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特許7486352プログラム、携帯情報端末、システム、及び自動体外式除細動器の起動通知方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】プログラム、携帯情報端末、システム、及び自動体外式除細動器の起動通知方法
(51)【国際特許分類】
   A61N 1/39 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A61N1/39
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2020098726
(22)【出願日】2020-06-05
(65)【公開番号】P2021191375
(43)【公開日】2021-12-16
【審査請求日】2023-05-17
(73)【特許権者】
【識別番号】000230962
【氏名又は名称】日本光電工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】若林 勤
(72)【発明者】
【氏名】井川 容士
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 寛知
【審査官】段 吉享
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-149855(JP,A)
【文献】特表2019-517284(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61N 1/39
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサを備え、自動体外式除細動器とは離れて携帯される携帯情報端末において実行されるプログラムであって、
前記プロセッサに、
前記携帯情報端末とは別体で設けられ、かつ無線通信モジュールを有する前記自動体外式除細動器が救命のための処理を実施可能な状態である起動状態となったことに応じて検出可能になる前記自動体外式除細動器からの無線信号の有無に基づいて、起動状態にある前記自動体外式除細動器の有無を検出する検出ステップと、
起動状態にある前記自動体外式除細動器が検出された場合に、前記自動体外式除細動器の起動状態を通知する通知情報を管理コンピュータへ送信する第1送信ステップと、
を実行させる、プログラム。
【請求項2】
前記プロセッサに、さらに、
起動状態にある前記自動体外式除細動器が検出された場合に、前記携帯情報端末の位置情報を取得するステップを実行させ、
前記通知情報は、前記位置情報を含む、
請求項1に記載のプログラム。
【請求項3】
前記プロセッサに、さらに、
前記携帯情報端末、前記自動体外式除細動器、または前記携帯情報端末のユーザ、に関する個別情報を記憶部に記憶するステップを実行させ、
前記通知情報は、前記個別情報を含む、
請求項1または請求項2に記載のプログラム。
【請求項4】
前記プロセッサに、さらに、
前記自動体外式除細動器が取得した救助者の生体情報の少なくとも一部を前記自動体外式除細動器から受信するステップと、
前記生体情報を前記管理コンピュータに送信する第2送信ステップと、
を実行させる、請求項1から請求項3のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項5】
前記プロセッサに、さらに、
検出の対象とする前記自動体外式除細動器に関する情報を記憶部に記憶するステップを実行させ、
前記検出ステップでは、前記記憶部に情報が記憶され、かつ、起動状態にある前記自動体外式除細動器の有無を検出する、
請求項1から請求項4のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項6】
前記検出するステップは、前記携帯情報端末のユーザが設定した所定の間隔で実行される、
請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項7】
前記無線通信モジュールは、無線LANモジュール又はBluetooth(登録商標)モジュールである、
請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のプログラム。
【請求項8】
自動体外式除細動器とは離れて携帯される携帯情報端末であって、
前記携帯情報端末とは別体で設けられ、かつ無線通信モジュールを有する前記自動体外式除細動器が救命のための処理を実施可能な状態である起動状態となったことに応じて検出可能になる前記自動体外式除細動器からの無線信号の有無に基づいて、起動状態にある前記自動体外式除細動器の有無を検出する検出手段と、
起動状態にある前記自動体外式除細動器が検出された場合に、前記自動体外式除細動器の起動状態を通知する通知情報を管理コンピュータへ送信する第1送信手段と、
を備えた、携帯情報端末。
【請求項9】
