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特許7486414光湿気硬化性ウレタン系化合物、光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、及び光湿気硬化性樹脂組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】光湿気硬化性ウレタン系化合物、光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、及び光湿気硬化性樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
   C08F 290/06 20060101AFI20240510BHJP
   C08G 18/81 20060101ALI20240510BHJP
   C08G 18/10 20060101ALI20240510BHJP
   C08F 299/06 20060101ALI20240510BHJP
   C08F 2/46 20060101ALI20240510BHJP
   C09J 175/16 20060101ALI20240510BHJP
   C09J 11/02 20060101ALI20240510BHJP
   C09J 4/00 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
C08F290/06
C08G18/81 016
C08G18/10
C08F299/06
C08F2/46
C09J175/16
C09J11/02
C09J4/00
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2020502727
(86)(22)【出願日】2019-12-17
(86)【国際出願番号】 JP2019049471
(87)【国際公開番号】W WO2020129994
(87)【国際公開日】2020-06-25
【審査請求日】2022-09-13
(31)【優先権主張番号】P 2018236327
(32)【優先日】2018-12-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002174
【氏名又は名称】積水化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100207756
【弁理士】
【氏名又は名称】田口 昌浩
(72)【発明者】
【氏名】木田 拓身
(72)【発明者】
【氏名】高橋 徹
(72)【発明者】
【氏名】結城 彰
(72)【発明者】
【氏名】玉川 智一
(72)【発明者】
【氏名】徐 坤
【審査官】今井 督
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/146873(WO,A1)
【文献】米国特許第04576998(US,A)
【文献】国際公開第2015/182697(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 18/00- 18/87
C08F 2/00- 2/60
C08F 290/06
C08F 299/06
C09J 175/00-175/16
C09J 11/00- 11/08
C09J 4/00- 4/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール(a)由来の骨格を含み、分子末端に2~5個のイソシアネート基と1個以上のラジカル重合性基を有し、重量平均分子量が1,000以上30,000以下である光湿気硬化性ウレタン系化合物を含む光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、ラジカル重合性化合物、及び、光重合開始剤を含有する、光湿気硬化性樹脂組成物
【請求項2】
前記光湿気硬化性ウレタン系化合物は、前記ポリオール(a)を含有するポリオール成分(A)、イソシアネート基と末端にラジカル重合性基とを有する化合物(B)、及びポリイソシアネート化合物(C)とを反応して得られるものである、請求項1に記載の光湿気硬化性樹脂組成物
【請求項3】
前記光湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、重量平均分子量が1,000以上、30,000以下である、請求項1又は2に記載の光湿気硬化性樹脂組成物
【請求項4】
さらに湿気硬化性ウレタンプレポリマーを含有する、請求項1~3のいずれかに記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項5】
前記ラジカル重合性化合物が、単官能ラジカル重合性化合物と多官能ラジカル重合性化合物とを含有する、請求項1~4のいずれかに記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の光湿気硬化性樹脂組成物を用いてなる電子部品用接着剤。
【請求項7】
請求項1~5のいずれかに記載の光湿気硬化性樹脂組成物を用いてなる表示素子用接着剤。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光湿気硬化性ウレタン系化合物、光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、及び光湿気硬化性樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
光硬化性樹脂は硬化速度に優れ、硬化工程が簡便であるなどの特徴があることが知られている。しかしながら、光硬化性樹脂は、光が照射された範囲しか硬化せず、被着体の隙間部や陰部に入り込むと未硬化のままになるという問題点があった。このような観点から、近年、上記した未硬化の部分を残存させないように、光硬化性と共に湿気硬化性を付与した樹脂が開発されている。
【0003】
分子中に少なくとも1つのイソシアネート基と少なくとも1つの(メタ)アクリロイル基とを有するウレタンプレポリマーを含有する光湿気硬化性樹脂組成物を用い、光硬化と湿気硬化とを併用する方法が開示されている(特許文献1~2)。
しかしながらこれらで開示されているような光湿気硬化性樹脂組成物を用いた場合、光硬化させて被着体と接着させた直後の初期接着力が不十分となることがあった。
【0004】
特許文献3~5では、ラジカル重合性組成物と、イソシアネート基及び反応性二重結合を有する化合物である光湿気硬化性ウレタンプレポリマーと、湿気硬化型ウレタンプレポリマーとを含有する光湿気硬化性樹脂組成物が開示されており、初期接着力が高まることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2008-274131号公報
【文献】特開2008-63406号公報
【文献】特許第5824597号公報
【文献】特許2017-14518号公報
【文献】国際公開第2013/016133号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記した従来の光湿気硬化性樹脂組成物を用いた場合でも、湿気硬化後の接着力が十分ではなく、改善の余地があることが分かった。
そこで、本発明は、初期接着力及び湿気硬化後の接着力に共に優れる光湿気硬化性ウレタン系化合物、及びこれを含む光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、並びに光湿気硬化性樹脂組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した。その結果、上記課題は、光湿気硬化性ウレタン系化合物の構造に起因すると予測した。すなわち、従来用いられている光湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、1分子中に2個の水酸基を含むポリオール由来の骨格を有しており、かつ、分子末端に1個のイソシアネート基と1個の反応性二重結合とを有するウレタン系化合物を含むものである。このような構造は、湿気硬化に寄与するイソシアネート基の数が少なく、湿気硬化後の接着力に劣ると予測した。
このような予測のもと、本発明者は、1分子中に3個以上の水酸基を含むポリオール由来の骨格を有し、分子末端に2個以上のイソシアネート基と1個以上のラジカル重合性基とを有するウレタン系化合物、及びこれを含む光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、並びに光湿気硬化性樹脂組成物が上記課題を解決できることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は下記のとおりである。
【0008】
[1]1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール(a)由来の骨格を含み、分子末端に2個以上のイソシアネート基と1個以上のラジカル重合性基を有する、光湿気硬化性ウレタン系化合物。
[2]前記ポリオール(a)を含有するポリオール成分(A)、イソシアネート基と末端にラジカル重合性基とを有する化合物(B)、及びポリイソシアネート化合物(C)とを反応して得られる、上記[1]に記載の光湿気硬化性ウレタン系化合物。
[3]重量平均分子量が500以上、30,000以下である、上記[1]又は[2]に記載の光湿気硬化性ウレタン系化合物。
[4]上記[1]~[3]のいずれかに記載の光湿気硬化性ウレタン系化合物を含む光湿気硬化性ウレタンプレポリマー。
[5]重量平均分子量が500以上、30,000以下である、上記[4]に記載の光湿気硬化性ウレタンプレポリマー。
[6]上記[4]又は[5]に記載の光湿気硬化性ウレタンプレポリマーと、光重合開始剤とを含有する光湿気硬化性樹脂組成物。
[7]さらにラジカル重合性化合物を含有する、上記[6]に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
[8]さらに湿気硬化性ウレタンプレポリマーを含有する、上記[6]又は[7]に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
[9]前記ラジカル重合性化合物が、単官能ラジカル重合性化合物と多官能ラジカル重合性化合物とを含有する、上記[7]又は[8]に記載の光湿気硬化性樹脂組成物。
[10]上記[6]~[9]のいずれかに記載の光湿気硬化性樹脂組成物を用いてなる電子部品用接着剤。
[11]上記[6]~[9]のいずれかに記載の光湿気硬化性樹脂組成物を用いてなる表示素子用接着剤。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、初期接着力及び湿気硬化後の接着力に優れる光湿気硬化性ウレタン系化合物、及びこれを含む光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、並びに光湿気硬化性樹脂組成物を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[光湿気硬化性ウレタン系化合物]
本発明の光湿気硬化性ウレタン系化合物は、1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール(a)由来の骨格を含み、分子末端に2個以上のイソシアネート基と1個以上のラジカル重合性基とを有するウレタン系化合物である。光硬化性は、主として、分子末端に存在するラジカル重合性基に基づく重合により発現し、湿気硬化性は、主として、分子末端に存在するイソシアネート基に基づく重合により発現する。
