(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】換気システム及び換気方法
(51)【国際特許分類】
E21F 5/20 20060101AFI20240510BHJP
【FI】
E21F5/20
(21)【出願番号】P 2020178840
(22)【出願日】2020-10-26
【審査請求日】2023-09-01
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】594036135
【氏名又は名称】株式会社東宏
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【氏名又は名称】堀 城之
(74)【代理人】
【識別番号】100162363
【氏名又は名称】前島 幸彦
(72)【発明者】
【氏名】森野 弘之
(72)【発明者】
【氏名】小林 誠
(72)【発明者】
【氏名】山下 秀文
(72)【発明者】
【氏名】小林 雅彦
【審査官】小倉 宏之
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-270288(JP,A)
【文献】特開2016-033325(JP,A)
【文献】特開2006-183403(JP,A)
【文献】特開昭58-065900(JP,A)
【文献】特開2009-256929(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E21F 5/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
工事中のトンネルの汚染空気を換気する換気システムであって、
切羽から距離が最も近い第1地点における粉塵濃度を測定する第1測定器と、
前記切羽から前記第1地点よりも離れた第2地点における粉塵濃度を測定する第2測定器と、
前記切羽から前記第2地点よりも離れた第3地点における粉塵濃度を測定する第3測定器と、
送気口が前記第1地点と前記第2地点との間に配置された送気ダクトを経由して外部空気を前記切羽に向けて送風する送風機と、
吸気用伸縮ダクトを経由で吸気した空気中の粉塵を集塵し、排気口が前記第2地点と前記第3地点との間に配置されている排気ダクトを経由して集塵後の空気を排気する集塵機と、
前記吸気用伸縮ダクトの吸気口を前記第1地点の前記汚染空気を吸気する伸長位置と前記第2地点の前記汚染空気を吸気する短縮位置とに移動させる移動装置と、
前記第1測定器、前記第2測定器及び前記第3測定器の測定結果に基づいて、前記送風機の送気量、前記集塵機の吸気量及び前記吸気口の位置を制御する換気制御装置と、を具備することを特徴とする換気システム。
【請求項2】
前記換気制御装置は、前記第3測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル未満の場合に、予め設定された基準送気量で前記送風機を駆動させ、前記第3測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル以上の場合に、前記送風機による前記送気量を前記基準送気量よりも増加させることを特徴とする請求項1に記載の換気システム。
【請求項3】
前記換気制御装置は、前記第1測定器の測定結果と前記第2測定器の測定結果とのいずれもが粉塵濃度目標レベル未満の場合に、予め設定された基準吸気量で前記集塵機を駆動させ、前記第1測定器の測定結果と前記第2測定器の測定結果とのいずれか1以上が粉塵濃度目標レベル以上の場合に、前記集塵機による前記吸気量を前記基準吸気量よりも増加させることを特徴とする請求項1又は2に記載の換気システム。
【請求項4】
前記換気制御装置は、前記第1測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル以上であり、前記第2測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル未満の場合に、前記移動装置を制御して前記吸気用伸縮ダクトの前記吸気口を前記伸長位置に移動させ、前記第2測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル以上の場合に、前記移動装置を制御して前記吸気用伸縮ダクトの前記吸気口を前記短縮位置に移動させることを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載の換気システム。
【請求項5】