1以上の携帯情報端末と、当該携帯情報端末と通信接続可能な管理コンピュータとにおいて実現されるシステムであって、
前記携帯情報端末は、自動体外式除細動器とは離れて携帯され、
前記携帯情報端末とは別体で設けられ、かつ無線通信モジュールを有する前記自動体外式除細動器が救命のための処理を実施可能な状態である起動状態となったことに応じて検出可能になる前記自動体外式除細動器からの無線信号の有無に基づいて、起動状態にある前記自動体外式除細動器の有無を検出する検出手段と、
起動状態にある前記自動体外式除細動器が検出された場合に、前記自動体外式除細動器の起動状態を通知する通知情報を前記管理コンピュータへ送信する第1送信手段と、を備え、
前記管理コンピュータは、
前記第1送信手段によって送信された前記通知情報を受信する受信手段と、
前記通知情報を受信した場合に、任意のコンピュータ装置に所定の情報を送信する第3送信手段と、を備える、
システム。
【請求項10】
前記携帯情報端末は、さらに、
起動状態にある前記自動体外式除細動器が検出された場合に、前記携帯情報端末の位置情報を取得する取得手段を備え、
前記通知情報には、前記位置情報が含まれ、
前記所定の情報には、前記位置情報が含まれる、
請求項9に記載のシステム。
【請求項11】
プロセッサを備え、自動体外式除細動器とは離れて携帯される携帯情報端末において実行される自動体外式除細動器の起動通知方法であって、
前記プロセッサに、
前記携帯情報端末とは別体で設けられ、かつ無線通信モジュールを有する前記自動体外式除細動器が救命のための処理を実施可能な状態である起動状態となったことに応じて検出可能になる前記自動体外式除細動器からの無線信号の有無に基づいて、起動状態にある前記自動体外式除細動器の有無を検出する検出ステップと、
起動状態にある前記自動体外式除細動器が検出された場合に、前記自動体外式除細動器の起動状態を通知する通知情報を管理コンピュータへ送信する第1送信ステップと、
を実行させることを含む、自動体外式除細動器の起動通知方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、プログラム、携帯情報端末、システム、及び自動体外式除細動器の起動通知方法光配線部品に関する。
【背景技術】
【0002】
自動体外式除細動器(Automated External Defibrillator:以下、「AED」とも称する)が救助に使用された際、例えば、そのAEDを管理する管理者や救急医療チーム等(以下、「管理者等」とも称する)に対して、AEDのユーザが電話などを使用して連絡し、AEDを使用した救助が行われたことを通知したい場合がある。
【0003】
例えば、特許文献1には、起動したAEDが主体となってユーザの所有するモバイル端末と通信接続し、モバイル端末上でソフトウェアを自動的に開始させ、モバイル端末の画面上でEMS(Emergency Medical Services)に電話をするようにユーザを促すようなシステムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特表2020-503920号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に開示されたシステムでは、起動したAED、すなわち、救助活動に使用されている最中のAEDが接続可能なモバイル端末を検出して、モバイル端末と通信接続することになる。つまり、AEDの負荷を軽減する余地があった。また、ユーザ自身がEMSへの通知を行うため、より確実に通知を行うための改良の余地があった。
【0006】
本開示の目的は、起動中の自動体外式除細動器と通信接続せずとも自動体外式除細動器が起動したことをより確実に管理者等へ連絡することができるプログラム、携帯情報端末、システム、及び自動体外式除細動器の起動通知方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本開示の一態様に係るプログラムは、
プロセッサを備えた携帯情報端末において実行されるプログラムであって、
前記プロセッサに、
無線通信モジュールを有する自動体外式除細動器が起動したことに応じて検出可能になる前記自動体外式除細動器からの無線信号の有無に基づいて、起動状態にある前記自動体外式除細動器の有無を検出する検出ステップと、
起動状態にある前記自動体外式除細動器が検出された場合に、前記自動体外式除細動器の起動を通知する通知情報を管理コンピュータへ送信する第1送信ステップと、
を実行させる。
【0008】
本開示の一態様に係る携帯情報端末は、
無線通信モジュールを有する自動体外式除細動器が起動したことに応じて検出可能になる前記自動体外式除細動器からの無線信号の有無に基づいて、起動状態にある前記自動体外式除細動器の有無を検出する検出手段と、
起動状態にある前記自動体外式除細動器が検出された場合に、前記自動体外式除細動器の起動を通知する通知情報を管理コンピュータへ送信する第1送信手段と、
を備えている。
【0009】
本開示の一態様に係るシステムは、
