(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】無線受信装置
(51)【国際特許分類】
H04B 7/08 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
H04B7/08 480
(21)【出願番号】P 2019211785
(22)【出願日】2019-11-22
【審査請求日】2022-11-10
【審判番号】
【審判請求日】2023-11-07
(73)【特許権者】
【識別番号】000004330
【氏名又は名称】日本無線株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100126561
【氏名又は名称】原嶋 成時郎
(72)【発明者】
【氏名】田中 康英
【合議体】
【審判長】土居 仁士
【審判官】高野 洋
【審判官】衣鳩 文彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2001-177500(JP,A)
【文献】特開2013-115707(JP,A)
【文献】特開2013-31050(JP,A)
【文献】特開平6-169273(JP,A)
【文献】特表2010-507935(JP,A)
【文献】国際公開第2013/018716(WO,A1)
【文献】吉田晴人、高畑文雄、TDD-OFDM伝送を対象とした送信SC/受信MRCダイバーシチに関する一検討、通信ソサイエティ大会講演論文集1、p.440、電子情報通信学会、2004年
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04B7/08
H04L1/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数のアンテナの各々に対応する複数のブランチ毎に設けられて、前記アンテナによって受信される無線信号に基づいて得られるベースバンド信号に対してアナログ-デジタル変換処理を施して受信信号を出力するA/D変換器と、
前記複数のブランチ毎に設けられて、前記受信信号に対してタップ係数に基づいてウェイトの乗算処理を施してタップ出力信号を出力するとともに前記受信信号の受信信号ベクトルを出力するタップ処理部と、
前記複数のブランチそれぞれの前記タップ出力信号および前記受信信号ベクトルに基づいて前記タップ係数を出力する適応処理部と、
前記複数のブランチそれぞれの前記タップ出力信号をダイバーシチ合成して合成信号を出力する合成部と、
前記合成信号が最大電力を有する時の位相の回転量を出力する電力検出部と、
前記複数のブランチそれぞれの前記受信信号をダイバーシチ合成して合成受信信号を出力するダイバーシチ合成部と、
前記合成受信信号に対して復調処理を施す復調部と、を有し、
前記適応処理部から出力される前記タップ係数を乗算して生成される前記タップ出力信号を前記合成部でダイバーシチ合成して得た前記合成信号から前記電力検出部で前記位相の回転量を求め、
前記位相の回転量に基づいて前記受信信号の位相を回転した上で前記ダイバーシチ合成部でダイバーシチ合成して前記合成受信信号を得て該合成受信信号を前記復調部で復調する、
ことを特徴とする無線受信装置。
【請求項2】
前記アンテナによって受信される前記無線信号の変調方式が四位相偏移変調である、
ことを特徴とする請求項1に記載の無線受信装置。
【請求項3】
前記ブランチの数が2つである、
ことを特徴とする請求項1または2に記載の無線受信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、複数のブランチに到来した受信波をスペースダイバーシチ方式に基づいて受信する無線受信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
マイクロ波無線通信システムのマイクロ波無線受信に関して、電波伝搬で発生するフェージング条件下においても良好な受信信号を得るための工夫として、複数のアンテナを用いたスペースダイバーシチ方式が知られている。ダイバーシチ効果を利用する無線通信技術として、例えば、複数のアンテナで受信した受信信号毎に対応するブランチを設け、当該各ブランチの受信信号を合成することによりスペースダイバーシチを実現する無線受信装置において、各ブランチの受信信号を重み付け係数に基づくウェイト処理によりダイバーシチ合成する際に、ウェイト処理対象とする受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列が単位行列となる様な修正行列を生成し、当該修正行列によって受信信号を変換し、当該変換後の受信信号の受信信号ベクトルから得られた共分散行列の最大固有値に対応した固有ベクトルを算出し、当該固有ベクトルを重み付け係数としてダイバーシチ合成を行う、ものが知られている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、無線トラフィックの増大に伴う周波数利用の高効率化の要求からデジタル無線伝送においては高多値QAM(Quadrature Amplitude Modulation の略)方式による高速伝送の要求が高まっている。