前記汚染空気を物理的に閉じ込めるカーテンを具備し、
前記移動装置は、前記カーテンを前記第1地点と前記第2地点との間の第1位置と、前記第2地点と前記第3地点との間の第2位置とに移動させ、
前記換気制御装置は、前記第1測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル以上であり、前記第2測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル未満の場合に、前記移動装置を制御して前記カーテンを前記第1位置に移動させ、前記第2測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル以上の場合に、前記移動装置を制御して前記カーテンを前記第2位置に移動させることを特徴とする請求項1乃至4のいずれかに記載の換気システム。
【請求項6】
工事中のトンネルの汚染空気を換気する換気方法であって、
第1測定器、第2測定器及び第3測定器によって切羽から距離が最も近い第1地点、前記切羽から前記第1地点よりも離れた第2地点及び前記切羽から前記第2地点よりも離れた第3地点における粉塵濃度をそれぞれ測定し、
前記第1測定器、前記第2測定器及び前記第3測定器の測定結果に基づいて、送気口が前記第1地点と前記第2地点との間に配置された送気ダクトを経由して外部空気を前記切羽に向けて送風する送風機の送気量の制御と、吸気用伸縮ダクトを経由で吸気した空気中の粉塵を集塵し、排気口が前記第2地点と前記第3地点との間に配置されている排気ダクトを経由して集塵後の空気を排気する集塵機の吸気量の制御と、前記吸気用伸縮ダクトの吸気口を前記第1地点の前記汚染空気を吸気する伸長位置と前記第2地点の前記汚染空気を吸気する短縮位置とに移動させる移動装置の制御とを実行することを特徴とする換気方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、トンネル工事において切羽付近で発生する汚染空気を換気する換気システム及び換気方法に関する。
【背景技術】
【0002】
トンネル工事では、爆薬による発破や重機による掘削などのさまざまな作業が行われることから、特に切羽付近では大量の粉塵や、重機の排気ガス、発破によるガス等で汚染された汚染空気が発生する。発生した汚染空気はトンネル内において拡散し、充満するので、汚染空気の低減対策は、作業環境の改善において必須であり、速やかに換気することが望まれる。
【0003】
汚染空気の換気には、抗外から外気を送風する送風機と、坑内に設置する集塵機と、切羽の粉塵を物理的に封じ込める切羽封じ込め装置(例えば、特許文献1参照)とが一般的に用いられ、「ずい道等建設工事における粉塵対策に関するガイドライン」に沿って運用されている。このガイドラインの換気指針には、半月以内ごとに1回、定期に次の事項について測定を行うこと、粉塵濃度の測定点は、切羽から坑口に向かって50メートル程度離れた位置における断面において、床上50センチメートル以上150センチメートル以下の同じ高さで、それぞれの側壁から1メートル以上離れた点及び中央の点の3点とすること、そして、粉塵濃度目標レベルは、3mg/m3以下とすることが定められている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、トンネル建設工事の切羽付近における作業環境等の改善のための技術的事項に関する検討会によると、2021年4月に換気指針の改定が予定されている。改定される換気指針では、粉塵濃度目標レベルは、2mg/m3以下に厳格化され、粉塵濃度の測定点が増え、より精密な測定が求められる。
【0006】
なお、送風機や集塵機をフルパワーで常時稼働させた場合には、粉塵濃度を改善させることが当然可能であるが、電力コストがかさむという問題点がある。
【0007】
本発明は、このような状況に鑑みてなされたものであり、上述の課題を解消し、送風機の送気量と集塵機の吸気量とを適切化して、粉塵濃度を効率的に低下させることできる換気システム及び換気方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の換気システムは、工事中のトンネルの汚染空気を換気する換気システムであって、切羽から距離が最も近い第1地点における粉塵濃度を測定する第1測定器と、前記切羽から前記第1地点よりも離れた第2地点における粉塵濃度を測定する第2測定器と、前記切羽から前記第2地点よりも離れた第3地点における粉塵濃度を測定する第3測定器と、送気口が