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特許7486448電力供給装置およびモニタリングシステム
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  • 特許-電力供給装置およびモニタリングシステム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】電力供給装置およびモニタリングシステム
(51)【国際特許分類】
   H02J 7/00 20060101AFI20240510BHJP
   H02H 9/00 20060101ALI20240510BHJP
   G01N 29/24 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H02J7/00 S
H02J7/00 302A
H02H9/00 A
G01N29/24
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021029714
(22)【出願日】2021-02-26
(65)【公開番号】P2022131001
(43)【公開日】2022-09-07
【審査請求日】2023-06-27
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】板橋 佑真
(72)【発明者】
【氏名】近藤 一海
【審査官】麻生 哲朗
(56)【参考文献】
【文献】特開2006-058291(JP,A)
【文献】特表2019-513217(JP,A)
【文献】特開2013-124891(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02J 7/00
H02H 9/00
G01N 29/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力を供給するバッテリと、
チャープ波を生成させる信号発生回路と、
前記信号発生回路への給電電圧を防爆仕様の許容出力電圧以下に調整する電源回路と、
を備える、電力供給装置。
【請求項2】
装置内全電圧が10V以下である、請求項1に記載の電力供給装置。
【請求項3】
前記チャープ波の出力部に定電圧素子を配置する、請求項1または2に記載の電力供給装置。
【請求項4】
請求項1から3のいずれか1項に記載の電力供給装置と、
前記電力供給装置により供給された電力により稼働する計測機器と、
を備える、モニタリングシステム。
【請求項5】
前記計測機器は、薄膜の超音波探傷センサを含む、請求項4に記載のモニタリングシステム。
【請求項6】
前記電力供給装置は、被検査体の厚さに応じた前記超音波探傷センサへの前記チャープ波の送信時間を管理する管理回路を含む、請求項5に記載のモニタリングシステム。
【請求項7】
前記電力供給装置は、前記超音波探傷センサの被検査体の厚さに応じて前記チャープ波の周波数を調整する調整回路を含む、請求項5または6に記載のモニタリングシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、電力供給装置およびモニタリングシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば、特許文献1に薄膜超音波センサの設置方法について開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第6469482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
特許文献1では、万一、可燃性ガス雰囲気において薄膜超音波センサにスパークが発生したとしても、可燃性ガスへの影響を未然に防ぐようにしている。しかし、薄膜超音波センサなどのような計測機器に対して電力を供給する電力供給装置においても可燃性ガスや粉塵が充満するような可燃性雰囲気への影響を防ぐ必要がある。
【0005】
本開示は上述した課題を解決するものであり、可燃性雰囲気への影響を防ぐことのできる電力供給装置およびモニタリングシステムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る電力供給装置は、電力を供給するバッテリと、チャープ波を生成させる信号発生回路と、前記信号発生回路への給電電圧を前記バッテリの出力電圧以下に調整する電源回路と、を備える。
【0007】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係るモニタリングシステムは、上記の電力供給装置と、前記電力供給装置により供給された電力により稼働する計測機器と、を備える。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、可燃性雰囲気への影響を防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係るモニタリングシステムおよび電力供給装置の構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