一方、受信性能の向上を目的とした従来のスペースダイバーシチ方式(具体的には例えば、最小振幅偏差合成法や同相合成法)を高多値QAM方式に適用した場合、ダイバーシチ合成前の位相制御誤差の影響で、ダイバーシチ合成後の信号を復調する際、性能の劣化を招くことがある。引用文献1に記載の技術は、ダイバーシチ合成前に波形等化を行うことによって合成誤差の影響を軽減することを技術思想としており、各ブランチの受信信号に対して波形等化を行った後にダイバーシチ合成を行うようにしている。すなわち、引用文献1に記載の技術では、ダイバーシチによる受信C/N比(Carrier to Noise ratio:搬送波対雑音比)の改善効果が得られる前の各ブランチの受信信号を使って波形等化を行うため、等化限界は単一のアンテナでの受信と同等であり、受信C/N比の低下に伴う等化性能の劣化は免れることができない、という問題がある。
【0005】
そこで本発明は、ダイバーシチ合成の位相制御を高精度に行うことが可能な無線受信装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、複数のアンテナの各々に対応する複数のブランチ毎に設けられて、前記アンテナによって受信される無線信号に基づいて得られるベースバンド信号に対してアナログ-デジタル変換処理を施して受信信号を出力するA/D変換器と、前記複数のブランチ毎に設けられて、前記受信信号に対してタップ係数に基づいてウェイトの乗算処理を施してタップ出力信号を出力するとともに前記受信信号の受信信号ベクトルを出力するタップ処理部と、前記複数のブランチそれぞれの前記タップ出力信号および前記受信信号ベクトルに基づいて前記タップ係数を出力する適応処理部と、前記複数のブランチそれぞれの前記タップ出力信号をダイバーシチ合成して合成信号を出力する合成部と、前記合成信号が最大電力を有する時の位相の回転量を出力する電力検出部と、前記複数のブランチそれぞれの前記受信信号をダイバーシチ合成して合成受信信号を出力するダイバーシチ合成部と、前記合成受信信号に対して復調処理を施す復調部と、を有し、前記適応処理部から出力される前記タップ係数を乗算して生成される前記タップ出力信号を前記合成部でダイバーシチ合成して得た前記合成信号から前記電力検出部で前記位相の回転量を求め、前記位相の回転量に基づいて前記受信信号の位相を回転した上で前記ダイバーシチ合成部でダイバーシチ合成して前記合成受信信号を得て該合成受信信号を前記復調部で復調する、ことを特徴とする無線受信装置である。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の無線受信装置において、前記アンテナによって受信される前記無線信号の変調方式が四位相偏移変調である、ことを特徴とする。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の無線受信装置において、前記ブランチの数が2つである、ことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
請求項1に記載の発明によれば、ダイバーシチ合成の位相調整用の電力検出に対して適応等化処理を組み込み、等化後の信号を合成した上で電力検出をするようにしているため、反射波による干渉やアンテナ間の遅延誤差などの影響を排除した高精度な位相制御を行うことが可能となる。請求項1に記載の発明によれば、また、電力検出を目的としているため、高精度な等化は必要なく、受信C/N比が低い場合でも安定して動作する等化アルゴリズムを採用することができる。
【0010】
請求項2に記載の発明によれば、四位相偏移変調方式が用いられて行われる無線通信において上記の効果を奏することが可能となる。
【0011】
請求項3に記載の発明によれば、ブランチの数が2つであるダイバーシチ合成において上記の効果を奏することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】この発明の実施の形態に係る無線受信装置の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図2】
図1に示す無線受信装置の相関検出特性を検証するための回路の概略構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図2に示す回路による、