1以上の携帯情報端末と、当該携帯情報端末と通信接続可能な管理コンピュータとにおいて実現されるシステムであって、
前記携帯情報端末は、
無線通信モジュールを有する自動体外式除細動器が起動したことに応じて検出可能になる前記自動体外式除細動器からの無線信号の有無に基づいて、起動状態にある前記自動体外式除細動器の有無を検出する検出手段と、
起動状態にある前記自動体外式除細動器が検出された場合に、前記自動体外式除細動器の起動を通知する通知情報を前記管理コンピュータへ送信する第1送信手段と、を備え、
前記管理コンピュータは、
前記第1送信手段によって送信された前記通知情報を受信する受信手段と、
前記通知情報を受信した場合に、任意のコンピュータ装置に所定の情報を送信する第3送信手段と、を備えている。
【0010】
本開示の一態様に係る自動体外式除細動器の起動通知方法は、
プロセッサを備えた携帯情報端末において実行される自動体外式除細動器の起動通知方法であって、
前記プロセッサに、
無線通信モジュールを有する自動体外式除細動器が起動したことに応じて検出可能になる前記自動体外式除細動器からの無線信号の有無に基づいて、起動状態にある前記自動体外式除細動器の有無を検出する検出ステップと、
起動状態にある前記自動体外式除細動器が検出された場合に、前記自動体外式除細動器の起動を通知する通知情報を管理コンピュータへ送信する第1送信ステップと、
を実行させることを含む。
【発明の効果】
【0011】
上記構成によれば、起動中の自動体外式除細動器と通信接続せずとも自動体外式除細動器が起動したことをより確実に管理者等へ連絡することができるプログラム、携帯情報端末、システム、及び自動体外式除細動器の起動通知方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1図1は、本開示の実施形態に係るシステムの構成の一例を示すブロック図である。
図2図2は、本開示の実施形態に係るシステムの動作例を示す概念図である。
図3図3は、本開示の実施形態に係るシステムにおいて実行される動作処理の一例を示すフローチャートである。
図4図4は、本開示の実施形態に係るシステムにおいて実行される動作処理の一例を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本開示の実施形態の一例について図面を参照しながら説明する。以下の説明では、異なる図面であっても同一又は相当の要素には同一の符号または名称を付し、重複する説明を適宜省略する。
【0014】
[システムの構成]
まず、図1を用いて、本開示の実施形態に係るシステム400の構成を説明する。図1は、システム400の構成の一例を示すブロック図である。システム400は、1以上の自動体外式除細動器(AED)1と、携帯情報端末100と、管理コンピュータ200と、コンピュータ装置300と、を含みうる。
【0015】
システム400において、携帯情報端末100は、起動状態にあるAED1を検出し、AED1の起動を通知する通知情報を管理コンピュータ200に送信する。また、管理コンピュータ200は、必要に応じて、所定の情報をコンピュータ装置300に送信する。以下、システム400に含まれうる各装置と、それらを構成する各処理部について詳述する。
【0016】
(AED)
AED1は、制御部10と、記憶部20と、操作受付部30と、表示部40と、発音部50と、高電圧発生部60と、パッドコネクタ70と、電源部80と、無線通信部90と、を備えている。AED1は、携帯型のAEDであってもよいし、設置型のAEDであってもよい。なお、AED1は、GPSセンサを備えていないことが好ましい。
【0017】
制御部10は、記憶部20に記憶されるプログラム等を読み込んで実行することにより、AED1の各種動作を制御する。制御部10は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、ROM(Read Only Memory)やRAM(Random Access Memory)等のメモリ、A/Dコンバータ等を有する。
【0018】
制御部10は、エネルギー充電/放電の制御、シーケンス制御、A/D変換、心電図解析などの救命のための各種動作を制御する。また、制御部10は、AED1のセルフテストの実施を制御する。セルフテストでは、例えば、救命動作を制御する回路や、電源部80、パッドコネクタ70に接続される除細動パッド(図示せず)等の状態をチェックし、それらについての異常の有無を確認する。
【0019】
また、制御部10は、無線通信モジュールとして機能しうる。制御部10は、例えば、携帯情報端末100等の他の装置との間での情報の送受信を無線通信部90を介して行う。制御部10は、一連の救命動作が完了した後や、セルフテストが終了した後などの所定のタイミングで、救命動作がなされた要救助者の心電図データ等の生体情報や、セルフテストの結果を、携帯情報端末100または他のコンピュータ等へ送信しうる。
【0020】
