(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】ガス発生器及びガス発生器の組立方法
(51)【国際特許分類】
B60R 21/264 20060101AFI20240510BHJP
B01J 7/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B60R21/264
B01J7/00 A
(21)【出願番号】P 2020013693
(22)【出願日】2020-01-30
【審査請求日】2022-11-11
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002901
【氏名又は名称】株式会社ダイセル
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】猪妻 利広
(72)【発明者】
【氏名】中安 佑介
【審査官】飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】特開2012-144072(JP,A)
【文献】国際公開第2019/176504(WO,A1)
【文献】米国特許出願公開第2012/0326423(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B60R 21/16-21/33
B01J 7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
点火部と前記点火部の作動により燃焼するガス発生剤とが配置される燃焼室と、
前記燃焼室を画定するハウジングであって、筒状の周壁部と、前記周壁部の一端側に設けられた第1壁部と、前記周壁部の他端側に設けられた第2壁部と、を含み、前記周壁部には前記燃焼室と前記ハウジングの外部とを連通するガス排出孔が形成されたハウジングと、
筒状に形成されたフィルタであって、前記ガス発生剤を取り囲むように前記燃焼室における前記ガス発生剤と前記ガス排出孔との間に配置され、その軸方向の一端面が前記第1壁部の側で前記ハウジングに支持され、他端面が前記第2壁部の側で前記ハウジングに支持されたフィルタと、
を備えるガス発生器であって、
前記フィルタの軸方向の両端面のうちの少なくとも一方である支持端面は、前記支持端面の一部である第1部位が前記ハウジングに接触して前記ハウジングを押圧した状態で、且つ、前記支持端面のうち前記第1部位を除く部位である第2部位が前記ハウジングから離間した状態で、前記ハウジングに支持されており、
前記支持端面は、その外周縁を前記第1部位として前記ハウジングに支持されており、
前記支持端面の前記第1部位と前記ハウジングとの接触状態は、前記外周縁が前記ハウジングに食い込むことで
前記ハウジングが前記第1部位を受け入れるように変形し、前記フィルタの周方向に沿って環状に形成されている、
ガス発生器。
【請求項2】
前記ハウジングにおいて前記支持端面を支持する支持部は、前記フィルタの軸方向において前記フィルタから離れるに従って縮径するように傾斜しており、
前記支持端面は、その外周縁を前記第1部位として前記ハウジングに支持されている、
請求項1に記載のガス発生器。
【請求項3】
前記支持端面は、前記支持端面における他の部位よりも前記フィルタの軸方向に沿って突出した環状の部位である突出部を有し、且つ、前記突出部を前記第1部位として前記ハウジングに支持されている、
請求項1または2に記載のガス発生器。
【請求項4】
前記第2壁部には、前記点火部が固定されており、
前記フィルタの両端面のうちの少なくとも前記他端面が前記支持端面であって、
前記周壁部は、前記第1壁部の側に位置し且つ前記ガス排出孔が形成された筒状の径大部と、前記第2壁部の側に位置し且つ前記径大部よりも小径に形成された筒状の径小部と、前記径大部と前記径小部とを接続する環状の接続部と、を含み、
前記ハウジングにおいて前記フィルタの前記他端面を支持する支持部は、前記接続部に含まれている、
請求項1から3の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項5】
前記フィルタの前記他端面は、前記第2部位と前記接続部との間に、前記フィルタの径方向内側に開口した溝が形成されるように、前記ハウジングに支持されている、
請求項4に記載のガス発生器。
【請求項6】
前記フィルタの内周面が前記径小部の内周面よりも前記径小部の径方向内側に位置している、
請求項5に記載のガス発生器。
【請求項7】
前記燃焼室には、筒状の内筒部材が前記点火部を取り囲むように配置されることで、前記点火部の作動により燃焼して前記ガス発生剤を燃焼させる伝火薬が収容される伝火室が、前記点火部と前記内筒部材との間に形成され、
前記内筒部材には、少なくとも前記点火部の作動時に前記伝火室の内部と外部とを連通する連通孔が形成され、
前記連通孔は、前記フィルタの軸方向において、前記第2壁部と前記フィルタの前記他端面との間に位置している、
請求項4から6の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項8】
前記フィルタの軸方向の両端面が、前記支持端面である、
請求項1から7の何れか一項に記載のガス発生器。
【請求項9】
点火部と前記点火部の作動により燃焼するガス発生剤とが配置される燃焼室と、
前記燃焼室を画定するハウジングであって、筒状の周壁部と、前記周壁部の一端側に設けられた第1壁部と、前記周壁部の他端側に設けられた第2壁部と、を含み、前記周壁部には前記燃焼室と前記ハウジングの外部とを連通するガス排出孔が形成されたハウジングと、
筒状に形成されたフィルタであって、前記ガス発生剤を取り囲むように前記燃焼室における前記ガス発生剤と前記ガス排出孔との間に配置され、その軸方向の一端面が前記第1壁部の側で前記ハウジングに支持され、他端面が前記第2壁部の側で前記ハウジングに支持されたフィルタと、
を備えるガス発生器の組立方法であって、
前記ガス発生器において前記ハウジングの一部を構成し且つ前記フィルタの軸方向の両端面のうちの少なくとも一方である支持端面を支持するハウジング部品と、前記フィルタと、を準備することと、
前記支持端面の外周縁である第1部位が前記ハウジングに接触して前記ハウジングを押圧すると共に前記第1部位を除く部位である第2部位が前記ハウジングから離間した状態となるように、且つ、前記外周縁を前記ハウジングに食い込ませることで
前記第1部位を受け入れるように前記ハウジングを変形させ、前記支持端面の前記第1部位と前記ハウジングとの接触状態が前記フィルタの周方向に沿って環状に形成されるように、前記フィルタを前記ハウジング部品に組み付けることと、を含む、
ガス発生器の組立方法。
【請求項10】
前記ハウジング部品において前記支持端面を支持する支持部は、前記ガス発生器において前記フィルタの軸方向において前記フィルタから離れるに従って縮径するように傾斜しており、
前記フィルタを前記ハウジング部品に組み付けることにおいては、前記支持端面が前記支持端面の外周縁を前記第1部位として前記ハウジングに支持され、前記支持端面の前記外周縁と前記ハウジングとの接触状態が前記フィルタの周方向に沿って環状に形成されるように、前記フィルタを前記ハウジング部品に組み付ける、
請求項9に記載のガス発生器の組立方法。
【請求項11】
前記支持端面は、前記支持端面における他の部位よりも前記フィルタの軸方向に沿って突出した突出部を有し、
前記フィルタを前記ハウジング部品に組み付けることにおいては、前記支持端面が前記突出部を前記第1部位として前記ハウジングに支持され、前記突出部と前記ハウジングとの接触状態が前記フィルタの周方向に沿って環状に形成されるように、前記フィルタを前記ハウジング部品に組み付ける、
請求項9または10に記載のガス発生器の組立方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、点火部の作動によりガス発生剤を燃焼させて燃焼ガスを発生させるガス発生器、及びガス発生器の組立方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ハウジング内に形成された燃焼室内にガス発生剤を充填し、点火器によってガス発生剤を燃焼させることで燃焼ガスを発生させ、該燃焼ガスをハウジングに設けられたガス排出孔から外部へ放出するガス発生器が広く用いられている。また、このようなガス発生器において、発生した燃焼ガスの冷却及び残渣の捕集を行うために、燃焼室とガス排出孔との間に筒状のフィルタが配置される場合がある。燃焼ガスの全部がフィルタを通過するように、フィルタの軸方向の両端部がハウジング内で接触して支持される。