図1に示す無線受信装置の相関検出特性を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、この発明を図示の実施の形態に基づいて説明する。なお、以下では、この発明の特徴的な構成について説明し、スペースダイバーシチ方式で通信を行う際の従来と同様の仕組みについては説明を省略する。
【0014】
図1は、この発明の実施の形態に係る無線受信装置1の概略構成を示す機能ブロック図である。この無線受信装置1は、単一のアンテナが設置された送信側の固定局と複数のアンテナが設置された受信側の固定局との間で無線通信(特に、マイクロ波無線通信)を行うために、受信側の固定局に設けられる機序である。
【0015】
この実施の形態に係る無線受信装置1は、2つのアンテナ11A,11Bの各々に対応する2つのブランチ(ここでは、第1ブランチおよび第2ブランチ)毎に設けられて、アンテナ11A,11Bによって受信される無線信号に基づいて得られるベースバンド信号(I,Q)に対してアナログ-デジタル変換処理を施して受信信号(I_1,Q_1 および I_2,Q_2)を出力するA/D変換器13A,13Bと、2つのブランチ毎に設けられて、受信信号(I_1,Q_1 および I_2,Q_2)に対してタップ係数(W_1 および W_2)に基づいてウェイトの乗算処理を施してタップ出力信号(Ti_1,Tq_1 および Ti_2,Tq_2)を出力するとともに受信信号の受信信号ベクトル(V_1 および V_2)を出力するタップ処理部14A,14Bと、2つのブランチそれぞれのタップ出力信号(Ti_1,Tq_1 および Ti_2,Tq_2)および受信信号ベクトル(V_1 および V_2)に基づいてタップ係数(W_1 および W_2)を出力する適応処理部15と、2つのブランチそれぞれのタップ出力信号をダイバーシチ合成して合成信号(Ci,Cq)を出力する合成部16と、合成信号(Ci,Cq)が最大電力を有する時の位相の回転量Δθを出力する電力検出部17と、2つのブランチそれぞれの受信信号(I_1,Q_1 および I_2,Q_2)をダイバーシチ合成して合成受信信号(Ic,Qc)を出力するダイバーシチ合成部20と、合成受信信号(Ic,Qc)に対して復調処理を施す復調部21と、を有し、位相の回転量Δθに基づいて受信信号(I_2,Q_2)の位相を回転した上でダイバーシチ合成部20でダイバーシチ合成して合成受信信号(Ic,Qc)を得て該合成受信信号(Ic,Qc)を復調部21で復調する、ようにしている。
【0016】
この実施の形態に係る無線受信装置1は、スペースダイバーシチにおけるブランチとして、2つのアンテナの各々に対応する2つのブランチを有し、各ブランチに対応して混合器、A/D変換器、およびタップ処理部がそれぞれ2個ずつ備えられる。
【0017】
アンテナ11A,11Bは、送信側の固定局のアンテナ(図示していない)から送信される無線信号を受信し、受信した無線信号に応じた受信波信号を出力する。
【0018】
混合器12A,12Bは、アンテナ11A,11Bから出力される受信波信号の入力を受け、受信波信号に対して直交復調処理を施して同相成分のベースバンド信号Iおよび直交成分のベースバンド信号Qを出力する。この実施の形態では、変調方式として、四位相偏移変調(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying の略)が用いられる。
【0019】
第1ブランチのA/D変換器13Aは、混合器12Aから出力される同相成分のベースバンド信号Iに対してアナログ-デジタル変換処理を施して受信信号(同相成分I_1)を出力するとともに、直交成分のベースバンド信号Qに対してアナログ-デジタル変換処理を施して受信信号(直交成分Q_1)を出力する。
【0020】
第2ブランチのA/D変換器13Bは、混合器12Bから出力される同相成分のベースバンド信号Iに対してアナログ-デジタル変換処理を施して受信信号(同相成分I_2)を出力するとともに、直交成分のベースバンド信号Qに対してアナログ-デジタル変換処理を施して受信信号(直交成分Q_2)を出力する。
【0021】
第1ブランチのタップ処理部14Aは、A/D変換器13Aから出力される受信信号に対して、適応処理部15から出力される第1ブランチ側の信号に対応する重み付け係数(タップ係数やウェイトベクトルなどとも呼ばれる)に基づいてウェイトの乗算処理を施して、同相成分の信号および直交成分の信号を出力する。第1ブランチのタップ処理部14Aは、具体的には、A/D変換器13Aから出力される受信信号(同相成分I_1、直交成分Q_1)に、適応処理部15から出力される重み付け係数W_1を乗算して、タップ出力信号(同相成分Ti_1、直交成分Tq_1)を生成する。
