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7486335インプリント装置、インプリント方法、および物品製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】インプリント装置、インプリント方法、および物品製造方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/027 20060101AFI20240510BHJP
   B29C 59/02 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H01L21/30 502D
B29C59/02 Z
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020061107
(22)【出願日】2020-03-30
(65)【公開番号】P2021163784
(43)【公開日】2021-10-11
【審査請求日】2023-03-20
(73)【特許権者】
【識別番号】000001007
【氏名又は名称】キヤノン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110003281
【氏名又は名称】弁理士法人大塚国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】千秋 昂平
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-054212(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2007/0146671(US,A1)
【文献】特開2017-156640(JP,A)
【文献】特開平10-050599(JP,A)
【文献】国際公開第2011/039864(WO,A1)
【文献】特開2010-016376(JP,A)
【文献】国際公開第2005/048326(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
B29C 59/02
F21S 2/00
F21V 8/00
G02B 5/00-5/136
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板のショット領域の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させて前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント装置であって、
シャッタ板と、
前記ショット領域の上の前記インプリント材への光照射を制御するために前記シャッタ板の状態を調整する調整部と、を有し、
前記シャッタ板は、前記ショット領域の上の前記インプリント材の全体のうちの一部に光を照射するための第1通過部と、前記ショット領域の上の前記インプリント材の前記全体に光を照射するための第2通過部とを有し、
前記調整部は、
前記シャッタ板の前記状態を、前記第1通過部を通過した光が前記一部に照射される第1状態と、前記第2通過部を通過した光が前記全体に照射される第2状態との間で切り替えるために、前記シャッタ板を駆動軸周りに回動させる第1アクチュエータと、
前記シャッタ板を前記駆動軸とともに傾ける第2アクチュエータと、を含み、
前記第1通過部を通過する光の量が調整されるように、前記シャッタ板の傾きを調整する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項2】
前記基板と前記型との相対位置を変更する相対駆動機構を更に有し、
前記インプリント装置は、前記相対駆動機構による前記ショット領域と前記型との位置合わせが完了する前に前記ショット領域の上の前記インプリント材に光を照射する先行露光を行うように構成されており、
前記調整部は、前記先行露光の際に、前記第1アクチュエータにより前記シャッタ板を前記第1状態にするとともに、前記第2アクチュエータにより前記シャッタ板の傾きを調整する、
ことを特徴とする請求項1に記載のインプリント装置。
【請求項3】
前記調整部は、前記位置合わせが完了した後に前記ショット領域の上の前記インプリント材に光を照射する本露光の際に、前記第1アクチュエータにより前記シャッタ板を前記第2状態にする、ことを特徴とする請求項2に記載のインプリント装置。
【請求項4】
前記先行露光および前記本露光における露光量を制御する制御部を有し、
前記制御部は、前記シャッタ板の傾き量と露光量との予め得られた関係に基づいて、前記先行露光および前記本露光における前記露光量を制御する、
ことを特徴とする請求項3に記載のインプリント装置。
【請求項5】
前記第1通過部は、複数の第1通過部を含むことを特徴とする請求項4に記載のインプリント装置。
【請求項6】
基板のショット領域の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させて前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント装置であって、
シャッタ板と、
前記ショット領域の上の前記インプリント材への光照射を制御するために前記シャッタ板の状態を調整する調整部と、
前記基板と前記型との相対位置を変更する相対駆動機構と、
前記相対駆動機構による前記ショット領域と前記型との位置合わせが完了する前に前記ショット領域の上の前記インプリント材に光を照射する先行露光と、前記位置合わせが完了した後に前記ショット領域の上の前記インプリント材に光を照射する本露光とにおける露光量を制御する制御部と、を有し、
前記シャッタ板は、前記ショット領域の上の前記インプリント材の全体のうちの一部に光を照射するための複数の第1通過部と、前記ショット領域の上の前記インプリント材の前記全体に光を照射するための第2通過部と、を有し、
前記調整部は、
前記シャッタ板の前記状態を、前記複数の第1通過部のうちの1つの第1通過部を通過した光が前記一部に照射される第1状態と、前記第2通過部を通過した光が前記全体に照射される第2状態との間で切り替えるために、前記シャッタ板を回動させる第1アクチュエータと、