前記第1地点と前記第2地点との間に配置された送気ダクトを経由して外部空気を前記切羽に向けて送風する送風機と、吸気用伸縮ダクトを経由で吸気した空気中の粉塵を集塵し、排気口が前記第2地点と前記第3地点との間に配置されている排気ダクトを経由して集塵後の空気を排気する集塵機と、前記吸気用伸縮ダクトの吸気口を前記第1地点の前記汚染空気を吸気する伸長位置と前記第2地点の前記汚染空気を吸気する短縮位置とに移動させる移動装置と、前記第1測定器、前記第2測定器及び前記第3測定器の測定結果に基づいて、前記送風機の送気量、前記集塵機の吸気量及び前記吸気口の位置を制御する換気制御装置と、を具備することを特徴とする。
さらに、本発明の換気システムにおいて、前記換気制御装置は、前記第3測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル未満の場合に、予め設定された基準送気量で前記送風機を駆動させ、前記第3測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル以上の場合に、前記送風機による前記送気量を前記基準送気量よりも増加させても良い。
さらに、本発明の換気システムにおいて、前記換気制御装置は、前記第1測定器の測定結果と前記第2測定器の測定結果とのいずれもが粉塵濃度目標レベル未満の場合に、予め設定された基準吸気量で前記集塵機を駆動させ、前記第1測定器の測定結果と前記第2測定器の測定結果とのいずれか1以上が粉塵濃度目標レベル以上の場合に、前記集塵機による前記吸気量を前記基準吸気量よりも増加させても良い。
さらに、本発明の換気システムにおいて、前記換気制御装置は、前記第1測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル以上であり、前記第2測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル未満の場合に、前記移動装置を制御して前記吸気用伸縮ダクトの前記吸気口を前記伸長位置に移動させ、前記第2測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル以上の場合に、前記移動装置を制御して前記吸気用伸縮ダクトの前記吸気口を前記短縮位置に移動させても良い。
さらに、本発明の換気システムにおいて、前記汚染空気を物理的に閉じ込めるカーテンを具備し、前記移動装置は、前記カーテンを前記第1地点と前記第2地点との間の第1位置と、前記第2地点と前記第3地点との間の第2位置とに移動させ、前記換気制御装置は、前記第1測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル以上であり、前記第2測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル未満の場合に、前記移動装置を制御して前記カーテンを前記第1位置に移動させ、前記第2測定器の測定結果が粉塵濃度目標レベル以上の場合に、前記移動装置を制御して前記カーテンを前記第2位置に移動させても良い。
また、本発明の換気方法は、工事中のトンネルの汚染空気を換気する換気方法であって、第1測定器、第2測定器及び第3測定器によって切羽から距離が最も近い第1地点、前記切羽から前記第1地点よりも離れた第2地点及び前記切羽から前記第2地点よりも離れた第3地点における粉塵濃度をそれぞれ測定し、前記第1測定器、前記第2測定器及び前記第3測定器の測定結果に基づいて、送気口が前記第1地点と前記第2地点との間に配置された送気ダクトを経由して外部空気を前記切羽に向けて送風する送風機の送気量の制御と、吸気用伸縮ダクトを経由で吸気した空気中の粉塵を集塵し、排気口が前記第2地点と前記第3地点との間に配置されている排気ダクトを経由して集塵後の空気を排気する集塵機の吸気量の制御と、前記吸気用伸縮ダクトの吸気口を前記第1地点の前記汚染空気を吸気する伸長位置と前記第2地点の前記汚染空気を吸気する短縮位置とに移動させる移動装置の制御とを実行することを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、切羽からの距離が異なる第1地点、第2地点、第3地点における測定結果に基づいて送風機の送気量と集塵機の吸気量と吸気口の位置とを適切化して制御することができ、粉塵濃度を効率的に低下させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明に係る換気システムの第1実施形態の構成を示すシステム構成図である。