本発明の光湿気硬化性ウレタン系化合物は分子末端に2個以上のイソシアネート基を有するため、湿気硬化後の接着力が効果的に向上する。また、該ウレタン系化合物を含むウレタンプレポリマー並びにこれを含む光湿気硬化性樹脂組成物の湿気硬化後の接着力も効果的に向上する。
本発明の光湿気硬化性ウレタン系化合物は、分子末端にラジカル重合性基を有しているため、初期接着力も良好になる。また、該ウレタン系化合物を含むウレタンプレポリマー並びにこれを含む光湿気硬化性樹脂組成物の初期接着力も良好になる。
なお、本明細書において、初期接着力とは、光湿気硬化性樹脂組成物を光硬化させて被着体と接着させた直後の25℃での接着力をいい、湿気硬化後の接着力とは、光硬化及び湿気硬化を行なった後の、25℃での接着力を意味する。
【0011】
(ポリオール骨格)
本発明における光湿気硬化性ウレタン系化合物は、1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール由来の骨格を含む。後述するように、光湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、その製造工程において好ましくは、1分子中に3個以上の水酸基を含むポリオール(a)を原料として用い、該水酸基とイソシアネート基との反応によりラジカル重合性基及びイソシアネート基を導入する。そのため、光湿気硬化性ウレタン系化合物は、1分子中に3個以上の水酸基を含むポリオール由来の骨格を有するものとなる。
光湿気硬化性ウレタン系化合物は、3個以上の水酸基を有するポリオール由来の骨格を含むことで、分子内に多くの光硬化、湿気硬化に関わる官能基を導入できるため、初期接着力及び湿気硬化後の接着力に優れるものとなる。
また、保存時のゲル化を防止する観点から、光湿気硬化性ウレタン系化合物は、1分子中に10個以下の水酸基を含むポリオール由来の骨格を有することが好ましく、1分子中に8個以下の水酸基を含むポリオール由来の骨格を有することがより好ましく、1分子中に6個以下の水酸基を含むポリオール由来の骨格を有することがさらに好ましい。
また、光湿気硬化性ウレタンプレポリマーの硬化物の伸びを良好とし柔軟性を高める観点から、光湿気硬化性ウレタン系化合物は、1分子中に3個の水酸基を含むポリオール由来の骨格を有することが特に好ましい。
【0012】
本発明の光湿気硬化性ウレタン系化合物における1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオールは、後述する1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール(a)を用いることが好ましい。ポリオール(a)の詳細は後述する。
【0013】
(イソシアネート基)
本発明の光湿気硬化性ウレタン系化合物は、分子末端に2個以上のイソシアネート基を有する。これにより、光湿気硬化性ウレタンプレポリマーの湿気硬化時の硬化が進行しやすくなり、接着強度が向上する。
光湿気硬化性ウレタン系化合物における分子末端のイソシアネートの数は、2~5個であることが好ましく、2~4個であることがより好ましく、2個であることがさらに好ましい。分子末端のイソシアネートの数が5個以下であることにより、保存時のゲル化を抑制することができ、また硬化が過度に進行することが防止され、柔軟性及び接着力を良好に維持できる。
本発明の光湿気硬化性ウレタン系化合物におけるイソシアネート基の割合は1.5質量%以上が好ましく、2質量%以上がより好ましく、7質量%以下が好ましく、5質量%以下がより好ましい。1.5質量%以上とすることにより、湿気硬化時に十分な接着性及び柔軟性が得やすくなる。7質量%以下であると、光硬化時の初期接着力が良好になりやすい。イソシアネート基の割合は、光硬化性と湿気硬化性のバランスの観点から、好ましくは2~5質量%である。
分子末端にイソシアネート基を導入する方法としては、好ましくは、上記したポリオール(a)とポリイソシアネート化合物とを反応させる方法が挙げられる。
ポリイソシアネート化合物としては、脂肪族系ポリイソシアネート化合物、芳香族系ポリイソシアネート化合物のいずれでもよいが、反応性が高いことから、芳香族系ポリイソシアネート化合物が好ましい。
芳香族系ポリイソシアネート化合物としては、例えば、ジフェニルメタンジイソシアネート、ジフェニルジメタンジイシソアネートの液状変性物、ポリメリックMDI(メタンジイソシアネート)、トリレンジイソシアネート、ナフタレン-1,5-ジイソシアネート等が挙げられる。ポリイソシアネート化合物は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0014】
(ラジカル重合性基)
本発明の光湿気硬化性ウレタン系化合物は、分子末端に1個以上のラジカル重合性基を有する。これにより、初期接着力が良好となる。
ウレタン系化合物における分子末端のラジカル重合性基の数は、1~4個であることが好ましく、1~2個であることがより好ましく、1個であることが更に好ましい。分子末端のラジカル重合性基の数が4個以下であることにより、保存時のゲル化を抑制することができ、また硬化が過度に進行することが防止され、柔軟性及び接着力を良好に維持できる。
分子末端にラジカル重合性基を導入する方法としては、以下に示す方法が好ましい。すなわち、ポリオール化合物(a)と、イソシアネート基と末端にラジカル重合性基とを有する化合物(B)とを用いて、ポリオール化合物(a)の水酸基と化合物(B)のイソシアネート基とを反応させて、分子末端にラジカル重合性基を有するウレタン系化合物を得ることができる。
ラジカル重合性基の種類としては、特に限定されないが、光硬化性の観点から、(メタ)アクリロイル基、ビニル基、アリル基等が挙げられ、中でも(メタ)アクリロイル基が好ましい。なお、(メタ)アクリロイルとは、アクリロイル又はメタクリロイルを意味する。
光湿気硬化性ウレタン系化合物における分子末端のラジカル重合性基の数が2個以上の場合は、複数のラジカル重合性基が同種のものでも異種のものでもよい。
【0015】
光湿気硬化性ウレタン系化合物の重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは2,000以上、特に好ましくは5,000以上であり、好ましくは30,000以下、より好ましくは20,000以下、更に好ましくは15,000以下、特に好ましくは12,000以下である。
重量平均分子量が500以上であると、該ウレタン系化合物を含有する後述する光湿気硬化性樹脂組成物を硬化したときの架橋密度が高くなりすぎず、柔軟性を向上させることができる。30,000以下であると、該ウレタン系化合物を含有する後述する光湿気硬化性樹脂組成物の塗布性を良好とすることができる。
本発明において、重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定を行い、ポリスチレン換算により求められる値である。GPCによってポリスチレン換算による重量平均分子量を測定する際のカラムとしては、例えば、Shodex LF-804(昭和電工社製)等が挙げられる。また、GPCで用いる溶媒としては、テトラヒドロフラン等が挙げられる。
【0016】
[光湿気硬化性樹脂組成物]
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、光湿気硬化性ウレタンプレポリマーと、光重合開始剤とを含有する。
<光湿気硬化性ウレタンプレポリマー>
本発明の光湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、上記した光湿気硬化性ウレタン系化合物を含むものである。
本発明の光湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、好ましくは、1分子中に3個以上の水酸基を含むポリオール(a)を含有するポリオール成分(A)、イソシアネート基と末端にラジカル重合性基とを有する化合物(B)、及びポリイソシアネート化合物(C)とを反応して得られる。
ポリオール(a)が有する複数の水酸基が、化合物(B)のイソシアネート基及び化合物(C)のイソシアネート基と反応することで、光湿気硬化性ウレタン系化合物を含む光湿気硬化性ウレタンプレポリマーを得ることができる。
【0017】
このような反応では、上記した光湿気硬化性ウレタン系化合物以外に、他の構造のウレタン系化合物も同時に生成しうるため、光湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、光湿気硬化性ウレタン系化合物を含む混合物として存在しうる。
光湿気硬化性ウレタンプレポリマー中の光湿気硬化性ウレタン系化合物の含有量は、ポリオール成分(A)、化合物(B)、化合物(C)の種類及び組成比などを調整することで調節できる。
【0018】
光湿気硬化性ウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上、更に好ましくは2,000以上、特に好ましくは5,000以上であり、好ましくは30,000以下、より好ましくは20,000以下、更に好ましくは15,000以下、特に好ましくは12,000以下である。重量平均分子量が500以上であると、光湿気硬化性樹脂組成物を硬化したときの架橋密度が高くなりすぎず、柔軟性を向上させることができる。30,000以下であると、光湿気硬化性樹脂組成物の塗布性を良好とすることができる。
光硬化性ウレタンプレポリマーの重量平均分子量は上記したとおり、GPC測定により行う。なお、GPC測定により得られた分子量分布曲線において、光硬化性ウレタンプレポリマー由来の複数のピークが確認される場合は、該複数のピークを対象に重量平均分子量を計算すればよい。
【0019】
(ポリオール成分(A))
ポリオール成分(A)は、1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール(a)を含有する。1分子中に3個以上の水酸基を含むポリオール(a)としては、好ましくは、水酸基を3つ以上有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオール、ポリアルキレンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられる。これらの中でも、水酸基を3つ以上有するポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールがより好ましく、ポリエーテルポリオールがさらに好ましい。
【0020】
ウレタンプレポリマーの初期接着性及び湿気硬化後の接着力を向上させる観点から、水酸基を3つ以上有するポリエーテルポリオールとしては、3官能ポリエーテルポリオール、4官能ポリエーテルポリオール、5官能ポリエーテルポリオール、6官能ポリエーテルポリオールが好ましい。中でも、ウレタンプレポリマーの硬化物の伸びを良好とする観点及び入手容易性の観点から、3官能ポリエーテルポリオール(トリオール成分)が好ましい。
なお、「3官能」とは、水酸基を3つ有するという意味であり、他も同様である。
水酸基を3つ以上有するポリエーテルポリオールは、トリメチロールプロパン、グリセリン、ペンタエリスリトール等の水酸基を3つ以上有する多価アルコールに、アルキレンオキシドを付加させて得られるものが好ましい。ここで、アルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキサイドのいずれかが好ましいが、プロピレンオキサイドがより好ましい。また、付加されるアルキレンオキシドは、エチレンオキシド、プロピレンオキサイドの両方でもよく、その場合、主にプロピレンオキサイドを付加したものが好ましい。付加される全アルコキシドのうちプロピレンオキサイドは好ましくは55質量%以上であり、より好ましくは75質量%以上である。このようなポリエーテルポリオールとしては、例えば、末端エチレンオキシド付加型ポリオキシプロピレングリコールが挙げられる。
