(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】貧酸素排気からの触媒保護システム
(51)【国際特許分類】
F01N 3/22 20060101AFI20240510BHJP
B01D 53/94 20060101ALI20240510BHJP
F01N 11/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
F01N3/22 301
F01N3/22 301W
B01D53/94 222
F01N11/00 ZAB
(21)【出願番号】P 2019553384
(86)(22)【出願日】2018-03-29
(86)【国際出願番号】 US2018025159
(87)【国際公開番号】W WO2018183688
(87)【国際公開日】2018-10-04
【審査請求日】2021-03-24
【審判番号】
【審判請求日】2022-12-07
(32)【優先日】2017-03-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】590004718
【氏名又は名称】ジョンソン、マッセイ、パブリック、リミテッド、カンパニー
【氏名又は名称原語表記】JOHNSON MATTHEY PUBLIC LIMITED COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】シュメール, マーク
【合議体】
【審判長】河端 賢
【審判官】青木 良憲
【審判官】倉橋 紀夫
(56)【参考文献】
【文献】特開平6-93839(JP,A)
【文献】国際公開第2015/150805(WO,A1)
【文献】国際公開第2016/146966(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F01N 3/22
B01D 53/94
F01N 11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
排気流からの排出物を減少させるための排気浄化システムであって、
a.酸素検出システム、
b.NOx貯蔵触媒、
c.弁を含み、酸素検出システムとNOx貯蔵触媒との間に配置された空気噴射システム、および
d.NOx貯蔵触媒を貧酸素状態から保護するために、NOx貯蔵触媒に流入する排気流のラムダ比が1.1を超えて維持されるように、
前記貧酸素状態が検出されたことに応答して、排気流に空気を噴射するように弁を操作する指示を含む、コントローラ、
を備え、
前記貧酸素状態は、前記NOx貯蔵触媒を損傷および/または失活させるおそれがある酸素レベルである、
排気浄化システム。
【請求項2】
酸素検出システムが酸素感知器を備える、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
酸素検出システムが排気口に取り付けられている、請求項1または2に記載のシステム。
【請求項4】
酸素検出システムが、エンジン制御ユニットによって発信される信号を含む、請求項1から3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
NOx貯蔵触媒が、コールドスタート触媒を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項6】
NOx貯蔵触媒が、受動的NOx吸着体を含む、請求項1から4のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
排気流からの排出物を減少させる方法であって、
a.NOx貯蔵触媒の上流で排気流中の酸素レベルを検出すること、
b.指定された排気条件でNOx貯蔵触媒の上流に空気を噴射し、貧酸素状態からNOx貯蔵触媒を保護すること
を含み、前記指定された排気条件は、NOx貯蔵触媒に流入する排気流のラムダ比が1.1を超えて維持されるよう
に、前記貧酸素状態が検出されたことに応答して、排気流に空気を噴射することを含み、
前記貧酸素状態は、前記NOx貯蔵触媒を損傷および/または失活させるおそれがある酸素レベルである、
方法。
【請求項8】
酸素レベルが、排気口に取り付けられた酸素感知器により検出される、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
酸素レベルが、エンジン制御ユニットによって発信される信号により検出される、請求項7または8に記載の方法。