前記シャッタ板を傾ける第2アクチュエータと、を含み、
前記複数の第1通過部のうちの1つの第1通過部を通過する光の量が調整されるように、前記シャッタ板の傾きを調整するように構成されており、
前記ショット領域は、複数のチップ領域を含み、
前記制御部は、前記ショット領域における前記複数のチップ領域の配置に基づいて、前記複数の第1通過部のうち使用する第1通過部を選択し、前記選択された第1通過部を使用した場合における前記シャッタ板の傾き量と露光量との予め得られた関係に基づいて、前記先行露光および前記本露光における前記露光量を制御する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項7】
基板のショット領域の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させて前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント装置であって、
シャッタ板と、
前記ショット領域の上の前記インプリント材への光照射を制御するために前記シャッタ板の状態を調整する調整部と、を有し、
前記シャッタ板は、前記ショット領域の上の前記インプリント材の全体のうちの一部に光を照射するための第1通過部と、前記ショット領域の上の前記インプリント材の前記全体に光を照射するための第2通過部と、を有し、
前記調整部は、
前記シャッタ板の前記状態を、前記第1通過部を通過した光が前記一部に照射される第1状態と、前記第2通過部を通過した光が前記全体に照射される第2状態との間で切り替えるために、前記シャッタ板を回動させる第1アクチュエータと、
前記シャッタ板を傾ける第2アクチュエータと、を含み、
前記第2アクチュエータは、
前記第1通過部を通過する光の光軸と直交する第1軸の周りに前記シャッタ板を傾けるアクチュエータと、
前記光軸と前記第1軸とに直交する第2軸の周りに前記シャッタ板を傾けるアクチュエータと、
を含み、
前記調整部は、前記第1通過部を通過する光の量が調整されるように、前記シャッタ板の傾きを調整する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項8】
基板のショット領域の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させて前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント装置であって、
シャッタ板と、
前記ショット領域の上の前記インプリント材への光照射を制御するために前記シャッタ板の状態を調整する調整部と、
前記基板と前記型との相対位置を変更する相対駆動機構と、
を有し、
前記インプリント装置は、前記相対駆動機構による前記ショット領域と前記型との位置合わせが完了する前に前記ショット領域の上の前記インプリント材に光を照射する先行露光と、前記位置合わせが完了した後に前記ショット領域の上の前記インプリント材に光を照射する本露光とを行うように構成されており、
前記シャッタ板は、前記ショット領域の上の前記インプリント材の全体のうちの一部に光を照射するための複数の第1通過部を有し、
前記調整部は、前記先行露光の際に、前記第1通過部を通過する光の量が調整されるように前記シャッタ板の傾きを調整するように構成されており、
前記ショット領域は、複数のチップ領域を含み、
前記インプリント装置は、前記ショット領域における前記複数のチップ領域の配置に基づいて、前記複数の第1通過部のうち使用する第1通過部を選択し、前記選択された第1通過部を使用した場合における前記シャッタ板の傾き量と露光量との予め得られた関係に基づいて、前記先行露光および前記本露光における露光量を制御する制御部を更に有する、
ことを特徴とするインプリント装置。
【請求項9】
基板のショット領域の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させて前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント方法であって、
前記ショット領域の上の前記インプリント材への光照射を制御するためのシャッタ板の駆動によって前記ショット領域の上の前記インプリント材の全体のうちの一部に光を照射する先行露光工程と、
前記先行露光工程の実行中または前記先行露光工程の終了後に、前記ショット領域と前記型との位置合わせを行う位置合わせ工程と、
前記位置合わせ工程の後に前記シャッタ板の駆動によって前記ショット領域の上の前記インプリント材の前記全体に光を照射する本露光工程と、を有し、
前記シャッタ板の前記駆動は、前記シャッタ板の傾きを調整するための駆動を含み、
前記シャッタ板は、前記ショット領域の上の前記インプリント材の全体のうちの一部に光を照射するための第1通過部と、前記ショット領域の上の前記インプリント材の前記全体に光を照射するための第2通過部とを有し、
前記インプリント方法は、
前記シャッタ板の前記状態を、前記第1通過部を通過した光が前記一部に照射される第1状態と、前記第2通過部を通過した光が前記全体に照射される第2状態との間で切り替えるために、前記シャッタ板を駆動軸周りに回動させる工程と、
前記シャッタ板を前記駆動軸とともに傾ける工程と、
を更に有する、ことを特徴とするインプリント方法。
【請求項10】
請求項1乃至のいずれか1項に記載のインプリント装置を用いて基板の上にパターンを形成する工程と、
前記工程において前記パターンが形成された基板の処理を行う工程と、
を含み、前記処理が行われた前記基板から物品を製造することを特徴とする物品製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インプリント装置、インプリント方法、および物品製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
インプリント装置は、基板のショット領域の上のインプリント材に型を接触させた状態でインプリント材を光照射によって硬化させてショット領域の上にパターンを形成する。インプリント装置では、ショット領域上のインプリント材と型とが接触した状態で、ショット領域と型とが位置合わせされうる。この位置合わせは、アライメントスコープによって基板のショット領域と型との位置合わせ誤差を検出しながら行われうる。
