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特許7486366駆け込み搭乗の抑制システムおよび駆け込み搭乗の抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】駆け込み搭乗の抑制システムおよび駆け込み搭乗の抑制方法
(51)【国際特許分類】
   B61L 25/02 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
B61L25/02 Z
【請求項の数】 15
(21)【出願番号】P 2020119981
(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公開番号】P2022016963
(43)【公開日】2022-01-25
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000001133
【氏名又は名称】株式会社小糸製作所
(74)【代理人】
【識別番号】110001416
【氏名又は名称】弁理士法人信栄事務所
(72)【発明者】
【氏名】綿野 裕一
(72)【発明者】
【氏名】望月 清隆
(72)【発明者】
【氏名】田村 例人
(72)【発明者】
【氏名】竹田 新
【審査官】岩田 健一
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-214023(JP,A)
【文献】特開2012-076921(JP,A)
【文献】特開2010-083378(JP,A)
【文献】特開2011-235993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B61L 25/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
搭乗可能な移動体または乗降エリアに設置される画像形成装置を有する、駆け込み搭乗を抑制するための抑制システムであって、
前記画像形成装置は少なくとも、前記移動体への搭乗可能状態を示す搭乗合図と、前記搭乗可能状態が終了したこと示す拒否合図とを前記乗降エリアに表示可能な描画部と、
前記描画部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は前記描画部に、前記移動体の乗降口の閉鎖完了より前に、前記搭乗合図から前記拒否合図への表示の変更を完了させ、
前記描画部は、停車した前記移動体のドアと搭乗待ちの最前列の乗客との間の駅のホームの前記乗降エリアの上に、前記搭乗合図と前記拒否合図とを表示可能に構成されている、駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項2】
搭乗可能な移動体または乗降エリアに設置される画像形成装置を有する、駆け込み搭乗を抑制するための抑制システムであって、
前記画像形成装置は少なくとも、前記移動体への搭乗可能状態を示す搭乗合図と、前記搭乗可能状態が終了したこと示す拒否合図とを前記乗降エリアに表示可能な描画部と、
前記描画部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は前記描画部に、前記移動体の乗降口の閉鎖完了より前に、前記搭乗合図から前記拒否合図への表示の変更を完了させ、
前記抑制システムは、前記移動体としての電車への駆け込み乗車を抑制するものであり、
駅の構内に設置され、発車メロディを放送させる信号を受信したときに拒否開始信号を発信する放送検出部を有し、
前記制御部は、前記放送検出部が発信する前記拒否開始信号を受信したときに、前記描画部に前記拒否合図を開始させる、駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項3】
搭乗可能な移動体または乗降エリアに設置される画像形成装置を有する、駆け込み搭乗を抑制するための抑制システムであって、
前記画像形成装置は少なくとも、前記移動体への搭乗可能状態を示す搭乗合図と、前記搭乗可能状態が終了したこと示す拒否合図とを前記乗降エリアに表示可能な描画部と、
前記描画部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は前記描画部に、前記移動体の乗降口の閉鎖完了より前に、前記搭乗合図から前記拒否合図への表示の変更を完了させ、
