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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】伝熱促進フィン
(51)【国際特許分類】
   E04F 15/024 20060101AFI20240510BHJP
   E04F 15/18 20060101ALI20240510BHJP
   F24F 13/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
E04F15/024 606A
E04F15/18 Z
F24F13/02 C
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020048596
(22)【出願日】2020-03-19
(65)【公開番号】P2021147865
(43)【公開日】2021-09-27
【審査請求日】2023-01-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000001317
【氏名又は名称】株式会社熊谷組
(73)【特許権者】
【識別番号】000175803
【氏名又は名称】三建設備工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100141243
【弁理士】
【氏名又は名称】宮園 靖夫
(72)【発明者】
【氏名】新井 勘
(72)【発明者】
【氏名】小西 孝英
(72)【発明者】
【氏名】淵▲崎▼ 礼奈
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 英樹
(72)【発明者】
【氏名】塩谷 正樹
【審査官】土屋 保光
(56)【参考文献】
【文献】特開平06-185190(JP,A)
【文献】特開2016-089416(JP,A)
【文献】特開2001-081952(JP,A)
【文献】特開2018-159514(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E04F 15/024
E04F 15/18
F24F 13/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の床材により区画される床下空間を床下空調として利用可能な床構造に用いられる伝熱促進フィンであって、
隣接する前記床材間の隙間に挿入され、床材の下面よりも下方に突出する挿入片と、
前記隙間を跨ぎ、前記隙間を形成する床材上面に接触可能に形成された架設片と、
を備え、
前記挿入片及び前記架設片が、前記床材表面の熱伝導率以上の高い素材で形成され、
前記挿入片は、前記床材間の隙間への挿入時には畳まれ、床下空間内において広がる突片を備えることを特徴とする床構造に用いられる伝熱促進フィン。
【請求項2】
前記挿入片は、一方の面が断熱性を有することを特徴とする請求項1に記載の伝熱促進フィン。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、伝熱促進フィンに関し、特に、床下空調システムにおける床からの熱の放射効率を向上可能な伝熱促進フィンに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、オフィスなどにおける空調の一つとして床下空調システムが知られている。床下空調システムでは、建物の基礎部に複数の支持脚を配置し、この支持脚によって基礎部の上方に床材を敷き詰めた床構造を形成し、床材と基礎部の間に形成された床下空間を空調装置からの給気の流路として利用し、床材の一部に設けた吹出口から居室に給気するように構成されている。このような床下空調では、吹出口からの給気に加え、床下空間の熱が床を介して居室の環境に影響を及ぼすことが知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2018-159514号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、居室を区画する床材は、敷設された場所によって温度むらが生じるため、床下空間の熱を有効に利用できていないという問題がある。一般に、敷設された床材同士の間には、施工性などを考慮した隙間が生じている場合が多く、個々の床材が独立した状態にある。このため、吹出口から吹き出された給気にさらされた床材とそうでない床材とで温度が異なり、居室を区画する床に温度ムラが生じてしまい、床から居室に対する熱の影響(熱放射)を有効に利用できていないという問題がある。
