(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】モジュールシステム
(51)【国際特許分類】
G05B 19/042 20060101AFI20240510BHJP
B21D 37/16 20060101ALI20240510BHJP
B21D 24/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
G05B19/042
B21D37/16
B21D24/00 M
(21)【出願番号】P 2019185488
(22)【出願日】2019-10-08
【審査請求日】2022-09-06
(73)【特許権者】
【識別番号】000133526
【氏名又は名称】株式会社チノー
(74)【代理人】
【識別番号】100109553
【氏名又は名称】工藤 一郎
(72)【発明者】
【氏名】福田 和敬
(72)【発明者】
【氏名】武田 篤士
(72)【発明者】
【氏名】今村 藍介
(72)【発明者】
【氏名】八木 俊幸
(72)【発明者】
【氏名】平野 和哉
【審査官】影山 直洋
(56)【参考文献】
【文献】特開昭62-099806(JP,A)
【文献】特開2001-306112(JP,A)
【文献】特開2016-032228(JP,A)
【文献】国際公開第2015/198379(WO,A1)
【文献】特開2000-214908(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/042
B21D 37/16
B21D 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の制御対象の制御に用いられるモジュールシステムであって、
マスターモジュールにもスレーブモジュールにも設定可能な両用モジュールから構成され、1台のマスターモジュールと、マスターモジュールと通信経路で連絡される他のスレーブモジュールと、からな
り、
前記マスターモジュールは、前記複数の制御対象の制御条件を該複数の制御対象に対応する各スレーブモジュールに伝送すると共に、それぞれのスレーブモジュールから制御対象の各制御状態データが伝送され、
前記スレーブモジュールは、マスターモジュールから複数の制御対象に与えられた制御条件に基いてそれぞれ対応する制御対象を制御すると共に、複数の制御対象それぞれの制御状態データを送出し、
両用モジュールは、
マスターとして利用するか、スレーブとして利用するかを設定して設定保持するための筐体に設けられた第一機械スイッチ、及び、他の両用モジュールと通信のためにモジュールを識別する通信用識別情報を設定して設定保持するための
第二機械スイッチであって前記筐体に設けられた目視操作可能
なトリマを有するスイッチ部と、
前記通信用識別情報を連結された通信経路を介さないで個別通信を介して設定するための通信個別設定部と、
通信個別設定部で設定された通信用識別情報を保持するための通信設定識別情報保持部と、
を有するモジュールシステム。
【請求項2】
連絡される両用モジュールは、相互に内部バスで連結されており、前記第二機械スイッチであるトリマと、前記通信設定識別情報保持部とは、互いに連絡される両用モジュール間で共用する内部バスに接続されている請求項1に記載のモジュールシステム。
【請求項3】
前記通信経路はすべての両用モジュールで共通に利用するシリアル通信経路である請求項1又は請求項2に記載のモジュールシステム。
【請求項4】
前記第一機械スイッチは、両用モジュール内に配置され、稼働状態で設定変更ができない位置に配置されている請求項1から請求項3のいずれか一に記載のモジュールシステム。
【請求項5】
両用モジュールは、マスターと同マスター配下のスレーブが同期して点滅する発光部をさらに有する請求項1から請求項4のいずれか一に記載のモジュールシステム。
【請求項6】
第二機械スイッチであるトリマを両用モジュール共通の特定の設定とした場合にのみ、前記通信個別設定部による識別情報の設定が可能となる請求項1から請求項5のいずれか一に記載のモジュールシステム。
【請求項7】