記憶部20は、AED1が動作するために必要なプログラムや、音声データ、調整値、救命時の心電図データ、セルフテストの結果等を記憶する。記憶部20は、例えば、ハードディスク等の二次記憶装置を含んでもよい。記憶部20の一部は、AED1に着脱可能な外部記憶装置であってもよい。
【0021】
操作受付部30は、AED1の使用者からの操作入力を受け付ける。操作受付部30は、AED1を起動するための電源ボタンやセルフテストを開始するチェックボタン、電気ショックを実行するショックボタン等を含みうる。なお、AED1は、電源が入っていない状態において電源ボタンやチェックボタンを押下されることや蓋を開状態にすること等により、起動状態になる。起動状態とは、救命のための処理(音声ガイダンスの出力、除細動パッドの貼付の検出、心電図の検出、除細動ショックエネルギーの出力等)を実施可能な状態である。
【0022】
表示部40は、セルフテストの結果を表示するインジケータや、AED1の使用者への指示を絵や文字で表示する液晶ディスプレイ、心電図信号を表示するディスプレイ等を含みうる。また、表示部40は、タッチパネルを備えていてもよく、操作受付部30としても機能するものでもよい。
【0023】
発音部50は、記憶部20に記憶された音声データを参照して、音声によってAED1の使用者への各種指示を行う。また、セルフテストによって異常が発見された場合、発音部50は、警告音を発してユーザに異常を報知する。
【0024】
高電圧発生部60は、制御部10からの制御信号に応じて、除細動に用いるエネルギーの充電と放電を実行する。パッドコネクタ70は、除細動パッドと接続される。高電圧発生部60が放電したエネルギーは、パッドコネクタ70及び除細動パッドを介して要救助者に伝達される。また、除細動パッドは、要救助者の心電図信号を取り込む。当該心電図信号は、例えば、フィルタリングと増幅処理がなされた後に、制御部10へ伝達される。
【0025】
電源部80は、バッテリを含む。電源部80は、バッテリから供給される電力を必要な電圧に変換し、上述した各部に対して電力を供給する。
【0026】
無線通信部90は、携帯情報端末100等の他の装置へ無線による通信を可能にするインタフェースである。AED1が起動状態になると、無線通信部90から外部へ向けて無線信号が発せられる。ここで、「無線信号」とは、例えば、DTMF(Dual Tone Multi Frequency)信号などの音による信号、赤外線ビーコン等の光による信号、又は電波ビーコン等の電波による信号である。なお、無線信号が音による信号である場合、発音部50が無線通信部90として機能しうる。
【0027】
無線信号には、例えば、AED1を個別に特定しうる第1識別情報が含まれることが好ましい。また、無線信号は、電波による信号であることが好ましく、無線通信部90は、無線LAN(Local Area Network)規格や、Bluetooth(登録商標)規格などの電波通信規格に対応していることが好ましい。この場合、無線通信部90は無線LANモジュールまたはBluetoothモジュール等の一部を構成することになり、無線通信部90からは、AED1を個別に特定しうるSSID(Service Set Identifier)等のネットワーク識別子や、AED1の識別子等の第1識別情報を含む電波ビーコンが無線信号として発せられる。
【0028】
(携帯情報端末)
携帯情報端末100は、制御部110と、記憶部120と、操作受付部130と、表示部140と、センサ部150と、通信部190と、を備えている。これらの構成要素は、内部バスにより接続されている。携帯情報端末100は、携帯可能な端末装置であれば制限はされず、例えば、スマートフォン、タブレット、ウェアラブル端末でありうる。
【0029】
制御部110は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリを含む。制御部110は、携帯情報端末100の各種動作を制御する。記憶部120は、携帯情報端末100の各種動作に必要なプログラムやデータを記憶する。本実施形態において、記憶部120は、AED1の起動を検出して管理コンピュータ200に通知するためのプログラム121と、プログラム121において利用されうる登録情報122と、を記憶している。プログラム121は、携帯情報端末100にプリインストールされていてもよいし、アプリケーションプログラムとして配布されるものであってもよい。
【0030】
操作受付部130は、携帯情報端末100の使用者からの操作入力を受け付ける。操作受付部130は、物理ボタンやタッチパネル等により構成されうる。表示部140は、各種情報を表示する液晶型や有機EL(Electro Luminescence)型のディスプレイにより構成されうる。また、表示部140は、タッチパネルであってもよく、操作受付部130としても機能するものでもよい。
【0031】
センサ部150は、携帯情報端末100の位置情報を測位するためのセンサを含む。このようなセンサの具体例としては、GPS(Global Positioning System)センサが挙げられる。
【0032】
