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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-05-09
(45)【発行日】2024-05-17
(54)【発明の名称】床下配線構造および床下配線方法
(51)【国際特許分類】
   H02G 3/38 20060101AFI20240510BHJP
   H02G 1/06 20060101ALI20240510BHJP
   G08B 17/00 20060101ALI20240510BHJP
   E04F 15/024 20060101ALI20240510BHJP
【FI】
H02G3/38 030
H02G1/06
H02G3/38 050
G08B17/00 Z
E04F15/024 606B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021072066
(22)【出願日】2021-04-21
(65)【公開番号】P2022166684
(43)【公開日】2022-11-02
【審査請求日】2023-08-09
(73)【特許権者】
【識別番号】000006208
【氏名又は名称】三菱重工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】江口 康隆
(72)【発明者】
【氏名】近藤 健太郎
(72)【発明者】
【氏名】奥田 寿和
【審査官】北嶋 賢二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-180803(JP,A)
【文献】特開2016-115114(JP,A)
【文献】特開平08-275334(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02G 3/38
H02G 1/06
G08B 17/00
E04F 15/024
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プラント施設内のコンクリート床の上側に間隔をおいて上床板が配置された床部と、
前記コンクリート床に取り付けられて前記床部の内部に設けられ、耐火材および前記耐火材を支持する支持部材で構成され、複数系統のケーブルを区画可能な耐火区画部材と、
前記床部の内部において前記耐火区画部材で区画された領域に設けられる火災感知器およびガス消火設備と、
を備え
前記耐火区画部材は、前記コンクリート床に固定される板状の前記支持部材に前記耐火材の少なくとも一側面が支持された壁部を構成する、床下配線構造。
【請求項2】
プラント施設内のコンクリート床の上側に間隔をおいて上床板が配置された床部と、
前記コンクリート床に取り付けられて前記床部の内部に設けられ、耐火材および前記耐火材を支持する支持部材で構成され、複数系統のケーブルを区画可能な耐火区画部材と、
前記床部の内部において前記耐火区画部材で区画された領域に設けられる火災感知器およびガス消火設備と、
を備え
前記耐火区画部材は、前記コンクリート床に固定される筒状の前記支持部材の内側に筒状の前記耐火材が支持されて前記ケーブルを通す管部を構成する、床下配線構造。
【請求項3】
プラント施設内のコンクリート床の上側に間隔をおいて上床板が配置された床部と、
前記コンクリート床に取り付けられて前記床部の内部に設けられ、耐火材および前記耐火材を支持する支持部材で構成され、複数系統のケーブルを区画可能な耐火区画部材と、
前記床部の内部において前記耐火区画部材で区画された領域に設けられる火災感知器およびガス消火設備と、
を備え
前記耐火区画部材の外部に取り付けられて前記コンクリート床に接合される補強部材をさらに備える、床下配線構造。
【請求項4】
前記ケーブルは、安全系と常用系の系統を含み、前記耐火区画部材は、前記安全系と前記常用系とを区画する、請求項1からのいずれか1項に記載の床下配線構造。
【請求項5】
前記コンクリート床に固定されて前記上床板を支持する支持脚を備え、
前記耐火区画部材は、前記支持脚とは独立して設けられる、請求項1からのいずれか1項に記載の床下配線構造。
【請求項6】