モジュールの起動時に第二機械スイッチであるトリマの設定が、両用モジュール共通の特定の設定であるか、それ以外の設定であるか判断する第二機械モジュール設定値判断手段と、第二機械スイッチであるトリマの設定が前記特定の設定である場合に、通信個別設定部による設定をさせる通信個別設定部機能手段と、を有する機器アドレス決定部をさらに有する請求項1から請求項6に記載のモジュールシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、大型ホットプレス機における金型を均一に又は意図的に分布を持たせて加熱する際に、該金型に設定される多数の加熱箇所(制御対象)の温度制御、すなわち、多数点温度制御に用いられるモジュールシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、上記したような多数点温度制御に用いられるモジュールシステムに類するシステムとしては、 例えば、特許文献1に記載されたがものある。
【0003】
この多チャンネル制御システムは、複数の制御対象に対して制御条件の送出及び制御状態データの受信を行うパーソナルコンピューター等の上位制御装置と、複数のスレーブ制御ユニットと、マスター制御ユニットを備えている。
【0004】
複数のスレーブ制御ユニットは、上位制御装置から複数の制御対象に与えられた制御条件に基づいてそれぞれ制御すると共に、複数の制御対象それぞれの制御状態データを上位制御装置に送出する。
【0005】
一方、マスター制御ユニットは、上位制御装置及び複数のスレーブ制御ユニットに接続されており、上位制御装置からの制御条件を各スレーブ制御ユニットに伝送すると共に、それぞれのスレーブ制御ユニットから伝送される各制御対象の制御状態データを上位制御装置に伝送する。
【0006】
このような多チャンネル制御システムにおいて、マスター制御ユニットと複数のスレーブ制御ユニットそれぞれとの通信は、複数のスレーブ制御ユニット個々に設定された通信用の識別情報に基づいて行われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上記した多チャンネル制御システムにおいて、複数のスレーブ制御ユニット個々の通信用識別情報の設定を機械的な設定手段、例えば、トリマを用いて行う場合、スレーブ制御ユニットの数が少なければ、トリマを操作するといった簡単な機械的な操作で設定することができる。
【0009】
しかしながら、スレーブ制御ユニットの数を多くすると、それなりにトリマの個数及び操作回数が増え、このようにトリマの個数及び操作回数が増えれば、結果的に機械操作が逆に煩雑なものとなって設定ミスが生じ兼ねず、加えて、トリマが占めるスペースも大きくなってしまう。
したがって、上記した多チャンネル制御システムにおいて、スレーブ制御ユニットの数は、通信用の識別情報の設定を簡単な機械的操作で済ませ得る範囲でしか増設することができず、これを解決することが従来の課題となっている。
【0010】
本発明は、上記した従来の課題を解決するために成されたものであり、制御対象が少ない場合には、簡単な機械的操作で運転前の設定操作を行うことができるのは勿論のこと、制御対象が多い場合であったとしても、省スペース化を図ったうえで、設定ミスを少なく抑えつつ運転前の設定操作を行うことが可能であり、したがって、多数の制御対象の制御にも対応することができるモジュールシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0011】
上記課題を解決するために、本発明は、以下のモジュールシステムを提供する。
すなわち、本発明の第一の態様は、マスターモジュールにもスレーブモジュールにも設定可能な両用モジュールから構成され、1台のマスターモジュールと、マスターモジュールと通信経路で連絡される他のスレーブモジュールと、からなるモジュールシステムであって、両用モジュールは、マスターとして利用するか、スレーブとして利用するかを設定して設定保持するための筐体に設けられた第一機械スイッチ、及び、他の両用モジュールと通信のためにモジュールを識別する通信用識別情報を設定して設定保持するための筐体に設けられた目視操作可能な第二機械スイッチを有するスイッチ部と、前記通信用識別情報を連結された通信経路を介さないで個別通信を介して設定するための通信個別設定部と、通信個別設定部で設定された通信用識別情報を保持するための通信設定識別情報保持部と、を有する構成としている。
【0012】
また、本発明の第二の態様において、連絡される両用モジュールは、相互に内部バスで連結されており、前記第二機械スイッチと、前記通信設定識別情報保持部とは、互いに連絡される両用モジュール間で共用する内部バスに接続されている構成としている。
【0013】
さらに、本発明の第三の態様において、前記通信経路はすべての両用モジュールで共通に利用するシリアル通信経路である構成としている。
【0014】