そこで、本発明では、床下空調において床からの熱放射を有効に利用可能な伝熱促進フィンを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記課題を解決するための伝熱促進フィンの構成として、複数の床材により区画される床下空間を床下空調として利用可能な床構造に用いられる伝熱促進フィンであって、隣接する床材間の隙間に挿入され、床材の下面よりも下方に突出する挿入片と、隙間を跨ぎ、隙間を形成する床材上面に接触可能に形成された架設片とを備え、挿入片及び架設片が、床材表面の熱伝導率以上の高い素材で形成され、挿入片は、床材間の隙間への挿入時には畳まれ、床下空間内において広がる突片を備える構成とした。
本構成によれば、床下空間への給気の熱を、床下空間側から居室側への伝熱を促進することができ、居室への熱放射の効率を向上させることができる。また、挿入片床材の下面よりも下方に突出することにより、床下空間への給気の熱を、床下空間側から居室側への伝熱をより促進することができる。
また、伝熱促進フィンの他の構成として、挿入片は、一方の面が断熱性を有することにより、床材において放射空調を積極的に利用するエリアと、利用しないエリアとを選択的にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】床構造の一実施形態を示す概略図である。
図2】伝熱促進フィンを示す図である。
図3】伝熱促進フィンの他の形態を示す図である。
図4】伝熱促進フィンの配置例を示す図である。
図5】伝熱促進フィンの配置例を示す図である。
図6】伝熱促進フィンの他の形態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0007】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
図1は、床下空調に用いられる床構造の一実施形態を示す図である。図1(a)に示すように、床下空調に利用される床構造は、例えば、大梁14上に設けられたコンクリートスラブ15に、複数の支持部材16を立設し、この支持部材16によって居室における床の構造部材である床下地基板(以下、単に床材という)17が、コンクリートスラブ15から所定距離上方に位置するように、を支持することで、コンクリートスラブ15と床材17との間に床下空間を形成するように構成される。床下空間には、空調装置2から延長するダクト3が開口し、所定の温度に調整された空気が給気される。
【0008】
図1(b)に示すように、床材17は、四隅を4つの支持部材16によって支持され、居室内の全体にわたり敷設される。床材17は、敷設された状態において隣接する床材17との間に隙間Gが形成されている。この隙間Gは、例えば、床材17の敷設作業の作業性を考慮し、床材17同士が密着しないようにして設けられたものである。そして、隙間Gには、本実施形態に係る伝熱促進フィン20が挿入され、床材17に伝熱促進フィン20が挿入された上から床仕上げ材18を敷き詰めることで居室における床面が形成される。
なお、以下の説明では、各床材17の居室側表面17aが平面状に形成されているものとし、1つの床を形成するように複数の床材17が敷き詰められた状態において、各床材17の居室側表面17aが一つの平面を形成しているものとして説明する。
【0009】
本実施形態に係る床材17には、空調装置から床下空間への給気の熱を、床下空間側から居室側へと伝導可能な金属材のものが用いられる。ここでいう金属材のものとは、床下空間における熱を居室側に効率良く伝導可能なものであればよく、その形態として従来の床材として利用されるパーティクルボード等のシートパネル、捨貼り材(合板等)等の木材を鋼材、アルミニウムなどの軽金属等の金属板で包んだものや、床材17そのものを鋼材、アルミニウムなどの軽金属等の金属材で形成したものであっても良い。即ち、床材17の表面が熱伝導のよい金属材であれば良い。
本実施形態では、床材17は、図1(b)に示すように、正方形のものとして示すが、これに限定されず他の矩形状、或いは、矩形形状以外の多角形状等、床に敷き詰め可能な形状であれば良い。
これにより、空調装置2から床下に吹き出された給気の有する熱を有効に利用することができる。
【0010】