【
図2】
図1に示す換気制御装置の構成例を示す図である。
【
図3】
図1に示す換気制御装置の制御動作を説明するフローチャートである。
【
図4】
図1に示す換気システムの動作設定テーブル例を示す図である。
【
図5】本発明に係る換気システムの第2実施形態の構成を示すシステム構成図である。
【
図6】
図5に示す換気システムの動作テーブル例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
次に、本発明を実施するための形態(以下、単に「実施形態」という)を、図面を参照して具体的に説明する。
【0012】
(第1実施形態)
第1実施形態の換気システムは、トンネル工事において切羽周辺で発生する汚染空気を換気するシステムであり、
図1を参照すると、測定器1
X1~1
Z2と、送気ダクト21を備えた送風機2と、吸気用伸縮ダクト31と排気ダクト32とを備えた集塵機3と、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aの位置を移動させる移動装置4と、換気制御装置5とで構成されている。
【0013】
測定器1X1~1Z2は、空気中の粉塵濃度を測定する粉塵濃度測定器であり、例えば、粉塵に光線を照射して透過光量や散乱された光量を測定する公知の測定器が用いられる。
【0014】
測定器1X1、1X2は、切羽から距離が最も近いX地点(例えば、切羽から距離が15~20mの地点)における粉塵濃度を測定する位置に配置されている。測定器1X1、1X2は、例えば、床上50センチメートル以上150センチメートル以下の同じ高さで、それぞれの側壁から1メートル以上離れてそれぞれ配置される。
【0015】
測定器1Y1、1Y2は、切羽から距離がX地点よりも離れたY地点(例えば、切羽から距離が35mの地点)における粉塵濃度を測定する位置に配置されている。測定器1Y1、1Y2は、例えば、床上50センチメートル以上150センチメートル以下の同じ高さで、それぞれの側壁から1メートル以上離れてそれぞれ配置される。
【0016】
測定器1Z1、1Z2は、切羽から距離がY地点よりも離れたZ地点(例えば、切羽から距離が50mの地点)における粉塵濃度を測定する位置に配置されている。測定器1Z1、1Z2は、例えば、床上50センチメートル以上150センチメートル以下の同じ高さで、それぞれの側壁から1メートル以上離れてそれぞれ配置される。
【0017】
送風機2は、外部空気を送気ダクト21経由でトンネルの内部に送風する。送気ダクト21の送気口21aは、X地点とY地点との間に切羽に向けて配置されている。これにより、送風機2による送風は、切羽に向けて行われる。
【0018】
集塵機3は、フィルターや送風ファンを備え、吸気用伸縮ダクト31経由で吸気した空気中の粉塵を集塵し、集塵後の空気を排気ダクト32経由で排気する。吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aは、切羽に向けて配置され、吸気用伸縮ダクト31の伸縮によって、
図1(b)に示すX地点の空気を吸気する伸長位置と、
図1(a)に示すY地点の空気を吸気する短縮位置との間を移動可能に構成されている。また、排気ダクト32の排気口32aは、Y地点とZ地点との間に坑口側に向けて配置されている。
【0019】
移動装置4は、トンネル内周に設置されたレール8に沿ってトンネルの軸方向に移動する移動機構と、吸気用伸縮ダクト31との連結機構とを備えている。そして、移動装置4は、移動に伴って吸気用伸縮ダクト31を伸縮させ、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aを伸長位置と短縮位置とに移動させる。
【0020】
換気制御装置5は、パーソナルコンピューター等の情報処理装置であり、測定器1X1~1Z2による測定結果D(粉塵濃度)に応じて、送風機2の送気量と、集塵機3の吸気量(排気量)と、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aの位置(伸長位置or短縮位置)とを制御する。
【0021】
換気制御装置5は、
図2を参照すると、測定器1
X1~1
Z2の測定結果Dを受け付けるセンサインターフェース(センサI/F)51と、液晶ディスプレイ等の表示部52と、フラッシュメモリやHDD等で構成された記憶部53と、外部ネットワークに接続された通信部54と、制御部60とを備えている。
【0022】