さらにまた、本発明の第四の態様において、前記第一機械スイッチは、両用モジュール内に配置され、稼働状態で設定変更ができない位置に配置されている構成としている。
【0015】
さらにまた、本発明の第五の態様において、両用モジュールは、マスターと同マスター配下のスレーブが同期して点滅する発光部をさらに有する構成としている。
【0016】
さらにまた、本発明の第六の態様は、第二機械スイッチを両用モジュール共通の特定の設定とした場合にのみ、前記通信個別設定部による識別情報の設定が可能となる構成としている。
【0017】
さらにまた、本発明の第7の態様は、モジュールの起動時に第二機械スイッチの設定が、両用モジュール共通の特定の設定であるか、それ以外の設定であるか判断する第二機械モジュール設定値判断手段と、第二機械スイッチの設定が前記特定の設定である場合に、通信個別設定部による設定をさせる通信個別設定部機能手段と、を有する機器アドレス決定部をさらに有する構成としている。
【発明の効果】
【0018】
本発明によれば、多数の制御対象の制御にも対応することが可能であるという非常に優れた効果が得られる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1A】実施形態1に係るモジュールシステムのシステム構成図
【
図1B】
図1Aのモジュールシステムにおける両用モジュールの組み立て要領及び連結要領を合わせて示した斜視図
【
図2】実施形態1のモジュールシステムにおける両用モジュールの機能ブロック図
【
図3】実施形態1のモジュールシステムにおける両用モジュールのハードウェア構成例を示す図
【
図4A】実施形態1のモジュールシステムにおける両用モジュールのハードウェアによる運転前設定処理フローチャート
【
図4B】実施形態1のモジュールシステムにおける両用モジュールのソフトウェアによる運転前設定処理フローチャート
【
図5】実施形態2のモジュールシステムにおける両用モジュールが通信異常告知を行っている状態の部分システム構成図
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下に、本発明の実施形態を説明する。実施形態と請求項の相互の関係は以下のとおりである。実施形態1は主に請求項1~請求項4,請求項6,請求項7に関し、実施形態2は主に請求項5に関する。なお、本発明はこれらの実施形態に何ら限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において、種々なる態様で実施し得る。
<実施形態1>
<概要>
【0021】
本実施形態は、1台のマスターモジュールと、このマスターモジュールと通信経路で連絡される複数のスレーブモジュールとを備えたモジュールシステムであって、マスターモジュール及びスレーブモジュールが、いずれのモジュールにも設定可能な両用モジュールから構成され、マスターの設定はハードで行い、スレーブの設定及び識別についてはハード及びソフトの両面から行えるようにしたことを主たる特徴とする。
【0022】
このモジュールシステムを、例えば、大型ホットプレス機における金型を均一に又は意図的に分布を持たせて加熱する際の金型の多数点温度制御に用いた場合には、省スペース化を図ったうえで、設定ミスを少なく抑えつつ運転前の設定操作を行うことができるという効果を奏する。
<構成>
【0023】
すなわち、本実施形態のモジュールシステムは、
図1Aに示すように、複数の制御対象(例えば、大型ホットプレス機における金型の多数の加熱ポイントに配置された加熱器)H1,H2,…,Hnに制御条件を送ると共に複数の制御対象H1,H2,…,Hnの制御状態データを受け取る上位制御装置としてのPC(パーソナルコンピューター)0101,PLC(プログラムロジックコントローラ)0102及び記録計0103と、イーサネット(登録商標)通信のためのコミュニケーションモジュール0110と、複数の制御対象H1,H2,…,Hnに対応して設けられて1つの制御対象に対して多チャンネル制御が可能な両用モジュール0120を備えており、PC0101,PLC0102及び記録計0103は、ハブ0105を介してコミュニケーションモジュール0110と接続している。
【0024】
コミュニケーションモジュール0110及び複数の両用モジュール0120は、工場内壁面に装備されるDINレール(日本のJIS規格に相当するドイツ工業規格に定められた規格の金属製レール)Rに、図示左側から順に並べて配置されており、これらのモジュール0110,0120は、DINレールRの適宜位置に対して、公知の着脱要領で取り付けたり取り外したりすることができるようになっている。