プラント施設内のコンクリート床に、耐火材および前記耐火材を支持する支持部材で構成されて複数系統のケーブルを区画可能であって前記コンクリート床に固定される板状の前記支持部材に前記耐火材の少なくとも一側面が支持された壁部を構成する耐火区画部材を取り付ける工程と、
前記耐火区画部材で区画された領域に前記ケーブルを配置する工程と、
前記耐火区画部材および前記ケーブルを覆うように前記コンクリート床の上側に間隔をおいて上床板を配置する工程と、
を含む、床下配線方法。
【請求項7】
プラント施設内のコンクリート床に、耐火材および前記耐火材を支持する支持部材で構成されて複数系統のケーブルを区画可能であって前記コンクリート床に固定される筒状の前記支持部材の内側に筒状の前記耐火材が支持されて前記ケーブルを通す管部を構成する耐火区画部材を取り付ける工程と、
前記耐火区画部材で区画された領域に前記ケーブルを配置する工程と、
前記耐火区画部材および前記ケーブルを覆うように前記コンクリート床の上側に間隔をおいて上床板を配置する工程と、
を含む、床下配線方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、床下配線構造および床下配線方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えば、特許文献1、2に、コンクリート床の上面側に一定間隔をおいて床パネルを設けた二重床構造とし、二重床の内部空間に隔壁で区画されたダクト(溝)を設け、室内に配置される電子機器のケーブルを溝内に配置する構造について記載されている。上記隔壁は、コンクリート床と一体に形成されたコンクリート製の隔壁として構成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開昭60-156204号公報
【文献】特開昭61-101420号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来では、コンクリート床と一体に形成されたコンクリート製の隔壁であったため、電子機器の配置が変更され配線のルートが変わる場合、コンクリート製の隔壁を解体して新たなルートを施工することとなる。
【0005】
本開示は上述した課題を解決するものであり、設置や撤去が容易であり、将来的なケーブルルート変更の際の拡張性を有することのできる床下配線構造および床下配線方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る床下配線構造は、プラント施設内のコンクリート床の上側に間隔をおいて上床板が配置された床部と、前記コンクリート床に取り付けられて前記床部の内部に設けられ、耐火材および前記耐火材を支持する支持部材で構成され、複数系統のケーブルを区画可能な耐火区画部材と、前記床部の内部において前記耐火区画部材で区画された領域に設けられる火災感知器およびガス消火設備と、を備える。
【0007】
上述の目的を達成するために、本開示の一態様に係る床下配線方法は、プラント施設内のコンクリート床に、耐火材および前記耐火材を支持する支持部材で構成されて複数系統のケーブルを区画可能な耐火区画部材を取り付ける工程と、前記耐火区画部材で区画された領域に前記ケーブルを配置する工程と、前記耐火区画部材および前記ケーブルを覆うように前記コンクリート床の上側に間隔をおいて上床板を配置する工程と、を含む。
【発明の効果】
【0008】
本開示は、設置や撤去が容易で将来的なケーブルルート変更の際の拡張性を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1図1は、実施形態に係る床下配線構造の構成図である。
図2図2は、実施形態に係る床下配線構造の拡大構成図である。
図3図3は、実施形態に係る床下配線構造の交差部の構成図である。
図4図4は、実施形態に係る床下配線構造の他の例の構成図である。
図5図5は、実施形態に係る床下配線構造の他の例の拡大構成図である。
図6図6は、実施形態に係る床下配線構造の他の例の交差部の構成図である。