【0003】
位置合わせ時におけるショット領域上のインプリント材の粘弾性が低すぎると位置合わせ精度が低下しうることが分かっている。そこで、位置合わせを行う際に、ショット領域上のインプリント材の粘弾性を高めるため、予めインプリント材の少なくとも一部に光を照射する先行露光を行うことが提案されている。例えば特許文献1には、シャッタ板にショット領域上のインプリント材の一部に光を照射するための通過部を設け、この通過部を通過した光によって一部のインプリント材の粘弾性を高めた後に位置合わせ行うインプリント装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2019-54212号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
インプリント技術においては位置合わせ精度のさらなる向上が望まれている。そのためにも、先行露光における露光量をより精密に調整できるようにすることが必要である。
【0006】
本発明は、位置合わせ精度の向上に有利な技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面によれば、基板のショット領域の上のインプリント材に型を接触させた状態で前記インプリント材を光照射によって硬化させて前記ショット領域の上にパターンを形成するインプリント装置であって、シャッタ板と、前記ショット領域の上の前記インプリント材への光照射を制御するために前記シャッタ板の状態を調整する調整部と、を有し、前記シャッタ板は、前記ショット領域の上の前記インプリント材の全体のうちの一部に光を照射するための第1通過部と、前記ショット領域の上の前記インプリント材の前記全体に光を照射するための第2通過部とを有し、前記調整部は、前記シャッタ板の前記状態を、前記第1通過部を通過した光が前記一部に照射される第1状態と、前記第2通過部を通過した光が前記全体に照射される第2状態との間で切り替えるために、前記シャッタ板を駆動軸周りに回動させる第1アクチュエータと、前記シャッタ板を前記駆動軸とともに傾ける第2アクチュエータと、を含み、前記第1通過部を通過する光の量が調整されるように、前記シャッタ板の傾きを調整する、ことを特徴とするインプリント装置が提供される。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、位置合わせ精度の向上に有利な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】インプリント装置の構成を示す図。
図2】先行露光を説明する図。
図3】硬化部の構成例を示す図。
図4】シャッタ機構の構成例を示す図。
図5】シャッタ板の構成例を示す図。
図6】シャッタ板の傾きに対する第1通過部を通過する光の投影面積の変化を示す図。
図7】シャッタ板の角度と露光量との関係を例示する図。
図8】(a)はシャッタ板の構成例を示す図、(b)はシャッタ板の角度と露光量との関係を例示する図。
図9】シャッタ機構の構成例を示す図。
図10】ショット領域の構成を示す図。
図11】シャッタ板の動作を示す図。
図12】インプリント装置の動作を示す図。
図13】物品製造方法を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、添付図面を参照して実施形態を詳しく説明する。なお、以下の実施形態は特許請求の範囲に係る発明を限定するものではない。実施形態には複数の特徴が記載されているが、これらの複数の特徴の全てが発明に必須のものとは限らず、また、複数の特徴は任意に組み合わせられてもよい。さらに、添付図面においては、同一若しくは同様の構成に同一の参照番号を付し、重複した説明は省略する。
【0011】
<第1実施形態>
図1には、本発明の一実施形態のインプリント装置100の構成が示されている。インプリント装置100は、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMに型M(のパターン部P)を接触させた状態でインプリント材IMを光照射によって硬化させて該ショット領域の上にパターンを形成する。
【0012】
インプリント材としては、光の照射によって硬化する光硬化性組成物(未硬化状態の樹脂と呼ぶこともある)が用いられる。該光は、例えば、10nm以上1mm以下の範囲内の波長を有し、例えば、赤外線、可視光線、紫外線などでありうる。光硬化性組成物は、少なくとも重合性化合物と光重合開始剤とを含有し、必要に応じて非重合性化合物または溶剤を更に含有してもよい。非重合性化合物は、増感剤、水素供与体、内添型離型剤、界面活性剤、酸化防止剤、ポリマー成分などの群から選択される少なくとも一種である。インプリント材は、液滴状、或いは複数の液滴が繋がってできた島状又は膜状となって基板上に配置されうる。インプリント材の粘度(25℃における粘度)は、例えば、1mPa・s以上100mPa・s以下でありうる。基板の材料としては、例えば、ガラス、セラミックス、金属、半導体、樹脂等が用いられうる。必要に応じて、基板の表面に、基板とは別の材料からなる部材が設けられてもよい。基板は、例えば、シリコンウエハ、化合物半導体ウエハ、石英ガラスである。
【0013】
本明細書および添付図面では、基板Sの表面に平行な方向をXY平面とするXYZ座標系において方向を示す。XYZ座標系におけるX軸、Y軸、Z軸にそれぞれ平行な方向をX方向、Y方向、Z方向とし、X軸周りの回転、Y軸周りの回転、Z軸周りの回転をそれぞれθX、θY、θZとする。X軸、Y軸、Z軸に関する制御または駆動は、それぞれ、X軸に平行な方向、Y軸に平行な方向、Z軸に平行な方向に関する制御または駆動を意味する。また、θX軸、θY軸、θZ軸に関する制御または駆動は、それぞれ、X軸に平行な軸の周りの回転、Y軸に平行な軸の周りの回転、Z軸に平行な軸の周りの回転に関する制御または駆動を意味する。また、位置は、X軸、Y軸、Z軸の座標に基づいて特定されうる情報であり、姿勢は、θX軸、θY軸、θZ軸の値で特定されうる情報である。位置決めは、位置および/または姿勢を制御することを意味する。位置合わせは、基板および型の少なくとも一方の位置および/または姿勢の制御を含みうる。
