(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】加熱調理システム
(51)【国際特許分類】
F24C 3/12 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
F24C3/12 K
(21)【出願番号】P 2020130578
(22)【出願日】2020-07-31
【審査請求日】2023-06-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000115854
【氏名又は名称】リンナイ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000800
【氏名又は名称】デロイトトーマツ弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 裕康
(72)【発明者】
【氏名】水野 達彦
(72)【発明者】
【氏名】土橋 洋樹
【審査官】根本 徳子
(56)【参考文献】
【文献】特開2015-230148(JP,A)
【文献】特開2016-188714(JP,A)
【文献】特開2018-194192(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2017/0367151(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F24C 3/12、7/04、15/00
H05B 6/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
加熱調理器と撮像装置とが通信可能な加熱調理システムであって、
前記撮像装置は、
前記加熱調理器の上方位置に設けられ、前記加熱調理器のバーナ及びその周辺領域を撮像し、
前記バーナの使用中に、使用者の立ち位置から見て前記バーナの中心よりも後方の領域を危険ゾーンとして、前記危険ゾーンへの物体の侵入を検知し、
前記撮像装置から前記危険ゾーンへの前記物体の侵入が通知されたとき、前記加熱調理器は、前記バーナの火力を現状火力よりも低下させる火力低下制御を行
い、
前記加熱調理器は、
前記火力低下制御の期間を計時する計時部を備え、
前記計時部は、前記撮像装置により前記危険ゾーンへの物体の侵入が検知されたとき計時を開始し、前記危険ゾーン内の前記物体が検知されなくなったとき当該計時を停止し、
前記火力低下制御の終了後、少なくとも前記計時部が計時した前記火力低下制御の期間、前記バーナの火力を前記現状火力よりも上昇させる火力上昇制御を行う
ことを特徴とする加熱調理システム。
【請求項2】
前記撮像装置は、撮像した映像又は画像を解析する解析部を備え、
前記解析部は、前記映像又は時系列順の複数の前記画像を解析して前記物体が前記危険ゾーンへ侵入した侵入方向を判断し、
前記侵入方向が前記使用者の立ち位置側からであると判断されたとき、前記加熱調理器は前記火力低下制御を行う
ことを特徴とする請求項1に記載の加熱調理システム。
【請求項3】
前記侵入方向が前記使用者の立ち位置側からでないと判断されたとき、前記加熱調理器は、所定時間の経過後に前記火力低下制御を行う
ことを特徴とする請求項2に記載の加熱調理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、撮像装置と加熱調理器とからなる加熱調理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コンロ等の加熱調理器の状態を検知するセンサを備え、センサの検知領域に人体や衣類等の物体が侵入したとき、警告を行う調理システムが知られている。
【0003】
例えば、下記の特許文献1のコンロ用安全装置は、第1侵入検出手段としての静電容量検出手段を有し、静電容量検出手段がコンロの所定位置に取り付けられている。そして、第1侵入検出手段は、第1検知領域内への物体の侵入の有無に応じた検出信号を制御手段に出力する。制御手段は、第1侵入検出手段からの検出信号に基づいて、第1検知領域内に物体が侵入してきたことを検出する。
【0004】
また、コンロ用安全装置は、第2侵入検出手段としての距離検出手段又は撮像手段を有し、これらの手段がコンロの上方の位置に、コンロの側に向けて取り付けられている。そして、第2侵入検出手段は、第2検知領域内への物体の侵入の有無に応じた信号や、検知領域の画像情報を制御手段に出力する。
【0005】
