(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】螺旋管形成用装置
(51)【国際特許分類】
B29C 63/32 20060101AFI20240510BHJP
F16L 1/00 20060101ALI20240510BHJP
F16L 9/16 20060101ALI20240510BHJP
F16L 55/18 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
B29C63/32
F16L1/00 J
F16L9/16
F16L55/18 B
(21)【出願番号】P 2020138839
(22)【出願日】2020-08-19
【審査請求日】2023-05-16
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100085556
【氏名又は名称】渡辺 昇
(74)【代理人】
【識別番号】100115211
【氏名又は名称】原田 三十義
(74)【代理人】
【識別番号】100153800
【氏名又は名称】青野 哲巳
(72)【発明者】
【氏名】杉山 佳郎
(72)【発明者】
【氏名】蛭田 将司
(72)【発明者】
【氏名】吉野 克則
(72)【発明者】
【氏名】上野 義典
【審査官】小山 祐樹
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-018475(JP,A)
【文献】特開2013-256048(JP,A)
【文献】特開2016-000490(JP,A)
【文献】特開2019-126935(JP,A)
【文献】実開昭55-066128(JP,U)
【文献】特開平01-165436(JP,A)
【文献】韓国公開特許第10-2012-0025860(KR,A)
【文献】中国特許出願公開第106247010(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29C 63/00-63/48
F16L 1/00-11/26
F16L 51/00-55/48
E03F 1/00-11/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
帯状部材から螺旋管を形成するための螺旋管形成用装置であって、
前記帯状部材を前記螺旋管に組み込む経路上に並んで配置され、前記帯状部材を挟み付けて引き込み又は送り出す少なくとも2つのピンチローラ対を備え、
各ピンチローラ対が、前記帯状部材における螺旋管の内周側を向く部分と対面するインナーローラと、前記帯状部材における螺旋管の外周側を向く部分と対面するアウターローラとを有しており、
前記2つのピンチローラ対には、前記帯状部材に形成され得る押し当て跡が互いに一致しないように、それぞれ凹凸パターンが形成され
ており、前記凹凸パターンが、各ピンチローラ対のアウターローラ及びインナーローラの少なくとも1つに設けられていることを特徴とする螺旋管形成用装置。
【請求項2】
前記2つのピンチローラ対における
一方のピンチローラ対の凹凸パターン
と他方のピンチローラ対の凹凸パターンとが、
前記帯状部材における互いに別の場所に押し当てられるように互いに非対応のローラ外周部分に形成されていることを特徴とする請求項1に記載の螺旋管形成用装置。
【請求項3】
一方のピンチローラ対の凹凸パターンはインナーローラに形成され、
他方のピンチローラ対の凹凸パターンはアウターローラに形成されていることを特徴とする請求項1又は2に記載の螺旋管形成用装置。
【請求項4】
前記2つのピンチローラ対の凹凸パターンが、互いにローラ軸方向にずれていることを特徴とする請求項1又は2に記載の螺旋管形成用装置。
【請求項5】
前記2つのピンチローラ対における互いに対応するローラ外周部分に、互いに異なる凹凸パターンが形成されていることを特徴とする請求項1に記載の螺旋管形成用装置。
【請求項6】
前記2つのピンチローラ対のうち一方の凹凸パターンが綾目ローレット又は斜めローレットであり、
前記2つのピンチローラ対のうち他方の凹凸パターンが平目ローレットであることを特徴とする請求項1又は5に記載の螺旋管形成用装置。
【請求項7】
前記2つのピンチローラ対の凹凸パターンが、それぞれローラ周方向に一定間隔で形成された周期溝を含み、前記2つのピンチローラ対の周期溝の角度が互いに異なることを特徴とする請求項1又は5に記載の螺旋管形成用装置。
【請求項8】
前記2つのピンチローラ対の凹凸パターンのローラ周方向に沿うピッチが互いに異なることを特徴とする請求項1又は5に記載の螺旋管形成用装置。
【請求項9】
前記2つのピンチローラ対のうち前記経路に沿って後段のピンチローラ対の凹凸パターンにおける凹部の深さ又は凸部の高さが、前段のピンチローラ対の凹凸パターンにおける凹部の深さ又は凸部の高さより大きいことを特徴とする請求項1又は5に記載の螺旋管形成用装置。
【請求項10】
1のピンチローラ対におけるインナーローラの外周面に文字型が形成されていることを特徴とする請求項1~9の何れか1項に記載の螺旋管形成用装置。
【請求項11】
前記帯状部材に巻き癖を付与する巻癖形成機と、前記巻き癖付与後の帯状部材の一周違いに隣接する縁どうしを接合して螺旋管を形成する製管機とを備え、
前記巻癖形成機及び前記製管機が、それぞれ前記少なくとも2つのピンチローラ対を含むことを特徴とする請求項1~10の何れか1項に記載の螺旋管形成用装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、帯状部材から螺旋管を形成する螺旋管形成用装置に関し、特に老朽化した既設管の更生に適した螺旋管形成用装置に関する。
【背景技術】
【0002】
老朽化した下水管などの既設管の内周に更生管をライニングすることによって、既設管を更生させる方法は公知である(特許文献1、2等参照)。更生管は、例えば帯状部材を螺旋状に巻回してなる螺旋管によって構成されている。螺旋管は、製管機によって製管される。
【0003】
この種の製管機は、アウターローラ及びインナーローラからなるピンチローラ対を備えている。通常、アウターローラの外周面には、ローレットなどの凹凸パターンが形成されている。また、ピンチローラ対は、2対以上(複数対)並んで設けられている。これらピンチローラ対によって帯状部材における未製管の帯部分を挟み付け、油圧モータでこれらローラを回転駆動させることによって、未製管の帯部分を製管済み部分すなわち螺旋管へ送り込む。これによって、螺旋管が延伸製管される。