【0025】
両用モジュール0120は、
図1Bに示すように、ベース0130,モジュール本体0140及び端子台0150から構成されており、ベース0130は、上述のとおりDINレールRに対して適宜位置に固定される。
【0026】
このDINレールRに固定されるベース0130の下部には、モジュール本体0140側に向けて延出する一対のアーム0131,0131が設けてあり、一方、モジュール本体0140の下部ベース側には、ベース0130における一対のアーム0131,0131の各先端に形成した上に凸の軸部0132,0132と回動可能に嵌合する一対の軸受け部0142(
図1Bでは片側のみ示す)が形成されている。つまり、モジュール本体0140は、その一対の軸受け部0142をベース0130における一対のアーム0131,0131の各軸部0132,0132に嵌合させた状態で図示反時計方向に回動させ、互いに当接するベース0130及びモジュール本体0140同士を図示しないロック機構により固定することで、ベース0130に連結される。
【0027】
また、ベース0130には、本体接続用コネクタ0133が設けてあり、上述のようにモジュール本体0140を回動させてベース0130にモジュール本体0140を連結するに際して、ベース0130の本体接続用コネクタ0133にモジュール本体0140に設けた図示しないベース接続用コネクタが嵌合接続するように成すことで、両者の電気的な接続が成されるようにしている。
【0028】
さらに、モジュール本体0140には端子接続用コネクタ0144が設けてあり、このモジュール本体0140の端子接続用コネクタ0144に、端子台0150に設けた図示しない本体接続用コネクタを嵌合接続することで、モジュール本体0140に対する端子台0150の機械的接続及び電気的接続のいずれもが成されるようにしている。
【0029】
この際、両用モジュール0120のベース0130は、その一方側(図示右側)の側部に雄コネクタ0135を有していると共に、他方側(図示左側)の側部に雌コネクタ0136を有している。そして、DINレールRに並べて配置されて隣接する両用モジュール0120,0120は、DINレールRに固定した図示左側に位置する両用モジュール0120に対して図示右側に位置する両用モジュール0120を
図1B太い白抜き矢印方向に移動させて、互いに向き合う雄コネクタ0135及び雌コネクタ0136同士を嵌合することで、両者の電気的な接続が成されるようにしている。
【0030】
なお、コミュニケーションモジュール0110及びこれに隣接する両用モジュール0120も、上記した互いに隣接する両用モジュール0120,0120同士と同様の要領で互いに電気的に接続されるようにしている。
【0031】
このようにDINレールR上に並べられて互いに連結して固定された両用モジュール0120に対する電源Pは、コミュニケーションモジュール0110を通して両用モジュール0120の各ベース0130に順次供給される。なお、イーサネット(登録商標)通信を使用しない場合は、コミュニケーションモジュール0110を省いたうえで、DINレールR上において互いに連結して固定される両用モジュール0120のうちの最も上位制御装置側に位置する両用モジュール0120を通して電源Pが後続の両用モジュール0120の各ベース0130に順次供給されるようにする。
【0032】
本実施形態のモジュールシステムにおいて、
図1A及び
図1Bに白抜き矢印でも示すように、互いに連結する両用モジュール0120は、上記雄コネクタ0135及び雌コネクタ0136同士の接続により相互に内部バスで連結されている。また、両用モジュール0120間では、共通に利用する
図1Aに細線で示すシリアル通信経路を介したシリアル通信が成されるようになっており、このような両用モジュール0120間のシリアル通信をコミュニケーションモジュール0110がイーサネット(登録商標)通信に変換している。
【0033】
本実施形態のモジュールシステムにおいて、両用モジュール0120のうち最も左に位置する両用モジュール0120はマスターモジュール0120Mであり、マスターモジュール0120Mの右側に順次配列された両用モジュール0120はスレーブモジュール0120Sである。
【0034】
マスターモジュール0120Mは、上位制御装置であるPC0101,PLC0102及び記録計0103からの制御条件を各スレーブモジュール0120Sに伝送すると共に、それぞれのスレーブモジュール0120Sから伝送される各制御対象H1,H2,…,Hnの制御状態データをPC0101,PLC0102及び記録計0103に伝送する。