【0003】
これに関連して、特許文献1や特許文献2には、燃焼ガスの一部がフィルタを通らずにガス排出孔に至る、いわゆる「ショートパス」を抑制するための構造を備えたガス発生器が開示されている。特許文献1に開示のガス発生器は、フィルタの端面に固定具を取付けることでフィルタの端面をハウジングに固定し、ショートパスを抑制する。また、特許文献2に開示のガス発生器は、フィルタにおけるハウジングに接触する部分に折り曲げ部を形成し、該折り曲げ部の弾性力によってフィルタの端面をハウジングに圧接させることで、ショートパスを抑制する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】国際公開第2002/083464号
【文献】特開2010-234843号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述の技術では、ショートパスの抑制効果が十分とはいえず、より効果的にショートパスを抑制できる技術が求められている。
【0006】
本開示の技術は、上述の実情を鑑みてなされたものであり、その目的は、ガス発生器において、効果的にショートパスを抑制できる技術を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本開示の技術は、以下の構成を採用した。即ち、本開示の技術は、点火部と前記点火部の作動により燃焼するガス発生剤とが配置される燃焼室と、前記燃焼室を画定するハウジングであって、筒状の周壁部と、前記周壁部の一端側に設けられた第1壁部と、前記周壁部の他端側に設けられた第2壁部と、を含み、前記周壁部には前記燃焼室と前記ハウジングの外部とを連通するガス排出孔が形成されたハウジングと、筒状に形成されたフィルタであって、前記ガス発生剤を取り囲むように前記燃焼室における前記ガス発生剤と前記ガス排出孔との間に配置され、その軸方向の一端面が前記第1壁部の側で前記ハウジングに支持され、他端面が前記第2壁部の側で前記ハウジングに支持されたフィルタと、を備えるガス発生器であって、前記フィルタの軸方向の両端面のうちの少なくとも一方である支持端面は、前記支持端面の一部である第1部位が前記ハウジングに接触して前記ハウジングを押圧した状態で、且つ、前記支持端面のうち前記第1部位を除く部位である第2部位が前記ハウジングから離間した状態で、前記ハウジングに支持されており、前記支持端面の前記第1部位と前記ハウジングとの接触状態は、前記フィ
ルタの周方向に沿って環状に形成されている、ガス発生器である。
【0008】
上記のように構成される本開示のガス発生器では、支持端面が第1部位でハウジングに支持され、且つ、第1部位がハウジングを押圧することで、荷重が第1部位に集中する。そのため、支持端面の第1部位は、支持端面が全面でハウジングに支持される場合よりも強くハウジングに接触する。これに加え、第1部位とハウジングとの接触状態をフィルタの周方向に沿って環状に形成することで、燃焼ガスがフィルタの内周面側から外周面側へと通り抜けられるような隙間が、支持端面とハウジングとの間に形成されることがない。これにより、本開示のガス発生器によれば、ショートパスを効果的に抑制できる。
【0009】
更に、本開示のガス発生器において、前記ハウジングにおいて前記支持端面を支持する支持部は、前記フィルタの軸方向において前記フィルタから離れるに従って縮径するように傾斜しており、前記支持端面は、その外周縁を前記第1部位として前記ハウジングに支持されていてもよい。
【0010】
これによると、支持部を上記のように傾斜させることで、支持端面をその外周縁でハウジングに支持させることができ、支持端面の外周縁をハウジングに強く接触させることができる。
【0011】
また、本開示のガス発生器において、前記支持端面は、前記支持端面における他の部位よりも前記フィルタの軸方向に沿って突出した環状の部位である突出部を有し、且つ、前記突出部を前記第1部位として前記ハウジングに支持されていてもよい。
【0012】
これによると、支持端面に上記のような突出部を形成することで、支持端面を突出部でハウジングに支持させることができ、突出部をハウジングに強く接触させることができる。
【0013】
更に、本開示のガス発生器において、前記第2壁部には、前記点火部が固定されており、前記フィルタの両端面のうちの少なくとも前記他端面が前記支持端面であって、前記周壁部は、前記第1壁部の側に位置し且つ前記ガス排出孔が形成された筒状の径大部と、前記第2壁部の側に位置し且つ前記径大部よりも小径に形成された筒状の径小部と、前記径大部と前記径小部とを接続する環状の接続部と、を含み、前記ハウジングにおいて前記フィルタの前記他端面を支持する支持部は、前記接続部に含まれていてもよい。
【0014】
ガス発生器では、燃焼ガスはガス排出孔に向かって流れるため、フィルタを通過する燃焼ガスの大部分は、フィルタのうちガス排出孔の近傍の部分を通過し、ガス排出孔から遠い部分ほど通過する燃焼ガスは少量となる傾向がある。そのため、周壁部における第1壁部側にガス排出孔が形成されたガス発生器では、フィルタを第1壁部から第2壁部に亘って設けた場合、フィルタのうちガス排出孔から遠い第2壁部近傍の部分は、燃焼ガスが余り通過せず、燃焼ガスの冷却・濾過に余り寄与しない部分となる。これに対して、本開示のガス発生器においてフィルタの他端面を支持する支持部は、周壁部の軸方向において第1壁部と第2壁部の間に位置する接続部に含まれている。つまり、フィルタは、燃焼ガスが余り通過しない第2壁部近傍まで延びていない。そのため、このようなガス発生器によると、フィルタを第1壁部から第2壁部に亘って設けた場合と比較して、より効率的にフィルタを利用することができる。つまり、燃焼ガスの冷却・濾過機能を十分に確保しつつも、フィルタをコンパクトにすることができ、フィルタの低重量、低コスト化に資することができる。
【0015】
更に、本開示のガス発生器において、前記フィルタの前記他端面は、前記第2部位と前記接続部との間に、前記フィルタの径方向内側に開口した溝が形成されるように、前記ハ
ウジングに支持されていてもよい。
【0016】
これによると、前記フィルタの径方向内側に開口した溝を形成することで、燃焼ガスがガス排出孔に向かって流れるときに、上記溝に燃焼ガスの残渣を捕集することができる。これにより、燃焼残渣の捕集性能を向上させることができる。
【0017】
更に、上記のガス発生器において、前記フィルタの内周面が前記径小部の内周面よりも前記径小部の径方向内側に位置してもよい。
【0018】
これによると、フィルタの他端面が周壁部の径小部よりも径方向内側に突出することとなり、燃焼ガスの残渣がフィルタの他端面及び溝に補足され易くなる。つまり、燃焼ガスの残渣の捕集において、フィルタの他端面や溝をより有効に利用することができる。
【0019】
更に、本開示のガス発生器において、前記燃焼室には、筒状の内筒部材が前記点火部を取り囲むように配置されることで、前記点火部の作動により燃焼して前記ガス発生剤を燃焼させる伝火薬が収容される伝火室が、前記点火部と前記内筒部材との間に形成され、前記内筒部材には、少なくとも前記点火部の作動時に前記伝火室の内部と外部とを連通する連通孔が形成され、前記連通孔は、前記フィルタの軸方向において、前記第2壁部と前記フィルタの前記他端面との間に位置していてもよい。
【0020】
ガス発生剤は、連通孔から噴出する伝火薬の燃焼ガスにより着火する。そのため、連通孔が第2壁部とフィルタの他端面との間に位置することで、燃焼室内のガス発生剤は、第2壁部とフィルタの他端面との間に位置するものから先に燃焼する。これにより、ガス発生剤の燃焼ガスが上記溝に流れ込むように、燃焼ガスの流れが形成される。その結果、燃焼ガスの残渣を捕集し易くすることができる。
【0021】
また、本開示のガス発生器において、前記フィルタの軸方向の両端面が、前記支持端面であってもよい。
【0022】