【請求項10】
NOx貯蔵触媒が、コールドスタート触媒である、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
NOx貯蔵触媒が、受動的NOx吸着体である、請求項7から9のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
有害な副生成物の放出を減少させる必要性および燃費向上へのさらに高まる圧力は、内燃エンジンに関する継続した課題である。ディーゼルエンジンは世界中で政府間組織により禁止されている少なくとも4種類の汚染物質、すなわち一酸化炭素(CO)、未燃焼炭化水素(HC)、窒素酸化物(NOx)および粒子状物質(PM)を通常含有する、排出物を発生させる。各種の汚染物質の1種または複数を処理する種々の排出物制御装置が存在する。排出物が環境中に放出される前に全4種類の汚染物質が確実に処理されるようにするため、これらの排出物制御装置は排気システムの一部として組み合わされることが多い。
【0002】
一定の条件下では、排気流は低レベルの酸素を含む場合がある。しかし、一部の排出物制御装置は貧酸素排気環境で損傷または失活するおそれがある触媒を含む場合がある。したがって、そのような触媒を貧酸素状態から保護する必要がある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一部の実施形態によれば、排気流からの排出物を減少させるための排気浄化システムは、酸素検出システム、触媒、および指定された排気条件で排気流中に空気を噴射して貧酸素状態から触媒を保護する、酸素検出システムと触媒との間に配置された空気噴射システムを含む場合がある。一部の実施形態では、酸素検出システムは酸素感知器を含む。酸素検出システムは排気口に取り付けられている場合がある。一部の実施形態では、酸素検出システムは、エンジン制御ユニットによって発信される信号を含む。一部の実施形態では、触媒はコールドスタート触媒等のNOx貯蔵触媒を含む。
【0004】
一部の実施形態では、指定された排気条件は最低酸素レベル未満の排気流酸素レベルを含む。最低酸素レベルがエンジンおよび排気システム中に噴射される全燃料の完全燃焼に必要なレベルを超える酸素レベルを含む場合がある。一部の実施形態では、最低酸素レベルは約1重量%以上の酸素、または約10重量%の酸素を含む。特定の実施形態では、空気噴射システムが作動して触媒中のラムダ比が約1.1未満にならないように触媒の上流に空気を噴射する場合がある。
【0005】
本発明の一部の実施形態によれば、排気流からの排出物を減少させるための排気浄化システムは、酸素検出システム、触媒、酸素検出システムと触媒との間に配置された空気噴射システム、および貧酸素状態から触媒を保護するために、最低酸素レベル未満の排気流酸素レベルの検出時に、排気流中に空気を噴射する指示を含むコントローラを含む。
【0006】
一部の実施形態では、最低酸素レベルはエンジンおよび排気システム中に噴射される全燃料の完全燃焼に必要なレベルを超える酸素レベルを含む。一部の実施形態では、最低酸素レベルは約1重量%以上または約10重量%以上の酸素を含む。
【0007】
特定の実施形態では、コントローラは触媒に入る排気流に約1.1を超えるラムダ比が維持されるように、空気を噴射する指示を含む。一部の実施形態では、コントローラは触媒に入る排気流の酸素レベルがエンジンおよび排気システム中に噴射される全燃料の完全燃焼に必要な酸素レベルを超えて維持されるように、空気を噴射する指示を含む。一部の実施形態では、コントローラは触媒に入る排気流に最低酸素レベルを超える排気流酸素レベルが維持されるように、空気を噴射する指示を含む。コントローラは、触媒に入る排気流に酸素約1重量%を超える排気流酸素レベルが維持されるように、または触媒に入る排気流に酸素約10重量%を超える排気流酸素レベルが維持されるように、空気を噴射する指示を含む場合がある。一部の実施形態では、空気噴射システムは弁、および検出された排気流酸素レベルに応じて弁を作動させる指示を含むコントローラを含む。
【0008】