図7図7は、実施形態に係る床下配線方法のフローチャート図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に、本開示に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。なお、この実施形態によりこの発明が限定されるものではない。また、下記実施形態における構成要素には、当業者が置換可能かつ容易なもの、あるいは実質的に同一のものが含まれる。
【0011】
図1は、実施形態に係る床下配線構造の構成図である。図2は、実施形態に係る床下配線構造の拡大構成図である。図3は、実施形態に係る床下配線構造の交差部の構成図である。
【0012】
図1に示すように、実施形態の床下配線構造100は、例えば、原子力施設などのプラント施設内の中央制御室において、制御盤である電子機器50に接続されるケーブル51の配線に関わる。原子力施設内の中央制御室は、堅牢なコンクリート製のコンクリート床101と、図には明示しないが、コンクリート壁と、コンクリート天井とに囲まれる。床下配線構造100は、コンクリート床101の床面101aに固定された複数の支持脚102によって、床面101aよりも上側に所定間隔をおいて上床板103が支持されることで、床下空間である床部104を備える。ケーブル51は、床部104に配線される。なお、実施形態の電子機器50は、コンクリート床101の床面101aから、上床板103と同じレベルに嵩上げされたコンクリート製の基台101bに固定される。基台101bは、ケーブル51を通す開口部が防火シール52で封止される。
【0013】
ケーブル51は、系統分離が要求される。例えば、ケーブル51は、異常発生時に原子炉を緊急停止させ、原子炉の炉心冷却を行うシステムである安全系(ケーブル51A,51B)の系統と、発電をするためのシステムである常用系(ケーブル51C)の系統とがある。安全系のケーブル51A,51Bと常用系のケーブル51Cとは、完全に分離し、例えば常用系の故障によって安全系の機能に影響が及ばないように配置する必要がある。また、安全系のケーブル51A,51Bは、多重性、独立性が要求され、電気的、物理的に分離された独立の複数(実施形態では2つ)のトレンから構成され、1つのトレンの故障によって他のトレンの機能に影響が及ばないように配置する必要がある。従って、実施形態の床下配線構造100は、安全系のケーブル51A,51B同士、および安全系のケーブル51A,51Bと常用系のケーブル51Cとの系統分離を区画し、信頼性を確保する。
【0014】
床下配線構造100は、上述したように系統分離が要求される複数系統のケーブル51(51A,51B,51C)を区画可能な耐火区画部材1を備える。図2に示すように、耐火区画部材1は、耐火材1A、および耐火材1Aを支持する支持部材1Bで壁部が構成される。
【0015】
耐火材1Aは、耐火性を有する、例えばスポンジ状のもので、一定の形状を維持できる。実施形態の耐火材1Aは、耐火性能を確保できる厚さを有し、コンクリート床101の床面101aに立てて設けられる立壁を構成する。耐火材1Aは、配線するケーブル51の延在方向に沿ってコンクリート床101の床面101aに連続して設けられる。
【0016】
支持部材1Bは、板状の鋼板からなり、耐火材1Aの壁の少なくとも一側面に沿って配置される。図2では、支持部材1Bは、耐火材1Aの壁の両側面に沿って配置されている。支持部材1Bは、耐火材1Aの壁の側面に沿う支持部1Baと、当該支持部1Baから連続して屈曲して設けられてコンクリート床101の床面101aに固定される固定部1Bbと、で構成される。支持部1Baは、耐火材1Aの壁の側面に対して接着によって取り付けられる。固定部1Bbは、コンクリート床101の床面101aに設置された固定金具への溶接や、コンクリート床101に設置されたアンカーボルトへの締め付けによってコンクリート床101の床面101aに固定される。従って、支持部材1Bは、支持部1Baによって耐火材1Aを支持し、固定部1Bbによって耐火材1Aをコンクリート床101の床面101aに固定する。
【0017】