通信部190は、他の装置との通信を可能にするインタフェースである。通信部190は、AED1からの無線信号の規格に対応しうるインタフェースである。また、通信部190は、通信ネットワークを介して、管理コンピュータ200との通信を可能にする。
【0033】
以下、制御部110の各種動作について詳述する。制御部110は、プログラム121を読み込んで実行することにより、登録部111、検出部112、取得部113、及び送受信部114として機能する。
【0034】
登録部111は、検出の対象とするAED1を個別に識別するための第2識別情報を、登録情報122として記憶部120に記憶させる。第2識別情報は、上記の第1識別情報と同一または対応する情報である。また、登録部111は、検出の対象とするAED1の個別情報、携帯情報端末100の個別情報、携帯情報端末100の使用者の個別情報を、登録情報122として記憶部120に記憶させてもよい。ここで、「個別情報」とは、例えば、型番や端末識別番号、携帯情報端末100の使用者の個人情報などである。
【0035】
検出部112は、AED1が起動したことに応じて検出可能になる上記のような無線信号の有無に基づいて、起動状態にあるAED1の有無を検出する。検出部112は、上述のような無線信号を検出した場合に、起動状態にあるAED1が有ると判定する。
【0036】
無線通信部90が無線LANモジュールに対応するものである場合、検出部112は、無線通信部90から発せられる電波ビーコンに含まれるSSID等を検出する。無線通信部90がBluetoothモジュールに対応するものである場合、検出部112は、無線通信部90から発せられる電波ビーコンに含まれるAED1の識別子等を検出する。また、無線信号が音や光による信号である場合、検出部112は、予め設定された特定の信号の有無を検出する。
【0037】
検出部112は、検出した第1識別情報と、登録情報122に登録された第2識別情報とを照合することにより、特定のAED1のみを検出することが可能である。検出部112が検出動作を実行する時間間隔は、携帯情報端末100の使用者によって、任意に設定可能であることが好ましい、検出部112は、例えば、30秒間隔、1分間隔、5分間隔、10分間隔等の所定の時間間隔で、無線信号の有無を検出する。
【0038】
取得部113は、検出部112によって起動状態にあるAED1が検出された場合に、携帯情報端末100の位置情報を取得する。位置情報の取得は、センサ部150に含まれるGPSセンサ等を利用して行われる。また、取得部113は、検出部112によって起動状態にあるAED1が検出された場合に、登録情報122に記憶されている個別情報を取得してもよい。
【0039】
送受信部114は、他の装置との間での情報の送受信を行う。送受信部114は、通信部190を介して、AED1からの上述の無線信号を受信する。また、送受信部114は、要救助者の心電図データ等の生体情報や、セルフテストの結果を受信しうる。
【0040】
また、送受信部114は、検出部112によって起動状態にあるAED1が検出された場合に、AED1の起動を通知する通知情報を管理コンピュータ200に送信する。通知情報には、取得部113によって取得された位置情報および/または個別情報が含まれていてもよい。また、送受信部114は、管理コンピュータ200からの情報を受信しうる。送信先となる管理コンピュータ200は、携帯情報端末100の操作受付部130を介して明示的に設定できても構わない。
【0041】
(管理コンピュータ)
管理コンピュータ200は、制御部210と、記憶部220と、操作受付部230と、表示部240と、通信部290と、を備えている。これらの構成要素は、内部バスにより接続されている。管理コンピュータ200は、1以上の携帯情報端末100から送信される情報を管理するコンピュータである。
【0042】
制御部210は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリを含む。制御部210は、管理コンピュータ200の各種動作を制御する。制御部210は、送受信部214としても機能する。送受信部214は、携帯情報端末100及びコンピュータ装置300との間で、各種情報の送受信を行う。具体的には、送受信部214は、送受信部114から送信された通知情報(位置情報や個別情報を含みうる)や、要救助者の生体情報、セルフテストの結果に関する情報を受信する。また、送受信部214は、必要に応じて、コンピュータ装置300へ所定の情報を送信する。当該所定の情報には、例えば、要救助者の生体情報や、通知情報として受信した位置情報が含まれていてもよい。
【0043】
記憶部220は、管理コンピュータ200の各種動作に必要なプログラムやデータを記憶する。操作受付部230は、管理コンピュータ200の使用者からの操作入力を受け付ける。表示部240は、各種情報を表示する液晶型や有機EL型のディスプレイにより構成されうる。また、表示部240は、タッチパネルであってもよく、操作受付部230としても機能するものでもよい。通信部290は、他の装置との通信を可能にするインタフェースである。通信部290は、通信ネットワークを介して、携帯情報端末100およびコンピュータ装置300との通信を可能にする。