【0035】
一方、スレーブモジュール0120Sは、マスターモジュール0120Mを介して上位制御装置であるPC0101,PLC0102及び記録計0103から複数の制御対象H1,H2,…,Hnに与えられた制御条件に基づいてそれぞれ制御すると共に、複数の制御対象H1,H2,…,Hnそれぞれの制御状態データをPC0101,PLC0102及び記録計0103に送出する。
【0036】
すなわち、本実施形態のモジュールシステムにおいて、両用モジュール0120は、マスターモジュール0120Mにもスレーブモジュール0120Sにも設定可能であり、両用モジュール0120のベース0130には、マスターとするかスレーブとするかの設定の一工程を機械的に行うディップスイッチ(第一機械スイッチ)0137が設けてある。
【0037】
このディップスイッチ0137は、
図1Bの左側円内に拡大して示すように、Mマーク側に位置させることでマスターが選択され、Sマーク側に位置させることでスレーブが選択されるようになっている。この際、このディップスイッチ0137をベース0130のモジュール本体0140側を向く面(モジュール本体0140によって隠れる面)に配置することで、稼働状態において設定変更が成されることによる不具合が生じないようにしている。
【0038】
また、両用モジュール0120のモジュール本体0140には、マスターとするかスレーブとするかの設定の他工程を機械的に行うトリマ(第二機械スイッチ)0147が設けてある。
【0039】
このトリマ0147は、モジュール本体0140の正面上部に設置されるスイッチボックス0148に目視操作可能に設けられており、ディップスイッチ0137によりマスターを選択したうえで、
図1Bの右側円内に拡大して示すように、中心に位置する円盤0147aの中央に刻まれた矢印を周囲の所定の文字に合わせることで、マスターが選択されるようになっている。この実施形態では、円盤0147aの周囲に刻まれた文字「1」に合わせて、前述したディップスイッチ0137の設定と組み合わせることで、マスターが選択されるようになっている。
なお、スイッチボックス0148には、トリマ0147とともに通信ケーブル接続用のポート0149が配置されており、
図1Aにおける符号0160はケーブルである。
【0040】
このトリマ0147は、上記のマスターとするかスレーブとするかの設定を行う他に、通信時において複数のスレーブモジュール0120Sを個々に識別するための通信用識別情報(モジュール番号=機器アドレス)の設定保持を行うようになっている。本実施形態では、円盤0147aの周囲に刻まれた文字「1」を除く14個の文字「2~9,A~F」に円盤0147aの矢印を合わせるといった機械的操作で、複数のスレーブモジュール0120S個々のモジュール番号を設定して保持するようにしている。
【0041】
つまり、本実施形態では、円盤0147aの周囲の文字「2~9,A~F」で割り振れる台数分(14台分)のスレーブモジュール0120Sのモジュール番号をトリマ0147によって設定保持するようにしている。
【0042】
なお、マスターモジュール0120M及びスレーブモジュール0120Sは、いずれにも利用可能な両用モジュール0120からなっているので、すなわち、構造も外観も同一であるので、単純な連結ミスを防ぐうえで、マスターモジュール0120M及びスレーブモジュール0120Sのそれぞれに、互いに色の異なるラベルを貼付したりカラーリングを施したりする構成としてもよい。
【0043】
さらに、
図2に示すように、両用モジュール0220は、第一機械スイッチであるディップスイッチ及び第二機械スイッチであるトリマからなるスイッチ部0260を備えている他、通信個別設定部0270と、通信設定識別情報保持部0280と、モジュール番号決定部(機器アドレス決定部)0290を備えている。
【0044】
通信個別設定部0270は、通信時において複数のスレーブモジュールを個々に識別するための通信用識別情報(モジュール番号)を上記したシリアル通信経路を介さずに個別通信を介して設定する、すなわち、トリマの機械的操作を行わずにソフトウェアによって通信用識別情報を設定する。
具体的には、
図1Aに示すように、例えば、設定用通信装置0170を、上述したスイッチボックス0148のポート0149にケーブル0160で接続して、通信により設定する。
【0045】