制御部60は、CPU(Central Processing Unit)、ROM(Read Only Memory)、RAM(Random Access Memory)等を備えたマイクロコンピュータ等の情報処理部である。ROMには換気制御装置5が動作を実行するための制御プログラムが記憶されている。制御部60は、ROMに記憶されている制御プログラムを読み出し、制御プログラムをRAMに展開させることで、換気制御装置5の制御を行う。
【0023】
また、制御部60は、測定結果判定部61、送気制御部62、吸気制御部63、移動制御部64として機能する。
【0024】
測定結果判定部61は、センサI/F51によって受け付けた測定器1X1~1Z2のそれぞれの測定結果Dと、予め設定された粉塵濃度目標レベルDth(例えば、2mg/m3)とそれぞれを比較する。
【0025】
そして、測定結果判定部61は、測定器1X1、1X2によるX地点での測定結果DXと、測定器1Y1、1Y2によるY地点での測定結果DYとのいずれか1以上が粉塵濃度目標レベルDth以上である場合、吸気制御部63に対して測定結果DX、DYの最大値を通知すると共に、吸気量の増加を指示する。
【0026】
また、測定結果判定部61は、測定器1Z1、1Z2によるZ地点での測定結果DZのいずれか1以上が粉塵濃度目標レベルDth以上である場合、送気制御部62に対して粉塵濃度目標レベルDth以上であった測定結果DZの最大値を通知すると共に、送気量の増加を指示する。
【0027】
さらに、測定結果判定部61は、測定器1X1、1X2によるX地点での測定結果DXのいずれか1以上が粉塵濃度目標レベルDth以上であり、測定器1Y1、1Y2によるY地点での測定結果DYのいずれもが粉塵濃度目標レベルDth未満である場合、移動制御部64に対して移動装置4の切羽側への移動を指示し、測定器1Y1、1Y2によるY地点での測定結果DYのいずれか1以上が粉塵濃度目標レベルDth以上である場合、移動制御部64に対して移動装置4の坑口側への移動を指示する。
【0028】
送気制御部62は、測定結果判定部61から送気量の増加が指示されていない定常状態において、予め設定された基準送気量で送風機2を駆動させ、吸気制御部63は、測定結果判定部61から吸気量の増加が指示されていない定常状態において、基準送気量よりも大きい値(例えば、2倍)に予め設定された基準吸気量で集塵機3を駆動させる。
【0029】
基準吸気量を基準送気量よりも大きい値とすることで、集塵機3の排気量も基準送気量よりも大きくなるため、基準吸気量と基準送気量との差分が坑口側から切羽側への空気流れとなり、汚染空気を集塵機3よりも切羽側に封じ込めることができる。
【0030】
送気制御部62は、測定結果判定部61から送気量の増加が指示されると、送風機2の送気量を基準送気量よりも大きい値に増加させる。送気制御部62は、通知された測定結果DZの最大値に応じて基準送気量からの増加量を設定し、測定結果DZが大きいほど大きい増加量とする。
【0031】
吸気制御部63は、測定結果判定部61から吸気量の増加が指示されると、集塵機3の吸気量を基準吸気量よりも大きい値に増加させる。吸気制御部63は、通知された測定結果DX、DYの最大値に応じて基準吸気量からの増加量を設定し、測定結果DX、DYが大きいほど大きい増加量とする。また、吸気制御部63は、測定結果判定部61から吸気量の増加が指示されたときに、送気制御部62も測定結果判定部61から送気量の増加が指示される場合、基準吸気量からの増加量を、送気制御部62によって設定された基準送気量からの増加量よりも大きい値に設定する。
【0032】
移動制御部64は、測定結果判定部61から伸長位置への移動が指示されると、移動装置4を切羽側に移動させることで、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aをX地点の空気を吸気する伸長位置に移動させる。なお、伸長位置への移動指示の際に、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aがすでに伸長位置にある場合、そのままの状態が維持されることになる。
【0033】
また、移動制御部64は、測定結果判定部61から短縮位置への移動が指示されると、移動装置4を坑口側に移動させることで、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aをY地点の空気を吸気する短縮位置に移動させる。なお、短縮位置への移動指示の際に、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aがすでに短縮位置にある場合、そのままの状態が維持されることになる。