図1に示す実施形態のモニタリングシステム10は、例えば、原子力発電プラントにおける冷却材管を被検査体100とし、この被検査体100の板厚測定を超音波探傷試験により非破壊で行う。実施形態のモニタリングシステム10は、測定機器である超音波探傷センサ11と、電力供給装置1と、を含む。
【0012】
超音波探傷センサ11は、被検査体100の外面に接着剤などにより貼り着けられる。超音波探傷センサ11は、例えば、8.0MHzとなる中心周波数を持った超音波を被検査体100に照射可能となっている。超音波探傷センサ11は、例えば、圧電セラミックス(焼結体層)上に薄膜の電極を形成する。電極の厚みとしては、例えば、10μm~100μmである。このように超音波探傷センサ11は、薄膜に構成されている。
【0013】
電力供給装置1は、超音波探傷センサ11とケーブル6を介して電気的に接続され、超音波探傷センサ11に送信波を送信し、超音波探傷センサ11から反射波の受信波を受信する。また、電力供給装置1は、送信波と受信波との相関処理を行う。電力供給装置1は、処理結果を無線または有線にて、不図示の制御端末に送る。電力供給装置1は、容器2と、電源部3と、制御部4と、信号送受信部5と、を含む。
【0014】
容器2は、電力供給装置1を構成する電源部3、制御部4、および信号送受信部5を収容する。容器2は、外部の雰囲気から、電源部3、制御部4、および信号送受信部5を収容する内部の雰囲気を隔離する。従って、容器2は、外部が可燃性雰囲気となった場合、この可燃性雰囲気から内部を隔離し、内部に収容した電源部3、制御部4、および信号送受信部5が可燃性雰囲気に影響を及ぼすことを防ぐ。具体的に、容器2は、密閉された内圧防爆構造、および所定の圧力に耐え得る耐圧防爆構造である。
【0015】
電源部3は、バッテリ3Aと、電源回路3Bと、を含む。
【0016】
電源部3は、電力供給装置1内に電力を供給する。実施形態の電源部3は、出力電圧が、例えば、100V未満であり、防爆仕様に応じて設定でき、好ましくは10V以下である。バッテリ3Aは、例えば、リチウムイオン電池が用いられる。電力供給装置1に対してバッテリ3Aを着脱する場合、ケーブル6から電力供給装置1を取り外し可燃性雰囲気ではない管理区域において行う。電源回路3Bは、バッテリ3Aの電力を制御部4、および信号送受信部5に供給する。電源回路3Bは、バッテリ3Aの供給電圧を昇圧し、制御部4、および信号送受信部5へ給電する。実施形態では、バッテリ3Aの出力電圧は8V以下であり、電源回路3Bは、制御部4、および信号送受信部5への給電電圧を10V以下に調整する。例えば、電源回路3Bは、バッテリ3Aの出力電圧が変化した場合でも、制御部4、および信号送受信部5への給電電圧を一定の電圧(例えば、8V)に調整する。電源回路3Bは、防爆仕様に応じた最大出力電圧(例えば、10V)を超えて昇圧せず、制御部4、および信号送受信部5への給電電圧を一定の電圧に昇圧する。これにより、電力供給装置1は、装置内全電圧が10V以下となる。このように、電源回路3Bは、電源部3の出力電圧を、制御部4、および信号送受信部5への給電電圧を一定の電圧に安定的に調整する。なお、防爆仕様に応じた最大出力電圧は、上記では10Vとしたが、この限りではなく、防爆仕様のレベルに応じて適宜設定できる。例えば、防爆仕様のレベルが低い場合最大出力電圧が20Vであってもよい。
【0017】
制御部4は、演算処理回路4Aと、通信回路4Bと、を含む。
【0018】
演算処理回路4Aは、電源のオンまたはオフを行う。また、電源回路3Bは、電源のオンまたはオフのタイミングを設定する。電源のオンまたはオフのタイミングとは、後述の信号発生回路5Aにおいて生成するチャープ波を送信するタイミングとなる。また,演算処理回路4Aは,後述の信号処理回路5Bによって作成される送信波と受信波との相関情報に基づき,送信用データを作成し,通信回路4Bへ転送する。
【0019】
通信回路4Bは、不図示の制御端末に無線または有線にて接続され、送信用データを制御端末に送信する。
【0020】
信号送受信部5は、信号発生回路5Aと、信号処理回路5Bと、管理回路5Cと、調整回路5Dと、を含む。
【0021】
信号発生回路5Aは、超音波探傷センサ11に送信する送信波を発生する。実施形態の信号発生回路5Aは、送信波としてチャープ波を生成する。
【0022】
信号処理回路5Bは、整合フィルタを用いて送信波と受信波との相関を出力する。従って、実施形態のモニタリングシステム10は、電力供給装置1により超音波探傷センサ11にチャープ波を送信し、超音波探傷センサ11において被検査体100から反射した反射波を電力供給装置1で受信する。電力供給装置1は、信号処理回路5Bにおいて送信波と受信波との相関を出力し、通信回路4Bにより制御端末に送る。これにより、モニタリングシステム10は、被検査体100の厚さを非破壊で計測する。
【0023】
管理回路5Cは、信号発生回路5Aで生成されるチャープ波について超音波探傷センサ11への送信時間を管理する。信号処理回路5Bにおいて、送信波と受信波との相関を出力するには、送信波であるチャープ波の送信時間を長くするほど、受信波との比較精度が高く、高電圧出力(例えば、100V)のバースト波同等の精度の高い計測ができる。しかし、チャープ波の送信時間を長くするとバッテリ3の消費が大きくなることと、送信波と受信波との混線が生じるおそれがある。このことから、計測する被検査体100の厚さに応じ、バースト波同等の精度となり、かつ上記不具合が抑えられる最適な送信時間を選定する。管理回路5Cは、選定した送信時間となるようにチャープ波の送信時間を管理する。