図2は、伝熱促進フィン20の外観斜視図及び設置形態を示す図である。図2(b)に示すように、伝熱促進フィン20は、隣接する床材17;17により形成された隙間Gの延長方向に沿って挿入可能に形成される。ここでいう隙間Gの延長方向とは、床材17の辺の延長する方向をいう。この隙間Gの延長方向を伝熱促進フィン20における長手方向という。伝熱促進フィン20は、長手方向と直交する断面形状がT字状に形成され、隙間Gに挿入される挿入片22と、隣接する床材17;17を跨ぎ、居室側の表面(以下、居室側表面という)17a;17aに架設される架設片24とを備える。
【0011】
挿入片22は、床材17に対して垂直方向に挿入可能に一方長尺の平板矩形状に形成される。
架設片24は、挿入片22を隙間Gに挿入した状態で、隙間Gを形成する一組の床材17;17の居室側表面17a;17aに接触可能に挿入片22と一体的に形成される。なお、挿入片22と架設片24は、それぞれ別体で形成した後に一体化したものであっても良い。また、挿入片22及び架設片24の長尺方向は、同じとし、その長さをL20として説明する。
【0012】
架設片24は、床材17の居室側表面17aに接触する接触面24aと、床仕上げ材18が載置される載置面24bとを有する板状に形成される。なお、図2では、架設片24の接触面24a及び載置面24bをそれぞれ平面状に示してあるがこれに限定されない。
【0013】
接触面24aは、床材17の居室側表面17aに対応した形状、即ち、居室側表面17aと面接触可能にすると良い。本実施形態では、床材17の居室側表面17aが平面状であるので、接触面24aの形状も平面状として示した。なお、床材17の居室側表面17aを平面状として説明したが、伝熱促進フィン20を隙間Gに挿入し、接触面24aを床材17の居室側表面17aに接触させたときに、載置面24bが居室側表面17aと面一の高さになるように、床材17の居室側表面17aの周囲を他の部分よりも窪むように床材17を形成しても良い。
また、本実施形態では、載置面24bは、接触面24aと平行の平面状としたがこれに限定されず、床仕上げ材18が載置されることを考慮して、例えば、図3に示すように、居室側表面17aと滑らかに連続するように球面状などの曲面形状としても良い。
また、図示しないが、例えば、伝熱促進フィン20を図2に示すように形成したときに、床材17と伝熱促進フィン20とが面一となるように、床材17において架設片24が載置される範囲を他の部分よりも窪ませるようにしても良い。
【0014】
伝熱促進フィン20は、挿入片22の厚さt22が、床材17;17の間に生じうる隙間Gよりも狭く、架設片24の幅W24が隙間Gよりも広く形成されていれば良い。
また、架設片24の厚みt24や接触面24aの面積は、適宜設定すれば良く、例えば、伝熱促進フィン20を形成する素材の熱伝導率に応じて設定したりすれば良い。
【0015】
また、伝熱促進フィン20は、例えば、図4に示すように一つの床材17の4方を囲むように床材17の周囲の隙間Gに配置したときに、架設片24;24同士が互いに干渉しないように架設片24の形状を設定すると良い。図4では、図2に示す形状の伝熱促進フィン20のみにより、一つの床材17の4方に配置したものを示しており、この場合では、架設片24;24同士が互いに干渉しないように伝熱促進フィン20の長さL20が床材17の辺の長さL17よりも短く設定している。
【0016】
なお、伝熱促進フィン20における架設片24の形状は、図2(b)に示す平面視における矩形状に限定されない。例えば、架設片24により隙間Gを閉塞可能なように、架設片24の形状に複数種類用意しても良い。
また、伝熱促進フィン20は、1つの隙間Gに1つを挿入するのではなく、床材17の辺の長さL17よりも短い長さのものを複数挿入するようにしても良い。
【0017】
伝熱促進フィン20は、挿入片22の長手方向の長さL22及び架設片24の長手方向の長さL24を同じものとして説明したが、これに限定されず、挿入片22の長さL22を架設片24の長さL24よりも長くしたり、短くしたりしても良い。
【0018】
挿入片22の隙間Gへの挿入長さD22は、架設片24が位置ずれしない程度の長さ、例えば、床材17の厚みt17よりも短くても良く、好ましくは、床材17の厚みt17よりも長くすると良い。
【0019】
伝熱促進フィン20の素材には、少なくとも床材17の表面を形成する素材と同等以上の伝熱性を有するものが好ましい。即ち、床材17の表面を形成する素材の熱伝導率よりも、熱伝導率が高い素材が好ましい。
【0020】
以下、伝熱促進フィン20の作用について説明する。