【0014】
インプリント装置100は、基板S(のショット領域)と型Mとの相対位置を変更する相対駆動機構DMを備えている。相対駆動機構DMは、基板Sを保持し位置決めする基板位置決め機構SAと、型Mを保持し位置決めする型位置決め機構MAとを含みうる。相対駆動機構DMは、基板Sと型Mとの相対位置が変更されるように基板SおよびSの少なくも一方を駆動する。相対駆動機構DMによる相対位置の変更は、基板Sの上のインプリント材IMに対する型Mの接触、硬化したインプリント材(硬化物のパターン)からの型Mの分離のための駆動、基板Sのショット領域と型Mとの位置合わせを含みうる。
【0015】
基板位置決め機構SAは、基板Sを保持する基板チャックを含む基板ステージ2と、基板ステージ2を駆動することによって基板Sを駆動する基板駆動機構13と、基板ステージ2の位置および姿勢を検出するセンサ4とを含みうる。基板ステージ2は光量を計測するセンサ5を含みうる。基板駆動機構13は、ベースフレーム3によって支持される。型位置決め機構MAは、型Mを保持する型保持部6と、型保持部6を駆動することによって型Mを駆動する型駆動機構7とを含みうる。型駆動機構7は、支持体8によって支持されうる。
【0016】
基板駆動機構13は、基板Sを複数の軸(例えば、X軸、Y軸、θZ軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。型駆動機構7は、型Mを複数の軸(例えば、Z軸、θX軸、θY軸の3軸、好ましくは、X軸、Y軸、Z軸、θX軸、θY軸、θZ軸の6軸)について駆動するように構成されうる。センサ4は、例えば、レーザー干渉計またはエンコーダを含みうる。
【0017】
インプリント装置100は、更に、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMを硬化させる硬化部9(光照射部)を備えている。硬化部9は、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMと型M(のパターン部P)とが接触した状態での該ショット領域と型Mとの位置合わせが完了した後にインプリント材IMに光を照射することによってインプリント材IMを硬化させる。これにより、インプリント材IMの硬化物からなるパターンが基板Sの上に形成される。その他、硬化部9は、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMと型M(のパターン部P)とが接触した後に、該ショット領域の上のインプリント材IMの一部(先行露光部)に光を照射し、該一部の粘弾性を高める処理も行う。硬化部8の詳細については後述する。
【0018】
インプリント装置100は、更に、基板Sのショット領域の上にインプリント材IMを配置するディスペンサ10を備えうる。ここで、インプリント装置100は、1つのショット領域にディスペンサ10によってインプリント材IMが配置される度にそのショット領域に対するインプリント処理が行われるように構成されうる。あるいは、インプリント装置100は、複数のショット領域にディスペンサ10によってインプリント材IMが配置された後に、該複数のショット領域のそれぞれに対してインプリント処理がなされるように構成されてもよい。あるいは、ディスペンサ10は、インプリント装置100の外部装置として構成されてもよく、この場合、外部装置としてのディスペンサ10によってインプリント材が配置された基板Sがインプリント装置100に提供される。
【0019】
インプリント装置100は、更に、アライメントスコープ11を備えうる。アライメントスコープ11は、例えば、基板Sのショット領域のアライメントマークと型Mのアライメントマークとの相対位置を検出する。これにより、基板Sのショット領域と型Mとの相対的な位置ずれ(位置合わせ誤差)を検出することができる。基板Sのショット領域と型Mとの位置合わせは、アライメントスコープ11によってショット領域と型Mとの相対的な位置ずれを検出しながら相対駆動機構DMによって基板Sと型Mとの相対位置を調整することによってなされうる。
【0020】
インプリント装置100は、更に、制御部12を備えうる。制御部12は、インプリント装置100の上記の各構成要素を制御する。制御部11は、例えば、FPGA(Field Programmable Gate Arrayの略。)などのPLD(Programmable Logic Deviceの略。)、又は、ASIC(Application Specific Integrated Circuitの略。)、又は、プログラムが組み込まれた汎用コンピュータ、又は、これらの全部または一部の組み合わせによって構成されうる。
【0021】
基板位置決め機構SAによって位置決めされる基板Sと型位置決め機構MAによって位置決めされる型Mとは、外部からの振動またはインプリント装置100において発生する振動を受けて独立して振動しうる。これは、基板Sと型との間の構造体(基板位置決め機構SA、型位置決め機構MA、支持体8等)の剛性不足によるものである。したがって、基板Sと型Mとの間、更には、位置合わせ対象のショット領域と型Mとの間には、相対的な位置ずれ(相対的な振動)が存在しうる。
【0022】
図2(a)には、比較例の位置合わせ動作における基板Sのショット領域と型Mとの間の相対的な位置ずれ(相対的な振動)が例示されている。ここで、位置合わせ動作は、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMと型M(のパターン部P)とが接触した状態で相対駆動機構DMによってなされる。図2(a)において、「本露光」は、硬化部9によってインプリント材IMの全体に光が照射され(インプリント材IMが露光され)、インプリント材IMが硬化されるタイミングを示している。図2(a)の左端から「本露光」までの期間は、相対駆動機構DMによって基板Sのショット領域と型Mとが位置合わせされている期間である。
【0023】