制御手段は、第1、第2侵入検出手段からの検出信号に基づいて、検知領域内に物体が侵入してきたことを検出する。第1、第2侵入検出手段は、何れも比較的小さなセンサであり、コンロの上方の任意の位置に容易に取り付けることができる(特許文献1/段落0014、
図3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1のコンロ用安全装置は、第2検知領域が広範囲であり、第2侵入検出手段は特定のバーナの様子のみを検知しているわけではない。また、この装置は、第1侵入検出手段と第2侵入検出手段とを組み合わせて検知しているため、撮像手段のみで物体の侵入を精度よく検知するものではなかった。
【0008】
本発明は、かかる背景に鑑みてなされたものであり、簡易な構成で、特定の領域に侵入した物体を精度よく検知することができる加熱調理システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的を達成するため、本発明は、加熱調理器と撮像装置とが通信可能な加熱調理システムであって、
前記撮像装置は、前記加熱調理器の上方位置に設けられ、前記加熱調理器のバーナ及びその周辺領域を撮像し、前記バーナの使用中に、使用者の立ち位置から見て前記バーナの中心よりも後方の領域を危険ゾーンとして、前記危険ゾーンへの物体の侵入を検知し、
前記撮像装置から前記危険ゾーンへの前記物体の侵入が通知されたとき、前記加熱調理器は、前記バーナの火力を現状火力よりも低下させる火力低下制御を行い、
前記加熱調理器は、
前記火力低下制御の期間を計時する計時部を備え、
前記計時部は、前記撮像装置により前記危険ゾーンへの物体の侵入が検知されたとき計時を開始し、前記危険ゾーン内の前記物体が検知されなくなったとき当該計時を停止し、
前記火力低下制御の終了後、少なくとも前記計時部が計時した前記火力低下制御の期間、前記バーナの火力を前記現状火力よりも上昇させる火力上昇制御を行うことを特徴とする。
【0010】
本発明の加熱調理システムは、撮像装置が加熱調理器の上方位置に設けられているため、撮像装置が加熱調理器のバーナ及びその周辺領域を撮像することができる。撮像装置は、バーナの使用中に危険ゾーンへの物体の侵入を検知し、加熱調理器に通知する。
【0011】
そして、撮像装置から危険ゾーンへの物体(例えば、人の手や衣服)の侵入が通知されたとき、加熱調理器が火力低下制御を行う。これにより、本システムは、簡易な構成で危険ゾーンに侵入した物体を精度よく検知し、安全を確保することができる。さらに、加熱調理器は計時部を備えているため、火力低下制御の期間(物体の危険ゾーンへの侵入時間)を計時することができる。そして、加熱調理器は、火力低下制御の終了後、少なくとも計時した火力低下制御の期間、火力上昇制御を行う。これにより、本システムは、火力低下制御を行った期間の調理の遅延を回復することができる。
【0012】
本発明の加熱調理システムにおいて、
前記撮像装置は、撮像した映像又は画像を解析する解析部を備え、
前記解析部は、前記映像又は時系列順の複数の前記画像を解析して前記物体が前記危険ゾーンへ侵入した侵入方向を判断し、
前記侵入方向が前記使用者の立ち位置側からであると判断されたとき、前記加熱調理器は前記火力低下制御を行うことが好ましい。
【0013】
撮像装置の解析部は、映像や時系列順の複数の画像を解析して、物体が危険ゾーンへ侵入した侵入方向を判断する。加熱調理器は、当該侵入方向が使用者の立ち位置側からであると判断された情報が通知されたとき、火力低下制御を行う。これにより、本システムは、物体の侵入方向から判断して危険事象であるときのみ、火力低下制御を行うことができる。
【0016】
また、本発明の加熱調理システムにおいて、
前記侵入方向が前記使用者の立ち位置側からでないと判断されたとき、前記加熱調理器は、所定時間の経過後に前記火力低下制御を行うことが好ましい。
【0017】
加熱調理器は、当該侵入方向が使用者の立ち位置側からでないと判断された情報が通知されたときは、直ちに火力低下制御を行わず、所定時間の経過後に火力低下制御を行う。これにより、本システムは、物体の侵入方向から判断して危険事象の可能性が低いとき、調理の遅延が生じないように制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本発明の実施形態に係る加熱調理システムの概略図。
【
図4】加熱調理システムの安全火力制御のフローチャート。
【
図5A】危険ゾーンに物体が進入する前の状態を説明する図。