3官能ポリエーテルポリオールとしては、旭硝子社製「プレミノール7012」、「プレミノール7001K」、「プレミノールS3025」、「エクセノール430」などが挙げられる。
4官能ポリエーテルポリオールとしては、旭硝子社製「エクセノール410NE」などが挙げられる。
6官能ポリエーテルポリオールとしては、旭硝子社製「エクセノール385SO」などが挙げられる。
【0021】
水酸基を3つ以上有するポリエステルポリオールとしては、初期接着性及び湿気硬化後の接着力を向上させる観点から、3官能ポリエステルポリオール、4官能ポリエステルポリオール、5官能ポリエステルポリオール、6官能ポリエステルポリオールが好ましい。中でも、光湿気硬化性樹脂組成物の硬化物の伸びを良好とする観点及び入手容易性の観点から、3官能ポリエステルポリオールが好ましい。
水酸基を3つ以上有するポリエステルポリオールは、一般には、低分子ジオール、低分子ジカルボン酸、及びトリオールを反応させて得ることができる。
低分子ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール等が挙げられる。
低分子ジカルボン酸としては、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタル酸、2,6-ナフタル酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等が挙げられる。
トリオールとしては、トリメチロールプロパン、グリセリン等が挙げられる。
【0022】
上記3官能ポリエステルポリオールとしては、株式会社クラレ製「クラレポリオールF-1010」などを挙げることができる。
ポリオール(a)の重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは5,000以上であり、好ましくは30,000以下、より好ましくは25,000以下である。重量平均分子量をこのような範囲にすることにより、光硬化性が良好になり、初期接着力が向上しやすくなる。
重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定することができる。
【0023】
本発明の光湿気硬化性ウレタンプレポリマーに含まれる光湿気硬化性ウレタン系化合物は、ポリオール(a)の全末端水酸基のうち5~50モル%の水酸基が、後述する化合物(B)と反応したものであることが好ましい。このような光湿気硬化性ウレタンプレポリマーを含む光湿気硬化性組成物は、初期接着性と湿気硬化後の接着強度に優れたものとなる。
【0024】
ポリオール成分(A)は、1分子中に3個以上の水酸基を含むポリオール(a)と1分子中に2個の水酸基を含むポリオール(b)とを含むことが好ましい。この場合、1分子中に3個以上の水酸基を含むポリオール(a)100質量部に対する、1分子中に2個の水酸基を含むポリオール(b)の含有量は、好ましくは50質量部以上、より好ましくは100質量部以上であり、好ましくは15,000質量部以下、より好ましくは1,500質量部以下、更に好ましくは1000質量部以下である。このように、ポリオール(b)を含有させることにより、得られる本発明の光湿気硬化性樹脂組成物の初期接着力が向上すると共に、保存時のゲル化を抑制することができる。
ポリオール(b)の重量平均分子量は、好ましくは500以上、より好ましくは1,000以上であり、好ましくは3,500以下、より好ましくは3,000以下、更に好ましくは2,000以下である。重量平均分子量をこのような範囲とすることにより、光湿気硬化性樹脂組成物の接着性が向上し、硬化物の伸びが良好になる。
ポリオール(b)の種類としては、特に制限されないが、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリアルキレンポリオール、ポリカーボネートポリオールなどが挙げられ、ポリエーテルポリオール、ポリエステルポリオールが好ましい。
【0025】
ポリオール(b)であるポリエステルポリオールは、多価カルボン酸と多価アルコールとの重縮合によって製造される。それ以外に、ε-カプロラクタムを開環重合して得られるポリ-ε-カプロラクトンポリオール等が挙げられる。
【0026】
ポリエステルポリオールの製造に用いる多価カルボン酸としては、一般に、テレフタル酸、イソフタル酸、1,5-ナフタル酸、2,6-ナフタル酸、琥珀酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、デカメチレンジカルボン酸、ドデカメチレンジカルボン酸等のジカルボン酸が用いられる。
【0027】
また、ポリエステルポリオールの製造に用いる多価アルコールとしては、一般に、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタジエンジオール、ネオペンチルグリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ジエチレングリコール、シクロヘキサンジオール等のジオールが用いられる。
【0028】
ポリオール(b)であるポリエーテルポリオールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール等が挙げられる。これ以外にも、テトラヒドロフランの開環重合化合物、3-メチルテトラヒドロフランの開環重合化合物、これらやその誘導体のランダム共重合体又はブロック共重合体、ビスフェノール型のポリオキシアルキレン変性体等が挙げられる。
【0029】
上記ビスフェノール型のポリオキシアルキレン変性体は、ビスフェノール型分子骨格の活性水素部分にアルキレンオキシドを付加反応させて得られるポリエーテルポリオールであり、ランダム共重合体であってもよいし、ブロック共重合体であってもよい。上記アルキレンオキシドとしては、たとえば、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド等が挙げられる。上記ビスフェノール型のポリオキシアルキレン変性体は、ビスフェノール型分子骨格の両末端に、1種又は2種以上のアルキレンオキシドが付加されていることが好ましい。ビスフェノール型としては特に限定されずA型、F型、S型等が挙げられ、好ましくはビスフェノールA型である。反応性二重結合の導入のしやすさ及びプレポリマーの貯蔵安定性と柔軟性の観点から、多官能グリコールを出発原料とした重付加重合化合物がより好ましい。
【0030】
ポリオール(b)であるポリアルキレンポリオールとしては、たとえば、ポリブタジエンポリオール、水素化ポリブタジエンポリオール、水素化ポリイソプレンポリオール等が挙げられる。
【0031】
ポリオール(b)であるポリカーボネートポリオールとしては、たとえば、ポリヘキサメチレンカーボネートポリオール、ポリシクロヘキサンジメチレンカーボネートポリオール等が挙げられる。
【0032】
ポリオール(b)の中でも、光湿気硬化性樹脂組成物の初期接着性、湿気硬化後の接着強度、及び靭性を向上させる観点からテトラヒドロフランの開環重合化合物、3-メチルテトラヒドロフランの開環重合化合物が好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコールがより好ましい。
【0033】
ポリオール(b)を使用する場合には、上記したとおり、ポリオール(a)として1分子中に水酸基を3個有するトリオール成分を使用することが好ましいが、特に、グリセリンを出発原料としたポリオキシプロピレングリコールや末端エチレンオキシド付加型ポリプロピレングリコールが好ましい。一方でトリオール成分と組み合わせるジオール成分(ポリオール(b))としてはテトラヒドロフランの開環重合化合物、3-メチルテトラヒドロフランの開環重合化合物、これらやその誘導体のランダム共重合体又はブロック共重合体が好ましい。
【0034】
また、ポリオール(a)とポリオール(b)とを併用する場合は、類似の構造のものを組み合わせることができる。ポリオール(a)及びポリオール(b)類似の構造を有することにより、ポリオール(a)とポリオール(b)とが相溶しやすくなる。具体的には、ポリオール(a)として、ポリエーテルポリオールを用いる場合は、ポリオール(b)としてもポリエーテルポリオールを用いることが好ましい。同様に、ポリオール(a)として、ポリエステルポリオールを用いる場合は、ポリオール(b)としてポリエステルポリオールを用いることが好ましい。
【0035】
(化合物(B))
イソシアネート基と末端にラジカル重合性基とを有する化合物(B)を用いることで、ポリオール化合物(a)の水酸基と化合物(B)のイソシアネート基が反応し、分子末端にラジカル重合性基を有するウレタン系化合物を含む光湿気硬化性ウレタンプレポリマーを得ることができる。
化合物(B)としては、例えば、ビニルイソシアネート等が挙げられる。また、各種ジイソシアネート化合物と、水酸基及び(メタ)アクリロイル基を有する化合物とをイソシアネート基/水酸基(モル比)が2となるような割合で反応させることにより合成される化合物等も用いることができる。なかでも、入手が容易であることから、2-イソシアナトエチルメタクリレート、2-イソシアナトエチルアクリレート、1,1-(ビスアクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート、1,1-(ビスメタクリロイルオキシメチル)エチルイソシアネート等が挙げられ、光反応性の観点から2-イソシアナトエチルアクリレートがより好ましい。
化合物(B)の配合量は、ポリオール成分(A)100質量部に対して、好ましくは0.5質量部以上、より好ましくは1質量部以上であり、好ましくは20質量部以下、より好ましくは10質量部以下である。
【0036】
(化合物(C))
ポリイソシアネート化合物(C)を用いることで、ポリオール化合物(a)の水酸基と化合物(C)の一部のイソシアネート基が反応し、該反応したイソシアネート基とは別の化合物(C)のイソシアネート基を分子末端に有するウレタンプレポリマーを得ることができる。ポリイソシアネート化合物(C)は、上記したものを用いることができる。
ポリイソシアネート化合物(C)の配合量は、ポリオール成分(A)100質量部に対して、好ましくは5質量部以上、より好ましくは10質量部以上であり、好ましくは150質量部以下、より好ましくは100質量部以下である。
【0037】
本発明の光湿気硬化性ウレタンプレポリマーの製造方法は上記したとおり、好ましくは(A)~(C)を反応させる製造方法である。より好ましくは、ポリオール成分(A)と、イソシアネート基と末端にラジカル重合性基とを有する化合物(B)とを反応させて、末端ラジカル重合性基変性ポリオール化合物を製造する第1工程、該末端ラジカル重合性基変性ポリオール化合物とポリイソシアネート化合物(C)とを反応させる第2工程とを含む製造方法である。
第1工程においては、イソシアネート基に対して、水酸基が過剰に存在し、反応によりすべてのイソシアネート基が消失する条件であることが好ましく、具体的には、NCO/OH当量比を0.05以上、0.5以下の範囲に調整することが好ましい。
【0038】
上記イソシアネート基と末端にラジカル重合性基とを有する化合物(B)を用いて、ポリオール成分(A)の末端水酸基を反応性二重結合に置換する割合は、ポリオール成分100モル%に対して、好ましい下限は5モル%、好ましい上限は50モル%である。5モル%以上であると、光硬化を良好に進行させることが可能となり、50モル%以下であると、光硬化が進行しすぎることを抑制し、初期接着力を確保することが可能となる。以上を鑑みて、より好ましい下限は10モル%、より好ましい上限は40モル%、さらに好ましい下限は15モル%、さらに好ましい上限は35モル%である。上記範囲であれば、光硬化による初期接着性の発現と、湿気硬化による架橋反応による接着性と柔軟性のバランスが取れて好ましい。
