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  • 特許-常時換気レインコート 図1
  • 特許-常時換気レインコート 図2
  • 特許-常時換気レインコート 図3
  • 特許-常時換気レインコート 図4
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】常時換気レインコート
(51)【国際特許分類】
   A41D 3/04 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
A41D3/04 N
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2020118075
(22)【出願日】2020-06-15
(65)【公開番号】P2021195708
(43)【公開日】2021-12-27
【審査請求日】2020-07-28
【審判番号】
【審判請求日】2022-03-22
【権利譲渡・実施許諾】特許権者において、実施許諾の用意がある。
(73)【特許権者】
【識別番号】595078932
【氏名又は名称】小寺 勝基
(72)【発明者】
【氏名】小寺 勝基
【合議体】
【審判長】井上 茂夫
【審判官】▲高▼橋 杏子
【審判官】藤原 直欣
(56)【参考文献】
【文献】特開2011-94289(JP,A)
【文献】実開平4-81913(JP,U)
【文献】実開昭59-185204(JP,U)
【文献】特開2012-255242(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A41D3/04
(57)【特許請求の範囲】
【請求項4】
請求項1の胴体部分のレインコート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、長時間着用時にレインコートの内側に滞留する高温高湿な空気の換気に関するものである。
【背景技術】
【0002】
防水を施した通気穴をあける技術は防水と充分な通気の両立が課題であるが、相反する要求であるため同時に解決することの実現は困難である。
【0003】
レインコートを着用した人が移動するときに発生する気流を換気に利用する技術は、停止時に作動しない上に気流と共に降雨が混入するのを防ぐ手段は[0002]より困難である。
【0004】
通気素材を使用する技術は雨水が滲み込みにくい通常の薄手の長袖上着を着用する感覚で、激しい動作をしなければほぼ快適であるが、1枚余分に着ることに変わりはなく、体に側した空気を概ね遮るので、通気素材の性能の限界を超えると蒸し暑くなる上に価格が比較的高価である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
長時間着用する時、レインコートは人体に側する空気の流れを遮るので、冬季を除けば蒸し暑く雨で濡れなくても汗で着衣が濡れる欠点があり、これを緩和する技術は多様に知られているが、現状は防水性能と充分な換気性能を安価で両立させるには至っていない。
【課題を解決するための手段】
【0006】
周囲と比較して暖められた空気は上昇し、レインコート地に降りかかる雨水は足元へと流れ落ちる自然の力を利用する。
【0007】
日本古民家の屋根にみられる煙を排出する構造に着目し発案に至る。
【0008】
レインコートに換気口を設けるには、ひとつながりの形状では困難であり、袖と胴体部分を独立する構造に変更して着用し、肩口の重ねしろに出来る隙間を換気口として活用することで課題を解決する。
【0009】
比較的安価な材料を用いて確実な防水性能と充分な換気性能を両立出来る。
【0010】
[0008]より市販の簡易レインコートLサイズ1着とLLサイズ1着の計2着を加工して組み合わせることで実現出来る。
【0011】
サイズの違いには換気口を容易に設置できると同時に、レインコートが体にまとわりつくことを緩和する効果が期待出来る。
【0012】
[0009]に記述のレインコートは説明を明解にするため、袖部分と胴体部分を独立して使用する。
【0013】
Lサイズのレインコートを袖部分として使用する。
【0014】
LLサイズのレインコートを胴体部分として使用する。
【0015】
[0013]よりLサイズのレインコートはフードを切除する。
【0016】
[0015]に換気口の機能の維持向上を主な目的として逆U字形状の形状保持材を装着する(図1)。
【0017】
[0016]の装着方法は、接合、接着、嵌合、溶着、スナップ留め又はこれに類する手段を用いるが、全て目的の趣旨に沿ったものとする。
【0018】
[0016]の材料は素材に体を傷付けない柔らかさがありながらも、形状を保持できる剛性を備えた市販の軟質プラスチック及び塩化ビニール等で作られた水撒きホースを用いる。
【0019】
[0016]の直径は20ミリメートル程で長さは体の動きの妨げとならないことを旨とする。
【0020】
[0016]には自然な着用体型に資するため、破線構造またはこれに類する適当なスリットを開ける。
【0021】
[0016]を装着する位置は、肩上部における動作の妨げとならないことを旨とする。
【0022】
[0016][0021]は肩上部に片側に2箇所で100ミリメートル程度間隔を空けて逆U字の両端を下向きにする(図1)。
【0023】
[0016]はレインコート地を表面と裏面から挟む形で着用時のレインコートの形状に合わせる。
【0024】
[0016]は1つの逆U字形状に対し表裏計2本の形状保持材が必要となり、前見頃と後見頃の肩上断面はレインコート地を挟んで8の字になる(図2 A-B断面)。
【0025】
[0013][0015]よりレインコートの両脇の下部表側に肩口より流入する雨水を受ける漏斗の役目をする開口部と、開口部に接続して左右の体側面に足元方向へ雨水を流す水路を併設する(図1-E)。
【0026】
[0025]の素材は、レインコート地と同等の性能を有するものを使用する。
【0027】