【0004】
前記帯状部材(未製管の帯部分)は、地上から人孔に差し入れられ、そこから既設管内の製管機へ供給される。帯状部材の剛性が高いとき等には、前記供給操作が困難になる。このような場合、巻癖形成機が併用される(特許文献2等参照)。巻癖形成機は、前記製管機と同様に、2つ(複数)のピンチローラ対と、油圧モータを備えている。巻癖形成機の各ピンチローラ対のアウターローラにはローレットなどの凹凸パターンが形成されている。帯状部材が、巻癖形成機の2つのピンチローラ対に通されながら、巻き癖(曲率)が付与される。巻き癖付与後の帯状部材が製管機へ供給される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特許第6518324号公報
【文献】特許第6329260号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
このような製管機や巻癖形成機を含む螺旋管形成装置によって帯状部材から螺旋管を作製する際、帯状部材の駆動面(アウターローラとの接触面)には、前段のピンチローラ対のアウターローラによって凹凸パターンの押し当て跡(傷)が形成され得る。その後、帯状部材は後段のピンチローラ対へ導入される。このとき、後段のアウターローラの凹凸パターンが、前段のアウターローラの凹凸パターンと一致していると、後段のアウターローラが空転してしまい、帯状部材に駆動力が伝達されないことがある。
本発明は、かかる事情に鑑み、複数のピンチローラ対を含む螺旋管形成装置によって螺旋管を形成する際、帯状部材に前段のピンチローラ対による凹凸パターンの押し当て跡が形成されたとしても、後段のピンチローラ対の空転を防止し、駆動力を帯状部材に確実に伝達できるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明は、帯状部材から螺旋管を形成するための螺旋管形成用装置であって、
前記帯状部材を前記螺旋管に組み込む経路上に並んで配置され、前記帯状部材を挟み付けて引き込み又は送り出す少なくとも2つのピンチローラ対を備え、前記2つのピンチローラ対には、前記帯状部材に形成され得る押し当て跡が互いに一致しないように、それぞれ凹凸パターンが形成されていることを特徴とする。
【0008】
螺旋管の形成時には、凹凸パターンの凸部が帯状部材に強く押し当てられることによって、ピンチローラ対と帯状部材との摩擦力が高まる。帯状部材には、凹凸パターンによる押し当て跡(傷)が形成され得る。凹凸パターンの凹部による押し当て跡は凸部となり、凹凸パターンの凸部よる押し当て跡は凹部となる。相対的に前段のピンチローラ対による押し当て跡と、相対的に後段のピンチローラ対による押し当て跡とは、互いに一致していない。すなわち、帯状部材におけるこれら押し当て跡の形成場所、凹凸のパターン、凹部の深さなどが互いに異なる。したがって、前段のピンチローラ対によって帯状部材に押し当て跡が形成されたとしても、それによって後段のピンチローラ対が空転するのを防止できる。これによって、後段のピンチローラ対からの駆動力が帯状部材に確実に伝達される。この結果、螺旋管形成用装置によって螺旋管を確実に製管できる。
【0009】
凹凸パターンは、好ましくはローレット加工によって形成されたローレットパターンである。
前記2つのピンチローラ対における凹凸パターンが、互いに非対応のローラ外周部分に形成されていることが好ましい。
「互いに非対応」とは、一方のピンチローラ対における凹凸パターンが配置された部分と、他方のピンチローラ対における凹凸パターンが配置された部分とが互いに対応していないことを云う。したがって、一方のピンチローラ対の凹凸パターンと、他方のピンチローラ対の凹凸パターンとが、帯状部材における互いに別の場所に押し当てられる。これによって、前段の押し当て跡による後段のピンチローラ対の空転を確実に防止できる。
【0010】
一方のピンチローラ対が前段のピンチローラ対であり、他方のピンチローラ対が後段のピンチローラ対であってもよく、一方のピンチローラ対が後段のピンチローラ対であり、他方のピンチローラ対が前段のピンチローラ対であってもよい。
各ピンチローラ対が、前記帯状部材における螺旋管の内周側を向く部分と対面するインナーローラと、前記帯状部材における螺旋管の外周側を向く部分と対面するアウターローラとを有していることが好ましい。
「互いに非対応」の態様として、一方のピンチローラ対の凹凸パターンはインナーローラに形成され、他方のピンチローラ対の凹凸パターンはアウターローラに形成されていてもよい。これによって、一方(前段又は後段)のピンチローラ対の凹凸パターンは、帯状部材の内周側を向く部分に押し当てられるのに対し、他方(後段又は前段)のピンチローラ対の凹凸パターンは、帯状部材の外周側を向く部分に押し当てられる。したがって、前段の押し当て跡による後段のピンチローラ対の空転を確実に防止できる。
【0011】
「互いに非対応」の他の態様として、前記2つのピンチローラ対の凹凸パターンが、互いにローラ軸方向にずれていてもよい。これによって、前段の押し当て跡による後段のピンチローラ対の空転を確実に防止できる。
例えば、各ピンチローラ対のアウターローラが、ローラ軸方向に互いに離れた複数のローラ部を有しており、一方のピンチローラ対の凹凸パターンが形成されたローラ部と、他方のピンチローラ対の凹凸パターンが形成されたローラ部とが、ローラ軸方向にずれていてもよい。
一方のピンチローラ対の凹凸パターンが、インナーローラの外周面におけるローラ軸方向の一側部分に形成され、他方のピンチローラ対の凹凸パターンが、インナーローラの外周面におけるローラ軸方向の他側部分に形成されていてもよい。
【0012】
2つのピンチローラ対における凹凸パターンは、互いに非対応の部位に配置されるのに限らず、互いに対応する部位に配置されていてもよい。この場合、凹凸のパターンが互いに異なることが好ましい。すなわち、前記2つのピンチローラ対における互いに対応するローラ外周部分に、互いに異なる凹凸パターンが形成されていることが好ましい。