【0044】
(コンピュータ装置)
コンピュータ装置300は、制御部310と、記憶部320と、操作受付部330と、表示部340と、通信部390と、を備えている。これらの構成要素は、内部バスにより接続されている。コンピュータ装置300は、例えば、病院等の医療現場に設置されるコンピュータである。
【0045】
制御部310は、CPU等のプロセッサ、ROMやRAM等のメモリを含む。制御部310は、コンピュータ装置300の各種動作を制御する。制御部310は、送受信部314としても機能する。送受信部314は、管理コンピュータ200との間で、各種情報の送受信を行う。具体的には、送受信部314は、送受信部214から送信された所定の情報を受信する。また、送受信部314は、必要に応じて、管理コンピュータ200へ情報を送信しうる。
【0046】
記憶部320は、コンピュータ装置300の各種動作に必要なプログラムやデータを記憶する。操作受付部330は、コンピュータ装置300の使用者からの操作入力を受け付ける。表示部340は、各種情報を表示する液晶型や有機EL型のディスプレイにより構成されうる。また、表示部340は、タッチパネルであってもよく、操作受付部330としても機能するものでもよい。通信部390は、他の装置との通信を可能にするインタフェースである。通信部290は、通信ネットワークを介して、コンピュータ装置300との通信を可能にする。
【0047】
[システムの動作例]
以下、システム400の動作例について説明をする。図2は、システム400の動作例を示す概念図である。図2に示すシステム400は、AED1A~1D(まとめて「AED1」とも称する)と、携帯情報端末100と、管理コンピュータ200と、コンピュータ装置300と、を含んでいる。
【0048】
システム400の利用者は、特に制限はされないが、以下では、スポーツイベントの運営者がシステム400の利用者である場合を例示して説明をする。本例では、管理コンピュータ200は、スポーツイベントの救急本部等に設置されうる。また、携帯情報端末100の使用者は、スポーツイベントにおいて任意の場所に配置される救急スタッフであり、携帯情報端末100は、救急スタッフが所持するスマートフォンでありうる。また、一部の救急スタッフは、携帯型のAED1を所持し、AED1の使用者Uとなりうる。AED1の使用者Uと、携帯情報端末100の使用者は、同一人物になりうる。
【0049】
図2の例では、使用者Uが要救助者Pを助けるためにAED1Aを起動している。この状態において、AED1Aは、上述のような無線信号を周囲に発している。携帯情報端末100は、設定された時間間隔にて、携帯情報端末100の周囲において起動しているAED1を検出する。
【0050】
図2の例では、表示部140に示されているとおり、検出間隔は1分である。表示部140はタッチパネルであり、表示部140をタッチすることで、検出間隔は変更できる。なお、表示部140において「AED電源チェック」と示された箇所の右側の操作子を操作することで、AED1の検出を停止することも可能である。
【0051】
携帯情報端末100によってAED1の検出が可能な範囲は、AED1から発せられる無線信号が届く範囲である。無線信号が無線LANによる電波ビーコンである場合、無線信号が届く範囲は、例えば、AED1から半径100m程度である。また、無線信号がBluetoothによる電波ビーコンである場合、無線信号が届く範囲は、例えば、AED1から半径10m程度である。
【0052】
図2の例では、携帯情報端末100が無線信号を検出することが可能な範囲にAED1Aが存在する。よって、携帯情報端末100は、AED1Aが起動していることを検出する。なお、この段階においては、携帯情報端末100が無線信号を検出するのみであり、AED1Aと携帯情報端末100との間の通信接続は確立されない。AED1Aと携帯情報端末100との間の通信接続は、例えば、AED1Aが一連の救命動作を完了した後等の所定のタイミングで確立されうる。
【0053】
携帯情報端末100が無線信号を検出可能な範囲には、AED1B~1Dも存在する。しかし、AED1B~1Dは起動しておらず、無線信号を発していないため、検出されない。また、携帯情報端末100が登録情報122に登録された第2識別情報に対応する特定のAED1のみを検出するように設定されている場合であって、AED1B~AED1Dが検出対象として設定されていない場合、AED1B~1Dが起動していたとしても、携帯情報端末100はそれらの起動を検出しない。
【0054】
携帯情報端末100は、AED1Aの起動を検出すると、携帯情報端末100に備えられたGPSセンサを用いて、携帯情報端末100の位置情報を取得する。また、携帯情報端末100は、当該位置情報を含む通知情報を管理コンピュータ200に送信する。
【0055】