【0039】
次に上記工程における好ましい形態について述べる。ポリオール成分として、1分子中に2個の水酸基を有するポリオール(b)の合計1モルに対して、1分子中に3個の水酸基を有するポリオール(a)の含有量は、好ましくは0.0005モル以上であり、より好ましくは0.001モル以上である。また、1分子中に2個の水酸基を有するポリオール(b)の合計1モルに対して、1分子中に3個の水酸基を有するポリオール(a)の含有量は、好ましくは0.5モル以下、より好ましくは0.2モル以下、更に好ましくは0.15モル以下である。0.0005モル以上の場合、湿気硬化後の硬化物の柔軟性がよくなり、0.5モル以下であると、光湿気硬化性プレポリマーの粘度が高くなりすぎるのを防止でき、ゲル化が生じ難くなる。
【0040】
第2工程においては、NCO/OH当量比は、好ましくは1.5以上、より好ましくは1.8以上であり、好ましくは3以下、より好ましくは2.5以下である。NCO/OH当量比が1.8以上であると透明性の高いプレポリマーを得ることができ、2.5以下であると、プレポリマーの初期接着力、最終接合物の接着性が良好になる。
【0041】
本発明の光湿気硬化性ウレタンプレポリマーの光湿気硬化性樹脂組成物中の含有量は、特に制限されないが、光湿気硬化性樹脂組成物全量基準に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、更に好ましくは8質量%以上であり、好ましくは90質量%以下、より好ましくは80質量%以下、更に好ましくは60質量%以下である。
【0042】
<その他の光湿気硬化性ウレタンプレポリマー>
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、1分子中に3個以上の水酸基を有するポリオール(a)由来の骨格を含み、分子末端に2個以上のイソシアネート基と1個以上のラジカル重合性基とを有する光湿気硬化性ウレタン系化合物を含む光湿気硬化性ウレタンプレポリマー以外の、その他の光湿気硬化性ウレタンプレポリマーを含んでもよい。
その他の光湿気硬化性ウレタンプレポリマーとして、分子末端に1つのイソシアネート基と1つ以上のラジカル重合性基とを有する光湿気硬化性ウレタンプレポリマーが挙げられる。
前記分子末端に1つのイソシアネート基と1つ以上のラジカル重合性基とを有する光湿気硬化性ウレタンプレポリマーとしては、特に限定されず、低分子量モノマーであっても高分子量ポリマーであっても良い。
分子末端に1つのイソシアネート基と1つのラジカル重合性基とを有するものとしては、例えば、2-アクリロイルオキシエチルイソシアネート、2-メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、カレンズMOI-EG(昭和電工社製)が挙げられる。
分子末端に1つのイソシアネート基と2つのラジカル重合性基とを有するものとしては、例えば、カレンズBEI(昭和電工社製)等が挙げられる。
【0043】
<湿気硬化性ウレタンプレポリマー>
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、湿気硬化性ウレタンプレポリマーを含有することが好ましい。なお、本明細書において、湿気硬化性ウレタンプレポリマーとは、上記した光湿気硬化性ウレタンプレポリマーと異なり、イソシアネート基を有し、ラジカル重合性基を有さない化合物を意味する。
湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、イソシアネート基が空気中又は被着体中の水分と反応して硬化する。そのため、本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、湿気硬化性ウレタンプレポリマーを含有することで、湿気硬化後の接着強度を高めることができる。
湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、1分子内にイソシアネート基を1個のみ有する化合物を含んでもよいし、1分子内にイソシアネート基を2個以上有する化合物を含んでもよい。中でも、湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、両末端にイソシアネート基を有する化合物を含むことが好ましい。
【0044】
湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールと、ポリイソシアネート化合物とを反応させて得ることが好ましい。1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールとしては、上記したポリオール(a)及びポリオール(b)のいずれか又は両方を用いることができ、ポリイソシアネート化合物としては、上記したポリイソシアネート化合物(C)を用いることができる。
1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールの中でも、テトラヒドロフランの開環重合化合物、3-メチルテトラヒドロフランの開環重合化合物が好ましく、ポリテトラメチレンエーテルグリコールがより好ましい。
1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールとポリイソシアネート化合物との反応は、通常、ポリオール中の水酸基(OH)とポリイソシアネート基(NCO)のモル比[(NCO)/(OH)]が2.0以上、2.5以下の範囲で行われる。
【0045】
湿気硬化性ウレタンプレポリマーの重量平均分子量は、好ましくは800以上であり、好ましくは10,000以下である。重量平均分子量が800以上であると、光湿気硬化性樹脂組成物を硬化したときの架橋密度が高くなりすぎず、柔軟性を向上させることができる。10,000以下であると、光湿気硬化性樹脂組成物の塗布性を良好とすることができる。
【0046】
光湿気硬化性樹脂組成物の光硬化性及び湿気硬化性をともの良好とする観点から、光湿気硬化性ウレタンプレポリマーと湿気硬化性ウレタンプレポリマーとの全量基準に対して、湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは95質量%以下、より好ましくは80質量%以下である。
【0047】
<ラジカル重合性化合物>
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、ラジカル重合性化合物を含有することが好ましい。なお、本明細書においてラジカル重合性化合物とは、ラジカル重合性基を有し、イソシアネート基を有さない化合物を意味する。
ラジカル重合性化合物を含有することで、光湿気硬化性樹脂組成物の光硬化性が良好になる。また、上記した光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、湿気硬化性ウレタンプレポリマー、及び該ラジカル重合性化合物を含む光湿気硬化性組成物の硬化物は、柔軟性、接着性に優れる。これは、光湿気硬化性ウレタンプレポリマーは、湿気硬化性ウレタンプレポリマーとラジカル重合性化合物の両方と反応するため、相分離が抑制されるからと考えられる。
【0048】
ラジカル重合性化合物としては、ラジカル重合性基として不飽和二重結合を有する化合物が好適であり、特に反応性の面から(メタ)アクリロイル基を有する化合物が好適である。
【0049】
上記(メタ)アクリロイル基を有する化合物としては、例えば、(メタ)アクリル酸に水酸基を有する化合物を反応させて得られるエステル化合物が挙げられる。また、エステル化合物以外にも、(メタ)アクリル酸とエポキシ化合物とを反応させて得られるエポキシ(メタ)アクリレート、イソシアネート化合物に水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を反応させて得られるウレタン(メタ)アクリレート等が挙げられる。
なお、本明細書において、上記「(メタ)アクリレート」とは、アクリレート又はメタクリレートを意味する。また、上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物のイソシアネート基は、全てウレタン結合の形成に用いられ、上記ウレタン(メタ)アクリレートは、残存イソシアネート基を有さない。
【0050】
上記エステル化合物のうち単官能のものとしては、例えば、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、4-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t-ブチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-メトキシエチル(メタ)アクリレート、メトキシエチレングリコール(メタ)アクリレート、2-エトキシエチル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、フェノキシエチル(メタ)アクリレート、フェノキシジエチレングリコール(メタ)アクリレート、フェノキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、メトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、2,2,2-トリフルオロエチル(メタ)アクリレート、2,2,3,3-テトラフルオロプロピル(メタ)アクリレート、1H,1H,5H-オクタフルオロペンチル(メタ)アクリレート、イミド(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n-ブチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、2-エチルヘキシル(メタ)アクリレート、n-オクチル(メタ)アクリレート、イソノニル(メタ)アクリレート、イソミリスチル(メタ)アクリレート、2-ブトキシエチル(メタ)アクリレート、2-フェノキシエチル(メタ)アクリレート、ビシクロペンテニル(メタ)アクリレート、イソデシル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルコハク酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸、2-(メタ)アクリロイロキシエチル2-ヒドロキシプロピルフタレート、グリシジル(メタ)アクリレート、2-(メタ)アクリロイロキシエチルホスフェート、N-アクリロイルオキシエチルヘキサヒドロフタルイミド等のフタルイミドアクリレート類や各種イミドアクリレート等が挙げられる。
【0051】
