(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】山留めH鋼の挿入方法
(51)【国際特許分類】
E02D 5/20 20060101AFI20240510BHJP
E02D 5/08 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
E02D5/20
E02D5/08
(21)【出願番号】P 2020163450
(22)【出願日】2020-09-29
【審査請求日】2023-04-19
(73)【特許権者】
【識別番号】000166432
【氏名又は名称】戸田建設株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001014
【氏名又は名称】弁理士法人東京アルパ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐野 大作
(72)【発明者】
【氏名】浅野 均
(72)【発明者】
【氏名】稲井 慎介
(72)【発明者】
【氏名】竹中 啓之
【審査官】彦田 克文
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-144876(JP,A)
【文献】特開2010-222943(JP,A)
【文献】実開昭50-042024(JP,U)
【文献】実開昭49-141604(JP,U)
【文献】特開2002-138478(JP,A)
【文献】特開2001-241037(JP,A)
【文献】特公昭49-005099(JP,B1)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0013244(KR,A)
【文献】実開平05-087027(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 5/20
E02D 5/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
山留め壁を構築するときに地中に挿入する山留めH鋼の挿入方法であって、
継手で
互いに長手方向に接合するH鋼同士のそれぞれのウェブ及びフランジの内側部に沿った位置に
、前記継手として機能するコ字状の連結金具を配設し、該連結金具と前記ウェブとをボルトで接合すると共に、前記連結金具と前記フランジの内側部とを溶接したH鋼を用い、
該H鋼の前記フランジの外側部を地表面に設置したガイド用の定規材に沿わした状態で、該H鋼を地中に挿入すること
を特徴とする山留めH鋼の挿入方法。
【請求項2】
前記定規材は、前記H鋼の前記フランジに沿った形状の凹溝部が形成されており、
該凹溝部に前記フランジの外側部を沿わした状態で、前記H鋼を地中に挿入すること
を特徴とする請求項1に記載の山留めH鋼の挿入方法。
【請求項3】
前記定規材は、地中に挿入する前記H鋼の両方のフランジ側にそれぞれ設置し、
それぞれの前記凹溝部に前記両方のフランジの外側部をそれぞれ沿わした状態で、前記H鋼を地中に挿入すること
を特徴とする請求項2に記載の山留めH鋼の挿入方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソイルセメント壁又は親杭横矢板壁等の山留め壁を構築するときに、地中に挿入する山留めH鋼の挿入方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ソイルセメント壁又は親杭横矢板壁等の山留め壁を構築するときには、
図3に示すように、応力材としてH鋼3を地中に挿入するが、その場合、掘削深さや現場の広さあるいは現場に搬入可能な車輌等の諸条件によって、複数のH鋼3を継手8で接合する必要がある。
継手8による接合は、
図4に示すように、具体的にはボルト1と添板7とを用いたボルト接合2であり、H鋼3のフランジ3aとウェブ3bとにそれぞれボルト接合2を行う。
【0003】
一方、H鋼3を地中の孔部4に挿入する時には、地表面に設置する鉄板やH鋼等のガイド用の定規材5を目安として、挿入位置の管理を行うが、フランジ3aの外側にボルト1の軸部1aやナット6が突出しているために、その突出寸法分だけ定規材5から間隔Lを離した位置にH鋼3を挿入する必要がある(
図4参照)。
【0004】
なお、従来における山留めH形鋼のボルト接合の一例としては、特開2013-144876号公報の
図5に記載されている(特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2013-144876号公報(
図5参照)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
従来のH鋼3を地中に挿入する場合においては、上述のように、フランジ3aの外側にボルト1の軸部1aやナット6等が突出しているため、その突出寸法分だけ定規材5から間隔Lを離した位置にH鋼3を挿入する必要がある。つまり、H鋼3を定規材5に沿わした状態で挿入できない。その結果、定規材5からフランジ3aまでの距離を測りながら挿入することとなり、H鋼3の挿入位置を正確に管理することが煩雑で難しいという問題点を有している。
【0007】
また、H鋼3を定規材5に沿わした状態で挿入できないので、挿入するH鋼3にズレが生じ始めたときに、挿入位置を拘束するものを設けられない。つまり、定規材5が挿入位置のズレを抑止できないので、慎重な施行が求められることとなり作業が厄介であるという問題点を有している。
【0008】
従って、従来例における場合においては、H鋼3を地中に挿入するときに、定規材5に沿わした状態で挿入できて、挿入位置の管理を容易にすることと、H鋼3にズレが生じ始めたときに、定規材5が挿入位置を拘束できて、ズレを抑止できるようにすることとに解決しなければならない課題を有している。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来例の課題を解決するための本発明の要旨は、
山留め壁を構築するときに地中に挿入する山留めH鋼の挿入方法であって、継手で互いに長手方向に接合するH鋼同士のそれぞれのウェブ及びフランジの内側部に沿った位置に、前記継手として機能するコ字状の連結金具を配設し、該連結金具と前記ウェブとをボルトで接合すると共に、前記連結金具と前記フランジの内側部とを溶接したH鋼を用い、該H鋼の前記フランジの外側部を地表面に設置したガイド用の定規材に沿わした状態で、該H鋼を地中に挿入することである。