つまり、フィルタの一端面と他端面の両方が、その一部でハウジングに支持され、ハウジングとの接触状態がフィルタの周方向に沿って環状に形成されてもよい。これによれば、フィルタの両端面においてハウジングとの間に隙間が形成されることを防止し、ショートパスをより効果的に抑制できる。
【0023】
また、本開示の技術をガス発生器の組立方法の側面から捉えることもできる。即ち、本開示の技術は、点火部と前記点火部の作動により燃焼するガス発生剤とが配置される燃焼室と、前記燃焼室を画定するハウジングであって、筒状の周壁部と、前記周壁部の一端側に設けられた第1壁部と、前記周壁部の他端側に設けられた第2壁部と、を含み、前記周壁部には前記燃焼室と前記ハウジングの外部とを連通するガス排出孔が形成されたハウジングと、筒状に形成されたフィルタであって、前記ガス発生剤を取り囲むように前記燃焼室における前記ガス発生剤と前記ガス排出孔との間に配置され、その軸方向の一端面が前記第1壁部の側で前記ハウジングに支持され、他端面が前記第2壁部の側で前記ハウジングに支持されたフィルタと、を備えるガス発生器の組立方法であって、前記ガス発生器において前記ハウジングの一部を構成し且つ前記フィルタの軸方向の両端面のうちの少なくとも一方である支持端面を支持するハウジング部品と、前記フィルタと、を準備することと、前記支持端面の一部である第1部位が前記ハウジングに接触して前記ハウジングを押圧すると共に前記第1部位を除く部位である第2部位が前記ハウジングから離間した状態となるように、且つ、前記支持端面の前記第1部位と前記ハウジングとの接触状態が前記フィルタの周方向に沿って環状に形成されるように、前記フィルタを前記ハウジング部品に組み付けることと、を含む、ガス発生器の組立方法である。
【0024】
更に、本開示の組立方法において、前記ハウジング部品において前記支持端面を支持する支持部は、前記ガス発生器において前記フィルタの軸方向において前記フィルタから離れるに従って縮径するように傾斜しており、前記フィルタを前記ハウジング部品に組み付けることにおいては、前記支持端面が前記支持端面の外周縁を前記第1部位として前記ハウジングに支持され、前記支持端面の前記外周縁と前記ハウジングとの接触状態が前記フィルタの周方向に沿って環状に形成されるように、前記フィルタを前記ハウジング部品に組み付けてもよい。
【0025】
また、本開示の組立方法において、前記支持端面は、前記支持端面における他の部位よりも前記フィルタの軸方向に沿って突出した突出部を有し、前記フィルタを前記ハウジング部品に組み付けることにおいては、前記支持端面が前記突出部を前記第1部位として前記ハウジングに支持され、前記突出部と前記ハウジングとの接触状態が前記フィルタの周方向に沿って環状に形成されるように、前記フィルタを前記ハウジング部品に組み付けてもよい。
【発明の効果】
【0026】
本開示によれば、フィルタを具備するガス発生器において、燃焼ガスのショートパスをより効果的に抑制できる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図1】実施形態1に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図2】
図1におけるフィルタの下端面とハウジングの環状壁部との接触箇所付近の拡大図である。
【
図3】実施形態1に係るガス発生器におけるフィルタを下端面側から見た端面図である。
【
図4】実施形態1に係るガス発生器の組立方法のフローチャートである。
【
図5】実施形態1に係るフィルタの組み付け工程を説明するための図(1)である。
【
図6】実施形態1に係るフィルタの組み付け工程を説明するための図(2)である。
【
図7】実施形態1の変形例1に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図8】実施形態1の変形例2に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図9】実施形態1の変形例3に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図10】実施形態2に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【
図11】実施形態2に係るガス発生器におけるフィルタを下端面側から見た端面図である。
【
図12】
図12(A)及び
図12(B)は、実施形態2に係るフィルタの製造方法の一例を説明するための図である。
【
図13】実施形態3に係るガス発生器の軸方向断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、図面を参照して本開示の実施形態に係るガス発生器について説明する。なお、各実施形態における各構成及びそれらの組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲内で、適宜、構成の付加、省略、置換、及びその他の変更が可能である。本発明は、実施形態によって限定されることはなく、特許請求の範囲によってのみ限定される。
【0029】
<実施形態1>
図1は、実施形態1に係るガス発生器100の軸方向断面図である。
図1では、ガス発生器100の作動前の状態が示されている。ガス発生器100は、例えばエアバッグ用に使用されるエアバッグ用ガス発生器である。
【0030】
[全体構成]
図1に示すように、ガス発生器100は、点火装置4と、内筒部材5と、フィルタ6と、伝火薬110と、ガス発生剤120と、これらを収容するハウジング1と、を備えている。ガス発生器100は、点火装置を1つのみ備えた、いわゆるシングルタイプのガス発生器として構成されている。また、ガス発生器100は、点火装置4に含まれる点火器41を作動させることで、ガス発生剤120を燃焼させ、その燃焼生成物である燃焼ガスをハウジング1に形成されたガス排出孔11から放出するように構成されている。以下、ガス発生器100の各構成について説明する。なお、本明細書では、点火装置(点火部)に含まれる点火器が作動することを、便宜上、「ガス発生器が作動する」又は「点火装置(点火部)が作動する」と表現する場合がある。
【0031】
[ハウジング]
ハウジング1は、点火装置4、内筒部材5、フィルタ6、伝火薬110、及びガス発生剤120が配置される空間である燃焼室10を画定する部材である。ハウジング1は、それぞれが有底略円筒状に形成された金属製の上部シェル2及び下部シェル3が互いの開口端同士を向き合わせた状態で接合されることによって、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状に形成されている。ここで、ハウジング1の軸方向に沿う方向をガス発生器100の上下方向と定義し、上部シェル2側(即ち、
図1における上側)をガス発生器100の上側とし、下部シェル3側(即ち、
図1における下側)をガス発生器100の下側とする。
【0032】
上部シェル2は、ガス発生器100においてハウジング1の一部を構成し且つフィルタ6の上端面61を支持する部品である。上部シェル2は、筒状の上側周壁部21と該上側周壁部21の上端を閉塞する天板部22とを有し、これらにより内部空間を形成する。上側周壁部21の下端部によって上部シェル2の開口部が形成されている。上側周壁部21の下端部には、径方向外側へ延びる接合部23が繋がっている。下部シェル3は、ガス発生器100においてハウジング1の一部を構成し且つフィルタ6の下端面62を支持する部品である。下部シェル3は、筒状の下側周壁部31と該下側周壁部31の下端を閉塞すると共に点火装置4が固定された底板部32とを有し、これらにより内部空間を形成する。下側周壁部31の上端部によって下部シェル3の開口部が形成されている。下側周壁部31の上端部には、径方向外側へ延びる接合部33が繋がっている。下部シェル3は、本開示に係る「ハウジング部品」に相当する。
【0033】