本発明の一部の実施形態によれば、排気流からの排出物を減少させる方法は、触媒の上流で排気流の酸素レベルを検出すること、および貧酸素状態から触媒を保護するために、指定された排気条件で触媒の上流に空気を噴射することを含む。一部の実施形態では、触媒の上流で空燃比を調節するために空気が噴射される。たとえば、触媒に入る排気流にリーンな空燃比を提供するために空気が噴射される場合がある。一部の実施形態では、指定された排気条件はリッチな空燃比を含む。一部の実施形態では、触媒に入る排気流の排気流酸素レベルが最低酸素レベルを超えるように、空気が噴射される。たとえば、触媒に入る排気流の酸素レベルが酸素約1重量%を超えるように、または触媒に入る排気流の酸素レベルが酸素約10重量%を超えるように、空気が噴射される場合がある。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の実施形態のシステム構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
詳細な説明
本発明のシステムおよび方法は、内燃エンジンからの排出物の浄化に関する。本発明は、具体的にはディーゼルエンジンからの排出物を浄化することを対象とする。
【0011】
本発明のシステムおよび方法は、排気流の酸素レベルを監視する酸素検出システム、空気噴射システム、および貧酸素排気条件に曝露されると長期にわたり損傷または失活する傾向がある1種または複数の触媒を含む。これらの構成要素がディーゼルエンジンの排気を監視するために連携して働き、排気流の貧酸素状態を検出すると、排気流への空気噴射を作動させる場合がある。そのようなシステムおよび方法は、貧酸素状態に曝露されると損傷および/または失活を受けやすい触媒を保護することを目的としている。本明細書で記載した触媒保護システムおよび方法は、リッチな条件を防止するためのエンジン燃焼制御手法を補完するのに有用な場合があり、または当初はリッチな条件で作動するように設計されていなかったエンジンにこれらの種の触媒を適合させる(すなわち、改良する)のに使用することができる。
【0012】
本明細書で使用する場合、「上流で」および「下流で」はエンジンから大気への排気流の方向に対している。
【0013】
酸素検出システム
本発明のシステムは、排気流の酸素レベルを検出および監視するための酸素検出システムを含む場合がある。排気流の酸素レベルは、酸素感知器等の1個または複数の感知器を含む、任意の適切な方法により検出される場合がある。酸素感知器は排気口に取り付けられている場合がある。酸素検出は、酸素の測定または検出能力を有する他の排気口に取り付けられた感知器により実施される場合がある。酸素検出システムは、エンジン制御ユニットによって発信される信号を含む場合があり、酸素レベルは感知器および/またはコントロールテーブルからの入力を使用して算出される場合がある。
【0014】
酸素感知器は排気流の酸素レベルに関するデータを測定し提供する場合があり、そのデータは、いつ排気流への空気噴射を作動および/または停止させるか決定するのに使用することができる。
【0015】
酸素検出システムは貧酸素状態に曝露されると損傷および/または失活を受けやすい触媒の上流で排気流の酸素レベルを検出および監視することができるように配置され、運転される場合がある。
【0016】
空気噴射システム
本発明のシステムは空気噴射システムを含む。空気は貧酸素状態に曝露されると損傷および/または失活を受けやすい触媒の上流に、任意の適切な方法により噴射される。空気供給源は、たとえば、周囲の空気、エンジン吸気マニホールドからの空気、ならびに/または車両の圧縮空気槽および/もしくはシステムからの空気である場合がある。
【0017】
周囲の空気を供給するためにエアポンプを使用する場合がある。空気は弁により制御される噴射ラインにより排気流中に噴射される場合がある。弁は酸素検出システムからの情報に基づいて、排気流中に空気を噴射したり、空気噴射を止めたりする指示を与える場合があるコントローラにより、制御される場合がある。たとえば、最低酸素レベル未満の排気流酸素レベルの検出時に、コントローラは貧酸素状態から触媒を保護するために、排気流中に空気を噴射するために弁を開ける指示を与える場合がある。
【0018】
触媒
本発明のシステムは、貧酸素状態に曝露されると損傷および/または失活を受けやすい1種または複数の触媒を含む。貧酸素状態は、システム中の1種または複数の触媒を損傷および/または失活させるおそれがある酸素レベルと定義される場合がある。一部の実施形態では、貧酸素状態はリッチな空燃比条件と定義される場合がある。一部の実施形態では、貧酸素状態は、触媒に入る排気流中の酸素約1重量%未満素、または触媒に入る排気流中の酸素約10重量%未満の酸素レベルと定義される。
【0019】
貧酸素状態に曝露されると損傷および/または失活を受けやすい場合がある触媒の例には、コールドスタート触媒、受動的NOx吸着体、NOxトラップ等のNOx貯蔵触媒が含まれる場合がある。