これによって、2つのピンチローラ対の凹凸パターンの配置が互いに対応していても、帯状部材における前段の凹凸パターンによる押し当て跡に、後段の凹凸パターンが重なるのを防止できる。したがって、後段のピンチローラ対の空転を確実に防止できる。
【0013】
「互いに異なる凹凸パターン」の態様として、前記2つのピンチローラ対のうち一方の凹凸パターンが綾目ローレット又は斜めローレットであり、前記2つのピンチローラ対のうち他方の凹凸パターンが平目ローレットであることが挙げられる。前段が綾目ローレット又は斜めローレットであり、後段が平目ローレットであってもよく、前段が平目ローレットであり、後段が綾目ローレット又は斜めローレットであってもよい。
これによって、帯状部材における前段の凹凸パターンによる押し当て跡の凹凸に対して、後段の凹凸パターンの凹凸が交差する。したがって、後段のピンチローラ対の空転を確実に防止できる。
【0014】
「互いに異なる凹凸パターン」の態様として、前記2つのピンチローラ対の凹凸パターンが、それぞれローラ周方向に一定間隔で形成された周期溝を含み、前記2つのピンチローラ対の周期溝の角度が互いに異なっていてもよい。例えば、2つのピンチローラ対の凹凸パターンが共に斜めローレットであるが、その斜めローレットの傾斜角度が互いに異なっていてもよい。前記傾斜角度は、傾斜方向を含む。一方のピンチローラ対の凹凸パターンは斜めローレットであり、他方のピンチローラ対の凹凸パターンは平目ローレットであってもよい。
【0015】
「互いに異なる凹凸パターン」の態様として、前記2つのピンチローラ対の凹凸パターンのローラ周方向に沿うピッチが互いに異なっていてもよい。つまり、2つのピンチローラ対の凹凸パターンの凹凸の配置密度が互いに異なっていてもよい。これによって、前段と後段の凹凸パターンが共に平目ローレットであったり、共に綾目ローレットであったりしても、帯状部材における前段の凹凸パターンによる押し当て跡に、後段の凹凸パターンが完全に重なるのを防止でき、後段のピンチローラ対の空転を防止できる。
【0016】
前記2つのピンチローラ対のうち前記経路に沿って後段のピンチローラ対の凹凸パターンにおける凹部の深さ又は凸部の高さが、前段のピンチローラ対の凹凸パターンにおける凹部の深さ又は凸部の高さより大きくてもよい。
これら2つの凹凸パターンによる押し当て跡は互いに深さが異なる。したがって、帯状部材における前段の凹凸パターンによる押し当て跡に、後段の凹凸パターンが重なったとしても、後段の凹凸パターンの凸部が前記押し当て跡よりも深く帯状部材に食い込み、前段よりも深い押し当て跡が形成される。これにより、後段のピンチローラ対の空転を防止できる。
【0017】
1のピンチローラ対におけるインナーローラの外周面に文字型が形成されていてもよい。これによって、帯状部材における螺旋管の内周面となる面に文字を刻設できる。前記文字型は、凹凸パターンの一部として提供される。その押し当て跡は文字となる。これによって、押し当て跡を有用化できる。
【0018】
前記螺旋管形成用装置が、前記帯状部材に巻き癖を付与する巻癖形成機と、前記巻き癖付与後の帯状部材の一周違いに隣接する縁どうしを接合して螺旋管を形成する製管機とを備え、前記巻癖形成機及び前記製管機が、それぞれ前記少なくとも2つのピンチローラ対を含むことが好ましい。
巻癖形成機の2つのピンチローラ対には、前記帯状部材に形成され得る押し当て跡が互いに一致しないように、それぞれ凹凸パターンが形成されており、かつ製管機の2つのピンチローラ対には、前記帯状部材に形成され得る押し当て跡が互いに一致しないように、それぞれ凹凸パターンが形成されていることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、螺旋管の形成時において、帯状部材に前段のピンチローラ対による凹凸パターンの押し当て跡が形成されたとしても、後段のピンチローラ対の空転を防止でき、ピンチローラ対からの駆動力を帯状部材に確実に伝達することができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、第1実施形態に係る螺旋管形成用装置によって既設管を更生する様子を示す断面図である。
【
図2(a)】
図2(a)は、既設管を更生する更生管(螺旋管)を構成する帯状部材の断面図である。
【
図2(b)】
図2(b)は、
図1の円部IIbの拡大断面図である。
【
図3】
図3は、前記螺旋管形成用装置の製管機によって作製中の更生管の斜視図である。
【
図4】
図4は、前記製管機の駆動部の側面図である。
【
図5】
図5(a)は、前記製管機の駆動部の前段のピンチローラ対の正面図である。
図5(b)は、前記駆動部の後段のピンチローラ対の正面図である。
【
図6】
図6は、本発明の第2実施形態を示し、同図(a)は、製管機の前段のピンチローラ対の正面図である。同図(b)は、製管機の後段のピンチローラ対の正面図である。
【
図7】
図7は、本発明の第3実施形態を示し、同図(a)は、製管機の前段のピンチローラ対の正面図である。同図(b)は、製管機の後段のピンチローラ対の正面図である。
【
図8】
図8は、本発明の第4実施形態を示し、同図(a)は、製管機の前段のピンチローラ対の正面図である。同図(b)は、製管機の後段のピンチローラ対の正面図である。
【
図9】
図9は、本発明の第5実施形態を示し、同図(a)は、製管機の前段のピンチローラ対の正面図である。同図(b)は、製管機の後段のピンチローラ対の正面図である。
【
図10】
図10は、本発明の第6実施形態を示し、同図(a)は、製管機の前段のピンチローラ対の正面図である。同図(b)は、製管機の後段のピンチローラ対の正面図である。
【
図11】
図11は、本発明の第7実施形態を示し、同図(a)は、製管機の前段のピンチローラ対の正面図である。同図(b)は、製管機の後段のピンチローラ対の正面図である。
【
図12】
図12は、本発明の第8実施形態を示し、同図(a)は、製管機の前段のピンチローラ対の正面図である。同図(b)は、製管機の後段のピンチローラ対の正面図である。
【
図13】
図13は、本発明の第9実施形態を示し、製管機の駆動部の側面図である。
【
図14】
図14は、本発明の第10実施形態を示し、同図(a)は、製管機の前段のピンチローラ対の正面図である。同図(b)は、製管機の後段のピンチローラ対の正面図である。同図(c)は、前記前段のピンチローラ対を通過後の帯状部材の表側面をやや斜めから見た底面斜視図である。