また、耐火区画部材1は、必要に応じて補強部材1Cを備える。補強部材1Cは、耐火材1Aを支持し、コンクリート床101の床面101aに固定することを補強する。補強部材1Cは、鋼材で形成された角形鋼板からなり、コンクリート床101の床面101aに立設して固定される脚部1Caと、コンクリート床101の床面101aに沿って設けられて脚部1Caに溶接などによって接合される梁部1Cbと、を有する。脚部1Caは、コンクリート床101の床面101aに設置された固定金具への溶接や、コンクリート床101に設置されたアンカーボルトへの締め付けによってコンクリート床101の床面101aに固定される。また、脚部1Caは、支持部材1Bの板面に溶接などによって接合される。梁部1Cbは、支持部材1Bの板面に溶接などによって接合される。また、梁部1Cbは、複数本がコンクリート床101の床面101aに沿って設けられていてもよい。梁部1Cbは、図2では2本設けられている。従って、補強部材1Cは、耐火材1Aを支持する支持部材1Bを補強し、耐震性の向上を図る。
【0018】
このような耐火区画部材1は、耐火材1Aがコンクリート床101の床面101aに立設された区画壁を構成する。耐火区画部材1は、支持脚102とは独立して干渉しないように設けられる。また、耐火材1Aは、コンクリート床101の床面101aから立ち上がった上端が上床板103の底面と隙間なく接触することが好ましい。
【0019】
上述した耐火区画部材1は、図1に示すように、安全系の各ケーブル51A,51Bのルートの両側に各ケーブル51A,51Bを挟むように1対配置され、かつ各ケーブル51A,51Bの延在方向に連続することで、安全系の各ケーブル51A,51Bを配置する各領域10A,10Bを系統分離する。また、耐火区画部材1は、図1に示すように、各ケーブル51A,51Bのルートに沿う1対の耐火区画部材1の外側(領域10A,10Bの外側)の領域10Cに常用系のケーブル51Cが配置されることで、安全系のケーブル51A,51Bの領域10A,10Bと常用系のケーブル51Cの領域10Cとを系統分離する。
【0020】
実施形態の床下配線構造100では、図1に示すように、安全系の各ケーブル51A,51Bの各領域10A,10Bが交差する交差部Cを有する。かかる交差部Cにおいて、耐火区画部材1は、図3に示すように構成される。なお、図3では、耐火区画部材1は、耐火材1Aのみの簡素化した形態として示している。よって、ここでは、耐火区画部材1を耐火材1Aとして説明する。
【0021】
領域10Aを区画する1対の耐火材1Aは、交差部Cにおいて下側を通過する。この耐火材1Aは、交差部Cにおいて、上側の略半分が切り欠かれた切欠11Aを有する。切欠11Aは、矩形状に切り欠かれ、1対の耐火材1Aにおいて交差方向(実施形態では領域10Aを区画する耐火材1Aに直交する方向)の同じ位置に同じ大きさに形成される。よって、領域10Aを区画する耐火材1Aは、切欠11Aによって上側が交差方向で貫通して形成される。各切欠11Aは、矩形状の各縦辺の間に板状の耐火材11Bが立てて架け渡される。耐火材11Bは、必要に応じて支持部材1Bが設けられる。また、各切欠11Aは、矩形状の横辺の間に板状の耐火材11Cが横にして架け渡される。耐火材11Cは、必要に応じて支持部材1Bが設けられる。よって、貫通する切欠11Aは、耐火材11Bおよび耐火材11Cによって上方を除き塞がれる。
【0022】
一方、領域10Bを区画する1対の耐火材1Aは、交差部Cにおいて上側を通過する。この耐火材1Aは、交差部Cの位置で、領域10Aを区画する1対の耐火材1Aを間に途切れて設けられる。この途切れた部分に、交差部材12が設けられる。交差部材12は、交差方向に沿って途切れた部分を繋ぐ一対の板状の耐火材12Aを有する。この耐火材12Aは、交差部Cにおいて、下側の略半分が切り欠かれた切欠12Aaを有する。切欠12Aaは、矩形状に切り欠かれ、1対の耐火材12Aにおいて、領域10Aを区画する耐火材1Aが連続する方向の同じ位置に同じ大きさに形成される。よって、耐火材12Aは、切欠12Aaによって下側が領域10Aを区画する耐火材1Aが連続する方向で貫通して形成される。また、切欠12Aaは、横にして架け渡された耐火材11Cの上側を跨ぐように設けられる。各切欠12Aaは、矩形状の各縦辺の間に板状の耐火材12Bが立てて架け渡される。耐火材12Bは、必要に応じて支持部材1Bが設けられる。また、各切欠12Aaは、矩形状の横辺の間に板状の耐火材12Cが横にして架け渡される。耐火材12Cは、必要に応じて支持部材1Bが設けられる。よって、貫通する切欠12Aaは、耐火材12Bおよび耐火材12Cによって上方を除き塞がれる。