【0022】
そして、第1ブランチのタップ処理部14Aは、生成したタップ出力信号(同相成分Ti_1、直交成分Tq_1)を適応処理部15および合成部16に対して出力する。第1ブランチのタップ処理部14Aは、また、A/D変換器13Aから出力される受信信号(同相成分I_1、直交成分Q_1)を第1ブランチの受信信号ベクトルV_1として適応処理部15に対して供給する。
【0023】
第2ブランチのタップ処理部14Bは、A/D変換器13Bから出力される受信信号に対して、適応処理部15から出力される第2ブランチ側の信号に対応する重み付け係数(タップ係数やウェイトベクトルなどとも呼ばれる)に基づいてウェイトの乗算処理を施して、同相成分の信号および直交成分の信号を出力する。第2ブランチのタップ処理部14Bは、具体的には、A/D変換器13Bから出力される受信信号(同相成分I_2、直交成分Q_2)に、適応処理部15から出力される重み付け係数W_2を乗算して、タップ出力信号(同相成分Ti_2、直交成分Tq_2)を生成する。
【0024】
そして、第2ブランチのタップ処理部14Bは、生成したタップ出力信号(同相成分Ti_2、直交成分Tq_2)を適応処理部15に対して出力するとともに合成部16へと向けて出力する。第2ブランチのタップ処理部14Bは、また、A/D変換器13Bから出力される受信信号(同相成分I_2、直交成分Q_2)を第2ブランチの受信信号ベクトルV_2として適応処理部15に対して供給する。
【0025】
適応処理部15は、適応等化処理を行ってタップ更新を実行する。適応処理部15は、具体的には、第1ブランチのタップ処理部14Aから出力される第1ブランチの受信信号ベクトルV_1およびタップ出力信号(同相成分Ti_1、直交成分Tq_1)、ならびに、第2ブランチのタップ処理部14Bから出力される第2ブランチの受信信号ベクトルV_2およびタップ出力信号(同相成分Ti_2、直交成分Tq_2)を用いて、第1ブランチ側の信号に対応する重み付け係数W_1および第2ブランチ側の信号に対応する重み付け係数W_2を計算する。
【0026】
そして、適応処理部15は、計算した第1ブランチ側の信号に対応する重み付け係数W_1を第1ブランチのタップ処理部14Aに対して出力し、計算した第2ブランチ側の信号に対応する重み付け係数W_2を第2ブランチのタップ処理部14Bに対して出力する。
【0027】
合成部16は、第1ブランチ側の系統の信号の同相成分および直交成分と第2ブランチ側の系統の信号の同相成分および直交成分とをダイバーシチ合成して合成信号(同相成分Ci、直交成分Cq)を出力する。合成部16は、2系統の信号系列を並列的に入力させ、所定の合成方式で2系統の信号系列を合成し、合成した1系統の信号系列を出力する。合成部16における合成方式としては、同相合成が用いられる。
【0028】
電力検出部17は、合成部16から出力される合成信号(同相成分Ci、直交成分Cq)の信号レベルに基づいて、前記合成信号が最大電力を有する時の位相の回転量Δθを求める。そして、電力検出部17は、求めた位相の回転量Δθを位相調整部18に対して出力するとともに混合器19に対して出力する。
【0029】
位相調整部18は、第2ブランチのタップ処理部14Bから出力されるタップ出力信号(同相成分Ti_2、直交成分Tq_2)の位相を、電力検出部17から出力される位相の回転量Δθだけ回転させて位相回転信号(同相成分Ri_2、直交成分Rq_2)を生成して合成部16に対して出力する。つまり、合成部16は、第1ブランチ側の系統の信号として第1ブランチのタップ処理部14Aから出力されるタップ出力信号(同相成分Ti_1、直交成分Tq_1)と、第2ブランチ側の系統の信号として位相調整部18から出力される位相回転信号(同相成分Ri_2、直交成分Rq_2)とをダイバーシチ合成する。
【0030】
混合器19は、第2ブランチのA/D変換器13Bから出力される受信信号(同相成分I_2、直交成分Q_2)の位相を、電力検出部17から出力される位相の回転量Δθだけ回転させて位相調整信号(同相成分Pi_2、直交成分Pq_2)を生成してダイバーシチ合成部20に対して出力する。なお、図に示す例では第2ブランチ側の系統に対して混合器19が設けられるようにしているが、第1ブランチ側の系統の信号の位相と第2ブランチ側の系統の信号の位相とが相対的に位相の回転量Δθだけ回転するのであれば、図に示す構成には限定されない。
【0031】