硬化部9によってインプリント材IMの全体に光が照射されてインプリント材IMが硬化すると、硬化したインプリント材IMによって基板Sと型Mとが結合される。この状態では、基板Sのショット領域と型Mとの間の相対的な振動がなくなり、相対的な位置ずれが固定される。この相対的な位置ずれは、インプリント処理によって形成されたパターンとその下地のパターンとの重ね合わせ誤差となる。
【0024】
図2(b)には、本実施形態の位置合わせ動作における基板Sのショット領域と型Mとの間の相対的な位置ずれ(相対的な振動)が例示されている。図2(b)において、「本露光」は、硬化部9によってインプリント材IMの全体に光が照射され(インプリント材IMが露光され)、インプリント材IMが硬化するタイミングを示している。図2(b)の左端から「本露光」までの期間は、相対駆動機構DMによって基板Sのショット領域と型Mとが位置合わせされている期間である。また、「先行露光の開始」は、先行露光が開始されるタイミングを示している。本実施形態では、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMと型Mとが接触した状態で、硬化部9が基板Sのショット領域の上のインプリント材IMの全体のうちの一部である先行露光部に光を照射する。よって、基板Sのショット領域の上のインプリント材IMの全体のうちの先行露光部のみが選択的に露光される。これを先行露光という。先行露光は、予備露光ともよばれる。
【0025】
先行露光が開始されると、インプリント材IMの先行露光部の粘弾性が高まる。インプリント材IMの先行露光部の粘弾性が高くなることは、基板Sと型Mとの間の剛性が高くなることを意味する。したがって、先行露光の開始後に、基板Sのショット領域と型Mとの間の相対的な位置ずれの振幅が徐々に小さくなる。これにより位置合わせ精度を向上させることができる。また、ショット領域の上のインプリント材のうち先行露光部のみを露光することによって、先行露光部以外の部分における充填性の低下を抑えることができる。これによってスループットを向上させることができる。先行露光部は、充填性を考慮して任意に定められうる。
【0026】
基板Sのショット領域の上のインプリント材IMを該ショット領域の全域において硬化させるための光の照射(「本露光」)は、基板Sのショット領域と型Mとの間の相対的な位置ずれが許容範囲に収まったタイミングでなされる。
【0027】
図3には、硬化部9の構成例が示されている。硬化部9は、光源93と、シャッタ機構91と、結像光学系94と、ハエの目レンズ95と、結像光学系96とを含みうる。光源93は、例えば、水銀ランプ等のランプ、または、レーザーまたはLED等の固体光源でありうる。
【0028】
図4(a)、(b)には、シャッタ機構91の構成例が示されている。シャッタ機構91は、シャッタ板911と、ショット領域の上のインプリント材への光照射を制御するためにシャッタ板911の状態を調整する調整部92とを含みうる。調整部92は、シャッタ板911によるシャッタ動作を行うためのアクチュエータ913を含みうる。アクチュエータ913は、例えば、駆動軸912を介してシャッタ板911を回動するように構成されうるが、シャッタ板911を一軸方向に駆動(往復駆動)するように構成されてもよい。
【0029】
図3に示されるように、シャッタ板911が配置される面には、光源83の中間像が形成されうる。結像光学系94は、シャッタ板811が配置される面とハエの目レンズ85の入射面とを光学的に共役な位置関係にするように構成されうる。結像光学系86は、ハエの目レンズ85の入射面と基板Sとを光学的に共役な位置関係にするように構成されうる。なお、ハエの目レンズ95は、シャッタ板911と基板Sとの間に配置されうるが、シャッタ板911が配置される面における光強度分布(通過部)を直接に基板Sに結像させる構成が採用されてもよい。
【0030】
調整部92は、シャッタ板911の傾き調整する機構を有する。図4(a)、(b)に示される例においては、調整部92は、シャッタ板911およびアクチュエータ913を傾けるためのチルト機構を含みうる。アクチュエータ913は、保持部材914によって保持されている。保持部材914は、Rガイド915に沿って移動するように構成された第1スライダ916に接続されている。Z方向に沿って配置されたボールねじ920(駆動軸)には第2スライダ918が取り付けられている。ボールねじ920は、アクチュエータ921の出力軸に取り付けられている。アクチュエータ921の駆動によってなされるボールねじ920の回転運動が、第2スライダ918のZ方向への直線運動に変換される。第1スライダ916と第2スライダ918とは、ロッド917によって連結される。ロッド917の一端は、第1スライダ916にY軸周りに回転可能に連結されており、ロッド917の中間部は、第2スライダ918に配置された一対のカムフォロア919によって挟持されている。したがって、アクチュエータ921の駆動によって第2スライダ918がZ方向に移動するのに伴って第1スライダ916はRガイド915に沿って移動する。これにより、シャッタ板911およびアクチュエータ913のチルトが行われうる。図4(a)は、シャッタ板911がZ方向(光軸方向)に対して直交する状態に調整された状態を示しており、図4(b)は、図4(a)の状態からシャッタ板911およびアクチュエータ913がチルトされた状態を示している。
【0031】
図5には、シャッタ板911の構成例が示されている。図5において、破線は、光源93からの光LBが入射する領域(光路)を示している。シャッタ板911は、光源93からの光LBを遮断する遮断部911cを有する。また、シャッタ板911は、ショット領域の上のインプリント材IMの全体のうちの一部である先行露光部に光を照射するための第1通過部911aと、ショット領域のインプリント材IMの全体に光を照射するための第2通過部911bとを有する。この例では、シャッタ板911は、2回対称の構造を有するが、他の構造を有してもよい。調整部92は、シャッタ板911の状態を、第1通過部911aを通過した光が先行露光部に照射される第1状態と、第2通過部911bを通過した光がショット領域の上のインプリント材IMの全体に照射される第2状態との間で切り替え可能である。この切り替えは、アクチュエータ913(第1アクチュエータ)によるシャッタ板911の回動によって行われうる。