【
図15】
図15は、本発明の第11実施形態に係る螺旋管形成用装置によって既設管を更生する様子を示す断面図である。
【
図16】
図16は、前記第11実施形態の螺旋管形成用装置の巻癖形成機の、
図15のXVI-XVI線に沿う正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施形態を図面にしたがって説明する。
<第1実施形態(
図1~
図5)>
図1に示すように、本発明は、例えば老朽化した既設管1の更生に適用される。既設管1の内周に更生管9がライニングされることによって、既設管1が更生されている。更生対象の既設管1は、例えば地中に埋設された下水道管である。
なお、更生対象の既設管は、下水道管に限らず。上水道管でもよく、農業用水管でもよく、ガス管でもよく、水力発電導水管でもよく、トンネルでもよい。
【0022】
図1に示すように、更生管9は、帯状部材90を螺旋状に巻回してなる螺旋管によって構成されている。
図2(a)に示すように、帯状部材90は、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂製の帯本体91と、スチール等の金属製の補強帯材96を含み、帯長方向(同図の紙面直交方向)へ長く延びている。帯本体91の帯幅方向(同図の左右方向)の一端部に凹凸断面形状の第1嵌合部93が設けられている。帯本体91の帯幅方向の他端部には、前記凹凸断面形状に対して相補状をなす凸凹断面形状の第2嵌合部94が設けられている。帯本体91の帯幅方向の中間部には、T字断面のリブ95が裏側(同図の上側)へ突出するように設けられている。帯本体91の裏側部には、概略M字状の断面形状の補強帯材96が設けられている。補強帯材96の表面好ましくは全表面がポリエチレンなどの樹脂で被覆されていてもよい。
帯状部材90の断面形状は、
図2(a)に例示するものに限らない。補強帯材96が省略されていてもよい。
【0023】
図2(b)及び
図3に示すように、帯状部材90が、既設管1の内周に沿って螺旋状に巻回され、かつ一周違いに隣接する第1嵌合部93及び第2嵌合部94どうしが凹凸嵌合によって接合されることによって、螺旋管状の更生管9が構築されている。
更生管9においては、帯状部材90の裏側部が外周側(
図2(b)において上側)へ向けられ、帯状部材90の表側部が内周側(同図において下側)へ向けられている。帯本体91の平坦な表側面91aが、更生管9の内周面を構成する。
【0024】
図1に示すように、更生管9(螺旋管)は、螺旋管形成用装置3によって作製される。螺旋管形成用装置3は、巻き付けドラム5と、油圧ポンプユニット6と、製管機10を備えている。
地上の巻き付けドラム5から帯状部材90における未製管の帯部分90aが繰り出されている。帯部分90aは、発進人孔4に差し入れられ、さらに既設管1内の更生管9(帯状部材90における製管済みの部分)を通って、更生管9の延伸方向の前端部(延伸前端部)の製管機10に導入されている。
【0025】
図3において簡略的に図示するように、製管機10は、装置フレーム11と、管端ガイド12,13と、駆動部20とを備えている。装置フレーム11が、更生管9の延伸前端部の一箇所に配置されている。装置フレーム11のベース部に管端ガイド12,13が配置されている。管端ガイド12,13は、更生管9の延伸前端部に周方向(巻回方向)へスライド可能に係止されている。
【0026】
図3に示すように、装置フレーム11の中央部ないしは頭部に駆動部20が設けられている。駆動部20は、少なくとも2つ(複数)のピンチローラ対21,22と、駆動モータ28(
図1)を含む。2つのピンチローラ対21,22は、帯状部材90を更生管9(螺旋管)に組み込む経路上に並んで配置され、帯状部材90を挟み付けて引き込み又は送り出す。
【0027】
詳しくは、
図4及び
図5に示すように、各ピンチローラ対21,22は、アウターローラ23と、インナーローラ24を含む。これらアウターローラ23及びインナーローラ24の間に帯状部材90の未製管の帯部分90aが通されて強く挟み付けられている。
【0028】
アウターローラ23は、シャフト23cと、2つ(複数)の円盤状のローラ部23a,23bを有している。シャフト23cの軸線(ローラ軸)は、製管機10の幅方向(
図5において左右)に向けられ、前記延伸方向にほぼ沿っている。シャフト23cに2つのローラ部23a,23bが設けられている。ローラ部23a,23bは、シャフト23cの軸線に沿う方向(ローラ軸方向)に互いに離れて配置されている。
図3に示すように、ローラ部23aは、螺旋管9の延伸方向の前方側に配置され、ローラ部23bは、延伸方向の後方側に配置されている。
【0029】
図4及び
図5に示すように、アウターローラ23は、帯状部材90の裏側部(螺旋管9の外周側を向く部分)と対面している。ローラ部23a,23bが、帯状部材90の裏側部の溝部97,98に差し入れられ、溝底部97b,98bに押し当てられている。溝底部97b,98bは、帯状部材90の裏側部における、製管機10からの駆動力を受ける駆動面となる。溝底部97b,98b(駆動面)は、スチール製の補強部材96の両側部によって構成されている。補強帯材96が樹脂被覆されている場合には、溝底部97b,98bの表面を覆う被覆樹脂が、アウターローラ23と直接的に接触する。
なお、補強部材96が省略される場合は、合成樹脂製の帯本体91の裏側面が、駆動面となる。
【0030】
図4及び
図5に示すように、各ピンチローラ対21,22のインナーローラ24は、円筒状に形成されている。インナーローラ24の軸線は、シャフト23cの軸線と平行に向けられている。インナーローラ24の軸長は、好ましくは、帯状部材90の幅寸法とほぼ同等ないしはそれ以上である。インナーローラ24の外直径は、好ましくは、シャフト23cの外直径より大きく、ローラ部23a,23bの外直径と同等又はそれより小さい。
インナーローラ24は、帯状部材90の表側部(螺旋管9の内周側を向く部分)と対面している。具体的には、インナーローラ24は、帯本体91の平坦な表側面91aに押し当てられている。帯本体91の表側面91aは、帯状部材90の表側部における、製管機10からの駆動力を受ける駆動面となる。