前記搭乗合図は前記乗降口を全開にしたときの開放幅以上の離間幅で隔てられた二条の帯状に光が照射される表示であり、
前記拒否合図は前記乗降口を完全に閉じたときの前記乗降口の中央付近に延びる一条の帯状に光が照射される表示であり、
前記制御部は前記描画部に、前記搭乗合図における前記離間幅を徐々に狭めて前記拒否合図に変更させる、駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項4】
前記制御部は前記描画部に、前記拒否合図の表示を少なくとも前記移動体が動き出すまで維持させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項5】
前記制御部は前記描画部に、少なくとも前記移動体の前記乗降口が完全に開いている時に前記搭乗合図を表示させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項6】
前記抑制システムは、前記移動体に設けられ、前記移動体の前記乗降口を閉鎖させる閉鎖信号を受信したときに拒否開始信号を発信するドアセンサを有し、
前記制御部は、前記ドアセンサが発信する前記拒否開始信号を受信したときに、前記描画部に前記拒否合図を開始させる、請求項1または3に記載の駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項7】
前記抑制システムは、前記移動体としての電車への駆け込み乗車を抑制するものであり、
乗客の搭乗完了を示す駅員の笛または駅で放送される発車メロディを識別したときに拒否開始信号を発信する音識別部を有し、
前記制御部は、前記音識別部が発信する前記拒否開始信号を受信したときに、前記描画部に前記拒否合図を開始させる、請求項1または3に記載の駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項8】
前記抑制システムは、前記移動体としての電車への駆け込み乗車を抑制するものであり、
前記画像形成装置は、ームの天井または庇に設けられ、前記ホームに光を投影して前記搭乗合図および前記拒否合図を表示する、請求項1から3のいずれか一項に記載の駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項9】
前記画像形成装置は、前記移動体の側面に設けられ、前記乗降エリアに光を投影して前記搭乗合図および前記拒否合図を表示する、請求項1から3のいずれか一項に記載の駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項10】
前記画像形成装置は、前記乗降エリアに面一の画面を有し、前記画面に前記搭乗合図および前記拒否合図を表示する、請求項1から3のいずれか一項に記載の駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項11】
前記搭乗合図と前記拒否合図は、描画面積、描画色、描画形状、描画領域の点滅周期、描画する文字の少なくとも一つが異なる、請求項1から3のいずれか一項に記載の駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項12】
前記制御部は前記描画部に、前記搭乗合図から前記拒否合図へ変更させる間に注意喚起合図を表示させる、請求項1から3のいずれか一項に記載の駆け込み搭乗の抑制システム。
【請求項13】
画像形成装置を用いた駆け込み搭乗の抑制方法であって、
前記画像形成装置は少なくとも、搭乗可能な移動体への搭乗可能状態を示す搭乗合図と、前記搭乗可能状態が終了したこと示す拒否合図とを乗降エリアに表示可能であって、
前記移動体の乗降口の閉鎖完了より前に、前記画像形成装置による表示を前記搭乗合図から前記拒否合図への表示の変更を完了させ
停車した前記移動体のドアと搭乗待ちの最前列の乗客との間の駅のホームの前記乗降エリアの上に、前記搭乗合図と前記拒否合図とが表示可能である、駆け込み搭乗の抑制方法。
【請求項14】
画像形成装置を用いた駆け込み搭乗の抑制方法であって、
前記画像形成装置は少なくとも、搭乗可能な移動体への搭乗可能状態を示す搭乗合図と、前記搭乗可能状態が終了したこと示す拒否合図とを乗降エリアに表示可能であって、