【
図5B】危険ゾーンに物体が進入した状態を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下では、図面を参照しながら、本発明の実施形態について説明する。
【0020】
初めに、
図1を参照して、本発明の実施形態に係る加熱調理システム1について説明する。加熱調理システム1は、主に加熱調理器10と撮像装置20とで構成され、撮像装置20が加熱調理器10による調理の状況を撮像できるシステムとなっている。
【0021】
まず、加熱調理器10について説明すると、加熱調理器10の前面側の中央部には、グリル扉2が設けられている。グリル扉2は、加熱調理器10の内部に設けられた図示しないグリル庫に被加熱物を出し入れする際に、グリル庫の前面開口部を開閉する。
【0022】
加熱調理器10は、システムキッチンのカウンタトップWに組み込むビルトイン式であり、上面を開放面とする箱形のコンロ本体3を備えている。コンロ本体3の上部には天板4が設けられ、天板4からはコンロ本体3に支持されたコンロバーナ5,6,7(本発明の「バーナ」)が上方に露出している。コンロバーナ5上には、鍋Pが置かれている。
【0023】
また、加熱調理器10の前面側におけるグリル扉2の両側には、各コンロバーナ5,6,7、及びグリル庫内のグリルバーナ8の点消火ボタン13a~13dと、電源スイッチ13eが設けられている。
【0024】
各点消火ボタン13a~13dはプッシュ式であって、前面パネルに没入した
図1に示す消火位置から一旦押し込んで押込み解除することにより前面パネルの前方の燃焼位置に突出し、この状態で火力調節のために回動操作することができるようになっている。
【0025】
電源スイッチ13e、各バーナ5~8の点消火ボタン13a~13dの操作検知スイッチ(図示省略)からの信号は、各バーナ5~8の火炎検知素子からの信号と共にマイクロコンピュータからなる、後述する制御部11に入力される。そして、制御部11によりイグナイタ、元弁及び各ガス弁装置が制御される。なお、以下では、加熱調理器10の後方側は壁面であるとして説明する。
【0026】
次に、撮像装置20について説明する。撮像装置20は加熱調理器10の上方位置であって、換気扇用フードの下端枠30に取り付けられている。詳細は後述するが、撮像装置20の撮像部21は、加熱調理器10のコンロバーナ5~7が含まれる撮像領域を撮像することができる。
【0027】
また、撮像装置20は、無線通信により加熱調理器10と通信することができる。特に、撮像装置20は、コンロバーナ5,6,7の使用中における異常や、当該撮像領域への物体の侵入を検知し、加熱調理器10に通知する。これにより、加熱調理器10側では、コンロバーナ5~7の火力を低下させたり、消火させたりする処理を行うことができるので、安全状態が確保される。
【0028】
次に、
図2を参照して、加熱調理器10及び撮像装置20の内部構成を説明する。
【0029】
まず、加熱調理器10は、制御部11と、操作部13と、通信部15と、計時部17とで構成されている。制御部11は、主にコンロバーナ5~7及びグリルバーナの火力制御を行う。制御部11は、点消火ボタン13a~13d等からなる操作部13の操作指令を受けて、各コンロバーナのオン又はオフを行う。
【0030】
特に、制御部11は、コンロバーナ5~7の火力低下制御と火力上昇制御とを含む安全火力制御を行う。火力低下制御は、コンロバーナ5~7バーナの火力を、所定時間、現状の火力よりも低下させる制御である。また、火力上昇制御は、コンロバーナ5~7バーナの火力を、所定時間、現状の火力よりも上昇させる制御である
【0031】
通信部15は、撮像装置20と無線通信を行う。通信部15は、撮像装置20からコンロバーナ5~7の使用情報と、後述する危険ゾーンへの物体の侵入情報とをまとめた判断情報を受信する。当該判断情報は、さらに、制御部11に送信される。
【0032】
ここで、
図3に、撮像装置20の撮像領域と危険ゾーンの一例を示す。
【0033】
図中の実線矩形枠は、コンロバーナ5及びコンロバーナ7の使用中に定められる、撮像装置20の撮像領域Rを示している。撮像領域Rは、コンロバーナ5~7が全て含まれる程度の大きさが好ましい。
【0034】
また、図中の破線矩形枠は、危険ゾーンZを示している。危険ゾーンZは撮像領域Rの一部であり、加熱調理器10の使用者の立ち位置Sから見て、コンロバーナ5の中心よりも後方の領域となっている。危険ゾーンZの大きさは任意であるが、使用中のコンロバーナに応じて、危険ゾーンZの位置を移動させることが好ましい。