【0031】
詳細な図示は省略するが、ピンチローラ対21,22の各ローラ23,24にギア機構(動力伝達機構)を介して、油圧モータなどの駆動モータ28(
図1)が接続されている。
図1に示すように、油圧ポンプユニット6からの油圧ホース7が、到達人孔4B及び既設管1内を通って、製管機10の駆動モータ28に接続されている。これによって、油圧ポンプユニット6の油圧動力が駆動モータ28に供給され、ピンチローラ対21,22の各ローラ23,24が互いに同期して回転駆動される。
【0032】
ローラ23,24の回転駆動によって、帯状部材91の帯状部材90の未製管の帯部分90aが、更生管9の延伸前端部へ向けて押し込まれ、該帯部分90aの第1嵌合部93と更生管9の延伸前端部の第2嵌合部94とが凹凸嵌合される。これに伴い、推進反力が生じ、製管機10が巻回方向に沿って推進される。
【0033】
図5に示すように、2つのピンチローラ対21,22には、帯状部材90に形成され得る押し当て跡(傷)が互いに一致しないように、それぞれ凹凸パターン25が形成されている。詳しくは、2つのピンチローラ対21,22には、互いに非対応のローラ外周部分に凹凸パターン25が形成されている。
図5(a)に示すように、帯状部材90の経路に沿って前段(一方)のピンチローラ対21の凹凸パターン25は、インナーローラ24の外周面(ローラ外周部分24d)に形成されている。ピンチローラ対21のアウターローラ23には、凹凸パターンが形成されておらず、ローラ部23a,23bの外周面が滑面となっている。
【0034】
図5(b)に示すように、帯状部材90の経路に沿って後段(他方)のピンチローラ対22の凹凸パターン25は、アウターローラ23のローラ部23a,23bの外周面(ローラ外周部分23d)に形成されている。ピンチローラ対22のインナーローラ24の外周面は、滑面であり、凹凸パターンが形成されていない。
【0035】
これら凹凸パターン25は、ローレットによって構成されている。インナーローラ24の凹凸パターン25は、綾目ローレット51であるが、斜めローレット又は平目ローレットでもよい。アウターローラ23の各ローラ部23a,23bの凹凸パターン25は、平目ローレット52であるが、斜めローレット又は綾目ローレットでもよい。
【0036】
螺旋管9の形成時には、帯状部材90の未製管の帯部分90aが、先ず前段のピンチローラ対21に引き込まれて挟み付けられる。このとき、ピンチローラ対21のインナーローラ24の凹凸パターン25が帯状部材90の表側面91aに強く押し当てられる。これによって、ピンチローラ対21と帯状部材90との摩擦力が高まり、ピンチローラ対22からの駆動力を帯状部材90に確実に伝達することができる。帯状部材90の表側面91aには、ピンチローラ対21の凹凸パターン25による押し当て跡(図示省略)が形成され得る。
【0037】
前段のピンチローラ対21から送り出された帯状部材90は、続いて、後段のピンチローラ対22に引き込まれて挟み付けられる。このとき、ピンチローラ対22のアウターローラ23の凹凸パターン25が帯状部材90の溝底部97b,98bに強く押し当てられる。これによって、ピンチローラ対22と帯状部材90との摩擦力が高まる。帯状部材90の溝底部97b,98bには、ピンチローラ対22の凹凸パターン25による押し当て跡(図示省略)が形成され得る。
【0038】
前段のピンチローラ対21の凹凸パターン25はインナーローラ24に設けられているのに対し、後段のピンチローラ対22の凹凸パターン25はアウターローラ23に設けられているから、前段のピンチローラ対21によって帯状部材90に押し当て跡が形成されていたとしても、それによって後段のピンチローラ対22が空転することはない。したがって、ピンチローラ対22からの駆動力を帯状部材90に確実に伝達することができる。これによって、帯状部材90の未製管の帯部分90aを、ピンチローラ対22から確実に送り出し、更生管9へ確実に押し込むことができる。この結果、更生管9の製管を円滑に行うことができる。
補強帯材96が樹脂被覆されている場合、該補強帯材96の駆動面(溝底部97b,98b)の被覆樹脂は、前後のピンチローラ対21,22の凹凸パターン25のうち、後段の凹凸パターン25とだけ接触されるから、該被覆樹脂の損傷を抑制又は防止でき、該被覆樹脂を剥がれにくくすることができる。
【0039】
次に、本発明の他の実施形態を説明する。以下の実施形態において既述の形態と重複する構成に関しては、図面に同一符号を付して説明を省略する。
<第2実施形態(
図6)>
図6に示すように、第2実施形態の製管機10Bにおいては、2つのピンチローラ対21,22の凹凸パターン25が、共にアウターローラ23に形成されるとともに、シャフト23cの軸線に沿うローラ軸方向に互いにずれている。詳しくは、
図6(a)に示すように、前段(一方)のピンチローラ対21においては、凹凸パターン25が、延伸前方側(同図の左側)のローラ部23aの外周面(ローラ外周部分)に形成されている。ピンチローラ対21の凹凸パターン25は、平目ローレット52であるが、斜めローレット又は綾目ローレットでもよい。
ピンチローラ対21のローラ部23bの外周面は、平滑面となっている。
【0040】
図6(b)に示すように、後段(他方)のピンチローラ対22においては、凹凸パターン25が、延伸後方側(同図の右側)のローラ部23bの外周面(ローラ外周部分)に形成されている。ピンチローラ対22の凹凸パターン25は、ピンチローラ対21と同じ平目ローレット52であるが、斜めローレット又は綾目ローレットでもよく、ピンチローラ対21とは異なるパターンであってもよい。
ピンチローラ対22のローラ部23aの外周面は、平滑面となっている。
製管機10Bのピンチローラ対21,22のインナーローラ24の外周面は、平滑面となっている。
【0041】
製管機10Bによれば、各ピンチローラ対21,22のアウターローラ23に凹凸パターン25が設けられることによって、帯状部材90に付与する駆動力を高めることができる。かつ、前段と後段の凹凸パターン25がローラ軸方向にずれているために、これら凹凸パターン25による押し当て跡が重複することがない。