【0034】
次に、換気制御装置5による制御動作について
図3を参照して詳細に説明する。
測定結果判定部61は、所定のタイミング(例えば、10分毎)にZ地点の測定結果D
Zを粉塵濃度目標レベルD
th(例えば、2mg/m
3)と比較し(ステップS101)、C地点の測定結果D
Zが粉塵濃度目標レベルD
th未満か否かを判断する(ステップS102)。
【0035】
ステップS102でZ地点の測定結果DZが粉塵濃度目標レベルDth未満である場合、測定結果判定部61は、送気量の増加を指示することなく、送気制御部62は、送風機2を基準送気量で駆動させる(ステップS103)。
【0036】
ステップS102でZ地点の測定結果DZが粉塵濃度目標レベルDth以上である場合、測定結果判定部61は、送気制御部62に対してZ地点の測定結果DZを通知すると共に、送気量の増加を指示し、送気制御部62は、通知された測定結果DZに応じた増加量で送風機2の送気量を基準送気量から増加させる(ステップS104)。送気量の増加は、Z地点において坑口側に向かう空気の増加となり、Z地点での汚染空気を速やかに換気することができる。
【0037】
ステップS103、S104の次に、測定結果判定部61は、Y地点の測定結果DYを粉塵濃度目標レベルDth(例えば、2mg/m3)と比較し(ステップS105)、Y地点の測定結果DYが粉塵濃度目標レベルDth未満か否かを判断する(ステップS106)。
【0038】
ステップS106でY地点の測定結果DYが粉塵濃度目標レベルDth未満である場合、測定結果判定部61は、測定結果判定部61は、X地点の測定結果DXを粉塵濃度目標レベルDth(例えば、2mg/m3)と比較し(ステップS107)、X地点の測定結果DXが粉塵濃度目標レベルDth未満か否かを判断する(ステップS108)。
【0039】
ステップS108でX地点の測定結果DXが粉塵濃度目標レベルDth未満の場合、すなわちX地点及びY地点の測定結果DYがいずれも粉塵濃度目標レベルDth未満の場合、測定結果判定部61は、吸気量の増加を指示することなく、吸気制御部63は、集塵機3を基準吸気量で駆動させ(ステップS109)、制御動作を終了する。
【0040】
ステップS108でX地点の測定結果DXが粉塵濃度目標レベルDth以上の場合、すなわちX地点の測定結果DXが粉塵濃度目標レベルDth以上であり、Y地点の測定結果DYが粉塵濃度目標レベルDth未満の場合、測定結果判定部61は、吸気制御部63に対してX地点の測定結果DXを通知すると共に、吸気量の増加を指示し、移動制御部64に対して移動装置4の切羽側への移動を指示する。これにより、吸気制御部63は、通知された測定結果DXに応じた増加量で集塵機3の吸気量を基準吸気量から増加させ、移動制御部64は、移動装置4を切羽側に移動させることで、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aをX地点の空気を吸気する伸長位置に移動させ(ステップS110)、制御動作を終了する。これにより、集塵機3によってX地点の汚染空気を速やかに吸気して粉塵を集塵することができ、X地点の汚染空気を速やかに換気することができる。なお、X地点での吸気量の増加は、X地点での切羽側に向かう空気の増加となり、汚染空気の封じ込めを強化した状態でX地点の換気を行うことができる。また、ステップS104で送風機2の送気量を増加させている場合、吸気量の増加量を送気量の増加量よりも大きい値とすることで、汚染空気の封じ込めを強化できる。
【0041】
ステップS106でY地点の測定結果DYが粉塵濃度目標レベルDth以上である場合、測定結果判定部61は、吸気制御部63に対してX地点及びY地点の測定結果DX、DYを通知すると共に、吸気量の増加を指示し、移動制御部64に対して移動装置4の坑口側を指示する。これにより、吸気制御部63は、通知された測定結果DX、DYに応じた増加量で集塵機3の吸気量を基準吸気量から増加させ、移動制御部64は、移動装置4を坑口側に移動させることで、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aをY地点の空気を吸気する短縮位置に移動させ(ステップS111)、制御動作を終了する。これにより、集塵機3によってY地点の汚染空気を速やかに吸気して粉塵を集塵することができ、Y地点の汚染空気を速やかに換気することができる。なお、Y地点での吸気量の増加は、Y地点での切羽側に向かう空気の増加となり、汚染空気の封じ込めを強化した状態でY地点の換気を行うことができる。また、ステップS104で送風機2の送気量を増加させている場合、吸気量の増加量を送気量の増加量よりも大きい値とすることで、汚染空気の封じ込めを強化できる。