空調装置2から床下空間に供給された給気の熱により、床下空間が温め、或いは冷却される。給気により温め、或いは冷却された床下空間の空気は、床下空間を区画する床材17の床下側表面17bに熱を伝達する。床材17の床下側表面17bに伝達された熱は、床材17内において床下側表面17b側から居室側表面17aへと伝導される。居室側表面17a側に伝導された熱は、伝熱促進フィン20が挿入された隙間Gを形成する一方の床材17から他方の床材17へと伝熱促進フィン20を介して伝達される。
【0021】
このように、伝熱促進フィン20を介して隣接する床材17に熱を伝導することにより、例えば、床下空間における温度にむらがあった場合でも床材17同士の温度を均一化することができ、居室全体に対して放射熱を作用させることができる。
【0022】
図5は、伝熱促進フィン20の他の配置形態を示す図である。同図では、図1に示したように、空調装置2から延長し、床下空間に開口するダクト3に、例えば、さらにソックダクト5を接続し、ソックダクト5から床下空間に給気するようにした場合を示している。ソックダクト5は、オフィスなどの居室において机7が配置されたその下に位置するように設けられている。このような場合、机7とともにソックダクト5を囲むように、伝熱促進フィン20を配置することにより、居室において必要とされる範囲にのみ、熱放射を作用させることができる。
【0023】
また、各伝熱促進フィン20の挿入片22の挿入長さD22を、床材17を十分に突き抜ける長さに設定することにより、机7が配置された領域の放射熱をより効果的に作用させることができる。
即ち、伝熱促進フィン20の挿入片22が、図2(c)中のxで示すように、床材17の下面である床下側表面17bよりも下方に突出し、床下空間に進入する長さを長くすることにより、空調装置2から床下空間への給気との接触面積が増加し、給気の熱を伝熱促進フィン20に多くの熱量を得られ、吹出口以外の放射環境を付加、促進させることができる。
ここでは、ソックダクト5を囲むように伝熱促進フィン20を設けるものとして説明したが、ソックダクト5を設けずに、ダクト3から吹き出された給気を囲むように設けても良い。
【0024】
なお、上記実施形態では、伝熱促進フィン20の挿入片22を平板状に形成するものとしたが、これに限定されず、波板状等適宜変更すれば良い。また、例えば、図6(a)に示すように、伝熱促進フィン20の挿入片22に突片26を設けても良い。突片26の数量は、図6(a)に示すものに限定されず適宜変更しても良い。各突片26は、図6(a)の拡大図に示すように、ヒンジ機構などにより挿入片22と結合し、挿入片22に対して回転可能に設けることにより、隙間Gへの挿入時には、挿入片22に沿って延長し、挿入後には、突片26の自重によって回転し、突片26が挿入片22に接触することにより、挿入片22の表面積を広げることができる。このように、挿入片22に突片26を形成することにより、床下空間における給気との接触面積をより広げることができるので、床下空間の給気から熱を多く吸収し、吸収した熱を伝熱促進フィン20が接触する床材17の居室側表面17aに伝達することができるので、居室への放射熱の作用をより促進することができる。
また、伝熱促進フィン20は、図6(b)に示すように、挿入片22の一方の面に、熱伝達(導)を妨げるような断熱シート23を張り付けても良い。なお、挿入片22の一方の面に、熱伝達(導)を妨げるものであれば、断熱シート23に限定されない。また、断熱シート23のように別体とせず、挿入片22を形成時に、一方の面側を熱伝達(導)の良い素材により形成し、他方の面側を熱伝達(導)を妨げる素材により一体的に形成しても良い。なお、言うまでもないが、一方の面側を熱伝達(導)の良い素材は、架設片24を形成する。即ち、挿入片22の一方の面が断熱性を有することにより、敷設された床材17において放射空調を積極的に利用するエリアと、利用しないエリアとを選択的にすることができる。
【0025】
また、上述の説明では、床材17の敷設に伴って床材17の周囲に隙間Gが形成されるものとして説明したが、伝熱促進フィン20が床下空間に挿入されることによって得られる効果を考慮すれば、床材17同士の間に隙間Gがない場合であっても意図的に床材17;17間に隙間Gを設けて伝熱促進フィン20を挿入するようにしても良い。
【符号の説明】
【0026】
14 大梁、15 コンクリートスラブ、16 支持部材、17 床下地基板;床材、
17a 居室側表面、17b 床下側表面、18 床仕上げ材、20 伝熱促進フィン、
22 挿入片、24 架設片、24a 接触面、24b 載置面、G 隙間。
図1
図2
図3
図4
図5
図6