【0032】
図6には、シャッタ板911の傾きに対する第1通過部911aを通過する光の投影面積の変化の例が示されている。状態6aは、光源93からの光LBの光軸に対してシャッタ板911が直交している状態を示している。この状態における第1通過部911aを通過する光の投影面積はSaで示される。状態6bは、状態6aからシャッタ板911を傾けた状態を示している。シャッタ板911を傾けることにより、第1通過部911aを通過する光の投影面積はSaからSbに変化する。投影面積が変化することにより、光LBの通過量(露光量)が変化する。
【0033】
図7には、光LBに対するシャッタ板911の角度と露光量との関係が例示されている。図7においては、標準角度θ0の前後の角度範囲における露光量が示されている。シャッタ板911によって反射された露光光が光源に向かって逆進すると光源に熱変動を生じうるため、標準角度θ0は、通常、光LBの光軸に対して直角ではなく斜めの角度に設定される。図7のように、シャッタ板911の角度を変化させることによって露光量を変化させることができる。調整部92は、このような特性に基づき、第1通過部911を通過する光の量が調整されるようにシャッタ板911の傾きを調整しうる。シャッタ板911のチルト動作は、アクチュエータ921(第2アクチュエータ)によって行われうる。
【0034】
図8(a)には、複数の第1通過部911a、911d、911eを有するシャッタ板911が例示されている。第1通過部911a、911d、911eは、互いに異なる開口の形状(大きさ)および/または間隔を持つ。シャッタ板911に複数の第1通過部911a、911d、911eを設け、その中から使用する第1通過部を選択することにより、先行露光における露光量(先行露光量)を調整することができる。シャッタ板に設けることができる第1通過部は高々数種類であるため、その中から使用する第1通過部を選択するだけでは露光量調整の分解能が低く、さらなる位置合わせ精度の向上は容易ではない。これに対し本実施形態では、シャッタ板911の傾きを可変にしているため露光量調整の分解能を高めることができ、これにより位置合わせ精度を更に向上させることが可能である。図8(b)には、複数の第1通過部911a、911d、911eそれぞれのシャッタ板911の光LBに対する角度と露光量との関係が例示されている。図8(b)に示されるように、複数の第1通過部911a、911d、911eによって、第1通過部が1つだけの場合に比べ、露光量をより広い範囲で変化させることができる。したがって、複数の第1通過部911a、911d、911eのうちの1つを選択することで、シャッタ板の角度に対する露光量の調整範囲を、図7の露光量の調整範囲に対して拡大することができる。
【0035】
図4(a)、(b)には、アクチュエータ921によるY軸(第1軸)の周りにシャッタ板911を傾ける調整部92の構成例が示された。これに対し、図9には、アクチュエータ925によるX軸(第2軸)の周りにシャッタ板911を傾ける機構が付加された調整部92の構成例が示されている。例えば、ステージ922の第1面にアクチュエータ921が固定される。また、ステージ922の第1面と反対側の第2面には第3スライダ924が固定される。第3スライダ924は、ステージ922を伴ってRガイド923に沿って移動するように構成されている。Y方向に沿って配置されたボールねじ928(駆動軸)には第4スライダ926が取り付けられている。ボールねじ928は、アクチュエータ925の出力軸に取り付けられている。アクチュエータ925の駆動によってなされるボールねじ928の回転運動が、第4スライダ926のY方向への直線運動に変換される。第4スライダ926と第3スライダ924とは、ロッド927を介して連結されている。したがって、アクチュエータ925の駆動によって第4スライダ926がY方向に移動するのに伴って第3スライダ924はRガイド923に沿って移動する。これにより、ステージ922に固定される機構部がX軸周りに回動し、シャッタ板911およびアクチュエータ913のX軸周りのチルトが行われうる。図9のような構成によれば、図4の構成に対して駆動軸が増え、露光量の調整範囲を拡大することができる。
【0036】
第1通過部911aは、例えば、ドリル加工によって形成される丸孔、打ち抜き加工またはエッチング加工によって形成される四角孔でありうる。あるいは、第1通過部911aは、メッシュシートまたはメッシュ板でもよい。その他、第1通過部911aの領域以外に遮光膜を蒸着したガラス板をシャッタ板に固定してもよい。図8に示された第1通過部911d、911eも同様である。
【0037】
図10は、基板Sのショット領域SRを例示している。ショット領域SRは、複数のチップ領域CRと、複数のチップ領域CRを相互に隔てるスクライブライン領域SLRとを含みうる。1つのチップ領域CRは、製造される1つのチップ(ダイ)に対応する。先行露光では、ショット領域SRの全体のうちの一部である先行露光領域に像IM1が形成され、先行露光領域のみが露光される。先行露光領域は、シャッタ板911の第1通過部911aを通過した光が入射する領域であり、ショット領域SRの上のインプリント材IMの全体のうち一部である先行露光部に対応する。換言すると、先行露光では、先行露光領域の上のインプリント材IM(即ち、先行露光部)が露光され、先行露光領域以外の領域の上のインプリント材IMは露光されない。更に換言すると、ショット領域SRのうち先行露光領域を露光する動作は、ショット領域SRの上のインプリント材IMのうち先行露光部を露光する動作と等価である。
【0038】
回路パターンの線幅は、例えば、100ナノメートル以下であり、小さいときには10ナノメートルレベルでありうる。スクライブライン領域SLRに配置されるパターンの線幅は、マイクロメータレベルであり、小さいときでも数100ナノメートルレベルであり、回路パターンと比べて大きい。また、スクライブライン領域SLRのパターン密度は回路パターン領域に比べて小さい。
【0039】