上部シェル2の接合部23と下部シェル3の接合部33とが重ね合わされてレーザ溶接等によって接合されることで、軸方向の両端が閉塞した短尺円筒状のハウジング1が形成されている。上部シェル2と下部シェル3を接合する箇所は、接合部23,33のみである。これら上部シェル2の上側周壁部21と下部シェル3の下側周壁部31とによって、天板部22と底板部32とを接続する筒状の周壁部12が形成されている。つまり、ハウジング1は、筒状の周壁部12と、周壁部12の一端側に設けられた天板部22と、他端側に設けられ、点火装置4が固定された底板部32と、を含んで構成されている。これら天板部22と底板部32と周壁部12とによって、燃焼室10が画定されている。天板部22は、本開示に係る「第1壁部」に相当する。また、底板部32は、本開示に係る「第2壁部」に相当する。また、周壁部12における上側周壁部21には、燃焼室10とハウジング1の外部空間とを連通するガス排出孔11が、周方向に沿って複数並んで形成されている。ガス排出孔11は、点火装置4が作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)により閉塞されている。
【0034】
ここで、
図1に示すように、下部シェル3の下側周壁部31は、第1筒状壁部311と第2筒状壁部312と環状壁部313とを含む。第1筒状壁部311は、下側周壁部31の上端部を含む筒状の部位であり、上側周壁部21と概ね同径に形成されている。第2筒状壁部312は、下側周壁部31の下端部を含む筒状の部位であり、第1筒状壁部311よりも径小に形成されている。環状壁部313は、第1筒状壁部311の下端部と第2筒状壁部312の上端部とを接続する環状の部位である。つまり、環状壁部313は、周壁部12の軸方向において、周壁部12の中途に位置しており、天板部22と底板部32の間に位置している。また、
図1に示すように、環状壁部313は、底板部32側に向かうに従って縮径するように傾斜している。ここで、周壁部12のうち、上側周壁部21と第1筒状壁部311とを含む構成が本開示に係る「径大部」に相当し、第2筒状壁部312が「径小部」に相当し、環状壁部313が「接続部」に相当する。即ち、径大部は、周壁部12の一部位であって、天板部22側に位置し且つガス排出孔11が形成された筒状の部位である。また、径小部は、周壁部12の一部位であって、底板部32側に位置し且つ径大部よりも小径に形成された筒状の部位である。また、接続部は、径大部と径小部とを接続する環状の部位である。なお、本例では、径大部が上側周壁部21の全部と下側周壁部31の一部とによって形成され、径小部及び接続部が下側周壁部31の一部によって形成されているが、本開示はこれに限定されない。本開示は、周壁部に径大部、径小部、及び接続部が形成されていればよく、例えば、径大部が上側周壁部21のみによって形成され、径小部及び接続部が下側周壁部31のみによって形成されてもよい。
【0035】
[点火装置]
図1に示すように、点火装置4は、点火器41とカラー42と樹脂部43とを含み、下部シェル3の底板部32に固定されている。点火装置4は、本開示に係る「点火部」に相当する。点火器41は、点火薬が収容された金属製のカップ体411と、外部から電流の供給を受けるための一対の通電ピン412,412と、を有する。点火器41は、一対の通電ピン412,412に供給される着火電流により作動することで該点火薬を燃焼させ、その燃焼生成物をカップ体411の外部に放出させる。カラー42は、点火器41を支持する部材である。カラー42は、筒状に形成されており、底板部32に形成された取付孔32aに圧入された状態で、溶接等によって固定されている。樹脂部43は、点火器41とカラー42との間に介装されることで、カラー42に対して点火器41を固定する樹脂製の部材である。樹脂部43は、点火器41の下部を覆うと共にカラー42と係合することで、カップ体411の少なくとも一部が樹脂部43から露出した状態となるように、カラー42に対して点火器41を固定する。但し、樹脂部43によってカップ体411の全体がオーバーモールドされていてもよい。即ち、カップ体411の全体が樹脂に覆われた状態であってもよい。また、樹脂部43は、カラー42の内側に、一対の通電ピン412,412に外部電源からの電力を供給するコネクタ(図示せず)を挿入可能なコネクタ挿入空間を形成している。樹脂部43は、一対の通電ピン412,412の下端がコネクタ挿入空間に露出するように、一対の通電ピン412,412の一部を覆い、保持している。樹脂部43によって、一対の通電ピン412,412同士の絶縁性が保たれている。なお、点火器41とカラー42の固定や、カラー42と底板部32の関係は
図1に限られることなく、公知の技術を使用できる。
【0036】
[内筒部材]
内筒部材5は、点火装置4を取り囲むようにして底板部32から天板部22に向かって延びる筒状の部材である。内筒部材5は、一端(上端)が閉塞され他端(下端)が開口した筒状に形成されており、その下端にカラー42が嵌入(圧入)されることで、底板部32に取り付けられている。内筒部材5は、点火装置4とガス発生剤120との間に配置され、内筒部材5と点火装置4との間には、伝火薬110が収容される空間である伝火室51が形成されている。伝火薬110は、点火器41の作動により燃焼し、燃焼ガス等を発生させる。また、内筒部材5には、その内部空間(即ち、伝火室51)と外部空間とを連
通する連通孔52が複数形成されている。連通孔52は、点火装置4が作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)により閉塞されており、点火装置4が作動すると燃焼ガスの圧力によりシールテープが開裂し、伝火室51の内部と外部とが連通する。なお、連通孔52は、少なくとも点火装置4の作動時に伝火室51の内部と外部とを連通すればよく、シールテープで閉塞されていなくともよい。
【0037】
[フィルタ]
フィルタ6は、金属材料により形成された筒状の部材であって、複数の孔を有している。
図1に示すように、フィルタ6は、その内側にガス発生剤が位置し、その外側にガス排出孔11が位置するように、燃焼室10に配置されている。つまり、フィルタ6は、ガス発生剤120を取り囲むように燃焼室10におけるガス発生剤120とガス排出孔11との間に配置されている。フィルタ6の軸方向の両端面は、平坦面に形成されている。該両端面のうち、一端面(符号61で示す上端面)は上部シェル2側でハウジング1に支持され、他端面(符号62で示す下端面)は下部シェル3側でハウジング1に支持されている。より具体的には、上端面61は上部シェル2の天板部22に支持され、下端面62は周壁部12の環状壁部313に支持されている。なお、上端面61と天板部22の間に公知のシール手段を配してもよい。これにより、フィルタ6の軸方向がハウジング1の軸方向(即ち、周壁部の軸方向)と平行となっている。本例では、フィルタ6の下端面62が、本開示に係る「支持端面」に相当する。フィルタ6は、ハウジング1によって軸方向に荷重が加えられた状態で支持されている。
【0038】
本例に係るフィルタ6は、多層構造を有している。多孔が形成された金属板が半径方向に重ねられて(複数層に巻回されて)、フィルタ6が形成されている。フィルタ6の材料となる多孔金属板としては、エキスパンドメタル、ラスメタル、パンチングメタル等が例示される。このフィルタ6には複数の孔が形成されていることから、燃焼室10に配置されたガス発生剤120の燃焼ガスがフィルタ6を通過可能となっている。フィルタ6は、燃焼ガスがフィルタ6を通過する際に、燃焼ガスの熱を奪い取ることで当該燃焼ガスを冷却する。また、フィルタ6は、上述の燃焼ガスの冷却機能に加え、燃焼ガスに含まれる燃焼残渣を捕集することで当該燃焼ガスを濾過する機能も有する。なお、
図1中、符号63はフィルタ6の内周面を示し、符号64はフィルタ6の外周面を示す。なお、後述するように、フィルタ6は、その他の公知のものを使用することができる。
【0039】
[伝火薬]
伝火薬110としては、公知の黒色火薬の他、着火性が良く、ガス発生剤120よりも燃焼温度の高いガス発生剤を使用することができる。伝火薬110の燃焼温度は、1700~3000℃の範囲に設定することができる。このような伝火薬110としては、例えば、ニトログアニジン(34重量%)、硝酸ストロンチウム(56重量%)を含む、公知のものを用いることができる。また、伝火薬110には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0040】
[ガス発生剤]