【0020】
NOx貯蔵触媒
NOx貯蔵触媒は、一般に温度および/または排気条件がリッチ/リーンに依存する一定の条件により、NOxを吸着し、放出し、かつ/または還元するデバイスを含む場合がある。NOx貯蔵触媒は、たとえば、受動的NOx吸着体、コールドスタート触媒、NOxトラップ等を含む場合がある。
【0021】
受動的NOx吸着体
本発明のシステムは、1種または複数の受動的NOx吸着体を含む場合がある。受動的NOx吸着体は、ある低温以下ではNOxを吸着し、その低温を超える温度では吸着されたNOxを放出するのに有効なデバイスである。受動的NOx吸着体は、貴金属および細孔分子ふるいを含む場合がある。貴金属は、パラジウム、白金、ロジウム、金、銀、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、またはそれらの混合物であることが好ましい。低温は約200℃、約250℃、または約200℃から約250℃の間であることが好ましい。適切な受動的NOx吸着体の例は、本明細書でその全体が参照により組み込まれる、米国特許公開第20150158019号に記載している。
【0022】
細孔分子ふるいは、ゼオライトを含む任意の天然または合成分子ふるいであり、アルミニウム、ケイ素および/またはリンから構成されることが好ましい。分子ふるいは典型的には酸素原子の共有により結合するSiO4、AlO4および/またはPO4の三次元的構成を有するが、二次元構造である場合もある。分子ふるい骨格は、典型的にはアニオン性であり、電荷補償カチオン、典型的にはアルカリおよびアルカリ土類元素(たとえば、Na、K、Mg、Ca、SrおよびBa)、アンモニウムイオン、ならびにプロトンにより平衡化している。他の金属(たとえば、Fe、TiおよびGa)が細孔分子ふるいの骨格に組み込まれて、金属組込み分子ふるいが生成される場合がある。
【0023】
細孔分子ふるいはアルミノケイ酸塩分子ふるい、金属置換アルミノケイ酸塩分子ふるい、アルミノリン酸塩分子ふるいまたは金属置換アルミノリン酸塩分子ふるいから選択されることが好ましい。より好ましくは、細孔分子ふるいはACO、AEI、AEN、AFN、AFT、AFX、ANA、APC、APD、ATT、CDO、CHA、DDR、DFT、EAB、EDI、EPI、ERI、GIS、GOO、IHW、ITE、ITW、LEV、KFI、MER、MON、NSI、OWE、PAU、PHI、RHO、RTH、SAT、SAV、SIV、THO、TSC、UEI、UFI、VNI、YUGおよびZONの骨格型、ならびに任意の2種以上の混合体または連晶を有する分子ふるいである。細孔分子ふるいの特に好ましい連晶にはKFI-SIV、ITE-RTH、AEW-UEI、AEI-CHAおよびAEI-SAVが含まれる。最も好ましくは、細孔分子ふるいはAEIもしくはCHAまたはAEI-CHA連晶である。
【0024】
適切な受動的NOx吸着体は、任意の公知の手段により調製される場合がある。たとえば、任意の公知の手段により貴金属が細孔分子ふるいに添加されて受動的NOx吸着体を形成する場合がある。たとえば、貴金属化合物(硝酸パラジウム等)が、含浸、吸着、イオン交換、インシピエントウェットネス、沈殿等により分子ふるいに担持される場合がある。また、他の金属も受動的NOx吸着体に添加される場合がある。受動的NOx吸着体の貴金属の一部(添加される全貴金属の1パーセントを超える)は細孔分子ふるいの孔内に配置されることが好ましい。より好ましくは、貴金属の総量の5パーセント超が、細孔分子ふるいの孔内に配置され、さらにより好ましくは貴金属の総量の10パーセント超、または25%超、または50パーセント超が細孔分子ふるい中の孔内に配置されてもよい。
【0025】
受動的NOx吸着体は、フロースルー基材またはフィルター基材をさらに含むことが好ましい。受動的NOx吸着体はフロースルーまたはフィルター基材にコーティングされ、好ましくはウォッシュコート手順を用いてフロースルーまたはフィルター基材に堆積させて、受動的NOx吸着体システムを生成する。
【0026】
コールドスタート触媒
本発明のシステムは、1種または複数のコールドスタート触媒を含む場合がある。コールドスタート触媒は、ある低温以下ではNOxおよび炭化水素(HC)を吸着し、変換し、その低温を超える温度では吸着されたNOxおよびHCを放出するのに有効なデバイスである。低温は約200℃、約250℃、または約200℃から約250℃の間であることが好ましい。適切なコールドスタート触媒の例はWO2015085300に記載され、本明細書でその全体が参照により組み込まれる。
