており、この図に示すように、搬送経路においては、係止突起55が起立姿勢のまま移動して、穂先側を係止案内する。
図7から明らかなように、第一穂先係止搬送装置51の搬送経路は、途中部で後側に曲がる形状となっている。
【0069】
そして、
図11,16に示すように、搬送用案内レール98の前端側と後端部とに支持されて、運転部5の前方を通りつつ機体後方に向けて曲げる経路に沿って延びる状態で、かつ、戻り経路の無端回動チェーン56の外周側(右側)に位置する状態で、戻り路用案内レール100が備えられている。
図22に示すように、戻り路用案内レール100は、戻り経路の無端回動チェーン56を案内可能なように、断面形状が略L字形あるいは略U字形となる板体にて構成されている。この戻り路用案内レール100は、直線状に形成される4個の分割レール体100aを、折り曲げた状態で順次、一体的に連結して平面視で曲がり形状の経路を形成している。戻り経路を通過しているときは、係止突起55は無端回動チェーン56に沿うように倒伏した姿勢となる。
【0070】
図7,16に示すように、第一穂先係止搬送装置51の上側に備えられる穂先摺接案内板97は、刈取部2の昇降動作にかかわらず、運転部5のキャビン8に干渉しないように、接触するおそれがある箇所が運転部5から離れるように、平板を波型に折れ曲げた形状になっている。
【0071】
第二中間搬送部45、第三中間搬送部46、第四中間搬送部47においても、搬送される穀稈の穂先側部分を受止めて摺接案内する穂先摺接案内板101,102,103が備えられている。
【0072】
〔曲がり部での穂先案内の構成〕
第一穂先係止搬送装置51のうち後方への曲がり部に対応する箇所において、刈取穀稈における第一穂先係止搬送装置51による係止作用位置Zよりも上側の箇所を運転部5側に向けて押し付けながら案内する上側穂先案内部としての上側ガイド杆104が備えられている。
【0073】
図6,20に示すように、上側ガイド杆104は、丸棒を略U字形に折り曲げて形成されている。上側ガイド杆104の搬送上手側の端部が平坦面状に潰された状態で、第二中間搬送部45の支持フレーム105にボルト連結されている。
図20に示すように、上側ガイド杆104の搬送上手側における上下方向に延びる縦向き部分が、第二中間搬送部45の穂先摺接案内板101に形成された挿通孔106を挿通する状態で設けられている。
【0074】
図7,20に示すように、第四中間搬送部47には、搬送される刈取穀稈の穂先側部分を案内して第一中間搬送部44の搬送経路に合流させる合流用穂先案内部としての合流用ガイド杆107が備えられている。合流用ガイド杆107は、丸棒を略S字状に曲げて形成されている。合流用ガイド杆107の搬送上手側の端部は、第三中間搬送部46の支持フレーム108にボルト連結されている。
【0075】
合流用ガイド杆107の延設途中部から支持ブラケット109が固定延設され、支持ブラケット109の延設側端部が第三中間搬送部46の穂先摺接案内板102にボルト連結されている。そして、上側ガイド杆104の搬送下手側の端部が支持ブラケット109にボルト連結されている。穂先摺接案内板102は、第三中間搬送部46の支持フレーム108に支持されている。従って、上側ガイド杆104は、第二中間搬送部45の支持フレーム105、及び、第三中間搬送部46の支持フレーム108にわたって支持されている。
【0076】
刈取穀稈における第一穂先係止搬送装置51による係止作用位置Zよりも下側の箇所を運転部5側に向けて押し付けながら案内する下側穂先案内部としての下側ガイド杆110が備えられている。下側ガイド杆110は、丸棒を略L字形に折り曲げて形成されている。下側ガイド杆110の搬送上手側の端部が平坦面状に潰された状態で、第二中間搬送部45の支持フレーム105にボルト連結されている。
【0077】
そして、下側ガイド杆110の搬送下手側の端部は、合流用ガイド杆107の搬送下手側の端部と一体的に連結されている。この構成により、搬送される穀稈を円滑に合流させることができ、しかも、各ガイド杆107,110が片持ち状に自由状態で設けられる場合に比べて、曲がり変形等が生じ難く、耐久性に優れたものにできる。
【0078】
〔第三中間搬送部〕
図6,7,9,14に示すように、第三中間搬送部46における第三株元挟持搬送装置64は、右側から5番目の条の1条分の刈取穀稈の株元を挟持して、機体前後方向に沿って搬送して、第四株元挟持搬送装置71の搬送経路の途中部に合流させるように構成されている。
【0079】