前記移動体の乗降口の閉鎖完了より前に、前記画像形成装置による表示を前記搭乗合図から前記拒否合図への表示の変更を完了させ、
前記抑制方法は、前記移動体としての電車への駆け込み乗車を抑制するものであり、
駅の構内に設置された放送検出部は、発車メロディを放送させる信号を受信したときに拒否開始信号を発信し、
前記放送検出部が前記拒否開始信号を発信したときに、前記拒否合図が開始される、駆け込み搭乗の抑制方法。
【請求項15】
画像形成装置を用いた駆け込み搭乗の抑制方法であって、
前記画像形成装置は少なくとも、搭乗可能な移動体への搭乗可能状態を示す搭乗合図と、前記搭乗可能状態が終了したこと示す拒否合図とを乗降エリアに表示可能であって、
前記移動体の乗降口の閉鎖完了より前に、前記画像形成装置による表示を前記搭乗合図から前記拒否合図への表示の変更を完了させ、
前記搭乗合図は前記乗降口を全開にしたときの開放幅以上の離間幅で隔てられた二条の帯状に光が照射される表示であり、
前記拒否合図は前記乗降口を完全に閉じたときの前記乗降口の中央付近に延びる一条の帯状に光が照射される表示であり、
前記搭乗合図における前記離間幅を徐々に狭めて前記拒否合図に変更させる、駆け込み搭乗の抑制方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、駆け込み搭乗の抑制システムおよび駆け込み搭乗の抑制方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電車などの駆け込み乗車(駆け込み搭乗)は、駆け込む人が危険なだけでなく、電車を遅延させるなど大きな問題である。しかしながら、これまで駆け込み乗車を抑制させる取り組みとしては、駅や車内での放送やポスターなど、限られた対策しか行われていなかった。
あるいは特許文献1などにより、ホームドアを設けることで駆け込み乗車を抑制しようとする試みが提案されているが、このような手法ではホームドアを設置するコストが大きい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】日本国特許3029830号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、電車に駆け込もうとする人は、自身の判断でドアの開き具合と閉じるスピードと自身の駆け込むスピードとを勘案して乗車できると判断し、電車に駆け込もうと考えるようである。しかしながら、このような判断は甘く判断されることが多い。
そこで本発明は、搭乗できない時点を明瞭に示すことによって駆け込み搭乗を抑制する駆け込み搭乗の抑制システムおよびその方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の一側面に係る駆け込み搭乗の抑制システムは、
搭乗可能な移動体または乗降エリアに設置される画像形成装置を有する、駆け込み搭乗を抑制するための抑制システムであって、
前記画像形成装置は少なくとも、前記移動体への搭乗可能状態を示す搭乗合図と、前記搭乗可能状態が終了したこと示す拒否合図とを前記乗降エリアに表示可能な描画部と、
前記描画部を制御する制御部と、を有し、
前記制御部は前記描画部に、前記移動体の乗降口の閉鎖完了より前に、前記搭乗合図から前記拒否合図への表示の変更を完了させる。
【0006】
また、上記目的を達成するために、本発明の一側面に係る駆け込み搭乗の抑制方法は、
画像形成装置を用いた駆け込み搭乗の抑制方法であって、
前記画像形成装置は少なくとも、搭乗可能な移動体への搭乗可能状態を示す搭乗合図と、前記搭乗可能状態が終了したこと示す拒否合図とを乗降エリアに表示可能であって、
前記移動体の乗降口の閉鎖完了より前に、前記画像形成装置による表示を前記搭乗合図から前記拒否合図への表示の変更を完了させる。
【0007】
上記駆け込み搭乗の抑制システムおよび方法は、移動体の乗降口の閉鎖完了より前に、描画部による搭乗合図から拒否合図への表示の変更を完了させる。つまり乗降口の閉鎖完了よりも前に拒否合図に切り替わっており、乗降口が閉まる時には既に拒否合図に切り替わっているので、乗降口が閉まる直前の危険なタイミングで駆け込もうとする人物に駆け込み搭乗を思いとどまらせることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、乗車できない時点を明瞭に示すことによって駆け込み搭乗を抑制する駆け込み搭乗の抑制システムおよびその方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の第一実施形態に係る駆け込み搭乗の抑制システムが設置された駅を示す図である。