【0027】
コールドスタート触媒は分子ふるい触媒および担持白金族金属触媒を含む場合がある。分子ふるい触媒は貴金属および分子ふるいを含み、または本質的にそれらからなる場合がある。担持白金族金属触媒は、1種または複数の白金族金属および1種または複数の無機酸化物担体を含む。貴金属はパラジウム、白金、ロジウム、金、銀、イリジウム、ルテニウム、オスミウム、またはそれらの混合物であることが好ましい。
【0028】
分子ふるいは、ゼオライトを含む任意の天然または合成分子ふるいである場合があり、アルミニウム、ケイ素および/またはリンから構成されることが好ましい。分子ふるいは、典型的には酸素原子の共有により結合するSiO4、AlO4および/またはPO4の三次元構成を有するが、二次元構造である場合もある。分子ふるい骨格は、典型的にはアニオン性であり、電荷補償カチオン、典型的にはアルカリおよびアルカリ土類元素(たとえば、Na、K、Mg、Ca、SrおよびBa)、アンモニウムイオン、ならびにプロトンにより平衡化している。
【0029】
分子ふるいは8個の四面体原子の最大環サイズを有する細孔分子ふるい、10個の四面体原子の最大環サイズを有する中間孔分子ふるい、または12個の四面体原子の最大環サイズを有する大型孔分子ふるいであることが好ましい場合がある。より好ましくは、分子ふるいはAEI、MFI、EMT、ERI、MOR、FER、BEA、FAU、CHA、LEV、MWW、CON、EUO、またはそれらの混合物の骨格構造を有する。
【0030】
担持白金族金属触媒は、1種または複数の白金族金属(「PGM」)および1種または複数の無機酸化物担体を含む。PGMは白金、パラジウム、ロジウム、イリジウム、またはそれらの組合せであり、最も好ましくは白金および/またはパラジウムである場合がある。無機酸化物担体は、最も一般に第2、3、4、5、13および14族元素の酸化物を含む。有用な無機酸化物担体は10から700m2/gの範囲の表面積、0.1から4mL/gの範囲の細孔容積、および約10から1000オングストロームの細孔径を有することが好ましい。無機酸化物担体は、アルミナ、シリカ、チタニア、ジルコニア、セリア、ニオビア、タンタル酸化物、モリブデン酸化物、タングステン酸化物、またはそれらの任意の2つ以上の混合酸化物もしくは複合酸化物、たとえばシリカ-アルミナ、セリア-ジルコニアもしくはアルミナ-セリア-ジルコニアであることが好ましい。アルミナおよびセリアが特に好ましい。
【0031】
担持白金族金属触媒は、任意の公知の手段により調製し得る。1種または複数の白金族金属は、任意の公知の手段により1種または複数の無機酸化物に担持して、担持PGM触媒を形成することが好ましく、添加の方法は特に重要であるとは考えられない。たとえば、白金化合物(硝酸白金等)は、含浸、吸着、イオン交換、インシピエントウェットネス、沈殿等により無機酸化物に担持される場合がある。また、鉄、マンガン、コバルト、バリウム等の他の金属も、担持PGM触媒に添加される場合がある。
【0032】
本発明のコールドスタート触媒は、当技術分野で周知の方法により調製される場合がある。分子ふるい触媒および担持白金族金属触媒は、物理的に混合されてコールドスタート触媒が生成される場合がある。コールドスタート触媒はフロースルー基材またはフィルター基材をさらに含むことが好ましい。一実施形態では、分子ふるい触媒および担持白金族金属触媒は、フロースルーまたはフィルター基材にコーティングし、好ましくはウォッシュコート手順を使用してフロースルーまたはフィルター基材に堆積させて、コールドスタート触媒システムを生成する。
【0033】
NOxトラップ
本発明のシステムは、1種または複数のNOxトラップを含む場合がある。NOxトラップは、リーンな排気条件下ではNOxを吸着し、リッチ条件下では吸着されたNOxを放出し、放出されたNOxを還元してN2を形成するデバイスである。
【0034】
本発明の実施形態のNOxトラップは、NOxおよび酸化/還元触媒の貯蔵のためのNOx吸着剤を含む場合がある。典型的には、一酸化窒素は酸化触媒の存在下で酸素と反応してNO2を生成する。第2に、NO2は無機硝酸塩の形でNOx吸着剤により吸着される(たとえば、BaOまたはBaCO3はNOx吸着剤上でBa(NO3)2に変換される)。最後に、エンジンがリッチ条件下で作動すると、貯蔵された無機硝酸塩は分解してNOまたはNO2を形成し、それらはその後還元触媒の存在下で一酸化炭素、水素および/または炭化水素(またはNHxまたはNCO中間体を経て)との反応により還元されてN2を形成する。典型的には、窒素酸化物は排気流中の熱、一酸化炭素および炭化水素の存在下で窒素、二酸化炭素および水に変換される。