ガス発生剤120には、比較的燃焼温度の低いガス発生剤を使用することができる。ガス発生剤120の燃焼温度は、1000~1700℃の範囲に設定することができる。このようなガス発生剤120としては、例えば、硝酸グアニジン(41重量%)、塩基性硝酸銅(49重量%)及びバインダーや添加物を含む、公知のものを用いることができる。また、ガス発生剤120には、例えば顆粒状、ペレット状、円柱状、ディスク状等、種々の形状を採用できる。
【0041】
[動作]
以下、実施形態1に係るガス発生器100の動作について説明する。まず、
図1を参照
しながら説明する。センサ(図示せず)が衝撃を感知すると、一対の通電ピン412,412に着火電流が供給され、点火器41が作動する。すると、点火器41のカップ体411に収容された点火薬が燃焼し、その燃焼生成物である火炎や高温のガス等がカップ体411の外部に放出される。これにより、伝火室51に収容された伝火薬110が燃焼し、燃焼ガスが発生する。伝火薬110の燃焼ガスは、連通孔52を閉塞していたシールテープを破って連通孔52から伝火室51の外部へ放出される。すると、伝火薬110の燃焼ガスがガス発生剤120と接触し、ガス発生剤120が着火される。ガス発生剤120が燃焼することで、燃焼室10に高温・高圧の燃焼ガスが生成される。この燃焼ガスがフィルタ6を通過することで、燃焼ガスが冷却され、燃焼残渣が捕集される。フィルタ6によって冷却及び濾過されたガス発生剤120の燃焼ガスは、間隙13を通り、ガス排出孔11を閉塞していたシールテープを破ってガス排出孔11からハウジング1の外部へと放出される。ガス発生剤120の燃焼ガスは、ハウジング1の外部へ放出された後に、エアバッグ(図示せず)内に流入する。エアバッグが膨張することで、乗員と堅い構造物の間にクッションが形成され、乗員が衝撃から保護される。
【0042】
[フィルタの支持]
図1に示すように、ガス発生器100では、下端面62は、フィルタ6の径方向において環状壁部313に接触した部位と環状壁部313から離間した部位とに区分けされるように、環状壁部313に支持されている。
図1に示す符号62aは、フィルタ6の下端面62の外周縁を示す。また、符号62bは、下端面62のうち外周縁62aを除く部位、即ち、外周縁62aの内側の部位を示し、これを非外周部と称する。フィルタ6の外周縁62aは、本開示に係る「第1部位」に相当する。また、フィルタ6の非外周部62bは、本開示に係る「第2部位」に相当する。また、符号313aは、環状壁部313のうち燃焼室10を画定する側の面を示し、これを環状壁面と称する。即ち、環状壁面313aは、ハウジング1においてフィルタ6の下端面62を支持する面である。環状壁面313aは、本開示に係る「支持部」に相当する。
【0043】
図1に示すように、環状壁面313aは、フィルタ6の軸方向においてフィルタ6から離れるに従って縮径するように傾斜している。そのため、下端面62は、その一部である外周縁62aが環状壁部313に接触した状態で、且つ、非外周部62bが環状壁部313から離間した状態で、環状壁部313に支持されている。つまり、下端面62は、その一部である外周縁62aでハウジング1に支持されている。また、上述のように、フィルタ6は、ハウジング1によって軸方向に荷重が加えられた状態であるため、フィルタ6の外周縁62aは、ハウジング1を押圧している。下端面62が外周縁62aで環状壁部313に支持され、且つ、外周縁62aが環状壁部313を押圧することで、外周縁62aに荷重が集中している。そのため、下端面62の外周縁62aは、非外周部62bを含む下端面62全面で環状壁部313に支持される場合よりも強く環状壁部313に接触する(つまり、フィルタ6は、環状壁面313aに対して外周縁62aにおいて荷重が集中した状態である)。ここで、
図2は、
図1におけるフィルタ6の下端面62とハウジング1の環状壁部313との接触箇所付近の拡大図である。
図2に示すように、ガス発生器100では、下端面62の外周縁62aに荷重が集中することで、外周縁62aが環状壁部313に食い込んでいる。ここで、外周縁62aが環状壁部313に食い込むとは、外周縁62aの角部(外周面64と下端面62とによって画定される角部)が僅かであっても環状壁面313aに入り込んだ状態をいう。換言すると、環状壁部313が外周縁62aの角部を受け入れるように僅かであっても変形した状態ともいえる。このとき、環状壁部313に食い込んだ外周縁62aは変形していなくともよい。また、
図3は、実施形態1に係るガス発生器100におけるフィルタ6を下端面側から見た端面図である。ガス発生器100においてハウジング1の環状壁部313に接触する外周縁62aは、
図3に示すように、フィルタ6の周方向に沿って環状に形成されている。そのため、ガス発生器100では、下端面62の外周縁62aとハウジング1の環状壁部313とが接触することで、
これらの接触状態がフィルタ6の周方向に沿って環状に形成されている。つまり、フィルタ6の下端面62とハウジング1との接触状態が、下端面62の全周に亘って形成されている。なお、ハウジング1(環状壁部313)の硬さとフィルタ6の硬さに差を持たせてもよい。例えば、環状壁部313よりもフィルタ6の方が硬い場合、
図1の状態では外周縁62aが環状壁部313に対して環状に食い込んだ状態となる。反対に、環状壁部313の方がフィルタ6よりも硬い場合には、フィルタ6の外周縁62aが僅かであっても変形して、環状壁面313aとの接触面積を増やした状態で当接する。
【0044】
[ガス発生器の組立方法]
次に、実施形態1に係るガス発生器の組立方法について説明する。但し、本開示のガス発生器の組立方法は、以下の方法に限定されるものではない。
図4は、実施形態1に係るガス発生器100の組立方法のフローチャートである。以下、
図4に基づいて説明する。
【0045】
先ず、ステップS101の準備工程では、上部シェル2と下部シェル3(ハウジング部品)と点火装置4と内筒部材5とフィルタ6とを準備する。
【0046】
次に、ステップS102の点火装置の取り付け工程では、下部シェル3に対して点火装置4を取り付ける。ステップS102では、点火装置4を下部シェル3の開口から挿入する。点火装置4は、取付孔32aに嵌入した状態で底板部32と溶接されることで、下部シェル3に固定される。
【0047】
次に、ステップS103の内筒部材の取り付け工程では、点火装置4が固定された下部シェル3に対して内筒部材5を取り付ける。ステップS103では、伝火薬110が充填された内筒部材5の開口から点火装置4(より詳細には、カラー42)を嵌入(圧入)することで、点火装置4を取り囲むようにして内筒部材5が取り付けられる。これにより、伝火室51が形成される。
【0048】
次に、ステップS104のフィルタの組み付け工程では、内筒部材5が取り付けられた下部シェル3に対してフィルタ6が同心状に組み付けられる。
図5及び
図6は、実施形態1に係るフィルタの組み付け工程を説明するための図である。ステップS104では、先ず、
図5に示すように、フィルタ6を下部シェル3の開口から挿入し、フィルタ6の下端面62を下部シェル3の環状壁部313に接触させる。ここで、上述のように、環状壁部313の環状壁面313aがフィルタ6の軸方向においてフィルタ6から離れるに従って縮径するように傾斜しているため、
図5に示すように、フィルタ6の下端面62は、外周縁62aが環状壁面313aに接触し、且つ、非外周部62bが環状壁面313aから離間した状態となる。また、外周縁62aと環状壁面313aとの接触状態は、フィルタ6の周方向に沿って環状に形成される。ステップS104では、次に、フィルタ6の内側にガス発生剤120を充填する。ステップS104では、次に、
図6に示すように、下部シェル3に上部シェル2を取り付けることでハウジング1を形成する。ハウジング1は、上部シェル2の開口と下部シェル3の開口とが向き合った状態で接合部23と接合部33とが接合されることで、形成される。このとき、ハウジング1において、上部シェル2、下部シェル3の接触部位は、内部に充填されるガス発生剤の防湿等のために好適な接合方法(例えば、溶接等)により接合される。ステップS104では、上部シェル2の天板部22がフィルタ6の上端面61に接触するようにして、上部シェル2が取り付けられる。フィルタ6は、上部シェル2の天板部22と下部シェル3の環状壁部313とによって軸方向の両側から挟まれ、フィルタ6の下端面62の外周縁62aがハウジング1の環状壁部313を押圧した状態となる。以上のようにして、フィルタ6の下端面62が環状壁部313に支持され、ガス発生器100が組み立てられる。