すなわち、前段のピンチローラ対21においては、ローラ部23aの凹凸パターン25によって、溝底部97bに押し当て跡が形成され得る。これに対し、後段のピンチローラ対22の凹凸パターン25は、溝底部98bに押し当てられる。したがって、前段の押し当て跡による後段のピンチローラ対22の空転を確実に防止でき、帯状部材90に駆動力を確実に伝えることができる。
なお、
図6とは逆に、前段のピンチローラ対21の凹凸パターン25がローラ部23bに形成され、かつ後段のピンチローラ対22の凹凸パターン25がローラ部23aに形成されていてもよい。
【0042】
<第3実施形態(
図7)>
図7に示すように、第3実施形態の製管機10Cにおいては、2つのピンチローラ対21,22の凹凸パターン25が、共にインナーローラ24に形成されるとともに、シャフト23cの軸線に沿うローラ軸方向に互いにずれている。詳しくは、
図7(a)に示すように、前段(一方)のピンチローラ対21においては、凹凸パターン25が、インナーローラ24の外周面における延伸前方側(同図の左側)の部分(一側部分)に形成されている。ピンチローラ対21の凹凸パターン25は、綾目ローレット51であるが、斜めローレット又は平目ローレットでもよい。
ピンチローラ対21のインナーローラ24の外周面における延伸後方側(同図の右側)の部分は、平滑面となっている。
【0043】
図7(b)に示すように、後段(他方)のピンチローラ対22においては、凹凸パターン25が、インナーローラ24の外周面における延伸後方側(同図の右側)の部分(他側部分)に形成されている。ピンチローラ対22の凹凸パターン25は、ピンチローラ対21と同じ綾目ローレット51であるが、斜めローレット又は平目ローレットでもよく、ピンチローラ対21とは異なるパターンであってもよい。
ピンチローラ対22のインナーローラ24の外周面における延伸前方側(同図の左側)の部分は、平滑面となっている。
製管機10Cのピンチローラ対21,22のアウターローラ23のローラ部23a,23bの外周面は、いずれも平滑面となっている。
【0044】
製管機10Cによれば、各ピンチローラ対21,22のインナーローラ24に凹凸パターン25が設けられることによって、帯状部材90に付与する駆動力を高めることができる。かつ、前段と後段の凹凸パターン25がローラ軸方向にずれているために、これら凹凸パターン25による押し当て跡が重複するのを避けることができる。
すなわち、前段のピンチローラ対21においては、インナーローラ24の凹凸パターン25によって、表側面91aの延伸前方側(
図7(a)において左側)の部分に押し当て跡が形成され得る。これに対し、後段のピンチローラ対22の凹凸パターン25は、表側面91aの延伸後方側(
図7(a)において右側)の部分に押し当てられる。これによって、前段の押し当て跡による後段のピンチローラ対22の空転を確実に防止でき、帯状部材90に駆動力を確実に伝えることができる。
なお、
図7とは逆に、前段のピンチローラ対21においては、凹凸パターン25がインナーローラ24の延伸後方側の部分に形成され、かつ後段のピンチローラ対22においては、凹凸パターン25がインナーローラ24の延伸前方側の部分に形成されていてもよい。
【0045】
<第4実施形態(
図8)>
図8に示すように、第4実施形態の製管機10Dにおいては、前段及び後段のピンチローラ対21,22のアウターローラ23の両ローラ部23a,23bにそれぞれ凹凸パターン25が形成されている。
図8(a)に示すように、前段のピンチローラ対21の凹凸パターン25は、綾目ローレット51である。
図8(b)に示すように、後段のピンチローラ対22の凹凸パターン25は、平目ローレット52である。したがって、2つのピンチローラ対21,22における互いに対応するローラ外周部分に、互いに異なる凹凸パターン25が形成されている。
【0046】
製管機10Dによれば、前段及び後段の凹凸パターン25が、共に帯状部材90の溝底部97b,98bに押し当てられる。一方、これら前段及び後段の凹凸のパターンが互いに異なるために、帯状部材90における前段の凹凸パターンによる押し当て跡に、後段の凹凸パターンが重なるのを防止できる。詳しくは、前段の凹凸パターン25は綾目ローレット51であるから、その押し当て跡は綾目状になる。これに対して、後段の凹凸パターン25は平目ローレット52であるから、綾目状の押し当て跡の斜めをなす凹部及び凸部に対して、平目ローレット52の各凹部及び凸部が交差する。したがって、後段の凹凸パターン25と帯状部材90との間に大きな摩擦力が生じるようにでき、後段のピンチローラ対22の空転を確実に防止できる。
なお、
図8とは逆に、前段のピンチローラ対21の凹凸パターン25が平目ローレットであり、かつ後段のピンチローラ対22の凹凸パターン25が綾目ローレットであってもよい。綾目ローレットに代えて、斜めローレットとしてもよい。
【0047】
<第5実施形態(
図9)>
図9に示すように、第5実施形態は、第4実施形態の変形例に係る。第5実施形態の製管機10Eにおいては、前段及び後段のピンチローラ対21,22の凹凸パターン25が共に斜めローレット53である。一方、これら前段及び後段の互いに対応する位置の斜めローレット53の傾斜方向(ないしは傾斜角度)が、互いに異なっている。
【0048】
詳しくは、各斜めローレット53は、アウターローラのローラ部23a,23bの周方向(ローラ周方向)に一定間隔で形成された周期溝53aを含む。周期溝53aは、ローラ軸方向及びローラ周方向に対してほぼ45°の角度で傾斜されている。しかも、前段のローラ部23a(
図9(a))の斜めローレット53の周期溝53aの傾斜方向と、後段のローラ部23a(
図9(b))の斜めローレット53の周期溝53aの傾斜方向とは、互いにほぼ90度異なっている。同様に、前段のローラ部23b(
図9(a))の斜めローレット53の周期溝53aの傾斜方向と、後段のローラ部23b(
図9(b))の斜めローレット53の周期溝53aの傾斜方向とは、互いにほぼ90度異なっている。
【0049】
図9(a)に示すように、前段のピンチローラ対21における、ローラ部23a,23bどうしの斜めローレット53の周期溝53aの傾斜方向は、互いにほぼ90度異なっている。
図9(b)に示すように、後段のピンチローラ対22における、ローラ部23a,23bどうしの斜めローレット53どうしの周期溝53aの傾斜方向は、互いにほぼ90度異なっている。