また、上記エステル化合物のうち2官能のものとしては、例えば、1,4-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3-ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6-ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9-ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10-デカンジオールジ(メタ)アクリレート、2-n-ブチル-2-エチル-1,3-プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加ビスフェノールFジ(メタ)アクリレート、ジメチロールジシクロペンタジエニルジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド変性イソシアヌル酸ジ(メタ)アクリレート、2-ヒドロキシ-3-(メタ)アクリロイロキシプロピル(メタ)アクリレート、カーボネートジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエーテルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリエステルジオールジ(メタ)アクリレート、ポリカプロラクトンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリブタジエンジオールジ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0052】
また、上記エステル化合物のうち3官能以上のものとしては、例えば、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、エチレンオキシド付加イソシアヌル酸トリ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、グリセリントリ(メタ)アクリレート、プロピレンオキシド付加グリセリントリ(メタ)アクリレート、トリス(メタ)アクリロイルオキシエチルフォスフェート等が挙げられる。
【0053】
上記エポキシ(メタ)アクリレートとしては、例えば、エポキシ化合物と(メタ)アクリル酸とを、常法に従って塩基性触媒の存在下で反応させることにより得られるもの等が挙げられる。
【0054】
上記エポキシ(メタ)アクリレートを合成するための原料となるエポキシ化合物としては、例えば、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂、水添ビスフェノール型エポキシ樹脂、プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂、レゾルシノール型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、スルフィド型エポキシ樹脂、ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂、ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂、ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、アルキルポリオール型エポキシ樹脂、ゴム変性型エポキシ樹脂、グリシジルエステル化合物、ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂等が挙げられる。
【0055】
上記ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER828EL、jER1001、jER1004(いずれも三菱化学社製)、エピクロン850-S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールF型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER806、jER4004(いずれも三菱化学社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールS型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA1514(DIC社製)等が挙げられる。
上記2,2’-ジアリルビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、RE-810NM(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記水添ビスフェノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンEXA7015(DIC社製)等が挙げられる。
上記プロピレンオキシド付加ビスフェノールA型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4000S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記レゾルシノール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EX-201(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビフェニル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jERYX-4000H(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記スルフィド型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-50TE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジフェニルエーテル型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YSLV-80DE(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、EP-4088S(ADEKA社製)等が挙げられる。
上記ナフタレン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP4032、エピクロンEXA-4700(いずれもDIC社製)等が挙げられる。
上記フェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN-770(DIC社製)等が挙げられる。
上記オルトクレゾールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンN-670-EXP-S(DIC社製)等が挙げられる。
上記ジシクロペンタジエンノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、エピクロンHP7200(DIC社製)等が挙げられる。
上記ビフェニルノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、NC-3000P(日本化薬社製)等が挙げられる。
上記ナフタレンフェノールノボラック型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ESN-165S(新日鉄住金化学社製)等が挙げられる。
上記グリシジルアミン型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jER630(三菱化学社製)、エピクロン430(DIC社製)、TETRAD-X(三菱ガス化学社製)等が挙げられる。
上記アルキルポリオール型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、ZX-1542(新日鉄住金化学社製)、エピクロン726(DIC社製)、エポライト80MFA(共栄社化学社製)、デナコールEX-611(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ゴム変性型エポキシ樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、YR-450、YR-207(いずれも新日鉄住金化学社製)、エポリードPB(ダイセル社製)等が挙げられる。
上記グリシジルエステル化合物のうち市販されているものとしては、例えば、デナコールEX-147(ナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
上記ビスフェノールA型エピスルフィド樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、jERYL-7000(三菱化学社製)等が挙げられる。
上記エポキシ樹脂のうちその他に市販されているものとしては、例えば、YDC-1312、YSLV-80XY、YSLV-90CR(いずれも新日鉄住金化学社製)、XAC4151(旭化成社製)、jER1031、jER1032(いずれも三菱化学社製)、EXA-7120(DIC社製)、TEPIC(日産化学社製)等が挙げられる。
【0056】
上記エポキシ(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、EBECRYL860、EBECRYL3200、EBECRYL3201、EBECRYL3412、EBECRYL3600、EBECRYL3700、EBECRYL3701、EBECRYL3702、EBECRYL3703、EBECRYL3800、EBECRYL6040、EBECRYL RDX63182(いずれもダイセル・オルネクス社製)、EA-1010、EA-1020、EA-5323、EA-5520、EA-CHD、EMA-1020(いずれも新中村化学工業社製)、エポキシエステルM-600A、エポキシエステル40EM、エポキシエステル70PA、エポキシエステル200PA、エポキシエステル80MFA、エポキシエステル3002M、エポキシエステル3002A、エポキシエステル1600A、エポキシエステル3000M、エポキシエステル3000A、エポキシエステル200EA、エポキシエステル400EA(いずれも共栄社化学社製)、デナコールアクリレートDA-141、デナコールアクリレートDA-314、デナコールアクリレートDA-911(いずれもナガセケムテックス社製)等が挙げられる。
【0057】
上記ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、イソシアネート基を有する化合物に対して、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体を、触媒量のスズ系化合物存在下で反応させることによって得ることができる。
【0058】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となるイソシアネート化合物としては、例えば、イソホロンジイソシアネート、2,4-トリレンジイソシアネート、2,6-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジフェニルメタン-4,4’-ジイソシアネート(MDI)、水添MDI、ポリメリックMDI、1,5-ナフタレンジイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、トリジンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、水添XDI、リジンジイソシアネート、トリフェニルメタントリイソシアネート、トリス(イソシアネートフェニル)チオフォスフェート、テトラメチルキシレンジイソシアネート、1,6,11-ウンデカントリイソシアネート等が挙げられる。
【0059】
また、上記イソシアネート化合物としては、ポリオールと過剰のイソシアネート化合物との反応により得られる鎖延長されたイソシアネート化合物も使用することができる。該ポリオールとしては、例えば、エチレングリコール、グリセリン、ソルビトール、トリメチロールプロパン、(ポリ)プロピレングリコール、カーボネートジオール、ポリエーテルジオール、ポリエステルジオール、ポリカプロラクトンジオール等が挙げられる。