本実施形態において、通信個別設定部0270による通信用識別情報の設定は、トリマの円盤の矢印を文字「0」に合わせた状態、すなわち、トリマを両用モジュール共通の特定の設定に合わせた状態で行うこととしているが、両用モジュールの初期設定の段階では、トリマの円盤の矢印は周囲の文字「0」に合わせてあるので、結果として、トリマに触れずにソフトウェアによって通信用識別情報の設定が可能である。
【0046】
したがって、複数のスレーブモジュールにおける各トリマにおいて、各々の円盤の矢印を両用モジュール共通の特定の設定である文字「0」に合わせれば、通信個別設定部0270によってすべての通信用識別情報の設定が可能である。
【0047】
そして、通信設定識別情報保持部0280は、通信個別設定部0270でシリアル通信経路を介さずに個別通信を介して設定された複数のスレーブモジュール個々の通信用識別情報を保持するようになっている。
【0048】
モジュール番号決定部0290は、モジュール起動時において、トリマの設定が、両用モジュール共通の特定の設定であるか、それ以外の設定であるか判断する第二機械モジュール設定値判断手段と、トリマの設定が、両用モジュール共通の特定の設定である場合に、通信個別設定部0270による設定をさせる通信個別設定部機能手段とを有している。
【0049】
つまり、モジュール番号決定部0290は、両用モジュールをマスターとするかスレーブとするかの設定情報を読み出すと共に、トリマの通信用識別情報及び通信設定識別情報保持部0280内の通信用識別情報のうちのいずれかからモジュール番号を決定する。
【0050】
本実施形態では、モジュール起動時において、トリマの円盤の矢印が文字「0」を指していれば通信設定識別情報保持部0280内の通信用識別情報からモジュール番号を決定し、トリマの円盤の矢印が文字「0」以外を指していればその矢印が指す文字からモジュール番号を決定する。そして、マスター・スレーブ情報及びモジュール番号情報は、システム起動中において、後述する不揮発性メモリに格納され、内部バスによる通信は格納されているモジュール番号に基づいて行われる。
【0051】
図3に示すように、両用モジュール0320は、CPU0301と、フラッシュメモリ、ROM等の不揮発性メモリ0302と、D-RAM等の主メモリ0303とから構成されている。不揮発性メモリ0302には、通信個別設定プログラム、通信設定識別情報保持プログラム等のプログラムが格納されている他、場合によってはスイッチ部の操作を受け付けてマスターの設定及びスレーブの通信用識別情報の設定を行うスイッチ操作受付プログラムが格納され、さらに、トリマモジュール設定値判断サブプログラム及び通信個別設定部機能サブプログラムを有するモジュール番号決定プログラムが格納されている。データとしては、信号や各種情報などがあり、これらのプログラムやデータは、主メモリ0303の保持領域に読み込まれて、作動領域で実行される。また、インターフェース0304には、ディスプレイインターフェース0305、通信インターフェース0306などがある。
<処理の流れ>
【0052】
本実施形態に係るモジュールシステムにおいて、コミュニケーションモジュールに隣接する両用モジュールをマスターモジュールとする場合には、まず、ディップスイッチを操作してマスター利用を選択すると共に、トリマの円盤の矢印を周囲の文字「1」に合わせる。
【0053】
このように、スイッチ部によるマスター利用のための機械的操作を行うと、両用モジュールにおいて、
図4Aに示すように、スイッチ操作受付プログラムにより設定受付ステップ(ステップS0401)が実行され、ディップスイッチ及びトリマによる設定が受け付けられて、判定ステップ(ステップS0402)(Yes)を経てマスターモジュールとして設定される。
【0054】
一方、このマスターモジュールに隣接する両用モジュールを通信用識別情報であるモジュール番号が「2」のスレーブモジュールとする場合には、まず、ディップスイッチを操作してスレーブ利用を選択すると共に、トリマの円盤の矢印を周囲の文字「2」に合わせる。
【0055】
このような機械的操作を行うと、マスターモジュールに隣接する両用モジュールにおいて、スイッチ操作受付プログラムにより設定受付ステップ(ステップS0401)が実行され、ディップスイッチ及びトリマによる設定が受け付けられて、判定ステップ(ステップS0402)(No)を経てスレーブモジュールとして設定される。
【0056】
続いて、このスレーブモジュールとして設定された両用モジュールにおいて、トリマによる設定受付ステップ(ステップS0403)が実行され、トリマによる設定、すなわち、トリマの矢印が指している文字「2」が受け付けられることで、モジュール番号「2」のスレーブモジュールとして設定される。