【0050】
製管機10Eによれば、前段の斜めローレット53からなる凹凸パターン25によって、斜め溝状の押し当て跡が形成され得る。該押し当て跡の斜め溝に対して、後段の凹凸パターン25を構成する斜めローレット53が交差する。したがって、後段の凹凸パターン25と帯状部材90との間に大きな摩擦力が生じるようにでき、後段のピンチローラ対22の空転を確実に防止できる。
【0051】
<第6実施形態(
図10)>
図10に示すように、第6実施形態の製管機10Fにおいては、前段(
図10(a))のローラ部23a,23bの凹凸パターン25は、傾斜された周期溝53aを含む斜めローレット53であるのに対し、後段(
図10(b))のローラ部23a,23bの凹凸パターン25は平目ローレット52になっている。平目ローレット52は、アウターローラのローラ部23a,23bの周方向(ローラ周方向)に一定間隔で形成された周期溝52aを含む。周期溝52aは、ローラ周方向と直交し、ローラ軸方向と平行に延びている。したがって、前段のピンチローラ対21の周期溝53aと後段のピンチローラ対22の周期溝52aとは、ローラ周方向に対する角度がほぼ45度異なっている。
このため、前段の斜めローレット53からなる凹凸パターン25による斜めの押し当て跡に対して、後段の凹凸パターン25を構成する平目ローレット52が交差する。これによって、後段の凹凸パターン25と帯状部材90との間に大きな摩擦力が生じるようにでき、後段のピンチローラ対22の空転を確実に防止できる。
なお、
図10とは逆に、前段のローラ部23a,23bの凹凸パターン25が平目ローレットであり、かつ後段のローラ部23a,23bの凹凸パターン25が斜めローレットであってもよい。斜めローレットに代えて、綾目ローレットとしてもよい。
【0052】
<第7実施形態(
図11)>
図11に示すように、第7実施形態の製管機10Gにおいては、前段及び後段のローラ部23a,23bの凹凸パターン25が共に平目ローレット52,52Bになっている。一方、前段と後段の凹凸パターン25のローラ周方向に沿うピッチが互いに異なっている。具体的には、前段(
図11(a))の平目ローレット52のピッチは相対的に大きく、後段(
図11(b))の平目ローレット52Bのピッチは相対的に小さい。
したがって、帯状部材90における前段の凹凸パターン25による押し当て跡に、後段の凹凸パターン25が完全に重なるのを防止できる。これによって、後段のピンチローラ対の空転を防止できる。
なお、
図11とは逆に、前段の平目ローレットが後段の平目ローレットよりもピッチが小さくてもよい。
【0053】
<第8実施形態(
図12)>
図12に示す第8実施形態は、第7実施形態の変形例であり、その製管機10Hにおいては、前段及び後段のローラ部23a,23bの凹凸パターン25が共に綾目ローレット51,51Bになっている。前段(
図12(a))の綾目ローレット51のピッチは相対的に大きく、後段(
図12(b))の綾目ローレット51Bのピッチは相対的に小さい。
なお、
図12とは逆に、前段の綾目ローレットが後段の綾目ローレットよりもピッチが小さくてもよい。
【0054】
<第9実施形態(
図13)>
図13に示すように、第9実施形態の製管機10Iにおいては、帯状部材90の経路に沿って後段のピンチローラ対22の凹凸パターン25における凹部25eの深さ又は凸部25fの高さが、前段のピンチローラ対21の凹凸パターン25における凹部25cの深さ又は凸部25dの高さより大きい。
前段及び後段の凹凸パターン25は、それぞれ平目ローレットでもよく、綾目ローレットでもよく、斜めローレットでもよい。前段の凹凸パターン25と後段の凹凸パターン25とが互いに同一パターンであってもよく、互いに異なるパターンであてもよい。
【0055】
製管時には、前段のピンチローラ対21の凹凸パターン25によって帯状部材90に押し当て跡99(傷)が形成され得る。該前段のピンチローラ対21による押し当て跡99は、相対的に浅い。続いて、帯状部材90は、後段のピンチローラ対22に導入される。該後段のピンチローラ対22の凹凸パターン25が、押し当て跡99と重なったとしても、凸部25fが押し当て跡99よりも深く帯状部材90に食い込む。したがって、後段のピンチローラ対22の空転を防止できる。
帯状部材90には、後段のピンチローラ対22の凹凸パターン25によって、前段の押し当て跡99よりも深い押し当て跡99Bが形成され得る。
【0056】
<第10実施形態(
図14)>
図14(a)に示すように、第10実施形態の製管機10Jにおいては、前段のピンチローラ対21(1のピンチローラ対)におけるインナーローラ24の外周面に文字型54が形成されている。文字型54は、凹凸パターンの一部として提供されている。文字型54は、好ましくはローラ部23a,23bと対応する位置に配置されている。これによって、
図14(c)に示すように、帯状部材90における表側面91a(螺旋管の内周面となる面)に文字91cを刻設できる。
【0057】
要するに、凹凸パターンの一部を文字型54とすることによって、その押し当て跡が文字91cとなる。したがって、押し当て跡を有用化できる。
図14(b)に示すように、後段のピンチローラ対22のアウターローラ23には、凹凸パターン25が形成されている。該凹凸パターン25は、平目ローレット52であるが、綾目ローレット又は斜めローレットであってもよい。
なお、文字型54が、後段のピンチローラ対22に形成されていてもよく、前段のピンチローラ対21には、平目ローレット、綾目ローレット、斜めローレットなどの凹凸パターン25が形成されていてもよい。この場合、後段のピンチローラ対22が「1のピンチローラ対」となる。
【0058】
<第11実施形態(
図15~
図16)>
図15に示すように、第11実施形態における螺旋管形成用装置3Kは、巻癖形成機30を備えている。
図16に示すように、巻癖形成機30は、支持フレーム31と、巻癖形成部32を含む。支持フレーム31は、外径が巻き付けドラム5の内径より少し小径の環状に形成されている。支持フレーム31ひいては巻癖形成機30が、地上の巻き付けドラム5内の空洞部に収容され、かつ巻き付けドラム5の軸線L5まわりに回転可能に保持されている。
【0059】