【0060】
上記ウレタン(メタ)アクリレートの原料となる、水酸基を有する(メタ)アクリル酸誘導体としては、例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、ポリエチレングリコール等の二価のアルコールのモノ(メタ)アクリレートや、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセリン等の三価のアルコールのモノ(メタ)アクリレート又はジ(メタ)アクリレートや、ビスフェノールA型エポキシ(メタ)アクリレート等のエポキシ(メタ)アクリレート等が挙げられる。
【0061】
上記ウレタン(メタ)アクリレートのうち市販されているものとしては、例えば、M-1100、M-1200、M-1210、M-1600(いずれも東亞合成社製)、EBECRYL230、EBECRYL270、EBECRYL4858、EBECRYL8402、EBECRYL8411、EBECRYL8412、EBECRYL8413、EBECRYL8804、EBECRYL8803、EBECRYL8807、EBECRYL9260、EBECRYL1290、EBECRYL5129、EBECRYL4842、EBECRYL210、EBECRYL4827、EBECRYL6700、EBECRYL220、EBECRYL2220、KRM7735、KRM-8295(いずれもダイセル・オルネクス社製)、アートレジンUN-9000H、アートレジンUN-9000A、アートレジンUN-7100、アートレジンUN-1255、アートレジンUN-330、アートレジンUN-3320HB、アートレジンUN-1200TPK、アートレジンSH-500B(いずれも根上工業社製)、U-2HA、U-2PHA、U-3HA、U-4HA、U-6H、U-6LPA、U-6HA、U-10H、U-15HA、U-122A、U-122P、U-108、U-108A、U-324A、U-340A、U-340P、U-1084A、U-2061BA、UA-340P、UA-4100、UA-4000、UA-4200、UA-4400、UA-5201P、UA-7100、UA-7200、UA-W2A(いずれも新中村化学工業社製)、AI-600、AH-600、AT-600、UA-101I、UA-101T、UA-306H、UA-306I、UA-306T(いずれも共栄社化学社製)等が挙げられる。
【0062】
また、上述した以外のその他のラジカル重合性化合物も適宜使用することができる。
上記その他のラジカル重合性化合物としては、例えば、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、N-(メタ)アクリロイルモルホリン、N-ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジエチル(メタ)アクリルアミド、N-イソプロピル(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド化合物や、スチレン、α-メチルスチレン、N-ビニルピロリドン、N-ビニルカプロラクトン等のビニル化合物等が挙げられる。
【0063】
上記ラジカル重合性化合物は、硬化性を調整する等の観点から、単官能ラジカル重合性化合物と多官能ラジカル重合性化合物とを含有することが好ましい。両者を併用することで、得られる光湿気硬化性樹脂組成物の硬化性及び初期接着力が良好になりやすい。また、上記多官能ラジカル重合性化合物は、2官能又は3官能であることが好ましく、2官能であることがより好ましい。
【0064】
ラジカル重合性化合物の含有量は、ラジカル重合性化合物、光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、及び湿気硬化性ウレタンプレポリマーの全量基準において、好ましくは20質量%以上、より好ましくは25質量%以上であり、好ましくは80質量%以下、より好ましくは70質量%以下である。このような範囲であると、光湿気硬化性樹脂組成物の初期接着力と湿気硬化後の接着強度のバランスが良好になる。
【0065】
<光重合開始剤>
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、光重合開始剤を含有することが必須である。
上記光重合開始剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、アセトフェノン系化合物、アシルフォスフィンオキサイド系化合物、チタノセン化合物、オキシムエステル系化合物、ベンゾインエーテル系化合物、チオキサントン、マレイミド系化合物等の光ラジカル重合開始剤が挙げられる。深部硬化性が良好であることから、アシルフォスフィンオキサイド系化合物およびオキシムエステル系化合物が好ましい。
【0066】
上記光重合開始剤の含有量は、上記ラジカル重合性化合物及び光湿気硬化性ウレタンプレポリマーの合計100質量部に対して、好ましい下限が0.01質量部、好ましい上限が10質量部である。上記光重合開始剤の含有量が0.01質量部以上であると、得られる光湿気硬化性樹脂組成物を充分に光硬化させることができる。上記光ラジカル重合開始剤の含有量が10質量部以下であると、得られる光湿気硬化性樹脂組成物の保存安定性が良好となる。上記光重合開始剤の含有量のより好ましい下限は0.1質量部、より好ましい上限は5質量部である。
【0067】
<湿気硬化促進触媒剤>
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、湿気硬化促進触媒を含有させることが好ましい。湿気硬化促進触媒を含有させることで、湿気硬化時の硬化速度を向上させることができる。また、気泡の発生を抑制できるため、得られる光湿気硬化性樹脂組成物を電子部品用接着剤や表示素子用接着剤等に用いた場合における、該気泡が原因となる塗布時の断線を防止することができる。
湿気硬化促進触媒としては、例えば、モルホリン骨格を有する化合物、ピペリジン骨格を有する化合物、ピペラジン骨格を有する化合物等が挙げられる。
【0068】
上記モルホリン骨格を有する化合物としては、例えば、4-メチルモルホリン、4-エチルモルホリン、4-フェニルモルホリン、4-シクロヘキシルモルホリン、4-シクロヘプチルモルホリン、4-トリチルモルホリン、4-アシルモルホリン、4-(メタ)アクリロイルモルホリン、4-(メタ)アクリロイルオキシモルホリン、4-(メタ)アクリロイルオキシエチルモルホリン、4-モルホリノメチルモルホリン、4-モルホリノエチルモルホリン、4-モルホリノプロピルモルホリン、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル等が挙げられる。
モルホリン骨格を有する化合物のうち市販されているものとしては、例えば、U-CAT 651M、U-CAT 660M、U-CAT 2041、U-CAT 2046(いずれもサンアプロ社製)等が挙げられる。
【0069】
上記ピペリジン骨格を有する化合物としては、例えば、1-メチルピペリジン、1-エチルピペリジン、1,2,2,6,6-ペンタメチルピペリジン、1-シクロペンチルピペリジン、1-シクロヘキシルピペリジン等が挙げられる。
【0070】
上記ピペラジン骨格を有する化合物としては、例えば、1,4-ジメチルピペラジン、1,4-ジエチルピペラジン、1,4-ジフェニルピペラジン、1-アシル-4-メチルピペラジン、2-エトキシカルボニル-1,4-ジメチルピペラジン、1,4-ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン等が挙げられる。
【0071】
本発明にかかる湿気硬化促進触媒の分子量や官能基数に特に制限はないが、モルホリン骨格、ピペリジン骨格、又は、ピペラジン骨格を1分子中に2つ以上有することが好ましい。モルホリン骨格、ピペリジン骨格、又は、ピペラジン骨格を1分子中に2つ以上有する化合物としては、例えば、4-モルホリノプロピルモルホリン、2,2’-ジモルホリノジエチルエーテル等が挙げられ、市販されているものとしては、例えば、U-CAT 651M、U-CAT 660M、U-CAT 2041、U-CAT 2046(いずれもサンアプロ社製)等が挙げられる。
【0072】
本発明にかかる湿気硬化促進触媒の光湿気硬化性組成物中の含有量は、好ましくは0.025質量%以上、より好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは3質量%以下、より好ましくは1質量%以下である。湿気硬化促進触媒の含有量がこの範囲であることにより、得られる光湿気硬化性樹脂組成物が優れた保存安定性を維持しつつ、湿気硬化時の速硬化性により優れるものとなる。
【0073】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、接着性や耐クリープ性を向上させる観点から、カップリング剤を含有してもよい。
【0074】
上記カップリング剤は、ラジカル重合性化合物、光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、湿気硬化性ウレタンプレポリマーのいずれかと反応し得る反応性官能基を有することが好ましい。上記反応性官能基を有することにより、本発明の光湿気硬化性樹脂組成物を硬化させて得られる硬化物中に上記カップリング剤が取り込まれ、その結果、接着性や耐クリープ性が更に向上する。
【0075】
上記カップリング剤の有する反応性官能基としては、例えば、(メタ)アクリロイル基等の不飽和二重結合を有する基、エポキシ基、イソシアネート基、チオール基、アミノ基等が挙げられる。なかでも、接着性や耐クリープ性を向上させる効果に優れることから、不飽和二重結合を有する基、エポキシ基、イソシアネート基が好ましい。
【0076】
上記カップリング剤としては、例えば、シランカップリング剤、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコネート系カップリング剤等が挙げられる。なかでも、接着性や耐クリープ性を向上させる効果に特に優れることから、シランカップリング剤が好ましい。上記カップリング剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わせて用いられてもよい。
【0077】
上記シランカップリング剤としては、例えば、3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、3-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルトリエトキシシラン、3-(2-アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルトリエトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジメトキシシラン、3-(メタ)アクリロイルオキシプロピルメチルジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリメトキシシラン、3-イソシアネートプロピルトリエトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、3-メルカプトプロピルトリエトキシシラン等が挙げられる。
上記チタネート系カップリング剤としては、例えば、テトライソプロピルチタネート、テトラノルマルブチルチタネート、ブチルチタネートダイマー、テトラオクチルチタネート、テトラターシャリーブチルチタネート、テトラヅテアリルチタネート、チタンアセチルアセテート等が挙げられる。