【0023】
そして、耐火材1A,11B,11Cで区画された交差部Cの下側の領域10Aにケーブル51Aが配線される。また、耐火材12A,12B,12Cで区画された交差部Cの上側の領域10Bにケーブル51Bが配線される。よって、ケーブル51Aとケーブル51Bとが系統分離された形態で交差される。
【0024】
図4は、実施形態に係る床下配線構造の他の例の構成図である。図5は、実施形態に係る床下配線構造の他の例の拡大構成図である。図6は、実施形態に係る床下配線構造の他の例の交差部の構成図である。
【0025】
実施形態の床下配線構造200において、上述した床下配線構造100と同等の構成には、同一の符号を付して詳細な説明を省略する。
【0026】
図4において、実施形態の床下配線構造200は、床下空間である床部104を備える。床下配線構造200は、系統分離が要求されるケーブル51(51A,51B,51C)を区画可能な耐火区画部材2を備える。図5に示すように、耐火区画部材2は、耐火材2A、および耐火材2Aを支持する支持部材2Bで管部が構成される。
【0027】
耐火材2Aは、耐火性を有する、例えばスポンジ状のもので、一定の形状を維持できる。実施形態の耐火材2Aは、耐火性能を確保できる厚さを有して板状に構成される。耐火材2Aは、底部耐火材2Aaと、側部耐火材2Abと、蓋部耐火材2Acと、を有する。底部耐火材2Aaは、コンクリート床101の床面101aに伏せて配置される。側部耐火材2Abは、1対設けられ、底部耐火材2Aaの両端に当接してコンクリート床101の床面101aに立てて、互いに対向して設けられる。蓋部耐火材2Acは、各側部耐火材2Abの上端に架け渡されて、底部耐火材2Aaと対向して設けられる。よって、耐火材2Aは、底部耐火材2Aaと、各側部耐火材2Abと、蓋部耐火材2Acとで、矩形状の筒を構成する。この耐火材2Aは、配線するケーブル51の延在方向に沿ってコンクリート床101の床面101aに連続して設けられる。
【0028】
支持部材2Bは、板状の鋼板からなり、耐火材2Aがなす筒の外周を囲むように配置される。支持部材2Bは、耐火材2Aの底部耐火材2Aaの外周面に沿ってコンクリート床101の床面101aとの間に配置される固定部2Baと、固定部2Baの両側から連続して屈曲して立ち上がり各側部耐火材2Abの外周面に沿って配置される支持部2Bbと、固定部2Baおよび支持部2Bbとは別体で構成されて、蓋部耐火材2Acの外周面に沿って配置され、支持部2Bbの上端に接合される蓋部2Bcと、で構成される。固定部2Baは、底部耐火材2Aaの外周面に接着によって取り付けられる。固定部2Baは、コンクリート床101の床面101aに設置された固定金具への溶接や、コンクリート床101に設置されたアンカーボルトへの締め付けによってコンクリート床101の床面101aに固定される。各支持部2Bbは、各側部耐火材2Abの外周面に外周面に接着によって取り付けられる。蓋部2Bcは、蓋部耐火材2Acの外周面に接着によって取り付けられ、かつ支持部2Bbの上端に溶接によって接合される。従って、支持部材2Bは、耐火材2Aの外周を囲って支持し、固定部2Baによって耐火材2Aをコンクリート床101の床面101aに固定する。
【0029】
また、耐火区画部材2は、耐火区画部材1と同様に、必要に応じて補強部材1Cを備えてもよい。
【0030】
このような耐火区画部材2は、耐火材2Aが筒状の区画壁を構成する。耐火区画部材2は、支持脚102とは独立して干渉しないように設けられる。また、耐火区画部材2は、上床板103の底面と干渉しないことが好ましい。
【0031】
上述した耐火区画部材2は、図4に示すように、安全系の各ケーブル51A,51Bのルートを耐火材2Aの筒状の内部に通すように配置され、かつ各ケーブル51A,51Bの延在方向に連続することで、安全系の各ケーブル51A,51Bを配置する各領域20A,20Bを系統分離する。また、耐火区画部材2は、図4に示すように、各ケーブル51A,51Bを通した耐火区画部材2の外側(領域20A,20Bの外側)の領域20Cに常用系のケーブル51Cが配置されることで、安全系のケーブル51A,51Bの領域20A,20Bと常用系のケーブル51Cの領域20Cとを系統分離する。