図2】本発明の第一実施形態に係る駆け込み搭乗の抑制システムのブロック図である。
図3】ホームおよび電車でのイベントと合図の変化を示すタイムチャートである。
図4】搭乗合図から拒否合図までの変化を示す図である。
図5】本発明の第二実施形態に係る駆け込み搭乗の抑制システムが設置された駅を示す図である。
図6】本発明の第三実施形態に係る駆け込み搭乗の抑制システムが設置された駅を示す図である。
図7】本発明の第四実施形態に係るホームおよび電車でのイベントと合図の変化を示すタイムチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0010】
<第一実施形態>
本発明の第一実施形態に係る駆け込み搭乗の抑制システム1(以降、単にシステム1と呼ぶ)が設置された駅を示す図である。図1に示した例では、システム1は、駅に設置された画像形成装置10により駅のホームへ搭乗合図Bや拒否合図Cを表示し、駆け込み搭乗を抑制する。本実施形態では、搭乗可能な移動体として電車を例に挙げている。電車のドアは移動体の乗降口の一例である。なお図1においては、作図の都合上、ホーム上で電車を待っている人物Fについては足の輪郭のみを描いている。
【0011】
図2は、本実施形態に係る駆け込み搭乗の抑制システム1のブロック図である。図2に示したように、システム1は、画像形成装置10と、ドアセンサ13と、音識別部14と、放送検出部15と、カメラ16を備えている。
【0012】
画像形成装置10は、照射領域Aに、任意の画像を描画可能な装置である。図1に照射領域Aを破線で示した。画像形成装置10は、描画部11と、描画部11を制御する制御部12を有する。画像形成装置10は、ホームの天井または庇20に設けられ、ホーム(乗降エリア)に光を投影して搭乗合図Bおよび拒否合図Cを表示する。
【0013】
ドアセンサ13は、電車に設けられ、電車のドアDを閉鎖させる閉鎖信号を受信したときに拒否開始信号を制御部12へ出力する。またドアセンサ13は、電車のドアDの開放を開始させる開放開始信号を受信したとき、または、電車のドアDの開放が完了したことを示す開放完了信号を受信したときに、乗車開始信号を制御部12に出力するように構成してもよい。
【0014】
音識別部14は、乗客の乗車完了を示す駅員の笛または駅で放送される発車メロディを識別したときに拒否開始信号を制御部12へ出力する。音識別部14は、例えばマイクと、マイクで取得した電気信号を解析するマイクロプロセッサなどにより構成される。音識別部14は、電車に設けられていても、駅の構内に設けられていてもよい。
【0015】
放送検出部15は、駅の構内に設置され、発車メロディを放送させる信号を受信したときに拒否開始信号を制御部12へ出力する。放送検出部15は、例えば駅の構内の放送機器に出力される信号を取得する電子回路で構成される。
【0016】
カメラ16は、駅の構内を撮像可能であり、電車やホーム上の人物Fを撮像する。カメラ16は、撮像した画像を制御部12へ出力する。本実施形態においては、制御部12はカメラ16が取得した画像に基づき、駅の構内の所定位置に電車が停止したか否か、および、ホーム上の人物Fの乗車が完了したか否か、を判定可能に構成されている。カメラ16も、電車に設けられていても、ホームに設けられていてもよい。
【0017】
描画部11は、少なくとも、電車への搭乗可能状態を示す搭乗合図B図4の(a))と、搭乗可能状態が終了したこと示す拒否合図C図4の(c))とを駅のホームに表示可能である。例えば描画部11は、停車した電車のドアDと搭乗待ちの最前列の人物Fとの間のホーム上の照射領域A(図1)に、搭乗合図Bと拒否合図Cとを表示可能に構成することができる。これら搭乗合図Bと拒否合図Cは、描画面積、描画色、描画形状、描画領域の点滅周期、描画する文字の少なくとも一つが異なっている。例えば搭乗合図B図4の(a)に示したような画像、拒否合図C図4の(c)に示したような画像とすることができる。なお図4に示した搭乗合図Bおよび拒否合図Cは単なる一例であって、本発明はこれに限るものではない。
【0018】