管理コンピュータ200は、通知情報を受信する。管理コンピュータ200は、通知情報を受信すると、救急本部等にいるスタッフ等に通知情報を受信したことを報知しうる。また、表示部240には、当該スタッフの操作入力等に応じて、通知情報に含まれる位置情報が示す位置242と、位置242の周囲の地図241が表示される。管理コンピュータ200は、必要に応じて、AED1Aの起動を通知する通知情報や上記の位置情報をコンピュータ装置300へ送信する。
【0056】
また、AED1Aが一連の救命動作を完了した後の所定のタイミングで、AED1Aは、救助者Pの心電図データ等の生体情報を携帯情報端末100へ送信する。携帯情報端末は、受信した生体情報を管理コンピュータ200へ送信する。また、管理コンピュータ200は、必要に応じて、受信した生体情報をコンピュータ装置300へ送信する。
【0057】
次に、フローチャートを用いて、システム400における携帯情報端末100及び管理コンピュータ200の動作例について詳述する。図3及び図4は、システム400において実行される動作処理の一例を示すフローチャートである。なお、図3及び図4に示される各種処理は、矛盾の生じない範囲で、順番を入れ替えてもよく、並列的に実行されてもよい。
【0058】
まず、図3のフローチャートについて説明する。図3のフローチャートは、AED1の検出に係る動作処理を示している。まず、携帯情報端末100は、検出対象とするAED1の第2識別情報を携帯情報端末100に登録する(ステップS101)。ステップS101では、第2識別情報に代えて、あるいは加えて、AED1の個別情報や、携帯情報端末100の個別情報、携帯情報端末100の使用者の個別情報を、携帯情報端末100に登録してもよい。第2識別情報や個別情報は、登録情報122として記憶部120に記憶される。
【0059】
携帯情報端末100は、AED1の無線信号を検出する間隔を設定する(ステップS102)。また、ステップS102では、携帯情報端末100の検出対象を設定してもよい。具体的には、登録情報122に登録された第2識別情報や個別情報に対応するAED1のうちの1以上を検出対象として設定してもよい。なお、検出対象を個別に設定しない場合、プログラム121によって検出されうる全てのAED1が検出対象となりうる。
【0060】
ステップS101及びS102は、携帯情報端末100の使用者が必要と判断した場合等にのみ、当該使用者の操作入力に基づいて実行されればよい。
【0061】
携帯情報端末100は、起動中のAED1が発する無線信号の有無に基づいて、起動しているAED1の有無を検出する(ステップS103)。検出対象であるAED1の起動が検出されなかった場合(ステップS104においてNO)、ステップS102で設定された時間間隔にて、ステップS103が繰り返される。
【0062】
検出対象であるAED1の起動が検出された場合(ステップS104においてYES)、携帯情報端末100は、所定の情報を取得する(ステップS105)。ステップS105で取得される所定の情報は、携帯情報端末100の位置情報、及び/又は、登録情報122として記憶されている個別情報等でありうる。なお、ステップS105は実行されることが好ましいが、システム400において必須の動作処理ではない。
【0063】
携帯情報端末100は、AED1の起動を通知する通知情報を管理コンピュータに送信する(ステップS106)。通知情報には、ステップS105で取得した位置情報や個別情報等が含まれることが好ましい。
【0064】
ここで、ステップS104~S106が実行される間において、携帯情報端末100とAED1との間で通信接続は確立されない。ステップS104~S106が実行される間において、例えば、携帯情報端末100とAED1との間でポーリング等は実行されず、携帯情報端末100側が一方的に無線信号を検出するのみである。
【0065】
管理コンピュータ200は、ステップS106において送信された通知情報を受信する(ステップS107)。次に、管理コンピュータ200は、AED1の起動を通知する情報や携帯情報端末100の位置情報を、コンピュータ装置300へ送信し(ステップS108)、終了する。ステップS108は、管理コンピュータ200の使用者が必要と判断した場合等にのみ、当該使用者の操作入力に基づいて実行されるものでもよい。
【0066】
次に、図4のフローチャートについて説明する。図4のフローチャートは、主に、AED1が一連の救助動作を完了した後や、セルフテストを完了した後の動作処理を示している。
【0067】
携帯情報端末100は、AED1との通信接続を確立する(ステップS111)。ステップS111では、例えば、ポーリング等による認証が実行され、AED1と携帯情報端末100との間でデータの送受信が可能な状態になる。
【0068】
次に、携帯情報端末100は、AED1が救命動作によって取得した救助データをAED1から受信する(ステップS112)。ステップS112で受信する救助データは、例えば、要救助者の心電図データ等の生体情報である。また、AED1がセルフテストを完了した後である場合、ステップS112では、セルフテストの結果を受信する。
【0069】