【0032】
実施形態の床下配線構造200では、図3に示すように、安全系の各ケーブル51A,51Bの各領域20A,20Bが交差する交差部Cを有する。かかる交差部Cにおいて、耐火区画部材2は、図3および図5に示すように構成される。
【0033】
領域20Aを区画する耐火区画部材2は、交差部Cにおいて下側を通過する。即ち、耐火区画部材2は、コンクリート床101の床面101aに沿って配置される。一方、領域20Bを区画する耐火区画部材2は、交差部Cにおいて上側を通過する。耐火区画部材2は、交差部Cの位置で領域20Aを区画する耐火区画部材2の上側を跨ぐ橋の部分が、橋脚21で支持される。橋脚21は、鋼材で形成された角形鋼板からなる脚部21Aが、コンクリート床101の床面101aにアンカー21Cで固定された固定金具21Bに対して溶接で固定される。脚部21Aは、端の部分の耐火区画部材2における支持部材2Bの固定部2Baを溶接によって接合する。
【0034】
そして、領域20Aを区画する耐火区画部材2にケーブル51Aが配線される。また、領域20Bを区画する耐火区画部材2にケーブル51Bが配線される。よって、ケーブル51Aとケーブル51Bとが系統分離された形態で交差される。
【0035】
上述した床下配線構造100(200)では、図1および図4に示すように、床部104の内部において耐火区画部材1(2)で区画された領域10A(20A),10B(20B),10C(20C)に、ガス消火設備30A,30B,30Cと、火災感知器35A,35B,35Cと、を有する。
【0036】
ガス消火設備30A,30B,30Cは、それぞれ消火ガス貯蔵容器31A,31B,31Cと、チューブ32A,32B,32Cと、噴射ヘッド33A,33B,33Cと、を有する。消火ガス貯蔵容器31A,31B,31Cは、消火ガスが貯蔵される。消火ガス貯蔵容器31A,31B,31Cは、チューブ32A,32B,32Cが接続される。チューブ32A,32B,32Cは、各領域10A(20A),10B(20B),10C(20C)の所定箇所に延びた先に噴射ヘッド33A,33B,33Cが設けられる。チューブ32A,32B,32Cは、各領域10A(20A),10B(20B),10C(20C)で複数に分岐し、分岐した先端に噴射ヘッド33A,33B,33Cが設けられる。
【0037】
火災感知器35A,35B,35Cは、火災感知センサを含む。火災感知器35A,35B,35Cは、煙や熱を検出することで火災を感知する。火災感知器35A,35B,35Cは、各領域10A(20A),10B(20B),10C(20C)の所定箇所に複数配置できる。
【0038】
そして、火災感知器35A,35B,35Cから感知信号を取得した図示しない制御装置は、ガス消火設備30A,30B,30Cの消火ガス貯蔵容器31A,31B,31Cの消火ガスをチューブ32A,32B,32Cを介して噴射ヘッド33A,33B,33Cから噴射させる。
【0039】
図7は、実施形態に係る床下配線方法のフローチャート図である。
【0040】
図7に示すように、実施形態の床下配線方法では、ステップS1からステップS4の工程を含む。ステップS1の工程は、原子力施設内のコンクリート床101に、耐火区画部材1(2)を取り付ける。次に、ステップS2の工程は、耐火区画部材1(2)で区画された領域10A,10B,10C(20A,20B,20C)にケーブル51を配置(敷設)する。次に、ステップS3の工程は、領域10A,10B,10C(20A,20B,20C)に、火災感知器35A,35B,35Cおよびガス消火設備30A,30B,30Cを設置する。次に、ステップS4の工程は、支持脚102に上床板103を配置する。
【0041】
上述したように、実施形態の床下配線構造100(200)は、原子力施設内のコンクリート床101の上側に間隔をおいて上床板103が配置された床部104と、コンクリート床101に取り付けられて床部104の内部に設けられ、耐火材1A(2A)および耐火材1A(2A)を支持する支持部材1B(2B)で構成され、複数系統のケーブル51を区画可能な耐火区画部材1(2)と、床部104の内部において耐火区画部材1(2)で区画された領域10A,10B,10C(20A,20B,20C)に設けられる火災感知器35A,35B,35Cおよびガス消火設備30A,30B,30Cと、を備える。