図3は、ホームおよび電車でのイベントと合図の変化を示すタイムチャートである。図の左側がホームおよび電車でのイベントを示し、図の右側が表示される合図を示している。
図3に示したように、電車がホームに入線し電車が停止すると、制御部12は描画部11に搭乗合図Bを表示させる。例えば制御部12は、カメラ16が取得した画像に基づき電車がホームに入線し、電車が停止したと判定すると、描画部11に図4の(a)に示した搭乗合図Bを表示させる。
【0019】
なお搭乗合図Bを開始するタイミングは、図3とは異なり、電車のドアDを開放させるとき、あるいは、電車のドアDの開放が完了したときなどであってもよい。例えばドアセンサ13から乗車開始信号を取得したときに、制御部12は描画部11に搭乗合図Bを表示させるように構成してもよい。あるいは、カメラ16が取得した画像に基づきドアDの開放開始または開放完了を判定し、制御部12はこれらの判定結果に基づいて描画部11に搭乗合図Bを表示させるように構成してもよい。
なお制御部12は描画部11に、少なくとも電車のドアDが完全に開いている時には搭乗合図Bを表示させていることが好ましい。
【0020】
制御部12は、電車のドアDの閉鎖完了より前に、図4の(a)に示した搭乗合図Bから、図4の(c)に示した拒否合図Cへの表示の変更を完了させる。
例えば電車のドアDの閉鎖が開始されるときに、制御部12は拒否合図Cの表示を開始するように構成してもよい。具体的には、ドアセンサ13から拒否開始信号を取得したときに、制御部12が搭乗合図Bから拒否合図Cへの表示の変更を開始する。
あるいは、乗客の乗車完了を示す駅員の笛または駅で放送される発車メロディを識別したときに音識別部14から出力される拒否開始信号を取得したときに、制御部12が搭乗合図Bから拒否合図Cへの表示の変更を開始するように構成してもよい。
さらには、発車メロディが放送されるときに放送検出部15から出力される拒否開始信号を取得したときに、制御部12が搭乗合図Bから拒否合図Cへの表示の変更を開始するように構成してもよい。
【0021】
本実施形態において制御部12は、図4の(a)~(c)に示したように、搭乗合図Bを拒否合図Cへ徐々に表示態様を変更していく。
図4の(a)に示したように、搭乗合図BはドアDを全開にしたときの開放幅以上の離間幅で隔てられた二条の帯状に光が照射される表示である。例えば、搭乗合図Bは白色の光で描かれる。
図4の(c)に示したように、拒否合図CはドアDを完全に閉じたときのドアDの中央付近に延びる一条の帯状に光が照射される表示である。例えば、拒否合図Cは赤色の光で描かれる。
【0022】
図4の(b)は、搭乗合図Bから拒否合図Cへ表示を変化させるときの途中の状態を示している。本実施形態において制御部12は描画部11に、搭乗合図Bにおける離間幅を徐々に狭めて拒否合図Cに変更させている。この途中の状態は例えば白色から赤色へ徐々に光の色を変化させてもよいし、図4の(a)および(b)で白色を維持したまま図4の(c)の表示としたときに赤色に変化させてもよい。
【0023】
図3に戻り、拒否合図Cは拒否開始信号を取得した後であってドアDの閉鎖が完了する前に拒否合図Cが表示される。本実施形態では、電車のドアDを閉鎖させる閉鎖信号を受信したときにドアセンサ13から出力される拒否開始信号を取得すると、制御部12は描画部11に拒否合図Cを表示させる。本実施形態では、拒否開始信号を取得したらすぐに制御部12は描画部11に拒否合図Cを表示させる。
【0024】
このように、本システム1は、搭乗可能な移動体または乗降エリアに設置される画像形成装置10を有する、駆け込み搭乗を抑制するためのものである。
画像形成装置10は少なくとも、移動体への搭乗可能状態を示す搭乗合図と、搭乗可能状態が終了したこと示す拒否合図とを乗降エリアに表示可能な描画部11と、
描画部11を制御する制御部12と、を有し、
制御部12は描画部11に、移動体の乗降口Dの閉鎖完了より前に、搭乗合図から拒否合図への表示の変更を完了させる。
【0025】
また、本実施形態の駆け込み搭乗の抑制方法は、
画像形成装置10を用いた駆け込み搭乗の抑制方法であって、
画像形成装置10は少なくとも、搭乗可能な移動体への搭乗可能状態を示す搭乗合図と、搭乗可能状態が終了したこと示す拒否合図とを乗降エリアに表示可能であって、
移動体の乗降口Dの閉鎖完了より前に、画像形成装置10による表示を搭乗合図から拒否合図への表示の変更を完了させる。
【0026】