基板Sのショット領域の上のインプリント材IMと型Mのパターン部Pとを接触させると、パターン部Pのパターンを構成する凹部に対してインプリント材IMが毛細管現象によって充填される。パターンの線幅が細くてパターン密度が高い回路パターン領域(チップ領域CR)ではインプリント材IMの充填速度が速く、スクライブライン領域SLRではインプリント材IMの充填速度は遅い。そのため、スクライブライン領域SLRの上のインプリント材IMを先行露光すると、スクライブライン領域SLRの上のインプリント材IMの粘弾性が高くなり、充填速度が更に遅くなる。そこで、複数のチップ領域CRの少なくとも1つのチップ領域CRの少なくとも一部分に光が入射するように先行露光部(先行露光領域)が決定されうる。より詳しくは、複数のチップ領域CRの少なくとも1つのチップ領域CRの少なくとも一部分に光が入射し、スクライブライン領域SLRには有意な量の光が入射しないように先行露光部(先行露光領域)が決定されうる。ここで、有意な量の光とは、インプリント材IMの粘弾性を無視できない程度に増加させる量の光である。シャッタ板911の駆動のために不可避的にスクライブライン領域SLRに入射する光が有意な量の光とならないようにシャッタ板911の駆動プロファイルが決定される。先行露光部(先行露光領域)は、シャッタ板911における第1通過部911aの配置およびアクチュエータ913、921、925によるシャッタ板911の駆動によって規定される。
【0040】
先行露光においてショット領域SRの上のインプリント材の先行露光部の粘弾性が予定以上に高くなったり、漏れ光がスクライブライン領域SLR上のインプリント材に入射して充填速度が遅くなったりすることは好ましくない。そこで、例えば、駆動軸912を振動させることによってシャッタ板911を振動させ、光が照射される部分を分散させてもよい。
【0041】
図11には、第1通過部911aを使った先行露光を終えた後に行われる第2通過部911bを使った本露光の途中の状態が示されている。インプリント材が極めて短い時間のうちに硬化すると、インプリント材の収縮および発熱が瞬時に起こり、重ね合わせ精度が低下する可能性がある。そこで、第2通過部911bを規定する遮断部911cのエッジEDGが光LBの光路を横切る間のシャッタ板911の回動速度は、インプリント材の特性に応じて調整されうる。
【0042】
図12には、インプリント装置100の動作(インプリント方法)が例示されている。この動作は、制御部12によって制御されうる。工程S601では、制御部12はシャッタ板911の傾き量と露光量との関係を取得する。シャッタ板911の傾き量と露光量との関係は、ステージ上のセンサ5が露光領域に位置するようにステージ2を移動し、シャッタ機構91の傾きを変化させ、露光量をセンサ5で計測することにより得られる。計測により得られたシャッタ板911の傾き量と露光量との関係は、例えば、ルックアップテーブルとして制御部12のメモリに記憶される。図8(a)に示されたような複数の第1通過部が設けられている場合には、複数の第1通過部それぞれについてのシャッタ板911の傾き量と露光量との関係が計測される。
【0043】
工程S602では、制御部12は、制御情報(処理レシピ)を上位制御装置等から取得する。制御情報は、例えば、基板Sの複数のショット領域の配置を示すショットレイアウト情報、各ショット領域における複数のチップ領域の配置を示すチップレイアウト情報を含みうる。制御情報は、先行露光領域(先行露光部)の位置を示す位置情報を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0044】
工程S603では、制御部12は、先行露光領域と先行露光量を決定する。ここで、制御情報が先行露光領域の位置を示す位置情報を含んでいる場合は、制御部12は、該位置情報に基づいて先行露光領域を決定することができる。一方、制御情報が位置情報を含んでいない場合、制御部12は、チップレイアウト情報に基づいて先行露光領域を決定することができる。図8(a)に示されるように複数の第1通過部911a、911d、911eが設けられている場合には、決定された先行露光領域に応じて複数の第1通過部911a、911d、911eのうちの1つが選択されうる。先行露光量は、予め取得した先行露光結果に基づいて決定される。先行露光結果がない場合は、設計値に基づいて決定されてもよい。また、制御部12は、決定した先行露光領域および先行露光量に応じてシャッタ機構91の駆動プロファイル(アクチュエータ913およびアクチュエータ921を動作させるための制御情報)を生成する。また、制御部12は、ショット領域の形状が基板Sのエッジによって規定されるショット領域(エッジショット領域)については、その形状に応じて先行露光領域および先行露光量を調整するように構成されうる。
【0045】
工程S604では、制御部12は、基板ステージ2の上に基板Sがロードされるように基板Sの搬送を制御する。工程S605では、制御部12は、基板Sの複数のショット領域のうちパターン形成対象のショット領域にインプリント材IMが配置されるようにディスペンサ10および基板位置決め機構SAを制御する。工程S606では、制御部12は、型Mの下にパターン形成対象のショット領域が移動するように基板位置決め機構SAを制御する。
【0046】
工程S607では、制御部12は、パターン形成対象のショット領域の全域においてインプリント材IMと型Mのパターン部Pとが接触するように相対駆動機構DMを制御する。
【0047】
工程S608では、制御部12は、工程S603で決定された先行露光領域および先行露光量と、工程S601で取得されたシャッタ板911の傾き量と露光量との関係とに基づいて、シャッタ板911の傾きを調整する。例えば、制御部12は、上記関係において、工程S603で決定された先行露光量に最も近くなる傾き量を選択することができる。
【0048】
工程S609では、制御部12は、先行露光領域(先行露光部)に対する先行露光が開始されるように硬化部9(シャッタ機構91)を制御する(先行露光工程)。図2(b)に例示されるように、先行露光が開始されると、先行露光部の粘弾性が徐々に高くなり、基板Sと型Mとの間の相対的な振動が小さくなりうる。なお、S608とS609と別の工程として記載されているが、同じ工程として理解されてもよい。すなわち、S609での先行露光工程は、ショット領域の上のインプリント材への光照射を制御するためのシャッタ板911の駆動を含むものであり、この駆動にS608のシャッタ板911の傾きの調整が含まれると理解されてよい。