【0042】
この床下配線構造100(200)によれば、従来、コンクリートで区画分離していたが、区画分離に耐火材1A(2A)および支持部材1B(2B)からなる耐火区画部材1(2)を用いることで、設置や撤去が容易であり、将来的なケーブルルート変更の際の拡張性を有する。しかも、この床下配線構造100(200)によれば、火災感知器35A,35B,35Cおよびガス消火設備30A,30B,30Cによって耐火区画部材1(2)による区画分離に応じた消火対策を講じることができる。
【0043】
また、実施形態の床下配線構造100では、耐火区画部材1は、コンクリート床101に固定される板状の支持部材1Bに耐火材1Aの少なくとも一側面が支持された壁部を構成する。
【0044】
この床下配線構造100によれば、壁構造によって、区画分離を構成する物量を低減できる。
【0045】
また、実施形態の床下配線構造200では、耐火区画部材2は、コンクリート床101に固定される筒状の支持部材2Bの内側に筒状の耐火材2Aが支持されてケーブル51を通す管部を構成する。
【0046】
この床下配線構造200によれば、管構造によって、区画分離を確実に行える。
【0047】
また、実施形態の床下配線構造100(200)では、耐火区画部材1(2)の外部に取り付けられてコンクリート床101に接合される補強部材1Cをさらに備える。
【0048】
この床下配線構造100(200)によれば、補強部材1Cによって耐火区画部材1(2)の耐震性を向上できる。
【0049】
また、実施形態の床下配線構造100(200)では、ケーブル51は、安全系と常用系の系統を含み、耐火区画部材1(2)は、安全系と常用系とを区画する。
【0050】
この床下配線構造100(200)によれば、安全系のケーブル51A,51Bと常用系のケーブル51Cとを完全に分離し、例えば常用系の故障によって安全系の機能に影響が及ばないように配置できる。
【0051】
また、実施形態の床下配線構造100(200)では、コンクリート床101に固定されて上床板103を支持する支持脚102を備え、耐火区画部材1(2)は、支持脚102とは独立して設けられる。
【0052】
この床下配線構造100(200)によれば、床部104の構成と耐火区画部材1(2)を独立することで、床部104の設計変更などを行うことなく耐火区画部材1(2)の設置および撤去を行える。
【0053】
また、実施形態の床下配線方法は、原子力施設内のコンクリート床101に、耐火材1A(2A)および耐火材1A(2A)を支持する支持部材1B(2B)で構成されて系統分離が要求されるケーブル51を区画可能な耐火区画部材1(2)を取り付ける工程と、耐火区画部材1(2)で区画された領域10A,10B,10C(20A,20B,20C)にケーブル51を配置する工程と、耐火区画部材1(2)およびケーブル51を覆うようにコンクリート床101の上側に間隔をおいて上床板103を配置する工程と、を含む。
【0054】
この床下配線方法によれば、従来、コンクリートで区画分離していたが、区画分離に耐火材1A(2A)および支持部材1B(2B)からなる耐火区画部材1(2)を用いることで、設置や撤去を容易に行え、将来的なケーブルルート変更の際の拡張性を有する。
【0055】
なお、実施形態の床下配線構造100,200は、原子力施設に限らず、火力プラント、化学プラントなどのプラント施設や、プラント施設以外の建屋(例えば、研究所やオフィス)にも適用できる。
【符号の説明】
【0056】
1 耐火区画部材
1A 耐火材
1B 支持部材
1C 補強部材
2 耐火区画部材
2A 耐火材
2B 支持部材
10A,10B,10C 領域
20A,20B,20C 領域
30A,30B,30C ガス消火設備
35A,35B,35C 火災感知器
51(51A,51B,51C) ケーブル
100(200) 床下配線構造
101 コンクリート床
102 支持脚
103 上床板
104 床部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7