【0042】
ステップS101~S111の動作をX~Z地点における測定結果のパターンで整理すると、
図4に示す動作設定テーブル70となる。この動作設定テーブル70を記憶部53に記憶させておき、測定結果判定部61は、動作設定テーブル70を参照して動作を決定するようにしても良い。
(第2実施形態)
第2実施形態の換気システムは、
図5を参照すると、第1実施形態の構成に加え、物理的に汚染空気を封じ込めるカーテン9を備えている。
【0043】
カーテン9は、移動装置4と連結され、移動装置4の移動に伴って、
図5(b)に示すX地点とY地点との間の第1位置と、
図5(a)に示すY地点とZ地点との間の第2位置との間を移動可能に構成されている。また、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aは、カーテン9に固定され、カーテン9がX地点とY地点との間の第1位置にある状態で伸長位置となり、カーテン9がY地点とZ地点との間の第2位置にある状態で短縮位置となる。
【0044】
カーテン9としては、例えば、本出願人が先に提案した特願2011-67047号の切羽封じ込め装置を採用することができる。
【0045】
第2実施形態における換気制御装置5による制御動作は、
図6に示す動作設定テーブル70aとなる。すなわち、X地点の測定結果D
Xが粉塵濃度目標レベルD
th以上であり、Y地点の測定結果D
Yが粉塵濃度目標レベルD
th未満の場合に実行されるステップS110において、吸気制御部63は、通知された測定結果D
Xに応じた増加量で集塵機3の吸気量を基準吸気量から増加させ、移動制御部64は、移動装置4を切羽側に移動させることで、カーテン9をX地点とY地点との間の第1位置に移動させると共に、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aをX地点の空気を吸気する伸長位置に移動させる。
【0046】
また、Y地点の測定結果DYが粉塵濃度目標レベルDth以上である場合に実行されるステップS111において、吸気制御部63は、通知された測定結果DX、DYに応じた増加量で集塵機3の吸気量を基準吸気量から増加させ、移動制御部64は、移動装置4を坑口側に移動させることで、カーテン9をY地点とZ地点との間の第2位置に移動させると共に、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aをY地点の空気を吸気する短縮位置に移動させる。
【0047】
なお、本実施形態では、送風機2による送気量を可変制御するように構成したが、送気ダクト21の送気口21aに絞り機構を設け、送風機2による送気量に応じて、送気ダクト21の送気口21aの径も可変制御可能に構成すると好適である。送気ダクト21の送気口21aからの送気は、適切な風速で切羽まで到達することが望ましい。従って、送風機2による送気量が大きい場合に絞り機構によって送気口21aの径を大きく、送風機2による送気量が小さい場合に絞り機構によって送気口21aの径を小さく制御することで、適切な風速に設定することができる。
【0048】
また、本実施形態では、集塵機3による吸気量を可変制御するように構成したが、複数個の吸気用伸縮ダクト31(排気口32a)を設け、集塵機3による吸気量に応じて、吸気用伸縮ダクト31(排気口32a)の数も可変制御可能に構成すると好適である。この場合、集塵機3による吸気量が大きい場合に吸気用伸縮ダクト31(排気口32a)の数を多くすることで、広範囲の汚染空気を素早く吸気することができる。
【0049】