【0049】
[作用・効果]
ところで、ガス発生器においては、ガス発生剤が燃焼して燃焼室に燃焼ガスが発生すると、燃焼ガスの圧力により、フィルタに対して径方向外側への荷重が作用する。仮に、径方向外側へ作用する荷重によりフィルタの端部がハウジングから離れ、フィルタの端部とハウジングとの間に隙間が形成されると、燃焼ガスの一部がフィルタを通らずに当該隙間を通ってガス排出孔に至ることが懸念される。つまり、いわゆる「ショートパス」が発生する虞がある。
【0050】
これに対して、ガス発生器100では、フィルタ6の下端面62は、その一部である外周縁62aがハウジング1の環状壁部313に接触して環状壁部313を押圧した状態で、且つ、下端面62のうち外周縁62aを除く部位である非外周部62bが環状壁部313から離間した状態で、環状壁部313に支持されている。そして、フィルタ6の外周縁62aと環状壁部313との接触状態は、フィルタ6の周方向に沿って環状に形成されている。
【0051】
これによると、下端面62を外周縁62aで支持して外周縁62aに荷重を集中させることで、外周縁62aとハウジング1とを強く接触させることができる。それに加え、外周縁62aとハウジング1との接触状態をフィルタ6の周方向に沿って環状に形成することで、燃焼ガスがフィルタ6の内周面63側から外周面64側へと通り抜けられるような隙間が、下端面62とハウジング1との間に形成されることがない。これにより、ガス発生器100によれば、ショートパスを効果的に抑制できる。
【0052】
また、ガス発生器100では、フィルタ6の外周縁62aをハウジング1の環状壁部313に食い込ませることで、より隙間を形成し難くし、効果的にショートパスを抑制している。なお、下端面62の外周縁62aと環状壁部313との接触状態が下端面62の全周に亘って形成される限りは、外周縁62aがハウジング1の環状壁部313に食い込んでいなくともよい。
【0053】
更に、ガス発生器100では、ハウジング1において下端面62を支持する環状壁面313aが、フィルタ6の軸方向においてフィルタ6から離れるに従って縮径するように傾斜している。これにより、下端面62を外周縁62aでハウジング1に支持させることができる。
【0054】
ここで、ガス発生器では、燃焼ガスはガス排出孔に向かって流れるため、フィルタを通過する燃焼ガスの大部分は、フィルタのうちガス排出孔の近傍の部分を通過し、ガス排出孔から遠い部分ほど通過する燃焼ガスは少量となる傾向がある。そのため、ガス発生器100のように、周壁部における天板部側にガス排出孔が形成されたガス発生器では、フィルタを天板部から底板部に亘って設けた場合、フィルタのうちガス排出孔から遠い底板部近傍の部分は、燃焼ガスが余り通過せず、燃焼ガスの冷却・濾過に余り寄与しない部分となる。
【0055】
これに対して、ガス発生器100では、下端面62を環状壁部313に含まれる環状壁面313aで支持している。上述のように、環状壁部313は、周壁部12の軸方向において天板部22と底板部32の間に位置している。つまり、下端面62が環状壁部313に支持されるフィルタ6は、天板部22側に偏在した状態となっており、燃焼ガスが余り通過しない底板部32近傍まで延びていない。そのため、ガス発生器100では、フィルタの上端面を天板部で支持し、下端面を底板部で支持する場合と比較して、より効率的にフィルタ6を利用することができる。つまり、燃焼ガスの冷却・濾過機能を十分に確保しつつも、フィルタをコンパクトにすることができ、フィルタの低重量、低コスト化に資することができる。
【0056】
ここで、
図1に示すように、ガス発生器100では、外周縁62aが環状壁部313に接触しつつも非外周部62bと環状壁部313との間に符号G1で示す溝が形成されるように、フィルタ6の下端面62がハウジング1に支持されている。溝G1は、フィルタ6の径方向内側に環状に開口している。そのため、燃焼ガスがガス排出孔11に向かって流れるときに、溝G1に燃焼ガスの残渣が蓄積され易い。これにより、燃焼残渣の捕集性能を向上させることができる。
【0057】
また、
図1に示すように、ガス発生器100の内筒部材5には、少なくとも点火装置4の作動時に伝火室51の内部と外部とを連通する連通孔52が形成されており、連通孔52は、フィルタ6の軸方向において、底板部32とフィルタ6の下端面62との間に位置している。ガス発生剤120は、連通孔52から噴出する伝火薬110の燃焼ガスにより着火する。そのため、連通孔52が底板部32とフィルタ6の下端面62との間に位置することで、燃焼室10内のガス発生剤120は、底板部32とフィルタ6の下端面62との間に位置するものから先に燃焼する。これにより、ガス発生剤120の燃焼ガスが底板部32から天板部22に向かって流れる。その結果、その途中にある溝G1が残渣捕集ポケットとして機能し、燃焼ガスの残渣が捕集され易くなる。なお、内筒部材5は、
図1で示した連通孔52の他にも、別の位置に連通孔を有してもよい。
【0058】
更に、特開平10-119705号公報で開示されるような圧縮成形フィルタや特開平11-348712号公報で開示されるような巻き線フィルタをフィルタ6として使用して、外周縁62aにより環状壁部313を強く押圧して変形させ、非外周部62bと環状壁部313とによって溝G1が形成されるように、フィルタ6を配置してもよい。
【0059】
[実施形態1の変形例]
以下、実施形態1の変形例に係るガス発生器について説明する。変形例の説明では、
図1~
図6で説明したガス発生器100との相違点を中心に説明し、ガス発生器100と同様の点については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0060】
[実施形態1の変形例1]
図7は、実施形態1の変形例1に係るガス発生器100Aの軸方向断面図である。
図7では、ガス発生器100Aの作動前の状態が示されている。
図7に示すように、ガス発生器100Aでは、フィルタ6の内周面63が下側周壁部31の第2筒状壁部312の内周面312aよりも第2筒状壁部312の径方向内側に位置するように、フィルタ6がハウジング1に支持されている。これによると、フィルタ6の下端面62が下側周壁部31の第2筒状壁部312よりも径方向内側に突出することとなり、燃焼ガスの残渣がフィルタ6の下端面62及び溝G1に補足され易くなる。つまり、燃焼ガスの残渣の捕集において、フィルタ6の下端面62をより有効に利用することができる。
【0061】
[実施形態1の変形例2]
図8は、実施形態1の変形例2に係るガス発生器100Bの軸方向断面図である。
図8では、ガス発生器100Bの作動前の状態が示されている。ガス発生器100Bでは、フィルタ6の上端面61と下端面62の両方が本開示に係る「支持端面」に相当する。
【0062】
図8に示すように、ガス発生器100Bでは、ガス発生器100と同様に、外周縁62aがハウジング1の環状壁部313に接触して環状壁部313を押圧した状態で、且つ、非外周部62bが環状壁部313から離間した状態で、フィルタ6の下端面62が環状壁部313に支持されている。また、フィルタ6の外周縁62aと環状壁部313との接触状態が、フィルタ6の周方向に沿って環状に形成されている。更に、ガス発生器100Bでは、フィルタ6の上端面61も、その一部である外周縁61aでハウジング1に支持されている。
【0063】
図8に示すように、ガス発生器100Bの天板部22Bは、天壁部221と傾斜壁部222とを含む。天壁部221は、燃焼室10の上端を画定する部位であり、フィルタ6の軸方向と直交するように、フィルタ6の径方向に延在している。傾斜壁部222は、フィルタ6の上端面61を支持する環状の部位であり、上側周壁部21に繋がると共にフィルタ6の軸方向においてフィルタ6から離れるに従って縮径するように傾斜している。
【0064】