【0035】
図2に戻り、加熱調理器10の計時部17は、上述の火力低下制御の期間を計時するタイマ(後述する小火タイマ)である。具体的には、火力低下制御は、侵入方向も考慮して、危険ゾーンに使用者の手や衣服が侵入したとき開始する。従って、計時部17は、その時点で計時を開始する。
【0036】
また、火力低下制御は、当該危険ゾーンZから使用者の手や衣服が外れたとき終了する。従って、計時部17は、その時点で計時を停止する。これにより、計時部17は、火力低下制御の期間を正確に計時することができる。なお、当該期間は、火力上昇制御を行う際に利用される。
【0037】
次に、撮像装置20は、撮像部21と、解析部23と、通信部25とで構成されている。撮像部21は、例えばWebカメラであり、コンロバーナ5~7及びその周辺領域を撮像可能な位置に設置されている。撮像部21は、ズームイン、ズームアウトや角度を調整することができ、撮像領域Rの位置を変更可能であることが好ましい。
【0038】
また、撮像部21は、コンロバーナ5~7の真上よりも、むしろ加熱調理器10の前面側(
図3の使用者の立ち位置S)から加熱調理器10の後方側(壁面側)に向けて斜め上方からコンロバーナ5~7を見下ろす位置に設置されていることが好ましい。これにより、撮像部21は、使用者の手や衣服が危険ゾーンに到達した、早い段階で検知可能となる。
【0039】
撮像部21は、コンロバーナ5~7及びその周辺領域を撮像し、画像(静止画又は動画)を解析部23に送信する。解析部23は、例えば、機械学習により得られたデータベースを参照して、コンロバーナ5~7、鍋、使用者の手等を含む入力画像を解析し、判断することができる。
【0040】
解析部23は、コンロバーナ5~7の炎の状態、又はコンロバーナ5~7のそれぞれの位置に鍋が置かれているか否かを認識し、コンロバーナ5~7のうちどれが使用中で、どれが使用中でないかを判断する。
【0041】
また、解析部23は、危険ゾーンに使用者の手や衣服が侵入しているか否かに加えて、手や衣服が危険ゾーンに侵入した侵入方向を判断する。入力画像が静止画である場合、解析部23は、時系列順の複数の入力画像から手や衣服の侵入方向を判断する。
【0042】
解析部23は、解析により得られた判断情報を、通信部25を経由して加熱調理器10(通信部15)に送信する。通信部25は、Bluetooth(登録商標)等の短距離無線通信を使用して、加熱調理器10に当該判断情報を提供する。
【0043】
次に、
図4を参照して、加熱調理システム1の安全火力制御のフローチャートを説明する。なお、適宜、
図5A、
図5Bを参照して、説明を補足する。
【0044】
まず、撮像装置20をオンとする(STEP01)。これにより、撮像装置20の撮像部21による、コンロバーナ5~7及びその周辺領域の撮像が開始する。
【0045】
次に、撮像装置20は、コンロバーナは使用中であるか否かを判断する(STEP02)。具体的には、撮像装置20の解析部23が、撮像部21により撮像された画像(入力画像)を解析し、コンロバーナ5~7のうち、どれが点火しているかを判定する。コンロバーナが使用中の場合にはSTEP03に進み、使用中でない場合には使用開始までループする。
【0046】
コンロバーナが使用中である場合(STEP02で「YES」)、撮像装置20は、物体の危険ゾーンへの侵入検知を開始する(STEP03)。なお、解析部23で作成された判断情報は、所定のタイミングで加熱調理器10に送信される。
【0047】
ここで、
図5Aに、コンロバーナ5が使用中の場合の、撮像領域R及び危険ゾーンZ’の例を示す。今回、コンロバーナ5の位置に鍋Pが置かれているので、撮像装置20はコンロバーナ5の使用中と判定し、コンロバーナ5の中心よりも後方の領域を危険ゾーンZ’とする。危険ゾーンZ’は、鍋Pの縁よりも後方の領域であるとさらに好ましい。なお、図示する状態では、危険ゾーンZ’に使用者の手や衣服(物体)が侵入しておらず、危険事象は生じていないといえる。
【0048】
次に、撮像装置20は、物体が危険ゾーンに侵入したか否かを判断する(STEP04)。
図5Bは、
図5Aと同じ撮像領域R及び危険ゾーンZ’を示している。図示する状態では、危険ゾーンZ’に使用者の手が侵入している。このような場合、物体が危険ゾーンに侵入していることになるため、STEP05に進む。一方、物体が危険ゾーンに侵入していない場合には、STEP08に進む。