ダイバーシチ合成部20は、第1ブランチのA/D変換器13Aから出力される信号系列である受信信号(同相成分I_1、直交成分Q_1)と第2ブランチ側の系統に設けられている混合器19から出力される信号系列である位相調整信号(同相成分Pi_2、直交成分Pq_2)とをダイバーシチ合成して合成受信信号(同相成分Ic、直交成分Qc)を出力する。ダイバーシチ合成部20は、2系統の信号系列を並列的に入力させ、所定の合成方式で2系統の信号系列を合成し、合成した1系統の信号系列を出力する。ダイバーシチ合成部20における合成方式としては、合成部16における合成方式と同じ合成方式(即ち、同相合成)が用いられる。
【0032】
復調部21は、ダイバーシチ合成部20から出力される信号系列である合成受信信号(同相成分Ic、直交成分Qc)の入力を受け、合成受信信号(同相成分Ic、直交成分Qc)に対して変調方式として四位相偏移変調(QPSK:Quadrature Phase Shift Keying の略)を用いて復調処理を施して復調結果の信号系列を出力する。
【0033】
次に、このような構成の無線受信装置1の作用、動作などについて説明する。
【0034】
第1ブランチに関する処理として、アンテナ11Aが受信した無線信号に応じた受信波信号を混合器12Aへと出力し、混合器12Aが受信波信号に対して直交復調処理を施して同相成分のベースバンド信号Iおよび直交成分のベースバンド信号QをA/D変換器13Aへと出力し、A/D変換器13Aが前記ベースバンド信号I,Qに対してアナログ-デジタル変換処理を施して受信信号(同相成分I_1、直交成分Q_1)をタップ処理部14Aへと出力する。タップ処理部14Aは、受信信号(同相成分I_1、直交成分Q_1)に対して、適応処理部15から出力される第1ブランチ側の信号に対応する重み付け係数W_1を用いてウェイトの乗算処理を施してタップ出力信号(同相成分Ti_1、直交成分Tq_1)を適応処理部15および合成部16に対して出力する。
【0035】
第2ブランチに関する処理として、アンテナ11Bが受信した無線信号に応じた受信波信号を混合器12Bへと出力し、混合器12Bが受信波信号に対して直交復調処理を施して同相成分のベースバンド信号Iおよび直交成分のベースバンド信号QをA/D変換器13Bへと出力し、A/D変換器13Bが前記ベースバンド信号I,Qに対してアナログ-デジタル変換処理を施して受信信号(同相成分I_2、直交成分Q_2)をタップ処理部14Bへと出力する。タップ処理部14Bは、受信信号(同相成分I_2、直交成分Q_2)に対して、適応処理部15から出力される第2ブランチ側の信号に対応する重み付け係数W_2を用いてウェイトの乗算処理を施してタップ出力信号(同相成分Ti_2、直交成分Tq_2)を適応処理部15に対して出力するとともに合成部16へと向けて出力する。
【0036】
また、第1ブランチのタップ処理部14Aは受信信号(同相成分I_1、直交成分Q_1)を第1ブランチの受信信号ベクトルV_1として適応処理部15に対して供給し、第2ブランチのタップ処理部14Bは受信信号(同相成分I_2、直交成分Q_2)を第2ブランチの受信信号ベクトルV_2として適応処理部15に対して供給する。
【0037】
次に、適応処理部15は、タップ出力信号(同相成分Ti_1、直交成分Tq_1)および第1ブランチの受信信号ベクトルV_1ならびにタップ出力信号(同相成分Ti_2、直交成分Tq_2)および第2ブランチの受信信号ベクトルV_2を用いて第1ブランチ側の信号に対応する重み付け係数W_1および第2ブランチ側の信号に対応する重み付け係数W_2を計算して、第1ブランチのタップ処理部14Aおよび第2ブランチのタップ処理部14Bに対して出力する。
【0038】
また、合成部16が第1ブランチ側の系統の信号(具体的には、タップ出力信号の同相成分Ti_1および直交成分Tq_1)と第2ブランチ側の系統の信号(具体的には、位相回転信号の同相成分Ri_2および直交成分Rq_2)とをダイバーシチ合成して合成信号(同相成分Ci、直交成分Cq)を電力検出部17へと出力し、電力検出部17が合成信号(同相成分Ci、直交成分Cq)の信号レベルに基づいて前記合成信号が最大電力を有する時の位相の回転量Δθを求めて位相調整部18および混合器19に対して出力し、位相調整部18が第2ブランチのタップ処理部14Bから出力されるタップ出力信号(同相成分Ti_2、直交成分Tq_2)の位相を位相の回転量Δθだけ回転させて位相回転信号(同相成分Ri_2、直交成分Rq_2)を合成部16に対して出力する。
【0039】
そして、混合器19が受信信号(同相成分I_2、直交成分Q_2)の位相を位相の回転量Δθだけ回転させて位相調整信号(同相成分Pi_2、直交成分Pq_2)をダイバーシチ合成部20に対して出力し、ダイバーシチ合成部20が第1ブランチ側の系統の信号系列である受信信号(同相成分I_1、直交成分Q_1)と第2ブランチ側の系統の信号系列である位相調整信号(同相成分Pi_2、直交成分Pq_2)とをダイバーシチ合成して合成受信信号(同相成分Ic、直交成分Qc)を復調部21に対して出力し、復調部21が合成受信信号(同相成分Ic、直交成分Qc)に対して復調処理を施して復調結果の信号系列を出力する。