第四株元挟持搬送装置71は、右側から6番目の条と7番目の条の2条分の刈取穀稈の株元を挟持して、右後方斜め方向に沿って搬送して、扱深さ用搬送装置78の始端部に受け渡すように構成されている。第四穂先係止搬送装置72は、右側から6番目の条と7番目の条の2条分の刈取穀稈の穂先側に係止して、右後方斜め方向に沿って搬送して、第一穂先係止搬送装置51の搬送途中部に合流させるように構成されている。
【0080】
第三株元挟持搬送装置64は、搬送する穀稈を第四株元挟持搬送装置71における右後方斜め方向に沿って搬送する斜め移送経路の途中部に合流させるように構成されている。第三穂先係止搬送装置65は、右側から5番目の条の1条分の刈取穀稈の穂先側に係止して、刈取穀稈を機体前後方向に沿って搬送して、第四穂先係止搬送装置72における右後方斜め方向に沿って搬送する斜め移送経路の途中部に合流させるように構成されている。
【0081】
〔伝動構造〕
次に、刈取部2に対する伝動構造について説明する。
図5に示すように、走行機体1に搭載されるエンジンE(
図1参照)の出力を図示しない変速装置により変速した後の動力が、刈取支持フレーム16の枢支部17の内部に備えられた横向き伝動軸111に伝達される。横向き伝動軸111から刈取支持フレーム16の内部に備えられた前後向きの刈取伝動軸112を介して動力が伝達される。
【0082】
上述した変速後の動力が、前後向きの刈取伝動軸112から下部側横向きフレーム19の内部に備えられた横向きの入力軸113に伝達される。その入力軸113の両側端部に設けられた分岐部114を介して、刈取装置14に動力が伝達される。
【0083】
入力軸113の左側に備えられた分岐部115から縦向き伝動軸116に伝達される。縦向き伝動軸116の上下途中から動力が分岐されて、第四中間搬送部47に動力が伝達され、第四中間搬送部47から最左側の掻き込み部43に動力が伝達される。隣接する掻き込み部43(右端から6番目)に対しては、パッカー43A同士の噛み合いにより動力伝達される。
【0084】
上部側横向きフレーム26に沿って左右方向の全幅に亘る状態で、引起し装置13の上部同士にわたる横向きの引起し駆動軸33が備えられている。そして、縦向き伝動軸116からの動力が、ギア変速機構118により変速されたのち、引起し駆動軸33に伝達される。引起し駆動軸33から7個の引起し装置13に動力が伝達される。
【0085】
一方、前後方向に延びる刈取伝動軸112の伝動途中部から、右側に位置する5つの掻き込み部43、第一株元挟持搬送装置50、第二中間搬送部45、第三中間搬送部46、供給搬送部48に動力が伝達される。第一穂先係止搬送装置51に対しては、横向き伝動軸111から動力伝達される。
【0086】
そして、刈取支持フレーム16の途中部において、刈取伝動軸112から分岐された動力を、第二中間搬送部45及び第三中間搬送部46に伝達する第一分岐伝動機構119が備えられている。
【0087】
第一分岐伝動機構119について説明する。
図5,12に示すように、刈取伝動軸112の伝動途中部にベベルギア機構120を有する第一分岐部121が備えられている。第一分岐部121にて刈取伝動軸112から第一分岐伝動軸122に動力が分岐伝達される。第一分岐伝動軸122は、刈取伝動軸112からベベルギア機構120を介して動力が分岐されて前方斜め上方に向けて延びている。第一分岐伝動軸122は、刈取支持フレーム16に一体的に形成された円筒状の第一分岐用ケース123に支持されている。第一分岐伝動軸122は、第三中間搬送部46における第三株元挟持搬送装置64の駆動スプロケット66と、第三穂先係止搬送装置65の駆動スプロケット68とを直接駆動するように構成されている。第三株元挟持搬送装置64から右端より5番目の掻き込み部43に動力が伝達される。
【0088】
図5,13に示すように、第一分岐伝動軸122の途中部から第二分岐伝動軸124に動力が分岐されている。第二分岐伝動軸124は、第一分岐伝動軸122からベベルギア機構125を介して動力が分岐されて、横方向に向けて延びている。第二分岐伝動軸124は、第一分岐用ケース123に一体的に形成された円筒状の第二分岐用ケース126に支持されている(
図9参照)。
【0089】
第二分岐伝動軸124からベベルギア機構127を介して動力が伝達される第三分岐伝動軸128が備えられている。第三分岐伝動軸128は斜め前方に向けて延びている。第三分岐伝動軸128は、第二分岐用ケース126に一体的に形成された円筒状の第三分岐用ケース129に支持されている。
【0090】