以上説明したように、本実施形態は、工事中のトンネルの汚染空気を換気する換気システムであって、切羽から距離が最も近いX地点(第1地点)における粉塵濃度を測定する測定器1X1、1X2(第1測定器)と、切羽からX地点よりも離れたY地点(第2地点)における粉塵濃度を測定する測定器1Y1、1Y2(第2測定器)と、切羽からY地点よりも離れたZ地点(第3地点)における粉塵濃度を測定する測定器1Z1、1Z2(第3測定器)と、送気口21aがX地点とY地点との間に配置された送気ダクト21を経由して外部空気を切羽に向けて送風する送風機2と、吸気用伸縮ダクト31を経由で吸気した空気中の粉塵を集塵し、排気口32aがY地点とZ地点との間に配置されている排気ダクト32を経由して集塵後の空気を排気する集塵機3と、吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aをX地点の汚染空気を吸気する伸長位置とY地点の汚染空気を吸気する短縮位置とに移動させる移動装置4と、測定器1X1、1X2、測定器1Y1、1Y2及び測定器1Z1、1Z2の測定結果DX、DY、DZに基づいて、送風機2の送気量、集塵機3の吸気量及び吸気口31aの位置を制御する換気制御装置5とを備えている。
この構成により、切羽からの距離が異なるX地点、Y地点、Z地点における測定結果DX、DY、DZに基づいて送風機2の送気量と集塵機3の吸気量と吸気口31aの位置とを適切化して制御することができ、粉塵濃度を効率的に低下させることができる。
【0050】
さらに、本実施形態において、換気制御装置5は、測定器1Z1、1Z2の測定結果DZが粉塵濃度目標レベルDth未満の場合に、予め設定された基準送気量で送風機2を駆動させ、測定器1Z1、1Z2の測定結果DZが粉塵濃度目標レベルDth以上の場合に、送風機2による送気量を基準送気量よりも増加させる。
この構成により、Z地点において坑口側に向かう空気の増加となり、Z地点での汚染空気を速やかに換気することができる。
【0051】
さらに、本実施形態において、換気制御装置5は、測定器1X1、1X2の測定結果DXと測定器1Y1、1Y2の測定結果DYとのいずれもが粉塵濃度目標レベルDth未満の場合に、予め設定された基準吸気量で集塵機3を駆動させ、測定器1X1、1X2の測定結果DXと測定器1Y1、1Y2の測定結果DYとのいずれか1以上が粉塵濃度目標レベルDth以上の場合に、集塵機3による吸気量を基準吸気量よりも増加させる。
この構成により、X地点及びY地点における粉塵濃度目標レベルDth以上の汚染空気を集塵機3によって速やかに吸気して粉塵を集塵することができ、X地点及びY地点の汚染空気を速やかに換気することができる。
【0052】
さらに、本実施形態において、換気制御装置5は、測定器1X1、1X2の測定結果DXが粉塵濃度目標レベルDth以上であり測定器1Y1、1Y2の測定結果DYが粉塵濃度目標レベルDth未満の場合に、移動装置4を制御して吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aを伸長位置に移動させ、測定器1Y1、1Y2の測定結果DYが粉塵濃度目標レベルDth以上の場合に、移動装置4を制御して吸気用伸縮ダクト31の吸気口31aを短縮位置に移動させる。
この構成により、X地点及びY地点における粉塵濃度目標レベルDth以上の汚染空気を効果的に封じ込めた状態で、X地点及びY地点における粉塵濃度目標レベルDth以上の汚染空気を集塵機3によって速やかに吸気して粉塵を集塵することができる。
【0053】
さらに、本実施形態において、汚染空気を物理的に閉じ込めるカーテン9を具備し、移動装置4は、カーテン9をX地点とY地点との間の第1位置と、Y地点とZ地点との間の第2位置とに移動させ、換気制御装置5は、測定器1X1、1X2の測定結果DXが粉塵濃度目標レベルDth以上であり、測定器1Y1、1Y2の測定結果DYが粉塵濃度目標レベルDth未満の場合に、移動装置4を制御してカーテン9を第1位置に移動させ、測定器1Y1、1Y2の測定結果DYが粉塵濃度目標レベルDth以上の場合に、移動装置4を制御してカーテン9を第2位置に移動させる。
この構成により、カーテン9によって汚染空気を切羽側に閉じ込めた状態で、X地点及びY地点における粉塵濃度目標レベルDth以上の汚染空気を集塵機3によって速やかに吸気して粉塵を集塵することができる。
【0054】
以上、実施形態をもとに本発明を説明した。この実施形態は例示であり、それらの各構成要素の組み合わせ等にいろいろな変形例が可能なこと、またそうした変形例も本発明の範囲にあることは当業者に理解されるところである。
【符号の説明】
【0055】
1X1~1Z2 測定器
2 送風機
3 集塵機
4 移動装置
5 換気制御装置
8 レール
9 カーテン
21 送気ダクト
21a 送気口
31 吸気用伸縮ダクト
31a 吸気口
32 排気ダクト
32a 排気口
51 センサI/F
52 表示部
53 記憶部
54 通信部
60 制御部
61 測定結果判定部
62 送気制御部
63 吸気制御部
64 移動制御部
70 動作設定テーブル
70a 動作設定テーブル