図8に示す符号61aは、フィルタ6の上端面61の外周縁を示す。また、符号61bは、上端面61のうち外周縁61aを除く部位である非外周部を示す。また、符号222aは、傾斜壁部222のうち燃焼室10を画定する側の面を示し、これを傾斜壁面と称する。傾斜壁部222の傾斜壁面222aは、本開示に係る「支持部」に相当する。傾斜壁面222aは、フィルタ6の軸方向においてフィルタ6から離れるに従って縮径するように傾斜している。そのため、上端面61は、その一部である外周縁61aが傾斜壁部222に接触して傾斜壁部222を押圧した状態で、且つ、非外周部61bが傾斜壁部222から離間した状態で、ハウジング1に支持されている。そして、フィルタ6の外周縁61aと傾斜壁部222との接触状態は、フィルタ6の周方向に沿って環状に形成されている。
【0065】
ガス発生器100Bによると、ガス発生器100と同様に、下端面62とハウジング1との間に隙間が形成されることがない。更に、ガス発生器100Bによると、上端面61を外周縁61aで支持して外周縁61aに荷重を集中させて外周縁61aとハウジング1(傾斜壁部222)とを強く接触させ、且つ、外周縁61aとハウジング1との接触状態をフィルタ6の周方向に沿って環状に形成することで、上端面61とハウジング1との間に隙間が形成されることもない。
【0066】
つまり、ガス発生器100Bによると、フィルタ6の両端面においてハウジング1との間に隙間が形成されることを防止できる。これにより、ガス発生器100Bによれば、ショートパスをより効果的に抑制できる。
【0067】
[実施形態1の変形例3]
図9は、実施形態1の変形例3に係るガス発生器100Cの軸方向断面図である。
図9では、ガス発生器100Cの作動前の状態が示されている。ガス発生器100Cは、フィルタ6の下端面62を周壁部の一部ではなく底板部の一部により支持している点で、ガス発生器100と主に相違する。
【0068】
図9に示すように、ガス発生器100C周壁部12Cは、環状壁部313を有さず、天板部22から底板部32Cに亘って同径となっている。また、ガス発生器100Cの底板部32Cは、底壁部321と傾斜壁部322とを含む。底壁部321は、燃焼室10の下端を画定する部位であり、フィルタ6の軸方向と直交するように、フィルタ6の径方向に延在している。傾斜壁部322は、フィルタ6の下端面62を支持する環状の部位であり、下側周壁部31に繋がると共にフィルタ6の軸方向においてフィルタ6から離れるに従って縮径するように傾斜している。
【0069】
図9に示す符号322aは、傾斜壁部322のうち燃焼室10を画定する側の面を示し、これを傾斜壁面と称する。傾斜壁部322の傾斜壁面322aは、本開示に係る「支持部」に相当する。傾斜壁面322aは、フィルタ6の軸方向においてフィルタ6から離れるに従って縮径するように傾斜している。
【0070】
ガス発生器100Cによると、ガス発生器100と同様に、下端面62とハウジング1との間に隙間が形成されることがなく、ショートパスを効果的に抑制することができる。
【0071】
<実施形態2>
図10は、実施形態2に係るガス発生器200の軸方向断面図である。
図10では、ガス発生器200の作動前の状態が示されている。以下、実施形態2に係るガス発生器200について、実施形態1に係るガス発生器100との相違点を中心に説明し、ガス発生器100と同様の点については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0072】
図10に示すように、ガス発生器200のフィルタ6Dの下端面62は、下端面62における他の部位よりもフィルタ6Dの軸方向に沿って突出した環状の部位である突出部62cを有する。下端面62における突出部62cを除く他の部位を非突出部と称し、符号62dで示す。本例の突出部62cは、フィルタ6Dを構成する多層のうちの最外層が他の層よりもフィルタ6Dの軸方向に突出することで形成されている。但し、
図10の例における突出部は、フィルタの最外層に形成されていなくともよく、例えば、中間層に形成されてもよい。フィルタ6Dの突出部62cは、本開示に係る「第1部位」に相当する。また、フィルタ6Dの非突出部62dは、本開示に係る「第2部位」に相当する。
【0073】
また、
図10に示すように、フィルタ6Dの下端面62を支持する周壁部12の環状壁部313Dの環状壁面313aは、傾斜せずに平坦面となっており、フィルタ6Dの軸方向と直交するように、フィルタ6Dの径方向に延在している。
【0074】
フィルタ6Dでは、突出部62cが下端面62において軸方向に突出しているため、
図10に示すように、突出部62cがハウジング1の環状壁部313Dに接触して環状壁部313Dを押圧した状態で、且つ、非突出部62dが環状壁部313Dから離間した状態で、フィルタ6Dの下端面62が環状壁部313Dに支持されている。そのため、荷重が突出部62cに集中し、突出部62cが環状壁部313Dに強く接触する。ガス発生器200では、下端面62の突出部62cに荷重が集中することで、突出部62cが環状壁部313Dに食い込んでいる。ここで、突出部62cが環状壁部313Dに食い込むとは、突出部62cが僅かであっても環状壁面313aに入り込んだ状態をいう。換言すると、環状壁部313Dが突出部62cを受け入れるように僅かであっても変形した状態ともいえる。ここで、
図11は、実施形態2に係るガス発生器200におけるフィルタ6Dを下端面側から見た端面図である。ガス発生器200においてハウジング1の環状壁部313Dに接触する突出部62cは、
図11に示すように、フィルタ6Dの周方向に沿って環状に形成されている。そのため、ガス発生器200では、下端面62の突出部62cとハウジング1の環状壁部313Dとが接触することで、これらの接触状態がフィルタ6Dの周方向に沿って環状に形成されている。
【0075】
このようなガス発生器200によると、ガス発生器100と同様に、下端面62とハウジング1との間に隙間が形成されることがなく、ショートパスを効果的に抑制できる。
【0076】
また、ガス発生器200でも、フィルタ6Dの突出部62cをハウジング1の環状壁部313Dに食い込ませることで、より隙間を形成し難くし、効果的にショートパスを抑制している。なお、下端面62の突出部62cと環状壁部313Dとの接触状態が下端面62の全周に亘って形成される限りは、突出部62cがハウジング1の環状壁部313Dに食い込んでいなくともよい。更には、フィルタ6Dと組み合わせる環状壁部は、
図1等に示した傾斜した環状壁部313であってもよい。
【0077】
図12(A)及び
図12(B)は、実施形態2に係るフィルタ6Dの製造方法の一例を説明するための図である。フィルタ6Dは、例えば、
図12(A)に示す多孔金属板60を
図12(B)に示すように巻くことで製造することができる。
図12(A)に示すように多孔金属板60は、長尺状に形成されており、その長手方向において、一端側に位置す
る本体部601と他端側に位置して本体部601よりも幅の大きい幅広部602とに区画される。幅広部602は、フィルタ6Dにおいて最外層となる部位である。この多孔金属板60を
図12(B)に示すように本体部601から巻くことで、突出部62cを有するフィルタ6Dが製造される。
【0078】
ガス発生器200の組立方法は、
図4で説明したガス発生器100の組立方法と概ね同様である。ガス発生器200の組立方法では、ステップS104のフィルタの組み付け工程において、下端面62が突出部62cで環状壁部313Dに支持され、突出部62cと環状壁部313Dとの接触状態がフィルタ6Dの周方向に沿って環状に形成されるように、フィルタ6Dが下部シェル3に組み付けられる。
【0079】
<実施形態3>
図13は、実施形態3に係るガス発生器300の軸方向断面図である。
図13では、ガス発生器300の作動前の状態が示されている。以下、実施形態3に係るガス発生器300について、実施形態1に係るガス発生器100との相違点を中心に説明し、ガス発生器100と同様の点については同一の符号を付すことにより詳細な説明は割愛する。
【0080】
図13に示すように、ガス発生器300は、第1点火装置4Xと、第2点火装置4Yと、内筒部材5Eと、フィルタ6と、伝火薬110と、第1ガス発生剤120Xと、第2ガス発生剤120Yと、これらを収容するハウジング1Eと、を備えている。ガス発生器300は、点火装置を2つ備えた、いわゆるデュアルタイプのガス発生器として構成されている。ガス発生器300では、第1点火装置4Xが本開示に係る「点火部」に相当する。また、ガス発生器300は、第1点火装置4Xの作動により第1ガス発生剤120Xを燃焼させ、第2点火装置4Yの作動により第2ガス発生剤120Yを燃焼させることで、比較的多量の燃焼ガスをガス排出孔11から放出するように構成されている。ガス発生器300では、第2点火装置4Yは、第1点火装置4Xとは独立して作動するものであり、作動する場合には第1点火装置4Xの作動時以降の所定のタイミングで作動する。