ところで、電車に駆け込もうとする人は、自身の判断でドアDの開き具合と閉じるスピードと自身の駆け込むスピードとを勘案して乗車できると判断し、電車に駆け込もうと考えるようである。しかしながら本来は、ドアDが閉まり始めたら電車へ乗らないことが求められる。
上述した本実施形態に係るシステム1は、電車のドアDの閉鎖完了より前に、描画部11による搭乗合図Bから拒否合図Cへの表示の変更を完了させる。つまりドアDの閉鎖完了よりも前に拒否合図Cに切り替わっており、ドアDが閉まる時には既に拒否合図Cに切り替わっているので、ドアDが閉まる直前の危険なタイミングで駆け込もうとする人物に駆け込み搭乗を思いとどまらせることができる。
【0027】
また駅員の声や放送メロディなど音によって乗車できないタイミングを知らせる従来の手法では、電車に駆け込んだ人物Fは、この音が発せられる前に乗車したなどと言い逃れをすることがある。
本システム1によれば、音ではなく、目に見える態様で乗車できないタイミングが表示される。このため、例えばカメラ16の記録などにより、人物Fが乗車した際に搭乗合図Bまたは拒否合図Cのいずれが表示されていたかを検証することができる。このため、駆け込み搭乗した人が言い逃れすることが難しくなり、駆け込み搭乗を効果的に抑止できる。
【0028】
あるいは音によって乗車できないタイミングを知らせる従来の手法では、階段を移動している途中で音を聞いたら、加速して電車に飛び乗るといった人物Fも想定され、このような人物Fへの対策として乗車できないタイミングを知らせる音を小さくしたり無くしたりするといった試みもなされている。
本システム1によれば、音ではなく、目に見える態様で乗車できないタイミングを知らせるので、階段を移動している途中の人物Fには乗車できないタイミングを知らせることがなく、階段の途中から加速して電車に飛び乗るといった行動を抑制できる。
【0029】
本実施形態において図3に示したように、制御部12は描画部11に、拒否合図Cの表示を少なくとも電車が動き出すまで維持させることが好ましい。
このような構成によれば、乗車できなくなったその瞬間だけではなく、乗車できなくなってから電車が動き出すまで、拒否合図Cが表示され続ける。このため、駆け込み搭乗をしようとしている人物Fの他にも、その周囲の人が乗車できないタイミングを把握しやすい。周囲の人物が乗車できないタイミングで乗車しようとする人物Fがいることを把握しやすく、駆け込み搭乗しようとする人に抑止力が働きやすい。
例えばカメラ16が撮像した画像に基づき電車が動き出したと判定したら、制御部12は拒否合図Cの表示を中止するように構成することができる。
【0030】
また本実施形態において、図1に示したように描画部11は、停車した電車のドアDと搭乗待ちの最前列の乗客との間のホーム上に、搭乗合図Bと拒否合図Cとを表示可能に構成されている。
搭乗合図Bおよび拒否合図Cが、搭乗待ちの最前列の乗客の足元でかつ乗ろうとするドアDの前に表示されるので、これから乗車しようとする人物Fが搭乗合図Bおよび拒否合図Cを確認しやすい。また、画像形成装置10が光をホームに投影する装置の場合、ホームに投影される光が、待機している乗客や電車などで、遮られにくい。
さらに、電車を待っている間にスマートフォンなどの携帯機器を操作している人物の視線の先に搭乗合図が表示されるので、操作に没頭している人物に乗車を促すことができる。
【0031】
なお上述した第一実施形態では、システム1がドアセンサ13と音識別部14と放送検出部15とカメラ16を備えた構成を説明したが、システム1はこれらのいずれか一つ以上を備える構成としてもよい。あるいはシステム1は、ドアセンサ13と音識別部14と放送検出部15のいずれか一つ以上と、カメラ16を備える構成としてもよい。
【0032】
<第二実施形態>
図5は、本発明の第二実施形態に係る駆け込み搭乗の抑制システム101が設置された駅を示す図である。上述した第一実施形態では、画像形成装置10がホームの庇20に設置された例を説明したが、本発明はこの例に限られない。
【0033】
図5に示したように画像形成装置110は電車の側面に設けられ、ホームに光を投影して搭乗合図Bおよび拒否合図Cを表示するように構成されていてもよい。この場合、画像形成装置110は例えば電車の側面であってドアDの近傍に設けることができる。編成の異なる車両が停車するとドアDの位置が異なる場合があり、ホームに画像形成装置110を設置した場合には都度描画領域を変更したりする必要が生じるが、電車に画像形成装置110を設ける場合には常にドアD付近に描画することができる。