第三分岐伝動軸128は、第二株元挟持搬送装置57の駆動スプロケット59と、第二穂先係止搬送装置58の駆動スプロケット61とを直接駆動するように構成されている。第二株元挟持搬送装置57から右端より4番目の掻き込み部43に動力が伝達される。隣接する掻き込み部43(右端から3番目)に対しては、パッカー43A同士の噛み合いにより動力伝達される。
【0091】
従って、第一分岐部121を介して第三中間搬送部46に伝達される動力が、右端から5番目の掻き込み部43に伝達され、第一分岐部121を介して第二中間搬送部45に伝達される動力が、右端から4番目の掻き込み部43に伝達される。そして、右端から5番目の掻き込み部43のパッカー43Aと、右端から4番目の掻き込み部43のパッカー43Aとが連動して回転可能に噛み合う状態で備えられている。
【0092】
刈取伝動軸112における第一分岐伝動機構119が備えられる箇所よりも伝動上手側箇所から分岐された動力を、第一株元挟持搬送装置50に伝達する第二分岐伝動機構130が備えられている。
【0093】
第二分岐伝動機構130について説明する。
図5,10に示すように、刈取伝動軸112における第一分岐部121が備えられる箇所よりも伝動上手側箇所に第二分岐部131が備えられている。第二分岐部131にて刈取伝動軸112から第四分岐伝動軸132と第五分岐伝動軸133に動力が分岐される。第四分岐伝動軸132は、分岐伝動ケース140により支持され、刈取伝動軸112からベベルギア機構134を介して動力が分岐されて前方斜め上方に向けて延びている。第五分岐伝動軸133は、刈取伝動軸112からベベルギア機構135を介して動力が分岐されて左前方斜め上方に向けて延びている。
【0094】
第四分岐伝動軸132から第一中間搬送部44における第一株元挟持搬送装置50に動力が伝達され、第一株元挟持搬送装置50の動力が右端の掻き込み部43に伝達される。右端の掻き込み部43のパッカー43Aと、右端から2番目の掻き込み部43のパッカー43Aとが連動して回転可能に噛み合う状態で備えられ、2番目の掻き込み部43に動力が伝達される。第五分岐伝動軸133から、ベベルギア機構136を介して扱深さ用搬送装置78に動力が伝達される。
【0095】
〔別実施形態〕
(1)上記実施形態では、左右両側のそれぞれにおいて、刈取作業領域の外端部の位置が、クローラ走行装置の横外端部の位置よりも左右方向外方に位置ずれしているものを示したが、この構成に代えて、刈取作業領域Wの右側外端部KRの左右方向での位置が、右側のクローラ走行装置4Rの横外端部TRの位置と略同じ位置にある構成とするものでもよく、刈取作業領域Wの左側外端部KLの左右方向での位置が、左側のクローラ走行装置4Lの横外端部TLの位置と略同じ位置にある構成とするものでもよい。又、左右両側のそれぞれにおいて、刈取作業領域Wの外端部の左右方向での位置と、走行装置の横外端部の位置とが略同じ位置にある構成としてもよい。
左右両側
【0096】
(2)上記実施形態では、走行機体1における右側端部(左右方向一方側の一例)の左右方向の位置と、刈取作業領域Wの右側の外端部KRの左右方向の位置とが略同じ位置になるように構成されるものを示したが、この構成に代えて、走行機体1における右側端部の左右方向の位置ERが、刈取作業領域Wの右側の外端部KRの左右方向の位置よりも右側外方に位置する構成としてもよく、走行機体1における左側端部の左右方向の位置ELが、刈取作業領域Wの左側の外端部KLの左右方向の位置よりも左側外方に位置する構成としてもよい。
【0097】
(3)上記実施形態では、引起し爪32が互いに向かい合う状態で隣り合う2つの穀稈引起し装置13が、それぞれの引起し作用領域Mが重複する状態で備えられる構成としたが、それぞれの引起し作用領域Mが重複していない構成としてもよい。
【0098】
(4)上記実施形態では、刈取部2により7条分の植立穀稈を刈り取るようにしたが、例えば、右側の穀稈導入経路Q1に2条分の植立穀稈を導入する等、8条の植立穀稈を刈り取るようにしてもよく、少なくとも7条を刈り取ることができるものであればよい。
【産業上の利用可能性】
【0099】
本発明は、走行機体の前部に7条分の植立穀稈を刈り取り可能な刈取部が備えられているコンバインに適用できる。
【符号の説明】
【0100】
1 走行機体
2 刈取部
4R,4L 走行装置
12 分草具
13 穀稈引起し装置
14 刈取装置
15 搬送装置
32 引起し爪
ER 走行機体の横外端部
KR 右側外端部
KL 左側外端部
TR 右側の走行装置の横外端部
TL 左側の走行装置の横外端部
Q1~Q7 穀稈導入経路
W 刈取作業領域