【0035】
NOx吸着剤成分は、アルカリ土類金属(Ba、Ca、Sr、およびMg等)、アルカリ金属(K、Na、Li、およびCs等)、希土類金属(La、Y、Pr、およびNd等)、またはそれらの組合せであることが好ましい。これらの金属は、典型的には酸化物の形で見出される。酸化/還元触媒は、1種または複数の貴金属を含む場合がある。適切な貴金属は、白金、パラジウムおよび/またはロジウムを含む場合がある。好ましくは、白金は酸化機能を担うために含まれ、ロジウムは還元機能を担うために含まれる。酸化/還元触媒およびNOx吸着剤は、排気システムに使用するために無機酸化物等の担持材料に担持してもよい。
【0036】
システム
本発明のシステムは、排気流からの排出物を減少させるように構成されている。システムは、酸素検出システム、触媒、および貧酸素状態から触媒を保護するために、指定された排気条件で排気流中に空気を噴射する、酸素検出システムと触媒との間に配置された空気噴射システムを含む場合がある。本明細書で記載したように、触媒は貧酸素排気条件に曝露されると長期にわたり失活する傾向がある配合物を含む場合がある。たとえば、その触媒はコールドスタート触媒、受動的NOx吸着体、NOxトラップ等のNOx貯蔵触媒を含む場合がある。
【0037】
システムは、酸素検出システム、触媒、酸素検出システムと触媒との間に配置された空気噴射システム、および貧酸素状態から触媒を保護するために、最低酸素レベル未満の排気流酸素レベルの検出時に、排気流中に空気を噴射する指示を含むコントローラを含む場合がある。
【0038】
システムの操作
排気流からの排出物を減少させる方法は、触媒の上流で排気流の酸素レベルを検出すること、および貧酸素状態から触媒を保護するために、指定された排気条件で触媒の上流に空気を噴射することを含む場合がある。一部の実施形態では、コントローラは指定された排気条件の検出時に排気流中に空気を噴射する指示を与える場合がある。
【0039】
酸素レベルは、上記のように、酸素検出システムにより検出される場合があり、コントローラは貧酸素状態から触媒を保護するために、指定された排気条件の検出時に空気噴射システムが排気流中に空気を噴射するように指示を与える場合がある。
【0040】
一部の実施形態では、指定された排気条件はリッチな空燃比を含む。触媒の上流で空燃比を調節するために空気が噴射される場合がある。たとえば、触媒に入る排気流がリーンな空燃比になるように空気が噴射される場合がある。一部の実施形態では、触媒に入る排気流中に約1.1未満のラムダ比が維持されるように空気が噴射される。
【0041】
一部の実施形態では、指定された排気条件は、最低酸素レベル未満の排気流レベルを含む。一部の実施形態では、最低酸素レベルはエンジンおよび排気システム中に噴射される全燃料の完全燃焼に必要なレベルを超える酸素レベルを含む。一部の実施形態では、最低酸素レベルは約1重量%以上、約2重量%以上、約5重量%以上、約7重量%以上、約10重量%以上、約15重量%以上、約20重量%以上、約0.5重量%から約20重量%、約1重量%から約18重量%、約1重量%から約16重量%、約1重量%から約14重量%、約1重量%から約12重量%、約1重量%から約10重量%、約0.5重量%、約1重量%、約2重量%、約3重量%、約4重量%、約5重量%、約6重量%、約7重量%、約8重量%、約9重量%、約10重量%、約12重量%、約14重量%、約15重量%、約16重量%、約18重量%または約20重量%の量の酸素を含む。
【0042】
一部の実施形態では、触媒に入る排気流中に最低酸素レベルを超える排気流酸素レベルが維持されるように、空気が噴射される場合がある。一部の実施形態では、触媒に入る排気流の酸素レベルがエンジンおよび排気システム中に噴射される全燃料の完全燃焼に必要な酸素レベルを超えて維持されるように、空気が噴射される場合がある。
【0043】
追加の構成要素
本発明のシステムは、個々の排気流条件で所望の排出物制御を実現するのに適したさらなる構成要素を含む場合がある。そのような構成要素は当技術分野で公知であり、選択触媒還元触媒、還元剤注入器、アンモニアスリップ触媒、ディーゼル酸化触媒、粒子フィルター等を含む場合がある。