図16に示すように、巻癖形成部32は、保持フレーム33と、ガイド部34と、連結フレーム35と、少なくとも2つのピンチローラ対41,42を有している。保持フレーム33は、外径が支持フレーム31の内径より少し小径の環状に形成されている。保持フレーム33ひいては巻癖形成部32が、支持フレーム31の内部に収容され、かつ軸線L5に沿って移動可能に保持されている。
【0060】
保持フレーム33の内側にガイド部34と、連結フレーム35と、ピンチローラ対41,42が配置されている。連結フレーム35を介して、ピンチローラ対41,42及びガイド部34が、保持フレーム33に連結されている。帯状部材90の後述する経路に沿って前段のピンチローラ対41と、後段のピンチローラ対42とが、互いに軸線L5を中心にしてほぼ180度離れ、かつ軸線L5の方向(
図16において紙面と直交する方向)にずれて配置されている。各ピンチローラ対41,42は、アウターローラ43と、インナーローラ44を含む。
ピンチローラ対41,42の少なくとも1つに駆動モータ(図示省略)がトルク伝達可能に接続されている。
ガイド部34は、ピンチローラ対41,42を結ぶ部分螺旋状の板状に形成されている。
【0061】
帯状部材90は、巻き付けドラム5の内周から内側へ繰り出され、前段(一方)のピンチローラ対41のアウターローラ43とインナーローラ44の間に通されるとともに、ピンチローラ対41の駆動によって巻癖形成部32内に引き込まれる。ピンチローラ対41から出た帯状部材90は、ガイド部34に沿って送られることで、所定の曲率の巻癖が付与される。さらに、帯状部材90は、後段(他方)のピンチローラ対42のアウターローラ43とインナーローラ44の間に通されて送り出される。
このようにして巻癖が付与された帯状部材90が、地上から人孔4に挿し入れられ、既設管1内の製管機10Kへ供給されて、更生管9に製管される。帯状部材90の剛性が高くても、巻き癖を付与しておくことで、地上から製管機10Kまで帯状部材90を円滑に供給でき、製管を容易化できる。
【0062】
巻癖形成機30の2つのピンチローラ対41,42のローラ外周部分には、帯状部材90に形成され得る押し当て跡が互いに一致しないように、それぞれ凹凸パターン45が形成されている。凹凸パターン45としては、前述した第1実施形態から第10実施形態の製管機10,10B~10Jのうち何れかの凹凸パターン25と同様の構成を適用できる。これによって、帯状部材90に前段のピンチローラ対41による凹凸パターン45の押し当て跡が形成されたとしても、後段のピンチローラ対42の空転を防止でき、巻癖形成機30の駆動力を帯状部材90に確実に伝達することができる。
【0063】
詳細な図示は省略するが、製管機10Kのピンチローラ対21,22には、何れかの製管機10,10B~10Jと同様の凹凸パターン25が形成されている。これらピンチローラ対21,22の凹凸パターン25は、帯状部材90に形成され得る押し当て跡が互いに一致しない関係になっている。
【0064】
さらに、巻癖形成機30の後段のピンチローラ対42の凹凸パターン45と、製管機10Kの前段のピンチローラ対21の凹凸パターン25とが、帯状部材90に形成され得る押し当て跡が互いに一致しない関係になっていてもよい。
更には、螺旋管形成用装置3Kの4つのピンチローラ対41,42,21,22の凹凸パターン45,25どうしが、帯状部材90に形成され得る押し当て跡が互いに一致しない関係になっていてもよい。
これによって、帯状部材90に相対的に前段のピンチローラ対による押し当て跡が形成されたとしても、相対的に後段(2つめ以降)のピンチローラ対の空転を防止でき、巻癖形成機30及び製管機10Kの駆動力を帯状部材90に確実に伝達することができる。
【0065】
本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の改変をなすことができる。
例えば、製管機が3つ以上のピンチローラ対を有していてもよく、これらピンチローラ対の少なくとも2つが、帯状部材90に形成され得る押し当て跡が互いに一致しないように、それぞれ凹凸パターンが形成されていてもよい。巻癖形成機が3つ以上のピンチローラ対を有していてもよく、これらピンチローラ対の少なくとも2つが、帯状部材90に形成され得る押し当て跡が互いに一致しないように、それぞれ凹凸パターンが形成されていてもよい。
押し当て跡は、帯状部材90に形成され得るものであればよく、必ずしも目視などで判別可能に形成される必要はない。
巻癖形成機は、2以上のピンチローラ対を含み、帯状部材90に巻癖を付与するものであればよく、第10実施形態(
図16)の構造に限られない。
本発明は、既設管の内周にライニングされる更生管の形成に限らず、種々の螺旋管の形成に適用できる。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明は、例えば老朽化した下水管の更生施工技術に適用できる。
【符号の説明】
【0067】
1 既設管
3,3K 螺旋管形成用装置
5 巻き付けドラム
L5 巻き付けドラムの軸線
9 更生管(螺旋管)
90 帯状部材
90a 未製管の帯部分
91 帯本体
91a 表側面(駆動面)
93 第1嵌合部
94 第2嵌合部
96 補強帯材
97b、98b 溝底部(駆動面)
10 製管機
10B~10K 製管機
11 装置フレーム
20 駆動部
21 前段(一方)のピンチローラ対
22 後段(他方)のピンチローラ対
23 アウターローラ
23a 延伸方向の前方側のローラ部
23b 延伸方向の後方側のローラ部
23d ローラ外周部分
24 インナーローラ
24d ローラ外周部分
25 凹凸パターン
25c 前段の凹部
25d 前段の凸部
25e 後段の凹部
25f 後段の凸部
30 巻癖形成機
32 巻癖形成部
41 前段(一方)のピンチローラ対
42 後段(他方)のピンチローラ対
43 アウターローラ
44 インナーローラ
45 凹凸パターン
51 綾目ローレット(凹凸パターン)
51B 小ピッチの綾目ローレット(凹凸パターン)
52 平目ローレット(凹凸パターン)
52a 周期溝
52B 小ピッチの平目ローレット(凹凸パターン)
53 斜めローレット(凹凸パターン)
53a 周期溝
54 文字型(凹凸パターン)
91c 文字(押し当て跡)
99 前段の押し当て跡
99B 後段の押し当て跡