上記アルミネート系カップリング剤としては、例えば、アルキルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート等が挙げられる。
上記ジルコネート系カップリング剤としては、例えば、ノルマルプロピルジルコネート、ジルコニウムエチルアセテート等が挙げられる。
【0078】
上記カップリング剤の含有量は、光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、湿気硬化性ウレタンプレポリマー、ラジカル重合性化合物の合計100質量部に対して、好ましい上限が5質量部である。上記カップリング剤の含有量が5質量部以下であると、得られる光湿気硬化性樹脂組成物の保存安定性が良好となる。上記カップリング剤の含有量のより好ましい上限は1.5質量部である。
また、上記カップリング剤の含有量は、光湿気硬化性ウレタンプレポリマー、湿気硬化性ウレタンプレポリマー、ラジカル重合性化合物の合計100質量部に対して、好ましい下限が0.05質量部である。上記カップリング剤の含有量が0.05質量部以上であると、接着性や耐クリープ性を向上させることが可能となる。上記カップリング剤の含有量のより好ましい下限は0.5質量部である。
【0079】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、得られる光湿気硬化性樹脂組成物の塗布性や形状保持性を調整する等の観点から充填剤を含有してもよい。
上記充填剤は、一次粒子径の好ましい下限が1nm、好ましい上限が50nmである。上記充填剤の一次粒子径が1nm以上であると、得られる光湿気硬化性樹脂組成物の塗布性が良好になる。上記充填剤の一次粒子径が50nm以下であると、得られる光湿気硬化性樹脂組成物が塗布後の形状保持性を良好となる。上記充填剤の一次粒子径のより好ましい下限は5nm、より好ましい上限は30nmである。
なお、上記充填剤の一次粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記充填剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて測定することができる。
また、上記充填剤は、本発明の光湿気硬化性樹脂組成物中において二次粒子(一次粒子が複数集まったもの)として存在する場合があり、このような二次粒子の粒子径の好ましい下限は5nm、好ましい上限は500nm、より好ましい下限は10nm、より好ましい上限は100nmである。上記充填剤の二次粒子の粒子径は、本発明の光湿気硬化性樹脂組成物又はその硬化物を、透過型電子顕微鏡(TEM)を用いて観察することにより測定することができる。
【0080】
上記充填剤としては、例えば、シリカ、タルク、酸化チタン、酸化亜鉛等が挙げられる。なかでも、得られる光湿気硬化性樹脂組成物がUV光透過性に優れるものとなることから、シリカが好ましい。これらの充填剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0081】
上記充填剤は、疎水性表面処理がなされていることが好ましい。上記疎水性表面処理により、得られる光湿気硬化性樹脂組成物が塗布後の形状保持性により優れるものとなる。
上記疎水性表面処理としては、シリル化処理、アルキル化処理、エポキシ化処理等が挙げられる。なかでも、形状保持性を向上させる効果に優れることから、シリル化処理が好ましく、トリメチルシリル化処理がより好ましい。
【0082】
上記充填剤を疎水性表面処理する方法としては、例えば、シランカップリング剤等の表面処理剤を用いて、充填剤の表面を処理する方法等が挙げられる。
具体的には、上記トリメチルシリル化処理シリカは、例えば以下のようにして作製することができる。例えば、シリカをゾルゲル法等の方法で合成し、シリカを流動させた状態でヘキサメチルジシラザンを噴霧する方法や、アルコール、トルエン等の有機溶媒中にシリカを加え、更に、ヘキサメチルジシラザンと水とを加えた後、水と有機溶媒とをエバポレーターで蒸発乾燥させる方法等によりトリメチルシリル化処理シリカを作製することができる。
【0083】
上記充填剤の含有量は、本発明の光湿気硬化性樹脂組成物全体100質量部中において、好ましい下限が1質量部、好ましい上限が20質量部である。上記充填剤の含有量が1質量部以上であると、得られる光湿気硬化性樹脂組成物が塗布後の形状保持性が良好になる。上記充填剤の含有量が20質量部以下であると、得られる光湿気硬化性樹脂組成物の塗布性が良好になる。上記充填剤の含有量のより好ましい下限は2質量部、より好ましい上限は15質量部であり、更に好ましい下限は3質量部、更に好ましい上限は10質量部、特に好ましい下限は4質量部である。
【0084】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、遮光剤を含有してもよい。上記遮光剤を含有することにより、本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、遮光性に優れるものとなって表示素子の光漏れを防止することができる。
なお、本明細書において、上記「遮光剤」は、可視光領域の光を透過させ難い能力を有する材料を意味する。
【0085】
上記遮光剤としては、例えば、酸化鉄、チタンブラック、アニリンブラック、シアニンブラック、フラーレン、カーボンブラック、樹脂被覆型カーボンブラック等が挙げられる。また、上記遮光剤は、黒色を呈するものでなくてもよく、可視光領域の光を透過させ難い能力を有する材料であれば、シリカ、タルク、酸化チタン等、充填剤として挙げた材料も上記遮光剤に含まれる。なかでも、チタンブラックが好ましい。
【0086】
上記チタンブラックは、波長300~800nmの光に対する平均透過率と比較して、紫外線領域付近、特に波長370~450nmの光に対する透過率が高くなる物質である。即ち、上記チタンブラックは、可視光領域の波長の光を充分に遮蔽することで本発明の光湿気硬化性樹脂組成物に遮光性を付与する一方、紫外線領域付近の波長の光は透過させる性質を有する遮光剤である。従って、光ラジカル重合開始剤として、上記チタンブラックの透過率の高くなる波長(370~450nm)の光によって反応を開始可能なものを用いることで、本発明の光湿気硬化性樹脂組成物の光硬化性をより増大させることができる。また一方で、本発明の光湿気硬化性樹脂組成物に含有される遮光剤としては、絶縁性の高い物質が好ましく、絶縁性の高い遮光剤としてもチタンブラックが好適である。
上記チタンブラックは、光学濃度(OD値)が、3以上であることが好ましく、4以上であることがより好ましい。また、上記チタンブラックは、黒色度(L値)が9以上であることが好ましく、11以上であることがより好ましい。上記チタンブラックの遮光性は高ければ高いほど良く、上記チタンブラックのOD値に好ましい上限は特に無いが、通常は5以下となる。
【0087】
上記チタンブラックは、表面処理されていないものでも充分な効果を発揮するが、表面がカップリング剤等の有機成分で処理されているものや、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化ゲルマニウム、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム等の無機成分で被覆されているもの等、表面処理されたチタンブラックを用いることもできる。なかでも、有機成分で処理されているものは、より絶縁性を向上できる点で好ましい。
また、本発明の光湿気硬化性樹脂組成物を用いて製造した表示素子は、光湿気硬化性樹脂組成物が充分な遮光性を有するため、光の漏れ出しがなく高いコントラストを有し、優れた画像表示品質を有するものとなる。
【0088】
上記チタンブラックのうち市販されているものとしては、例えば、12S、13M、13M-C、13R-N(いずれも三菱マテリアル社製)、ティラックD(赤穂化成社製)等が挙げられる。
【0089】
上記チタンブラックの比表面積の好ましい下限は5m/g、好ましい上限は40m/gであり、より好ましい下限は10m/g、より好ましい上限は25m/gである。
また、上記チタンブラックのシート抵抗の好ましい下限は、樹脂と混合された場合(70%配合)において、10Ω/□であり、より好ましい下限は1011Ω/□である。
【0090】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物において、上記遮光剤の一次粒子径は、表示素子の基板間の距離以下等、用途に応じて適宜選択されるが、好ましい下限は30nm、好ましい上限は500nmである。上記遮光剤の一次粒子径が30nm以上であると、得られる光湿気硬化性樹脂組成物の粘度やチクソトロピーがあまり増大せず、作業性が良好となる。上記遮光剤の一次粒子径が500nm以下であると、得られる光湿気硬化性樹脂組成物中における遮光剤の分散性が良好となり、遮光性が向上する。上記遮光剤の一次粒子径のより好ましい下限は50nm、より好ましい上限は200nmである。
なお、上記遮光剤の粒子径は、NICOMP 380ZLS(PARTICLE SIZING SYSTEMS社製)を用いて、上記遮光剤を溶媒(水、有機溶媒等)に分散させて平均粒子径を求めることにより測定することができる。
【0091】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物全体における上記遮光剤の含有量は特に限定されないが、好ましい下限は0.05質量%、好ましい上限は10質量%である。上記遮光剤の含有量が0.05質量%以上であると、遮光性が良好となる。上記遮光剤の含有量が10質量%以下であると、得られる光湿気硬化型樹脂組成物の基板等に対する接着性や硬化後の強度が高めることができ、描画性を良好とすることができる。上記遮光剤の含有量のより好ましい下限は0.1重量%、より好ましい上限は2重量%、更に好ましい上限は1重量%である。
【0092】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、更に、必要に応じて、着色剤、イオン液体、溶剤、金属含有粒子、反応性希釈剤等の添加剤を含有してもよい。
【0093】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物を製造する方法としては、例えば、ホモディスパー、ホモミキサー、万能ミキサー、プラネタリーミキサー、ニーダー、3本ロール等の混合機を用いて、各成分を混合する方法が挙げられる。
【0094】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物における、コーンプレート型粘度計を用いて25℃、1rpmの条件で測定した粘度の好ましい下限は30Pa・s、好ましい上限は500Pa・sである。このような範囲であると、光湿気硬化性樹脂組成物を電子部品用接着剤や表示素子用接着剤に用いる場合に基板等の被着体に塗布する際の作業性が良好となる。上記粘度のより好ましい下限は50Pa・s、より好ましい上限は300Pa・s、更に好ましい上限は200Pa・sである。
【0095】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物のチクソトロピックインデックスの好ましい下限は1.3、好ましい上限は5.0である。チクソトロピックインデックスがこのような範囲であると、光湿気硬化性樹脂組成物を電子部品用接着剤や表示素子用接着剤に用いる場合に基板等の被着体に塗布する際の作業性が良好となる。上記チクソトロピックインデックスのより好ましい下限は1.5である。より好ましい上限は4.0である。