次に、携帯情報端末100は、ステップS112で取得した救助データ又はセルフテストの結果を、管理コンピュータ200へ送信する(ステップS113)。次に、管理コンピュータ200は、ステップS113にて送信された情報を受信する(ステップS114)。
【0070】
次に、管理コンピュータ200は、ステップS114で取得した情報をコンピュータ装置300へ送信する(ステップS115)。なお、ステップS114で取得した情報がセルフテストの結果であった場合、ステップS115は実行されなくてもよい。また、ステップS115は、管理コンピュータ200の使用者が必要と判断した場合等にのみ、当該使用者の操作入力に基づいて実行されるものでもよい。
【0071】
続いて、本実施形態に係るシステム400又はシステム400に含まれる各構成により得られる効果について説明する。
【0072】
携帯情報端末100は、AED1からの無線信号を検出することで、起動中のAED1と通信接続を確立せずに、管理コンピュータ200へAED1の起動を通知する。すなわち、起動中のAED1と携帯情報端末100とで通信接続しないことによってAED1の負荷を軽減しつつも、AED1が起動したことをより確実に管理者等へ連絡することができる。
【0073】
また、携帯情報端末100の位置情報に基づいてAED1が起動されている凡その位置を確認することができるため、管理コンピュータ200の使用者やコンピュータ装置300の使用者の側で、救命活動のサポートがし易くなる。
【0074】
また、AED1の位置情報を取得するのではなく、携帯情報端末100の位置情報を取得する構成としているため、AED1にGPSセンサを搭載する必要がなく、AED1側のバッテリ消費や製造コストを抑えることができる。また、携帯情報端末100がその使用地域に応じた位置情報の取得に対応すれば、AED1側で位置情報に関する追加実装を必要としない。すなわち、AED1が単一機種であっても、様々な地域に応じた位置情報の取得を実現することができる。
【0075】
また、携帯情報端末100は、管理コンピュータ200へ個別情報を送信するため、AED1や、携帯情報端末100、携帯情報端末100の使用者に関する個別情報を管理コンピュータ200の使用者の側で知ることができる。その結果、管理コンピュータ200の使用者は、救命活動のサポートがし易くなる。例えば、個別情報に携帯情報端末100の電話番号等の連絡先が含まれている場合、携帯情報端末100の使用者に連絡して適切な指示をすることも可能になる。
【0076】
また、AED1は、一連の救命動作が終わった後などの所定のタイミングにおいて、要救助者の心電図データ等の生体情報を携帯情報端末へ送信し、携帯情報端末100はAED1から受信した生体情報を管理コンピュータ200へ送信する。その結果、要救助者に更なる緊急処置が必要かどうか等の判断が可能になり、管理コンピュータ200の使用者の側で救助活動へのサポートがし易くなる。また、管理コンピュータ200の使用者は、必要に応じて、病院等に設置されたコンピュータ装置300へ生体情報を送信することができるので、病院等において適切かつ迅速な対応がし易くなる。
【0077】
また、携帯情報端末100は、特定のAED1のみを検出対象として設定することができるため、管理コンピュータ200の使用者が管理していないAED1に関する起動が当該使用者側へ通知され、当該使用者の側で混乱が生じるというような事態を防止できる。また、検出対象を適宜設定することにより、管理コンピュータ200の使用者等が複数の救急スタッフを組織して救助体制を敷くような場合において、適切な救助体制を構築し易くなる。
【0078】
また、AED1を検出する時間間隔を携帯情報端末100の使用者側で設定できることにより、例えば、救助体制の規模や当該使用者の役割、携帯情報端末100のバッテリ残量等に応じて適切な検出間隔を選択することが可能である。
【0079】
また、AED1の無線通信部90が無線LAN規格またはBluetooth規格に対応する場合、これらの規格に沿ったビーコンが無線信号として発せられるため、AED1を検出することが容易になる。また、無線通信部90が無線LAN規格に対応する場合、携帯情報端末100から半径100m程度といった比較的広い範囲内でAED1を検出することができる。一方で、無線通信部90がBluetooth規格に対応する場合、携帯情報端末100から半径10m程度が検出範囲内になるため、AED1の位置と携帯情報端末100の位置情報が示す位置との差が少なくなり、AED1の起動位置をより正確に知ることができる。
【0080】
上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするための例示にすぎない。上記の実施形態に係る構成は、本発明の趣旨を逸脱しなければ、適宜に変更・改良されうる。
【符号の説明】
【0081】
1:自動体外式除細動器(AED)
10:制御部(無線通信モジュール)
100:携帯情報端末
110:制御部(プロセッサ)
120:記憶部
121:プログラム
200:管理コンピュータ
300:コンピュータ装置
400:システム
図1
図2
図3
図4