【0024】
調整回路5Dは、信号発生回路5Aで生成されるチャープ波について超音波探傷センサ11の中心周波数に応じた周波数で周波数をスイープさせるように調整する。
【0025】
被検査体の厚さに応じてチャープ波を選定する。チャープ波の周波数は8MHz近傍でスイープしている。実施形態では、被検査体の厚さに応じ、チャープ波の周波数帯域(チャープ波周波数帯域)とチャープ波の送信時間(チャープ波長さ)を選定する。チャープ波の送信時間は、S/N(Signal/Noise)が確保できる範囲で、[0023]記載の考え方に従い極力短く設定する。結果的に、被検査体の厚さが薄いものはチャープ波の送信時間を短く、被検査体の厚さが厚いものはチャープ波の送信時間を長く設定する形となる。一方で、スイープする周波数帯は被検査体の厚さが厚いものは幅広い帯域で、被検査体の厚さが薄いものは狭帯域で設定する。被検査体の厚さに応じた最適なパラメータは事前の実験やシミュレーション等を用いて確認しておく。
【0026】
従って、信号送受信部5では、信号発生回路5Aで生成されるチャープ波について、調整回路5Dによって使用する超音波探傷センサ11の周波数帯に合わせ、管理回路5Cによって高電圧出力(例えば、100V)のバースト波同等の精度の高い計測を行うように送信時間を管理し、信号処理回路5Bによって送信波と受信波との相関を出力する。
【0027】
このように、実施形態の電力供給装置1は、電力を供給するバッテリ3Aと、チャープ波を生成させる信号発生回路5Aと、信号発生回路5Aへの給電電圧を防爆仕様の許容出力電圧以下に調整する電源回路3Bと、を備える。
【0028】
この実施形態の電力供給装置1によれば、チャープ波を使うことで比較的低電圧のバッテリ3Aによる電力供給を実現でき、可燃性雰囲気への影響を防止できる。しかも、この実施形態の電力供給装置1によれば、電源回路3Bによって信号発生回路5Aへの給電電圧を防爆仕様の許容出力電圧以下に調整することで、可燃性雰囲気への影響を防止できる。なお、実施形態の電力供給装置1によれば、容器2が必要のない場合もあるが、可燃性雰囲気への影響を確実に防ぐことを考慮し容器2を用いることが好ましい。
【0029】
また、実施形態の電力供給装置1では、装置内全電圧が10V以下である。
【0030】
この実施形態の電力供給装置1によれば、装置内全電圧を10V以下とすることで、可燃性雰囲気への影響を防止できる。
【0031】
また、実施形態の電力供給装置1では、チャープ波の出力部に定電圧素子7を配置する。定電圧素子7は、例えば、ツェナーダイオードであり、電力供給装置1においてケーブル6に接続する出力部に配置される。
【0032】
この実施形態の電力供給装置1によれば、電力供給装置1から出力される電流が変化しても定電圧素子7によって電圧を一定にするため、衝撃やケーブル6を引っかけたりして電流が変化しても電圧を一定に保つことができ、可燃性雰囲気への影響を防止できる。
【0033】
実施形態のモニタリングシステム10は、電力供給装置1と、電力供給装置1により供給された電力により稼働する計測機器(超音波探傷センサ11)と、を備える。
【0034】
この実施形態のモニタリングシステム10によれば、低電圧のチャープ波を用い、低電圧の環境下で計測機器により計測ができる。従って、この実施形態のモニタリングシステム10によれば、可燃性雰囲気への影響を防止しつつ計測ができる。
【0035】
また、実施形態のモニタリングシステム10では、計測機器は、超音波探傷センサ11を含む。
【0036】
この実施形態のモニタリングシステム10によれば、低電圧のチャープ波を用い、低電圧の環境下で薄膜の超音波探傷センサ11により非破壊計測ができる。従って、この実施形態のモニタリングシステム10によれば、可燃性雰囲気への影響を防止しつつ非破壊計測ができる。
【0037】
また、実施形態のモニタリングシステム10では、電力供給装置1は、被検査体100の厚さに応じた超音波探傷センサ11へのチャープ波の送信時間を管理する管理回路5Cを含む。
【0038】
この実施形態のモニタリングシステム10によれば、被検査体100の厚さに応じたチャープ波の送信時間を管理することで、送信波と受信波との相関出力の比較精度を向上し、かつバッテリ3の消費を抑えつつ送信波と受信波との混線が生じるおそれのない送信時間でチャープ波を送信できる。従って、この実施形態のモニタリングシステム10によれば、低電圧のチャープ波を適用しつつ、例えば高電圧のバースト波同等の計測精度が得られる。
【0039】
また、実施形態のモニタリングシステム10では、電力供給装置1は、超音波探傷センサ11の被検査体の厚さに応じてチャープ波の周波数を調整する調整回路5Dを含む。
【0040】
この実施形態のモニタリングシステム10によれば、超音波探傷センサ11の被検査体の厚さに応じたチャープ波の周波数の送信によって、計測精度を向上できる。
【符号の説明】
【0041】
1 電力供給装置
3A バッテリ
3B 電源回路
5A 信号発生回路
5C 管理回路
5D 調整回路
7 定電圧素子
10 モニタリングシステム
11 超音波探傷センサ
図1