なお、本明細書において上記チクソトロピックインデックスとは、コーンプレート型粘度計を用いて25℃、1rpmの条件で測定した粘度を、コーンプレート型粘度計を用いて25℃、10rpmの条件で測定した粘度で除した値を意味する。
【0096】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、硬化物の25℃における引張弾性率の好ましい下限が0.5kgf/cm、好ましい上限が20kgf/cmである。上記引張弾性率が0.5kgf/cm以上であると、柔らかくなりすぎることをなく、凝集力、及び接着力が良好となる。上記引張弾性率が20kgf/cmを以下であると、柔軟性が良好となる。上記引張弾性率のより好ましい下限は1kgf/cm、より好ましい上限は10kgf/cmである。
なお、本明細書において上記「引張弾性率」は、引張り試験機(例えば、島津製作所社製、「EZ-Graph」)を用いて、硬化物を10mm/minの速度で引張り、50%伸びた時の力として測定される値を意味する。
また、上記「引張弾性率」は、硬化性樹脂組成物を水銀ランプで3000mJ/cm照射させ、その後、3日間、23℃、50RH%の環境下に放置することにより得た硬化物に対して測定して求める。
【0097】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物を用いて接着することが可能な被着体としては、金属、ガラス、プラスチック等の各種の被着体が挙げられる。
上記被着体の形状としては、例えば、フィルム状、シート状、板状、パネル状、トレイ状、ロッド(棒状体)状、箱体状、筐体状等が挙げられる。
【0098】
上記金属としては、例えば、鉄鋼、ステンレス鋼、アルミニウム、銅、ニッケル、クロムやその合金等が挙げられる。
上記ガラスとしては、例えば、アルカリガラス、無アルカリガラス、石英ガラス等が挙げられる。
上記プラスチックとしては、例えば、高密度ポリエチレン、超高分子量ポリエチレン、アイソタクチックポリプロピレン、シンジオタクチックポリプロピレン、エチレンプロピレン共重合体樹脂等のポリオレフィン系樹脂や、ナイロン6(N6)、ナイロン66(N66)、ナイロン46(N46)、ナイロン11(N11)、ナイロン12(N12)、ナイロン610(N610)、ナイロン612(N612)、ナイロン6/66共重合体(N6/66)、ナイロン6/66/610共重合体(N6/66/610)、ナイロンMXD6(MXD6)、ナイロン6T、ナイロン6/6T共重合体、ナイロン66/PP共重合体、ナイロン66/PPS共重合体等のポリアミド系樹脂や、ポリブチレンテレフタレート(PBT)、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンイソフタレート(PEI)、PET/PEI共重合体、ポリアリレート(PAR)、ポリブチレンナフタレート(PBN)、液晶ポリエステル、ポリオキシアルキレンジイミドジ酸/ポリブチレートテレフタレート共重合体等の芳香族ポリエステル系樹脂や、ポリアクリロニトリル(PAN)、ポリメタクリロニトリル、アクリロニトリル/スチレン共重合体(AS)、メタクリロニトリル/スチレン共重合体、メタクリロニトリル/スチレン/ブタジエン共重合体等のポリニトリル系樹脂や、ポリカーボネートや、ポリメタクリル酸メチル(PMMA)、ポリメタクリル酸エチル酢酸ビニル(EVA)等のポリメタクリレート系樹脂や、ポリビニルアルコール(PVA)、ビニルアルコール/エチレン共重合体(EVOH)、ポリ塩化ビニリデン(PVDC)、ポリ塩化ビニル(PVC)、塩化ビニル/塩化ビニリデン共重合体、塩化ビニリデン/メチルアクリレート共重合体等のポリビニル系樹脂等が挙げられる。
【0099】
また、上記被着体としては、表面に金属メッキ層を有する複合材料も挙げられ、該複合材料のメッキの下地材としては、例えば、上述した、金属、ガラス、プラスチック等が挙げられる。
更に、上記被着体としては、金属表面を不動態化処理することにより不導態皮膜を形成した材料も挙げられ、該不動態化処理としては、例えば、加熱処理、陽極酸化処理等が挙げられる。特に、国際アルミニウム合金名が6000番台の材質であるアルミニウム合金等の場合は、上記不動態化処理として硫酸アルマイト処理やリン酸アルマイト処理を行うことで、接着性を向上させることができる。
【0100】
本発明の光湿気硬化性樹脂組成物は、電子部品用接着剤や表示素子用接着剤として特に好適に用いることができる。本発明の光湿気硬化性樹脂組成物を用いてなる電子部品用接着剤、及び、本発明の光湿気硬化性樹脂組成物を用いてなる表示素子用接着剤もまた、それぞれ本発明の1つである。
【実施例
【0101】
以下に、実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されない。
【0102】
(合成例1(光湿気硬化性ウレタンプレポリマーAの合成))
ポリオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(2官能、分子量1,000、水酸基価115、保土ヶ谷化学社製「PTG-L1000」)100質量部と、末端エチレンオキシド付加型ポリオキシプロピレングリコール(3官能、分子量10,000、水酸基価=16.9、旭硝子社製「プレミノール7012」)10質量部を準備した。これらを1000mL容積のセパラブルフラスコに入れ、真空下(20mmHg以下)、100℃で2時間脱水し、その後常圧とし、窒素雰囲気下で70℃まで冷却した。
液温を70℃で保持したまま、ウレタン化触媒として、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)(日東化成社製「ネオスタンU-600」)0.06質量部を攪拌しながら添加し、均一になるまで攪拌した。続いて、液温を70℃に保持したまま、2-イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工社製「カレンズAOI」)4.24質量部を液温が75℃を上回らないように滴下しながら添加した。全量滴下後、攪拌しながら70℃で窒素気流化で1時間反応させて、末端ラジカル重合性基変性ポリオール化合物を得た。反応終了後、フーリエ変換赤外分光光度計(島津製作所社製)にて、イソシアネート基由来の2250cm-1のピークが消失していることを確認した。
続いて、反応終結後、ポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンジイソシアネート(住化コベストロウレタン社製 デスモジュール44S)を53.3質量部加え、窒素気流下で70℃で1時間攪拌し、反応させた。これにより1分子中に3個の水酸基を有するポリオール由来の骨格を含み、分子末端に2個のイソシアネート基と1個のラジカル重合性基を有するウレタン系化合物を含む光湿気硬化性ウレタンプレポリマーA(重量平均分子量 8,300)を得た。
【0103】
(合成例2(光湿気硬化性ウレタンプレポリマーBの合成))
ポリオールとして、100質量部のポリプロピレングリコール(2官能、分子量3,000、水酸基価37、旭硝子社製「エクセノール3020」)を1000mL容積のセパラブルフラスコに入れ、真空下(20mmHg以下)、100℃で2時間脱水し、その後常圧に戻し、窒素雰囲気下で70℃まで冷却した。液温を70℃で保持したまま、ウレタン化触媒として、ビスマストリス(2-エチルヘキサノエート)(日東化成社製「ネオスタンU-600」)0.06質量部を攪拌しながら添加し、均一になるまで攪拌した。続いて、液温を70℃に保持したまま、2-イソシアナトエチルアクリレート(昭和電工社製「カレンズAOI」)4.54質量部を液温が75℃を上回らないように滴下しながら添加した。全量滴下後、攪拌しながら70℃で窒素気流化で1時間反応させて、末端ラジカル重合性基変性ポリオール化合物を得た。反応終了後、フーリエ変換赤外分光光度計(島津製作所社製)にて、イソシアネート基由来の2250cm-1のピークが消失していることを確認した。続いて、反応終結後、ポリイソシアネート化合物として、ジフェニルメタンジイソシアネート(住化コベストロウレタン社製「デスモジュール44S」)8.45質量部を入れ窒素気流下で70℃で1時間攪拌し、反応させた。これにより1分子中に2個の水酸基を有するポリオール由来の骨格を含み、分子末端に1個のイソシアネート基と1個のラジカル重合性基を有するウレタン系化合物を含む光湿気硬化性ウレタンプレポリマーB(重量平均分子量 6,000)を得た。
【0104】
(合成例3(湿気硬化性ウレタンプレポリマーC))
ポリオールとして、ポリテトラメチレンエーテルグリコール(2官能、三菱化学社製「PTMG-2000」)100質量部と、ジブチル錫ジラウレート0.01質量部とを500mL容のセパラブルフラスコに入れ、真空下(20mmHg以下)、100℃で30分間撹拌し、混合した。その後常圧とし、ポリイソシアネート化合物としてジフェニルメタンジイソシアネート(日曹商事社製、「Pure MDI」)26.5質量部を入れ、80℃で3時間撹拌し、反応させた。これにより、両末端にイソシアネート基を有するウレタン系化合物を含む湿気硬化性ウレタンプレポリマーC(重量平均分子量2,700)を得た。
【0105】
(実施例1~5、比較例1~2)
表1に記載された配合比に従い、各材料を、遊星式撹拌装置(シンキー社製、「あわとり練太郎」)にて撹拌した後、セラミック3本ロールにて均一に混合して実施例1~5、比較例1~2の光湿気硬化性樹脂組成物を得た。該光湿気硬化性樹脂組成物について後述する各評価を行い、結果を表1に示した。
【0106】
<評価>
(湿気硬化後の接着力)
ディスペンス装置を用いて、アルミニウム基板に幅1.0±0.1mm、長さ25±2mm、及び厚さが0.4±0.1mmとなるように光湿気硬化性樹脂組成物を塗布し、25℃、50RH%の環境下、水銀ランプで1000mJ/cm2照射することによって光硬化させた。その後、アルミニウム基板にガラス板を貼り合わせ、上から100gの重りを10秒間置き、3日間、25℃、50RH%で放置することにより湿気硬化させて、接着性試験用サンプルを得た。
得られた接着性試験用サンプルについて、引張試験機オートグラフAG-X(島津製作所)を用い、25℃、50%RH雰囲気化で剪断方向に5mm/secの速度で引張り、アルミニウム基板とガラス板とが剥がれる際の強度を測定して「湿気硬化後の接着力」を測定した。
接着力の測定値が50N以上のものをA、20N以上50N未満のものをB、20N未満のものをCとして評価した。
【0107】
(UV直後の評価)
ディスペンス装置を用いて、アルミニウム基板に幅1.0±0.1mm、長さ25±2mm、及び厚さが0.4±0.1mmとなるように光湿気硬化性樹脂組成物を塗布し、25℃、50RH%の環境下、水銀ランプで1000mJ/cm2照射することによって光硬化させた。その後、アルミニウム基板にガラス板を貼り合わせ、上から100gの重りを10秒間置き、接着性評価用サンプルを得た。その後、10分以内に、25℃、50%RH雰囲気化で剪断方向に10gの重りを吊り下げ、アルミニウム基板が落下するまでの時間を測定した。30分以上落下しなかったものをA、10分から30分で落下したものをB、10分以内で落下したものをCとした。
【0108】
(粘度)
光湿気硬化性樹脂組成物の粘度は、コーンプレート型粘度計を用いて25℃、1rpmの条件で測定した。
【0109】
【表1】
【0110】
各実施例の光湿気硬化性樹脂組成物は、2個のイソシアネート基と1個のラジカル重合性基とを有している本発明のウレタン系化合物を含む光湿気硬化性ウレタンプレポリマーを含有しており、UV直後の接着力(初期接着力)及び湿気硬化後の接着力に優れていた。一方、このような特定のウレタン系化合物を含まない光湿気硬化性樹脂組成物を用いた比較例1及び2では、UV直後の接着力又は湿気硬化後の接着力が低い結果となった。