【0049】
工程S610は位置合わせ工程である。工程S610では、制御部12は、アライメントスコープ11を使ってパターン形成対象のショット領域と型Mとの相対位置を検出しながら、その相対位置に基づいてショット領域と型Mとが位置合わせされるように相対駆動機構DMを制御する。この位置合わせ工程は、先行露光の実行中に並行して行われてもよいし、先行露光の終了後に開始されてもよい。
【0050】
工程S611では、制御部12は、アライメントスコープ10を使って検出されるパターン形成対象のショット領域と型Mとの相対位置誤差が許容範囲に収まったかどうかを判断する。そして、相対位置誤差が許容範囲に収まった場合には、シャッタ機構91の制御情報を記録し、工程S612に進む。そうでない場合には、工程S610に戻って位置合わせ動作を継続する。工程S610に戻って位置合わせ動作を継続する場合には、制御部12は、シャッタ機構91を制御し、先行露光量を変化させてもよく、このとき、シャッタ板911の傾きの角度を調整することによって先行露光量を変化させてもよい。
【0051】
工程S612では、制御部12は、先行露光領域(先行露光部)に対する先行露光が終了するように硬化部9(シャッタ機構91)を制御する。制御部12は、記録したシャッタ機構91の制御情報を、次のショット、基板、またはロットに反映してもよい。
【0052】
工程S613では、制御部12は、パターン形成対象のショット領域の上のインプリント材IMの全体が露光されるように硬化部9(シャッタ機構91)を制御する(本露光工程)。これにより、パターン形成対象のショット領域の上のインプリント材IMの全体が硬化し、インプリント材IMの硬化物からなるパターンが形成される。
【0053】
工程S614では、制御部12は、パターン形成対象のショット領域の上のインプリント材IMの硬化物からなるパターンと型Mとが分離されるように相対駆動機構DMを制御する。
【0054】
工程S615では、制御部12は、次のパターンを形成すべきショット領域があるかどうかを判断し、次のパターンを形成すべきショット領域がある場合には、工程S605に戻り、そうでなければ工程S616に進む。工程S616では、基板ステージ2の上の基板Sがアンロードされるように基板Sの搬送を制御する。工程S617では、制御部12は、次の処理すべき基板Sがあるかどうかを判断し、次の処理すべき基板がある場合には、工程S604に戻り、そうでなければ動作を終了する。
【0055】
<物品製造方法の実施形態>
インプリント装置を用いて形成した硬化物のパターンは、各種物品の少なくとも一部に恒久的に、或いは各種物品を製造する際に一時的に、用いられる。物品とは、電気回路素子、光学素子、MEMS、記録素子、センサ、或いは、型等である。電気回路素子としては、DRAM、SRAM、フラッシュメモリ、MRAMのような、揮発性或いは不揮発性の半導体メモリや、LSI、CCD、イメージセンサ、FPGAのような半導体素子等が挙げられる。型としては、インプリント用のモールド等が挙げられる。
【0056】
硬化物のパターンは、上記物品の少なくとも一部の構成部材として、そのまま用いられるか、或いは、レジストマスクとして一時的に用いられる。基板の加工工程においてエッチング又はイオン注入等が行われた後、レジストマスクは除去される。
【0057】
次に、物品製造方法について説明する。図13の工程SAでは、絶縁体等の被加工材2zが表面に形成されたシリコン基板等の基板1zを用意し、続いて、インクジェット法等により、被加工材2zの表面にインプリント材3zを付与する。ここでは、複数の液滴状になったインプリント材3zが基板上に付与された様子を示している。
【0058】
図13の工程SBでは、インプリント用の型4zを、その凹凸パターンが形成された側を基板上のインプリント材3zに向け、対向させる。図13の工程SCでは、インプリント材3zが付与された基板1zと型4zとを接触させ、圧力を加える。インプリント材3zは型4zと被加工材2zとの隙間に充填される。この状態で硬化用のエネルギーとして光を型4zを介して照射すると、インプリント材3zは硬化する。
【0059】
図13の工程SDでは、インプリント材3zを硬化させた後、型4zと基板1zを引き離すと、基板1z上にインプリント材3zの硬化物のパターンが形成される。この硬化物のパターンは、型の凹部が硬化物の凸部に、型の凸部が硬化物の凹部に対応した形状になっており、即ち、インプリント材3zに型4zの凹凸パターンが転写されたことになる。
【0060】
図13の工程SEでは、硬化物のパターンを耐エッチングマスクとしてエッチングを行うと、被加工材2zの表面のうち、硬化物が無いか或いは薄く残存した部分が除去され、溝5zとなる。図13の工程SFでは、硬化物のパターンを除去すると、被加工材2zの表面に溝5zが形成された物品を得ることができる。ここでは硬化物のパターンを除去したが、加工後も除去せずに、例えば、半導体素子等に含まれる層間絶縁用の膜、つまり、物品の構成部材として利用してもよい。
【0061】
(他の実施形態)
本発明は、上述の実施形態の1以上の機能を実現するプログラムを、ネットワーク又は記憶媒体を介してシステム又は装置に供給し、そのシステム又は装置のコンピュータにおける1つ以上のプロセッサがプログラムを読み出し実行する処理でも実現可能である。また、1以上の機能を実現する回路(例えば、ASIC)によっても実現可能である。
【0062】
発明は上記実施形態に制限されるものではなく、発明の精神及び範囲から離脱することなく、様々な変更及び変形が可能である。従って、発明の範囲を公にするために請求項を添付する。
【符号の説明】
【0063】
9:硬化部、91:シャッタ機構、93:光源、94:結像光学系、95:ハエの目レンズ、96:結像光学系
図1
図2
図3
図4
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図11
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