【0034】
電車の側面に画像形成装置110を設ける場合には、なるべく低い位置に設けることが好ましい。例えば路面からの高さが1メートル、より好ましくは50センチメートル以内に画像形成装置110を設けることが好ましい。路面と画像形成装置110との距離が近いほど、画像形成装置110が投影する光がそれほど減衰しないうちに路面に到達するので、搭乗合図Bおよび拒否合図Cをより鮮明に描くことができる。また、画像形成装置110が投影する光が、人物Fなどによって邪魔されることなく路面に到達しやすい。
【0035】
<第三実施形態>
あるいは図6の第三実施形態に係る駆け込み搭乗の抑制システム201として示したように、画像形成装置210は、ホームに面一の画面を有し、画面に搭乗合図Bおよび拒否合図Cを表示する、ホームに埋め込まれたディスプレイであってもよい。このような構成によれば、人物Fによって光が遮られたり、光量が不足して像が不鮮明になるといった不都合が生じない。
【0036】
<第四実施形態>
図7は、本発明の第四実施形態におけるホームおよび電車でのイベントと合図の変化を示すタイムチャートである。上述した第一実施形態では、制御部12は、ドアセンサ13から拒否開始信号を取得したら描画部11に拒否合図Cを表示させるように構成した。しかしながら、図7に示したように構成してもよい。
【0037】
図7においては、拒否開始信号を音識別部14や放送検出部15から取得するように構成されている。この場合、駅員による合図や駅の放送から一拍置いた後にドアDの閉鎖が開始されるので、拒否開始信号を取得してから実際にドアDの閉鎖を開始するまで時間を要する場合がある。そこで本実施形態では、拒否開始信号を取得したら制御部12は描画部11に搭乗合図Bを取り消して注意喚起合図を表示させる。さらに、カメラ16の画像に基づきドアDの閉鎖が開始されたと判定したら、拒否合図Cの表示を開始するように構成する。このように構成することにより、実際のドアDの動きと拒否合図Cの開始とを連動させることができる。例えば搭乗合図を一つの頂点が電車に向かい合う青い三角形、拒否合図を赤い×とした場合、注意喚起合図は黄色い矩形で表示することができる。
【0038】
なお上述した説明においては、搭乗可能な移動体として電車に本発明を適用した例を説明したが、本発明はこれに限られない。例えば搭乗可能な移動体として、バス、飛行機、船、水中船、飛行可能な車両など、搭乗可能な時間が定められている移動体に適用することができる。また本発明は、スケジュール通りに運航することが求められる公共交通機関の移動体に適用することが適している。
例えば飛行機や船において搭乗する場合、機体の搭乗口にタラップなどの通路の一端が接続され、通路の他端は待合室に接続される。飛行機や船に乗り込もうとする人は待合室と通路とを隔てるゲートの前で待機している。本発明は、上述した実施形態と同様に、このゲートの近傍の地面に搭乗合図および拒否合図を表示することにより、駆け込み搭乗を抑制することができる。すなわち、本発明でいう搭乗合図および拒否合図が表示される乗降エリアとは、移動体に乗り込もうとする乗客が待機している場所の地面である。乗降エリアとは、停止した機体のドアが位置する場所の近傍の地面、または、機体の搭乗口から延びる通路と待合室とを隔てるゲートの近傍の地面を意味する。
【0039】
以上、本発明の実施形態について説明をしたが、本発明の技術的範囲が本実施形態の説明によって限定的に解釈されるべきではないのは言うまでもない。本実施形態は単なる一例であって、特許請求の範囲に記載された発明の範囲内において、様々な実施形態の変更が可能であることが当業者によって理解されるところである。本発明の技術的範囲は特許請求の範囲に記載された発明の範囲及びその均等の範囲に基づいて定められるべきである。
【符号の説明】
【0040】
1,101,201 駆け込み搭乗の抑制システム
10,110,210 画像形成装置
11 描画部
12 制御部
13 ドアセンサ
14 音識別部
15 放送検出部
16 カメラ
20 庇
A 照射領域
B 搭乗合図
C 拒否合図
D ドア
F 人物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7