【0040】
この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、ダイバーシチ合成の位相調整用の電力検出に対して適応等化処理を組み込み、等化後の信号を合成した上で電力検出をするようにしているため、反射波による干渉やアンテナ間の遅延誤差などの影響を排除した高精度な位相制御を行うことが可能となる。この実施の形態に係る無線受信装置1によれば、また、電力検出を目的としているため、高精度な等化は必要なく、受信C/N比が低い場合でも安定して動作する等化アルゴリズムを採用することができる。
【0041】
次に、このような構成の無線受信装置1の位相差の検出特性について、
図2および
図3も用いて検証する。
【0042】
図2に示すように、送信側の固定局に設置されている単一のアンテナ2から送信される信号を受信側の固定局に設置されている2つのアンテナ11A,11Bで受信する際に、一方のアンテナ11Aは直接波のみを受信して受信波信号を出力し、他方のアンテナ11Bはフェージングが発生している状況で(即ち、直接波に加えて反射波も受信して)受信波信号を出力している条件で、等化処理の有無による相関検出特性の違いを検証する。
【0043】
ここでは、下記の仕様・条件を用いて検証を行う。
〈変調方式〉
四位相偏移変調(QPSK)
〈フェージング条件(最小位相推移型)〉
遅延時間 :0.015T
ノッチ深さ :30dB
ノッチ周波数:変調スペクトルセンター周波数
〈等化アルゴリズム〉
Godardの方法(Godardのカルマンアルゴリズム)
【0044】
アンテナ11Aの受信波信号に基づく第1ブランチ側の系統の信号系列とアンテナ11Bの受信波信号に基づく第2ブランチ側の系統の信号系列との間の、第2ブランチ側の系統の信号系列に対して-180°~180°の範囲で位相を回転させた場合の相関を計算し、これを検出1とする。検出1は、等化処理が無い場合の相関の検出結果である。
【0045】
一方、アンテナ11Aの受信波信号に基づく第1ブランチ側の系統の信号系列とアンテナ11Bの受信波信号に基づく第2ブランチ側の系統の信号系列とに対して等化処理を施した上で、第1ブランチ側の系統の信号系列と第2ブランチ側の系統の信号系列との間の、第2ブランチ側の系統の信号系列に対して-180°~180°の範囲で位相を回転させた場合の相関を計算し、これを検出2とする。検出2は、等化処理がある場合の相関の検出結果である。
【0046】
検出1および検出2について、位相の回転量(つまり、位相差)と相関との間の関係を整理すると
図3に示すようになる。
図3の縦軸は、第1ブランチ側の系統の信号系列と第2ブランチ側の系統の信号系列との同相成分同士の相間と直交成分同士の相間との平均値を用いている。ここでは、相関をみる一方のデータについて複素共役をとった後に複素乗算して相関値を計算している。この計算によると、相関の高いところで虚数(IMG)成分が0(ゼロ)になる。
【0047】
図3に示す検出1の結果から、フェージングが発生している状況では、等化処理が行われないと、位相差がずれ且つ検出感度が低くなることが確認できる。一方で、検出2の結果から、フェージングが発生している状況でも、等化処理が行われることにより、位相差を検出可能であり且つ検出感度が高いことが確認できる。
【0048】
以上、この発明の実施の形態について説明したが、具体的な構成は、上記の実施の形態に限られるものではなく、この発明の要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。具体的には、この発明の要旨はダイバーシチ合成の位相調整用の電力検出に対して適応等化処理を組み込んで等化後の信号を合成した上で電力検出をすることであり、この要旨を逸脱しない範囲の設計の変更等があっても、この発明に含まれる。例えば、上記の実施の形態ではスペースダイバーシチにおけるブランチとして第1ブランチおよび第2ブランチの2つのブランチを有するようにしているが、ブランチの個数は、2つに限定されるものではなく、2つ以上の任意の数とすることができる。
【符号の説明】
【0049】
1 無線受信装置
11A アンテナ(第1ブランチ)
11B アンテナ(第2ブランチ)
12A 混合器(第1ブランチ)
12B 混合器(第2ブランチ)
13A A/D変換器(第1ブランチ)
13B A/D変換器(第2ブランチ)
14A タップ処理部(第1ブランチ)
14B タップ処理部(第2ブランチ)
15 適応処理部
16 合成部
17 電力検出部
18 位相調整部
19 混合器
20 ダイバーシチ合成部
21 復調部