【0081】
図13に示すように、実施形態3に係るハウジング1Eは、ハウジング1Eの内部空間を第1燃焼室10Xと第2燃焼室10Yとに隔てると共にフィルタ6の下端面62を当接して支持する、隔壁部14を有する。隔壁部14は、フィルタ6の軸方向において、天板部22Eと底板部32との間に設けられている。つまり、隔壁部14は、周壁部12の一端側に設けられた天板部22Eに対して周壁部12の他端側に設けられている。天板部22Eと隔壁部14と周壁部12とによって、第1燃焼室10Xが画定されている。また、隔壁部14と底板部32と周壁部12とによって、第2燃焼室10Yが画定されている。ガス発生器300では、天板部22Eが本開示に係る「第1壁部」に相当し、隔壁部14が本開示に係る「第2壁部」に相当する。第1燃焼室10Xには、第1点火装置4Xの作動により燃焼する第1ガス発生剤120Xが収容され、第2燃焼室10Yには、第2点火装置4Yの作動により燃焼する第2ガス発生剤120Yが収容される。第1燃焼室10Xは、本開示に係る「燃焼室」に相当し、第1ガス発生剤120Xは、本開示に係る「ガス発生剤」に相当する。
【0082】
隔壁部14は、分割壁部141と嵌合壁部142と終端部143を含む。分割壁部141は、第1燃焼室10Xの下端を画定する部位であり、フィルタ6の軸方向と直交するように、フィルタ6の径方向に延在している。分割壁部141には、内筒部材5Eが貫通する孔である貫通孔14aが形成されている。嵌合壁部142は、下部シェル3の下側周壁部31に嵌合する筒状の部位であり、分割壁部141の周縁からフィルタ6の軸方向に沿って第1燃焼室10Xの内部側(即ち、上側)に延びている。終端部143は、下部シェル3の下側周壁部31の上端に載置される環状の部位であり、嵌合壁部142の上端から径方向外側に延びている。
【0083】
実施形態3に係る内筒部材5Eは、底板部32に固定された第1点火装置4Xを取り囲むようにして底板部32から天板部22Eに向かって延び、隔壁部14の貫通孔14aを貫通し、その端部が開口している。そのため、内筒部材5Eの内側の空間が第1燃焼室10Xに含まれ、第1点火装置4Xが第1燃焼室10Xに配置された状態となっている。また、内筒部材5Eの内側には、その内部空間を上下に仕切る、仕切部材P1が配置されている。これにより、内筒部材5の内部空間のうち、仕切部材P1よりも下側(第1点火装置4X側)の空間は、伝火室51として形成されている。伝火室51には、伝火薬110が、第1ガス発生剤120Xと混在することなく収容されている。仕切部材P1は、伝火薬110の燃焼ガスによる第1ガス発生剤120Xの着火を妨げないように、伝火薬110の燃焼ガスにより速やかに燃焼、溶融あるいは消滅する材料で形成されている。また、内筒部材5Eには、内筒部材5Eの内部空間(ひいては、第1燃焼室10X)と第2燃焼室10Yとを連通する連通孔52が複数形成されている。連通孔52は、第2点火装置4Yが作動する前の状態では、シールテープ(図示なし)により閉塞されている。
【0084】
図13に示すように、ガス発生器300では、フィルタ6は、上端面61が天板部22Eに当接して支持され、下端面62が隔壁部14における分割壁部141に当接して支持されるように、第1燃焼室10Xに配置されている。また、ガス発生器300の天板部22Eは、天壁部221と傾斜壁部222とを含む。天壁部221は、第1燃焼室10Xの上端を画定する部位であり、フィルタ6の軸方向と直交するように、フィルタ6の径方向に延在している。傾斜壁部222は、フィルタ6の上端面61を支持する環状の部位である。傾斜壁部222のうち第1燃焼室10Xを画定する側の面である傾斜壁面222aは、上側周壁部21に繋がると共にフィルタ6の軸方向においてフィルタ6から離れるに従って縮径するように傾斜している。
【0085】
そのため、フィルタ6の上端面61は、その一部である外周縁61aが傾斜壁部222に接触して傾斜壁部222を押圧した状態で、且つ、非外周部61bが傾斜壁部222から離間した状態で、ハウジング1Eに支持されている。そして、フィルタ6の外周縁61aと傾斜壁部222との接触状態は、フィルタ6の周方向に沿って環状に形成されている。
【0086】
このようなガス発生器300が作動する場合、まず、第1点火装置4Xが作動し、第1燃焼室10Xの伝火室51に収容された伝火薬110が燃焼し、その燃焼ガスが発生する。伝火薬110の燃焼ガスによって仕切部材P1が燃焼し、除去されることで、該燃焼ガスが第1ガス発生剤120Xと接触し、第1ガス発生剤120Xが着火される。第1ガス発生剤120Xが燃焼することで、第1燃焼室10Xに燃焼ガスが生成される。第1ガス発生剤120Xの燃焼ガスは、フィルタ6を通過し、ガス排出孔11からハウジング1Eの外部へと放出される。次に、第2点火装置4Yが作動し、第2燃焼室10Yに収容された第2ガス発生剤120Yが燃焼し、その燃焼ガスが発生する。第2ガス発生剤120Yの燃焼ガスは、連通孔52を閉塞していたシールテープを破って連通孔52から第1燃焼室10Xへ流れ込み、フィルタ6を通過し、ガス排出孔11からハウジング1Eの外部へと放出される。
【0087】
実施形態3に係るガス発生器300によると、上端面61を外周縁61aで支持して外周縁61aに荷重を集中させて外周縁61aとハウジング1E(傾斜壁部222)とを強く接触させ、且つ、外周縁61aとハウジング1Eとの接触状態をフィルタ6の周方向に沿って環状に形成することで、上端面61とハウジング1Eとの間に隙間が形成されることがない。これにより、ガス発生器300によれば、ショートパスを効果的に抑制できる。
【0088】
<その他の実施例>
図14は、フィルタの支持の変形例を示す図である。
図14では、
図9に示したガス発生器100Cにフィルタの支持の変形例を適用した場合を示している。
図14に示すように、傾斜壁部322に代えて、R(曲率)を有するR壁部322Cによってフィルタ6の下端面62を支持してもよい。R壁部322Cは、下側周壁部31と底壁部321とを接続すると共に周長方向に直交する断面において円弧形状を有する環状の部位である。R壁部322Cのうち燃焼室10を画定する側の面であるR壁面322Caは、フィルタ6の軸方向においてフィルタ6から離れるに従って縮径するように湾曲している。そのため、下端面62は、その一部である外周縁62aがR壁部322Cに接触してR壁部322Cを押圧した状態で、且つ、非外周部62bがR壁部322Cから離間した状態で、ハウジング1に支持されている。このとき、フィルタ6の下端面62の外周縁62aとR壁部322Cとの接触状態は、フィルタ6の周方向に沿って環状に形成されている。そして、非外周部62bとR壁部322Cとの間には、溝G1が形成されている。
【0089】
このようなR部分でフィルタを支持する構成は、
図1,7~10,13に示した何れの実施例に対しても適用することができる。例えば、
図10に示すガス発生器において、第1筒状壁部311と環状壁部313Dとの間にR壁部を形成し、そのR部分でフィルタ6Dの下端面62の突出部62cを強く当てて支持し、非突出部62dと環状壁部313Dの間に、隙間G1を形成してもよい。
【0090】
<その他>
以上、本開示の好適な実施形態について説明したが、本明細書に開示された各々の態様は、本明細書に開示された他のいかなる特徴とも組み合わせることができる。
【符号の説明】
【0091】
100,200,300 ガス発生器
1 ハウジング
11 ガス排出孔
12 周壁部
14 隔壁部(第2壁部の一例)
2 上部シェル
22 天板部(第1壁部の一例)
222 傾斜壁部
3 下部シェル
312 環状壁部(接続部の一例)
32 底板部(第2壁部の一例)
322 傾斜壁部
4 点火装置(点火部の一例)
5 内筒部材
6 フィルタ
61 上端面(フィルタの一端面)
62 下端面(フィルタの他端面)
62a 外周縁(第1部位の一例)
62b 非外周部(第2部位の一例)
62c 突出部(第1部位の一例)
62d 非突出部(第2部位の一例)
10 燃焼室
120 ガス発生剤