【0057】
このようなスイッチ部のトリマによる割り振り操作をマスターモジュールの配下に連なる(
図1A右側に連結される)複数のスレーブモジュールに対して順次行うと、各スレーブモジュールにおいて、トリマの矢印が指している文字をそれぞれ受け付けることで、それぞれ個別のモジュール番号が設定される。
【0058】
つまり、トリマにおける円盤の周囲の文字「2~9,A~F」で割り振れる台数分(14台分)のスレーブモジュールに対しては、トリマを用いたハードウェアによる通信用識別情報であるモジュール番号の設定を行う。
【0059】
そして、モジュール番号が「15(トリマの周囲の文字では「F」であるが便宜上「15」としている)」を超えて両用モジュールを連結する場合には、トリマの円盤の矢印を両用モジュール共通の特定の設定である文字「0」に合わせたうえで、以下の処理を行う。
【0060】
すなわち、マスターモジュールの配下の、例えば、15番目(マスターモジュールを含めれば16番目)に位置する両用モジュールをモジュール番号が「16」のスレーブモジュールとする場合には、まず、スイッチボックスのポートに設定用通信装置をケーブルで接続して、シリアル通信経路を介さずに個別通信を介してモジュール番号「16」を設定すると、
図4Bに示すように、マスターモジュールの配下の15番目に位置する両用モジュールにおいて、設定受付ステップ(ステップS0411)が実行される。
【0061】
この設定受付ステップ(ステップS0411)の実行により、通信個別設定部による設定、すなわち、個別通信を介して書き込まれた文字「16」が受け付けられ、続いて、通信設定識別情報保持部による情報取得ステップ(ステップS0412)の実行により文字「16」が保持されて、マスターモジュールの配下の15番目に位置する両用モジュールがモジュール番号「16」のスレーブモジュールとして設定される。
【0062】
マスターモジュールの配下の15番目以降のスレーブモジュールに対しては、このようなシリアル通信経路を介さない設定用通信装置を用いた個別通信を介してのモジュール番号の設定を順次行うことで、それぞれ個別のモジュール番号が設定される。
【0063】
つまり、マスターモジュールの配下の15番目以降のスレーブモジュールに対しては、シリアル通信経路を介さない個別通信を用いたソフトウェアによる通信用識別情報であるモジュール番号の設定を行う。なお、本実施形態に係るモジュールシステムでは、合計25台の両用モジュールを接続する仕様としている。
【0064】
上記のようにしてモジュール番号が設定された両用モジュールにおいて、モジュール起動時には、まず、マスターかスレーブかの設定が読み出されるのに続いて、トリマの通信用識別情報が読み出され、その円盤の矢印が文字「0」を指していれば通信設定識別情報保持部内の通信用識別情報からモジュール番号が決定し、トリマの円盤の矢印が文字「0」以外を指していればその矢印が指す文字からモジュール番号が決定する。
【0065】
そして、システム起動中において、マスター・スレーブ情報及びモジュール番号情報は不揮発性メモリに格納され、内部バスによる通信は格納されているモジュール番号に基づいて行われることとなる。
【0066】
このように、本実施形態に係るモジュールシステムでは、例えば、大型ホットプレス機における金型を均一に又は意図的に分布を持たせて加熱する際の金型の多数点温度制御に用いた場合であったとしても、マスターの設定はハードで行い、スレーブの設定及び識別についてはハード及びソフトの両面から行えるようにしているので、省スペース化を図ったうえで、設定ミスを少なく抑えつつ運転前の設定操作を行い得る。
【0067】
また、本実施形態に係るモジュールシステムでは、互いに連絡される両用モジュール間で共用する内部バスに、第二機械スイッチであるトリマ及び通信設定識別情報保持部の双方を接続させているので、情報処理の高速化が図れる。
【0068】
さらに、本実施形態に係るモジュールシステムでは、両用モジュールで共通に利用する通信経路をシリアル通信経路としているので、同期通信が容易に成されることとなる。
【0069】
さらにまた、本実施形態に係るモジュールシステムでは、第一機械スイッチとしてのディップスイッチを視認不能な部位に配置しているので、稼働状態に設定変更が成されることによる不具合の発生を回避し得る。
【0070】