【0049】
まず、物体が危険ゾーンに侵入している場合(STEP04で「YES」)を説明する。この場合、撮像装置20は、物体が前方から危険ゾーンに侵入したか否かを判断する(STEP05)。ここで、「前方」とは、加熱調理器10の使用者の立ち位置S(
図5B参照)から見た方向であり、前方かそれ以外かは、解析部23が入力画像を解析して判断する。物体が前方から危険ゾーンに侵入した場合にはSTEP06に進み、前方以外の方向から侵入した場合にはSTEP10に進む。
【0050】
物体が前方から危険ゾーンに侵入した場合(STEP05で「YES」)、加熱調理器10は、火力低下制御を実行する(STEP06)。加熱調理器10は撮像装置20から判断情報を取得するが、STEP04,STEP05で共に「YES」となった場合を危険事象として、火力低下制御に切り替える。具体的には、加熱調理器10は、コンロバーナ5の火力を現状火力よりも低下させる。これにより、使用者の火傷や衣類への着火を未然に防止することができる。
【0051】
一方、物体が前方以外の方向から危険ゾーンに侵入した場合(STEP05で「NO」)、加熱調理器10は、物体の侵入時間が3秒以上か否かを判断する(STEP11)。物体の侵入時間が3秒以上場合にはSTEP06に進み、3秒未満の場合にはSTEP02にリターンする。これは、物体が前方以外から危険ゾーンに侵入した場合は、直ちに危険事象と判断されないことを意味する。
【0052】
次に、加熱調理器10は、小火タイマをオンとし(STEP07)、STEP02にリターンする。なお、小火タイマの計時は、加熱調理器10の計時部17で行われる。
【0053】
次に、物体が危険ゾーンに侵入していない(物体が危険ゾーンから外れた)場合(STEP04で「NO」)を説明する。この場合、加熱調理器10は、小火タイマがオンしているか否かを判断する(STEP08)。小火タイマがオンしている場合にはSTEP09に進み、小火タイマがオンしていない場合にはSTEP02にリターンする。
【0054】
小火タイマがオンしている場合(STEP08で「YES」)、加熱調理器10は、小火タイマをオフする(STEP10)。そして、加熱調理器10は、火力低下制御を終了する。なお、小火タイマの計時時間は、計時部17に記憶される。
【0055】
最後に、加熱調理器10は、火力上昇制御を実行する(STEP10)。火力上昇制御では、火力低下制御により調理が遅延した分(加熱量)を回復するため、加熱調理器10がコンロバーナ5の火力を現状火力(火力低下制御に移行する前の火力)よりも上昇させて加熱する。
【0056】
火力上昇制御は、少なくとも計時部17に記憶された小火タイマの計時時間だけ実行されると、自動的に終了する。その後、STEP02にリターンする。以上で、安全火力制御の一連のフローが終了となる。
【0057】
以上、本発明を実施するための実施形態を説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、適宜変更することができる。
【0058】
上記実施形態では、加熱調理器10の手前側のコンロバーナ5(コンロバーナ7)が使用中の例を説明したが、加熱調理器10の後方側のコンロバーナ6も同様である。コンロバーナ6が使用中の場合、危険ゾーンは、コンロバーナ6の中心よりも後方かつ壁面までの領域となる。
【0059】
危険ゾーンZ’(
図5A参照)は、鍋Pの縁よりも後方の領域であるとより好ましいと説明したが、これに限られない。危険ゾーンは、コンロバーナの中央よりも僅か後ろから後方の領域と定義して、より厳格に判断するようにしてもよい。
【0060】
また、上記実施形態では、物体が前方以外の方向から危険ゾーンに侵入した場合、物体の侵入時間が3秒以上となったとき、火力低下制御を開始するようにした。3秒は一例であるので、この時間に限られるものではない。また、前方以外の方向とは、使用者の立ち位置S(
図5B参照)から見て、横方向又は奥方向を意味する。加熱調理器10が対面式である場合には、奥方向から物体が危険ゾーンに侵入することがあり得る。このため、あらゆる方向からの物体の侵入に対して、火力低下制御が実行されることがある。
【符号の説明】
【0061】
1…加熱調理システム、5~7…コンロバーナ、8…グリルバーナ、10…加熱調理器、11…制御部、13…操作部、13a~13d…点消火ボタン、13e…電源スイッチ、15…(加熱調理器)通信部、17…計時部、20…撮像装置、21…撮像部、23…解析部、25…(撮像装置)通信部。