【0010】
また、前記定規材は、前記H鋼の前記フランジに沿った形状の凹溝部が形成されており、該凹溝部に前記フランジの外側部を沿わした状態で、前記H鋼を地中に挿入すること、;
前記定規材は、地中に挿入する前記H鋼の両方のフランジ側にそれぞれ設置し、それぞれの前記凹溝部に前記両方のフランジの外側部をそれぞれ沿わした状態で、前記H鋼を地中に挿入すること、;
を含むものである。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る山留めH鋼の挿入方法によれば、継手で接合するH鋼同士のそれぞれのウェブ及びフランジの内側部に沿った位置にコ字状の連結金具を配設し、連結金具とウェブとをボルトで接合すると共に、連結金具とフランジの内側部とを溶接したH鋼を用いるので、フランジの外側部にボルトの軸部やナットが突出しない。従って、H鋼のフランジの外側部をガイド用の定規材に沿わした状態で、H鋼を地中に挿入できるので、挿入位置の管理が容易であるという優れた効果を奏する。
【0012】
また、定規材は、H鋼のフランジに沿った形状の凹溝部が形成されており、凹溝部にフランジの外側部を沿わした状態で、H鋼を地中に挿入することによって、H鋼にズレが生じ始めたときに、凹溝部が挿入位置を拘束できてズレを抑止できるという優れた効果を奏する。
【0013】
そして、定規材は、地中に挿入するH鋼の両方のフランジ側にそれぞれ設置し、それぞれの凹溝部に両方のフランジの外側部をそれぞれ沿わした状態で、H鋼を地中に挿入することよって、H鋼にズレが生じ始めたときに、フランジの両側から凹溝部が挿入位置を拘束するので、ズレをよりいっそう抑止できるという優れた効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】本発明の第1実施例に係るH鋼と定規材とを示す平面図である。
【
図2】本発明に第2実施例に係るH鋼と定規材とを示す平面図である。
【
図3】従来例に係るH鋼を地中に挿入する状態を説明する断面図である。
【
図4】従来例に係るH鋼と定規材とを示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
次に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。本発明は、
図1に示すように、山留め壁を構築するときに地中に挿入する山留めH鋼の挿入方法に関するものである。
図1中の符号11はH鋼を示し、符号12は連結金具(継手)を示し、符号13は掘削した孔部を示し、符号14は孔部13の地表面に設置するガイド用の定規材を示す。定規材14は、具体的には、鉄板やH鋼等である。
【実施例1】
【0016】
まず、本発明の第1実施例に係る山留めH鋼の挿入方法に用いるH鋼11について説明する。
H鋼11は、
図1に示すように、継手で接合するH鋼11同士のそれぞれのフランジ11a及びウェブ11bの内側部に沿った位置にコ字状の連結金具12を配設し、連結金具12とウェブ11bとをボルト15で接合すると共に、連結金具12とフランジ11aの内側部とを溶接した構成である。
図1中の符号15aはボルト15の軸部を示し、符号16は軸部15aに螺着したナットを示し、符号17は溶接部を示す。
【0017】
そして、
図1に示すように、H鋼11の
フランジ11aの外側部を、地表面に設置したガイド用の定規材14に沿わした状態で、H鋼11を地中の孔部13に挿入する。
【0018】
H鋼11は、連結金具12とフランジ11aの内側部とを溶接部17をもって接合しているので、従来例のようにフランジ11aの外側部にボルト15の軸部15aやナット16が突出しない。
従って、H鋼11のフランジ11aの外側部をガイド用の定規材14に沿わした状態で、H鋼11を地中に挿入できる。つまり、従来例のように定規材14からフランジ11bまでの距離を測りながら挿入する必要がないので、H鋼11の挿入位置を正確に管理することが容易である。
【実施例2】
【0019】
次に、本発明の第2実施例に係る山留めH鋼の挿入方法に用いる定規材14について説明する。
定規材14の端部には、
図2に示すように、H鋼11のフランジ11aに沿った形状の凹溝部18が形成されている。そして、凹溝部18にフランジ11aの外側部を沿わした状態で、H鋼11を地中に挿入する。
このように、フランジ11aの外側部を凹溝部18に沿わした状態でH鋼11を地中に挿入することにより、H鋼11にズレが生じ始めたときに、凹溝部18が挿入位置を拘束しズレを抑止できる。
【0020】
また、定規材14は、
図2に示すように、地中に挿入するH鋼11の両方のフランジ11a側にそれぞれ設置し、それぞれの凹溝部18に対して、両方のフランジ11aの外側部をそれぞれ沿わした状態で、H鋼11を地中に挿入するのが更によい。
この場合は、H鋼11にズレが生じ始めたときに、フランジ11aの両側から凹溝部18が挿入位置を拘束するので、ズレをいっそう抑止できる。
【0021】
以上のように構成される山留めH鋼の挿入方法は、継手で接合するH鋼11同士のそれぞれのフランジ11a及びウェブ11bの内側部に沿った位置に、コ字状の連結金具12を配設し、連結金具12とウェブ11bとをボルト15で接合すると共に、連結金具12とフランジ11aの内側部とを溶接したH鋼11を用いるので、フランジ11aの外側部にボルト15の軸部15aやナット16が突出しない。
従って、H鋼11のフランジ11aの外側部をガイド用の定規材14に沿わした状態で、H鋼11を地中に挿入できるので、挿入時の施行及び管理を簡略化できるだけでなく、H鋼11の建込精度も向上する。
なお、通常は本設の杭の建込精度が1/100以下であるのに対して、山留めH鋼では、仮設の場合で1/100~1/150以下、本設利用の場合で1/150から1/200程度であり、本設の杭よりも厳しい精度が求められる。
【符号の説明】
【0022】
1 ボルト
1a 軸部
2 ボルト接合
3 H鋼
3a フランジ
3b ウェブ
4 孔部
5 定規材
6 ナット
7 添板
8 継手
11 H鋼
11a フランジ
11b ウェブ
12 連結金具(継手)
13 掘削した孔部
14 ガイド用の定規材
15 ボルト
15a 軸部
16 ナット
17 溶接部
18 凹溝部