[0025]はレインコート表面を流れる雨水の処理を主なる目的とするので、開口部の下側はやわらかい芯材などを補助に用いて雨水が流れ込む様にやや立体的に加工する。
【0028】
[0025]は人体を真横から見て袖の取付部分の幅よりも広く液体を受け流す時の横から見た漏斗の形に似せた開口部を設ける。
【0029】
[0025]の装着には、レインコート地と密着する工法を用いる。
【0030】
[0025]の水路の幅は、後述の胴体部分に通気加工を施すので機能の妨げにならない範囲でなるべく細い形状となるようにして裾までの長さとする。
【0031】
Lサイズのレインコートの袖に続く胴体部分には、Lサイズのレインコートが負担する機能の妨げとならない限界までの範囲で穴をあけるなど、これに類する方法で最大限の通気を確保する(図4-F)。
【0032】
[0031]は袖の取付部分より体の中心に向けて繋がる約60ミリメートル程は、雨水を受け流す部分に該当するので、これにはレインコート地に防水機能を残しておく(図4-G)。
【0033】
[0014]より、LLサイズのレインコートは、袖の部分を脇の下から袖口方向に袖の上腕上部へ角度をつけて、上広がりで切除する。
【0034】
[0033]の角度は、袖の胴への取付部を基準として30度程度が防水性及び一般的なレインコートの外観を保つ上で有効である。
【0035】
[0015]に対して着用時の形態をなす時に、接触が起こり得る位置に1本を含む複数本の形状保持材をレインコート地の裏面に装着する(図3)。
【0036】
[0035]にて使用する材料は[0017]に準する。
【0037】
[0035]の装着方法は、[0016]に準ずる。
【0038】
[0035]を装着する位置は、レインコート地の逆U字形状を確保し換気口の機能の維持向上に資する目的を有する。
【0039】
[0035]の位置は首元から袖方向に逆U字形状の形状保持材と直角に積み重なる様に装着する。
【0040】
[0035]の長さは切除した袖部分の端より30ミリメートル短い程度が形状保持材を濡らさずに保つことが期待できる(図3-ロ)。
【0041】
[0035]は間隔を50ミリメートル程空ける。
【0042】
[0033]より、強い雨や風で斜めに降る雨等の荒天時は、切除で袖の取付部に設けた開口部のレインコート地の裏側に雨粒や霧状の雨水が回り込むので水切りを装着し伝い流れる雨水を開口部より排出する(図4-ハ)。
【0043】
[0042]の素材は突起形状を保持するのに有効であり、体に傷をつけない柔らかい軟質ビニール及び塩化ビニール系の形状復元力のある厚手のシート等から応用のものでよい。
【0044】
[0042]の形状は、装着した時に、体の中心より外に広がる三角形状で袖を切除した開口部より下端が下向きに突出する。
【0045】
[0042]を装着する位置は1辺のみをレインコートの裏側に開口部の半分より下側に幅の細い方を斜め上に向けて装着する。
【0046】
[0042]は密着する方法で装着する。
【0047】
[0042]は片側の前見頃と後見頃のそれぞれに1箇所ずつ装着する。
【発明の効果】
【0048】
人体に日本古民家の茅葺き妻空き入母屋の屋根を搭載する着眼により発案した換気口は、囲炉裏の煙が自然に排出される仕組みに倣い、高温高湿な空気はレインコート経由で内側を上昇して形状保持材による空気の流路確保の機能向上効果が加わり、肩口の換気口より常時排出されるのでレインコートの内部は外部の空気と同等程度の状態を保つことが出来る。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1図1は右肩部の見取図である。
図2図2は右肩部の断面図である。
図3図3図1に組み合わせる形状保持材の見取図である。
図4図4は着用時における全体見取図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
[0013][0015]~[0037]のLサイズレインコートを着用後、重ねて[0014][0033]~[0047]のLLサイズレインコートを着用する。
【実施例
【0051】
重ねて着用する構造だが、実質1着を使用した時と大差はなく換気口の形状も崩れない。
【0052】
重ねて着用することで換気口が設けられる仕組みであり、隙間は袖の周囲を窄めるなどサイズの調整で調節が出来る。
【0053】
防水性はLLサイズのレインコートがほぼ全体の防水を果たし、Lサイズのレインコートが袖と肩周りを担当するので換気口には着衣の露出が見られず完全に目的を果たしている。
【0054】
袖部分と胴体部分に設けた換気口の防水は、形状保持材が建物の屋根にみられる骨組みに相当する効果を担い、レインコート地を防水に資する形状に保ち、僅かに流れ入る雨水も水切りの効果と共に重なり部分の袖に伝い流れて脇下部の流水路にて体側面の足元に排出される。
【0055】
激しい雷雨や外出が危ぶまれる程の嵐を除いて、雨天における余程の不自然な体勢を取り続けなければ換気口からの雨水による着衣の浸潤はない。
【0056】
長時間着用すると胸から背中、両肩あたりに通常は滞留する蒸し暑い空気が常時換気されているので、着用直後の着心地が続く。
【0057】
レインコートを着用しなくても激しい動作などで汗をかいたなら着衣は濡れるので、レインコート着用時の激しい動作による発汗は本発明の想定の範囲に含まない。
【産業上の利用可能性】
【0058】
長時間の着用における快適なレインコートを比較的安価にて提供出来る。
【符号の説明】
【0059】
A 右肩
B 襟元
C 逆U字型形状保持材下側
D 逆U字型形状保持材上側
E 受水口
F 通気穴
G 穴を空けない場所
イ 袖に繋がるレインコート地
ロ 形状保持材
ハ 水切り
【追記】
【0060】
レインコートはレインスーツと雨合羽を含むものとする。
【0061】
明細書における本発明の説明は、全てを記入したならば多くの非生産な事態を招く恐れがあり、これを回避するための手段として1例を示したもので、本発明に由来する装備の拡充、追加、その他容易に発案を得うる考案についても本発明の権利の及ぶ範囲に含まれる。
図1
図2
図3
図4