さらにまた、本実施形態に係るモジュールシステムでは、マスターモジュールがこれに連結する複数のスレーブモジュールを常時監視していることになるので、すなわち、複数のスレーブモジュールの連携及びスレーブモジュール個々の着脱を把握しているので、システム稼働中におけるスレーブモジュールの交換が可能である。
【0071】
本実施形態に係るモジュールシステムでは、イーサネット(登録商標)通信のためのコミュニケーションモジュール0110を備えた構成としているが、イーサネット(登録商標)通信を使用しない場合には、このコミュニケーションモジュール0110を省いたうえで、
図1Aに仮想線で示すように、マスターモジュール0120Mに上位制御装置としてのPC0101,PLC0102及び記録計0103をシリアル接続することができる。
【0072】
また、本実施形態では、複数のスレーブモジュール0120Sが全てマスターモジュール0120Mに連結している場合を示したが、これに限定されるものではなく、
図1Aの右端に示すように、両用モジュール0120を他のスレーブモジュール0120Sから離して配置するようにしてもよく、この場合には、両用モジュール0120を単独の制御モジュール(スタンドアローンモジュール)0120Saとして使用することができる。この際、マスターモジュール0120Mに連結していない制御モジュール0120Saも、シリアル通信を介して上位制御装置としてのPC0101との制御条件及び制御状態データのやり取りが可能である。
【0073】
なお、本実施形態に係るモジュールシステムにおいて、マスターモジュール0120Mを必要としない場合には、マスターモジュールの位置、すなわち、最も上位制御装置に近い部位に配置する両用モジュールのディップスイッチをSマーク側に位置させることで、これに続く複数の両用モジュールをそれぞれ単独の制御モジュールとして使用することができる。
<効果>
【0074】
本実施形態によれば、制御対象が少ない場合には、簡単な機械的操作で運転前の設定操作を行うことができるのは勿論のこと、制御対象が多い場合であったとしても、省スペース化を図ったうえで、設定ミスを少なく抑えつつ運転前の設定操作を行うことが可能であり、したがって、多数の制御対象の制御にも対応することが可能であるという非常に優れた効果が得られる。
<実施形態2>
<概要>
【0075】
本実施形態は実施形態1を基本とし、両用モジュールが発光部をさらに有していて、マスターモジュールの発光部とこれと同一配下のスレーブモジュールの発光部とが互いに同期して点滅することを特徴としている。
このように、マスターモジュールの発光部とスレーブモジュールの発光部とを互いに同期して点滅させることで、通信に不具合を来したモジュールが見つけ易くなるという効果を奏する。
<構成>
【0076】
本実施形態において、先の実施形態と相違するところは、
図5に部分的に示すように、両用モジュール0520の正面上部に設置されるスイッチボックス0548にLED群(発光部)0580を設けた点にあり、他の構成は先の実施形態と同じである。
【0077】
すなわち、本実施形態に係るモジュールシステムにおいて、マスターモジュール0520Mの配下に複数のスレーブモジュール0520Sを連結した状態において、マスターモジュール0520MのLED群0580と、同一マスタージュール0520M配下のスレーブモジュール0520Sの各LED群0580とが、内部バスを介した上位制御装置からの指令を受けて互いに同期して点滅するようになっている。
【0078】
この際、通信に不具合が生じたスレーブモジュール0520S(
図5ではモジュール番号を「4」のスレーブモジュール0520S)のLED群0580は、当然のことながら、他の正常な通信状態にあるモジュールの各LED群0580に対して、同期せずにずれて点滅することになるので、モジュールの故障を容易に見つけ得ることとなる。
<効果>
【0079】
本実施形態では、稼働時においてマスターモジュール及び複数のスレーブモジュールの各発光部が互いに同期して点滅するようにしているので、通信に異常を来したモジュールにおける発光部の点滅周期のずれが際立ったものとなり、その結果、異常が生じているモジュールを迅速に発見することができる。
【符号の説明】
【0080】
0120 両用モジュール
0120M マスターモジュール
0120S スレーブモジュール
0137 ディップスイッチ(第一機械スイッチ)
0147 トリマ(第二機械スイッチ)
0260 スイッチ部
0270 通信個別設定部
0280 通信設定識別情報保持部
0290 モジュール番号決定部(機器アドレス決定部)